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感染症エクスプレス@厚労省

「感染症エクスプレス@厚労省」は、主に医療従事者の皆さまに向け、感染症についての通知・事務連絡・報道発表など、平時はもちろん有事にも役立つ情報を直接ご提供するメールマガジンです。
本ページでは現在連載中の、健康局結核感染症課の浅沼一成課長によるコラムを掲載しています。
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◆「あさコラム」vol.55「ライラックの花」(2017年5月26日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 山形県を中心に発生していた麻しんの流行も5月25日現在、ようやく治ま
りました。
 関係者の皆様のご尽力に、深く感謝申し上げます。
 とはいえ、世界の流行状況を踏まえますと、海外からの輸入麻しんを端緒
にした国内の感染拡大については、まだ予断は許せません。
 今後とも麻しん予防につきまして、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、先日の5月18日(木)19日(金)、公益財団法人結核予防会総裁の
秋篠宮妃殿下紀子様のご臨席を賜り、第68回結核予防全国大会が北海道札幌
市で開催され、私も大会式典をはじめ、結核予防会支部長会議や研鑽集会、
特別講演、ビデオ上映などに参加してまいりました。
 19日の大会式典の席上では、結核予防に大きな功績があった方々に「秩父
宮妃記念結核予防功労賞」が授与され、総裁から受賞者お一人づつに対して、
壇上にて表彰して頂きました。
 前回の結核予防全国大会(神奈川県開催)で大変お世話になった横浜市保
健師・菅野美穂さんも受賞され、私も直接、お祝いの言葉を申し上げてまい
りました。

 式典の前日(18日)に行われた研鑽集会では、大会開催地地元の北海道大
学大学院呼吸器内科学分野教授・西村正治先生からCOPD(慢性閉塞性肺疾患)
について、ご講演がございました。
 スパイロメトリー検査の重要性や禁煙の有効性など、専門家の立場から
COPD対策について教えていただきました。

 その後、行われたシンポジウムでは、座長の北海道保健福祉部技監の山本
長史先生、結核予防会結核研究所長の加藤誠也先生、そして西村教授のリー
ドのもと、パネリストの方々が各々の立場から発表されました。

 パネリスト一番手の一般社団法人日本結核病学会理事の鎌田有珠先生から
は、感染と発病について、わかりやすくお話をいただきました。また、結核
におけるIGRA(イグラ)検査の有効性や感染段階での対策の取組、潜在性結
核のハイリスクグループの対応強化について、ご提言がございました。

 次のパネリストの公益財団法人北海道結核予防会医長の奈良祐介先生から
は「北海道における各種検診事業の展開」ということで、北海道結核予防会
の活動についてご紹介いただきました。一年を通じて、道内各地で結核、肺
がん、さらにはCOPD検診や結核の接触者検診に地道に取り組まれており、頭
の下がる思いです。デンジャーグループや医療従事者の雇い入れ時のIGRA検
査や高齢者施設への対応など、活動を幅広く展開しているとのこと、今後も
大いに期待しているところです。

 上川保健所健康推進課の深津恵美課長からは「北海道道北ブロックの結核
対策推進事業」の発表がございました。かつて「でっかいどう北海道」とい
うキャンペーンがございましたが、5県分に相当する広大な道北ブロックにお
いて、DOTSカンファレンスの取組や高齢化に伴う糖尿病など合併症の管理に
も目を配る統合的な結核対策の取り組みに、公衆衛生関係者の一人として感
銘を受けました。保健所は結核対策の中心機関です。今後とも、医療機関等
との連携を図りながら、地域の結核対策をリードして頂けたらと、切に願っ
ています。

 札幌北訪問看護ステーションの正門まゆみ所長からは「訪問DOTSの現状」
についての発表がございました。厚生労働省も「結核に関する特定感染症予
防指針」を改正し、患者様中心のDOTSの推進をポイントとして取り上げたと
ころで、まさにタイムリーな取り組みです。札幌市北区において「薬カレン
ダー」の活用や連絡ノートによる情報共用など、きめの細やかな訪問DOTS事
例の紹介は大いに参考になりました。地域結核対策における医療と介護の連
携の重要性について、改めて感じた次第です。

 北海道健康をまもる地域団体連合会の齋藤芳子会長からは、北海道におけ
る結核地域団体の活動として、婦人会活動の歴史を中心にお話がございまし
た。複十字シール募金活動をはじめ、昭和の時代から50年にも及ぶ様々な地
域活動の根底に流れているのは、まさに「アンビシャス精神」。歴史の重み
を感じるお話をされていた齋藤会長が、北海道開拓史を描いた映画「北の零
年」の吉永小百合さんのように段々と見えてきたのは私だけでしょうか。今
後も連合会のご活躍を期待しております。

 以上がシンポジウムの概要ですが、結核対策は北海道日本ハムファイター
ズの大谷翔平選手のごとくです。
 すなわち、(1)予防の普及啓発と(2)早期発見・早期治療の「二刀流」です。
 北海道の人口10万対の結核り患率は9.9(2015年[平成27年])と、10.0を
切って低まん延化しているのは、この二刀流が十分機能しているからだと、
北海道で活躍されているパネリストの皆様のお話を聞いて感じました。

 これから、ライラックのシーズンを迎える北海道。
 このライラックの花のごとく、北の大地で結核対策の花が咲き、さらにそ
の花が全国に広がるように、結核対策の前線に立つ全国の関係者の皆様の取
り組みについて、結核予防会と連携して支援してまいります。

 「結核は、ひとごとじゃない。」
 2020年(平成32年)までにわが国が結核低まん延国となるために、皆様か
らのご協力を賜ります様、どうぞよろしくお願いいたします。


第68回結核予防全国大会会場にて


「結核は、ひとごとじゃない。」(協力:ACジャパン)

◆「あさコラム」vol.54「二人の教訓」(2017年5月19日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 前回のコラムでコレラを取り上げましたが、内戦が続く中東のイエメンの
首都サヌアを中心に、コレラが感染拡大しています。
 情報によりますと、コレラに感染した疑いの方々が1万名以上、うち死亡者
が180名あまりとのことです。
 また、2017年(平成29年)4月22日以降、コンゴ民主共和国(旧ザイール)北
東部のバ・ズエレ州で、エボラ出血熱が疑われる患者が20名発生し、うち3名
が死亡。
 この死亡者3名のうち1名から、生存者17名のうち1名からエボラウイルスが
検出されました(5月18日現在)。

 厚生労働省では、海外でおきたこうしたアウトブレイクについて、WHOなど
から情報を収集し、WEBサイトや広報、検疫所などを通じて、広く情報提供に
努めているところです。
 高速交通体系が整備されている現在、こうした事案を遠い国の出来事と思
わず、今、我々は何をすべきか、何を準備すべきか、2014年(平成26年)の
西アフリカで発生したエボラ出血熱のアウトブレイクの経験を踏まえ、取り
組んでいかねばなりません。
 この場をお借りしまして、現場で感染症治療に取り組む医療従事者の皆様
や国立感染症研究所の専門家の皆様をはじめ、関係各方面からのご指導・ご
協力をお願いいたします。

 さて、ここ数日、アニサキスによる被害が急増しているとの報道が目につ
きました。
 アニサキスは寄生虫(線虫)のひとつで、その幼虫は長さ2〜3cm、幅は0.5
〜1mmほどの白い糸のように見えます。
 この幼虫は、サバやイワシ、サンマやアジ、カツオやサケ、イカなど、海
産の魚介類に寄生しています。
 これら魚介類を生で食べた時、偶然に寄生していた白い糸が胃壁や腸壁に
刺入することで、食中毒(アニサキス症)を引き起こすのです。
 特に、胃に寄生すると「急性胃アニサキス症」を起こし、みぞおちの激し
い痛みや悪心、嘔吐を生じます。
 ちなみに、アニサキス症を診断した医師は、食品衛生法に基づく食中毒と
して保健所に届出をする必要があります。

 アニサキスによる食中毒の予防法は、次のとおり、魚介類の取り扱いに留
意することです。
 ・新鮮な魚やイカなどを選び、丸ごと1匹で購入した際は、速やかに内臓
  を取り除く
 ・内臓を生で食べない
 ・目視で確認して、アニサキスの幼虫を除去する
 ・加熱(60℃では1分、70℃以上で瞬時に死滅)や 冷凍 (-20℃で24時間以
上冷凍すると感染性が失われる)が有効
 特に、生食する場合、-20℃で24時間以上冷凍してから、解凍して生食する
のが良いとのこと。

 なお、食酢での処理、塩漬け、醤油やわさびをつけても、アニサキス幼虫
は死滅しません。
 醤油やわさびをつけたお刺身だから安心!というわけではないのです。
 また、良く噛んでアニサキスを噛み切ればよいとの記事も読みましたが、
さすがにこれは予防法としての根拠はなく、推奨できません。

 さて、「急性胃アニサキス症」は、どれほど苦しいものか?
 1999年(平成11年)、「急性胃アニサキス症」にり患した私のかつての同
僚・野上耕二郎さん(現在、佐賀県精神保健福祉センター所長)の話をした
いと思います。

 野上さんは、夕食に居酒屋でサバの刺身を食べたところ、その日の晩に胃
の激痛が起こり、寝ようとしても、すぐ痛みで目が覚めるの繰り返し。
 本人はアニサキスを疑ったのですが、翌朝、上司に相談しても「まさか、
そんなことはないだろう!ただの胃痛じゃないのか?」と取りつく島もない
有り様。
 仕事に追われていたこともあり、責任感が強い野上さんはその日の受診を
見送り、激痛に耐えながらも私の対面で熱心に仕事をしていました。

 しかし、症状は改善されず、翌日も脂汗が出るほどの痛みで苦しむ野上さ
んに、さすがに上司も私も「早く受診しないと!」と促しました。
 急いで病院の内視鏡科を受診した野上さんの胃の中には、見立てのとおり
1匹のアニサキスの幼虫を確認。
 そのアニサキスが噛みつき回るのか、胃壁のあちこちが出血していたそう
です。
 医師が内視鏡でアニサキスをつかまえ無事に治療が終わり、捕まえたアニ
サキスを野上さんが小瓶に入れてもらって来たので、見せてもらいました。
 初めてアニサキスをじっくりと見ましたが、こんな小さな白い糸が胃に激
痛を与えるとは…と、かなり驚いたことを覚えています。

 今では、この話は野上さんと私の間では懐かしい思い出となっていますが、
当時の野上さんの痛みと苦しみを思うと、野上さんの見立てを信じてもっと
早く受診してもらえば良かったと、受診を働きかけられなかったことが私に
とっての苦い反省点として残っています。
 刺身など生で魚介類を食べた後に、脂汗が出るほどの胃の激しい痛みがあ
ったら、アニサキスを疑い、少しでも早く医療機関を受診すること。
 これは「二人の教訓」ですが、二人の間に留まらず、皆様に広くお伝えし
たい「教訓」でもあります。

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◆「あさコラム」vol.53「虎・虎・虎」(2017年5月12日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 今年の春の大型連休、ゴールデンウィークが終わりました。
 海外に渡航された方々も多かったと思いますが、入国時や帰国後に体調に
不安がある方や動物に咬まれたり、蚊に刺されたなど、健康上心配なことが
ありましたら、厚生労働省WEBサイトの感染症情報「ゴールデンウィークに
おける海外での感染症予防について」という特集をぜひご参考にしていただ
きたいと思います。
 また、帰国後に自宅等で体調が悪くなり医療機関を受診される時には、適
切な診断治療のためにも、医師に渡航歴を必ずお伝え下さい。

 さて、このゴールデンウィーク、私は万が一に備え、在京待機していまし
た。
 そのため、この連休中はTVやラジオがお友達でしたが、色々な番組を観て
いると、「虎」の活躍が目につきました。

 まずは、NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」。
 このゴールデンウィークで、土曜日の再放送も含めて、第16〜18回と総集
編の第一章を鑑賞。
 毎週観ているドラマですが、最近はますます面白くなってきましたね。

 直近では、高橋一生さん演じる幼なじみの筆頭家老・小野但馬守政次の
「本意」がようやくわかった、柴咲コウさん演じる主人公・井伊直虎。
 しかし、今川家、武田家、松平家に囲まれた厳しい戦国の世において、直
虎がどのように井伊家を守っていくのか、今後も楽しみです。
 武力ではなく、知恵と決断と人の輪で、様々な難局を切り抜けていく直虎
の姿を描く森下佳子さんの脚本は、仕事に対するヒントも与えてくれていま
す。
※下のイラストは浜松マスコットキャラクター「出世法師直虎ちゃん」

 プロ野球に目をやれば、絶好調だったのは阪神タイガース。
 ゴールデンウィーク中、こちらの虎は破竹の5連勝でセントラル・リーグ
の首位を快走。
 特に圧巻だったのは、5月6日の甲子園球場での広島東洋カープ戦。
 5回表時点で0−9の劣勢から猛攻開始、12-9と歴史的な大逆転勝利を収め
ました。

 今年の阪神タイガースはFAで加入した糸井嘉男選手をはじめ、福留孝介
選手や鳥谷敬選手などのベテラン選手と、高山俊選手や北條史也選手、梅
野隆太郎選手などの成長著しい若手選手が融合。
 鉄人・金本知憲監督の熱血指導が、ようやくチーム成績に反映されてき
たのではないか、と感じています。
 課題は先発投手陣。
 メッセンジャー投手、藤浪晋太郎投手、能見篤史投手、岩貞祐太投手に
続く5番手、6番手の先発投手がどれだけ安定してくれるのか、です。
 猛虎復活に向け、期待の秋山拓巳投手や青柳晃洋投手がどこまで伸びて
くるのか、注目しています。

 また、芸能ニュースに耳を傾けると、女性ダンス&ボーカルグループの
グループ・MAXが、2010年12月以来となるオリジナルメンバー4人でのライ
ブを東京・品川で開催しました。
 3児の母となり育休のため、活動休止中だったメンバーのREINAさんが6年
半ぶりにステージに戻り、今後は3人から4人のMAXとして再び活動を開始す
るそうです。
 デビュー22年目。
 ママになっても、いくつになっても、キレキレのダンス&ミュージック、
そしてトークで盛り上げてくれるMAXの皆さんですが、数あるヒット曲の
ひとつは「TORA TORA TORA」。
 ここにも、虎の文字が潜んでいました。

 さて、感染症の世界で虎と言えば、コレラ。
 漢字で「虎列剌」あるいは「虎烈刺」「虎列拉」と書きます。
 また、「ころりと死ぬ」ということから、コロリ(虎狼痢)とも記述さ
れることもあります。

 コレラ菌(Vibrio cholerae)が原因で、激しい水様性下痢を引き起こす
この経口感染症がわが国に入ってきたのは19世紀。
 文政、安政、文久の時代から明治、大正、昭和にかけて、幾度か流行を
起こしています。
 現在では経口補水液(ORS)や輸液、抗菌薬により治療ができますが、
例えば、明治12年(1879年)の流行では、約16万人の感染者が発生し、約
10万人の方が死亡、明治19年(1886年)の流行でも約15万人の感染者が発
生し、約10万人の方が死亡されたと記録されています。
 まさに虎の恐怖、高い感染率と死亡率だったことが伺えます。

 明治19年(1886)の「虎列刺退治」という錦絵によりますと、コレラに見立
てた怪獣は、頭が虎、胴体は狼、そして、なぜか睾丸が狸という、3獣が合
体したものとなっています。
 続けて読むと、虎(コ)、狼(ロ)、狸(リ)、つまりコロリとなるん
です。
 この怪獣は消毒薬も予防薬も効かない強敵ですが、水からうつるから飲
み水には気をつけた方がよい、食物にも気をつけた方が良い、トイレはよ
く掃除して清潔を保つようにと、予防の留意事項について、当時から広報
されています。
 ちなみに、コレラ感染者の行政への届出制度が規定された明治10年
(1877年)の「虎列刺病予防法心得」は、現在の感染症法の原点のひとつ
であります。

 近年、わが国では年間、数例程度の届出数のコレラですが、世界では、
毎年、推定で130万人から400万人の患者が発生し、21,000人から143,000人
の方が亡くなっています。
 今年(2017年)は、ソマリアにおいてコレラが急増中。
 WHO(世界保健機関)によると、現在、31,764名(うち、死者618名)が
罹患しているとのことです。

 未だ公衆衛生上の脅威ですが、安全な水と衛生環境を確保することによ
り、この虎を制圧することができます。
 「コレラは衛生の母なり」加藤清正公さながらの虎退治、ぜひとも各国
で期待したいところです。

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直虎ちゃん
浜松マスコットキャラクター「出世法師直虎ちゃん」

コレラ錦絵
コレラの錦絵/流行虎列剌病予防の心得(提供:内藤記念くすり博物館)

◆「あさコラム」vol.52「ゴールデンウィークがやって来る」(2017年4月28日)


 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 今年も春の大型連休、ゴールデンウィークがやって来ます。

 「ゴールデンウィーク」は昭和26年(1951年)、映画業界の宣伝用語とし
て生まれた和製英語で、その翌年から一般にも広く使用されるようになった
とのこと。
 このゴールデンウィーク、本来は5月3日から5月5日までの3日間の連休を指
すそうですが、実態としては、4月29日から5月5日までを中心とした期間があ
たるそうです。
 今年平成29年(2017年)は、5月1日と2日に休めば4月29日から5月7日まで
最大9連休となることから、海外へ渡航される方々が多くなるのでは、と予想
されています。

 ちなみに、大手旅行会社のJTBさんによりますと、ゴールデンウィーク期間
中(平成29年(2017年)4月29日〜5月5日)、海外旅行人数は59万5000人を見
込んでおり、そのうちアジアに渡航される方は合計37万1000人、ハワイやグ
アム・サイパンを含む北米州に渡航される方は合計14万6000人と推計されて
います。

 結核感染症課といたしましては、ゴールデンウィークに海外に渡航される
方々に、安全で快適に過ごしていただき帰国することができるよう、
 「ゴールデンウィークにおける海外での感染症予防について」という特集
を厚生労働省ホームページに掲載し、海外で注意すべき感染症及びその予防
対策をお知らせしています。

 私なりに、ポイントを絞ってみますと…。
 ○最も感染の可能性が高いのは、コレラや細菌性赤痢、A型肝炎、腸チフス
  など、食べ物や水を介した消化器系の感染症。
   したがって、海外では、十分火の通った食べ物を食べる、生水は飲ま
  ないようにするといった注意が必要です。
 ○海外では、動物や蚊・マダニなどが媒介する病気が流行していることが
  あり、注意が必要です。
   例えば、蚊を介して感染する感染症は、マラリア、デング熱、チクン
  グニア熱、ジカウイルス感染症、黄熱など、熱帯・亜熱帯地域を中心に
  流行しています。
   アジア、アフリカ、中南米などの熱帯・亜熱帯地域に渡航される方々
  は、虫除けのローションやスプレーを使用する、長袖・長ズボンを着用
  する、素足でのサンダル履きは避けるなど、蚊やマダニに刺されないよ
  うにご用心ください。
 ○中国、エジプトでは、鳥インフルエンザの患者さんが発生しています。
   こうした国々では、ニワトリやアヒルを飼育している場所や生きた鳥
  が売買されている市場には近づかない、また、鳥の死骸やフンにはさわ
  らないようにしてください。
 ○サウジアラビアなどの中東諸国では、中東呼吸器症候群(MERS)が発生
  しています。
   MERSの患者さんやMERSコロナウイルスの感染源となっているラクダと
  の接触、未殺菌のラクダ乳などを避けるようにしましょう。

 また、東南アジアを中心に麻しん、風しんの感染には注意が必要です。
 特に、近年、わが国の一部地域において流行した麻しんについては、海外
からの輸入症例が端緒となっています。
 こうした地域に渡航される方は、麻しんや風しんを国内に持ち込まないた
めにも、先ずは麻しん・風しんの抗体検査、必要があればワクチン接種をさ
れることをお勧めいたします。他にも、破傷風や狂犬病など、海外で注意す
べき感染症もあります。
 渡航先ではどのような感染症が流行し、どの点に注意しなければならない
のか、ぜひ一度は、渡航前に確認していただきたいものです。

 そして、万が一、帰国時に発熱や咳、下痢、具合が悪いなど、体調に不安
がある場合や、動物に咬まれたり、蚊に刺されたなど、健康上心配なことが
ありましたら、お気軽に厚生労働省の各検疫所の検疫官までご相談ください。
 検疫所で検査が必要な場合などは、即時に対応させていただきます。
 また、帰国した後、自宅等で体調が悪くなり医療機関を受診される時には、
適切な診断治療のためにも、必ず渡航歴をお伝え下さい。

 さて、現在の海外感染症への注意喚起のポスターの見出しは、次のとおり
です。
 ・蚊 意外にキケンあり  (「海外に危険あり」をもじって)
 ・鳥 扱い注意  (「取扱注意」をもじって)
 ・動物とは 離し上手に  (「話し上手」をもじって)
 担当者のセンスが伺えますが、
 ・受診の時は 渡航歴 (もじりなし)
 も加えていただき、海外渡航時には旅のお供として、ぜひ覚えていってい
ただければ幸いです。

 ゴールデンウィーク中とはいえ、現場で感染症対策を担当する医療関係者
や行政関係者の皆さんは、万が一という際には休日返上で取り組んでいただ
くことになります。
 現場の皆さんには大変申し訳ない気持ちでいますが、ヒトの生命を守る仕
事の宿命であります。
 検疫所も大忙し、私たち結核感染症課も万が一に備えて在京待機など、抜
かりなく対応してまいります。
 渡航される皆さんにおかれましては、健康と笑顔が保たれるよう、くれぐ
れも感染症予防には留意をしていただきたいと願うばかりです。

Will make me feel alright!

 ※ゴールデンウィークにおける海外での感染症予防について、詳しくは
ちら
まで。


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蚊 意外にキケンあり。


鳥 扱い注意。


動物とは 離し上手に。

◆「あさコラム」vol.51「地域のチカラ」(2017年4月21日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 去る4月14日、熊本県庁において「熊本地震犠牲者追悼式」が執り行われ
ました。
 御遺族や関係者など多数の方々とともに私も参列し、お祈りを申し上げて
きました。

 昨年、2度にわたる震度7の激震を観測したこの大きな地震で犠牲となられ
た方々は、災害関連死を含め225名にも及びます。
 また、現在も約4万7000名の方々が、仮設住宅などでご不便な暮らしを余
儀なくされています。
 ここに改めまして、この地震により亡くなられた方々と御遺族の皆様にお
悔やみを申し上げますとともに、被災された方々に心からお見舞いを申し上
げます。

 思い起こせば、昨年の発災時、私も被災地に出向き、避難所等における季
節性インフルエンザやノロウイルスなどのアウトブレイクをどのように未然
に防いでいくか、国立感染症研究所の専門家の方々や保健医療関係者の方々
とともに取り組みましたが、おかげさまで感染症の大きな流行は起きません
でした。
 これは被災地で活躍された関係者の方々のご尽力の賜物であったことはも
ちろんですが、加えて、被災された住民の皆様の「心配り」もあったからで
はないかと思います。

 それを裏付けるかのように、追悼式では、蒲島郁夫熊本県知事がご挨拶の
中で、
「トイレを使われた高齢者の手を洗ってあげるため、水が入ったやかんを持
って待っている子どもたち、食事の配膳や物資の仕分けを率先して行う子ど
もたち、多くの避難所で大人に負けない子どもたちの活躍がありました。」
と述べられ、また、ご遺族代表の冨永真由美さんのご挨拶の中で、
「家の前に「うちは水が出ますので、トイレは自由にお使い下さい」と立て
札を立てられた方。「お隣が高齢の方だから水くみに行ったら、必ず分けて
あげるの」とおっしゃる方。皆大変な中で気遣いや手助けを始められ、そ
れを続けてらっしゃる姿が目に留まるようになってきました。」
と、お話になりました。

 感染症対策において、手洗い、トイレ、食品衛生は大変重要な事項ですし、
それらに適切に対応するためにも「水」は不可欠なものです。
 そのため、仮設トイレや給水車などは、被災地支援の必須アイテムなので
すが、初動時には十分に満たせない場合もあり得ます。
 そうした時こそ、地域における助け合い、住民の皆さん同士の助け合いが、
大きな力になります。

 「弱っている方々を皆で支える」、こうした地域の心配りがあったからこ
そ、熊本地震では感染症の流行を抑えられたのかもしれない…。
 追悼式でのご挨拶を拝聴しながら、かような思いが私の心によぎりました。
 まさに「地域のチカラ」です。

 「地域のチカラ」は、感染症対策における様々な場面で試されています。
 直近では、山形県で発生している麻しんへの対応です。
 バリ島で麻しんに感染した男性が端緒になり、自動車教習所及び宿泊施設
に関連して山形県の内外に麻しんの感染が拡がり、山形県の報道発表資料に
よりますと、4月20日現在、本件での感染者数は60例となっています。
 感染者が受診した医療機関の医師や立ち寄った施設の職員の方が感染する
などの二次感染、さらに三次感染も確認されておりますが、現在は山形県の
東置賜郡と酒田市で感染が続いている模様です。
 管轄の保健所や地元医師会・医療機関などの関係者の方々の感染拡大防止
へのご尽力もさることながら、住民の皆様にはぜひ麻しんのことを良く知っ
ていただき、適切な受診やワクチン接種などに取り組んでいただきたいと思
います。

 麻しんによる亜急性硬化性全脳炎(SSPE)を防ぐためにも、「地域のチカ
ラ」をぜひ発揮して欲しいと、心から願うばかりです。


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◆「あさコラム」vol.50「永遠の課題」(2017年4月14日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 最近は感染症関係にまつわる悲しい出来事がいくつか起こり、意気消沈し
ています。

 まず、既に報道でご存じのとおり、この3月末に乳児ボツリヌス症で生後
6ヶ月の赤ちゃんが死亡されました。
 亡くなられた赤ちゃんとご遺族の方には、心からお悔やみ申し上げます。

 この赤ちゃん、生後4カ月ごろから市販のジュースに混ぜながらハチミツ
を摂取していたところ、けいれんや呼吸症状などの神経症状が発症して入
院。
 治療の甲斐なく、乳児ボツリヌス症で荼毘に付されました。
 摂取していたハチミツからは、ボツリヌス菌が検出されました。

 乳児ボツリヌス症は、1歳未満の乳児にみられる疾患です。
 ハチミツにはボツリヌス菌が存在することがあることから、離乳が完了し
て腸内環境が整っていない場合は、ボツリヌス菌が腸内で増えて毒素を出す
ため、ボツリヌス症を引き起こすことがあります。
 ほとんどの場合、適切な治療により治癒しますが、亡くなられることもま
れながらあります。
 (なお、1歳以上の方にとっては、ハチミツはボツリヌス症のリスクの高
い食品ではありません。)

 この件を調べていたところ、「乳児にハチミツを与えない」ことは「育児
の常識」とのご意見があった一方、実はこのことを知らない方々も、若い世
代を中心に少なからずいることがわかりました。
 確かに、ハチミツには「1歳未満の乳児には与えないで下さい」との表示
はありますし、母子健康手帳にも同様の記載があり、保健師さんも現場でご
指導いただいているかと思います。
 ですが、親子が孤立化するケースもある最近の子育て事情を考えますと、
全ての親御さんや赤ちゃんのお世話をする方々にこうした情報を行き渡らせ
るためには、根気強く普及啓発に取り組んでいかなければなりません。

