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IDESコラム vol. 20
感染症エクスプレス@厚労省 2018年6月1日

「ここはイタリア、ローマ。」

IDES養成プログラム 2期生:鎌田 一宏

日本にいる知人だけでなく、外国の友人、時にイタリア人からさえも、「なぜ日本人医師が、ここにやってきたのか」と、当初は聞かれることがありました。

日本とイタリアを比較した際に、所謂『世界の先端医療』というイメージは、イタリアにないのかもしれません。

確かに、現在、イタリアを代表する感染症拠点病院・研究所に所属していますが、自身の経験した範囲では、いわゆる“効率”という点においては圧倒的に日本の方が優れているように感じます。

例えば、イタリアの公立病院であればどこの救急外来でも、常に患者さんでごった返しています。また、所属施設のカルテは紙媒体で、検査のオーダーにも色々と手間がかかってしまいます。検査結果も検査部に問い合わせることが多いように思います。人と直接話さないと、物事が進まないのです。

しかし、こういった決められた枠内で物事を進めるのは得意としない反面、災害や感染症といった“突然の”“予想されにくい”事象に対して、イタリアは、非常にスムーズに効果的な力を発揮し、これまで対処してきました。

今年の初めにナイジェリアを中心とした西アフリカ一帯で「ラッサ熱」というウイルス性出血熱が流行した際は、イタリア国内への輸入例に備え、直ちに医療者に対して個人防護服着脱再訓練・感染予防・管理を実施し、ガイドラインの一部改定が行われました。

また昨年の夏、「チクングニア熱」という蚊媒介感染症がローマの南でアウトブレイクした際には、早急に現場医療者に講義やWEBという形で、感染症拠点病院がチクングニア熱の最新知識を提供し、その後、公衆衛生対策が、国主導で積極的に行われました。

臨床現場の医師として、また研究所の医師として、これらのことに関わりましたが、日本と比較した時に、このスピード感はかなりのものでした。

古くからイタリアは人の行き来が盛んでありました。さらに地理的にもアフリカや中東に近く、歴史的に多くの疾病が流行してきました。したがって、自ずと疾病に対処すべく医学の歴史も古く、その結果、現在のような力が育まれたのかもしれません。

自身が所属しているローマ“Lazzaro Spallanzani”国立感染症研究所も、昨年度80周年を迎えました。その中で、コレラや結核、HIV感染症、エボラウイルス病など多くの感染症に立ち向かい、現在はWHO(世界保健機関)のコラボレーションセンターとして、イタリア国外からも非常に高く評価されています。

本研究所は、基礎研究のみならず、疫学センター、300床を有する感染症専門病院を有し、感染症に関する診断、治療、予防のあらゆる機能を担っています。私自身は、新興再興感染症部門に所属し、主に臨床、研究を行なってきました。

このIDES養成プログラムは、エボラウイルス病をはじめとした、国際的な危機を及ぼしうる感染症のアウトブレイク時に様々な部署で活躍する人材を育成するプログラムです。

望ましいことではないですが、その「もしもの時」に、本施設の同僚と“柔軟”な仕事が出来ればと思います。

感染症危機管理専門家(IDES)養成プログラム2期生
現イタリア国立感染症研究所“Lazzaro Spallanzani” 鎌田一宏


ヨーロッパ最古の総合大学、ボローニャ大学の解剖学教室


ヨーロッパ最古の病院建築物の一つ、シエナSanta Maria della Scala救済院のフレスコ画


国防省とLazzaro Spallanzaniの患者搬送合同訓練

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