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あさコラム vol.51
感染症エクスプレス@厚労省 2017年4月21日

地域のチカラ

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 去る4月14日、熊本県庁において「熊本地震犠牲者追悼式」が執り行われ
ました。
 御遺族や関係者など多数の方々とともに私も参列し、お祈りを申し上げて
きました。

 昨年、2度にわたる震度7の激震を観測したこの大きな地震で犠牲となられ
た方々は、災害関連死を含め225名にも及びます。
 また、現在も約4万7000名の方々が、仮設住宅などでご不便な暮らしを余
儀なくされています。
 ここに改めまして、この地震により亡くなられた方々と御遺族の皆様にお
悔やみを申し上げますとともに、被災された方々に心からお見舞いを申し上
げます。

 思い起こせば、昨年の発災時、私も被災地に出向き、避難所等における季
節性インフルエンザやノロウイルスなどのアウトブレイクをどのように未然
に防いでいくか、国立感染症研究所の専門家の方々や保健医療関係者の方々
とともに取り組みましたが、おかげさまで感染症の大きな流行は起きません
でした。
 これは被災地で活躍された関係者の方々のご尽力の賜物であったことはも
ちろんですが、加えて、被災された住民の皆様の「心配り」もあったからで
はないかと思います。

 それを裏付けるかのように、追悼式では、蒲島郁夫熊本県知事がご挨拶の
中で、
「トイレを使われた高齢者の手を洗ってあげるため、水が入ったやかんを持
って待っている子どもたち、食事の配膳や物資の仕分けを率先して行う子ど
もたち、多くの避難所で大人に負けない子どもたちの活躍がありました。」
と述べられ、また、ご遺族代表の冨永真由美さんのご挨拶の中で、
「家の前に「うちは水が出ますので、トイレは自由にお使い下さい」と立て
札を立てられた方。「お隣が高齢の方だから水くみに行ったら、必ず分けて
あげるの」とおっしゃる方。皆大変な中で気遣いや手助けを始められ、そ
れを続けてらっしゃる姿が目に留まるようになってきました。」
と、お話になりました。

 感染症対策において、手洗い、トイレ、食品衛生は大変重要な事項ですし、
それらに適切に対応するためにも「水」は不可欠なものです。
 そのため、仮設トイレや給水車などは、被災地支援の必須アイテムなので
すが、初動時には十分に満たせない場合もあり得ます。
 そうした時こそ、地域における助け合い、住民の皆さん同士の助け合いが、
大きな力になります。

 「弱っている方々を皆で支える」、こうした地域の心配りがあったからこ
そ、熊本地震では感染症の流行を抑えられたのかもしれない…。
 追悼式でのご挨拶を拝聴しながら、かような思いが私の心によぎりました。
 まさに「地域のチカラ」です。

 「地域のチカラ」は、感染症対策における様々な場面で試されています。
 直近では、山形県で発生している麻しんへの対応です。
 バリ島で麻しんに感染した男性が端緒になり、自動車教習所及び宿泊施設
に関連して山形県の内外に麻しんの感染が拡がり、山形県の報道発表資料に
よりますと、4月20日現在、本件での感染者数は60例となっています。
 感染者が受診した医療機関の医師や立ち寄った施設の職員の方が感染する
などの二次感染、さらに三次感染も確認されておりますが、現在は山形県の
東置賜郡と酒田市で感染が続いている模様です。
 管轄の保健所や地元医師会・医療機関などの関係者の方々の感染拡大防止
へのご尽力もさることながら、住民の皆様にはぜひ麻しんのことを良く知っ
ていただき、適切な受診やワクチン接種などに取り組んでいただきたいと思
います。

 麻しんによる亜急性硬化性全脳炎(SSPE)を防ぐためにも、「地域のチカ
ラ」をぜひ発揮して欲しいと、心から願うばかりです。

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