 かくいう私たちも、各種通知や発表、ツイッターやWEBサイトの活用など、
情報提供に努めていますが、こうした状況を踏まえますと、もう一歩の工夫
や努力をしていかなければなりません。
 改めて、普及啓発や注意喚起の難しさを痛感しております。

 もうひとつの出来事は、オウム病。
 研究班の報告によりますと、これまでに2名、妊婦の方がオウム病で死亡
されたことがわかりました。
 亡くなられた妊婦の方とご遺族の方には、心からお悔やみ申し上げます。
 国内で妊婦の方がオウム病で亡くなったケースが初めて判明したことから、
詳細解明については、研究班で調査に取り組んでいただ
いています。

 オウム病はインコやオウム、ハトの糞に含まれるオウム病クラミジアを吸
入することで感染する人獣共通感染症です。
 突然の発熱や呼吸器症状を呈し、重症化すると死亡する場合もありますが、
年間感染者数も多くないことから、感染症の中でも認知度が高くないようで
す。

 オウム病の感染予防は動物由来感染症ハンドブック厚生労働省のWEBサ
イト
でも周知しています。
 ポイントは、トリとの接し方や飼育などに十分注意すること。
 トリに触ったら手洗いをする、トリに口移しでエサを与えないこと、トリ
を飼う時はケージ内をこまめに清掃することなどが重要です。
 また、現時点では不明な点もありますが、医療現場の方々には、妊婦の方
が発熱と呼吸器症状を呈した場合、オウム病もぜひ鑑別疾患のひとつに入れ
ていただければと思います。

 「知識こそ最良のワクチン」という言葉が示すように、感染症予防のため
には、まずは一人ひとりが予防知識を身につけていただき、さらにそれを実
践していただかなければなりません。
 しかし、興味を引き付ける内容で広報や情報提供を継続的に行ったとして
も、世の中全体にはなかなか伝わらないのが実情です。
 普及啓発や注意喚起について、どうしたら実効性の高いものにできるのか
まさに「永遠の課題」。
 何か妙案がないか、思案の真っ只中にいるところです。


<ハチミツを与えるのは1歳を過ぎてから。>

<動物感染症由来ハンドブック>

<動物由来感染症>


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動物由来感染症ハンドブック
動物由来感染症ハンドブック2017

◆「あさコラム」vol.49「メモリアルコンサート」(2017年4月7日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 新年度が始まり、皆様の職場などにも、人事異動や新規採用で加わった方
々がいると思います。
 結核感染症課も同様で、22名の課員が4月1日付けで異動してまいりました。

 仕事上、前任者からの引継ぎが各自きちんとなされているのか、大変気に
なるところです。
 もし、事案の引継ぎが上手くいかなかったり引継ぎがなされていなかった
りすると、業務が滞り、結果次第では事案そのものが風化してしまうという
ことにもなりかねません。
 そうならないために、職員一同、十分に留意をしているところですが、私
たちが絶対に風化させてはいけないことの一つに、薬害エイズ訴訟への対応
があります。

 1996年(平成8年)3月に薬害エイズ訴訟の和解が成立してから21年が経ち、
当時の経緯や状況を覚えている方々も年々少なくなってきています。
 私も先月、訴訟原告団の皆様との協議や薬害エイズ裁判和解21周年記念集
会に出席いたしましたが、当時の状況を少なからず知る者としては、反省と
教訓を継承し、広く語り継いでいかなければならないと、強く感じておりま
す。
 抗HIV薬の開発等、医薬品や医療技術の進歩により、HIVの治療は進歩・向
上したとはいえ、恒久対策としての救済医療の徹底と推進、長期療養に対す
る取り組み、偏見・差別の解消など、対応しなければならない課題は未だあ
ります。

 そうした中、今年も「はばたきメモリアルコンサート」が開催されます。
 このコンサートは、ある薬害エイズ被害者の方と音楽家の方の出会いをき
っかけに、多くの音楽家の方から共感の輪が広がり始まったもので、今回で
13回目を迎えます。
 主催は社会福祉法人はばたき福祉事業団で、厚生労働省も後援しておりま
す。

 第13回のはばたきメモリアルコンサートは、来る4月21日(金)の午後7時
から、会場は王子ホール(東京都中央区銀座4-7-5)にて、開催されます。
 このコンサート、毎回、多彩な出演者の方々による演奏と心に浸みる詩の
朗読など、趣向を凝らした内容となっています。
 今回はチェロとピアノの演奏がメインとなるようですが、トランペット独
奏やヴァイオリン独奏も予定されています。
 私も例年、お伺いしていますが、特に、最後の即興演奏は、即興とは思え
ないほど驚くほど完成度の高い素敵な演奏をご披露していただいており、い
つも感銘を受けているところです。

 このコンサートを通じて、HIV・エイズの現状について確認される方もおら
れるとのこと。
 ぜひ、1人でも多くの方にコンサートにお越しいただき、HIV・エイズにつ
いて関心を持っていただけたら・・・と、思います。

 現在、厚生科学審議会感染症部会では「後天性免疫不全症候群に関する特
定感染症予防指針」の改正作業に取り組んでおり、改正に向けて多くのご意
見やご要望をいただいているところです。
 感染の理由を問わずHIV感染者の皆様が安心して治療が受けられ、偏見・
差別をなくし穏やかに暮らすことができる社会を作るためにも、予防指針の
改正や医療体制など個別施策の充実等を図りながら、課題解決に向けて汗を
かいてまいります。

 どうぞよろしくお願いいたします。

 ※はばたきメモリアルコンサートのお問い合わせは、社会福祉法人はば
  たき福祉事業団まで。
 http://www.habatakifukushi.jp/information/concert/12-1.html?2_s


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第13回はばたきメモリアルコンサート 開催のお知らせ

◆「あさコラム」vol.48「My Dear Fellow」(2017年3月31日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 山形県の自動車教習所に通っていた10〜20代の方々を中心に、麻疹の感染
が発生。
 2017年3月31日現在で29名の本件に関係した感染が確認されています。
 この教習所には全国各地から合宿参加者が集まっていたこともあり、発症
者は山形県外にも拡がっている状況です。
 麻疹は感染力は非常に強いため、今後、免疫力のない方々への感染の拡が
りが心配です。
 感染拡大を防ぐためにも注意喚起を行うとともに、ワクチンの接種を勧め
ていきます。

 さて、3月は卒業・別れの季節。
 各地で卒業式や修了式が開催されていますが、先日、国立感染症研究所
(感染研)において、実地疫学専門家養成コース(Field Epidemiology  
Training Program Japan (FETP-J))第17期生の修了式が開催されました。
 私もお祝いの言葉を贈るため、修了式に出席してまいりました。

 今回、FETP-Jを修了されたのは、6名の研修生。
 この2年間、麻疹の流行や熊本地震の支援など、現地での感染症危機管理
事例(アウトブレイク)の情報収集、リスク評価、実地疫学調査などをはじ
め、公衆衛生の現場で必要とされる疫学・統計学及び関連法規に関する基礎
知識などについて、学ばれていました。
 この研修中、結核感染症課で数ヶ月間、一緒に過ごしてくれた研修生もお
り、私にとっても思い出深いメンバーです。
 今までのFETP-Jの卒業生同様、出身母体である自治体や病院等に戻られても、
この2年間で身につけたスキルを生かして、今後もますます頑張って欲しい
ものです。
 また、研修生の皆さんを親身に指導していただいた感染研の先生方やスタ
ッフの方々にも、御礼を申し上げたいと思います。

 卒業といえば、人気アイドルグループ・ももいろクローバーZ(ももクロ)
のメンバーである有安杏果さんが、このたび日本大学芸術学部写真学科を卒
業されたとのこと。
 大学生だったことは今まで公表されていなかったのですが、卒業制作の作
品が写真学科奨励賞を受賞されたということもあり、報道で大きく取り上げ
られました。
 なぜ、有安さんをあさコラムで…というと、実は2014年(平成26年)の大
晦日、ももクロがNHK紅白歌合戦に出場した際、有安さんはインフルエンザに
罹患したため出場を辞退したことがあったからです。

 本番前々日の12月29日の夜から発熱し、インフルエンザと診断され、自宅
で療養していた有安さん。
 抗インフルエンザ薬で大晦日には既に熱が下がっていたそうですが、自分
不在のももクロが紅白歌合戦でどのように歌うか、TV中継を見ていました。
 曲名は「My Dear Fellow」。ニューヨーク・ヤンキースの田中将大投手の
当時の入場曲です。
 ももクロの残り4名のメンバーの衣装には、寄せ書きが入った有安さんの
衣装があちこちに移されていて、会場全体がペンライトで有安さんのイメー
ジカラーの緑一色に。
 そして、メンバーの佐々木彩夏さんが、有安さんの大きなお面を出して盛
り上げた姿を見て、有安さんは感激のあまり涙が止まらなかったとのこと。

 そうなのです!
 有安さんのように、インフルエンザや他の感染症にかかった時は、無理を
しないでしっかり療養しましょう。
 仕事や用務は、必ず仲間が助けてくれます。
 他人へ感染させないためにも、仲間を信じてじっくり休むこと。
 感染症に罹患した時こそ、休む勇気が大切です。

 結核感染症課も、この4月1日付で17名が異動予定です。
 これまで、私が不在の時でも感染症対策のために尽くしてくれた仲間たる
課員の皆には、何と申し上げてよいのか感謝の言葉も見つかりません。
 色々とたくさん、助けてくれました。
 この場を借りて、心から御礼を申し上げます。

 また、自治体で感染症対策に取り組んでいた皆様や病院等で感染症治療の
活躍されていた皆様の中で、今回、卒業・異動される皆様。
 これまでのご尽力に、心から御礼を申し上げます。
 新しいステージでのご活躍を祈念しています。

 ちなみに、私は異動いたしません。
 卒業はまだ先の様みたいです。
 4月からも、あさコラムをどうぞよろしくお願いいたします。


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 (ももいろクローバーZの写真提供:スターダストプロモーション)

FETP-Jの卒業生
実地疫学専門家養成コース (FETP-J)第17期生の修了式

ももいろクローバーZ
ももいろクローバーZ 有安さんのように、感染症にかかった時は、無理をしないでしっかり療養を。

◆「あさコラム」vol.47「感染症の世界」(2017年3月24日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 感染症週報(IDWR)を見ますと、相変わらず麻疹と梅毒の感染が続いていま
す。
 頭が痛いところですが、「暑さ寒さも彼岸まで」。
 お彼岸を境に、インフルエンザ等の冬型の感染症から、蚊媒介感染症等の
夏型の感染症に対策の重点が移ってまいりますので、こちらの方もどうぞよ
ろしくお願いいたします。

 さて、春分の日に伴う3連休中の3月19日、岐阜県各務原市にある「内藤記
念くすり博物館」にお伺いいたしました。
 この博物館で開催されている平成28年度企画展「感染症の世界〜顧みられ
ない熱帯病(NTDs)を中心として」が3月31日で終了することもあり、以前
から「この企画展を見に行かねば…」と思っていた気持ちが待ったなしで燃
え上がり、日帰りで行ってまいりました。
 東名高速道路の大渋滞が予測されたため、自動車で行くことは断念し、JR
東海道新幹線と名鉄(名古屋鉄道)を乗り継ぎながらの片道5時間以上の行
程。
 道中、途中下車をしてNHK大河ドラマ「おんな城主直虎」の企画を見学し
たり、美味しいきしめんを食べたりしながら、気ままな「ぶらり一人旅」と
なりました。

 内藤記念くすり博物館は、医薬品メーカーのエーザイ(株)さんの創業
者・内藤豊次氏により、昭和46(1971)年6月に開設された企業博物館です。
 展示館、図書館を備えていて、施設内には温室、薬草園、薬木園も設置
されています。
 館内の常設展では、医薬に関する歴史や文化に関わる資料が満載で、その
充実ぶりに初めてお伺いした私も大変驚きました。

 今回の企画展は「顧みられない熱帯病(NTDs)」を中心に、各種感染症の
特徴や治療法、対策の取り組みなどをパネルや展示物等で紹介するといった
もの。
 企画展の会場に入ると、まずは、天然痘、ポリオ、ペスト、コレラ、結核、
赤痢など、馴染み深い感染症についての解説パネルや昔の治療ガイドライン
(コレラ治療ガイドラインの「虎狼痢治準」など)、医薬品の広告や病除け
の玩具など、貴重な資料の数々が展示されていました。
 また、「顧みられない熱帯病(NTDs)」のコーナーでは、シャーガス病、
リューシュマニア症、アフリカ睡眠病、包虫症、ギニア虫感染症、リンパ系
フィラリア症、住血吸虫、デング熱、狂犬病などに関して、これでもかとい
うほど、たくさんの解説パネルを使って紹介されていました。

 もちろん、くすり博物館ならではの昔の医薬品に関する原料(インドサイ
の角など)や道具(薬箪笥や印籠など)、懐かしのくすりの広告などの展示
はもとより、防虫成分を塗り込んだ蚊帳や感染症をテーマにした世界各地の
切手なども展示されていました。
 特に、江戸時代から明治時代の感染症に関する錦絵の充実ぶりには、歴史
物が好きな私も大興奮。
 様々なコレラの錦絵は、想像以上に圧巻でした。

 企画展の締めには、WHO(世界保健機関)、製薬企業、MSF(国境なき医師
団)、セービンワクチン研究所などによる、新興・再興感染症の撲滅のため
の取り組みが紹介。
 HIV/エイズ、結核、マラリアの三大感染症の対策をはじめとした世界にお
ける感染症対策の取り組みや医薬品の研究開発状況などが、わかりやすい一
覧表になって掲示されていました。

 常設展、企画展の双方合わせて、これほど様々なたくさんの展示物を見学
できて、入場は無料。
 いやはやビックリ!
 なんと素晴らしい博物館でしょう!
 館内に掲示されていた過去の新聞記事によりますと、企業博物館としては
全国5位にランキングされる人気ぶりだとか。

 唯一の難点は、交通の便。
 駐車場完備なので自動車で行くなら問題ないのですが、公共交通機関を使
う場合、最寄り駅からは限られた本数のバスで行くか、木曽川に向かって歩
くしかありません。
 それでも、電車やバスにゆられながら、見学に訪れる価値は十二分にあり
ます。

 おかげさまで、私も充実した休日を過ごし、リフレッシュすることができ
ました。

 ちなみに、この企画展を監修されたのは、元WHO事務局長補で慶應義塾大
学特任教授の中谷比呂樹先生。
 厚生労働省(しかも、結核感染症課長)の大先輩です。
 会場でお名前を拝見して、これまたビックリ!
 そりゃあ、充実した企画展となる訳ですね。
 改めて「最敬礼」でございます。


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内藤記念くすり博物前にて


企画展「感染症の世界 顧みられ ない熱帯病(NTDs)を中心として」


感染症をテーマにした数々の展示

◆「あさコラム」vol.46「レジリエンス」(2017年3月17日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 東日本大震災から6年が経ちました。
 ここに改めて、震災で亡くなられた方々に追悼の意を表し、心よりお悔や
みを申し上げます。
 そして、被害に遭われた多くの皆様に、謹んでお見舞いを申し上げます。

 当時、内閣官房に出向していた私ですが、震災直後から厚生労働省に戻り、
厚生労働省災害対策本部や福島県庁内に移転したオフサイトセンターで、被
災者の方々の支援に努めてまいりました。
 様々な健康や医療、介護の課題に直面する度に、関係者や専門家等と知恵
を出しながら、時には福島の現場(南相馬市、広野町、川内村など)に赴き、
災害対策に取り組んでまいりました。
 その時の経験や教訓などを災害時における感染症対策に活かせるようにと
肝に銘じ、昨年の熊本地震の際にも、避難所における感染症対策に役立てて
きました。

 そうした中、「レジリエンス」という言葉に、触れあう機会が多くなりま
した。
 レジリエンス(resilience)とは、
 「弾力。復元力。また、病気などからの回復力。強靱さ。」(小学館大辞林)
 という意味ですが、この言葉が防災ワードとして「強靱化」と位置づけられ
 「国土強靱化(ナショナル・レジリエンス)」として、政府で取り組んで
いくこととされています。

 内閣官房等によると、「国土強靱化(ナショナル・レジリエンス)」とは
国家のリスクマネジメントであり、今後起こりえる大規模災害などに対して、
 ・人命を守り、
 ・国家及び社会の重要な機能が致命的な障害を受けず、
 ・国民の財産及び公共施設の被害を最小化し、
 ・迅速な復旧・復興を可能とする
 強くてしなやかな国をつくることであり、そのためにはレジリエンス社会
を構築することだそうです。

 この国土強靱化において重点的に取り組むべきプログラムの中に「救助、
救急、医療活動等」があり、その課題の一つに「災害時における感染症対策」
があります。
 レジリエンスの観点から、感染症対策の基本的な考え方は、
 ・平時から感染症の発生やまん延防止に努め、予防接種事業やサーベイラ
ンス事業などに取り組み、
 ・震災等の災害時には、
  ・手洗いなど避難所等での衛生管理の徹底、
  ・感染者の早期発見・早期治療、
  ・感染者の個室管理、
  ・仮設トイレの管理と充実
 などを実施する。
 この際には、市民向けの感染対策マニュアルや医療従事者に向けた指針の
作成や周知を行うとともに、国立感染症研究所や学会等の専門家による現地
支援・現地指導等が求められているところです。

 もちろん災害時には、水道や電気等のライフラインの途絶、避難所におけ
る避難生活の長期化、環境衛生の悪化により、蚊やダニなどの衛生害虫、ネ
ズミなどの媒介動物の発生など、感染症が発生しやすい状況であることを踏
まえて、対応をしていかなければなりません。
 例えば、昨年の熊本地震で、私が現地で把握した限りでは、
 ・水の確保が困難な場合は、流水による手洗いが容易ではないこと
 ・プッシュ型支援で仮設トイレを各地に設置したことでトイレ不足は解消
  されたが、設置場所に偏りがある、清掃等が不十分など、被災地の方々
  が自ら解決していかないとならない課題もあること
 ・土足禁止エリアの考え方やペットの取り扱いなど、避難所毎のルールに
  違いが生じていたこと
 など、具体的な課題があったところです。
 こうした課題を解決し、国土強靱化を進めるためには、平時から感染症対
策を重要な柱として明確に位置づけ、レジリエンスを意識した取り組みを進
めることが重要です。

 とはいえ、「言うは易く行うは難し」。
 具体的課題の解決に向けては悩ましいことばかりですが、実はレジリエン
スには「精神的回復力」、「逆境力」という心理学用語でもあります。
 ストレスが溜まることも多いですが、心折れることなく感情をコントロー
ルしながら、ポジティブに仕事に取り組んでいくためにも、3.11の想いを胸
に、私もレジリエンス(逆境力)を養っていきたいと思います。
 どうぞよろしくお願いいたします。


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東日本大震災時に福島の現場でつけていた「がんばろう、ふくしま!」の缶バッチ。 レジリエンスの象徴として、現在も身につけ、励みにしています。

◆「あさコラム」vol.45「きみが大好きだから」(2017年3月10日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 今週もコラムの感想メールをいただいております。
 誠にありがとうございます。
 ご指摘の点も踏まえながら、今後も精進してまいります。
 どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、vol.41「今日は何の日、2月4日」で、2月4日は風疹の日との話題を
取り上げましたが、このたび、風しんの予防啓発で、歌手のクリス・ハート
さんとコラボレーションすることが決まりました。
 今回の啓発テーマは、MRワクチン(麻しんと風しんのワクチン)の2回目の
ワクチン接種(小学校就学前の1年間)を忘れないようにお願いをするもので、
ちょうど3月1日から7日までの「子ども予防接種週間(主催:日本医師会、日
本小児科医会、厚生労働省)」で、入学前の保護者の方に予防接種への関心
を高めてもらうことを引き継いだコラボレーションとなっています。

 3月9日に発表後、早速、ネットの反応等をみておりますが、評判も上々で嬉
しく思っています。
 一方、私が確認した皆様の主な疑問点に対しまして、この場をお借りして
お答えしたいと思います。

 問:「なぜ、クリスさんとコラボレーションすることになったの?」
 答:
 2013年(平成25年)、CDデビューを果たし、NHK紅白歌合戦にも出場した
クリスさんですが、
 ・2016年(平成28年)「47都道府県ツアー〜my hometown〜」のツアー会
  場で、難病であるALS(筋萎縮性側索硬化症)支援のための募金活動を
  実施
 ・震災遺児のための奨学金チャリティーコンサートに出演
 ・肝臓移植を受けた子どもと家族の会でスペシャルゲストとして参加
 など、積極的に社会貢献活動に携わっていることに加え、
 ・1歳児のお父様であり、お子様自身が風しん予防接種の時期であるとい
  うこと
そして、
 ・現在、全国ツアー中で、予防啓発にご協力いただけること
 ・クリスさんのファン層は若者から高齢者の方までと幅広く、お父さんお
  母さん世代の方やおじいちゃんおばあちゃん世代の方にも好感度が高い
  ということもあり、今回、コラボレーションをお願いすることにいたしました。

 問:「なぜ、今回、「2回目の風しんワクチンを忘れないで」というメッ
セージにしたの?」
 答:
 風しんは妊婦の方が感染すると、生まれた赤ちゃんが先天性風しん症候群
となり、心臓や聴力にハンディを負うことがあります。
 これを防ぐためには、社会全体で風しんに対する免疫を持つことが重要で、
お子様には2回のMRワクチンによる定期接種、大人の方、特に妊娠を希望する
カップルや風しん流行国に渡航される方については、抗体検査を受けていた
だき、陰性ならワクチン接種をすることを勧めています。
 平成27年度の風しんワクチンの定期接種率は、1期(初回、1歳)が96.2%
に対し、2期(2回目、小学校就学前の1年間)が92.9%です。
 風しんの流行を抑えるため、それぞれの接種率の目標は95%となっている
ことから、2期の接種率をあと一歩、高めていかなければなりません。
 もちろん、平成26年度から補助事業を通じて推進している成人に対する抗
体検査なども重要なのですが、今回の風しん予防の啓発は2期目の定期接種に
フォーカスをし、「2回目の風しんワクチンを忘れないで」というメッセージ
を打ち出して、ポスター等の啓発ツールを作成することといたしました。

 問:「ワクチン接種は1回でいいんじゃないの?」
 答:
 このワクチン接種は、1回接種の場合では、約5%の方に十分な免疫が付か
ないと言われています。
 より確実に免疫力を付けて頂き、感染を防ぐためには、2回の定期接種を
行うこととしているのです。

 問:「MRワクチンの供給は大丈夫なの?」
 答:
 現在、MRワクチンは継続して一定の出荷がなされ、全体としては不足する
状況ではありません。
 ただし、一部の地域ではワクチンの偏在等に由来する不足感が生じている
とのことですので、都道府県等と連携の上、個別に丁寧に情報提供を行うな
ど、その解消に努めています。

 さて、発表の際には、オリジナルソング「あなたへ」の弾き語りをクリス
さんに披露していただきました。
 生まれてきた新しい生命に対する愛情と優しさが詰まったこの歌は、クリ
スさんの奥様が妊娠中に制作されたものだとか。
 ハートフルで抜群の歌唱力のクリスさんの歌声は、集まって頂いた報道関
係の方々の心に深く響いていたと思います。
 「パパとして忘れずに子どもにワクチンを受けさせたい」と、訴えてくだ
さったクリスさん。
 発表後、私もクリスさんとガッチリ握手をし、風しん予防を推進していく
決意を新たにしたところです。

 「きみが大好きだから、ワクチン接種で風しんから守りたい。」
 今回の啓発ポスターリーフレットは、全国の自治体や日本医師会等の
関係団体に配布するほか、クリスさんの全国ツアーでも掲示される予定です。
 また、厚生労働省のWEBサイトからもダウンロードできます。
 応援してくださったクリスさんと関係者の皆様に感謝し、今後とも風しん
予防に取り組んで参ります。
 ご支援とご協力、どうぞよろしくお願いいたします。


厚生労働省WEBサイト
 <風しんについて
 <ポスタPDF
 <リーフレットPDF


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風しん1
クリスさん・MCさんと

風しん2
携わってくれた職員たちと

ポスター
A2ポスター

リーフレット
A4リーフレット

◆「あさコラム」vol.44「八重山熱」(2017年3月3日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 コラムの感想メールをいただいております。誠にありがとうございます。
 直接お返事はお出しはしてませんが、連載の励みになります。
 これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、私は平成29年(2017年)3月3日(金)、4日(土) に開催される「第4
回日経アジア感染症会議」の討議者として参加するため、このコラム発信
日には沖縄県におります。
 日経アジア感染症会議とは、グローバル経済の発展にともない、感染症リ
スクへの対応は一国にとどまらず、国際社会全体にとって看過できない喫緊
の課題となっていることから、国内外より感染症対策に関連する行政機関・
団体・学会など、産官学すべてのステークホルダーが一堂に会し、具体的か
つ実効性のあるアクションプランを提案するという会議です。
 日本経済新聞社が主催する年に一度の会議で、厚生労働省も後援しており
ます。

 今回の会議の目玉の1つは、昨年発足した「マラリアコンソーシアム」。
 近年、わが国で確認されるマラリア感染者は、外国で感染したいわゆる輸
入感染例ばかりですが、日本発の診断・治療・予防技術を、官民パートナー
シップ(public–private partnership (PPP))でグローバルに提供できるよ
う、このコンソーシアムが土台となり、検討に取り組んでいるところです。
 世界規模で課題となっている感染症のひとつのマラリアですが、今回の会
議で大きく取り上げることについては、個人的に感慨深いものがあります。
 というのも、会場となる沖縄県には、かつてマラリアが生息した地域があ
るからです。

 沖縄本島の南400km、石垣島や西表島などの八重山群島には、古くからマ
ラリアが生息しており、「八重山熱」という風土病として恐れられていまし
た。
 明治27年(1894年)、帝国大学医科大学の三浦守治教授は、明治政府の命
をうけて、三角恂助手らとともに八重山の風土病調査を行い、その結果が翌
年の明治28年(1895年)に「八重山群島風土病研究調査報告」としてとりま
とめられました。
 この調査の結果、この風土病がマラリアであることが判明、その後、住民
に治療薬キニーネが配布されるなどの対策が取られましたが、契機となった
のは大正10年(1921年)。
 「マラリア予防班設置規則」に基づき、マラリア予防班事務所が八重山島
庁内に設置され、翌年から、有病地域での定期採血や治療の推進、蚊帳の使
用や除草などの防あつ作業が始まりました。

 こうして、少しずつマラリアの感染が抑えられてきましたが、転機になっ
たのは第二次世界大戦時の昭和20年(1945年)。
 当時の軍部の命令により、マラリアが蔓延していた山間部や西表島等へ住
民の疎開が強制的に行なわれた結果、人口の半数を上回る17,000人がマラリ
アに罹患、およそ3,600人の住民が生命を落としました。
 沖縄本島周辺で非常に激しい戦闘が行われましたが、当時の八重山では島
民の皆さんの尊い生命を数多く奪ったのは、実は戦闘ではなくマラリアだっ
たのです。
 これは「戦争マラリア」と称される、悲劇的なアウトブレイクでした。

