健康・医療子どもの肺炎球菌ワクチン
肺炎球菌ワクチンによって、肺炎や髄膜炎などの重篤な疾患の予防ができます。生後2か月から初回の接種を行い、一定期間を経て追加の接種を行います。
疾病の性質
肺炎球菌感染症の概要
肺炎球菌感染症とは、肺炎球菌という細菌によって引き起こされる病気です。この菌は、集団生活が始まるとほとんどの子どもが持っているといわれるもので、主に気道の分泌物により感染を起こします。これらの菌が何らかのきっかけで進展することで、肺炎や中耳炎、髄膜炎などの重い合併症を起こすことがあります。
特に、髄膜炎をきたした場合には2%の子どもが亡くなり、10%に難聴、精神の発達遅滞、四肢の麻痺、てんかんなどの後遺症を残すといわれています。
また、小さい子どもほど発症しやすく、特に0歳児でのリスクが高いとされています。
ワクチンの効果
肺炎球菌には、90以上の種類があり、PCV15はそのうち15種類、PCV20は20種類の肺炎球菌に対して予防効果があります。
小児の肺炎球菌による侵襲性肺炎球菌感染症(※)は、肺炎球菌ワクチンの定期接種等が実施される以前の2008~2010年は10万人(5歳未満)あたり約24-26人が罹患(りかん)していましたが、2022年には、約4.8人と、約8割の患者数の減少がみられています。
※侵襲性感染症とは、本来は菌が存在しない血液、髄液、関節液などから菌が検出される感染症のことです。
接種の対象者とスケジュール
沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)および沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)の接種スケジュールは、以下のようなスケジュールで実施します。(1)が標準的なスケジュールです。
なお、細かいルール等の詳細については母子健康手帳、自治体または接種を受ける医療機関に確認してください。
(1)初回接種開始時に生後2~7か月のお子さん
初回接種:生後2か月から接種を開始し、およそ1か月おきに3回接種します。
追加接種:初回接種が終わった後、最後の接種から60日以上あけた上で、生後12か月以降に1回接種します。
(2)初回接種開始時に生後7~12か月のお子さん
初回接種:およそ1か月おきに2回接種します。
追加接種:初回接種が終わった後、最後の接種から60日以上あけた上で、生後12か月以降に1回接種します。
(3)初回接種開始時に1~2歳のお子さん
60日以上の間隔をあけて2回接種します。
(4)初回接種開始時に2~5歳のお子さん
1回接種します。
使用するワクチン
- 2024年10月以降、原則として、沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)を使用します。
- 沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)も使用可能です。
- 沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)で接種を開始した方は、原則としてPCV15で全ての接種を行ってください。
ワクチンの安全性
沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)において、稀に報告される重い副反応として、ショック、アナフィラキシー、けいれん、血小板減少性紫斑病があります。
その他、一定程度の頻度でみられる副反応については、表のとおりです。
接種を受けられない方
以下の方は、接種を受けることができません。
- すでに肺炎球菌ワクチンの接種を完了した方
- 肺炎球菌ワクチンの接種でアナフィラキシーを起こしたことがある方
また、以下のような場合は接種を受けることができませんので、治ってから受けるようにしてください。
- 発熱している。
- 重篤な急性疾患にかかっている。
接種に注意が必要な方
以下の方は、接種にあたって注意が必要なので、あらかじめ医師に相談してください。
- 心臓、腎臓、肝臓、血液の病気や発育障害がある方
- これまでに、予防接種を受けて2日以内に発熱や全身の発疹などのアレルギー症状があった方
- けいれんを起こしたことがある方
- 免疫不全と診断されている方や、近親者に先天性免疫不全症の方がいる方
- 肺炎球菌ワクチンの成分でアレルギーを起こすおそれのある方
Q&A
※がついたタイトル部分を押下で回答が閲覧できます。
子どもの肺炎球菌感染症
2024年9月30日版
感染症について
Q1 小児の肺炎球菌感染症とはどんな病気ですか?
肺炎球菌感染症とは、肺炎球菌という細菌によって引き起こされる病気です。この菌は、集団生活が始まるとほとんどの子どもが持っているといわれるもので、主に気道の分泌物により感染を起こします。これらの菌が何らかのきっかけで進展することで、肺炎や中耳炎、髄膜炎などの重い合併症を起こすことがあります。
特に、髄膜炎をきたした場合には2%の子どもが亡くなり、10%に難聴、精神の発達遅滞、四肢の麻痺、てんかんなどの後遺症を残すと言われています。
また、小さい子どもほど発症しやすく、特に0歳児でのリスクが高いとされています。
Q2 肺炎球菌感染症を予防することは可能ですか?
2024年10月現在、小児の肺炎球菌感染症に対するワクチンには沈降15価肺炎球菌ワクチン(PCV15)と沈降20価肺炎球菌ワクチン(PCV20)があります。原則としてPCV20を使用することとしておりますが、PCV15の使用も可能です。 肺炎球菌には、90以上の種類があり、PCV15はそのうち15種類、PCV20は20種類の肺炎球菌に対して予防効果があります。
小児の肺炎球菌による、侵襲性肺炎球菌感染症(※)は、ワクチンの定期接種等が実施される以前の2008~2010年は10万人(5歳未満)あたり約24~26人が罹患(りかん)していましたが、2022年には、約4.8人と、約8割の患者数の減少がみられています。
※侵襲性感染症とは、本来は菌が存在しない血液、髄液、関節液などから菌が検出される感染症のことをいいます。
ワクチンについて
Q3 2024年10月から新たに定期接種で使用されることとなった沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)は従来使用している沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)と何が違うのですか?
