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感染症危機管理専門家(IDES)養成プログラム

感染症危機管理専門家養成プログラム 実施要項

1.目的

 2014年の西アフリカにおけるエボラ出血熱の流行を受け、人的な国際貢献を検討する際に、日本国内にそれに対応できる専門家が不足していることが明らかとなった。新興・再興感染症への対策の一環として、感染症の危機管理に対応できる人材の養成を行うことで、人的な国際貢献が可能となる体制を築くとともに、国内での感染症危機管理対応力の強化を図る。

2.養成プログラムの内容

 国内外の感染症危機管理に対応できる人材に必要となる、国内外の感染症の知識、行政能力(マネージメント)及び国際的な対応能力を習得できるプログラムとして、以下のようなプログラムの中から、希望者がその専門性に合わせて選択できるものとする。

(1)国内研修(1年目)

  • ア)厚生労働省 6か月から10か月程度、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(平成10年法律第114号)、感染症危機管理の指針、行動計画、他省庁との連携等の業務に携わることによって、国レベルでの感染症分野の行政能力を習得する。
  • イ)検疫所
    検疫所において、検疫法(昭和26年法律第201号)、健康監視等の監視体制、疑似症患者への対応、搬送等に関する関係機関との調整等の業務に携わることによって、検疫分野の行政能力を習得する。
  • ウ)国立感染症研究所
    1か月から6か月程度、感染症情報センター疫学チームにおいて、感染症情報(疫学)センター、積極的疫学調査、国民やマスコミ向け情報提供、感染予防ガイドラインの作成等の業務に携わることによって、基礎分野における感染症の専門知識を習得する。
    ※実地疫学専門家養成コース(FETP)修了生又はそれと同等の感染症疫学の能力を有すると認められる者は、国立感染症研究所での研修を省略可能とする。
  • エ)国立国際医療研究センター国際感染症センター
    1か月から6か月程度、感染症の診断・治療の実務、臨床医の適切な対応、人材育成(研修生の受け入れ)等に携わることによって、臨床分野における感染症の専門知識を習得する。
    ※国立国際医療研究センターでの勤務経験がある又はそれと同等の感染症診療の経験を有すると認められる者は、国立国際医療研究センターでの研修を省略可能とする。

(2)海外研修(2年目)

 研修生は、以下のうちいずれかの研修先に12か月程度派遣され、各専門機関が主催する研修プログラムへの参加、調査研究、ガイドラインの作成、関係機関との調整等に携わることによって、国際的なレベルでの行政能力(マネージメント能力)を習得する。

  • ア) 米国疾病管理予防センター(CDC)
    公衆衛生危機管理部門、インフルエンザ対策部など
  • イ)米国保健省
    健康危機管理部、感染症対策部など
  • ウ)その他諸外国保健省感染症対策部門 等
    疫学研修プログラム、感染症対策課など
  • エ)世界保健機関西太平洋事務局(WPRO)等の国際機関
    感染症疫学部、感染症対策プログラムなど
  • オ)その他

(3)国内研修(3年目)

 研修生は、海外派遣の後に、本人の希望等に応じて、一定期間(0〜12か月程度)、厚生労働省で勤務する。

(4)養成プログラムの例

  研修内容(例) 研修場所
1年目
4月 FETP導入研修に参加 国立感染症研究所
5月〜9月
  • 感染症法の見直し、指針の作成・改正、関係省庁との調整等の業務を経験
  • 週1日程度、検疫所業務を経験
厚生労働省結核感染症課(検疫所)
10月〜12月 積極的疫学調査等の活動に参加 国立感染症研究所
1月〜3月 トラベルクリニックなどでの診療、感染症の臨床に関する研修会等に参加 国立国際医療研究センター
2年目
4月〜9月 感染症危機管理マネージメントコースに参加 米国疾病管理予防センター(CDC)
10月〜3月 インフルエンザ部門でデータの分析やガイドラインの改定等を経験 米国疾病管理予防センター(CDC)

3.養成プログラム修了後の手続き

(1)評価

 養成プログラムの修了にあたっては、養成プログラムで修得した事項等をまとめた報告書を、運営協議会(後述)に提出すること。

(2)修了証

 養成プログラム修了者に対し、修了報告書に関する運営協議会の評価を踏まえ、厚生労働大臣から養成プログラム修了証を授与すること。

(3)登録

 養成プログラム修了者は、「感染症危機管理専門家」として、特別の理由がない限り、連絡先や所属等を厚生労働省結核感染症課に登録する(以下「登録者」という。)こと。毎年2回、連絡先、所属や派遣協力可能性等について結核感染症課に報告すること。