 終戦後、進駐・統治した米軍政府の支援のもと「八重山民政府衛生部」が
設置され、戦前から地元で活躍する吉野高善医師や大浜信賢医師、防疫監吏
の黒島直規氏らが衛生部に参画。
 アテプリンという治療薬によるマラリア治療の推進や蚊の分布調査などに
取り組み、マラリア根絶に貢献されました。
 このマラリア撲滅活動は八重山群島で確実に奏効し、昭和36年(1961年)
の西表島での感染を最後に終息しました。
 ちなみに、大浜医師はマラリアを媒介する新種の蚊を発見、新種蚊は「オ
オハマハマダラカ」と命名されました。

 沖縄の地において、アジアにおけるマラリア対策について官民共同の貢献
を考える場に臨むためにも、わが国のマラリア対策の歴史を学んでおきたい
と思い、今回、八重山群島を中心に調べてみました。
 三浦教授や高野医師、大浜医師、黒島氏らが取り組んだ堅実な対策とマラ
リア撲滅への想いを、21世紀の今、日本発アジアで展開できるように、「第
4回日経アジア感染症会議」では熱く議論をしてきます。

 ゆたさるぐとぅ うにげーさびら。
 (※琉球方言で「よろしくお願いいたします」)

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竹富町だより
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◆「あさコラム」vol.43「聖地巡礼」(2017年2月24日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 季節性インフルエンザの流行が落ち着いてきたわが国ですが、お隣の中国
の鳥インフルエンザA(H7N9)の流行が気になります。
 中国の国家衛生・計画生育委員会が発表した2017年(平成29年)1月の鳥
インフルエンザA(H7N9)のヒト感染例は192例(うち死亡79例)。
 現時点では、ヒトからヒトへの持続的な感染は確認されていませんが、発
生地域に渡航・滞在する場合には手洗いを励行し、生きた鳥を扱う市場や家
禽飼育場への立入を避けていただくなどの注意が必要です。
 私たちも鳥インフルエンザA(H7N9)に関する情報収集に努めていきたい
と思います。

 さて、昨年2016年(平成28年)、巷の話題となった日本映画ベスト3とい
えば、
 ・「シン・ゴジラ」(庵野秀明総監督)
 ・「この世界の片隅に」(片渕須直監督)
 ・「君の名は。」(新海誠監督)
 ではないでしょうか。
 (※異論がある方もいるとは思いますが…)

 私も劇場で鑑賞しましたが、それぞれの作品自体の素晴らしさに加え、
これら3作品に共通することは、舞台となった場所や風景の細やかな描写ぶ
りです。
 その描写が多くの観客の皆さんの心に刺さったこともあり、大ヒットにつ
ながったと考えています。
 「シン・ゴジラ」の大田区・蒲田東口商店街や「この世界の片隅に」の呉
市・小春橋、「君の名は。」の新宿区・四谷の須賀神社など、作品の関連場
所への訪問は「聖地巡礼」といわれ、週末になると多くの人々がこれら
の場所に訪れています。
 (※ちなみに、ゴジラ上陸の時は、私の家も避難対象でした)

 さて、この「聖地巡礼」とは、実在の町や風景を取り込んだ大人向けアニ
メのファンがその地を訪れ、作品に想いを馳せるというムーブメント。
 古くは1990年代から聖地巡礼の原点があったようですが、2000年代以降に、
「らき☆すた」等、緻密な背景描写が話題となったアニメがきっかけとなり、
この動きが活発化しました。
 巡礼効果で町おこしを狙った自治体が、アニメや映画・ドラマとタイアッ
プして町を取り上げてもらった結果、観光スポットとして集客力がアップし
たとの話もあります。
 ネット情報や「聖地巡礼マップ」という便利なWebサービスも充実し、昨
年には「聖地巡礼」がユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされるなど、
広く世の中に認知されるようになりました。
 その一方、騒音や早朝深夜の訪問、住宅地への立ち入りなど、聖地巡礼に
関わる苦情も増えており、「聖地巡礼マップ」のサイト上や制作会社等から
注意喚起を行っている状況です。

 そもそも、聖地巡礼とは「信者が聖地を参拝して巡り歩くこと(三省堂・
大辞林)」で、宗教上の行為。
 特に、イスラム教のハッジ(大巡礼)は有名で、毎年イスラム暦の12月
(概ね9月〜10月)に、世界中から数百万人のイスラム教信者がサウジアラ
ビアの聖地メッカを目指します。

 こちらの聖地巡礼について心配なことは、何といっても感染症。
 毎年、この時期に感染症が流行するリスクが高くなるとして、外務省から
もサウジアラビアへの渡航者に対して感染症予防を促しています。
 近年では、中東呼吸器症候群(MERS)、髄膜炎菌性髄膜炎、インフルエン
ザなどが注目されていますが、様々の国から多数の人々が集まるのですから、
その他の感染も含めて注意が必要です。

 具体的には、渡航前にはトラベルクリニック等の医療機関にご相談いただ
き、髄膜炎菌性髄膜炎やインフルエンザなどのワクチン接種を実施したり、
渡航先ではラクダに接触しない、未殺菌の乳や生肉などや不衛生な状況で調
理された食品を摂取しないなど、感染症予防を意識した行動を取って頂ける
ようにお願いしています。
 また、早期診断・早期治療のために、帰国時に発熱などの症状がある場合
には検疫所に申し出ていただくとともに、帰国後に症状が起こり医療機関を
受診した場合には、海外に渡航していたことを必ずお伝えいただくよう、検
疫所や旅行会社などを通じて啓発普及にも取り組んでいます。

 映画にしても、宗教にしても、「聖地巡礼」の際には事前によく調べ、節
度のある行動を心がけたいもの。
 皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

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Webサービス「聖地巡礼マップ」

◆「あさコラム」vol.42「チョコレート」(2017年2月17日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 ジカウイルス感染症(ジカ熱)が感染症法の「4類感染症」に指定されて
から、1年が経ちました。
 昨年は夏の蚊対策強化月間などが功を奏したのか、国内定着事例は確認さ
れませんでした。
 しかし、海外からの輸入事例は確認されていますので、今年も蚊の駆除を
はじめとした蚊媒介感染症対策について、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、去る2月14日は「バンレンタインデー」。
 女性が男性に告白できる日として定着して久しいですが、皆さんも職場や
学校、家庭などで、チョコレートのプレゼントが行き来したのではないでし
ょうか?

 調べてみますと、バレンタインデーはキリスト教司祭の「バレンタイン」
が由来となっています。
 戦争に出陣する兵士となるため、若者の結婚が禁止だった3世紀のローマ。
 この状況を憂いたバレンタイン司祭が、愛を貫く若者たちを密かに結婚さ
せていたため、ローマ皇帝から迫害を受けて処刑されたのが西暦269年(270
年説もあります)2月14日です。
 その200年後のこの日、恋人達のために生命を落としたバレンタインを守
護聖人として祀り、祈りを捧げたのがバレンタインデーの始まりだそうです。

 西欧では恋人達がプレゼントやカードを贈り合うバレンタインデーですが、
記録によりますと1936年(昭和11年)、神戸にあるモロゾフ製菓さんが初め
てわが国にこの日を紹介したとのこと。
 1950年代に入り、「女性から愛する男性へチョコレートを贈る日」 とし
て、製菓会社さんや百貨店などが行ったキャンペーンから端を発し、定着し
ていきました。
 1970年代以降、「本命チョコ」や「義理チョコ」などの言葉が生まれるな
ど、激しいチョコレート商戦が繰り広げられる中、わが国ならではイベント
として拡大し、今日に至っています。
 なんと、わが国のチョコレートの年間消費量の4分の1が、この日に消費さ
れているとか。

 さて、このチョコレート、実はインフルエンザウイルスへの予防効果があ
るらしいのです。
 「えぇ?ホント?」とつい疑いたくなりますが、日本チョコレート・ココ
ア協会などによりますと、チョコレートやココアに含まれるココアポリフェ
ノールの効果には、血圧低下や動脈硬化予防といった生活習慣病の予防効果、
脳機能の改善効果、アレルギーの改善、便通改善などの他に、インフルエン
ザウイルスの感染抑制効果があるようです。
 ココア熱水抽出物の抗インフルエンザ効果についての研究レポートを読む
と、試験管での実験や動物実験などではその感染抑制効果が確認されていま
すが、ココア飲料を用いた人への臨床実験では明らかな有意差はありません
でした。しかし、免疫細胞であるナチュラルキラー細胞の活性については、
ココア摂取群は比較対照群に対して、上昇程度が有意に高いことが分かった
とのことです。

 もちろん、チョコレートやココアは医薬品ではありませんので、科学的根
拠を持ってインフルエンザの予防や治療ができるものではありません。
 とはいえ、こうした食の研究結果の積み重ねによっては、健康に役立つ機
能性食品として認知されていく可能性もあります。

 何はともあれ、国生さゆりさんの「バレンタイン・キッス」やPerfumeの
「チョコレイト・ディスコ」などの定番曲のとおり、いくつになってもドキ
ドキ・ワクワクのバレンタインデー。
 甘い甘いチョコレート(※結核感染症課女性陣からの嬉しい義理チョコ)
を美味しくいただきながら、
 「ワクチンや医薬品ではなく、食品であるチョコレートでちょこっとした
予防ができるものだろうか?」
 と、近未来のインフルエンザ対策のあり方を考えている今日この頃です。

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バレンタイン

◆「あさコラム」vol.41「世のため人のため」(2017年2月10日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 インフルエンザ、まだ流行を続けています。
 今季はインフルエンザA型(H3N2)が主流ですが、これからインフルエンザ
B型が増えてきそうです。
 身近にできる予防として、手洗いの徹底、マスクの着用、咳エチケットの
励行をお願いいたします。

 さて、今年も2月から宮崎、沖縄、米国アリゾナで、プロ野球の春季キャ
ンプが開催されています。
 プロ野球好きの皆さんは、選手やチームの動向や仕上がりぶりなど、キャ
ンプ情報を毎日楽しみにしているのではないでしょうか。
 応援しているチームのキャンプに日本各地から赴き、練習を見学しながら、
選手からサインをもらったり、一緒に写真を撮ったり、夜はキャンプ地の美
味しいモノを食べたりと、現地で春季キャンプを楽しむファンの数が、昔と
比べてずいぶん増えたなぁと思います。
 各球団もキャンプツアーを組んだり、スマートフォン用のキャンプアプリ
を提供するなど、熱心にキャンプも盛り上げようとしていることもプラスに
なっていると思います。
 そのおかげもあって、キャンプ地の経済効果への波及も半端ではない数字
になっているようです。

 さて、私が注目している新人選手は、福岡ソフトバンクホークスに入団し
た古谷優人投手、背番号49。
 北海道幕別町の江陵高校出身、惜しくも甲子園出場とはなりませんでした
が、北北海道大会では球速154kmをマークした快速左腕です。
 高卒ルーキーでドラフト2位という上位指名が示すように、球団からも大い
に期待されている逸材です。

 野球の実力もさることながら、この若干18歳の若者は、「世のため人のため、
そしてチームのために全力で頑張る」と、プロ野球選手としてやりたいことに
「社会貢献活動」を掲げています。
 「有名になったら障がい者の人たちを球場に招待したい」と熱く語る決意
の裏には、妹さんの存在があるからだそうです。

 古谷投手の小学3年の妹さんは、先天性サイトメガロウイルス感染症によ
る小児脳梗塞のため左半身のまひ、言語障がいが残っているとのこと。
 サイトメガロウイルスは健康であれば感染しても問題ないのですが、妊婦
さんが初めて感染した場合、胎児への感染が危ぶまれます。
 いわゆるTORCH症候群を引き起こすウイルスですが、この感染症を防ぐため
のワクチンはなく、抗体検査を妊娠を希望する前に行うなどで対応するしか
ありません。
 妊婦さんがサイトメガロウイルスに感染しても、必ず胎児に先天性感染を
起こすわけではありませんが、毎年およそ1,000人ほどの先天性感染が確認さ
れています。

 古谷投手は中学生の時まで、妹さんとどう接したら良いのか戸惑っていた
とのことですが、彼が変わったのは軟式野球部の活動が終わった中学3年生の
夏に妹さんのリハビリに付き添ってから。
 麻痺している左手で積み木を一生懸命に繰り返す妹さんの姿を見て、そう
いう人を助けたい、何か役に立つことをしていきたいと思ったそうです。
 それでもヤンチャな性格は変わらず、野球でテングになっていた古谷投手を
心身ともに更に成長させたのは、江陵高校野球部の谷本献悟監督の熱血指導。
 「監督から鍛えられたのは人間力。人の痛みがわかる選手になれた。」と
語る古谷投手が投げる試合には、いつも妹さんが応援に駆け付けてくれてい
ました。

 「ここまで来られたのは妹のおかげ。投げるときは福岡へ呼びたい。」
 ホークスの工藤公康監督のような左腕のエースとなるべく、家族の見守る
北の大地からプロ野球界へ飛び込んだ古谷投手。
 古谷投手の今後の活躍を励みに、私たちも「世のため人のため」となるよう、
感染症対策に挑んでいきたいと思います。

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古谷投手
福岡ソフトバンクホークス2017年度新入団選手発表記者会見にて

◆「あさコラム」vol.40「今日は何の日、2月4日」(2017年2月3日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。
 皆様からの感想のメール、誠にありがとうございます。執筆の励みとなっ
ています。

 前回は献血事業における感染症予防のお話を書きましたが、その中で、私
の献血回数(139回)についてのご質問をいただきましたので、その点につい
て補足します。
 学生時代からこまめに献血には取り組んできましたが、社会人になってか
らは、年2回実施されている省内献血(400ml献血)を中心に献血をしていま
した。
 しかし、東日本大震災を契機に、自分ができる身近なボランティアは何か
と考え、月1〜2回、土日や祭日に成分献血に取り組みました。

 また、他者からの血小板輸血を頻繁に行った白血病や再生不良性貧血など
の患者さんには、通常の血小板輸血では拒絶反応を起こすなど効果が乏しく、
HLA(ヒト白血球抗原)型の適合した血小板の輸血が必要となります。
 そのため、協力できる献血者のHLA等をあらかじめ登録し、日本赤十字社
(以下、日赤)の血液センターから要請を受けた際、日時を合わせて血小板
献血をしてHLAが適合した患者さんの治療に役立ててもらう「HLA適合血小板
献血制度」があり、こちらにも協力をしています。

 非血縁者間でHLA型の適合する確率は数百人から数万人に1人ですから、登
録後にこの要請を日赤から受けた時には、「自分とHLAが一致する見知らぬヒ
トがいるんだなあぁ」と素直に驚きました。
 大ヒット映画の「君の名は。」みたいですね。
 輸血される患者さんの病状に合わせて日程調整をし、(業務に支障がないよ
うに休暇取得して)指定された献血ルームで血小板献血をしましたが、大変貴
重な経験となりました。

 このように、成分献血で献血回数を増やしましたが、「私の血液がお役に
立てるなら」と、続けてきた結果だと思っています。

 さて、2月4日は暦の上では立春ですが、他にも「世界対がんデー
(World Cancer Day)」や「ビートルズの日」とのこと。
 これらに加えて、わが国では、今年から新しい意味がこの日に付与されま
した。

 それは「風疹の日」。

 日本産婦人科医会が立ち上げた「“風疹ゼロ”プロジェクト」が、2月4日
を風疹の日、2月を“風疹ゼロ”啓発月間と定めました。
 ちなみに、風疹の日は、「ふー(2)しん(4)」という語呂合わせだそう
です。
 このプロジェクトは、妊娠中に風疹に感染することで目や耳、心臓にトラ
ブルを生じる先天性風疹症候群(CRS)の出生をゼロにし、風疹の完全抑制を
目標として活動を進めるために、風疹予防に関する情報発信や啓発活動を進
めていくもので、日本産婦人科学会や日本周産期・新生児医学会などの関係
学会、国立感染症研究所、風疹をなくそうの会『hand in hand』の皆さんも
一緒に参画していくとのことです。
 もちろん、厚生労働省もこのプロジェクトに賛同、応援しています。

 「“風疹ゼロ”プロジェクト」からは、次のメッセージが送られています。
 以下、引用いたします。

 2月4日は“風疹の日”−『“風疹ゼロ”プロジェクト』−を進めましょう
 1.風疹にご注意!わが国では風疹流行のリスクはいまだに消えていません!
 2.妊娠20週頃まで(主に妊娠初期)に風疹ウイルスに感染すると胎児が先
天性風疹症候群(CRS)になるおそれが生じます
 3.30〜50代の男性は風疹に対する免疫のない方は多く、風疹流行の要因と
なっています。
 4.海外流行地への渡航は風疹ウイルスに感染するリスクを上げます。渡航
の際は万全の風疹予防対策、また帰国後は風疹発症リスクに対する適切な対
応策をとってください。
 2017年2月 −“風疹ゼロ”プロジェクト−

 2013年(平成25年)の流行時には国内で約1万4千人の方に感染し、2012年
(平成24年)〜2014年(平成26年)年には45名の先天性風疹症候群(CRS)の
赤ちゃんが生まれました。
 こうした流行を二度と起こすことなく厚生労働省の目標でもある東京オリ
ンピック・パラリンピック開催年度の2020年(平成32年)度までに風疹の排
除の実現を図るため、定期接種や風疹抗体検査の推進、継続的な情報発信や
啓発などに取り組み、定期接種の実施率を95%以上にしていかないといけま
せん。

 また、私も含まれる1962年(昭和37年)〜1987年(昭和62年)生まれの
方々、特に、この世代の男性には風疹の抗体価が少ない方がいます。
 次世代を担う赤ちゃんを守っていくためにも、まずは、この世代の方々に
風疹の抗体検査を受けていただくようにお願いいたします。

 かくいう私も「隗より始めよ」。
 献血同様、自ら率先して風疹の抗体検査を受けるなど“風疹ゼロ”に向け
ての活動をしてまいります。

 2020年(平成32年)度には「“風疹ゼロ”で春爛漫」となるよう、結核感
染症課も継続的に風疹対策に取り組んでまいります。
 皆さんも風疹の現状を知っていただき、「“風疹ゼロ”プロジェクト」に
ご支援をいただきますよう、どうぞよろしくお願いいたします。

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風疹ゼロプロジェクト
風しん予防啓発ポスター

◆「あさコラム」vol.39「とどけ、いのちへ。」(2017年1月27日)


 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 元看護師で演歌歌手の入山アキ子さん、誠にありがとうございました!
 このコラムで取り上げたエピソードを、ブログや1月25日に出演されたラジ
オ番組(ニッポン放送「あなたとハッピー」)でアピールしてくださいまし
た。
 入山さんもお話していましたが、歌って覚えると覚えるのが早く、しかも
忘れません。
 ぜひとも、流行しているインフルエンザ予防のため、得意のこぶしで「手
洗い、マスク、咳エチケット〜♪」と歌っていただきたいです。
 新曲「信濃慕情」も応援していますので、「手洗い、マスク、咳エチケッ
ト〜♪」も、どうぞよろしくお願いいたします。


 さて、今年もこの時期がやってきました、「はたちの献血」キャンペーン。
 このキャンペーンは、献血者が減少しがちな冬場において実施されている
日本赤十字社(日赤)の献血推進キャンペーンです。
 毎年1月から2月にかけて、はたちを迎える新成人の方々を中心に、献血へ
のご理解とご協力をお願いしております。

 このキャンペーンキャラクターには、女優の深田恭子さん、新垣結衣さん、
榮倉奈々さん、市川由衣さん、武井咲さん、俳優の山田孝之さん、スポーツ
選手ではニューヨークヤンキースの田中将大投手やプロゴルファーの石川遼
選手など、かつてはそうそうたるメンバーが務めてきました。
 平成27年からは、2014年(平成26年)ソチオリンピック金メダリスト・男
子フィギュアスケートの羽生結弦選手が就任。
 献血者数が年々減少している中、テレビやラジオのCMやポスターなどで、
同世代の方々に向けて献血への協力と参加を呼びかけています。

 毎回、素敵な曲ばかりのキャンペーンソングも、最近ではMONKEY MAJIKの
「HERO」、平井堅さんの「青空傘下」、AAAの「Love」、GReeeeNの「ビリー
ヴ」、ナオト・インティライミさんの「未来へ」と続き、今回はKANA-BOONの
「君を浮かべて」。
 皆さんも既にテレビやラジオでお聴きになったかと思います。


 わが国では、がんや血液疾患などで、1日平均約3,000人の患者さんが血液
製剤を必要としています。
 血液は未だに人工的に製造することができませんので、血液製剤を安定的
に患者さんに届けるためには、常に誰かの献血が必要です。

 しかし、ヒトの血液から製造する血液製剤には、ウイルス等による感染の
リスクがつきまといます。
 血液製剤の安全性を確保するためには、原料となる献血された血液に対す
る感染症検査が不可欠。
 具体的には、献血された血液の検体は全国8カ所の赤十字血液センターの検
査施設に運ばれ、感染症の検査(抗原・抗体検査、核酸増幅検査(NAT))が
行われています。

 抗原・抗体検査としては、
  ・梅毒血清学的検査
  ・B型肝炎ウイルス(HBV)検査(HBs抗原、HBs抗体、HBc抗体)
  ・C型肝炎ウイルス(HCV)検査(HCV抗体)
  ・ヒト免疫不全ウイルス(HIV)検査(HIV−1、2抗体)
  ・HTLV−1抗体検査
  ・ヒトパルボウイルスB19検査
 核酸増幅検査(NAT)としては、
  ・B型肝炎ウイルス(HBV)検査
  ・C型肝炎ウイルス(HCV)検査
  ・HIV検査
 が行われています。

 抗原・抗体検査はウイルスなどに感染した後、血液中に産生される抗原や
抗体を検出する方法であるため、感染直後しばらくは感染していることが検
査で検出できない期間(ウインドウ・ピリオド)があります。
 そのため、日赤はウイルスを構成する核酸(DNAまたはRNA)を増幅し、ウ
イルスの有無を検出する核酸増幅検査(NAT)を実施することで、ウインドウ・
ピリオドの短縮に取り組んでいます。
 このNATは1999年(平成11年)に導入されましたが、2014年(平成26年)8月
1日からは、献血者1人分の血液ごとにNATを行う「個別NAT」が導入されました。
 血液製剤によっては加熱などでウイルスの不活化もできますが、献血由来
の血液製剤について、個別NATの導入によりHBV、HCV、HIVに対する安全性は
かなり向上しました。
 しかし、それでもウインドウ・ピリオドを完全になくすことはできません。

 血液製剤による感染症を未然に防ぐことは、感染症対策としても大変重要
です。
 日赤や血液製剤に関係する企業が医薬品医療機器法や血液法などの法令を
遵守し、血液製剤の安全性を確保することはもちろん、感染症報告の徹底や
輸血感染事例についての遡及調査など、他の対策も確実に行わないとなりま
せん。
 一方で、献血をする側も「責任ある献血」、すなわち、問診に正しく答え
て献血する、検査目的に献血をしないことが大切です。

 私も今まで献血を139回しましたが、体調や服薬状況、海外渡航歴など、
献血可能な条件がたまたまクリアできてのこと。
 条件がクリアできず献血ができなくても、献血の現状を知っていただき献
血についてたくさん話してもらうことや、献血の呼びかけやイベントの企画
などの献血ボランティアに参加することなどで、献血に貢献されている方が
たくさんいます。
 自分なりの貢献ができるのが献血の良いところ。まさに、献血が身近なボ
ランティアと言われる所以です。
 「We are シンセキ!!」と叫ぶ、ラジオDJ・山本シュウさんのFMラジオ番
組「LOVE in Action」を聴取していただくだけでも、献血への理解が深まる
のではないかと思います。

 「僕たちの一歩は、だれかの一生」、「とどけ、いのちへ。」。
 どうぞよろしくお願いいたします。

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◆「あさコラム」vol.38「試験対策」(2017年1月20日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 先週の1月14日と15日、大学入試センター試験が実施されました。
 受験生とそのご家族、関係の皆様、お疲れさまでした。
 地域によっては試験当日は大雪に見舞われたため、開始時間の配慮など行
われた会場もあったとか。
 また、インフルエンザやノロウイルスが流行していますので、体調の維持
管理にはかなり気を配られたと思います。

 これから、中学校、高等学校、大学などの入学試験や各種国家試験など資
格試験のシーズンになります。
 受験生の皆さんは、最後の追い込みと、気合いを入れて勉強されているこ
とでしょう。
 かくいう私はデキの悪い学生だったので、当時の共通一次試験(現在の大
学入試センター試験)や各校の入学試験や、医師国家試験などの資格試験に
は、ずいぶんと苦しめられました。
 そのため、数字や事項を少しでも多く暗記できる様にと、受験勉強では語
呂合わせや連想法などを使って、工夫をして覚えるようにしていました。

 例えば英単語。
 swallowには鳥のツバメという意味と飲み込むという意味があります。
 これを覚えた時はヤクルトスワローズが初優勝した年だったので、「ツバ
メ軍団が他球団を飲み込んで優勝した」と覚えることができました。
 日本史の年号ですと、「鳴くよ (794年) うぐいす平安京」、「いい国作
ろう(1192年)鎌倉幕府」など、語呂合わせには何かと助けてもらいました。
 塾の先生から習った「嫌でござんす(1853年)、ペリーさん」のペリー来
航の年号は、リズム感の良さのせいなのか分かりませんが、一生覚えていそ
うです。
 化学では原子記号の周期表。
 有名な「水兵リーベ 僕の船…」は、皆さんお世話になったと思います。

 医師国家試験をはじめとする保健衛生系の各種国家試験においては、公衆
衛生は重要な出題分野です。
 特に感染症関係は、覚えることがいっぱいあります。
 例えば、一類感染症。
 調べてみたところ、
 ・南米の一番えらいペットはクマ
 ・ペットなんとまぁえらく天然
 ・マクラへ納豆ぺっ!
 など、語呂合わせが色々とありました。
 (分かりますか?)
 これらを作成された方々、スゴイです!

