健康・医療ロタウイルスワクチン
ロタウイルスワクチンによって、乳幼児の下痢・嘔吐症の主な原因であるロタウイルスの予防ができます。標準的には生後8~14週に初回接種を行います。
疾病の性質
病気の概要
ロタウイルスによって引き起こされる急性の胃腸炎で、乳幼児期(0~6歳ころ)にかかりやすい病気です。主な症状は、水のような下痢、吐き気、嘔吐(おうと)、発熱、腹痛です。
ふつう、5歳までにほぼすべての子どもがロタウイルスに感染するといわれています。脱水症状がひどくなると入院治療が必要になることがあります。5歳までの急性胃腸炎の入院患者のうち、40~50%前後はロタウイルスが原因です。
※より詳しい情報については下記リンクをご参照ください。
ロタウイルス感染症(NIID)
ワクチンの効果
ロタウイルスに対するワクチンを接種することにより、ロタウイルス胃腸炎による入院患者を約70~90%減らすことができたと報告されています。
接種の対象者とスケジュール
初回の接種を生後2か月から生後14週6日までに行います(生後6週から接種できます)。初回の接種を生後15週以降に受けることはおすすめしていません。2回目以降の接種は27日以上の間隔をあけて行います。
使用するワクチン
ワクチンは2種類あり、同様の効果があります。2回接種を受けるものと3回接種を受けるものがあります。同じワクチンで、決められた回数の接種をしましょう。
ワクチン名 | 一般名 | 接種回数 |
---|---|---|
ロタリックスⓇ | 経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチン(1価) | 2回接種 |
ロタテックⓇ | 5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン(5価) | 3回接種 |
ワクチンの安全性
ワクチン接種後に起こりうる症状としては、
- ロタリックスでは易刺激性(ぐずりやすくなる)、発熱、下痢、食欲不振、嘔吐、血便排泄、鼓腸、腹痛、胃腸炎、咳嗽鼻漏(せきや鼻水)、皮膚炎等
- ロタテックでは下痢、嘔吐、便秘、発熱、中耳炎、胃腸炎、鼻咽頭炎、ラクトース不耐症、気管支痙攣、蕁麻疹、血管浮腫等
であり、いずれも一過性で重篤なものはまれとされています。
また、ワクチン接種により、腸重積症(ちょうじゅうせきしょう、腸の一部がほかの部分に入り込んで、腹痛などをおこしてしまう病気)のリスクが上昇することが知られています。
接種を受けられない方
以下の方は、接種を受けることができません。
- 過去にロタウイルスワクチンを接種した際に過敏症やそれを疑う症状のあった方
- 先天性消化管障害を有する方(腸重積症の発症を高める可能性があるため)。なお、手術等により治療が完了した場合は、接種を受けることができる可能性があるため、医師にご相談ください。
- 腸重積症にかかったことのある方(腸重積症の再発のおそれがあるため)
- 重症複合型免疫不全を有する方(免疫不全のため、生ワクチンに含まれるウイルスにより重い感染症になるおそれがあるため)
また、以下のような場合は接種を受けることができませんので、治ってから受けるようにしてください。
- 発熱している。
- 重篤な急性疾患にかかっている。
接種に注意が必要な方
以下の方は、接種にあたって注意が必要なので、あらかじめ医師に相談してください。
- 心臓、腎臓、肝臓、血液の病気や発育障害がある方
- これまでに、予防接種を受けて2日以内に発熱や全身の発疹などのアレルギー症状があった方
- けいれんを起こしたことがある方
- 免疫不全と診断されている方や、近親者に先天性免疫不全症の方がいる方
- 胃腸障害(重度または慢性の胃腸疾患、感染原因を問わない感染性腸炎等)をもつ方
Q&A
※がついたタイトル部分を押下で回答が閲覧できます。
ロタウイルス感染症
2024年9月30日版
感染症について
Q1 ロタウイルスによる胃腸炎はどのようなものですか?
ロタウイルスによって引き起こされる急性の胃腸炎で、乳幼児期(0~6歳ころ)にかかりやすい病気です。ロタウイルスは感染力が強く、ごくわずかなウイルスが体内に入るだけで感染してしまいます。ふつう、5歳までにほぼすべての子どもがロタウイルスに感染するといわれています。大人はロタウイルスの感染を何度も経験しているため、ほとんどの場合、軽い症状ですむか、症状が出ません。しかし、乳幼児は、激しい症状が出ることが多く、特に初めて感染したときに症状が強く出ます。主な症状は、水のような下痢、吐き気、嘔吐(おうと)、発熱、腹痛です。脱水症状がひどくなると点滴が必要となったり、入院が必要になることがあります。5歳までの急性胃腸炎の入院患者のうち、40~50%前後はロタウイルスが原因です。ロタウイルスワクチンの接種を受けることで重症化予防にも効果があるとされています。
(厚労省:ロタウイルスに関するQ&Aより一部改変)
製剤情報やワクチン供給
Q2 ロタウイルスワクチンにはどのような種類がありますか?
