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- 第2章 雇用・失業情勢の動向
第2章 雇用・失業情勢の動向
雇用情勢は、2021年以降、感染拡大前と比べて求人数の回復に遅れがみられる産業もあるものの、経済社会活動が徐々に活発化する中で持ち直している。また、求人の回復基調が続く中で、女性や高齢者等の労働参加が着実に進展している。ただし、少子高齢化に起因する我が国の労働供給制約や経済社会活動の回復などに伴う人手不足の問題も再び顕在化している。2022年において、新規求人数は対前年でみて2年連続で増加し、年平均の完全失業率は前年差0.2%ポイント低下の2.6%、有効求人倍率は同0.15ポイント上昇の1.28倍となった。
本章では、こうした2020年から続く感染症の影響からの改善状況を含め、2022年の雇用・失業情勢の動向について概観する。
第1節 雇用・失業の動向
雇用情勢は、2021年以降、経済社会活動が徐々に活発化する中で持ち直し
求人倍率と完全失業率の動向について概観する。
第1-(2)-1図は、新規求人倍率、有効求人倍率、正社員の有効求人倍率及び完全失業率の推移である。リーマンショック後の2009年以降、新規求人倍率、有効求人倍率、正社員の有効求人倍率は長期的に上昇傾向、完全失業率は低下傾向が続いていた。2020年4月に感染拡大による最初の緊急事態宣言が発出されて行動制限等が要請されると、景気の減退に伴い、いずれの数値も悪化した。このため、2020年平均では有効求人倍率は前年差0.42ポイント低下の1.18倍、完全失業率は同0.4%ポイント上昇の2.8%となった。
緊急事態宣言は2021年9月末まで、まん延防止等重点措置は2022年3月まで断続的に発出されたが、雇用情勢は、2021年以降、感染症の影響から経済社会活動が徐々に活発化する中で持ち直した。2022年は、2021年に引き続き新規求人が増加傾向で推移した結果、2022年平均の新規求人倍率は前年差0.24ポイント上昇の2.26倍、有効求人倍率は同0.15ポイント上昇の1.28倍となった。完全失業率についても引き続き低下傾向で推移し、同0.2%ポイント低下の2.6%となったが、いずれも感染拡大前の2019年の水準には回復していない。
就業率は約6割、就業者のうち正規雇用労働者は約5割、非正規雇用労働者は約3割
第1-(2)-2図により、我が国の労働力の概況をみていく。
2022年の我が国の労働力の概況をみると、就業者は約6,700万人であり、就業率は約6割となっている。失業者は約200万人、働く希望はあるが求職活動はしていない就業希望者は約240万人であり、合計すると約440万人は働く希望はありつつも仕事に就けていない。これらの者の就業意欲がある者(就業者+失業者+就業希望者)約7,100万人に占める割合は6%程度であることから、我が国においては、就業意欲がある者の94%程度が実際に仕事に就いている状況にある1ことが分かる。就業者の内訳をみると、雇用者が約6,000万人と、就業者の大半を占めており、雇用者の中では、正規雇用労働者が約3,600万人と約6割、非正規雇用労働者が2,100万人と約3割を占めている。
男女別に就業率をみると、男性は約7割、女性は約5割となっており、女性においては非労働力人口が男性に比べて1,000万人ほど多い状況である。女性の非労働力人口のうち、働く希望はあるが求職活動はしていない就業希望者は失業者の2倍の約160万人となっており、女性においては、就業を希望している者のうち、多くが求職活動まで至っていないことが示唆される。
第2節 就業者・雇用者の動向
感染症の影響から経済社会活動が活発化する中、労働参加は着実に進展
就業者・雇用者の動向についてみていく。
第1-(2)-3図により労働力に関する主な指標の長期的な推移をみると、2012~2019年まで、労働力人口2、就業者数、雇用者数は増加した一方で、非労働力人口3は減少を続けた。他方で、自営業者・家族従業者数は長期的に減少し続けている。休業者数は出産・育児といった理由等による休業の増加を背景に長期的に増加傾向にある。また、完全失業者数は、リーマンショック後の2009年以降着実に減少した。しかし、2020年の感染症の影響により、幅広い産業で経済活動が抑制されたこと等から、労働力人口、就業者数、雇用者数は減少し、完全失業者数、非労働力人口は増加した。