2024年4月から使用されている沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)は15種類の肺炎球菌に対して予防効果があります。一方、2024年10月から定期接種に使用することとされた沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)は、計20種類の肺炎球菌に対して予防効果を有しています。これにより、従来よりも多くの種類の肺炎球菌に対して予防効果が期待できると考えられています。
また、小児への投与方法について、PCV20はPCV15と同様、皮下注射または筋肉内注射により投与します。
Q4 沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)から沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)に変更することでどれくらい効果が変わるのですか?
以前、沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)が定期接種に導入される前は、肺炎球菌による侵襲性感染症(※)の約53%はPCV13に含まれる13種類によって引き起こされていましたが、Q2にあるとおり、ワクチンの普及によりこれらの発生が減少したことで、ワクチンに含まれる13種類以外の肺炎球菌による感染症の割合が増えるようになりました。
2023年には、PCV13に含まれる13種類が肺炎球菌による侵襲性感染症の約2%を、PCV15に含まれPCV13に含まれていない2種類が約7%を、PCV20に含まれPCV15に含まれていない5種類が約29%を引き起こしていると考えられ、PCV20を定期接種に導入することで、この5種類に対する更なる予防効果が期待できるようになると考えられています。
一方で、ワクチンに含まれない種類の肺炎球菌も存在するため、ワクチンを接種しても肺炎球菌感染症を発症することがあります。
※侵襲性感染症とは、本来は菌が存在しない血液、髄液、関節液などから菌が検出される感染症のことをいいます。
Q5 沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)の接種により、どのような副反応の発生が想定されますか?
稀に報告される重い副反応として、ショック、アナフィラキシー、痙攣、血小板減少性紫斑病があります。
その他、一定程度の頻度でみられる副反応については、下表のとおりです。
【別表1】
・沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)の添付文書
(https://pins.japic.or.jp/pdf/newPINS/00071371.pdf)より抜粋
接種スケジュールや接種方法
Q6 沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)の接種はどのようなスケジュールで実施しますか?
沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)の接種スケジュールは、以下のようなスケジュールで実施します。(1)が標準的なスケジュールです。
なお、細かいルール等の詳細については母子健康手帳、自治体または接種を受ける医療機関に確認してください。
(1)初回接種開始時に生後2~7か月のお子さん
初回接種:生後2か月から接種を開始し、およそ1か月おきに3回接種します。
追加接種:初回接種が終わった後、最後の接種から60日以上あけた上で、生後12か月以降に1回接種します。
(2)初回接種開始時に生後7~12か月のお子さん
初回接種:およそ1か月おきに2回接種します。
追加接種:初回接種が終わった後、最後の接種から60日以上あけた上で、生後12か月以降に1回接種します。
(3)初回接種開始時に1~2歳のお子さん
60日以上の間隔をあけて2回接種します。
(4)初回接種開始時に2~5歳のお子さん
1回接種します。
標準的な接種スケジュール(図)
Q7 沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)はどのような接種方法で接種しますか?
沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)は、皮下注射または筋肉内注射で接種します。筋肉内注射とは、ワクチンなどの医薬品を皮下脂肪の奥にある筋肉内に直接注射する方法のことを指します。接種する部位については、添付文書の「適用上の注意」において、
- 皮下注射は「通常、上腕伸側に」
- 筋肉内注射は「通常、三角筋中央部に、1歳未満は大腿前外側部(外側広筋)に、1~2歳は大腿前外側部(外側広筋)または三角筋中央部に」
と記載されています。
Q8 途中まで沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)を接種していますが、2024年10月以降は沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)に切り替えて接種可能ですか?
また、途中まで沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)を接種していますが、2024年10月以降は沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)に切り替えて接種可能ですか?
沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)を沈降13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)から切り替えて接種した場合の有効性と安全性は、薬事審査において確認されています。2024年10月以降、PCV13を使用して1回目、2回目または3回目までの接種を終了したお子さんの接種について、残りの接種をPCV20を用いて行うことができます。
一方で、沈降15価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV15)で接種を開始した場合は、原則として同一のワクチンで接種を完遂してください。
Q9 新しいワクチン(沈降20価肺炎球菌ワクチン(PCV20))が2024年10月から導入されると聞きました。新しいワクチンを待った方がよいでしょうか?
侵襲性肺炎球菌は乳幼児期、とりわけ0歳児での発症リスクが高い疾患です。従来から使用されているワクチン(沈降15価肺炎球菌ワクチン(PCV15)や沈降13価肺炎球菌ワクチン(PCV13))であっても侵襲性肺炎球菌感染症を予防する効果があるため、手に入るワクチンを用いて標準的な接種スケジュールでの予防接種を行うことが重要です。
関連審議会・検討会
その他の定期接種ワクチンを年齢別に見る
相談窓口
厚生労働省は、インフルエンザをはじめとした感染症の一般的予防方法、流行状況や予防接種の意義、有効性、副反応等に関する国民の皆様の疑問に的確に対応するため、「感染症・予防接種相談窓口」を開設しています。
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