ホーム> あさコラム vol.13

あさコラム vol.13
感染症エクスプレス@厚労省 2016年7月15日

福を呼ぶ

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 前回、風しんと高校野球の話を書いたところ、たくさんの感想と激励を頂きま
した。誠にありがとうございました。大変嬉しく思っています。

 その感想の中で、活躍している難聴のスポーツ選手は、他にもたくさんいるよと、
教えて頂きました。
 例えば、アメリカンフットボールでは、米国NFLシアトル・シーホークスの
デリック・ コールマン選手。
 水泳選手では、ソウルオリンピック個人メドレー金メダリストのハンガリーの
タマス・ダルニュイ選手。
 野球では、独立リーグの新潟アルビレックスBCの野呂 大樹選手。

 そして、今、プロ野球オールスター戦が福岡と横浜で開催されていますが
(7月15日、16日)、福岡のオールスター戦といえば「カズ山本」こと山本 和範選手。
 元南海ホークス、ダイエーホークス、近鉄バファローズの外野手として活躍した、
2度の戦力外通告を受けた苦労人です。
 平成8年の福岡でのオールスター戦では、涙の代打3ランホームランで最優秀
選手賞を獲得しました。

 私の趣味の一つである市民マラソンでは、永井 恒さん。
 かつて出場した洞爺湖マラソンで、偶然にもお会いしました。
 この永井さん、全国47都道府県で開催された各地のマラソン大会において、
全て優勝を果たした市民ランナーなんです。
 もちろん、他にもスキー、卓球、ラグビー、ボクシング、さらにはデフリン
ピックをめざして頑張っている選手もいます。
 素晴らしいですね。私も見習いたいと思います。

 ということで、感染症が原因で難聴になる方を一人でも増やさないよう、
日々仕事をさせていただいていますが、実は今、困ったことが起きています。
 それは、おたふくかぜ(流行性耳下腺炎、ムンプス)の流行です。
 おたふくかぜは耳下腺や顎下腺が腫れることでおたふく面のようになる
ウイルス性の感染症ですが、髄膜炎、脳炎、膵炎や睾丸炎などの合併症を起こす
ことがあります。
 その合併症の一つが難聴です。
 「感染症予防必携(日本公衆衛生協会)」によると、400~1000例に1例の合併と
言われていますが、高度難聴になりやすく、治癒は困難。

 最新の感染症発生動向調査・感染症週報では、過去5年間の同時期で比較すると、
おたふくかぜの報告はかなり多いとのこと。
 特に、九州と大都市部での流行が目立っているそうです。
 この流行、見過ごすわけにはいきません。

 おたふくかぜは予防接種で感染を防ぐことができます。
 一般的には軽い症状で治まるおたふくかぜですが、感染者が増えれば合併症の
患者さんも増えていくのは道理です。
 今年のような流行に直面すると、予防接種でおたふくかぜの合併症を少しでも
防ぎたいとの思いが募るばかりです。
 未だワクチンは任意接種(定期接種化については検討中)ですが、今すぐ
できることとしては、発生動向調査のデータを注視しながら、予防接種の啓発
普及に努めること。
 読者の皆様にもこの状況をぜひご理解いただき、ご支援を賜りたく存じます。

 ちなみに、おたふくは「お多福」とも書きます。
 しかし、おたふくかぜは、決して福を呼ぶ感染症ではありません、
むしろ、おたふくかぜの流行を抑えることで、難聴や睾丸炎などの合併症を減らし、
世の中に多くの福を呼びたいと、強く思っています。

 

「感染症エクスプレス@厚労省」は、主に医療従事者の皆さまに向け、通知・事務連絡などの感染症情報を直接ご提供するメールマガジンです。
本コラムは、「感染症エクスプレス@厚労省」に掲載しております健康局結核感染症課長によるコラムです。
「感染症エクスプレス@厚労省」への登録(無料)
本コラムの感想、ご質問、ご要望など
コラム バックナンバー

ホーム> あさコラム vol.13

ページの先頭へ戻る