2021年以降は、感染症の影響からの持ち直しの動きがみられ、就業者数及び雇用者数は増加傾向にあり、非労働力人口は減少傾向にある。2022年の労働力人口は6,902万人(前年差5万人減)、就業者数は6,723万人(同10万人増)、雇用者数は6,041万人(同25万人増)となった。感染拡大以降増加した完全失業者数は179万人(同16万人減)となり、非労働力人口は4,128万人(同43万人減)、休業者数は213万人(同5万人増)となった。長期的な労働参加の着実な進展がみられるものの、完全失業者数は感染拡大前の2019年よりも依然として高い水準となっている。休業者数については、2020年は感染症による経済活動の停滞等の影響で非自発的な理由により大きく増加したが、2021年には大きく減少している。
労働力率、就業率は2年連続で上昇し、完全失業率は低下
次に、労働力率4、就業率及び完全失業率の推移についてみていく。
第1-(2)-4図(1)によると、労働力率、就業率は、2012年以降、上昇傾向で推移しており、長期的な労働参加の進展がみられる。2020年には感染症の影響により低下したものの、その後は2年連続で上昇している。一方、同図(2)により完全失業率の推移をみると2009年以降、低下傾向で推移し、2020年には感染症の影響により上昇したものの、2022年は低下に転じた。
労働力率は女性や高齢者を中心に上昇
第1-(2)-5図により、男女別・年齢階級別の労働力率の推移をみると、女性や高齢者を中心に労働参加が進み、女性は全ての年齢階級、男性は55歳以上の年齢層において上昇傾向となっている。2020年には感染症の影響により、女性に労働力率の停滞の動きがみられたが、2021年以降回復し、2022年には、男性が同0.1%ポイント上昇の71.4%、女性が同0.7%ポイント上昇の54.2%となり、男女計では前年差0.4%ポイント上昇の62.5%となった。
非正規雇用労働者は感染拡大の影響による減少がみられたが長期的には増加傾向、正規雇用労働者は女性を中心に2015年以降堅調に増加
続いて、雇用者の動向について雇用形態別にみていく。
第1-(2)-6図は、役員を除く雇用者数の推移を、雇用形態別にみたものである。景気変動の影響を受けやすい非正規雇用労働者数は、2009年にはリーマンショック、2020年には感染症の拡大による景気減退の影響から減少がみられたものの、女性や高齢者を中心に労働参加が進む中、長期的には増加傾向にある。正規雇用労働者数についても、2015年以降は増加傾向で推移している。
感染が拡大した2020年以降についてみると、非正規雇用労働者数は男女ともに経済社会活動の抑制の影響を受け2年連続で減少した後、2022年は若干の増加となったが感染拡大前の2019年の水準を下回っている。正規雇用労働者数は、男性では感染拡大の2020年以降は横ばいとなっているが、女性については感染拡大の影響を受けた2020年も含め、堅調に増加傾向を維持している。
15歳以上人口に占める正規雇用労働者の割合は上昇傾向で推移しており、男性は「60~64歳」、女性は「25~34歳」「35~44歳」で顕著
さらに、第1-(2)-7図により年齢階級別・雇用形態別に人口に占める雇用者の割合の推移をみてみる。
長期的には、男女計では、15歳以上人口に占める正規雇用労働者の割合は「25~34歳」「55~59歳」「60~64歳」の階級を中心に幅広い年齢層で上昇している一方で、非正規雇用労働者の割合は60歳以上の年齢層で上昇しているものの、「25~34歳」では低下している。また、男女別にみると、正規雇用労働者の割合は、男性では定年年齢の引上げなどに伴い「60~64歳」、女性では「25~34歳」「35~44歳」で顕著に上昇している。非正規雇用労働者の割合は、男性では65歳以上、女性では55歳以上の年齢層において、上昇傾向で推移している。
感染拡大の影響により、2020年は非正規雇用労働者の割合は、「15~24歳」「60~64歳」を中心に幅広い階級で低下したが、2022年には上昇に転じている。