 そういえば、以前のあさコラムで、感染症の類型を覚えるため、「水曜日
のカンパネラ」のコムアイさんにラップ調にして歌ってもらえないかなぁと
書きましたが、実際に歌って類型を覚えていた方を発見しました!
 その方とは、演歌歌手の入山アキ子さん。
 入山さんは「歌も看護も心から」、「我を張らず、流されず、自分流」、
「あきらめない心 志をつらぬく心 人を思いやる心を大切に」がキャッチ
フレーズの防衛医科大学病院の元看護師さんです。
 看護師国家試験の勉強の際に、「コレラ、赤痢、痘瘡〜♪」と得意のこぶ
しをまわしながら、当時の伝染病予防法の法定伝染病を歌って覚えたとのこ
とです。
 看護師さんの経験を活かして、心を込めた熱唱とともに施設訪問や看護・
健康講座の講演を行っている入山さん。
 演歌好きな私は新曲「信濃慕情」を応援してますが、その代わりというの
もなんですが、健康講座の時にはぜひとも、感染症の予防や抗菌薬の適正な
服薬なども交えてお話いただきたいなぁとお願いしちゃいたいです。


演歌歌手の入山アキ子さん

◆「あさコラム」vol.37「備えよ、常に!」(2017年1月13日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。
 相変わらず、インフルエンザやノロウイルスが流行しています。
 手洗いや咳エチケット(マスク着用)の徹底につきまして、よろしくお願
いいたします。

 さて、冬晴れの1月10日、横浜港で新型インフルエンザが発生したことを想
定した訓練が開催されました。
 この訓練は「平成28年度 感染症対策総合訓練(実働訓練)」として実施
されたもので、主催は横浜港保健衛生管理運営協議会です。
 横浜港は新型インフルエンザが発生した時に海外から入港を集中させる海
港の一つであることから、今回は新型インフルエンザを対象とした訓練とな
りました。
 協議会には、横浜検疫所をはじめ、横浜海上保安部、神奈川県警本部、横
浜市消防局、横浜市港湾局等がメンバーになっており、各メンバーから約100
人の方々が参加した本格的な実働訓練でした。
 私も横浜検疫所からお誘いを受け、訓練の評価者として見学してきました。

 横浜港大さん橋国際客船ターミナルに停泊中の大型クルーズ客船
「ぱしふぃっくびいなす」(26,594トン)を使ったこの訓練の想定は、世界
一周クルーズの寄港地のX国で新型インフルエンザに感染した男性が船内で死
亡し、4人の新型インフルエンザ感染の疑い患者さんと100人の濃厚接触者の方
がいるとのこと。
 訓練は着岸検疫から始まり、船長と船医から船内状況の聴取、医務室での
重症患者さんへの対応、客室での中等症患者さんへの対応、濃厚接触者の方
への対応と続きました。
 具体的には、検疫所職員が防護服(PPE)を着用し、検疫医官が患者さんへ
の問診、体温測定、検体採取などを行い、検疫官が「陰圧バッグ」に収容さ
れた患者さんを船外に搬出。
 防護服を着用しての処置は動きが制限されて難しそうだなぁと思って見学し
ていましたが、さすがは検疫医官のドクターたち。
 体温測定や検体採取等について、難なくこなしていました。

 さらに、消防局の救急車や民間救急車による患者搬送、県警の協力による検
体搬送、健康監視者の方々へのCIQ手続きや船内等の消毒の訓練なども実施。
 検疫医官が同乗した救急車で、第一種感染症指定医療機関の横浜市民病院へ
患者さんを搬送。
 また、患者検体は県警のパトカーで横浜検疫所輸入食品・検疫検査センター
に搬送されました。

 圧巻はインドネシア語しか話せない濃厚接触者の方への対応訓練。
 本物のインドネシア人の方(※クルーズ船のクルーの方だそうです)に患者
さん役をお願いしての訓練でした。
 検疫医官が携帯電話をハンズフリーにして、電話通訳を用いて問診や検疫法
に基づく措置についての説明を実施。
 コミュニケーションを上手に取りながら、適切に対応できていたと思います。

 わが国が新型インフルエンザ対策に取り組んで久しいですが、鳥インフルエ
ンザの発生動向や医療提供体制の確認、被害想定の見直し、抗インフルエンザ
薬の備蓄の多様化、ワクチンのスピーディーな製造方法の開発、新型インフル
エンザワークショップの開催等による普及啓発の推進など、今後とも対策の充
実や見直し等に努めていかなければなりません。
 そうした中で、空港や海港におけるこうした実働訓練は、新型インフルエン
ザ対策における実務の確認のみならず、訓練の成果がエボラ出血熱などの新興・
再興感染症対策にも応用が利きます。
 また、訓練で生じた課題を解決していくことで、より精度が高い対策につな
がっていきます。

 新型インフルエンザ対策について「正確な情報を入手し、正しく怖がること
が大切」と仰ったのは、厚生科学審議会感染症部会新型インフルエンザ対策に
関する小委員会委員長の岡部信彦先生(川崎市健康安全研究所所長)ですが、
その奥義は「抜かりなく準備すること」。
 ボーイスカウトの標語のとおり「備えよ、常に!」が重要です。
 過剰に恐怖を煽る情報が流れても「備えあれば憂いなし」なのです。

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◆「あさコラム」vol.36「襷の敵」(2017年1月6日)

 新年あけましておめでとうございます。
 厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。
 今年もどうぞよろしくお願いいたします。

 この年末年始、大掃除や初詣など、皆様もお忙しかったことと思います。
 私たち結核感染症課も、鳥インフルエンザ対応など年末年始も警戒中でし
たが、この期間中、猛威をふるったのはインフルエンザA型。
 各地の休日診療所も、インフルエンザの患者さんへの対応で賑わっていた
様子でした。
 輪番で対応されていた医師や看護師、薬剤師の皆様、お疲れさまでした。

 そんな中、今年1月の2日・3日に開催された第93回東京箱根間往復大学駅伝
(箱根駅伝)。
 新春のビッグスポーツイベントと化した箱根駅伝ですが、今回も原晋監督
率いる青山学院大学が総合優勝を飾り、これで史上6校目となる3連覇。
 しかも、第28回出雲全日本大学選抜駅伝競走(出雲駅伝)、秩父宮賜杯第
48回全日本大学駅伝対校選手権大会(全日本)と合わせて、史上4校目となる
大学駅伝3冠にも輝きました。
 アクシデントもありましたが、チーム力と個の力が融合し、素晴らしい結
果を出した青山学院大学。
 その陰で優勝候補に推されていた2校が実力を発揮しきれず、残念な結果と
なりました。
 1校は出雲駅伝5位・全日本4位の駒澤大学(箱根駅伝9位)、もう1校は出雲
駅伝2位・全日本3位の山梨学院大学(箱根駅伝17位)です。

 この強豪2校の失速に共通する理由は「インフルエンザ」。
 箱根駅伝7年連続3位以内だった常勝軍団の駒澤大学は、6区の選手が昨年
12月にインフルエンザに罹患。
 出場にはこぎ着けましたが結果が出ず、その影響もあって上位には浮上で
きませんでした。
 昨年、出雲駅伝と全日本で青山学院大学を追い詰めた山梨学院大学は、主
力3選手がインフルエンザで欠場。
 代わりの選手で箱根駅伝に挑みましたが、10位以内に与えられる来年の箱
根駅伝のシード権を逃しました。

 大学4年間で最大4回しか走ることができない箱根駅伝。
 厳しい練習と激しい競争を重ねた上に、一度でもこの箱根路を走りたいと
いう各校陸上部員の強い気持ちがあるからこそ、笑顔あり、涙ありのドラマ
が生まれます。
 とはいえ、
 「最も警戒していたインフルエンザやノロウイルスなどを、一人も患って
いないことが一番です」
 と、大会直前に青山学院大学の原晋監督も話していたとおり、駅伝を走る
ためには体調管理も大切な要素。
 インフルエンザに罹患した選手も監督他関係者の皆さんも無念だったと思
いますが、20km以上の各区間を走る体力が伴わないとどうにもなりません。
 選手が皆、ベストコンディションで疾走できることを祈って、私も毎回、
沿道やTVで応援していますが、感染症が相手ではなかなか上手くはいきま
せんね。

 さて、来年は青山学院大学の4連覇か、それともSTOP青学となるのか、気が
早い箱根駅伝ファンは既に予想しているとか。
 絶対王者の青山学院大学に対し、安定の東洋大学と早稲田大学、復活の順
天堂大学と神奈川大学、潜在能力が高い日本体育大学と東海大学、新興勢力
の中央学院大学などが気になります。
 しかしながら、あさコラム的には今回のインフルリベンジを果たすべく、
「人を動かすのは、情熱と本気」と熱血のスパルタ指導・大八木弘明監督率
いる駒澤大学と、箱根駅伝予選会から息子の健太選手と親子で挑む百戦錬磨・
上田誠仁監督率いる山梨学院大学、この2大学の躍進にSTOP青学を期待したい
と思います。
(私の所属するランニングクラブのコーチたちの母校である拓殖大学、大東
文化大学、専修大学も頑張れ!)

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◆「あさコラム」vol.35「心から〜」(2016年12月22日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。
 インフルエンザとノロウイルス、流行中。
 これらの予防のためには、いつもどこでも「手洗い」は大事です。
 何はともあれ、「手洗い」をお願いいたします。

 また、年末年始は海外への渡航される方々も増えますが、わが国は冬でも、
世界各地の気候は様々です。
 ウイルスを運ぶ蚊も飛んでいますし、ヒトコブラクダも歩いています。
 海外へ渡航される方々には、感染症予防について心の片隅にメモして、旅
行などを楽しんでいただきたいと思います。

 さて、今年もまた終ろうとしています。
 この一年を振り返りますと…

 新年早々、AMR(薬剤耐性)のアクションプランの策定に追われながらも、
「麻しん・風しん対策推進会議」を開催、石田純一さんと東尾理子さんにも
ご出席いただき、麻しん・風しん対策のPRと今後の対策の方針をご議論いた
だきました。
 2月にはWHO(世界保健機関)が、ジカウイルス感染症について「国際的に
懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEIC)」を宣言。以後、
リオ・デ・ジャネイロオリンピック/パラリンピックに向けた対策と、蚊の発
生時期に向けた国内対策に取り組んだ結果、今年は国内発生を防ぐことがで
きました。
 4月にはAMR(薬剤耐性)対策アクションプランが「国際的に脅威となる感
染症対策関係閣僚会議」において決定。このプランに基づきAMR対策に取り
組んでいこうとしていた矢先に、熊本地震が起こりました。
 大きな被害を受けた現地に派遣された私も、避難所等の感染症対策の実態
を確認し、現場で対応に取り組んでいた専門家や医師・保健師・看護師・薬
剤師の皆さんの頑張りや、避難された方々の自主的な衛生管理の取り組みを
肌で感じ、感銘を受けました。11月には熊本県内の避難所は全て閉鎖されま
したが、復興支援はまだまだ重要です。

 夏には、ジカウイルス感染症などの蚊媒介感染症対策に取り組むとともに、
関西国際空港や一部自治体等を舞台とした麻しんの発生を受けて「麻しん排
除認定会議」を開催、定期接種の確保等、当省健康局健康課予防接種室とと
もに対策に取り組みました。なお、平成28年(2016年)48週時点の感染症発
生動向調査(12月7日集計分)によると、累積の麻しん報告数は155例。何と
かこの数字で治まっているのは、自治体の皆さんの対策と麻しんの予防接種
のおかげだと思います。
 7月には、HTLV-1対策推進協議会を開催、今後の対策に関して、構成員の
皆さんと意見を交わしました。
 8月には北海道では平成5年(1993年)以来2例目の「ダニ媒介脳炎」が発生。
 マダニにかまれて脳炎を発症した男性は、残念にも亡くなられました。
 この頃は、RSウイルスやおたふくかぜ、マイコプラズマの流行もありまし
た。

 秋から冬にかけては、季節性のインフルエンザやノロウイルスの流行が見
られ、鳥インフルエンザA(H5N6)も野鳥や家きんで発生。衛生管理の普及や
サーベイランスなど、対策には万全を期しているところです。
 梅毒は平成28年(2016年)48週時点の感染症発生動向調査(12月7日集計分)
4,168例と、感染症法施行以降報告数が最大となっています。新規HIV感染者数
およびAIDS患者報告数の減少も頭打ちの状態です。
 性感染症の最大の敵は無関心。それに対峙するために取り組んだ
セーラームーンの性感染症予防ポスターや世界エイズデーのRED RIBBON LIVE
なども話題になりました。
 11月には「結核に関する特定感染症予防指針」の一部を改正することが
できました。
 G7伊勢志摩サミット等でも取り上げられたAMR対策については、感染症部会
AMR(薬剤耐性)に関する小委員会を設置し、具体的作業を進めているところ
です。

 こうしてみると春夏秋冬、移り変わる感染症対策でした。

 こうした中、この4月から感染症エクスプレスでコラムを連載することにな
り、今回までほぼ毎週、続けることができました。
 「読者の皆さんが楽しめるように、気楽に書くように」と担当から言われて、
初期の頃は水曜日のカンパネラや星野源さんにまつわるネタを取り上げました。
 (あさコラムで取り上げられると大ブレイクする!という話ではないですが…)
 他にも、少しでも感染症につながるネタを探しながら、感染症学的な話や
各種イベントのご紹介はもとより、歴史やスポーツ、映画やドラマ、リサイク
ルなど色々なジャンルにチャレンジしてきました。
 さすがに私の引き出しにあるネタも切れてきましたので、区切りが良い今回
で、連載を終了しようと、少し前には考えていました。
 けれども、連載から降りるのは逃げてるような気もしますし、やり残した気
分もあります。メルマガ読者の皆さんからの個別の励ましやご指摘・ご助言も、
連載を続けるための嬉しいエネルギーとなっています。
 ということで、もう一年「あさコラム」を頑張ってみたいと思います。

 感染症対策は、自治体、保健所や検疫所など、住民や渡航者のため現場で頑
張る皆さん、国立感染症研究所や大学などで研究や調査に挑む専門家の皆さん、
各医療機関で献身的に治療に取り組む医療従事者の皆さんのおかげで成り立っ
ています。
 直接的に感謝を申し上げる機会はなかなかありませんが、この場を借りまし
て、改めまして心から御礼を申し上げます。

 ありがとうございました。

 そして、昼夜や平休日を問わず支えてくれた、結核感染症課の素敵なメンバ
ーたちにも、この場を借りて「ありがとう」を伝えたいと思います。

 今年もお世話になりました。
 大晦日には、熊本県出身・抜群の歌唱力の島津亜矢さんが歌う
故・美空ひばりさんの名曲「川の流れのように」をNHK紅白歌合戦で聴きながら、
たくさんの人々に感謝の気持ちを送りたいと思います。
 (実は、福山雅治さんの2016スペシャルメドレーも楽しみにしています)

 皆さん、来年も一緒によろしくお願いいたします。

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◆「あさコラム」vol.34「酉年」(2016年12月16日)


 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 この冬、ノロウイルスによる感染性胃腸炎が流行しています。
 感染力が強く、集団発生を起こしやすいノロウイルスは、手指や食品など
を介して経口で感染し、嘔吐や下痢、腹痛などを起こします。
 特にお子さんやご高齢者の方々は、症状が重篤化することがあります。
 予防のためは、感染者の方のおう吐物や便に対して適切な処理に心がけ、
積極的に手洗いに取り組むことが重要です。
 また、感染した場合は早めに医療機関を受診し、適切な治療を受けるとと
もに、脱水症状の防止のため水分補給に努めていただきたいと思います。

 さて、今回のテーマは、鳥インフルエンザ。
 今年は国内の野鳥や家きん、動物園の飼育鳥などに、高病原性鳥インフル
エンザA(H5N6)の発生が数多く確認されています。
 12月13日時点で、家きんが2県4件、野鳥が11道県64件。
 特に野鳥は11月以降、最も速いペースで見つかり、過去最多の件数となっ
ています。

 家きんでは採卵鶏(ニワトリ)とあひる。
 家きんの発生事例においては、既に処分は終了していますが、今般の流行
状況から、今後も大規模な発生が起こりうるかもしれません。
 家きん飼育者の皆さんは大変ご心配だと思いますが、家きん舎の点検や消
毒、家きんの健康観察を行うことが肝要です。
 ヒトの病気と同様、早期発見・早期対応により、被害をより小さく治める
ことができます。

 野鳥ではコハクチョウ、オオハクチョウ、マガン、ツル、カモ、ハヤブサ
などに高病原性鳥インフルエンザA(H5N6)発生。
 死んでいる野鳥を発見した場合は、素手で触らず、家畜保健衛生所などに
連絡するよう、周知に努めています。

 また、動物園では、コクチョウやシロフクロウ、シジュウカラガン、マガ
モなどに、高病原性鳥インフルエンザA(H5N6)が発生しています。
 動物園では希少な鳥を飼育しているケースもあり、鳥の展示を取りやめた
り、ふれあいイベントを中止するなど、対策に取り組んでいます。

 なお、国立感染症研究所や農業・食品産業技術総合研究機構によると、今
回の高病原性鳥インフルエンザA(H5N6)は、現在のところヒトに直接感染する
可能性は低いとのこと。
 しかし、世界全体では、今まで中国で16名の方に高病原性鳥インフルエン
ザH5N6の感染が確認されています。
 環境等の違いがあるとはいえ、万が一のヒト感染に備え、厚生労働省では
自治体の皆さんと協力し、鳥インフルエンザの情報収集に努めるとともに、
健康監視や治療体制の整備に取り組んでいます。
 未然にヒト感染を防ぐためにも、死んでいる鳥には直接触れない、素手で
は触らないということが大事です。
 特に、家きん農場で従事されている方や防疫作業に従事される方について、
関係省庁と共に感染防護策の周知に努めているところです。

 来年(平成29年)の干支は酉、トリ年。
 酉年にちなんだ新春イベントを準備していた動物園もあるようですが、鳥
インフルエンザの影響で既に開催中止を決めたところもあるとか。
 園としては残念でしょうが、健康の問題には代えられません。

 そういえば、平成17年(2005年)の酉年では、国内では高病原性鳥インフ
ルエンザA(H5N2)が発生、インドネシアやベトナム、中国では高病原性鳥イ
ンフルエンザA(H5N1)が発生しています。
 ちょっと嫌なデータですが、来年の酉年ではこのようにならないことを、
祈るばかりです。

 では、次回もどうぞよろしくお願いします。

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高病原性鳥インフルエンザA(H5N6)の発生が数多く確認されています

◆「あさコラム」vol.33「哀しみ本線日本海」(2016年12月9日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 去る12月3日、4日、10年目を迎えた日中韓保健大臣会合が韓国釜山市で開
催されました。
 塩崎恭久厚生労働大臣が会合に出席し、感染症拡大防止のため検疫での協
力を強化していくことやAMR(薬剤耐性)対策の推進などを明記した共同声明
を採択しました。
 新型インフルエンザをはじめとする新興・再興感染症対策やAMR対策に、隣
接する3カ国が連携を図りながら取り組んでいくことは大変重要です。
 今後とも3カ国連携の強化を進め、3カ国の健康の増進、ひいてはアジアや
世界の健康のために協力していきます。

 また、国内に目を向けると、季節性インフルエンザの流行、各地における
野鳥での高病原性鳥インフルエンザA(H5N6)の感染確認と、今週もインフルエ
ンザに注目しています。
 一方、梅毒の急増には危機感を募らせるとともに、日本リザルツさんから
の依頼を受けてスナノミ症予防の提言をしたりと、慌ただしい師走の日々を
送っております。

 そんな中、北海道の北西部を走るJR留萌線のうち、留萌−増毛間が12月4日
に最後の運行を終え、大正10年(1921年)の開業から95年間の歴史に幕を下
ろしました。
 留萌から日本海に沿って南下し、故高倉健さん主演の昭和56年(1981年)
の映画「駅 STATION」のロケ地となった増毛駅までの16.7キロ。
 映画では、八代亜紀さんの名曲「舟唄」が流れる中、高倉健さんと倍賞千
恵子さんのシーンは、グッと心に刺さります。
 かつては、日本海のニシン漁で栄えた増毛ですが、過疎化や車社会の影響
などで乗客は激減し、赤字を抱えるJR北海道が地元との調整を行い、同区間
の廃線を決めました。
 廃線フィーバーもあり、撮り鉄はもとより、最終列車には定員の2倍の300人
以上が乗車するという過熱ぶりが、東京でも大きなニュースとなっていました。

 さて、日本海といえば、実は日本海と名がつく寄生虫症があります。
 それは「日本海裂頭条虫症」。
 東京医科歯科大学名誉教授の藤田紘一郎先生が、腸内に飼育しているという
寄生虫です。

 条虫はその様相から、戦国武将・真田信繁(幸村)と縁がある平らな紐の
「真田紐」に似ていることから、「サナダムシ」と総称されますが、日本海
裂頭条虫もそのひとつ。
 虫卵からコラキジウム(幼虫)に発育し、それが第1中間宿主であるケン
ミジンコに摂食されると、ケンミジンコでプロセルコイド(前擬尾虫)に発育
します。
 これを摂取したサケやサクラマス、カラフトマスなどが第2中間宿主となり、
さらに、これらの魚肉を食したヒトに感染すると、ヒトの消化器内で体長5〜10m
に達する大型の条虫と成長します。
 しかし、症状は軽く、具体的には下痢、便秘や腹部膨満感などで、自覚症状
がない場合もあります。
 そのため、条虫が排便時に自然に排出されたことで、感染に気づくことも多
いとのこと。
 また、感染期間は数年から20年以上と幅広いのも特徴です。

 ところで、広節裂頭条虫と日本海裂頭条虫の違いは、ご存じですか?
 日本における近代寄生虫学の祖・東京帝国大学教授(当時)の飯島魁先生の
実験調査などにより、わが国でもサケやマスの生食で広節裂頭条虫に感染する
と考えられていました。
 しかし、昭和61年(1986年)、島根医科大学教授(当時)の山根洋右先生が、
フィンランドの広節裂頭条虫との比較共同研究の結果により、わが国の条虫は
独立の新種であると提唱。
 「日本海裂頭条虫」と命名されました。

 時代が平成に入ると、寄生虫考古学の研究が開始され、古代遺跡の便所遺構
から日本海裂頭条虫卵が続々と発見。
 少なくとも1300年前から、わが国に日本海裂頭条虫が存在していたことが明
らかにされました。

 日本海裂頭条虫の感染予防には、サケやマスは生食を避け、焼いたり煮たり
して食べる、あるいは一旦冷凍(−20℃ぐらい)してから食するのが良いそう
です。
 ちなみに、北海道には「ルイベ」という、冷凍保存したサケやマスを凍った
ままで味わう郷土料理がありますが、冷凍することで条虫やアニサキスが死滅
し、その感染予防となっています。
 北海道ならではの「知恵の料理」ですね。

 冬の夜は、やっぱり美味しい魚とお酒と演歌です。
 私も「舟唄」は大好きですが、北海道の鉄道廃線、日本海、魚の寄生虫とい
う今回のコラムの流れだと、歌は森昌子さんの「哀しみ本線日本海」。
 この歌を聴きながら、美味しい魚と燗を付けたお酒で、日頃の疲れを癒やし
たいと思います。

 では、次回もどうぞよろしくお願いします。<本コラムの感想、ご質問、ご要望など>
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提灯

◆「あさコラム」vol.32「予防ファースト、検査ファースト」(2016年12月2日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 今季の季節性インフルエンザの流行入りが確認されました。
 第46週(11月14日〜20日)の感染症発生動向調査で、インフルエンザ定点
医療機関当たり報告数が1.38(全国およそ5,000カ所の定点医療機関を受診
したインフルエンザ患者数が6,843人)となりました。
 流行開始の目安となる1.00を上回ったことで、今季の流行入りとなりまし
た。
 今季は例年よりも早い流行入りです。
 咳エチケットと手洗い、予防接種など、インフルエンザ予防を周知してま
いりますので、皆様もよろしくお願いいたします。

 また、高病原性鳥インフルエンザH5N6も、野鳥に続き、青森県及び新潟県
の農場で、家きんにも感染が確認されました。
 家きんの殺処分、埋却、移動制限区域の設定など、自治体や要請を受けた
自衛隊が防疫措置に着手しておりますが、厚生労働省としても、当該家きん
農場の従事者の方々の健康状態の 把握や防疫作業の従事者の方々への感染
防護策の指導や健康調査を行うように、自治体にお願いをいたしました。
 必要があれば、備蓄タミフル(抗インフルエンザ薬)の配布も行えるよう
準備しておりますが、今後も関係省庁や自治体と連携して、鳥インフルエン
ザのヒトへの感染防止に万全を期してまいります。
 (ちなみに、国内では家畜防疫上の措置に加え、殺菌消毒などの衛生管理
が流通の各段階で実施されていることから、鶏卵や鶏肉を食べることにより、
鳥インフルエンザウイルスがヒトに感染するおそれはないと考えられていま
す)

 ということで、この1週間はインフルエンザに追われていましたが、さる
12月1日は「世界エイズデー」。
 1988年、WHO(世界保健機関)が12月1日を世界エイズデーと定め、エイ
ズに関する啓発活動等の実施を提唱、UNAIDS(国連合同エイズ計画)もこの
活動を継承しています。
 29回目となる世界エイズデーですが、今回も厚生労働省からは次の3つの
重要なメッセージを送りました。

 メッセージその1「HIV検査を受けましょう」
 HIV感染を判断できるのは検査だけ。そして、早期に感染を発見すれば、
定期的な通院と治療により、エイズの発症を防ぐことができます。HIV検査
は、全国の保健所等で、無料・匿名で受けられます。
 メッセージその2「予防が大事です」
 HIV感染は性的接触によるものがほとんど、つまり誰にでも感染のリスク
があります。感染予防策として適切にコンドームを使用してください。
 メッセージその3「正しい知識と関心を」
 HIVの感染経路は限られています(性的接触による感染、血液を介しての
感染、母子感染)。普段の生活(握手、くしゃみ、入浴など)で感染する
ことはほとんどありません。感染者の方や患者の方に対する理解を深め、
エイズに対する関心を持ち続けることが重要です。

 これらのメッセージを伝えるべく、厚生労働省では、今年も「RED RIBBON
 LIVE 2016」や街頭キャンペーン、HIV無料検査といったイベントを準備い
たしました。
 特に、今年で11回目を迎えた「RED RIBBON LIVE」は、「HIV/エイズは予
防ファースト、検査ファースト。」をテーマに、11月29日、満員となった
東京港区・赤坂BLITZで開催いたしました。
 ライブはギターで素敵な調べを奏でる押尾コータローさん、新潟県発のア
イドルNegiccoの皆さん、心に染みる歌声の曽我部恵一さん、魂のロック歌
手の世良公則さんと様々な世代に向けたアーティストが出演。
 そして、今回も登場してくれたTERU(GLAY)さんは、押尾さんのギター
演奏とのコラボレーションで、GLAYの名曲「HOWEVER」を熱唱してくれまし
た。
 トークでは、せんだみつおさんが保健所でのHIV検査を受診する体当たり
レポートの紹介や、加藤鷹さん、蒼井そらさん、紗倉まなさん、こにわさ
んが、厚生労働省エイズ動向委員会委員長の岩本愛吉先生とともに、予防
と検査の重要性を訴えてくれました。

 そして、このLIVEを盛り上げてくれたMCには山本シュウさんと脊山麻里
子さん。
 特にシュウさんには、私の前職(血液対策課長)の時から、献血推進キ
ャンペーン「LOVE in Action プロジェクト」でお世話になっていたことも
あり、ご縁を感じています。
 HIV予防について熱く語りかけてくれたシュウさん、今回もレモンの被り
物で「レモンさん」となり、総合プロデューサーとして「合言葉はWe are
シンセキ!」と頑張って下さいました。
 シュウさん、ホンマにありがとう!でした!
 出演して下さった皆様、LIVEを企画制作して下さったTBSラジオの皆様も、
心から感謝です。

 なお、このLIVEは、LINE LIVEとニコニコ生放送でもネット中継して頂き、
動画視聴数が50万を超える大反響でした。
 この数字の大きさ、担当者一同、ビックリしています。

 「LIVEを開催したり、コンドームを配布したりすることが、性感染者数を
減らすことになるのだろうか」と、懐疑的な声もありますが、性感染症対策
の最大の敵は「無関心」。
 歌のチカラで世界を変えることができるのなら、そのチカラに期待して関
心を高めるきっかけにしてもらうのもアリだと思います。
 前回紹介した性感染症予防PRのために作成して頂いた「美少女戦士セーラ
ームーン」のコンドームも、各地での世界エイズデーのイベントで配布され
好評を博しているとの報告もいただいております。
 たくさんのご支援をいただきながらHIV・性感染症に対する無関心を解消
できるよう、そして、性感染症の予防を推進し、感染者数の減少という
アウトカムが出せるよう、まだまだ頑張っていきます!

