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あさコラム vol.29
感染症エクスプレス@厚労省 2016年11月11日

命を守る防具

こんにちは、厚生労働省健康局結核感染症課長の浅沼一成です。

 11月に入り、既に北国からは雪の便りが届いていますが、例年どおりイン
フルエンザの流行が懸念される季節になってきました。
 今年は流行の立ち上がりが早い様子です。
 手洗い、マスク、咳エチケット、ワクチン接種など、インフル予防にご留
意頂きますよう、お願い申し上げます。

 「シューズは命を守る防具なんです!」
 Qちゃんことシドニー五輪女子マラソン金メダリストの高橋尚子選手の一言
が、たくさんの市民ランナーの心に刺さりました。
 11月3日(木)、東京有明で開催された「スマイル アフリカ プロジェクト
ランニングフェスティバル2016」の閉会式でのこと。
 高橋さんは訴えます。
 「歩いたり走ったりするためではなく、ケガや感染症から身を守るために
も、シューズはとても大切なものです」と。

 少しさかのぼって、10月のとある日。
 「浅沼さん!ケニアのスナノミ、何とかできない?」
 結核対策などでお世話になっているNPO法人日本リザルツの白須紀子代表か
ら電話を頂きました。
 聞けば、ケニアの貧困地域で活動している日本リザルツの白石さんという
インターンが、現地でスナノミ問題に関心を持っていて、相談を持ちかけられた
とのこと。

 スナノミとは、名のとおり「砂のノミ」で、ノミの一種。
 アフリカや中南米、インドなどに生息していますが、スナノミが足裏に寄
生するとスナノミ症を起こします。
 スナノミ症が発症すると、足裏の皮膚がボロボロになり、重傷になると
歩けなくなってしまい、重篤化すると死に至ることもあります。
 何か特効薬があるのではなく、まず衛生状態の確保、特に靴を履くことが
スナノミ症予防で大事なこと。
 しかし、この靴を履くという日本では当たり前のことが、靴が買えないケ
ニアの貧困地域の人たちにはできないのです。
 今年、第6回アフリカ開発会議(TICAD VI)が開催されたケニアですが、約
200万人の方がこのスナノミ症に感染していると聞いています。

 「う~ん、予防にはやはり、靴を履くことが大事なのですがね…。」
答えた私の頭によぎったのは、「スマイル アフリカ プロジェクト」。
 雑誌ソトコトの編集長・小黒一三さんが2009年に立ち上げたプロジェクト
で、履かなくなったシューズを集めてケニアの子どもたちに贈っている活動
です。
 この活動に賛同した高橋尚子さんが積極的に活動に取り組んでおり、学校
やランニング大会などで「Qちゃんスマイル」とともに、このプロジェクト
を熱くアピールしています。
 また、高橋さんは、シューズを渡しに実際にケニアに何度も訪問し、ケニ
アの子どもたちと触れあっているそうです。
 今回、その素敵な体験談をお聴きし、高橋さんの行動力と感性の素晴らし
さに改めて心を打たれました。

 白須さんにこの活動をご紹介したところ、さすがは即行動のヒト。
 スマイル アフリカ プロジェクトとの連携を活かし、「ランニングフェス
ティバル2016」に日本リザルツの長坂さんを派遣して、この活動をサポート
してくれました。
 シドニーパラリンピック車いす800m銀メダリストの廣道純さんもゲストで
参加されたフェスティバルは大いに盛り上がり、たくさんの方々が楽しそう
に走っていました。
 またこの日はシューズの特別無料回収も行われ、私も自宅にあったランニ
ングシューズを洗って乾かし、1足、寄贈させて頂きました。
 この日だけで、シューズは何と290足以上も集まったそうです。

 このプロジェクトの素晴らしいところは、わが国得意の「もったいない」
を伝えるということ。
 新しい靴やお金を寄付するのではなく、私たち一人一人が履かなくなった
シューズを洗って乾かし、そのシューズを思い出とともに寄贈する。
 こうした草の根の国際協力活動が、大人も子どもも世界の困窮ぶりに目を
向けるきっかけとなってくれたら良いなと思っています。

 最近、仕事に追われてランニング不足の私ですが、来年のランニングフェ
スティバルでは仲間を誘って、高橋さんと一緒に走りたいと考えています。
 もちろん、洗ったシューズを1足持参しますね。

 では、次回もどうぞよろしくお願いします。


スマイルアフリカ


大会風景


私からも1足!


290足以上のシューズが集まりました

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