(4)派遣要請への協力

 厚生労働大臣は、感染症危機管理の事案が発生した場合には、登録者に対して、派遣等の協力を求めることができ、登録者は、原則これに協力すること。

(5)プログラム修了後の所属先

 養成プログラムの修了後の所属先としては、感染症対策に関係する機関が望ましい。例えば、以下のような関係機関が想定される。

  • JICA(国際緊急援助隊、短期専門家等)
  • 国立国際医療研究センター
  • 国立感染症研究所
  • 行政機関(厚生労働省、検疫所)
  • 特定感染症指定医療機関  等

4.募集要項

(1)採用スケジュール[1]

  • 5月〜6月 募集
  • 7月 書類審査
  • 8月 選考委員会、面接、内示
  • 9月 採用通知、書類の準備
  • 10月1日 辞令交付、研修開始

採用スケジュール[2]

  • 8月〜9月 募集
  • 10月 書類審査
  • 11月 選考委員会、面接
  • 1月 内示
  • 2月 採用通知、書類の準備
  • 4月1日 辞令交付、研修開始

(2)選考基準

  • 募集要項上の要件を満たしていること
  • 感染症分野で勤務・研修の経験があること
  • 将来、感染症危機管理事案への対応に協力する意向があること

(4)運営協議会

 感染症危機管理養成プログラム実施要綱(平成27年4月20日 厚生労働大臣伺い定め)に基づき、養成プログラムの運営に関する事項を協議するため、運営協議会を設置する。
 運営協議会の設置要項は、健康局長が定める。運営協議会のメンバーは、設置要項に基づき、関係部局及び国内研修先となる関係機関等から構成される。

感染症危機管理を実施するための能力とは

●専門分野の理解及び実践能力(行政、感染症、疫学など)
●コミュニケーション力(リーダーシップ、チームワーク、海外機関との連絡など)
●情報管理能力(収集、分析、発信)

なぜIDESが必要なのか

 近年、国境を越えた往来の増加、都市の過密化、行動様式の多様化など、様々な要因により新型インフルエンザやエボラ出血熱、MERS、ジカウイルス感染症などの新興・再興感染症が出現し、人々の健康に対する世界的な脅威となっています。

 こうした、国際的に脅威となる感染症に対する危機管理には、感染症に関する臨床経験や疫学知識のみならず、行政マネジメント能力、国際的な調整能力等、総合的な知識と能力が求められます。同時に、国民の生命と健康を新興・再興感染症から守るためには、こうした知識と能力を有する人材を継続的に育成し、国内外で活躍していただくことが不可欠です。

 厚生労働省では、平成27年度から国際的に脅威となる感染症の危機管理対応で中心的な役割を担う将来のリーダーを育成するため、関係機関がネットワークをつくり、本プログラムを開設しました。

IDES一覧

1期生(平成27年度)

  • 氏家無限
  • 杉原 淳
  • 都築慎也
  • 小玉千織

IDES養成プログラム履修生からのメッセージ 

IDES1期生  都築医師
 IDES養成プログラムは発足したばかりの研修制度であり、私を含めOB・OG一期生も今後の更なる拡充を期待しているところです。始まって間もない制度だからこそ、今後採用される皆様のビジョンを反映させられる場だと思います。
 私個人の経験を申し上げますと、国内では厚生労働省結核感染症課でのOn the job trainingを中心に、行政・臨床・研究それぞれの分野で日本の感染症危機管理と関連の深い施設で実務経験を積ませていただきました。自らの内に他国の体制を評価する準拠枠を持つことで、二年目の海外研修がより実り多いものになったと感じています。
 二年目は英国のイングランド公衆衛生庁(Public Health England)で、呼吸器感染症や蚊媒介感染症の理論疫学について学びました。日本と同じ島国のいち政府機関ですから、日本が参考にできる部分が多いと感じました。特に強く感じたのは、英国が公衆衛生人材の育成を非常に重視していることと、官学の連携を積極的かつ有効に行っていることです。
 アカデミアから日本の感染症管理に有益な成果を発信することが行政への貢献にも繋がると考え、修了後は大学教員の道を選びました。一期生の進路も国内外問わず行政・臨床・研究と多様ですので、今後本プログラムを修了される皆様も多様な分野でご活躍されることと期待しています。