 では、次回もどうぞよろしくお願いします。

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山本シュウさんと
山本シュウと一緒に

◆「あさコラム」vol.31「月にかわって…」(2016年11月25日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 ついに解禁!「美少女戦士セーラームーン」とコラボレーション!
 去る11月21日、「性感染症予防キャンペーン」で厚生労働省が国民的漫画
「美少女戦士セーラームーン」とコラボレーションすることが発表されまし
た。
 発表日までは極秘事項として口を堅く閉ざしておりましたが、ここに改め
て発表いたしますとともに、作者の武内直子先生と講談社様、性の健康医学
財団様に心から御礼を申し上げます。

 今まで、私たちは性感染症予防の啓発普及に毎年取り組んでまいりました
が、残念ながら現在、性感染症の感染者数は増加傾向にあります。
 性感染症は感染しても直ちに症状が出ないことも多く、発見が遅れ、その
ために他の方々に感染を広げてしまうという特徴を持っています。
 とりわけ、性感染症の中でも、ここ数年、急増しているのが梅毒。
 痛みのない潰瘍が性器に形成され、治療せずにいると全身の皮疹やリンパ
節の腫脹、数年〜数十年後には血管や神経の障害など、多様な症状をきたす
感染症です。
 平成22年(2010年)の梅毒報告数は621件でしたが、平成27年(2015年)
では報告数は2697件と実に4倍以上に増え、今年(平成28年、2016年)は10
月初旬までに3284件と、既に前年の報告数を上回りました。
 年齢別でみると、全体としては男性の報告数が多いものの、20歳代前半で
は女性が男性を上回るなど、10歳代後半から30歳代までの若い女性における
増加が顕著。
 特に妊婦さんへの感染は、早産や死産、胎児への重篤な異常につながる可
能性があり、この状況、大変心配しているところなのです。

 課長就任時の昨年から「この状況は何とかならないものだろうか」と担当
と一緒に悩み、数ヶ月前からキャンペーンを思案していたところ、浮上して
きたのがセーラームーンとのコラボレーション。
 子どもの時にこの漫画やアニメを楽しみにしていた少女たちが、現在、20
〜30歳代の女性になっています。
 「20〜30歳代の女性層が子供の時のヒロインだったセーラームーンの力を
借りて、性感染症が増加しているこの局面を打破できないものだろうか…」
 と、担当が武内先生に打診したところ、キャンペーンへのコラボレーショ
ンについて武内先生からご快諾をいただきました。

 ポスターは、武内先生の発案のとおり、月に座ったセーラームーンが「検
査しないと おしおきよ!!」と検査を呼びかけるものです。
 当初は「エイズ・性感染症予防 まずは検査から始めよう」といった無難
なキャッチコピーを提案していたのですが、武内先生とのやりとりの中で、
セーラームーンの決めぜりふである「月にかわっておしおきよ!」をアレン
ジしたキャッチコピーに決まりました。
 同じデザインのリーフレットも作成しており、裏面には、主な性感染症と
その症状についてまとめてあります。

 発表会見では、武内先生のメッセージが披露されました。
 以下に原文ママでご紹介いたします。

 『今回のキャンペーンに賛同した私の想い』
 いろいろな感染症が取り上げられるなかで、その対策は日頃から重要な問
題であると考えており、今回このような機会を通じて、皆様のお役に立てる
ことを嬉しく思います。
 性感染症の問題は非常にデリケートな問題であり、「検査しないとおしお
きよ!」の文言を提案した際の、厚生労働省担当者の「いいんですか!?」
の驚きようは、まさにそれを表しておりました。
 セーラームーンが今までのイメージを払拭し、セーラームーンの声がファ
ンや皆さまに理解され、検査に結びつくことで、多くの方がより健康に過ご
せることを願っております。
 武内 直子(サイン)

 武内先生の意気込みと熱い思いが伝わってくる、心に刺さるメッセージで
す。

 さて、このキャンペーン、早速、大きな反響があり、
 ・コラボレーションを快諾した武内先生の懐の深さに感銘
 ・私たちの世代にとって性感染症予防が大事なことだからこそ、セーラー
  ムーンが選ばれたんだと思うと、本当にスゴイ!
 というポジティブなご意見がある一方、
 ・セーラームーンが汚れてしまう
 ・セーラームーンが性感染症検査のキャンペーンに登場するのはイメージ
ダウン
 という、ネガティブなご意見もありました。
 だからこそ、「(性感染症に対する)そのイメージを払拭したい」という
武内先生の熱い思いを強く受け止め、病気のひとつに過ぎない性感染症に対
する正しい理解と偏見差別の解消に取り組んでいかなければならないと決意
を新たにしているところです。

 また、
 ・セーラームーンは中学生(高校生)じゃないの?性感染症の検査を訴え
  るキャラとしてはいかがだろうか?
 とのご意見には、
 ・前出のとおり、セーラームーンは連載当時の漫画やアニメを楽しんでい
  た現在の20〜30歳代の女性との親和性が高いこと
 ・中高生には、エイズ予防教育や保健の授業で、検査や相談など性感染症
  予防についての学習は既に行われていること
 ・10歳代後半においても、性感染症の感染者が報告されていること
 ということを鑑みると、セーラームーンが性感染症予防の観点で検査や相
談を訴えてくれるのは不適切ではないと思います。
 (ちなみに、漫画ではセーラームーンはクリスタル・トーキョーの女王ネ
オ・クイーン・セレニティ(22歳)となります)

 なお、女性に人気のあるキャラクターである乙女の味方・セーラームーン
は、実は男性にも人気が高いんです。
 また、セーラームーンは、LGBTの方々にも支持を得ているとの情報もあり
ます。
 要は、みんなの人気者なんですね。
 性感染症は女性だけの健康問題ではなく、男性の健康問題でもあります。
 「検査しないと おしおきよ!!」と発したセーラームーンのメッセージは、
女性だけに留まらず、全ての方々に向けていると、私は考えています。

 何はともあれ、この発表により、一時期は「セーラームーン」と「厚生労
働省」がトレンドワードの上位を獲得するなど、性感染症の予防が久々に脚
光を浴びたのは大変ありがたいことです。
 特に、性感染症予防の啓発用に準備したセーラームーンパッケージの配布
コンドームは人気が高いようで、「欲しい!どこで買えるの?」といった問
い合わせもあったとか。
 (残念ながら、この製品は性の健康医学財団様がオカモト(株)様のご協
力を得てキャンペーン用に作っていただいた非売品なのです。)

 知らぬ間に忍びよる、性感染症の脅威。
 この窮地を打破するために、話題性があり訴求力も高いセーラームーンと
武内先生の力をお借りしながら、今回の「性感染症予防キャンペーン」に取
り組んでまいります。
 コラムの読者の皆様からも色々とご意見やご感想があるかとは思いますが、
性感染症について話題にもならず、無関心となることが一番の問題。
 こうした状況をご理解いただき、ぜひ「性感染症予防キャンペーン」にご
支援をいただければ幸いです。
 どうぞよろしくお願いいたします。

 では、次回もどうぞよろしくお願いします。

<性感染症>

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セーラームーン オモテ
リーフレット(オモテ面)

セーラームーン ウラ
リーフレット(ウラ面)

◆「あさコラム」vol.30「永久欠番」(2016年11月18日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 まずは冒頭でお詫びを申し上げます。
 前回のコラムでスナノミについて書きましたが、専門家の方から次のとお
りご指摘を頂きました。
 ・スナノミ(Tunga penetrans)は名のとおり砂のノミで「ノミ」(ダニ
  ではない)
 ・スナノミ症はスナノミが寄生して発症する病気(リケッチアが原因では
  ない)
 大変申し訳ございません。スナノミについて勉強不足で、反省しきりです。
 修正の上、心からお詫びを申し上げますとともに、それでもスナノミ症対
策にはシューズが必要です。
 私も、アフリカの子どもたちのためにシューズ集めに邁進する所存ですの
で、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、今回の本題。
 先日、今季限りで引退した広島東洋カープの黒田博樹投手の背番号「15」
を永久欠番にすると発表されました。
 広島東洋カープの永久欠番はミスター赤ヘル・山本浩二氏の「8」、鉄人・
衣笠祥雄氏の「3」に続き3例目です。
 日米両国で活躍し、今年のリーグ優勝の立役者でもある黒田投手。
 その清い引き際に対する球団からの誠意ある計らいに、プロ野球ファンな
らずとも心が熱くなります。

 大変名誉がある永久欠番制度ですが、実は日本プロ野球界において、感染
症と関係深い永久欠番を有する球団があります。
 その球団とは「読売ジャイアンツ」。
 ジャイアンツの永久欠番は、
 ・世界のホームラン王こと、王貞治氏の「1」。
 ・ミスタージャイアンツこと、長嶋茂雄氏の「3」。
 ・伝説の速球投手こと、沢村栄治氏の「14」。
 ・打撃の神様こと、川上哲治氏の「16」。
 ・前人未踏の400勝投手、カネやんこと金田正一氏の「34」。
 球界が誇る名選手ばかりで、ここまではプロ野球ファン、特にオールドフ
ァンなら簡単に答えられますが、実はあと一つ欠番があります。
 その答えは、黒沢俊夫氏の背番号「4」です。

 黒沢選手は大正3年(1914年)生まれの大阪府出身のプロ野球選手です。
 関西大学から昭和11年(1936年)に名古屋金鯱軍に入団した俊足の外野手
で、以降、大洋軍、西鉄軍へ移籍しました。
 昭和19年(1944年)には戦争のため人員不足となったことから、供出選手
として東京巨人軍へトレード移籍。
 昭和19年(1944年)、昭和21年(1946年)は4番打者、5番打者を務めるな
ど、主軸打者として活躍されました。

 昭和22年(1947年)のシーズン途中、黒沢選手は腸チフスを発病し、6月23
日に急死されました。
 腸チフスはチフス菌による感染症で、当時は年間約4万人が罹患していまし
た。
 現在、衛生環境の改善などにより、腸チフスの感染者は年数十例程度と少
なく、かつ抗菌薬が奏効するため死亡例はほとんどありませんが、責任感の
強い黒沢選手は体調が悪いことを隠して試合に出場し続け、それが結果的に
命取りとなりました。
 享年33歳。葬儀は球団葬として執り行われ、「自分が死んだら、巨人軍の
ユニフォームのまま葬って欲しい」と遺言を残した黒沢選手は、ユニフォー
ム姿で棺に納められたそうです。
 球団は、病に倒れるまで活躍されたことへの感謝を込めて、太平洋戦争で
戦死した沢村投手の背番号「14」と共に、黒沢選手の背番号「4」を永久欠
番にすることを決めました。

 時が経ち、平成18年(2006年)、東京ドームの外野席上に、読売ジャイア
ンツの永久欠番のプレートが掲示されました。
 東京ドームでの野球観戦で、この背番号「4」のプレートを見るたびに、
腸チフスで荼毘に付された黒沢選手の無念さを感じざるを得ません。
 もちろん、感染症で生命を落とすことになるまで、野球の試合に出場し続
けること自体を美化し過ぎてはいけませんが、劣悪な環境の中で感染症と戦
いながらグランドに散った選手がいたことを忘れないでいて欲しいと、黒田
投手の永久欠番のニュースを知ってご紹介したまでです。

 オレンジのタオルを回しながら、東京ドームの外野席でジャイアンツファ
ンの方々が歌うアニメ「侍ジャイアンツ」の主題歌。
 この歌が黒沢選手の鎮魂歌となっていると思うのは、私の勝手な思い込み
なのでしょうか。
 (注:「侍ジャイアンツ」の主人公で、数々の魔球を投げる番場蛮投手
はジャイアンツの背番号4という設定なのです。)

 では、次回もどうぞよろしくお願いします。

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永久欠番「4」プレート
永久欠番「4」プレート(提供:東京ドーム)

東京ドームにて
読売巨人軍の永久欠番(提供:東京ドーム)

◆「あさコラム」vol.29「命を守る防具」(2016年11月11日)※11月21日訂正

こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 11月に入り、既に北国からは雪の便りが届いていますが、例年どおりイン
フルエンザの流行が懸念される季節になってきました。
 今年は流行の立ち上がりが早い様子です。
 手洗い、マスク、咳エチケット、ワクチン接種など、インフル予防にご留
意頂きますよう、お願い申し上げます。

 「シューズは命を守る防具なんです!」
 Qちゃんことシドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子選手の一言
が、たくさんの市民ランナーの心に刺さりました。
 11月3日(木)、東京有明で開催された「スマイル アフリカ プロジェクト
ランニングフェスティバル2016」の閉会式でのこと。
 高橋さんは訴えます。
 「歩いたり走ったりするためではなく、ケガや感染症から身を守るために
も、シューズはとても大切なものです」と。

 少しさかのぼって、10月のとある日。
 「浅沼さん!ケニアのスナノミ、何とかできない?」
 結核対策などでお世話になっているNPO法人日本リザルツの白須紀子代表か
ら電話を頂きました。
 聞けば、ケニアの貧困地域で活動している日本リザルツの白石さんという
インターンが、現地でスナノミ問題に関心を持っていて、相談を持ちかけられた
とのこと。

 スナノミとは、名のとおり「砂のノミ」で、ノミの一種。
 アフリカや中南米、インドなどに生息していますが、スナノミが足裏に寄
生するとスナノミ症を起こします。
 スナノミ症が発症すると、足裏の皮膚がボロボロになり、重傷になると
歩けなくなってしまい、重篤化すると死に至ることもあります。
 何か特効薬があるのではなく、まず衛生状態の確保、特に靴を履くことが
スナノミ症予防で大事なこと。
 しかし、この靴を履くという日本では当たり前のことが、靴が買えないケ
ニアの貧困地域の人たちにはできないのです。
 今年、第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)が開催されたケニアですが、約
200万人の方がこのスナノミ症に感染していると聞いています。

 「う〜ん、予防にはやはり、靴を履くことが大事なのですがね…。」
答えた私の頭によぎったのは、「スマイル アフリカ プロジェクト」。
 雑誌ソトコトの編集長・小黒一三さんが2009年に立ち上げたプロジェクト
で、履かなくなったシューズを集めてケニアの子どもたちに贈っている活動
です。
 この活動に賛同した高橋尚子さんが積極的に活動に取り組んでおり、学校
やランニング大会などで「Qちゃんスマイル」とともに、このプロジェクト
を熱くアピールしています。
 また、高橋さんは、シューズを渡しに実際にケニアに何度も訪問し、ケニ
アの子どもたちと触れあっているそうです。
 今回、その素敵な体験談をお聴きし、高橋さんの行動力と感性の素晴らし
さに改めて心を打たれました。

 白須さんにこの活動をご紹介したところ、さすがは即行動のヒト。
 スマイル アフリカ プロジェクトとの連携を活かし、「ランニングフェス
ティバル2016」に日本リザルツの長坂さんを派遣して、この活動をサポート
してくれました。
 シドニーパラリンピック車いす800m銀メダリストの廣道純さんもゲストで
参加されたフェスティバルは大いに盛り上がり、たくさんの方々が楽しそう
に走っていました。
 またこの日はシューズの特別無料回収も行われ、私も自宅にあったランニ
ングシューズを洗って乾かし、1足、寄贈させて頂きました。
 この日だけで、シューズは何と290足以上も集まったそうです。

 このプロジェクトの素晴らしいところは、わが国得意の「もったいない」
を伝えるということ。
 新しい靴やお金を寄付するのではなく、私たち一人一人が履かなくなった
シューズを洗って乾かし、そのシューズを思い出とともに寄贈する。
 こうした草の根の国際協力活動が、大人も子どもも世界の困窮ぶりに目を
向けるきっかけとなってくれたら良いなと思っています。

 最近、仕事に追われてランニング不足の私ですが、来年のランニングフェ
スティバルでは仲間を誘って、高橋さんと一緒に走りたいと考えています。
 もちろん、洗ったシューズを1足持参しますね。

 では、次回もどうぞよろしくお願いします。

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スマイルアフリカ

大会風景
大会風景


私からも1足!


閉会式

◆「あさコラム」vol.28「猪鹿腸」(2016年11月4日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 去る11月1日、元宇宙飛行士で日本科学未来館長の毛利衛さんを議長にお迎
えし、「薬剤耐性(AMR)対策推進国民啓発会議」が開催されました。
 会議の冒頭、塩崎恭久厚生労働大臣から、本年5月の伊勢志摩サミットや9
月のG7保健大臣会合、さらには国連総会のハイレベルイベントでも世界的課
題として議論された薬剤耐性(AMR)対策について、その重要性を国民の皆様に
知って頂けるよう、啓発普及にしっかり取り組んでいく旨の挨拶がありまし
た。
 2050年には、世界全体において、がんによる死亡者数を超えるとの推計も
ある薬剤耐性(AMR)感染症の問題。
 身近にできる対策としては、手洗い、うがい、マスク、咳エチケットやワ
クチン接種でまずは感染症を防ぐ、感染症にかかったら適切な服薬に努める
などが重要です。
 そして、ヒトに留まらず、動物、農業、環境の分野横断的な「ワンヘルス・
アプローチ」をキーワードに、厚生労働省はもとより、政府が一丸となって、
薬剤耐性(AMR)対策に取り組んでまいります。
 11月は世界保健機関(WHO)が抗菌薬啓発週間(11月14日〜20日)を設けて
いるのにあわせ、わが国も「薬剤耐性(AMR)対策推進月間」として設定いた
しました。
 皆様も、薬剤耐性(AMR)対策にぜひご注目下さい。

 さて、今回はワンヘルスつながりで、イノシシとシカのお話です。
 皆様はイノシシとシカを動物園以外で見たことがありますか?
 私はさすがに生きたイノシシは見たことはありませんが、神奈川県の足柄
峠周辺で、イノシシの皮干しを見たことがあります。
 シカの方は、秋田県能代市周辺の国道7号線沿いに出没したのを見たこと
があります。
 威風堂々と立つシカの姿を見た時は、さすがにビックリしました。

 このようにイノシシもシカも、花札で馴染みがあるように案外と身近に存
在するため、中山間地域などで農林業被害を及ぼす害獣として悩みの種にな
っています。
 しかも、こうした被害は、ますます深刻化・広域化していることから、平
成20(2008年)年2月に「鳥獣による農林水産業等に係る被害防止のための
特別措置に関する法律(鳥獣被害防止特措法)」が施行されました。
 この鳥獣被害防止特措法が平成24年(2012年)3月に改正され、捕獲した
野生鳥獣を食品として利用を図るよう、取組みが進められています。
 いわゆるジビエですね。
 ちなみに、ジビエとはフランス語で、狩猟で捕獲した野生鳥獣の肉や料理
のことを指します。

 ジビエ推進の対象鳥獣としてはイノシシとシカがダントツで、ぼたん鍋
(猪鍋)や鹿肉カレーなど既に普及が進んでいます。
 私もかつてシカの大和煮の缶詰をお土産に頂き、食べてみましたが、意外
と美味しいかった記憶があります。
 しかし、このイノシシ肉やシカ肉を生や加熱不十分で食べると、E型肝炎
や腸管出血性大腸菌、住肉胞子虫やウエステルマン肺吸虫、トキソプラズマ
などの寄生虫に感染するリスクがあるのです。
 ジビエを流通させるなど、業を行うには食品衛生法の規制の対象になりま
すが、業以外の場合でも、狩猟から消費に至るまでのジビエの安全性確保の
ための取組みとして、「野生鳥獣肉の衛生管理に関する指針(ガイドライン)」
を厚生労働省で作成しています。
 また、ジビエ活動が盛んな自治体においても、衛生管理の方法などのガイ
ドラインやマニュアルが用意されています。

 こうしたガイドラインを遵守することが衛生上は大切ですが、何と言って
も、生肉を食べない、肉をしっかり加熱をする、というのが、ジビエでも牛
や豚、鶏など通常の食肉でも、共通する感染症対策の基本です。
 特に妊婦の方は、生肉を食べたことでトキソプラズマに感染し、その結果、
お腹の赤ちゃんが先天性トキソプラズマ症に感染することもありえます。
 かつては、ユッケや生レバーによる大きな食中毒事件も起き、死亡された
方も出ています。

 食欲の秋深しですが、ジビエを生で食べてお腹を壊し、予期せぬ感染症に
罹患することないよう、ぜひご留意下さい。
 とにかく、加熱を忘れずに。

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猪鹿腸
猪鹿腸

◆「あさコラム」vol.27「ロミオとジュリエット」(2016年10月28日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 鳥取県中部地震で被災された方々、また関係の皆様、心からお見舞い申し
上げます。
 避難所も立ち上がっていますが、季節の変わり目ということもあり、避難
所でのインフルエンザやノロウイルスなどの集団発生の心配もあります。
 感染防止の基本は手洗いやうがい、咳エチケットやマスクの着用、トイレ
などの共用施設の清掃や消毒といったところです。
 避難生活はとても大変だと思いますが、私たちも感染症対策の立場からサ
ポートしていきたいと思います。

 さて、先日、はばたき福祉事業団主催の「第6回はばたきミニコンサート」
に参加し、歌曲やシャンソン、ジャズなど様々な音楽を聴いたり、参加した
方々と合唱したりと、素敵なひとときを過ごすことができました。
 大平勝美理事長さんや全国訪問看護事業協会の伊藤雅治さんとご一緒したト
ークのコーナーでは、高齢化に伴う薬害エイズの被害者の方々への一層のご支
援と薬害エイズを風化させない決意を表明して参りました。
 毎年、春(3月〜4月)には本格的なクラシックコンサートである「はばたき
メモリアルコンサート」も開催されていますので、ぜひコラム読者の方々にも
お越し頂きますよう、お願いいたします。

 ということで、芸術の秋を迎えて思い出すのは、英国の劇作家であるウィリ
アム・シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」。
 皆様も読んだことがあるかも知れませんが、オペラやバレエ、ミュージカル
として上演されたり、TVドラマとして放送されるなど、わが国でもよく知られ
ています。
 かつては宝塚歌劇団でもミュージカルが上演され、今年も東京と大阪でミュ
ージカルが公演されるなど、根強い人気がある作品です。

 14世紀のイタリア・ヴェローナで、長年対立するモンタギュー家とキャピュ
レット家。
 そのモンタギュー家の一人息子ロミオとキャピュレット家の一人娘ジュリエ
ットとが恋に落ち、二人は修道士のロレンスの元で秘かに結婚します。
 しかし、直後に悲劇が訪れ、二人はバラバラに。悲しみにくれるジュリエッ
トは、親から富豪のパリスとの結婚を命じられます。
 ピンチになったジュリエットは、修道士ロレンスに相談、仮死状態にする薬
を使った一芝居を企てます。
 その企てを知らせる手紙がロミオに届かず、ジュリエットが死んだと思った
ロミオは、彼女の墓の前で自殺。
 仮死から目覚めたジュリエットも、ロミオを失った悲しみに暮れて、ロミオ
の短剣で後追い自殺。
 「おお、ロミオ、ロミオ。どうしてあなたはロミオなの?」
 と、トートロジーのようなジュリエットの台詞が有名なこのロミオとジュリ
エットは、ざっと言えばこういう悲恋の物語です。

 さて、ここで問題!
 なぜ、ジュリエットの企てを知らせる手紙が、ロミオに届かなかったのでし
ょうか?
 それはこの手紙をロミオに運ぶ使者の僧が、その途上、ペストの患者さんに
遭遇し、その患者さんとともに家に閉じ込められてしまい、足止めを食らって
しまったからです。
 あぁ、何と言うことでしょう!
 実はこの悲恋を仕掛けた張本人はペストだったのです。

 調べてみると、「ロミオとジュリエット」の初演は1595年前後のロンドンと
言われていますが、1592〜94年にはロンドンでペストの流行があったとされて
います。
 この頃の状況は、第71回アカデミー賞作品賞の映画「恋におちたシェイクス
ピア」にも描かれていますが、ペストの流行のためロンドンの劇場は閉鎖が相
次ぐなど、ペストがロンドン市民の生活に対して強いインパクトを与えていました。
 ドイツを起源とする「ハーメルンの笛吹き男」もペストと関係が深いネズミ
退治のお話で、いかに西欧がペストで悩まされていたのかが伺えます。

 ネズミとノミで媒介されるペストは、敗血症症状を起こすことから黒死病と
も呼ばれたペスト菌が原因の感染症です。
 しかし、検疫やネズミの駆除など公衆衛生の向上、ネズミの生態の変化、ワ
クチンや治療薬の充実により、先進国では滅多に起きない感染症となりました。
 最近の「ロミオとジュリエット」の上演でも、ペストのくだりを端折る事が
多いようです。
 そのためこの戯曲は、LINEも電子メールも電話もない時代ならではの「す
れ違い」による悲恋の話と思われがちですが、実はその裏にはこんな感染症が控え
ていたんですね。

 「真実の愛はうまくいかないものだ(ウィリアム・シェイクスピアの格言)」

 では、次回もどうぞよろしくお願いします。

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「ロミオとジュリエット」
「ロミオとジュリエット」の悲恋を仕掛けた張本人はペストだった

◆「あさコラム」vol.26「舞子Villa Beach」(2016年10月21日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 国立感染症研究所によりますと、マイコプラズマ肺炎の1週間当たりの患者
報告数が、感染症法に基づく1999年の調査開始以降で過去最多レベルになっ
ています。
 マイコプラズマ肺炎は、マイコプラズマという病原体を原因とする呼吸器
感染症。
 飛沫感染や接触感染などで広がり、重症肺炎になるケースも。
 また、中耳炎や溶血性貧血、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎などを合併するこ
ともあります。
 かつては4年周期でオリンピック開催年に大きな流行を繰り返してきたこと
から「オリンピック病」と呼ばれていましたが、まさに今年はリオデジャネ
イロオリンピックの年。
 このジンクスは復活したということなのでしょうか?
 手洗い、うがい、マスクの着用、早期の受診など、ぜひ予防に心がけたい
ものです。

 かくいう私も、実は今から26年前の春、このマイコプラズマ肺炎に罹患
しました。
 最初は風邪を引いたのかな?程度に思っていたところ、段々と体調が悪く
なり、近医を受診。
 いわゆる風邪薬を処方していただき、様子を見ていたところ、体調は戻る
どころかますます悪化。
 熱と咳が出て、呼吸は苦しくなるばかり。
 再度受診し、胸部X線写真を撮ったところ、肺は両側とも真っ白け。
 「これはいったい何なのだろう?」と、できの悪い医学生だった私が出し
た結論は「マイコプラズマ肺炎」でした。

 「う〜ん、全く良くならないねぇ…」と心配してくれた内科の先生に
 「先生、もしかしてマイコプラズマ肺炎なんじゃないですかねぇ?」とお
そるおそる尋ねると、
 「そうかなぁ?じゃ、処方を変えてみようか!」と、頂いたお薬が、今で
も忘れはしない「ジョサマイシン」。
 マクロライド系の抗生物質です。

