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あさコラム vol.27
感染症エクスプレス@厚労省 2016年10月28日

ロミオとジュリエット

 こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 鳥取県中部地震で被災された方々、また関係の皆様、心からお見舞い申し
上げます。
 避難所も立ち上がっていますが、季節の変わり目ということもあり、避難
所でのインフルエンザやノロウイルスなどの集団発生の心配もあります。
 感染防止の基本は手洗いやうがい、咳エチケットやマスクの着用、トイレ
などの共用施設の清掃や消毒といったところです。
 避難生活はとても大変だと思いますが、私たちも感染症対策の立場からサ
ポートしていきたいと思います。

 さて、先日、はばたき福祉事業団主催の「第6回はばたきミニコンサート」
に参加し、歌曲やシャンソン、ジャズなど様々な音楽を聴いたり、参加した
方々と合唱したりと、素敵なひとときを過ごすことができました。
 大平勝美理事長さんや全国訪問看護事業協会の伊藤雅治さんとご一緒したト
ークのコーナーでは、高齢化に伴う薬害エイズの被害者の方々への一層のご支
援と薬害エイズを風化させない決意を表明して参りました。
 毎年、春(3月〜4月)には本格的なクラシックコンサートである「はばたき
メモリアルコンサート」も開催されていますので、ぜひコラム読者の方々にも
お越し頂きますよう、お願いいたします。

 ということで、芸術の秋を迎えて思い出すのは、英国の劇作家であるウィリ
アム・シェイクスピアの戯曲「ロミオとジュリエット」。
 皆様も読んだことがあるかも知れませんが、オペラやバレエ、ミュージカル
として上演されたり、TVドラマとして放送されるなど、わが国でもよく知られ
ています。
 かつては宝塚歌劇団でもミュージカルが上演され、今年も東京と大阪でミュ
ージカルが公演されるなど、根強い人気がある作品です。

 14世紀のイタリア・ヴェローナで、長年対立するモンタギュー家とキャピュ
レット家。
 そのモンタギュー家の一人息子ロミオとキャピュレット家の一人娘ジュリエ
ットとが恋に落ち、二人は修道士のロレンスの元で秘かに結婚します。
 しかし、直後に悲劇が訪れ、二人はバラバラに。悲しみにくれるジュリエッ
トは、親から富豪のパリスとの結婚を命じられます。
 ピンチになったジュリエットは、修道士ロレンスに相談、仮死状態にする薬
を使った一芝居を企てます。
 その企てを知らせる手紙がロミオに届かず、ジュリエットが死んだと思った
ロミオは、彼女の墓の前で自殺。
 仮死から目覚めたジュリエットも、ロミオを失った悲しみに暮れて、ロミオ
の短剣で後追い自殺。
 「おお、ロミオ、ロミオ。どうしてあなたはロミオなの?」
 と、トートロジーのようなジュリエットの台詞が有名なこのロミオとジュリ
エットは、ざっと言えばこういう悲恋の物語です。

 さて、ここで問題!
 なぜ、ジュリエットの企てを知らせる手紙が、ロミオに届かなかったのでし
ょうか?
 それはこの手紙をロミオに運ぶ使者の僧が、その途上、ペストの患者さんに
遭遇し、その患者さんとともに家に閉じ込められてしまい、足止めを食らって
しまったからです。
 あぁ、何と言うことでしょう!
 実はこの悲恋を仕掛けた張本人はペストだったのです。

 調べてみると、「ロミオとジュリエット」の初演は1595年前後のロンドンと
言われていますが、1592〜94年にはロンドンでペストの流行があったとされて
います。
 この頃の状況は、第71回アカデミー賞作品賞の映画「恋におちたシェイクス
ピア」にも描かれていますが、ペストの流行のためロンドンの劇場は閉鎖が相
次ぐなど、ペストがロンドン市民の生活に対して強いインパクトを与えていました。
 ドイツを起源とする「ハーメルンの笛吹き男」もペストと関係が深いネズミ
退治のお話で、いかに西欧がペストで悩まされていたのかが伺えます。

 ネズミとノミで媒介されるペストは、敗血症症状を起こすことから黒死病と
も呼ばれたペスト菌が原因の感染症です。
 しかし、検疫やネズミの駆除など公衆衛生の向上、ネズミの生態の変化、ワ
クチンや治療薬の充実により、先進国では滅多に起きない感染症となりました。
 最近の「ロミオとジュリエット」の上演でも、ペストのくだりを端折る事が
多いようです。
 そのためこの戯曲は、LINEも電子メールも電話もない時代ならではの「す
れ違い」による悲恋の話と思われがちですが、実はその裏にはこんな感染症が控え
ていたんですね。

 「真実の愛はうまくいかないものだ(ウィリアム・シェイクスピアの格言)」

 では、次回もどうぞよろしくお願いします。


「ロミオとジュリエット」の悲恋を仕掛けた張本人はペストだった

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