雇用者数は、「宿泊業,飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」では増加に転じたほか、「医療,福祉」「情報通信業」は引き続き増加
第1-(2)-8図により、産業別の雇用者数の動向を前年同月差でみてみる。
2020年は、最初の緊急事態宣言が発出された4月以降、「宿泊業,飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」「卸売業,小売業」といった対人サービス業を中心に雇用者数は減少傾向で推移した。
2021年は、緊急事態宣言下において、飲食店への営業自粛要請や外出自粛要請が断続的に続いていたことから、「宿泊業,飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」では弱いものの、経済社会活動が徐々に活発化する中で、4月以降、雇用者総数は増加傾向で推移し、10~11月に一時的に減少したが、12月には再び増加へ転じた。
2022年は、年間を通して全国的な行動制限がなかったことや、海外からの観光客の受入れ再開などにより、「宿泊業,飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」の雇用者数は増加に転じたほか、「医療,福祉」「情報通信業」では引き続き増加した。「卸売業,小売業」では減少幅が縮小するなど、業種によって状況は異なるものの全体では増加傾向にある。
非正規雇用労働者から正規雇用労働者への転換は増加傾向で推移
ここまで、非正規雇用労働者と正規雇用労働者の動向をみてきたが、第1-(2)-9図により、非正規雇用から正規雇用への転換の状況についてみてみる。同図は、15~54歳の年齢層で過去3年間に離職した者について「非正規雇用から正規雇用へ転換した者」の人数から「正規雇用から非正規雇用へ転換した者」の人数を差し引いた人数の動向をみたものである。
これによれば、「非正規雇用から正規雇用へ転換した者」と「正規雇用から非正規雇用へ転換した者」の差は、2013年以降は年平均では増加傾向で推移しており、労働市場において正規雇用労働者への需要が底堅いことがうかがえるが、2022年の年平均は0となっている。
不本意非正規雇用労働者割合は引き続き低下傾向
続いて、非正規雇用労働者の動向について詳細にみていく。第1-(2)-10図は、不本意非正規雇用労働者(現職に就いた主な理由について「正規の職員・従業員の仕事がないから」と回答した非正規雇用労働者をいう。以下同じ。)の人数とその数が非正規雇用労働者に占める割合(以下「不本意非正規雇用労働者比率」という。)の推移である。2013年以降、男女ともに不本意非正規雇用労働者数は減少傾向、不本意非正規雇用労働者比率は低下傾向で推移しており、2022年第Ⅳ四半期(10-12月期)には男女計10.5%、男性16.8%、女性7.7%となった。
個人や家庭の都合により非正規雇用を選択する労働者が増加傾向
不本意非正規雇用労働者が近年おおむね減少傾向にあるが、非正規雇用労働者として働いている理由はその他に何があるだろうか。
第1-(2)-11図は、2018年以降の非正規雇用を選択している理由別に非正規雇用労働者数の動向をみたものである。「正規の職員・従業員の仕事がないから」とする不本意非正規雇用労働者は一貫して減少する一方で、「自分の都合のよい時間に働きたいから」「家事・育児・介護等と両立しやすいから」等の個人や家庭の都合による理由で非正規雇用を選択する者が増加傾向にあることが分かる。2020年には感染症の影響により小中学校の一斉休校が行われるなど、感染症の拡大により個人の働き方に影響が生じたことから、「家事・育児・介護等と両立しやすいから」という理由で非正規雇用を選択していた労働者は女性を中心に大幅に減少したが、2022年には3年ぶりに増加に転じている。
障害者の雇用者数・実雇用率は過去最高を更新
障害者の雇用状況について、第1-(2)-12図によりみてみる。2022年の雇用障害者数は、前年比2.7%増の61.4万人と19年連続で過去最高となり、実雇用率は、前年差0.05%ポイント上昇の2.25%と11年連続で過去最高となった。
