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IDESコラム vol. 18
感染症エクスプレス@厚労省 2018年4月27日

「5月5日『手指衛生の日』キャンペーンに参加しましょう。スイス、ジュネーブのWHOより」

IDES養成プログラム 2期生:斎藤 浩輝

 IDESプログラム2期の斎藤浩輝です。一年目は主に厚生労働省の結核感染症課で勤務の後、昨年度からスイスのジュネーブにあるWHO(World Health Organization:世界保健機関)に派遣されています。IPC-GU(Infection Prevention and Control Global Unit)という、主に感染予防・管理の部門に派遣されています。一年間の派遣はあっという間で、残り期間は早くも数ヶ月となりました。今回は私が現在取り組む仕事としてホットなWHOでの手指衛生キャンペーンに関してお伝えします。
 
 この5月5日、WHOでは医療施設における「手指(しゅし)衛生の日」として啓発活動をしています。両手をパーに広げて5本指を立てて、「5」月「5」日ということです。
 日本では、「帰ったらまず手洗い・うがいをしなさい」と、しつける文化が根付いているように思います。実は、医療施設では、手を綺麗にするとき、「Hand washing(手洗い)」と言わず「Hand hygiene(手指衛生)」と言うのが望ましいとされています。それは、なぜかご存じでしょうか?
 いわゆる「Hand washing」だけでは現場の医療が成り立たない状況も考えられるのです。手指を衛生的に保つことを「Hand hygiene(手指衛生)」と言います。その方法として、石けんと水による「Hand washing」やアルコール製剤を用いた「Hand rubbing(手を擦ること)」などがあります。石けんと水による正しい「Hand washing」には1分程度かかると言われています。一方で、アルコール製剤を用いた「Hand rubbing」は20〜30秒前後で、「Hand washing」の半分程度の時間で終わります。

 WHOは医療現場で手指衛生を行うべきタイミングを5つ提示しています(“My 5 Moments” - http://www.who.int/infection-prevention/campaigns/clean-hands/5moments/en/)。
 1.患者に接触する前
 2.無菌操作をする前
 3.体液暴露リスクの後
 4.患者に接触した後
 5.患者環境に触れた後

 これだけ手指衛生を行うタイミングが多いということは、それだけ患者も、医療従事者も感染する、もしくは感染を広げる恐れのあるタイミングがあるということです。例えば、集中治療室(ICU)において1人の看護師が必要な手指衛生の回数は1時間に50回を超える事もあります。そのような状況で1分程度かかる「Hand washing」をしていたら、患者ケアの時間は数分しか残りません。したがって、石けんと水による「Hand washing」だけではなく、アルコール製剤を用いた「Hand rubbing」と組み合わせることが大切であることはお分かりになると思います。
 
 昨今の薬剤耐性対策においても、数年前の西アフリカでのエボラ感染症対策時でも、WHOやCDC(アメリカ疾病予防管理センター)は「Hand washing」のみならず「Hand rubbing」が有効であることを啓発しています。そのどちらも含めた総称が医療現場における「Hand hygiene」です。「Hand hygiene」は、有時、平時に関わらず、医療現場で普遍的に行われるべき基本的行為で、かつ、非常に重要な事柄なのです。
 
 今年のキャンペーンのスローガンは“It’s in your hands − prevent sepsis in health care”です。Sepsis(敗血症)はICUの病気と思っていませんか?もしそのように思っている方がいらっしゃったら、改めた方がよいかも知れません。世界中で年間3,000万人もの人が敗血症を発症していると言われ、決してICUだけの病気ではないのです。例えば、敗血症以外を理由に入院したにも関わらず、医療従事者が不衛生な手指で患者に処置をしたために、患者が敗血症を引き起こすケースもあります。ですから、今回のスローガン「あたなの手、あなた次第で、医療施設における敗血症は防げます」ということになるのです。

 今回のキャンペーンでは、世界中の組織・医療施設と連携をしています。ハッシュタグで「#HandHygiene」「#Sepsis」と記載し、ツイートして、世界中でリツイートしたり、皆さんのセルフィーをアップするソーシャルメディアでの活動もあります。皆さんの医療施設は同キャンペーンに登録されましたか?驚いたことに、世界中に2万以上登録施設があるなかで、な、なんと日本は、たった53施設しか登録していません。私としては、日本の医療機関の皆さまにも積極的に参加していただきたいと思っています。
 興味を持たれた方は是非WHOのサイトをのぞいてみてください。皆さんの医療施設もご登録いただき、日本からの問い合わせもぜひお待ちしております。
WHOサイト
WHO医療施設登録ページ

 敗血症と縁の深い、薬剤耐性問題に取り組むAMR臨床リファレンスセンターも関連組織と連携して本キャンペーンの日本語訳ポスター作成等にご尽力いただいています。
http://amr.ncgm.go.jp/medics/2-7.html

 私たちの身の周りには、微生物がたくさん存在します。日々の中で、微生物と共存しているという側面もあります。一方で、血管内など誤った場所に入れば、人体に害を及ぼすこともあります。
 私たちの日常生活で、最も微生物を運びうる部位で言うと「手指」になります。食べ物を食べるのも「手」ですし、お尻を拭くのも「手」です。大切なことは、様々な場所に触れる手指を衛生的に保つことです。当たり前かも知れませんが、重要なことなので、申し上げます。そのための一つの方法が、「hand washing」 や「hand rubbing」 である「hand hygiene(手指衛生)」です。このキャンペーンが、皆さんの健康につながると切に願っています。
 
●当コラムの見解は執筆者の個人的な意見であり、厚生労働省の見解を示すものではありません。
●IDES(Infectious Disease Emergency Specialist)は、厚生労働省で3年前の平成27年度からはじまったプログラムの中で養成される「感染症危機管理専門家」のことをいいます。

感染症危機管理専門家(IDES)養成プログラム
「感染症危機管理専門家(IDES)養成プログラム」採用案内(5月1日更新予定)>

hand hygiene
WHOポスターの日本語版(AMR臨床リファレンスセンターと一般社団法人 日本集中治療医学会の共同制作)

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