ロタウイルスワクチンには、ロタリックスとロタテックの2種類があります。どちらのワクチンも定期接種の対象となります。
ワクチン名 | 一般名 | 会社名 |
---|---|---|
ロタリックスⓇ | 経口弱毒生ヒトロタウイルスワクチン(1価) | グラクソ・スミスクライン株式会社 |
ロタテックⓇ | 5価経口弱毒生ロタウイルスワクチン(5価) | MSD株式会社 |
Q3 2種類のワクチンの有効性には差がありますか?
2種類のワクチンの有効性は同等と考えられています。ロタリックスは1価の弱毒生ウイルスワクチン、ロタテックは5価の弱毒生ウイルスワクチン(それぞれ1種類、5種類の弱毒化したロタウイルスがワクチンに含まれています)という違いがありますが、ロタウイルスワクチンは種類の異なるロタウイルスによる急性の胃腸炎の重症化予防にも効果があるため、どちらのワクチンを接種しても同様の効果があります。
接種スケジュールや接種方法
Q4 2種類のワクチンの接種回数や接種時期は、どうなっていますか?
接種回数は、ロタリックスは2回接種、ロタテックは3回接種となっています。また、接種時期は、ロタリックスは、初回接種(Q6参照)の後、出生24週0日後までに、27日以上の間隔をおいて2回接種、ロタテックは、初回接種(Q6参照)の後、出生32週0日後までに、27日以上の間隔をおいて3回接種することとなっています。
Q5 本Q&Aに記載されている出生後の週数・日数を教えてください。
出生○日後、出生○週●日後は、出生日の翌日を出生1日後として算出することとします。
具体的な例は以下のとおりです。
- 出生6週0日後:生まれてから6回目の、生まれた日と同じ曜日
- 出生14週6日後:生まれてから15回目の、生まれた日と同じ曜日の1日前
- 出生24週0日後:生まれてから24回目の、生まれた日と同じ曜日
- 出生32週0日後:生まれてから32回目の、生まれた日と同じ曜日
生後2か月は、生まれてから翌々月の同日の前日を意味します。
翌々月に同日となる日が存在しない場合は翌々月の最後の日に生後2か月に至ったと考えます。
例えば、7月31日生まれの場合は、9月30日に生後2か月に至ったと考えます。
Q6 初回接種はいつから、いつまでに受ければよいですか?
定期接種として、出生6週0日後から接種を受けることができます。
初回接種の標準的接種期間は生後2か月から出生14週6日後までとしています。自治体から他のワクチンと併せてご案内を行うことと、生後2か月から接種を受けることができる他のワクチン(Hib、子どもの肺炎球菌、B型肝炎)のスケジュールを考慮して、生後2か月から出生14週6日後までを標準的接種期間としています。出生6週0日後以降であれば、生後2か月より前に初回接種を受けても医学的には問題ありません。
初回接種を出生15週0日後以降に受けることは、安全性の観点から、お勧めしていません。
Q7 初回接種の標準的接種期間が出生14週6日後までとされているのはなぜですか?それより後に接種を受けることはできますか?
0歳児は、月齢が進むと、腸重積症という病気にかかりやすくなります(Q22参照)。
また、ロタウイルスワクチンの接種を受けることによっても、特に初回接種から約1~2週間は、腸重積症のリスクが増すという研究報告もあります。できるだけ腸重積症の起こりにくい時期に接種を受けていただくために、初回接種を出生14週6日後までに受けることをお勧めしています。ロタウイルスワクチンの初回接種を出生15週0日後以降に受けることはお勧めしていません。
Q8 例えば、3月1日に生まれた方の場合はいつから、いつまでに受ければよいですか?
- 出生6週0日後:4月12日=定期接種開始日
- 生後2月:4月30日=標準的接種期間の開始日
- 出生14週6日後:6月13日=初回接種の標準的接種期間の終了日
- 出生24週0日後:8月16日=ロタリックス2回目接種期間の終了日
- 出生32週0日後:10月11日=ロタテック3回目接種期間の終了日
初回接種の標準的接種期間は生後2か月となる4月30日から出生14週6日後となる6月13日までです。
出生6週0日後となる4月12日から接種を受けても医学的に問題はありませんが、生後2か月から接種を受けることができるワクチンの種類が多いため、医療機関等と相談して予防接種のスケジュールを計画してください。一方、安全性の観点から、初回接種を出生15週0日後以降、つまり6月14日以降に受けることはお勧めしていません。
ロタリックスは、初回接種ののち、出生24週0日後、つまり8月16日までに、27日以上の間隔をおいて2回接種を受けてください。ロタテックは、初回接種ののち、出生32週0日後、つまり10月11日までに、27日以上の間隔をおいて3回接種を受けてください。
Q9 出生15週0日後以降に初回接種を受けることを希望しましたが、医療機関で接種はできないと言われました。なぜですか?
