IDESコラム vol. 48「チームワーク!!!」

感染症エクスプレス@厚労省 2019年8月2日

IDES養成プログラム4期生:大塚 美耶子

 こんにちは、IDES4期生の大塚美耶子です。早いもので5月にスイスのジュネーブのWHO(世界保健機関)本部の健康危機管理プログラム(WHE)で勤務を始めてから3か月が経ちました。WHOでの勤務内容はIDES3期生で前任の神代さんのコラムで紹介されていますが(コラムvol.27,vol.34)、感染症のアウトブレイクや人々の健康を脅かす危険のある事象の探知、検証とその評価、その過程においてWHOの地域事務局(Regional Office)や当該国と連携をとり、そこで吟味された情報を必要であれば最終的にDONsと呼ばれるWHOのサイトを通して一般に公開したり、現場の対応のための派遣につなげたりしています。
 
 さて、スイスは同じ国内でもフランス語圏、ドイツ語圏、イタリア語圏、ロマンシュ語圏と分かれており、公用語もこの4つとなります。WHO本部のあるジュネーブはフランスに囲まれている土地でもあり、お店での買い物をはじめ郵便局などの公共機関や交通機関など、日常会話はフランス語です。
 先日は薬を買う機会があったのですが、添付文書を読んでみようと開いたところなんとフランス語、ドイツ語、イタリア語のみ!でした。どうせなら英語も書いてあればよいのにと思ったところで、英語はスイスの公用語には入っていないことを思い出しました(西アフリカのブルキナファソで働いていたことがあるのでフランス語は使用できるのですが、英語のほうがやはり読みやすいのです)。
 
 一方、WHO本部は国連グループの一つであるので、普段使用される言語は英語またはフランス語ですが、世界各国から人が集まっておりフランス語圏以外の人も多いので、基本的に内部の会議では英語が使用されることが多いです。現在在籍しているチーム内でも国籍はまちまちで、ヨーロッパからはフランス・ドイツ・イギリス・スペイン・エストニア・ロシア、西大西洋地域からはオーストラリア・韓国・香港・日本、アフリカ大陸からはカメル―ン・エチオピア、アメリカ大陸からはアメリカ・カナダと多岐に渡ります。
 日常会話や仕事の話を通じてお互いの文化を知ることができ、かなり恵まれた環境です。こうした何気ない文化交流で培われたチームワークが、日々の業務が円滑に進む秘訣なのかもしれません。お互いを知り合うということは、自分と関係のあるもの⇒助け合う、につながるのではないかと思います(もちろん残念ながら反対の結果になることもありますが)。
 
 読者の方はご存じの方も多いかと思いますが、先月中旬にコンゴ民主共和国(DRC)で流行しているエボラ出血熱に対して緊急委員会が開催され、PHEIC(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)が宣言されました。過去に宣言されたPHEICは、2009年の豚インフルエンザA(H1N1)(新型インフルエンザ)、2014年の野生型ポリオウイルスの国際的な拡大、2014年のエボラ出血熱の西アフリカでの感染拡大、2016年のジカ熱の国際的拡大の4つです。
 今回のPHEIC宣言により、世界の公衆衛生の世論、政治の流れなどがどう変化するかは具体的にはまだはっきり分かりませんが、個人的にはPHEIC宣言の意義は、世界が、宣言の対象により身近な関心を持つことだと思います。今回の宣言対象はDRCのエボラ出血熱ですが、世界各国、各機関が関心を持つことでDRCと共にチームワークを持ってエボラ出血熱の封じ込めに成功することに、WHOの一員として尽力する所存です。
 
 このコラムが出るころは娘たちもこちらに到着している予定です。ジュネーブ滞在中には彼女たちにも新しく多様性のあるチームワーク構築をできるようになれば良いな、と考えることができた今回のコラムでした。
 
 良い夏休みを!


(編集:相原 瑶)
●当コラムの見解は執筆者の個人的な意見であり、厚生労働省の見解を示すものではありません。
●IDES(Infectious Disease Emergency Specialist)は、厚生労働省で4年前の平成27年度からはじまったプログラムの中で養成される「感染症危機管理専門家」のことをいいます。
 
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