IDES2期生 井手医師
 国内法と国際規則に則りながら、感染症に関わる医療政策、水際対策、危機管理訓練、情報収集を日常業務とし、事案発生時には現場対応の一員として活動させていただく1年目。医療専門家としてだけではなく、国際機関および他国政府機関へ日本政府のセコンドメントとして派遣され、初年度の知見を元に国際または2国間に関わる案件に従事する2年目。これがIDESプログラムの概略です。大きな特徴としては、臨床、研究、検疫、地方自治体など各分野の第一線で活躍される方々と垣根を越えて日々仕事をさせていただけることではないでしょうか。各分野で事案をいかに捕らえ、喫緊および長期課題とその対応策を検討、施行する過程に携わらせていただき、危機管理とは何かを実地で経験できる日々です。またその事案は結核、性感染症等の厚生労働省が主管する案件から薬剤耐性、災害、テロ対策等の省庁横断的に対応を求められる案件まで多岐に渡り、枚挙に暇なく学ぶべきことが続きます。また、国際機関、他国政府機関へ継続的にIDESメンバーが派遣されることで、国内外で情報共有や人材交流をおこなえることはもちろんですが、メンバー間で同じ案件を異なる機関でどのように受け止め対応しているかを話し合えることは、多面的に案件を検討する際の応用力を涵養させられます。
 IDESプログラムでは、キャリアの異なるメンバーが集まり、それぞれの得意分野でお互いをカバーし、気兼ねなく意見を出し合い業務を遂行しつつ、本プログラム立ち上げにご尽力いただいている各界の先生方のご厚意で、さまざまな人的交流の機会をいただいております。IDESが今後増えていくことで、ゆくゆくはメンバーを介して実務に即したネットワークが構築できればと皆考えております。若手の方々はもちろんですが、一定の臨床および研究経験を積まれた方にも、その見識を活用いただける国内外の事案が山積していますので、是非挑戦いただければと思います。

IDES2期生 船木医師
 本プログラムに参加したことで、臨床や研究に従事した医師人生では決して経験することのできなかった貴重な経験ができていると思っています。時には最前線からは一歩引いて、視野を広く持つことによって、新たな視野が広がり、そこに隠れている重要なものに気づかされたりもします。例えば、日本の公衆衛生に関する中心的な役割を担う行政機関における物事の動き、その中で見落としがちな注意点、医療現場や研究機関と行政との連携、法秩序、実際の検疫業務など、経験できることは多岐に渡ります。さらに単なる知識だけでなく、疫学的な視点での観察を継続することの重要性、危機管理事象の捉え方・対策、啓発の手法なども学ぶことができます。海外での経験も非常に貴重で、仕組みや文化の異なる機関での業務は大変なことも多いですが、外を見ることで日本のシステムの良いところを再認識する機会にもなり、また改善の余地があるところがはっきりとするように思います。
 そして何よりの魅力は、人との繋がりに恵まれた環境です。背景は異なるものの、志の高い同期や同僚に出会い、私自身に関わっていただいた全ての方はこれまでの人生の中ではほとんど機会のなかった、貴重でかつ新鮮な出会いになったという点で、非常に大きな経験や財産をいただいていると思います。

IDES 2期生 中村医師
 熱帯医学修士、産婦人科臨床のバックグラウンドからIDESプログラムに応募しました。海外と国内のNGOや国際赤十字社での経験等を通して、公衆衛生政策や国際情勢にはもともと関心があり、実臨床と国内政策、国内と国際政策の隔たりを少なからず感じていたことから行政のシステムと考え方に対する興味が大きくなったことが応募に至った動機です。
 実際にIDESとして厚労省を含めた行政システムの中で、沢山のことを教えていただきながら働かせて頂き、行政の方々の視野の広さを実感するとともに、まだまだ未熟ながら自分の意見が国の政策に反映され、国に貢献できる面白さとやりがいを感じることができました。また、多種多様な経験をもつ同期に会えたことは今後の人生における大きな宝になると思っています。
 実際の業務内容の中では、検疫所をはじめ国立国際医療研究センターや国立感染症研究所での研修を通して、それぞれの機関の位置づけや重要性を学ぶことができました。国全体または国際的な感染症アウトブレイクのコントロールにおいては、職種を問わず平時からのコミュニケーションが大事であると思われるため、関係機関での研修は顔の見える関係性を作る上でも有意義であると感じました。海外での機関でも同様で、IDESが継続して海外の関連機関に派遣されることで、国際的なネットワークを構築し円滑なコミュニケーションを推進することにつながれば、IDESプログラムは国内外双方にとってとても有意義なプログラムになると思います。全体として、国際情勢が日々変化する中で、国内と国外の危機管理体系について学び、日本の感染症危機管理体制の改善について貢献できるやりがいのあるプログラムだと思います。



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