 藁をもすがる思いでジョサマイシンを服薬しはじめると、あら不思議!
 服用2日目にも関わらず、体調が一気に改善。
 その後はみるみる回復し、1週間後の再診時にはすっかり元気になりまし
た。

 「君、大当たりだよ!」
 前回受診時に採血した血液検査データを先生から見せてもらうと、マイコ
プラズマの抗体価がびっくりするほど高力価を示していました。
 おお!これぞまさに診断学的治療だなぁと自己満足し、足取り軽く帰宅の
途につきました。
 やはり、精度の高い診断と適切な治療が重要ですね。

 この年の秋、時の人気ミュージシャン・大江千里さんが「Apollo」という
CDアルバムを発売しました。
 その中の一曲、「舞子Villa Beach」という曲を聴く度に、「舞子Villa
Beach♪」というフレーズが、なぜか「マイコプラズマ」と聞こえる空耳アワ
ー状態になったとかならなかったとか。
 この曲を聴きながら、医師国家試験の勉強に励んだことも、マイコプラズ
マの思い出です。
 ※ちなみに、舞子とは女性の名前ではなく、兵庫県神戸市垂水区にある瀬
戸内海に面する素敵な海辺です。 

 そういえば第3回神戸マラソンに出場した時も、折り返し地点だったこの
舞子の地を走り抜けた時、頭の中になぜか「マイコプラズマ」が思い浮かび
ました。
 こんなマイコプラズマですから、きっと一生忘れませんね。

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発生動向_マイコプラズマ肺炎
マイコプラズマ肺炎の1週間当たりの患者報告数が、感染症法に基づく1999年の調査開始以降で過去最多レベルに。

◆「あさコラム」vol.25「5人揃って!」(2016年10月14日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 おかげさまで、保健所をはじめとする各自治体の皆様や国立感染症研究所
の取り組みもあり、関西国際空港事案や千葉事案などの麻しん事例も終息の
途につきました。
 厚生労働省も、専門家の派遣、ワクチンの調整など、現場への支援を果た
すことができました。
 しかし、定期接種の確実な実施、20歳後半から30歳代を中心とするワクチ
ン未接種者の方々への接種勧奨、早期発見・早期治療の推進など、麻しん対
策はこれからも続きます。
 今後とも、麻しん対策へのご理解とご支援をよろしくお願いいたします。

 さて、今回は、感染症危機管理専門家養成プログラム(Infectious Disease
Emergency Specialist Training Program(IDES))について、取り上げます。
 国際的に脅威となる感染症に対応するためには、感染症に関する臨床経験
や疫学知識のみならず、行政マネジメント能力、国際的な調整能力等、総合
的な知識と能力を持つ人材が求められています。
 しかし、一昨年の西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行への対応の際に
痛感したのは、該当する人材がわが国に少ないということ。
 その解消のためには、こうした知識と能力を有する人材を継続的に育成し、
国内外で活動しやすい環境を作ることが重要です。
 そこで、厚生労働省では、感染症危機管理専門家養成プログラム(IDES)
を昨年から開設し、国際的に脅威となる感染症の危機管理対応において、中
心的な役割を担うリーダーの育成に取り組んでいます。

 IDES 1期生の4人は1年目の国内の研修を既に終え、現在、WHO(世界保健
機関)、米国保健福祉省・CDC(米国疾病予防管理センター)、イングランド
公衆衛生庁等にて、各々研修中です。
 そして、この10月、IDES 2期生の5人全員がようやく揃いし、1年目の国内
研修を実施しています。

 5人揃って…と言えば、石ノ森章太郎さん原作の元祖スーパー戦隊シリーズ
「ゴレンジャー」。
 ということで、2期生5人をゴレンジャー風にご紹介いたします。
 ※あくまで個人の感想です。

・井手さん 福岡出身、熊本育ちの九州男児、最年長で冷静沈着。IDES 2期
      生のリーダー的存在で、まさにアカレンジャーのごとく。
・船木さん 俳優の奥田瑛二さんそっくりのクールなイケメン。しかし、ハ
      ートは熱く、まさにアオレンジャーのごとく。
・鎌田さん サッカーとアフリカ大好きの元気印。いつもポジティブ、根っ
      から明るいムードメーカーは、まさにキレンジャーのごとく。
・中村さん 紅一点の彼女も九州出身。物静かな優しい微笑みの奥にある芯
      の強さは、まさにモモレンジャーのごとく。
・齋藤さん モダンジャズが似合いそうなダンディな人柄。知的な雰囲気を
      漂よわす、まさにミドレンジャーのごとく。

 将来、国内外で感染症に立ち向かうべく、この2期生5人が団結し、厚生労
働省や検疫所、国立感染症研究所、国立国際医療研究センターで、日々研修
に取り組んでいます。
 彼らが世界に羽ばたく平成の野口英世博士として活躍してくれることを、
私も大いに期待しているところです。

 なお、現在、厚生労働省ではIDES 3期生を熱烈募集中です。
 各種条件がありますが、今ならギリギリ応募に間に合います!
 ぜひ、挑戦してみたいという方々!ご検討、どうぞよろしくお願いいたします。
http://www.mhlw.go.jp/kouseiroudoushou/saiyou/kikikanri/index.html

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感染症危機管理専門家養成プログラム
感染症危機管理専門家養成プログラム(IDES)のながれ(イメージ)

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◆「あさコラム」vol.24「感染研一般公開!」(2016年10月7日)




 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 本コラムに対しまして、皆様から激励あり、お叱りありと、色々な感想を
メールでいただいています。

 ひとつ、ひとつ、楽しみにしながら読ませていただいております。
 心から感謝です、誠にありがとうございます!

 臨時国会も召集され霞ヶ関界隈も慌ただしくなってきましたが、「継続は
力なり」、ネタが続く限り毎号コラムを書き続けてまいりたいと思います。

 さて、今回は去る10月1日土曜日に開催されました「国立感染症研究所戸
山庁舎(以下、感染研)」の一般公開についての報告です。
 この日は「都民の日」ということで、都内各地で催し物が開催されていた
にも関わらず、400名以上もの方にお集まりいただけました。

 一般公開では、感染症にまつわるパネル展示やクイズ、ゲームや工作、標
本展示や写真展、体験コーナーなど、様々な催しが繰り広げられていました。
 今年、何かと話題になりましたジカウイルス感染症やAMR(薬剤耐性)に
ついても、講演あり、パネルありと、たくさんアピールしてくれました。
 どちらのコーナーも大盛況で、対応する感染研職員の皆さんの説明ぶりに
も、熱がこもっていましたよ。
 ちなみに、午前中には「知って、肝炎プロジェクト」という肝炎予防の啓
発イベントも開催。元プロレスラーの小橋建太さんが来場し、肝炎予防のPR
に協力してくれました。

 私も自ら体験!ということで、防護服のひとつである屋外用陽圧スーツを
着用させてもらいました。
写真のとおり黄色の防護服だったので、何となくポケモンのピカチュウみたい。
 もちろん、かわいくはないですが、着用してみると、ジッとしているだけ
でも暑くて暑くて…。
 滝汗が止まりませんでした。

 私も、感染症にまつわる科学をわかりやすく説明するコーナーである「サ
イエンスカフェ」に出番をいただき、講演させていただきました。
 お題は「感染症五十三次」。「大山詣り」という古典落語を絡ませて、江
戸時代における天然痘対策にまつわる話です。
 理系のサイエンスというより、歴史学というサイエンスですかね(こじつ
け)。
 でも、いつか、皆様にもお披露目できるよう、話術を鍛えてきます。

 ひととおり見学と役目も終えたところ、感染研の倉根一郎所長とお話しし
ました。
 この一般公開、かつては学会発表のような高度な内容が主体だったのです
が、情報公開の一環として感染研の活動をより多くの国民の皆様に知っても
らいたいと、現在のかたちになったようです。
 大人から小さなお子様まで楽しめる豊富な内容になっており、コーナーを
全て回れば、誰でもちょっとした感染症博士になった気分になります。

 今回の関西国際空港での麻しん感染や長崎県対馬市の日本脳炎の発症など、
各地での感染症対策で大変お世話になっている感染研。
 国の研究所なのでお堅いイメージもありますが、感染症から皆様の生命を
守ってくれている専門機関です。
 こうした機会を通じて、一人でも多くの方々に感染研の活動を知っていた
だけたら幸いです。
 どうぞよろしくお願いいたします。

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パネル展示会場
パネル展示会場

パネルの前にて
パネルの前にて

防護服のひとつである屋外用陽圧スーツ
防護服のひとつである屋外用陽圧スーツ

サイエンスカフェで講演
サイエンスカフェで講演

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◆「あさコラム」vol.23「かえり船」(2016年9月30日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 前回のコラムでは、狂犬病に関連してカメ犬を取り上げました。
 狂犬病はヒトの死亡率が高い感染症ですが、犬の登録や予防注射といった
取り組みの結果、現在、わが国では、犬などを含めて狂犬病の発生はありま
せん。
 しかし、狂犬病は世界のほとんどの地域で依然として発生しており、わが
国は常に侵入の脅威に晒されています。
 今回の麻しん事案の例を取るまでもなく、万一の侵入に備え、日頃からの
備えが大切です。

 ちなみに、狂犬病ワクチンの注射率は、犬の登録頭数に対して毎年70%ち
ょっと。
 但し、平成26年度の注射率では、一番高い長野県の93.1%から一番低い沖
縄県の50.3%と、都道府県格差が大きくなっています。
 ぜひ、犬の飼い主の方一人一人が、狂犬病に関して正しい知識を持ち、犬
の登録と予防注射を確実に行っていただきたいと願うばかりです。

 さて、犬は犬でも、ウナギイヌを創作したのは漫画家の故・赤塚不二夫さ
ん。
 その赤塚さんが第二次世界大戦終結後の昭和21年(1946年)6月、満州から
引き揚げて帰国した場所が、引揚港に指定された佐世保市浦頭港です。
 当時の長崎県佐世保市の針尾島浦頭の地には、昭和20年(1945年)から
「厚生省佐世保引揚援護局検疫所」が置かれ、同年から昭和25年(1950年)
まで、引揚船1,216隻、約140万人の引揚者の方々が、中国大陸や南方諸島か
ら帰国しました。

 「引揚検疫史」に基づく引揚検疫実績によりますと、昭和20年(1945年)
10月から昭和21年(1946年)12月までの佐世保港における検疫人員は約112万
人、782隻の検疫船舶数のうち汚染船舶数は104隻。
 この間、コレラの患者数は299名で死者72名、発疹チフスは患者数107名で
死者7名、痘そう(天然痘)は患者数29名で死者5名となっています。
 現在ではコレラは適切に治療できる消化器感染症となりましたが、漢字で
「虎列剌」と書くほど、当時は致死率の高い感染症でした。
 祖国を前にコレラが発症したため上陸できず、沖で停留された船内で死亡
された方も決して少なくありません。

 また、検疫所では、必要な引揚者の方々に対して、コレラ、痘そう、発疹
チフス、腸チフス、パラチフスの予防接種も行われており、総計226万件
(重複含む)の予防接種が実施されました。
 検疫や予防接種の後、佐世保引揚援護局で事務手続きを終えた引揚者の方
々は、当時の国鉄大村線の南風崎(はえのさき)駅から引揚列車に乗って、そ
れぞれの郷里へ戻られたそうです。
 現在のハウステンボスの近くにある南風崎駅ですが、ここから東京まで、
遠路直通で引揚列車が走っていたとか。

 その後、佐世保引揚援護局検疫所は昭和23年(1948年)から佐世保検疫所
となりましたが、検疫業務量の縮小とともに、昭和50年(1975年)には長崎
検疫所佐世保支所と本所から格下げされ、平成3年(1991年)には長崎検疫
所佐世保出張所となり、現在の佐世保港に移っています。
 一方、旧佐世保検疫所跡地を見下ろす丘陵部には、「浦頭引揚記念平和公
園」が昭和61年(1986年)に開園、園内には引揚記念資料館が設置されてい
ます。
 資料館の展示室には、引揚げ経路のジオラマや当時の引揚者の方々の衣服、
引揚証明書、DDT消毒に用いられた器具などが飾られており、当時の引揚検疫
業務の面影を伺うことができます。
 ちなみに、この資料館は入館無料なんですよ。
 遠くには、国の重要文化財に指定されている3本の巨大な針尾無線塔(旧
佐世保無線電信所)が望め、また、園内には平和の像と故・田端義夫さんの
「かえり船」の歌唱碑が建立されています。

 かえり船なのにコレラで帰らぬ人になってしまった悲しみを無にしないよ
う、感染症対策に励みたいと思う次第です。

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引揚記念資料館前広場より平和の像を臨む
引揚記念資料館前広場より平和の像を臨む

南風崎駅からの引揚列車
南風崎駅からの引揚列車

「かえり船」歌唱碑
「かえり船」歌唱碑

◆「あさコラム」vol.22「カメ犬」(2016年9月23日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。
   
 前回、麻しんの予防接種歴にかけて、記憶と記録のお話をいたしましたが、
その直後、横浜DeNAベイスターズの三浦大輔投手が引退を発表しました。
 平成3年(1991年)に入団し、横浜ひと筋25年。
 リーゼントが似合うハマの番長として、まさに記憶と記録に残る投手でした。
   
 さて、その三浦投手、現在の背番号は18番ですが、入団時の背番号は何番だ
ったでしょうか?
 ・・・といった、マニアックな質問を記憶だけで正解できるのは、コアな横浜
ファンのみだけではないでしょうか?
 それほど、大事なことの確認について、過去の記憶だけに頼るのはいかがな
ものかと、思うのです。
 やはり、記録は大切ですね。
   
 さて、今回の話題は「カメ犬(かめいぬ)」です。
 カメ犬と聞くと、皆さんはどんな犬を想像されますか?
 中には「亀の甲羅を背負った犬」を思い浮かべた方がいらっしゃるかも知れ
ませんね。
 かつての私もそうでした。
 しかし、赤塚不二夫さんのマンガのウナギイヌじゃあるまいし、さすがにそ
んな犬は存在していません。
   
 一説では、明治時代に西洋人が「Come here!」と飼い犬を呼んだところから、
カメ(Come)を犬の意味としてとらえ、カメ犬は西洋犬のことであるとされて
います。
 この説はかなり有力なのですが、他にもカメ犬は「噛む犬」、「オオカミの
ような犬」という説もあるようです。
 諸説ありますが、私が初めてカメ犬の存在を知ったのは、ハマの番長が一軍
デビューした平成4年(1992年)、秋田県鷹巣保健所勤務の時でした。
   
 秋田といえば、ご存じ「秋田犬」という、由緒正しい日本犬のふるさとです。
 今や天然記念物の日本犬種のひとつである秋田犬、かの渋谷の忠犬ハチ公で
も有名です。
 実は、「秋田犬」は「あきたけん」ではなく、「あきたいぬ」と読むのです。
(ちなみに、「あきたけん」と読むヒトは、秋田県外のヒトとのこと。)

 その秋田、県北地方の大館市や鷹巣町や北秋田郡(現在の北秋田市)では、
秋田犬以外の雑種のことを「カメ犬」と呼んでいました。
 例えば、秋田犬と秋田犬以外の犬とを交配させた雑種を大型犬として育て、
熊や鹿の狩猟をしていたマタギの狩猟犬として活躍していた犬もカメ犬。
 明治時代、小坂鉱山で指導していたドイツ人技師が連れてきたドイツ原産の
シェパードなどの洋犬と秋田犬を交配させて、闘犬などで活躍していた犬もカ
メ犬。
 同じくドイツ原産のダックスフントと秋田犬と交配させて誕生した胴長短足
の犬も、カメ犬。
 もちろん、ただの雑種犬もカメ犬として呼ばれていて、何が何だか当時の私
は戸惑うばかり。
   
 確かに、ドイツ原産などの洋犬との交配が多い秋田のカメ犬ですので、その
言葉の由来は「Come here!」説にも近いなぁという気もします。
 しかし、ドイツ語だとComeはKommですから、「コム犬」になってもおかしく
はないのですけれども・・・。
 その一方、秋田、県北地方と馴染みが深い津軽弁では、犬のことを「カメ」と
呼ぶと記述されている文献もあるとか。
 横浜や神戸など海外との往来が多い港町ならともかく、秋田の山間部におけ
る犬の呼称であることを考えますと、カメ犬は外来語説ではなく、方言説の方
がしっくりきます。
 また、ポチやタロウ、シロのように、カメは当時の犬の名前としてつけられ
ていたことから、一般的に犬をカメと呼ぶようになった説もあります。
 う〜ん、秋の夜長にカメ犬の謎は深まります。
   
 さて、9月28日は狂犬病ワクチンを開発したパスツールの命日を起源にした
世界狂犬病デー。
 狂犬病対策に取り組んでいた当時の鷹巣保健所獣医師の中田克平さんが、東
京から鷹巣町に来たばかりの私に、嬉しそうに熱く語ってくれたカメ犬のうん
ちく。
 中田さんや他の狂犬病担当の皆さんを思い出す時、どうしてもカメ犬のこと
も一緒に思い出すのでありました。

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◆「あさコラム」vol.21「記憶と記録」(2016年9月16日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 先日、広島東洋カープが25年ぶりにプロ野球セントラル・リーグの優勝を
飾りました。
 優勝を決めた試合、カープの支柱である黒田博樹投手と新井貴浩選手のベ
テラン両選手の男泣きには、カープファンならずとも涙を誘われました。
 今年は、黒田投手が日米通算200勝を、新井選手が通算2000本安打を達成し、
両選手にとって節目の大記録を残した1年にもなりました。

 実は、この広島東洋カープの前回の優勝時(平成3年)の前後に生まれた方々
を中心に、麻しん感染の心配があります。
 ご存じのとおり、麻しん対策については、平成18年度から麻しん予防接種を
1回接種から2回接種に移行するとともに、平成20年から5年間の臨時措置で、
当時の中学1年生相当の年齢の方(第3期)と高校3年生相当年齢の方(第4期)
へ予防接種を進めてきました。
 その結果、平成21年以降は患者数は激減、平成22年11月以降はウイルス分離
・検出状況によると海外由来型のみとなったことになりました。その結果、平
成27年3月27日、世界保健機関西太平洋地域事務局(WPRO)によって、わが
国が麻しんの排除状態にあることが認定されました。
 その一方で、全体の麻しん予防接種率の向上のおかげもあり、現在の20歳代、
30歳代を中心とする未接種者の方々が麻しんウイルスの感染から免れてきていた
とも言えるのです。
 今回の麻しん感染事例を見てみますと、やはり予防接種歴がない方々の感染
が多く、麻しんに関しては予防接種の効果の大きさを改めて感じているところ
です。

 もちろん、予防接種も万能ではなく、2回の予防接種で麻しんの抗体価が絶対
に上がるという訳ではありませんので、予防接種をしたのにもかかわらず麻しん
に感染される方もいます。
 しかし、その感染割合は低いというのが定説でしたが、とある事例報告によ
りますと、2回接種歴のある方々の麻しん感染比率が高かったとのことで、この
点、私も不思議に思っています。
 その理由を専門家の先生方にお尋ねしても、首をかしげて「よくわからない」
との回答ばかり。
 ただし、この事例報告では、麻しん予防接種歴の確認は母子健康手帳に留ま
らず、本人の記憶によるものも含まれているとのことでした。

 ここでふと胸に手を当ててみると、私の母子健康手帳は、遠くの実家にへそ
の緒と一緒に保管されているはずなのですが、この数十年、自分で確認したこ
とはありません。
 また、私の周囲で尋ねてみたところ、自分のお子さんの母子健康手帳は大事
に保管していても、自分自身の母子健康手帳は手元にない(実家にある)との
回答多数。
 こうした状況を踏まえると、麻しんに感染した20歳代以上の方々が、改めて
麻しんの予防接種歴を母子健康手帳で確認することは容易ではないと思います。
(実家に住んでいるならともかく、ですが・・・)

 今やIT・スマホの時代。
 予防接種歴を含めた個人の生涯の健康データについて、本人が容易に確認で
きる環境ができて当然ではないでしょうか。
 自治体によっては電子母子健康手帳の試行が始まっていますが、こういった
事業こそもっと促進し、更に踏み込んで電子生涯健康手帳なるものを開発して
欲しいものですね。
 麻しん流行が確認された現地で対応に追われている国立感染症研究所感染症
疫学センターの多屋馨子先生も、
 「『記憶で接種2回』なのか『記録で接種2回』なのかはとても重要。
 き『お』く と き『ろ』く、ひらがな一文字大違いという部分です。」
 と、鋭い指摘をされています。

 選手の初勝利や初安打、節目の勝利や安打などが直ぐに分かるのと同じく、
予防接種歴や罹患歴など感染症に関する情報について、本人が容易に確認でき
るよう、私も何か考えていきたいと思います。
 記憶も記録も大切なのは、プロ野球も感染症対策も同じですから。

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◆「あさコラム」vol.20「そして神戸」(2016年9月9日)

こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 シンガポールやマレーシアなどの東南アジアで国内感染が確認されるなど、
ジカウイルス感染症への留意はまだまだ必要です。
 9月になりましたが、蚊の駆除や虫刺され防止など、引き続きお願いいた
します。

 さて、先日、神戸市で開催された「第32回世界医学検査学会(IFBSL)」
にお伺いいたしました。
 この学会は、臨床検査に携わる世界中の臨床検査技師の方々が、新たな検
査手法などを発表する場として開催されたものです。
 我が結核感染症課もこの学会に参加、AMR(薬剤耐性)対策のパネル展示を
行うことで、AMR対策のアピールをさせていただきました。
 ただ、このパネルを発表するだけならば、遠く神戸に出張することを躊躇
しかねますが、実はこの出張には大事なミッションがありました。

 この日、秋篠宮ご夫妻がこの学会をご訪問され、式典でごあいさつをされ
ました。
 その後、展示ブースもご視察され、学会を主催する日本臨床衛生検査技師
会の宮島喜文会長からご説明を受けられました。
 皆様、気づかれましたね!
 結核感染症課の責務として、秋篠宮ご夫妻にAMR対策のパネルのご説明を行
うことが、私の大事なミッションだったのです。

 仕事柄、公益財団法人結核予防会の総裁たる秋篠宮妃紀子殿下にはお目に
かかったことがございますが、秋篠宮文仁親王殿下にお目にかかるのは生涯
初めて。
 しかも、ご挨拶だけならともかく、AMR対策という立て込んだ話をご説明さ
せていただくことになるとは、それはそれは大いに緊張いたします。
 大丈夫か、私。

 ご説明の事前準備を、IDES(感染症危機管理専門家養成プログラム)の船
木医師、鎌田医師の両君とともに取り組み、説明の順番をお待ちしていると、
羽織袴姿の宮島会長を先導に、仲睦まじく秋篠宮ご夫妻が我が結核感染症課
のパネルの前にいらっしゃいました。
 まさに大一番です。
 粗相のないよう、声の大きさと言葉の速さに万全の注意を払いながら、AMR
の現状や課題、アクションプランなど、秋篠宮ご夫妻に対して心を込めてAMR
対策についてご説明させて頂きました。
 その時間、5分。

 ご説明後、秋篠宮殿下からは
「抗菌薬を使いすぎると、耐性菌ができるんですね。適正使用が大事ですね。」
 と、お言葉を優しくかけて頂きました。
 また、「結核でも、不適切な治療から耐性菌が生まれてしまいます。」と、
ご説明した際には、紀子妃殿下は笑みを浮かべ、その後、国立感染症研究所
がご用意したAMRの資料をお持ちになられました。
 さすがは結核予防会 総裁でございます。

 私どもの隣のパネルで、同様に秋篠宮ご夫妻にご説明された国立感染症研
究所細菌第2部長の柴山恵吾先生も、
 「国際学会の発表よりも緊張した!」と発せられたほど、得がたい体験で
した。
 しかし、このAMR対策、感染症対策の中でも地球規模の課題であり、まさ
に国家をあげて取り組んでいかなければならない課題だと、意を強くしてい
ます。

 特に、わが国のアクションプランの数値目標について、この学会で他国の
方々から「Challenging!」と揶揄されましたが、これが達成できなければ
アジアのリーダーにはなれません。
 そのためには、抗菌薬の適正使用について、医療関係者はもちろん、患者
サイドとなる国民の皆様のご理解とご協力なくしては目標達成には及びませ
ん。

 心を込めて、ご支援よろしくお願いいたします。

 
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会場入口にて
会場入口にて(左から、船木医師、浅沼、鎌田医師)

パネル前にて
パネル前にて

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◆「あさコラム」vol.19「身近な海外感染症対策」(2016年9月2日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 台風10号の被害に遭われた方々に、心よりお見舞いを申し上げます。
 麻しんの更なる発生やジカウイルス感染症のシンガポール国内感染など、
今週も慌ただしかったですが、台風による水害等の衛生対策にも抜かりない
よう意識を高めているところです。

 さて、今年の夏も例年どおり暑かったですね。
 身体を喉から冷やすとともに、脱水をしないよう、様々な場面で皆さんも
ペットボトルからたくさん水分を補給したのではないかと思います。
 便利なペットボトルですが、廃棄する際に、キャップも一緒に捨てて
いませんか?
 実はこのキャップ、何と海外の感染症対策にとても役立つのです。
 
 先日、私、日々課員に怪しまれながら、机の下でコツコツ集めたペットボ
トルキャップを持参し、横浜市金沢区にある「NPO法人 Reライフスタイル」
さんに行ってまいりました。
 Reライフスタイルさんでは、マテリアル(材料)リサイクルされやすいペ
ットボトルのキャップを集め、これを樹脂メーカーに売却し、その対価を
「認定NPO法人 世界の子どもにワクチンを日本委員会」(JCV)に寄付する
ことにより、ユニセフなどを通じ、世界の子どもたちへワクチンを届けると
いう活動に取り組んでいます。ちなみに、現在の支援国は、ミャンマー、ラ
オス、ブータン、バヌアツだとか。
 ペットボトル キャップのリサイクル活動は色々とあるのですが、ワクチン
を贈ることにつながる活動をしていただいているのは、感染症対策の立場か
ら嬉しい限りです。
 しかも、このReライフスタイルさん、事務局の永井さんのお話をお聞きま
すと、NPO法人の運営は31社の会員さんのご支援で行われており、売却した
キャップの対価は全額、JCVに募金されるというではありませんか!
 会員さん、何と太っ腹!頭が下がる素晴らしい活動です。
  
 さて、私が持ち込んだペットボトルキャップの量はというと…0.7kg、約
280個でした。
 結構ありましたね。
 これはパンフレットによりますと、DPT(ジフテリア・百日咳・破傷風)
やBCG(結核)だと1人分、ポリオだと0.5人分の購入価格に相当します。麻
しん関係のワクチンですと、この10倍ぐらいのキャップが必要なんですね。
 う〜ん、なるほど。
 
 今までは所属するランニングクラブを通じて、Reライフスタイルさんに協
力させていただきましたが、今回、実際に現場で取材をしてみて、ペットボ
トルキャップ回収は誰もが身近にできる素敵なボランティアだと再認識しま
した。
 海外の感染症対策、国際保健に対する貢献は、こうした取り組みでも可能
です。
 小さなことからコツコツと、まずは実践が大切。
 ReライフスタイルさんのHP(http://www.re-lifestyle.com/ )によります
と、各地にキャップの回収拠点がありますので、皆さんも、ぜひご家庭や職
場で、取り組んでみませんか?
 あっ、もちろん結核感染症課でも、ちゃんと取り組みますからね(宣言)!

