第Ⅱ部 人手不足への対応

2023年の我が国の雇用情勢については、経済社会活動が活発化する中で、人手不足感は全ての産業において感染拡大前の2019年よりも強まっている。
 第Ⅱ部では、近年、人手不足が重大な社会問題となりつつあることを踏まえ、その長期的な動向や背景、人手不足緩和に向けて必要な取組等をテーマとして、様々な観点から分析を行った。
 ここでは、我が国の過去半世紀の人手不足局面である三つの時期について振り返りながら、2010年代以降続く我が国における人手不足の現状とその背景について確認する。その上で、女性、高齢者、外国人といった多様な人材の労働参加に向けた雇用・労働を取り巻く課題や、国民生活に密着した分野でありながらも人手不足となっている介護分野と小売・サービス分野に焦点を当て、人手不足の状況と効果的な取組等を分析した。
 第1章では、①1970年代前半(高度経済成長期末期)、②1980年代後半~1990年代前半(バブル経済期)、③2010年代以降から現在に至るまでの3期間の人手不足局面について、その状況や背景等について、経済情勢、産業構造や働き方の変化などから考察した。その上で、2010年代以降の人手不足局面に着目し、労働力需給のギャップ、企業の欠員率や求人の充足率の状況について分析している。また、労働移動や賃金と人手不足との関係など、人手不足に関する様々な影響や効果についても分析を行うとともに、労働市場において重要な役割を担うハローワークや民間職業紹介についてのマッチング機能や、求職者の希望する条件の変化についても分析している。
 第2章では、人手不足への対応として、マクロ・ミクロの両面から分析をした。まず、マクロの視点として我が国全体での潜在的な労働力の現状を確認するとともに、誰もが活躍できる社会の実現に向け、近年、就業者の増加が著しい女性、高齢者、外国人の就労を取り巻く現状やそれぞれの課題を示しつつ、今後の望ましい方向性等について分析した。次に、ミクロの視点として社会生活機能の維持に重要であるエッセンシャルワーカーを含む介護分野と小売・サービス分野に焦点を当て、(公財)介護労働安定センターや、(独)労働政策研究・研修機構が実施した事業所向けのアンケート調査等を用いて、企業が直面する人手不足の現状や効果的な取組等について、事例を紹介しながら分析を行っている。