IDESコラム vol. 60「米国でのコロナ禍におけるFlu Season」

感染症エクスプレス@厚労省 2021年11月19日

IDES養成プログラム6期生:松澤 幸正

 こんにちは。感染症危機管理専門家(IDES)養成プログラム6期生の松澤幸正です。
IDESプログラムの2年目は国際機関への派遣となりますが、2021年7月より、私は米国保健福祉省(HHS; U.S. Department of Health and Human Services)、及び米国国立衛生研究所(NIH: National Institutes of Health)を構成する研究機関の一つである国立アレルギー・感染症研究所(NIAID; National Institute of Allergy and Infectious Diseases)に派遣されております。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行時において、米国の保健当局で得た経験・知識をしっかりと日本の公衆衛生・医療に還元できるよう、残りの任期も、日々の業務に邁進してまいります。
 さて、HHSのあるワシントンD.C.では、夏場は日差しも強く、日中は摂氏35℃以上になる暑さですが、11月に入ると一気に寒くなり、最近では朝晩、氷点下近くになることもあります。夕方5時半くらいには外が真っ暗になり、気分が少しブルーになりますが、赤、黄、オレンジ、紫に変わる色とりどりの米国の紅葉には感動します。だんだん寒くなってくると心配なのは、季節性インフルエンザの流行です。昨年は、米国でも国際的にも、高水準の検査が行われていたにも関わらず、インフルエンザの発生率はかなり低く、米国では、2020年9月28日~2021年5月22日の間に検査された、呼吸器検体818,939件のうち、1,675件(0.2%)のみがインフルエンザ陽性でした。COVID-19パンデミック前の過去3シーズンでは、呼吸器検体のインフルエンザ陽性率は、26.2~30.3%の間で推移していました。
 米国疾病対策・予防センター(CDC; Center for Disease Control and Prevention)は、この要因として、COVID-19に対する多層的な対策(フェイスマスクの着用、手洗い、旅行の減少、物理的距離の確保など)による効果を挙げています。CDCの調査では、2020年9月~12月にかけて、インフルエンザワクチンの投与総量は、2018年と2019年9月~12月の平均と比べ、全年齢層だと9.0%増加していましたが、6~23か月齢、2~4歳では、それぞれ13.9%と11.9%の割合で低下していました。これは、COVID-19に感染する恐れなどによる、医療機関へのアクセスの低下による影響の可能性が指摘されています。このように、米国においてもCOVID-19は、通常の医療や公衆衛生にも大きな影響を与えており、今回の2021/2022年のインフルエンザシーズンでは、COVID-19ワクチン接種率の上昇に伴う規制緩和(リモートワーク解除や飲食店の制限緩和、屋外でのマスク着用義務の解除等)も進み、その流行が懸念されているところです。幸い、今のところ、米国における今シーズンのインフルエンザの流行は、昨シーズン同様低調な状況ですが、最近増加傾向にあります。
 日本でも、現状、今シーズンは、昨シーズンに引続き低調な流行状況が続いていますが、社会活動の制限の緩和により増加するリスクはあり、COVID-19に加えて、インフルエンザについても注意し、基本的な感染予防対策を怠らないことが大切と感じています。「ひとりひとりの感染予防の行動が、まわりの大切な人を守ることに繋がる。」CDCのレポートでよく見かけるこの言葉で、今回のコラムを締めさせていただきたいと思います。
 

【参考資料】

FLUVIEW – A Weekly Influenza Surveillance Report Prepared by the Influenza Division (CDC)

https://www.cdc.gov/flu/weekly/index.htm

 

2020/2021インフルエンザシーズンの概要(CDC

https://www.cdc.gov/flu/season/faq-flu-season-2020-2021.htm

 

20209月~12月における米国でのインフルエンザワクチン接種(CDC

https://www.cdc.gov/mmwr/volumes/70/wr/mm7045a3.htm?s_cid=mm7045a3_x


 

  • 当コラムの見解は執筆者の個人的な意見であり、厚生労働省の見解を示すものではありません。
  • IDES(Infectious Disease Emergency Specialist)は、厚生労働省で4年前の平成27年度からはじまったプログラムの中で養成される「感染症危機管理専門家」のことをいいます。

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