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ポスター
Reライフスタイルさんのポスター

回収箱
ペットボトルキャップの回収箱

登録証
協力者登録証

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◆「あさコラム」vol.18「この横浜にまさるあらめや」(2016年8月26日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 各地で麻しんの流行の兆しが散見されています。
 ワクチンの接種歴がない方が海外渡航先で感染してくる輸入症例がきっか
けで、各所で免疫がない方が感染する・・・というパターンです。
 一つ二つのイベントで感染が拡大しているだけではなさそうなので、全国
各地、広く留意が必要です。
 わが国は排除状態となっている麻しんですが、感染力が強く、合併症の心
配もあり、未だ予断は許せません。

 その対策としては、
 ・「麻しんとはどのような感染症か」という啓発普及(感染力が強いため、
  発疹が出たら人混みにいかず、早く受診する。)
 ・麻しん予防接種の接種率の向上
 ・海外渡航者に向けた啓発普及(未接種者への予防接種、渡航先の流行状
  況の確認する。など)
 ・医療機関への受診の仕方の啓発(発熱と発疹が出たら、受診前に連絡し
  て医療機関にかかる。医療機関での感染を防ぐためにも重要。)
など、地道な取り組みが必要です。
 皆様のご支援とご協力、どうぞよろしくお願いいたします。

 さて、去る8月20日、横浜検疫所施設公開に行ってまいりました。
 お天気に恵まれず雨の中での施設公開になりましたが、それでも400名以上
の方にお越し頂いたとのこと。
 その関心の高さに驚いてます。
 私も久々に横浜検疫所の施設を訪れましたが、港湾衛生や輸入食品におけ
る検査で用いられる最新の検査機器が整備されていて、隔世の感でし
た。

 横浜検疫所は明治28年に長濱検疫所として開設された歴史のある検疫所で、
かつては野口英世博士が検疫医官補として赴任していた検疫所です。
 ちなみに、明治32年、野口検疫医官補は横浜港に入港した豪華客船・亜米
利加丸の船員からペスト菌を検出、日本の検疫業務の実力を世界に示したと
言われています。
 当時の検疫所の面影を残す施設は
 ・1号停留所
 ・細菌検査室
 ・事務棟
の3棟なのですが、このうち、細菌検査室と事務棟は隣接する長浜野口記念
公園の施設として現存し、常時公開されています。
(野口英世細菌検査室保存会の皆様の活動のおかげで、施設が維持されてい
ます)
 唯一、1号停留所だけは現在の横浜検疫所内の敷地にあり、この施設公開で
なければ観ることができません。

 この日、横浜検疫所の木村博承所長にご案内頂き、1号停留所を見学して
きました。
 この停留所は明治28年に創建。大正12年の関東大震災で壊滅しましたが、
何と翌年にはほぼ復旧したとのことで、当時の検疫の重要性について垣間見
ることができました。

 停留所に入ると、右手には明治の香りが漂う食堂があります。
 「この洋食器を見て下さい!明治にここまでの洋食器を揃えていたのは凄
いことなんです!」と力説する木村所長。
 そのココロは、世界各地から入港する客船等に乗船していた方々を停留す
るに当たり、食事が大事ということで、当時としては珍しい洋食を提供でき
るようになっていたのだそうです。
 当時は日本に数名しかいなかった洋食のコックさんが、検疫所に勤務して
いたとか。まさに「おもてなしの心」ですね。
 「人権に配慮した停留所だったんです」と、木村所長談。

 停留のための各部室は二人部屋になっていますが、そこには顕微鏡などの
当時の医療器具やベッドや木製の簡易洋式便器などが展示されていました。
 ベットには天井から蚊帳がつるされており、当時から蚊媒介感染症の拡大
防止の基本がなされていたと再認識。

 また、当時の防護服も展示してありました。
 素材こそ現在の化学繊維とは違いますが、まるで潜水服のような防護服の
コンセプトは、今の防護服と何ら変わらないものです。

 談話室には、後藤新平の書が掲げられ、優雅なソファーやテーブル、骨董
品と見間違うかの貴重な蓄音機やレコードまでがあり、明治の趣あふれる造
りになっています。
 短歌集会も行われていた記録もあり、かの有名な与謝野晶子女史も与謝野
鉄幹氏とともに来所された記録がありました。

 「されば港の数多かれど この横浜にまさるあらめや」

 横浜市歌の歌詞のとおり、今も昔も横浜港はわが国を代表する港。
 その横浜港で、今も昔も変わらない感染症の脅威に挑む横浜検疫所にはこ
のような歴史遺産があることを、皆様にも知って頂きたいと思います。
 1号停留所、わが国の感染症対策の歴史を知るための貴重な施設です。

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1号停留所
1号停留所

1号停留所の前にて
1号停留所の前にて

談話室
談話室

蚊帳がかかっているベッド
蚊帳がかかっているベッド

◆「あさコラム」vol.17「西のマダニ、北のマダニ」(2016年8月19日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 リオ五輪、日本選手の熱い戦いをTV中継で観るために、毎晩寝不足になっ
ている方も多いのではないでしょうか?
 わが国のメダルラッシュもさることながら、国を問わず出場選手の健闘ぶり
を見るたびに、感動を覚えます。

 そんなリオ・デ・ジャネイロですが、報道によると当局の徹底した蚊の駆除
により、蚊がほとんどいないという状況だとか。
 とはいえ、ブラジルが蚊媒介感染症の流行国であることには違いはありませ
ん。今後も油断せず、ブラジルからの帰国者を中心とする蚊媒介感染症対策に
努めていきます。

 しかし、蚊以外にも、小さくても、ヒトに恐怖を与える厄介な生き物がいま
す。
 それはダニです。

 刺されるとかゆい、発赤や腫れを起こす、アレルギーの原因となるなど、ダ
ニはヒトの健康に様々な悪影響を与えます。
 ダニの種類は確認されているだけで2万種を越えているそうですが、中でも、
今回のトピックスにも取り上げられたマダニは感染症対策上、注意すべきダニ
の一つです。

 マダニに刺されると、日本紅斑熱やライム病などの感染症にり患することが
知られていますが、特に問題となっているのは「重症熱性血小板減少症候群
(以下、SFTS)」です。
 SFTSは平成23年(2011年)に命名された感染症で、SFTSウイルスを持ったマ
ダニに刺されてウイルスに感染します。
 6日〜2週間の潜伏期間を経て発症した場合、発熱、嘔吐、下痢などを起こ
し、致死率は6〜30%程度とのこと。
 このウイルスを持ったマダニは国内で広く分布していますが、感染症発生動
向調査によりますと、これまでに203人の患者さんが西日本の20府県から届出
られています。
 このうち48人の方が、残念にも亡くなられましたが、現在のところ特異的
な治療法はなく、対症療法が中心となる感染症です。

 また、今年7月には、北海道でマダニに刺された方が「ダニ媒介脳炎」を発
症したことが確認されました。
 フラビウイルスであるダニ媒介脳炎ウイルスを持ったマダニに刺されること
によりウイルスに感染し、7〜14日の潜伏期間を経て、発熱や神経症状を呈す
る感染症です。
 致死率はウイルスによって数%〜20%と言われています。
 わが国では、平成5年(1993年)以来2例目の発症でしたが、感染した方は残
念にもお亡くなりになりました。
 ご冥福をお祈りいたします。

 このような重篤な感染症を引き起こすマダニに対しては、徹底的に戦ってい
かなければなりません。
 では、戦い方はどうするか?

 まずは、マダニに刺されないこと。
 特に、マダニの活動が盛んな春から秋にかけては、マダニに咬まれる危険性
が高まります。
 農作業や野山を散策をする場合、長袖・長ズボン、足を完全に覆う靴、帽子、
手袋を着用し、肌の露出を少なくすることが大事です。
 草むらやヤブなど、マダニが多く生息する場所に入る時は、特に注意が必要
です。
 マダニの付着が確認できるよう明るい色の服を着るなどの工夫をするととも
に、ディートなどの虫除け剤を活用することも効果的です。

 また、マダニに刺された場合、皮膚科等を受診して皮膚の刺し傷を確認して
もらい、炎症を起こしている場合は治療をしてもらいましょう。
 そして、数週間は体調の変化に注意をはらい、発熱等の症状が認められた場
合は、急いで医療機関で診察を受けて下さい。

 オリンピックも感染症対策も、戦い方が重要です。
 草むらなどには極力入らない、入る時は肌の露出を少なくするなど、マダニ
に勝つためには防御の戦術を取ること。
 その結果、生命のメダルを死守することになります。
 チームニッポン、よろしくお願いいたします。


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マダニ画像
SFTSウイルス遺伝子が検出されたマダニ

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◆「あさコラム」vol.16「神頼み」(2016年8月5日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 先日、米国フロリダ州マイアミ市のダウンタウンで、地元で蚊に刺されてジカ
ウイルスに感染した方が10名以上、確認されました。
 リオ五輪が開幕したブラジルでは、未だにジカウイルスやデング熱、黄熱の感
染の心配も尽きません。
 アジア、中南米を中心に、世界各地で蚊媒介ウイルス感染症が流行しています。

 私たち厚生労働省も、検疫所の検査体制の整備や流行状況などの情報提供に努
めてまいりますが、海外に渡航される方は、渡航先の衛生状況を確認するととも
に、蚊にはぜひご注意していただきたい。
 流行地に渡航された皆さんが蚊に刺されないように、ウイルスに感染しないよ
うにと、コルコバードのキリスト像をTVで見るたびに心から祈るばかりです。
(もちろん、国内でも、蚊に刺されないように、ウイルスに感染しないようにと、
祈っております)

 まさに「神頼み」ですが、まだウイルスや細菌が知られていない時代、感染症
は疫病神として祀りあげられていました。
 特に天然痘は「疱瘡神」として祀られ、症状が軽く済むようにと祈りを捧げた
ということが知られています。
 疱瘡神は別名、芋神とも呼ばれ、この神を祀った社寺が日本各地にありますが、
先の週末、こうした寺社のひとつである長昌寺(横浜市金沢区)へ行ってまいり
ました。

 長昌寺には天然痘除けの神様で知られる芋神様(芋観世音)が祀られ、通称、
芋観音と呼ばれています。
 この芋観音、戦国時代末期に時の地頭や村人たちによって観音堂が建てられた
のですが、昭和11年(1936年)頃、横浜海軍航空隊の開設にあたり、別当寺であ
る長昌寺に移されました。
 その昔、芋観音の池の水を用いると、天然痘が癒え、瘢痕がきれいに治ったと
評判になり、「疱瘡除けの観音様」として広く信仰されたそうです。
 江戸時代には、相模国や武蔵国などの近隣諸国から天然痘の瘢痕で悩む人々で
賑わったとのこと。
 旧東海道の程ヶ谷(保土ヶ谷)宿跡から分岐する古道にある「ほうそう守神富
岡山芋大明神江之道」との道標からも、当時の様子がうかがえます。

 ちなみに、写真に写っている芋神様の前の狛犬は、天保7年(1836年)の作品
です。
 う〜ん、歴史を感じますねぇ。

 天然痘については、種痘(ワクチン)の普及やWHO(世界保健機関)天然痘根絶
計画の取り組みにより、昭和55年(1980年)5月にはWHOが天然痘の根絶を宣言す
るに至りました。
 しかし、ヒトのウイルス感染症で根絶されたのは、この天然痘のみ。
 私たちは次から次へと、新興・再興感染症のリスクに晒される日々を送り続けて
います。
 こうした新興・再興感染症が起こらないこと、さらには、今般のリオ五輪で無事
にわが国の皆さんが帰国できることを、一生懸命に芋神様にお願いしてまいりまし
た。

 ちなみに、この芋神様、お詣りすればいかなる願いごとも叶えられ、容貌を美し
くしてくださるということです。
 乞うご期待!

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長昌寺
長昌寺

芋観音水屋
芋観音水屋

芋神様の前の狛犬
芋神様の前の狛犬

◆「あさコラム」vol.15「デング熱と公園」(2016年7月29日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 先日、フィリピンに滞在歴のある新潟県の30歳代の女性が、デング出血熱で
お亡くなりになりました。
 謹んでご冥福をお祈りいたします。

 この方はフィリピン滞在中にデング熱に罹患したと思われ、現地では症状も
あったようですが、帰国時には発熱もなく、検疫所の健康相談には訪れていま
せんでした。
 しかし、帰国直後に体調が急変され、医療機関でデング出血熱と診断、その
後の治療の甲斐なく荼毘に付されました。

 デング熱は、流行地で蚊に刺されることで感染する疾患で、年間数百例の海
外からの輸入症例が確認されています。 
 デング熱で亡くなるケースは決して多くはなく、わが国では平成17年(2005
年)以来11年ぶりの出来事でしたが、今回のようにデング熱の患者の一部がま
れに重症化してデング出血熱などを発症することがあり、死に至ることがあり
ます。

 亡くなられた女性は、まだお若く、大変残念でなりません。
 私からのお願いは、渡航先で体調を崩された場合には、帰国時に検疫所の健
康相談に必ずお立ち寄りいただきたいということです。
 検疫所では検疫医療専門職の渡航医学の専門医などが診断し、適切な対応を
してくれます。
 また、帰国後に何か症状が認められた場合には、医療機関の受診に際して海
外への渡航歴を告げていただくと、的確な診断・治療につながります。

 更に、デング熱やジカウイルス感染症など、蚊を媒介する感染症の流行地域
に渡航する場合は、長袖を着用したり、蚊の忌避剤(虫よけスプレーなど)を
使用するなど、蚊に刺されない予防策が必要です。
 そして、帰国後も、二次感染を防ぐために、国内でもできるだけ蚊に刺され
ないこと、これも重要なことです。
 来月8月にはリオ・デ・ジャネイロでオリンピック・パラリンピックも始まり
ますので、蚊の駆除も含めてぜひとも防蚊対策に取り組んでいただきたいとこ
ろです。

 ・・・と、何度もこうしたお願いをさせていただいているのですが、実は今、
困ったことが起きています。

 それは、アプリ「ポケモンGO」の大流行です。

 蚊に刺されないためには、草むらや公園の植え込みなど蚊が出没するところ
に近づかないことがポイントなのですが、この「ポケモンGO」、スマートフォ
ンの地図の中で、あちこちにポケモンが現れるため、蚊がいそうな場所でも、
お構いなくポケモンをゲットしに行く方が多数いるようです。
 しかも、特定の公園にはレアなポケモンがゲットできるそうで、こうした情
報がSNSで拡散し、たくさんの「ポケモンGO」ユーザーが昼夜問わず集まってい
るとのこと。
 「ポケモンGO」をプレイしながらの「歩きスマホ」、「ながらスマホ」は大
変危険で、交通事故やトラブルが発生していますが、ポケモン欲しさに蚊に刺
されながら草むらなどを徘徊するのも、感染症対策上、いかがなものかなぁと
思っています。
 事実、「ポケモンGOで一番得してるの蚊だと思う」というTwitterのリツィ
ート数が1万を超える勢いですから、何をか況んやという感じです。

 これには、さすがに困りました。
 皆さん、「ポケモンGO」をプレイする際には、夢中になり過ぎず、くれぐれ
も蚊にも用心して下さいね。

 ちなみに、今月(2016年7月発行)の病原微生物検出情報は「蚊媒介ウイル
ス感染症特集」です。
 http://www.nih.go.jp/niid/ja/iasr.html
 国立感染症研究所の力作ですので、ぜひ読んでください!

 では、次回もどうぞよろしくお願いします。

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ジカ熱・デング熱の感染源ヒトスジシマカに注意!
「ジカ熱・デング熱の感染源ヒトスジシマカに注意!」

◆「あさコラム」vol.14「ともだち」(2016年7月22日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。
 各地から梅雨明けの報告、これから本格的な夏到来ですね。

 さて、先日、放送作家の草分け的存在で、放送業界で長く活躍された永 六輔
さんが肺炎で逝去されたとの報道がありました。
 心からご冥福をお祈りいたします。

 永さんはテレビ業界の草創期に人気番組を手がけるとともに、自らもラジオの
パーソナリティとしても活躍されていました。
 また、国民的歌謡曲の「上を向いて歩こう」などの作詞、ベストセラー
「大往生」の執筆など、作詞家、作家としても業績を残しています。

 その永さんが作詞した歌のなかに、坂本 九さんの「ともだち」という歌があり
ます。
 昭和39年(1964年)10月中旬、全国社会福祉協議会の更井さんという方が、
ベッドスクールの仙台市立西多賀小・中学校療養所分校(現在の西多賀支援学校)
を訪問しました。その時に、ハンディにも負けず頑張っている子どもたちが
「人気歌手の坂本 九さんにベッドスクールの歌をぜひ歌ってほしい」との声が
ありました。
 更井さんは、子どもたちのこの想いを高校時代の同級生である永さんに相談した
ところ、永さんは快く受託。
 こうして誕生した歌が「ともだち」ですが、実はこの歌はベッドスクールの
歌だけに留まらなかったのです。

 昭和40年(1965年)3月13日、日本武道館にて開催された「第2回 あゆみの箱
チャリティーコンサート」で、坂本さんがこの「ともだち」を初めて披露しました。
 「あゆみの箱」は、俳優の伴 淳三郎さんと森繁 久彌さんの呼びかけで生まれた
福祉のための社団法人ですが、そのきっかけのひとつが小児麻痺、ポリオでした。
 「この募金箱で、手足の不自由な子どもたちが歩めるように」との思いを込め、
法人と募金箱は『あゆみの箱』と名付けられました。
 坂本さんの歌った「ともだち」は、『あゆみの箱』のチャリティーテーマソング
としても大ヒット。
 翌年の昭和41年(1966年)には、第38回選抜高等学校野球大会の入場行進曲にも
選ばれました。

 WHO(世界保健機関)で活躍された尾身 茂先生や国立感染症研究所の先生方
などの献身的な取り組みのおかげもあり、今では世界におけるポリオの根絶は
目前となっています。
 しかし、昭和30年代当時のわが国では、ポリオは感染症対策の大きな課題の一つ
でした。
 東京大学名誉教授の平山 宗宏先生の文献によりますと、当時は夏休みの時期に
なると、隔離病室はポリオ、日本脳炎、疫痢の患者さんで一杯という状況だった
そうです。

 その後、昭和36年(1961年)のポリオの生ワクチンの緊急輸入やNHKのキャン
ペーン運動、ポリオサーベイランス事業、ワクチンの定期接種化など、当時の
古井 喜実 厚生大臣をはじめとする先人の方々の英断とご尽力により公衆衛生
施策の充実が図られた結果、わが国のポリオは根絶、たくさんの子どもたちの
未来を豊かにしてくれました。
 私もその子どもたちの一人だったんだなと、永さんの追悼番組で流れていた
「ともだち」を聴きながら、感慨にふけりました。

 告知です。
 7月27日(水)20:10〜、ラジオNIKKEI「感染症TODAY」という番組で、「わが国
の薬剤耐性対策アクションプランについて」が放送されます。
 インターネットラジオサービスでも聴けますので、ご興味のある方はぜひ
お聴き下さい。

 では、次回もどうぞよろしくお願いします。

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あゆみの箱
障害児(者)のために芸能人が始めた募金活動「あゆみの箱」

◆「あさコラム」vol.13「福を呼ぶ」(2016年7月15日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 前回、風しんと高校野球の話を書いたところ、たくさんの感想と激励を頂きま
した。誠にありがとうございました。大変嬉しく思っています。

 その感想の中で、活躍している難聴のスポーツ選手は、他にもたくさんいるよと、
教えて頂きました。
 例えば、アメリカンフットボールでは、米国NFLシアトル・シーホークスの
デリック・ コールマン選手。
 水泳選手では、ソウルオリンピック個人メドレー金メダリストのハンガリーの
タマス・ダルニュイ選手。
 野球では、独立リーグの新潟アルビレックスBCの野呂 大樹選手。

 そして、今、プロ野球オールスター戦が福岡と横浜で開催されていますが
(7月15日、16日)、福岡のオールスター戦といえば「カズ山本」こと山本 和範選手。
 元南海ホークス、ダイエーホークス、近鉄バファローズの外野手として活躍した、
2度の戦力外通告を受けた苦労人です。
 平成8年の福岡でのオールスター戦では、涙の代打3ランホームランで最優秀
選手賞を獲得しました。

 私の趣味の一つである市民マラソンでは、永井 恒さん。
 かつて出場した洞爺湖マラソンで、偶然にもお会いしました。
 この永井さん、全国47都道府県で開催された各地のマラソン大会において、
全て優勝を果たした市民ランナーなんです。
 もちろん、他にもスキー、卓球、ラグビー、ボクシング、さらにはデフリン
ピックをめざして頑張っている選手もいます。
 素晴らしいですね。私も見習いたいと思います。

 ということで、感染症が原因で難聴になる方を一人でも増やさないよう、
日々仕事をさせていただいていますが、実は今、困ったことが起きています。
 それは、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎、ムンプス)の流行です。
 おたふくかぜは耳下腺や顎下腺が腫れることでおたふく面のようになる
ウイルス性の感染症ですが、髄膜炎、脳炎、膵炎や睾丸炎などの合併症を起こす
ことがあります。
 その合併症の一つが難聴です。
 「感染症予防必携(日本公衆衛生協会)」によると、400〜1000例に1例の合併と
言われていますが、高度難聴になりやすく、治癒は困難。

 最新の感染症発生動向調査・感染症週報では、過去5年間の同時期で比較すると、
おたふくかぜの報告はかなり多いとのこと。
 特に、九州と大都市部での流行が目立っているそうです。
 この流行、見過ごすわけにはいきません。

 おたふくかぜは予防接種で感染を防ぐことができます。
 一般的には軽い症状で治まるおたふくかぜですが、感染者が増えれば合併症の
患者さんも増えていくのは道理です。
 今年のような流行に直面すると、予防接種でおたふくかぜの合併症を少しでも
防ぎたいとの思いが募るばかりです。
 未だワクチンは任意接種(定期接種化については検討中)ですが、今すぐ
できることとしては、発生動向調査のデータを注視しながら、予防接種の啓発
普及に努めること。
 読者の皆様にもこの状況をぜひご理解いただき、ご支援を賜りたく存じます。

 ちなみに、おたふくは「お多福」とも書きます。
 しかし、おたふくかぜは、決して福を呼ぶ感染症ではありません、
むしろ、おたふくかぜの流行を抑えることで、難聴や睾丸炎などの合併症を減らし、
世の中に多くの福を呼びたいと、強く思っています。

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おたふく

◆「あさコラム」vol.12:「遙かなる甲子園」(2016年7月8日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼 一成です。

 7月に入り、各地では全国高等学校 野球選手権大会の県予選が始まりました。
 高校球児のプレーから数々のドラマと感動が生まれますが、この時期になる
と思い出されるのが「遙かなる甲子園」です。

 「遙かなる甲子園」とは、スポーツライターの故・戸部 良也さんの著書
「遥かなる甲子園-聴こえぬ球音に賭けた16人」の標題で、この本を原作と
した山本おさむさんの漫画のタイトルでもあります。

 1964年(昭和39年)、アメリカで風しんが流行し、半年遅れで米軍基地を
抱える沖縄にも広まりました。その結果、翌年沖縄では400名あまりの先天性
風しん症候群の子どもが生まれました。

 その子どもたちの教育施設として、1978年(昭和53年)〜1983年(昭和58年)
、6年間限定の『北城ろう学校(中等部・高等部)』が設立。
 その後、北城ろう学校では生徒の熱意で硬式野球部が誕生したのですが、甲子
園を目指すためには「日本学生野球憲章」という厳しいハードルがありました。

 当時、日本学生野球憲章 第16条では「それぞれの都道府県の高等学校野球
連盟に加入することができる学校は学校教育法第4章に定めるものに限る」と
規定していました(現在は改正されています)。
 ところが、「ろう学校は学校教育法 第4章には当たらない」とされていたため、
連盟への加入は認められませんでした。
 加盟ができなければ、他校との練習試合すらできない北城ろう学校 硬式野球部。
 しかし、子どもたちの野球への情熱、監督や学校関係者の粘りの交渉、PTAの
温かい支援、日本聴力障害新聞やマスコミからの問題提起、そして、沖縄県高等
学校野球連盟と日本高等学校野球連盟の英断により、部の発足から2年後の1982年
(昭和57年)、北城ろう学校はついに沖縄県予選に出場することができました。

 左耳の先天聴覚障害の私も硬式野球をやっていたのでわかりますが、音がよく
聞こえない中で硬球で野球をするのは、一歩間違えれば大きな事故にもつながり
かねません。

 しかし、留意しながら真剣にプレーしていれば事故も防げますし、野球技術の
習得の面では、決して大きなハンディとはなりません。
 実際、「サイレント K」こと石井 裕也投手(北海道日本ハムファイターズ)、
イケメンのガッツマン山田 遥楓(はるか)内野手(埼玉西武ライオンズ)と、聴覚
障害を抱えながらも活躍しているプロ野球選手はいます。
 1990〜2000年代の米国メジャーリーグでは、先天性風しん症候群のカーティス・
ジョン・プライド外野手が活躍。1996年には、難病や逆境を克服した選手に贈ら
れるトニー・コニグリアロ賞を受賞しています。

 「耳が聴こえないということは確かに不便だけど、決して不幸じゃない」、
映画化された「遙かなる甲子園」の中でのセリフに、私も勇気づけられています。

 とはいえ、先天性風しん症候群の子どもたちを一人でも多く予防することこそ、
我が結核感染症課の使命。
 そのために、特定感染症検査等事業として風しんの抗体検査を推進するととも
に、風しんの予防接種の推奨をしているところです。
 未来を思うかたちとして、例えば結婚を機に、男性も女性も抗体検査。そして、
必要があれば予防接種。
 また、職場の同僚を風しんから守るために、職場における普及啓発にも取り組
んでいただくよう、アピールしています。

 アピールと言えば、厚生労働省は風しん予防の啓発に取り組んでいますが、その
サポートをして頂いているのが、俳優の石田 純一さんとプロゴルファーの
東尾 理子さんご夫妻。
 石田さんは正林 督章 元結核感染症課長の高校野球部の先輩(元高校球児)、
東尾さんのお父様は西武ライオンズの投手・監督だった東尾 修さん。
 何と、こういうところにも、野球つながりがあったとは・・・。

 代打の一打席でも、ランナーコーチでも、ベンチには入れずスタンドからの
応援やグラウンド整備でも、選手一人一人にドラマがあります。
 たくさんの高校球児の応援のため、今年の夏も地元の球場に足を運びたいと
思います。

 では、次回もどうぞよろしくお願いします。


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遥かなる甲子園 :双葉社
遥かなる甲子園 (双葉社)

石田 純一さんと東尾 理子さんが風しん予防の普及・啓発をサポート
石田 純一さんと東尾 理子さんが風しん予防の普及・啓発をサポート

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◆「あさコラム」vol.11: 「ハードボイルド検疫'16」(2016年7月1日)

 梅雨の谷間のとある一日、成田空港検疫所の視察に、課員2名ととも
に行ってまいりました。
 成田空港検疫所には、過去に何度か行ってはいるものの、結核感染症
課に異動してからは、初めての訪問です。
 日程調整が付かず、なかなか実現しなかったのですが、七夕を前に
ようやく願いが叶いました。

 今回の視察の目的は、夏休みの渡航ラッシュや、リオデジャネイロ
オリンピックを目前に控えた水際対策の確認です。

 まずは衛生関係。
 流行地から到着した航空機内はもちろん、空港区域内に仕掛けをかけ
たり(トラップ)、調整池から水を採取するなどで、蚊の幼虫やネズミ
を捕まえ、外来種や感染症の調査に取り組んでいます。
 昨年も外来種であるネッタイシマカの幼虫が1件、確認されました。
 検疫所では蚊の駆除のため、広大な成田空港敷地内の排水溝への薬剤
投与などにも対応しています。
 今年はジカウイルス感染症や黄熱の海外流行を踏まえ、早めに薬剤投
与に取り組んでくれたそうです。

 次に検査関係。
 衛生課では、確保した蚊の幼虫をふ化させて、蚊の種類を調べたり、
ネズミを解剖したり、付着しているダニを検査して、感染症の確認など
をしています。
 PCR(ポリメラーゼ連鎖反応検査)も整備されていて、渡航者の血液
検査にも迅速に取り組めるとともに、輸入食品の検査も実施しています。
 顕微鏡で大きく立体像で写された蚊を見て、課員たちはビックリ。

 そして検疫関係。
 飛行機で入国する年間9万件もの渡航者の検疫を実施するとともに、
イザという時には感染者の方に対応できるよう、機材等が整備されて
いました。
 検疫ブース・健康相談室では、サーモグラフィー(数年前に見たもの
より、さらに高性能化していました!)が整備され、必要に応じて血液
検査を実施することができます。
 今回は、LCC(格安航空会社)用に昨年新設された、第3ターミナルの
検疫ブースも見学することができました。

 ちょっと残念だったのは、出国相談カウンター。
「知識は最高のワクチン」とのことで、渡航者の方々に対する感染症
予防の普及啓発の拠点となるべき場所なのですが、派手なネオンサイン
の各種免税店さんに囲まれて、ひっそり、地味〜な一角になっています。
 負けずにネオンを置くとか、ゆるキャラに立ってもらうとか、何か
上手い手立てがないものでしょうか?