障害種別でみると、身体障害者は前年比0.4%減の35.8万人、知的障害者は同4.1%増の14.6万人、精神障害者は同11.9%増の11.0万人となっており、精神障害者の伸び率が近年大きくなっている。
障害者の法定雇用率の達成割合は、従業員数「1,000人以上」の企業で6割、1,000人未満の企業で4~5割程度
一方、第1-(2)-13図により、障害者の法定雇用率の達成状況についてみると、2022年6月1日現在で、2021年から1.3%ポイント上昇の48.3%となっている。企業規模別に達成状況をみると、2022年は全ての企業規模で上昇がみられたが、従業員数「1,000人以上」の企業では62.1%、1,000人未満の企業ではいずれも4~5割程度となっている。
2021年3月に法定雇用率が2.3%に引き上げられた。過去に改定された年では、全ての企業規模で達成企業割合の低下がみられているが、翌年には上昇している。2022年も同様の動きとなった。法定雇用率は、2024年4月からは2.5%、2026年7月からは2.7%とする改定が予定されており、インクルーシブな職場づくりに向けて未達成企業の雇用努力が引き続き求められる。
外国人労働者数は過去最高を更新するも、増加率は低下
最後に、第1-(2)-14図により、外国人労働者の状況についてみる。2022年10月末の外国人労働者数は約182.3万人となり、2007年に外国人雇用状況の届出が義務化されて以降の過去最高を10年連続で更新した。感染症の拡大による入国制限等の影響から、2020年以降は伸びが鈍化したが、2022年は前年比5.5%増で2020年の伸びを上回った。在留資格別にみると「身分に基づく在留資格」が最も多く、次いで「専門的・技術的分野の在留資格」「技能実習」が多い。前年比でみると、「専門的・技術的分野の在留資格」「特定活動」の増加率が大きく、「技能実習」「資格外活動」は引き続き減少した。国籍別にみると、3年連続でベトナムが最も多く、次いで中国、フィリピンが多い。
第3節 求人・求職の動向
新規求職申込件数、有効求職者数とも横ばい、求人が回復基調にあり新規求人倍率及び有効求人倍率は増加傾向で推移
本節では求人や求職者の動向についてみていく。
第1-(2)-15図により、労働力需給の状況を示す指標である新規求人数、新規求職申込件数、新規求人倍率、有効求人数、有効求職者数及び有効求人倍率の動向について概観する。
まず、労働力需要の状況を示す新規求人数、有効求人数については、2009年以降長期的に増加傾向にあったが、感染症の拡大による景気減退の影響から、最初の緊急事態宣言が発出された2020年4~5月を中心に急激かつ大幅に減少した。2020年7月以降は経済社会活動が徐々に活発化し、長期的に続く人手不足の状況も背景に、新規求人数に緩やかな回復傾向が続き、有効求人数にも持ち直しの動きが続いた。その結果、2022年平均では、新規求人数は前年比10.8%増、有効求人数は同12.7%増となった。
次に、労働力供給の状況を示す新規求職申込件数、有効求職者数については、2009年以降長期的には減少傾向で推移している。感染が拡大した2020年以降についてみると、新規求職申込件数は横ばい、有効求職者数は2020年後半に大幅に増加した後横ばいとなっている。その結果、2022年平均では、新規求職申込件数は前年比1.0%減、有効求職者数は同0.7%減となった。
さらに、求職者一人に対する求人件数を表す求人倍率の状況をみると、2022年の新規求人倍率は年平均で前年差0.24ポイント上昇の2.26倍、有効求人倍率は有効求人数が増加傾向で推移したため、年平均で同0.15ポイント上昇の1.28倍となった。
新規求人数は正社員、パートタイム労働者ともに増加、新規求職申込件数は、正社員では減少傾向、パートタイム労働者ではおおむね横ばいで推移
次に、第1-(2)-16図により、雇用形態別に求人・求職の動向をみていく。
求人数をみると、正社員、パートタイム労働者ともに、2009年以降増加傾向で推移していたが、感染拡大による景気減退の影響から、最初の緊急事態宣言が発出された2020年4月に新規求人数が大きく減少し、有効求人数も減少した。その後、新規求人数、有効求人数は持ち直しの動きが続いている。2022年は、正社員では、年平均の新規求人数は前年比8.8%増、有効求人数は同10.1%増となり、パートタイム労働者では、年平均の新規求人数は同12.7%増、有効求人数は同14.9%増と、いずれも大幅な増加となったが、2019年平均と比較するといずれも下回る水準となった。
