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IDESコラム vol. 22
感染症エクスプレス@厚労省 2018年10月5日

「疑うこと」

IDES養成プログラム 4期生:飯田 康

 IDES 4期生の飯田康です。IDESプログラムに参加するまで、救急や感染症全般、行政(特に結核)に携わってきました。
現在、スマートフォンで、たくさんの魅力的なゲームが簡単に手に入りますが、私の学生時代、限られたお小遣いで、RPGやシューティングゲームを買って、親に隠れてゲームに熱中していた頃がありました。不覚にも、遊びと勉学を両立できず、成績を落としてしまい、親から勉強をサボっているのではないかと「疑われる」ことがありました。

 「疑われる」ことはなかなかツライことではありますが、こと、結核については、積極的に「疑う」ことは、非常に大事なことであることをお伝えしたいと思います。結核といえば、正岡子規や宮沢賢治といった著名人が、結核を患い、咳をして、喀血をし、最期を迎えるという、呼吸器の病気というイメージがあるかもしれません。ですが、実は、結核は、腎臓や皮膚など人体の様々な部位に発生することがあります。これらの結核は、咳などの症状で現れないため、判別することが大変難しく、積極的に結核を「疑う」ことが重要なのです。

 私は、IDESプログラムに参加する前に、結核の患者さんを診る機会がありました。病院で働いているとき、70歳をこえても現役で会社の社長をしている患者さんを診たときのことをお話しします。一年間で10kgの体重減少、血尿、CTをとると腎臓の周りにデキモノがあり、腎がんの疑いがありました。とても落胆した様子でした。がんでないことに一縷の望みをかけて、セカンドオピニオンで、紹介状をもって私の元へ来院されたようです。がんと宣告されたご本人の姿は今でも忘れることはできません。まだまだ、チャレンジしたいこともあったのに・・・と思っていたのだと思います。泌尿器科に相談し、腹腔鏡で組織をとってもらい、T-SPOTという血液検査をした結果、腎結核であることが判明したため、結核の治療にとりかかりました。一筋縄ではいきませんでしたが、結核は治り、現在も元気に社長業をされています。

 結核は、肺にできるのが80%、腎臓にできるのが0.4%、皮膚にできるのが0.4%です。患者数は、年間で16,000~17,000人で、決して昔の感染症とは言えないことがわかると思います。

 先週9月24日~30日は結核週間でした。結核は、高齢になって、免疫力が落ちたときに発症するケースが半数を占めており、しかも肺結核を発症した場合、空気感染することがあります。ですので、特に高齢になってからが、注意が必要なのです。厚生労働省は、今年の標語を「遺したいものは、それですか?」とし、全国の自治体を通してポスターで呼びかけています。

 身近に高齢者がいて、いつもと違う咳や異常な体重減少があった場合には、結核も積極的に「疑って」ください。

<啓発ポスター>
https://www.mhlw.go.jp/content/000351922.pdf
<啓発リーフレット>
https://www.mhlw.go.jp/content/000351923.pdf
<結核(BCGワクチン)>
http://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou03/

(編集:成瀨浩史)

●当コラムの見解は執筆者の個人的な意見であり、厚生労働省の見解を示すものではありません。
●IDES(Infectious Disease Emergency Specialist)は、厚生労働省で平成27年度からはじまったプログラムの中で養成される「感染症危機管理専門家」のことをいいます。

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