 ということで、普段は我々が立ち入れない区域内まで見せて頂いた
今回の視察でした。
 輸入感染症は、水際対策「だけ」では防げませんが、水際対策「も」
重要な予防策のひとつです。
 「Gメン'75」のように滑走路を歩くわけにはいきませんが、感染症に
立ち向かうため、熱い心を強い意志で包んだ検疫所の職員の皆さんたち。
 海外との交流がますます盛んになっている昨今だからこそ、検疫所、
大いに注目です。

 では、次回もどうぞよろしくお願いします。

<成田空港検疫所HP>
https://www.forth.go.jp/keneki/narita/

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幼虫調査(水域)


ねずみ調査


成田空港検疫所の皆さんと

◆「あさコラム」vol.10:「孤島の太陽」(2016年6月24日)

◆「あさコラム」vol.10 「孤島の太陽」

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 早いもので本コラムも連載10回目となりました。
 思いがけなく大きな反響をいただき、身が引き締まる思いです。
 在任中は可能な限り、さまざまな話題を随時綴ってまいります。
 これからもどうぞよろしくお願いします。

 さて、このたびの九州での記録的豪雨で被害に遭われた皆様に
おかれましては、心よりお見舞い申し上げます。
 当初はカラ梅雨ではないかと思われた今年の梅雨ですが、最近は
日本各地で雨に見舞われています。
 これだけ雨が続くと、太陽の日差しが恋しくなりますね。
 そこで、今回は「孤島の太陽」という映画を紹介いたします。

 私事ですが、2000年から10年余り「月刊公衆衛生情報」という
専門誌に、映画コラムを連載していたことがありました。
 公衆衛生や厚生労働行政に関係の深い映画を紹介していくという
内容なのですが、上司だった谷口 隆さん(現:大阪府吹田保健所長)
から題材としてご紹介頂いた映画がこの「孤島の太陽」です。

 「孤島の太陽」は、高知県・沖の島の駐在保健婦を主人公にした
1968年の日本映画です。
 主演は当時、絶大な人気を誇っていた樫山 文枝さん。
 ずいぶんと昔の映画ですが、主人公の荒木 初子さんは、実は、
保健衛生の普及および向上に貢献され、沖の島のフィラリア対策に
尽力を果たした実在の保健師さんなのです。

 フィラリアは蚊を媒介する感染症で、荒木さんが赴任した当時は、
沖の島で猛威をふるっていました。
 当然ながらフィラリアで死亡する方も多く、沖の島の保健衛生上
の重要課題の一つになっていました。

 そこで荒木さんは毎日のように、島民宅を訪問したり、婦人会に
出席するなど、蚊の駆除の重要性を説いて回っていたとのこと。
 蚊の幼虫駆除のため、墓地の花筒の水を捨てるなど、島民の反発
を受けながらも、徹底的に蚊の駆除を進めていました。

 そして、映画のシーンにもありますが、長崎大学熱帯医学研究所
の支援のもと、フィラリアの全島一斉検診として、深夜の採血活動にも
積極的に取組んでおられました。
 こうした荒木さんの取り組みと、フィラリア治療薬の普及のおかげで、
1960年代後半には、沖の島からフィラリアをなくすことができたのです。

 この功績を讃えようと、荒木さんの生誕百年に先立ち、島民や、
出身者らで作る「保健婦初子の会」によって、昨年、顕彰像が沖の島
の公園に建立されました。
 奇しくも今年は、中南米で流行したジカ熱対策などのため、皆さん
にも蚊の駆除をお願いしているところ。
 天国の荒木さんに激励して頂きながら、私たちも蚊対策に努めて
まいります。
 では、次回もどうぞよろしくお願いします。

<参考:「孤島の太陽」(日活HP)>
http://www.nikkatsu.com/movie/21088.html
<参考:荒木初子顕彰像(沖の島観光協会HP)>
http://www.oki-shin.com/topix.htm

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荒木初子顕彰像(沖の島観光協会HP)


沖の島

◆「あさコラム」vol.9: 「悪魔の住む花」(2016年6月17日)

◆「あさコラム」vol.9 「悪魔の住む花」

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 本コラムを担当してから早や2ヶ月、皆様から感想や激励のメールを
いただき、大変励みになっています。
 この場を借りまして御礼を申し上げます。

 6月3日配信のvol.7でご紹介した、星野 源さんとコンドームの話題、
その後も各方面で反響が続いています。
 性感染症予防啓発の起爆剤となり、ありがたく思っています。
 コンドームの使用は、性感染症予防のためにも大事なことですので、
私たちもさらなる啓発普及に努めてまいります。

 さて、本題です。
 今回のコラムの表題を見て、ピン!と来た方は、私と同世代か、マニア
の方ではないでしょうか?
「悪魔の住む花」とは、ウルトラセブン(円谷プロダクション)の第31話の
タイトルです。
 これが何で感染症の話なの?と申しますと、この話に登場するウルトラ
セブンの敵は「宇宙細菌ダリー」だからなんですね。
 細菌といってもこのダリー、見た目はピンク色した1mmの大きさのダニ
のような生命体で、肺に寄生して血液中のフィブリノゲンを餌にするという
設定です。
 当時、ライブで観た私も幼な心に怖くなり、ダリーが潜んでいるような花
には近寄れなくなった思い出があります。

 ミクロ決死隊からヒントを得たこの話は、ミクロ化したウルトラセブンが
体内(気管支?)で戦闘するという、当時としては画期的な映像です。
 大人になってからも、ウルトラセブンを何度も観る機会があり(子から孫
へのウルトラシリーズですからね)、この話に触れる度に、
「宇宙細菌だけではなく、人体で悪さをする細菌やウイルスを退治できる
ウルトラヒーローが実在したらなぁ」と思ったりします。
そうしたら、世の中から感染症で苦しむ人々がいなくなるのにねぇ・・・と。

 もちろん、SFたるウルトラセブンはこの世にはいませんが、エボラウイルス
や薬剤耐性菌など、さまざまな強敵と闘うために、私たち結核感染症課は、
ウルトラ警備隊のように日々頑張っています。
 いうならば、私はキリヤマ隊長かしら?
 いえいえ、あれほどシブくはないですね。

 ちなみにこの話、かの大女優・松坂慶子さんが主演しています。
 当時はまだ10代の頃の作品だそうです。
 では、次回もどうぞよろしくお願いします。

<参考:円谷プロダクション作品リスト>
http://m-78.jp/programs/page/15/

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ウルトラセブン(円谷プロ)

◆「あさコラム」vol.8: 「ネットといっても、インターネットではなく・・・」(2016年6月10日)

◆「あさコラム」vol.8「ネットといっても、インターネットではなく・・・」

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 前回のあさコラムでご紹介したコンドームの件ですが、なんと、星野 源
さんがラジオ番組で取り上げて下さいました。
 番組によると、リスナーさんから前回のコラムに関するメールがたくさん
きていたそうで、番組中で本メールマガジン「感染症エクスプレス@厚労省」
の名前が出てきたではありませんか。
 凄い!ビックリ!!驚きました!!!
 しかも、今回も星野 源さん、コンドーム(ゴム)は大事なことと、番組内
で改めて発言下さいました。
 源さんにはぜひ、「コンドーム啓発大使」というものを創設して、ご就任
をお願いしたいほど、嬉しく思います。源さんと番組スタッフの皆さんに、
改めて感謝です。ありがとうございました。

 さて、話題変わって・・・
 今週前半に、復興支援対応でふたたび熊本に行ってまいりました。
 地震後2度目の熊本入りでしたが、益城町の避難所などを視察したところ、
1ヶ月前と比べると水道が復旧し水洗トイレが使えるようになったり、
間仕切りカーテンが設置され飛沫感染の予防にも役立つようになったりと、
感染症の予防的観点からも、避難所の環境は改善されていました。
 とはいえ、現在もたくさんの方々が避難されていますし、仮設住宅など
住まいの確保ができるまでは、まだ落ち着かない状況です。
 今後とも、復旧復興支援に尽力してまいりたいと思う次第です。

 今回、避難所巡りをしていると、網戸のようなネットが、どこの避難所の
入り口にも取り付けられていました。
 これ、虫よけネットなんです。
 東日本大震災でも活躍した優れモノとのことで、細かい網目が蚊やハエ
などの侵入を防ぐことができます。日本では「蚊帳(かや)」という名前で
親しまれているこのネット、海外でも蚊対策に活用されています。

 避難所には、大型エアコンや扇風機が設置されているとはいえ、熊本は
やはり暑い!日中に少しでも心地よい自然の風を取り入れるためには、
このネットは大変重宝します。
 虫よけスプレーや蚊取り機能付き空気清浄機なども大事ですが、こうした
ネットの活用も、蚊媒介感染症対策の一助にもなります。
 蚊に刺されない夏を迎えるためにも、虫よけネット、皆さんもぜひ研究
してみて下さい。
 では、次回もどうぞよろしくお願いします。

<参考:虫よけネット>(WHOホームページ:10 facts on malariaより)
http://www.who.int/features/factfiles/malaria/malaria_facts/en/index6.html


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虫よけネット(WHOホームページ:10 facts on malariaより)

◆「あさコラム」vol.7: 「アレつけて!アレ?」(2016年6月3日)

◆「あさコラム」vol.7「アレつけて!アレ?」

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。
 皆さんは「女子の梅毒増加中!」というリーフレットをご存じですか?
ピンク、というよりは梅の色の、♀マークが入ったちょっと斬新な
リーフレットです。

 女性の梅毒感染者の年間届出数は、2010年の124例から、2015年
には574例と、この5年で約5倍。
 一方、男性の届出数も、2010年の497例から、2015年には1463例と、
同じく5年で約3倍。
 梅毒は古(いにしえ)の性行為感染症とのイメージがありますが、
実は感染者届出数は近年、男女とも大幅増加となっているのです。

 この増加の背景としては、性風俗店の形態の変化や、梅毒の届出数
が減少し、感心が薄れた可能性などの見解はありますが、本当の理由
は不明です。

 梅毒は他の性行為感染症同様、コンドームの適切な使用により、
感染のリスクを抑えることができます。
 コンドーム、大事です。
ちなみにコンドームは、医薬品医療機器法に基づく医療機器なのです。

 本コラム執筆のために改めて調べてみたところ、色や薄さ、サイズ
に加え、最近はジェルの多さ、表裏のわかりやすいものなど、様々な
コンドームが販売されているのですね。豊富な取りそろえに、ビックリ
した次第。

 性感染症予防のために、コンドームは正しく、しっかりつけて欲しい
のですが、女性からは言いにくいのか、いやはや男性からも言いにくい
のか、例えば「アレ」とか「ゴム」とか、「スキン」、「サック」、
はたまた「家族計画」、「帽子」、「ヘルメット」、など、なかなか
ストレートには言ってもらえません。
 まぁ、パートナー同士の合い言葉になっていれば、呼び方は何でも
いいのかなと思いつつも、感染症対策上は、やはりコンドームはコン
ドームと言ってもらいたいなぁ。

 そう思っていたところ、先日、ラジオから「コンドーム、つけろよ!」
との声が連呼されていました。
 声の主は、歌手で俳優のマルチタレント・星野 源さん。
 これだけ連呼してもらえるとは!
 男性からも女性からも人気の高い星野 源さんからの、不意打ちの
ようなアピール、嬉しく思っております。

 ということで、星野 源さんを見習って、結核感染症課も引き続き、
性感染症対策に取り組んでまいります。
 何をどう進めていくかは、乞うご期待!
 皆様もご支援ご協力、どうぞよろしくお願いいたします。

<性感染症>
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/seikansenshou/

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梅毒リーフレット

◆「あさコラム」vol.6:  「夏の蚊対策の標語、発表です!」(2016年5月27日)

◆「あさコラム」vol.6「夏の蚊対策の標語、発表です!」

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。
 既に「蚊の活動期間ではありません」では、なくなりました。
ということで、この夏に向けたジカウイルス感染症・デング熱
対策としては、

・蚊をできるだけ発生させない
・蚊に刺されない

ことが重要です。

 政府は6月を「夏の蚊対策広報強化月間」と位置づけ、キャン
ペーンの一環で国民の皆様から標語を広く募集しましたところ、
短い募集期間にもかかわらず、何と1689点の標語が集まりました。
 応募してくださった皆様には、心から感謝を申し上げます。

 その中から先日開催された標語選考委員会で、最優秀賞1点、
優秀賞3点が決まりましたので、私のコメントを付記してご紹介
いたします。

まず、優秀賞3点のご紹介。

「まぁいいカ!では困ります。放置の溜め水、濁り水。」
 福岡県・中山直子さん(47)

 「まぁいいカ!」の「カ」に、「蚊」をかけた作品。
 蚊の発生を防ぐため、植木鉢の皿や古タイヤなどの溜め水を
放置せず、一人ひとりが気にかけて処理をすることが重要です。
 梅雨の季節の到来に向け、溜め水対策に取り組みましょう。

「蚊の用心 しているあなたも 日本代表」
 大分県・大海寛輝さん(37)

 8月にはブラジル・リオデジャネイロでオリンピックが開催。
 ブラジルなど中南米や東南アジア、ポリネシアなどの熱帯地域
では、蚊への警戒が不可欠です。
 ご自分の健康はもちろん、帰国後の周囲のことも考えますと、
渡航者の皆様には日本代表としての誇りを持って、海外でしっかり
蚊と対峙して欲しいものです。

「小さくも 大きな脅威 蚊に注意」
 茨城県・大山藍さん(16)

 かのビル・ゲイツ氏は「gatesnotes」というブログの中で、
世界一恐ろしい生物は蚊であると訴えています
 〜The Deadliest Animal in the World〜
 世界中で蚊に殺されているヒトの数は、年間72万5千人。
 この数字は2位の生物(年間47万5千人。さて、何でしょ?)
に大きく差をつけています。まさに、小さくても大きな脅威!
蚊には注意なのです。

そして、最優秀賞は・・・。

「身仕度の 仕上げに虫よけ ジカ予防」
埼玉県・小林 美穂さん(13)

 大きな公園などは自治体で蚊の駆除に努めていますが、皆様が
自らできることは、蚊に刺されないようにすることです。
 蚊が生息してそうな公園等への外出の前には、仕上げに虫よけ
を忘れずに。もちろん、海外でも、虫よけを忘れずに。

 ということで、合計4点の受賞作をご紹介いたしました。
 読者の皆様は、どの標語が気に入りましたか?
 なお、これらの標語は、今後、蚊対策の広報で幅広く活用して
まいりますので、よろしくお願いいたします。

※上記の答え: 「ヒト」
https://www.gatesnotes.com/Health/Most-Lethal-Animal-Mosquito-Week


<ジカウイルス感染症を予防するための6月の「夏の蚊対策広報強化月間」の標語の決定について>
http://www.cas.go.jp/jp/houdou/160523zikahyougo.html

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ジカ熱・デング熱対策「蚊の用心 ひと刺し用心」

◆「あさコラム」vol.5 : 「がまだせ!手洗い!」(2016年5月20日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。
 前回のコラムで熊本地震の派遣報告をしましたが、「もう少し具体的
な話を」ということで、今回は手洗いについてお話したいと思います。

 正しい手洗い、感染症予防では大変重要です。
しかし、簡単なようで、いざ実践するとなると、なかなか難しいもの
であります。

 雨の降る4月27日、避難所となっている南阿蘇中学校をお訪ねしました。
 こちらはノロウイルスの集団発生の疑いがあった避難所で、気になる
避難所のひとつでしたので、状況について御案内いただきました。

 私がお伺いした時、既に体育館は土足禁止となり、トイレは1時間
おきに消毒剤で清掃されるなど清潔さを保っていました。
 手洗い場には、指の間まで石けんを泡立てるといった手の洗い方が
図で掲示され、液体石けんとペーパータオルが準備されていました。

 水道が断水なのに流水で手が洗えるため、不思議に思ってお尋ね
したら、自衛隊の皆さんが貯水槽に水を運んでくれているため、蛇口
から水が出るのだとか。
 ありがたいなぁ、なるほどね、と感心していたところ、ふと見ると、
マスクをした中高生ぐらいのボランティア少年が手洗い場に立って
います。

 何のために立っているのかなぁと、これまたお尋ねしたところ、
手洗い場を利用する皆さんの手洗いを見ているだけ、とのこと。
 何も言わずにただ見ているだけなのですが、少年の前では、皆さん、
しっかりと手を洗ってくれているそうです。
 これもなるほどね!と、大いに感心しました。

 その後の4月30日、南阿蘇中学校に再度お伺いしたところ、その
ボランティア少年は手洗い場から姿を消していました。
 もう少年が見ていなくても、正しい方法で手を洗う習慣が避難所
の皆さんについたから、との理由でした。
 南阿蘇村、素晴らしいコミュニティです。

<手洗い手順リーフレット>
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10600000-Daijinkanboukouseikagakuka/0000123506.pdf

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避難所で手洗いをする少年

◆あさコラムvol.4: 「がまだせ!熊本!」(2016年5月13日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。
 コラム、しばらくお休みしていました。理由は熊本地震です。

 4月24日から9日間、熊本県の政府現地対策本部に行ってまいりました。
まずは被災者の皆様や関係者の方々に、心よりお見舞い申し上げます。

 報道でもご存じのとおり、激しい地震が連続して起こり、被災地の
被害はかなり甚大です。
 家や建物は大きく崩れ、ガスや水道もなかなか復旧しませんでした。
ようやくインフラが戻りつつあるとはいえ、熊本市や益城町、南阿蘇村
など、未だに避難所で生活されている方も多くいらっしゃいます。
 私も南阿蘇中学校体育館や益城町総合体育館などの避難所をまわって
きましたが、避難所で応援していただいているボランティアや各自治体
の皆様には頭が下がる思いです。

 避難所におけるノロウイルス感染症やインフルエンザなどの集団感染
も危惧されていましたが、今のところ、大きな感染は確認されていません。
 唯一、当初心配された南阿蘇中学校体育館の案件も、国立感染症研究
所や感染症の専門家、現地の日赤や保健師さんなどの指導もあり、対応
に取り組むことができました。

 まだ色々と心配する声は聞こえていますが、厳しい環境の中でも手洗い
の励行や衛生管理の徹底など、保健師さんを先頭に専門家の皆さんの
ご指導・ご活躍のおかげで、未然に集団感染を防いでいるのだと、現地
をまわって感じました。
 現場はもとより、外部から指導して下さった専門家の皆様には、改めて
感謝を申し上げます。

 これから気温も上がり、梅雨も控え、食中毒の心配などもありますが、
ここは公衆衛生の力を発揮して、皆さんとともに熊本を支えていきたい、
そう思うばかりです。
 まだ余震が続いていますが、この窮地を克服できるよう、皆で支援して
いきましょう!

 がまだせ!熊本!

※「がまだす」: 熊本で「頑張る」「精を出す」

◆あさコラムvol.3:  「結核のこと」(2016年4月15日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。
 NHK連続テレビ小説、通称「朝ドラ」。
 まだ若かりし保健所勤務時代、昼休みに保健師の皆さんがTVに
釘付けになっていました。「おんなは度胸」や「ひらり」の頃です。
 「面白いのかなぁ」と一緒に見始めた途端、自分もすっかりハマ
ってしまい、以来朝ドラファンを続けています。
 佐世保市勤務時代には、ご当地佐世保市が舞台となった「てる
てる家族」(只今BSで再放送中!)が放送され、街中で盛り上が
ったのも楽しい思い出です。

 今春からスタートしたのは「とと姉ちゃん」。
 西島秀俊さん扮する三姉妹のお父さんが肺結核で亡くなるという
衝撃的なスタートに、後番組の司会を務める有働由美子アナも号泣
していました。

 この結核という病気、当時は死因第一位の国民病。
 効果的な抗結核薬の登場、結核医療の充実、保健所や結核予防会や
結核予防婦人会の活躍などにより、今日、結核死亡数も患者数も激減
しましたが、それでも、わが国の結核罹患率は人口10万人あたり
15.4(2014年)。これは先進国の中では、まだまだ高い数字なのです。

 日本は2020年までに罹患率を10以下の「低まん延国」となることを
目指しています。 先日結核集団発生の報道がありましたが、今後も
引き続き、結核対策を推進していかねばなりません。
皆様のご協力をお願いします。

 では、次回もどうぞよろしくお願いします。

<結核(BCGワクチン)について>
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou03/index.html

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◆あさコラムvol.2:  「国境を越えて・・」(2016年4月8日)

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。
 宣伝をする訳ではないのですが、実力派の若手女優の多部未華子
さんとベテラン女優の倍賞美津子さんが主演の新作映画「あやしい
彼女」が現在公開されています。
 実はこの映画、2014年に公開された韓国映画の「怪しい彼女」の
リメイクということをご存知でしょうか?
 原作の評価が高いためか、中国、ベトナム、そして日本で次々に
リメイク版が制作され、今後はタイやインドネシア、インド、ドイツ
などでも計画されているとのこと。

 古くは「七人の侍」から「荒野の七人」、「用心棒」から「荒野
の用心棒」のように、時と場所を変えた作品はありますが、本作の
ようにアジアを中心に短期間で様々な国でリメイクされている作品
は珍しいと思います。「良い映画は国境を越える・・」でしょうか。

 感染症も、高速交通体系が確立された今日では、短期間で国境を
越えて襲ってきます。
 アジアを中心に・・となると、つい鳥インフルエンザやSARS
(重症急性呼吸器症候群)などを思い浮かべますが、映画と違って
こちらは困りもの。
 関係機関と協力を諮りながら、国内外のサーベイランスを実施し、
分析評価を怠らないことが、感染症対策の基本です。
 折しも今週、世界保健機関(WHO)のガイダンスやこれまでの知見
を踏まえ、「ジカウイルス感染症のリスクアセスメント」が更新
されています。併せてご参照ください。
 映画も感染症も、評価が大切、ですね。
 では、次回もどうぞよろしくお願いします。

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◆あさコラムvol.1: 「感染症の種類、いくつご存知ですか?」(2016年04月01日)

こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。
今号から、不定期にコラムを書かせて頂くことになりました。
 どうぞよろしくお願いします。

 さて、現在世間の耳目を集めている「ジカウイルス感染症」は、
昨年から中南米で流行している感染症ですが、本年2月の世界
保健機関(WHO)の「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態
(PHEIC)」を受け、2月5日に感染症法上の4類感染症に位置づけ
られました。
 まだ分からないことも多い蚊媒介感染症のひとつですが、小頭症
やギランバレー症候群との関連が強く示唆されています。
 わが国も、流行地への渡航についての注意喚起やヒトスジシマカ
などの媒介蚊の駆除の徹底といった、ジカウイルス感染症対策に
取り組んでいます。本紙面を借りて、引き続き、皆様のご協力と
ご理解をお願いします。

 ところで、感染症法においては、法の対象となる感染症として、
1類感染症から5類感染症までを定めています。
 皆さんは、それぞれの分類の主な感染症は思い浮かびますか?
 暗記した覚えのある方もいると思いますが、不意に質問を受ける
と、なかなか全問正解とはいかないもの。
 どうしたらガッチリと覚えられるのでしょうかね?
 普及啓発も兼ねて、「水曜日のカンパネラ」のコムアイさんに、
語呂合わせの類別感染症の歌でも歌ってもらいたいなぁ・・・と思う
今日この頃です。
 では、次回もどうぞよろしくお願いします。

<感染症法に基づく医師の届出のお願い(類別感染症一覧)>
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/kekkaku-kansenshou11/01.html

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◆あさコラムvol.0: 「プレ創刊号特別企画:連載開始前インタビュー」(2016年3月18日)

インタビュアー(以下「イン」): 浅沼課長、よろしくお願いします。
浅沼: こんにちは、浅沼です。よろしくお願いします。

イン: 『感染症エクスプレス@厚労省』2012年の創刊以来、コラムは初めて
     の試みだそうですね?

浅沼: そうなんです。本年度の読者アンケートの結果、「文章が堅苦しい」、
    「課員のコラムが読みたい」という声があったそうです。担当者から
    「課長、書いてください」と頼まれて、引き受けることにしました。

イン: 結核感染症課というと、さまざまな感染症の発生に伴い、多くの報道発表や、
    時には深夜に記者会見もしなければならず、大変な激務と聞いています。

浅沼: 感染症はいつどこで起きるかわからないですし、起きたときには迅速
    に対応しなければいけないので、忙しくないといえばうそになりますが、
    必要な情報をわかりやすくお伝えすることはとても大切です。
    できる限り機会を作り、『感染症エクスプレス@厚労省』の読者の皆様、
    国民の皆様にメッセージを伝えていきたいと思います。

イン: 今後どういった内容を披露して頂けるのでしょうか?

浅沼: あくまでも個人のコラムですので、正式な見解を述べるということ
    ではないですが、わかりにくい制度や施策があれば説明を加えたり、
    日々の日常のよしなしごとだったり、読者からの質問があれば回答
    したりと、直球・変化球を織り交ぜて配信できたらいいなと思って
    います。

イン: ありがとうございました。「あさコラム」、スタートは4月1日からですね。
    期待しています。
浅沼: あまり期待されると緊張しますが、どうぞよろしくお願いします。


浅沼一成結核感染症課長

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