一方、求職者数をみると、2009年以降長期的に減少傾向で推移していた。正社員では、新規求職申込件数は、最初の緊急事態宣言の解除後の2020年6~7月、有効求職者数は同年後半を中心に増加したが、その後は、いずれもやや減少傾向で推移している。パートタイム労働者では、新規求職申込件数、有効求職者数ともに、2020年4月に大幅に減少した。新規求職申込件数は2020年6~7月にかけて増加、有効求職者数は2020年6~12月まで増加し続けた後、いずれもおおむね横ばいで推移している。
2022年は、年平均で正社員の新規求職申込件数は前年比1.8%減、有効求職者数は同2.2%減となり、パートタイム労働者の新規求職申込件数は同0.6%増、有効求職者数は同2.0%増となった。2022年平均を2019年と比較すると、正社員では、新規求職申込件数は下回っているが、有効求職者数は依然として上回っている。パートタイム労働者では、新規求職申込件数、有効求職者数ともに2019年平均を上回り、特に有効求職者数が高水準となっている。
その結果、2022年平均の正社員の新規求人倍率は、前年差0.16ポイント上昇の1.68倍、有効求人倍率は同0.11ポイント上昇の0.99倍、パートタイム労働者の新規求人倍率は、同0.26ポイント上昇の2.42倍、有効求人倍率は同0.14ポイント上昇の1.28倍となった。
経済社会活動の活発化により、一般労働者、パートタイム労働者ともに全ての産業で新規求人数が増加
次に、求人の動向について、産業別、雇用形態別にみていく。
第1-(2)-17図は、産業別、雇用形態別に新規求人数の前年差の推移をみたものであるが、パートタイム労働者を除く一般労働者5(以下この章において「一般労働者」という。)、パートタイム労働者ともに2020年は、感染症の拡大による景気減退の影響により、全ての産業において新規求人数が減少した。雇用形態別でみると、一般労働者の新規求人数は、「サービス業(他に分類されないもの)」「製造業」「卸売業,小売業」「医療,福祉」等で、パートタイム労働者の新規求人数は、「卸売業,小売業」「宿泊業,飲食サービス業」「医療,福祉」「サービス業(他に分類されないもの)」等で大幅な減少がみられた。この結果、総計(パートタイムを含む一般労働者)では「卸売業,小売業」「サービス業(他に分類されないもの)」「宿泊業,飲食サービス業」「医療,福祉」「製造業」等で大幅な減少となった。
2021年は、2020年に大きく減少した一般労働者の「製造業」「サービス業(他に分類されないもの)」等を中心におおむね全ての産業で増加となったが、「宿泊業,飲食サービス業」「卸売業,小売業」等では緊急事態宣言の発出等に伴う行動制限が続いた影響から新規求人数の回復が弱く2年連続で減少となり、産業ごとに差がみられた。
2022年は、経済社会活動の活発化により一般労働者、パートタイム労働者ともに新規求人数は全ての産業で増加したが、感染拡大前の2019年と比較すると、「卸売業,小売業」「生活関連サービス業,娯楽業」「宿泊業,飲食サービス業」ではそれぞれ2割程度減少しており、求人の回復に遅れがみられる産業もある。
人手不足感は感染拡大前の水準まで戻りつつある
第1-(2)-18図により、短観を用いて、産業別及び企業規模別に雇用の過不足の状況をみていく。同図(1)により産業別の雇用人員判断D.I.の推移をみると、感染拡大前から続く人手不足感は、感染拡大の影響により2020年前半は全ての産業で弱まり、特に「宿泊・飲食サービス」「製造業」では「過剰」超に転じた。その後は、「宿泊・飲食サービス」以外の産業でおおむね一貫して人手不足感が強まった。2021年 12月に「宿泊・飲食サービス」が「不足」超に転じて以降、全ての産業が「不足」超で推移している。また、同図(2)により企業規模別にみると、中小企業の人手不足感がより強い傾向がみられる。
新規求人数は、正社員、パートタイム労働者ともに製造業、非製造業のいずれも増加傾向
