IDESコラム vol. 53「チーム日本! ラグビーワールドカップに寄せて。」

感染症エクスプレス@厚労省 2019年10月11日

IDES養成プログラム4期生:大塚 美耶子

 こんにちは。IDES 4期の大塚美耶子です。
 ラグビーワールドカップ、盛り上がっていますね!このコラムを書いている10月5日の今日も、対サモア戦の日本勝利を生放送で見ました!!また先日、日本が世界第2位の強さを誇るアイルランドを相手に勝利を収めたことも、こちらスイス・ジュネーブWHOの私が所属する朝の会議で大きな話題となっており、日本人としてとても嬉しい瞬間でした。(それに引き換えアイルランド人の所属長はかなりショックだったとか!)
 ラグビーワールドカップに限らず、たとえばサッカーのワールドカップやオリンピックでも、見ず知らずの人と一緒に、試合の成り行きに時には息をのみ、時には喜び合い、試合が終わるころには連帯感が芽生えることは不思議ではありません。私も西アフリカのブルキナファソに住んでいたときには家にテレビがなく、夕方ごろみんなが集まる共有スペースのテレビで、薄明かりの中スポーツ観戦をしていたことがありますが、みんなではしゃいでとても楽しかったことを思い出しました。
 非日常的な雰囲気・環境を共有するところから生まれる素敵な瞬間ですね。しかし同時に不特定多数が同じ空間を共有することで、感情のみならず感染症まで共有してしまうことにも成り得るのです。普段であれば生活圏、特に生活習慣を一緒にしている家族や同僚、友達の間でしか広がらない感染症などが、世界各地から集まった人に感染し、瞬く間に世界中に広がることも十分あり得る話です。
 今回のラグビーワールドカップや2020年の東京オリンピック・パラリンピックなど、マスギャザリング時の水際の感染症対策に関しては検疫所(空港や港)が、国内の感染症の把握に関しては保健所に寄せられる感染症の情報等で管理されています。そのほかにも、WHOが管理及び使用しているEIOS(Epidemic Intelligence from Open source)というプラットフォームでは、新聞など一般の公開情報からで得られる記事をスキャンして閲覧できるので、日々公衆衛生上の危機となり得るような事象がないかどうか観察できます。
 ジュネーブでの私の日常業務のひとつとして、EIOSを使用して世界中からの公開情報をスクリーニングし、その中から公衆衛生上の危機もしくは危機となりそうな事象には関係者と対処しています。昔尊敬する先生から、世の中の出来事はほぼ(!?)公開情報で把握することができると聞き、驚きつつ半信半疑でしたが、実際にEIOSを使用してみて、主要な感染症情報をかなり効率よく獲得できると実感しています。もちろん不正確な情報もありますので、情報確認は必須です。
 情報があふれる今の時代、前述の通り、情報源などの確認を怠らなければ、正確な情報を得ることも可能です。まもなく最大の盛り上がりを見せてくれるだろうラグビーワールドカップ、来年の東京オリンピック・パラリンピックなどのイベントを参加者が大いに楽しめるよう、陰で様々な行政・専門機関で働く方々が支えています。私もIDESの一員として、マスギャザリングを含めた感染症危機に対応できるよう頑張ります。
 頑張れ日本チーム!
●当コラムの見解は執筆者の個人的な意見であり、厚生労働省の見解を示すものではありません。
●IDES(Infectious Disease Emergency Specialist)は、厚生労働省で4年前の平成27年度からはじまったプログラムの中で養成される「感染症危機管理専門家」のことをいいます。
 
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