ホーム> IDESコラム vol. 5

IDESコラム vol. 5
感染症エクスプレス@厚労省 2017年10月20日

”You are only as good as data.”

IDES 3期生:神代、市村、高橋、西島

 You are only as good as data.

 以前、米国で勤めていた病院の上司から言われた言葉です。意味としては
「データに基づいてのみ人はちゃんとした判断を下せるのであって、
判断材料になる資料を徹底的に集めなさい」ということです。例えば、医療
現場ではデータというと、病歴、身体所見、検査所見、他の医療施設での経
過、当該の疾病に関する疫学、検査法、治療法などの最新の知見がそれにあ
たります。

 現在、結核感染症課内では様々な感染症において、データを収集した上で、
施策の検討を行っており、”You are only as good as data” の言葉の重み
を感じる機会が多々あります。

 行政における感染症対策では、
 情報収集→分析→感染症のリスク評価→方針決定→情報発信
 といった流れになりますので、情報収集が重要となるのは言うまでもあり
ません。

 私たちは、リスク評価を念頭において、情報収集を行います。リスク評価
の考え方の一つとしては、
 (1) 公衆衛生上の影響 
 (2) 情報の信頼性
 の二つの軸があげられます。

 このリスク評価に基づいて、情報発信の優先順位を決める一つの判断基準
となります。

 公衆衛生上の影響については、病原体によって決まることが多いですが、
信頼性のある情報は、何を情報源としているかによって大きく変わってきま
す。

 感染症における信頼性の高い情報は、発生現場で得られることはもちろん
のこと、WHO(世界保健機関)、CDC(米国疾病予防管理センター)、ECDC
(欧州疾病対策センター)等の国際機関から発信されます。このような情報を
収集するには専門知識と語学を含めたコミュニケーション能力が求められま
す。

 例えば、麻しんに関していうと、去年からのヨーロッパの麻しんの大規模
な流行が、イタリアとルーマニアで見られています。麻しんは、感染力が非
常に強く、罹ると重症化する場合もあるので、公衆衛生上大きな影響があり
ます。ECDCやWHOが公表している情報や、WHOに派遣されているIDESの2期生
のコミュニケーションをとった上で、優先的に発信すべき事象と判断しまし
た。この判断に基づいて、厚生労働省はヨーロッパ地域等への海外渡航者に
注意喚起を行うなどの対応を現在でも行っております。

 かつては日本が麻しん輸出国とよばれていましたが、現在ではWHOから麻
しん排除認定をうけるまでになりました。こういった中で、先進国であるイ
タリアでの麻しん流行は、正直なところ思いもよりませんでした。海外へ渡
航される方々には一刻も早く伝えなければならないと思いま
した。

 ちなみに、この流行を受け、イタリアは、子どもに対する麻しんの予防接
種を義務化して、子どもに接種させていない親に対しては、罰則を課すなど
の法律が施行されたわけですが、イタリアの感染症対策の姿勢に驚愕しまし
た。各国の感染症対策は、情報収集から始まります。その情報が、国の施策
につながることを体感しました。

 You are only as good as data.

 この言葉は、目の前の患者さんを診るための言葉でしたが、今となっては
この言葉は、国民の皆様1人1人の健康に関わるものとなっています。

 今後の感染症対策においても、迅速かつ正確に対応できよう、情報収集能
力とコミュニケーション力等の向上に努めています。


<麻しんについて>
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/

<イタリア・ルーマニアを含むヨーロッパ地域で「麻しん(はしか)」の大規模な流行が起きています。>
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/measles/dl/leaf_170822.pdf

「感染症エクスプレス@厚労省」は、主に医療従事者の皆さまに向け、通知・事務連絡などの感染症情報を直接ご提供するメールマガジンです。
本コラムは、「感染症エクスプレス@厚労省」に掲載しております健康局結核感染症課長によるコラムです。
「感染症エクスプレス@厚労省」への登録(無料)
本コラムの感想、ご質問、ご要望など
コラム バックナンバー

ホーム> IDESコラム vol. 5

ページの先頭へ戻る