さらに、第1-(2)-19図により、製造業、非製造業別の新規求人数及び充足率6の動向をみていくと、新規求人数は、感染症の影響により2020年前半に大幅に減少したが、同年後半以降、正社員、パートタイム労働者ともに製造業、非製造業のいずれも増加傾向にある。充足率は、正社員、パートタイム労働者ともに製造業では約2割、非製造業では約1割と低い水準になっており、企業が求人を出しても人員が確保できていない状況がみられる。特に正社員の充足率は低下傾向で推移している。
民間職業紹介の常用求人数も大幅な増加傾向。新規求職申込件数、就職件数は常用求人数よりも小幅な増加
ここまで、公共職業紹介事業における求人や求職の状況をみてきたが、民間職業紹介事業の動向はどのようになっているのだろうか。第1-(2)-20図により、2017年度以降の状況をみていく。同一求職者の複数事業者への求職申込や企業の同一求人の複数事業者への登録による重複計上もありうることに留意は必要であるが、同図(1)をみると、常用求人数は2017年度以降大幅な増加傾向にあることが分かる。新規求職申込件数及び常用就職件数は2017年度と比較すると大きくは増加してはおらず、2021年度は感染症の影響から持ち直しプラスに転じているが、常用求人数よりも小幅な増加となっている。同図(3)(4)により、常用求人数の多い職業別に新規求職申込件数、常用求人数の推移をみると、ほぼ全ての職業で2017年度の水準を上回っていることが分かる。また、同図(2)により、2021年度の職業別の新規求職申込件数、常用求人数をみると、「介護サービスの職業」「歯科医師、獣医師、薬剤師」「医師」では常用求人数が新規求職申込件数の2倍以上となっている。一方、「一般事務の職業」では新規求職申込件数を大きく下回っている。
第1-(2)-8図では、「情報通信業」「医療,福祉」分野の雇用者数が近年継続して増加傾向にあることを確認したが、第1-(2)-20図(3)(4)おいても、2017年度と比較して「保育士」の常用求人数が一貫して大きく増加しているほか、「介護サービスの職業」「情報処理・通信技術者」等の増加も大きく、企業の採用意欲が高まっていることが確認できる。一方、「一般事務の職業」は新規求職申込件数が増加する中、常用求人数は減少している。
新規学卒者の就職率は、2023年3月卒においてはいずれの卒業区分においても上昇した
第1-(2)-21図により、新規学卒者の就職(内定)率の推移を卒業区分別にみてみる。感染症の影響により、2021年卒の新規学卒者の就職率が低下した後、2022年卒では、高校新卒者では横ばい、短大新卒者及び専修学校(専門課程)では上昇、大学新卒者では低下となった。
2023年卒の新規学卒者の就職率をみると、高校新卒者、短大新卒者、専修学校(専門課程)新卒者及び大学新卒者の全てにおいて、前年度より上昇した。また、時点別の内定率をみると、長期的には10月末時点を中心に上昇傾向にあり、企業が早い段階から積極的に採用活動を行ってきている状況が確認できる。
転職者数は感染症の影響により2020年から2年連続で大幅に減少したが、2022年は3年ぶりの増加となった
これまでにみた労働力需給の動向も踏まえ、労働移動の状況について、転職者(過去1年以内に離職経験のある就業者)の動向をみていく。第1-(2)-22図(1)により、転職者数の推移をみると、リーマンショック期の2009~2010年にかけて大幅に落ち込んだ後、2011年以降増加を続け、2019年は過去最高の353万人となった。感染症の影響で2020年、2021年と減少が続き、290万人まで減少したが、2022年には3年ぶりに増加し303万人となった。
転職者数の変動の背景をみるため、同図(2)で前職の離職理由別の転職者数の推移(前年差)をみると、「より良い条件の仕事を探すため」は、雇用情勢が改善している時期に増加している。他方、「会社倒産・事業所閉鎖のため」「人員整理・勧奨退職のため」「事業不振や先行き不安のため」は、リーマンショックの影響を受けた2009年のように、雇用情勢が厳しい時期に増加する傾向がある。
2022年についてみると、感染症の影響により減少していた「より良い条件の仕事を探すため」という転職者が3年ぶりに増加に転じている。
