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あさコラム vol.12
感染症エクスプレス@厚労省 2016年7月8日

遙かなる甲子園

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼 一成です。

 7月に入り、各地では全国高等学校 野球選手権大会の県予選が始まりました。
 高校球児のプレーから数々のドラマと感動が生まれますが、この時期になる
と思い出されるのが「遙かなる甲子園」です。

 「遙かなる甲子園」とは、スポーツライターの故・戸部 良也さんの著書
「遥かなる甲子園-聴こえぬ球音に賭けた16人」の標題で、この本を原作と
した山本おさむさんの漫画のタイトルでもあります。

 1964年(昭和39年)、アメリカで風しんが流行し、半年遅れで米軍基地を
抱える沖縄にも広まりました。その結果、翌年沖縄では400名あまりの先天性
風しん症候群の子どもが生まれました。

 その子どもたちの教育施設として、1978年(昭和53年)〜1983年(昭和58年)
、6年間限定の『北城ろう学校(中等部・高等部)』が設立。
 その後、北城ろう学校では生徒の熱意で硬式野球部が誕生したのですが、甲子
園を目指すためには「日本学生野球憲章」という厳しいハードルがありました。

 当時、日本学生野球憲章 第16条では「それぞれの都道府県の高等学校野球
連盟に加入することができる学校は学校教育法第4章に定めるものに限る」と
規定していました(現在は改正されています)。
 ところが、「ろう学校は学校教育法 第4章には当たらない」とされていたため、
連盟への加入は認められませんでした。
 加盟ができなければ、他校との練習試合すらできない北城ろう学校 硬式野球部。
 しかし、子どもたちの野球への情熱、監督や学校関係者の粘りの交渉、PTAの
温かい支援、日本聴力障害新聞やマスコミからの問題提起、そして、沖縄県高等
学校野球連盟と日本高等学校野球連盟の英断により、部の発足から2年後の1982年
(昭和57年)、北城ろう学校はついに沖縄県予選に出場することができました。

 左耳の先天聴覚障害の私も硬式野球をやっていたのでわかりますが、音がよく
聞こえない中で硬球で野球をするのは、一歩間違えれば大きな事故にもつながり
かねません。

 しかし、留意しながら真剣にプレーしていれば事故も防げますし、野球技術の
習得の面では、決して大きなハンディとはなりません。
 実際、「サイレント K」こと石井 裕也投手(北海道日本ハムファイターズ)、
イケメンのガッツマン山田 遥楓(はるか)内野手(埼玉西武ライオンズ)と、聴覚
障害を抱えながらも活躍しているプロ野球選手はいます。
 1990〜2000年代の米国メジャーリーグでは、先天性風しん症候群のカーティス・
ジョン・プライド外野手が活躍。1996年には、難病や逆境を克服した選手に贈ら
れるトニー・コニグリアロ賞を受賞しています。

 「耳が聴こえないということは確かに不便だけど、決して不幸じゃない」、
映画化された「遙かなる甲子園」の中でのセリフに、私も勇気づけられています。

 とはいえ、先天性風しん症候群の子どもたちを一人でも多く予防することこそ、
我が結核感染症課の使命。
 そのために、特定感染症検査等事業として風しんの抗体検査を推進するととも
に、風しんの予防接種の推奨をしているところです。
 未来を思うかたちとして、例えば結婚を機に、男性も女性も抗体検査。そして、
必要があれば予防接種。
 また、職場の同僚を風しんから守るために、職場における普及啓発にも取り組
んでいただくよう、アピールしています。

 アピールと言えば、厚生労働省は風しん予防の啓発に取り組んでいますが、その
サポートをして頂いているのが、俳優の石田 純一さんとプロゴルファーの
東尾 理子さんご夫妻。
 石田さんは正林 督章 元結核感染症課長の高校野球部の先輩(元高校球児)、
東尾さんのお父様は西武ライオンズの投手・監督だった東尾 修さん。
 何と、こういうところにも、野球つながりがあったとは・・・。

 代打の一打席でも、ランナーコーチでも、ベンチには入れずスタンドからの
応援やグラウンド整備でも、選手一人一人にドラマがあります。
 たくさんの高校球児の応援のため、今年の夏も地元の球場に足を運びたいと
思います。

 では、次回もどうぞよろしくお願いします。


石田 純一さんと東尾 理子さんが風しん予防の普及・啓発をサポート

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