第4章 物価・消費の動向

2022年の物価は、原油を含む輸入物価の高騰が徐々に国内物価に波及したことで、1年間を通じて前年同月と比べて上昇した。個人消費については、2020年の感染拡大における経済社会活動の抑制により急速に悪化したものの、2021年後半から徐々に回復し、2022年には、経済社会活動が活発化する中で、持ち直しの動きがみられた。
 本章では、2022年の物価・消費の動向を概観する。

消費者物価指数(総合)は高い伸びが続いた

まず、第1-(4)-1図により消費者物価指数(総合)(以下「消費者物価指数」という。)の推移を、財・サービス分類別寄与度とともにみていく。消費者物価指数は、2021年9月に前年同月比プラスとなり、2022年にかけて上昇率は拡大していった。2022年4月の消費者物価指数は前年同月比で2.5%増加し、同年12月には、前年同月比で4%増加した。
 財・サービス分類別寄与度をみると、2021年4月~2022年3月までは、携帯電話の低料金プランの提供開始に伴い通信サービスを含む「一般サービス」がマイナスに寄与していたが、一巡した2022年4月以降はマイナス寄与が縮小した。一方で、2021年4月からは、原油高1を背景にガソリン等を含む「石油製品」はプラス寄与が大きくなり2、また、2022年においては、ロシアによるウクライナ侵攻や円安の影響によって輸入物価が高騰し、こうした輸入物価の上昇が、国内物価へ徐々に波及していった。このように、原材料価格の高騰によって「食料工業製品」や「電気・都市ガス・水道」「他の工業製品」を中心にほぼ全ての項目でプラスに寄与した結果3、消費者物価指数は高い伸びとなった。

消費者態度指数は、物価高を背景に低下傾向で推移した

消費者物価指数の上昇は消費者マインドにも大きく影響を及ぼしている。第1-(4)-2図により、2022年の消費者態度指数の推移をみると、物価高を受けて低下傾向で推移していることが分かる。やや長期でみると、2014年から緩やかに上昇傾向で推移していたものが、2019年10月の消費税率引上げと2020年春の感染拡大によって急速に低下し、その後、2020年半ば~2021年にかけては、感染症の動向に応じて断続的に緊急事態宣言等が発出される中で、上昇と低下を繰り返しながら回復傾向となった。ただし、2021年末には再び減少に転じ、2022年を通じて低下傾向で推移した結果、2022年12月の消費者態度指数の水準は、2019年以前の水準を回復できていない。
 消費者意識指標4についてみると、2022年には、「暮らし向き」「雇用環境」「収入の増え方」「耐久消費財の買い時判断」の全ての項目で落ち込みがみられた。特に「耐久消費財の買い時判断」では、現行の調査方法になった2013年4月の調査以降、最も低い水準を2022年11月に記録し、生活必需品だけでなく耐久消費財に対しても消費者マインドの冷え込みが波及した形となった。一方、「雇用環境」「収入の増え方」も低下傾向であったものの、落ち込みは比較的緩やかであった。

実質総雇用者所得の動きが低調となった一方で、消費総合指数は上昇した

続いて第1-(4)-3図より、需要と供給からみた消費の動きを総合的に示す消費総合指数と実質総雇用者所得の推移をみてみよう。なお、ここでは各月のばらつきを調整するため、後方3か月移動平均を用いている。実質総雇用者所得は、感染拡大の影響から2020年初めに急速に減少した後、2021年前半にかけて回復傾向で推移したものの、2022年には物価上昇の影響により減少傾向となった。一方で、消費総合指数は、行動制限のない連休や全国旅行支援等の需要喚起策の実施等により、2022年を通じて緩やかな上昇がみられた。

平均消費性向は「34歳以下」を除く年齢階級で上昇した

最後に、第1-(4)-4図より世帯主の年齢階級別に平均消費性向(消費支出/可処分所得)の推移をみてみよう。近年、平均消費性向は低下傾向で推移している。2022年は、全ての年齢階級において感染拡大下で抑制されていた経済社会活動の再開により消費支出が増加した結果、「34歳以下」を除く年齢階級で平均消費性向は上昇したものの、感染拡大前の2019年の水準には戻っていない。

注釈

  1. 1原油価格は2020年の世界的な感染拡大に伴う経済活動の停滞を背景として下落し、その後は世界経済の再開による需要の回復から上昇傾向となった。
  2. 2ただし、「石油製品」については、2022年3月以降、燃料油価格激変緩和対策事業によりガソリン等の価格上昇が抑制されたことで、消費者物価上昇への寄与度が縮小している。
  3. 3(株)帝国データバンク「特別企画:『食品主要105社』価格改定動向調査―2022年動向・23年見通し」によると、2022年の再値上げ等重複を含む値上げは20,822品目に及んだ。
  4. 4消費者態度指数を構成する「暮らし向き」「雇用環境」「収入の増え方」「耐久消費財の買い時判断」の意識指標。