第4節 失業等の動向
完全失業率は、感染症の影響から持ち直し、男女計と男性は全ての年齢階級で低下、女性は「35~44歳」と「65歳以上」で横ばいとなったほかは全ての年齢階級において低下
最後に、失業の動向についてみていく。
第1-(2)-23図は、完全失業率の推移を男女別・年齢階級別にみたものであるが、「15~24歳」「25~34歳」といった若年層で高く、「65歳以上」の高年齢層で低い傾向がある。2018年までは男女ともにおおむね低下傾向にあり、「15~24歳」で特に大きく低下していたが、2020年の感染症の影響により、男女ともに全ての年齢階級で上昇がみられた。
2021年は、感染症の影響が依然として残る中で、男女計と女性では横ばい、男性はやや上昇した。2022年の完全失業率は、感染症の影響から持ち直し、男女計と男性は全ての年齢階級で低下、女性は「35~44歳」と「65歳以上」で横ばいとなったほかは、全ての年齢階級において低下している。
2022年は「非自発的理由」及び「自発的理由」のいずれも完全失業者数が減少
続いて、第1-(2)-24図により、求職理由別・年齢階級別の完全失業者数の推移をみると、2013~2019年にかけて、「非自発的」「自発的」「新たに求職」理由の完全失業者数のいずれも減少傾向で推移していた。2020年、2021年には「非自発的」理由を中心に全ての理由で増加した後、2022年には全ての理由で減少に転じた。
「非自発的」「自発的」理由による完全失業者数を年齢別にみると、2019年まではいずれの理由についても、全ての年齢階級でおおむね減少傾向で推移してきた。2020年には感染拡大による経済社会活動の停滞から、「非自発的理由」による完全失業者数は全ての年齢階級において大幅に増加し、2021年も45歳以上の年齢層を中心に引き続き増加したが、「自発的理由」の完全失業者数は2020年以降もおおむねどの年齢階級でも横ばいであった。
2022年は、「非自発的」及び「自発的」な理由による完全失業者は、いずれもおおむね全ての年齢階級で減少している。
「1年未満失業者」「長期失業者」ともに減少
最後に、第1-(2)-25図により、失業期間別の完全失業者数の推移をみると、失業期間が「1年以上」の完全失業者(以下「長期失業者」という。)、失業期間が「1年未満」の完全失業者(以下「1年未満失業者」という。)は、ともに2019年まで幅広い年齢層で減少傾向が続いたが、2020年の感染症の拡大による景気減退の影響から1年未満失業者が全ての年齢階級で増加した。2021年は、完全失業率が2%台後半で推移する中、1年未満失業者は幅広い年齢層で減少したものの、感染症の影響が長引く中で、失業が長期化する傾向がみられ、長期失業者は全ての年齢階級で増加した。
2022年は、雇用情勢の持ち直しにより、全ての年齢階級で1年未満失業者は減少、長期失業者は横ばい又は減少し、特に1年未満失業者は感染拡大前の2019年とおおむね同水準まで減少している7。
注釈
- 1厚生労働省(2022)でも指摘されているように、失業については、労働力需要が不足することに起因する「需要不足失業」と、求人・求職者間のミスマッチや情報の非対称性により生ずる「構造的・摩擦的失業」があり、失業者等の全てが、仕事がないために仕事に就けない者というわけではない。
- 215歳以上人口のうち、「就業者」と「完全失業者」を合わせたもの。
- 315歳以上人口のうち、「就業者」と「完全失業者」以外。
- 4労働力人口が15歳以上人口に占める割合。
- 5常用及び臨時・季節を合わせた労働者をいう。常用労働者は雇用契約において雇用期間の定めがないか又は4か月以上の雇用期間が定められている労働者(季節労働を除く。)をいう。また、臨時労働者は、雇用契約において1か月以上4か月未満の雇用契約期間が定められている労働者をいい、季節労働者とは、季節的な労働需要に対し、又は季節的な余暇を利用して一定の期間(4か月未満、4か月以上の別を問わない。)を定めて就労する労働者をいう。
- 6求人数に対する充足された求人の割合をいい、「就職件数」を「新規求人数」で除したもの。
- 7長期失業者及び1年未満失業者の労働力人口に占める割合は付1-(2)-1図を参照。