IDESコラム vol. 72「地域医療から欧州留学を経てIDES養成プログラムへ」

感染症エクスプレス@厚労省 2023年4月21日

IDES養成プログラム8期生:柴田 和香

 初めてIDESコラムを書かせていただきます、8期の柴田和香です。私は自治医科大学の卒業で、卒後9年間は、千葉県の医師不足地域で、内科医と麻酔科医として働いていました。学生時代より公衆衛生、特に国際保健に興味があり、義務年限明けに新たなキャリアパスを踏み出すことにしました。
 
2019年に、当時厚生労働省(以下、厚労省)で募集を行っていたSTOP VPDsプログラムという、アフリカやアジアにて、予防接種や感染症対策の経験を積むことができる人材育成プログラムに内定しました。私にとっては10年以上待った、待望の国際保健の仕事でした。2020年の春からウガンダにて研修を受ける予定でした。
 
2020年に入り、COVID-19パンデミックの影響で、研修の開始が遅れてしまいました。当初は1年の延期と言われましたので、その間留学することにしました。アムステルダムのKIT Royal Tropical Instituteに所属しながら、tropEdという国際保健を教えている大学院のネットワークを利用し、ドイツやスペイン、スウェーデンなどでも講義を受け、国際保健の修士号を取得しました。STOP VPDsプログラムへ派遣されると思っていたので、修士論文は低中所得国における小児予防接種対策について書きました。
 
しかし、派遣延期が1年から2年となり、ついにSTOP VPDsプログラムの中止が決定されました。その時点で、IDES養成プログラムへの応募を決断しました。2022年9月に、厚労省健康局結核感染症課・新型コロナウイルス感染症対策推進本部戦略班にて国内研修を開始しました。今月は国立感染研究所(以下、感染研)実地疫学研究センターの実地疫学専門家養成コース(Field Epidemiology Training Program、以下、FETP)初期導入研修を受講しております。
 
FETPとは、感染症のアウトブレイクをいち早く探知し、対応する人材の育成を行っている、感染研の2年間のトレーニングコースです。初期導入研修では、疫学の基礎やサーベイランス、リスク評価について、講義やケーススタディ、グループワークを通して学ぶことができます。初期導入研修自体ももちろん勉強になるのですが、感染研の先生方や、私達IDESと志を同じくする、全国から集まってきているFETP生と交流できるのも大変有意義だと感じています。
 
こちらのコラムを読んでくださっている人の中には、将来的にIDES養成プログラムへの応募を検討している学生や先生もいると思います。IDESにはいろんなバックグラウンドの人がいます。私のように、感染症専門の臨床医として経験が無い医師も複数います。私も最初は少し不安がありましたが、研修を重ねて行くにつれ、「感染症危機管理」には様々な要素があることが分かって来ました。公衆衛生や疫学、法律や組織運営についての知識、また語学力が活かせる場面などもあり、もちろん感染症の知識があるに越したことはありませんが、違う畑から来た人間にもできることはあります。
 
貴重な経験をいろいろさせていただいております。これからの国内研修では、来月行われるG7広島サミットに携わったり、検疫所での水際対策について学んだりする機会があるので、楽しみにしています。以上、今回のコラムは私の自己紹介を兼ね、IDES養成プログラムの研修内容の紹介をさせていただきました。
 
感染症危機管理専門家(IDES)養成プログラム
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/ides/index.html
KIT Royal Tropical Institute
https://www.kit.nl/
tropEdネットワーク
https://troped.org/
Field Epidemiology Training Program(FETP)初期導入研修
https://www.niid.go.jp/niid/ja/seminar/11862-5-fetp-2023-fetp-introductory-course-2.html
実地疫学専門家養成コース(Field Epidemiology Training Program)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/fetp.html
FETP初期導入研修
https://www.niid.go.jp/niid/ja/seminar/10208-localsurveillanceofficer2021-3.html
 



(編集:鍋島 清香) 

  • 当コラムの見解は執筆者の個人的な意見であり、厚生労働省の見解を示すものではありません。
  • IDES(Infectious Disease Emergency Specialist)は、厚生労働省で平成27年度からはじまったプログラムの中で養成される「感染症危機管理専門家」のことをいいます。

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