出生15週0日後以降に初回接種を受けることは、安全性の観点(Q22参照)からお勧めしていません。出生15週0日後以降に初回接種を受けることを希望しても、医師が、接種できないという判断をすることがあります。このような判断は安全性の観点から行われるものであり、問題はありません。
Q10 2回目以降はどのようなスケジュールで接種すればよいですか?
Q4をご参照ください。
Q11 ロタウイルスワクチンの接種方法はどのようなものですか?
ロタウイルスワクチンは液体であり、経口による接種を行います。飲むワクチンです。
Q12 他のワクチンとの同時接種は可能ですか?
同時接種は、医師が特に必要と認めた場合に行うことができます。
Q13 他のワクチンと同時接種をする場合、ロタウイルスワクチンの接種を先に受けた方が良いですか?後の方が良いですか?
どちらのワクチンの接種を先に受けてもワクチンの効果に影響はありません。
Q14 ロタウイルスワクチンの接種を受ける前後の授乳は避けた方が良いですか?
接種前後に哺乳制限はありません。しかし、哺乳後は嘔吐をする可能性があるため、接種後30分程の間隔を開けてから授乳することをお勧めしています。また哺乳は、接種を受ける1~2時間前までに済ませて、少し空腹感のある方がワクチンの接種を受けやすいと考えられます。
Q15 ロタテック・ロタリックスのうち片方のロタウイルスワクチンの接種を受けた人が、2回目以降、もう一方の種類のロタウイルスワクチンの接種を受けることはできますか?
接種したロタウイルスワクチンの種類は、母子健康手帳に記載されています。2回目以降も、同じ種類のロタウイルスワクチンで接種を受けてください。
Q16 初回接種後、母子健康手帳をなくしてしまいどちらのロタウイルスワクチンの接種を受けたかわかりません。どうすればよろしいでしょうか?
通常、医療機関には接種記録が保管されているため、接種を受けた医療機関に「ワクチンの種類」「接種日」「ロット番号」を問い合わせてください。母子健康手帳は接種記録を把握するためにも大事なものです。自治体に再発行を申請し、接種記録を記入してください(もしくは接種を受けた医療機関に記録をしてもらってください)。
Q17 転居した、または里帰り先から戻ったため、自治体内に、同種のロタウイルスワクチンの接種を受けることができる医療機関がありません。このような場合にはどうすればよいですか?
新たにお住まいの自治体内に、同じ種類のロタウイルスワクチンを接種できる医療機関がないといった場合には、自治体にご相談ください。接種できる医療機関を自治体が紹介できない場合には、他の自治体で接種を受けることや、他のロタウイルスワクチンで残りの接種を受けることを自治体が認める場合があります。
Q18 接種後に吐き出した場合はどうすればよいですか?
接種後に吐き出した場合でも、再度の接種は必要ないと考えられます。少量でも飲み込んでいれば一定の効果があることや、ロタウイルスワクチンは複数回接種することとなっており、一連の接種で効果が期待できることなどから、吐きだした場合でも1回の接種と考えてください。
注:なお、ロタリックスについては、吐き出してしまった場合には、任意接種(自費)として再度の接種を受けることはできますが、上記の理由からお勧めしていません。ロタテックについては、任意接種であっても、添付文書上、再度の接種は行わないこととされています。
Q19 ロタウイルスワクチンの接種を受けた後に気をつけた方がよいことはありますか?
接種当日の重い副反応としてまれにアナフィラキシー症状(ワクチンへのアレルギーによる発疹、呼吸困難など)が起こる可能性があるため十分な観察を行ってください。
接種を受けてから約1~2週間の間は、腸重積症のリスクが通常より高まるとする研究報告もあります。腸重積症の症状としては、「突然はげしく泣く」、「機嫌が良かったり不機嫌になったりを繰り返す」、「嘔吐する」、「血便がでる」、「ぐったりして顔色が悪い」などがあります。
これらの症状が一つでもみられた場合や、いつもと様子が違う場合は速やかに医療機関を受診させてください(Q22参照)。
接種に注意が必要な場合
Q20 接種を受けることができないのはどのような場合ですか?
以下の方は、接種を受けることができません。
- 過去にロタウイルスワクチンを接種した際に過敏症やそれを疑う症状のあった方
- 先天性消化管障害を有する方(腸重積症の発症を高める可能性があるため)。なお、手術等により治療が完了した場合は、接種を受けることができる可能性があるため、医師にご相談ください。
- 腸重積症にかかったことのある方(腸重積症の再発のおそれがあるため)
- 重症複合型免疫不全を有する方(免疫不全のため、生ワクチンに含まれるウイルスにより重い感染症になるおそれがあるため)
また、以下のような場合は接種を受けることができませんので、治ってから受けるようにしてください。
- 発熱している。
- 重篤な急性疾患にかかっている。
Q21 接種を受けることができるか、控えたほうがよいかどうかを医師に相談した方がよいのはどのような場合ですか?
心臓、肝臓、血液疾患などを有する、免疫機能に異常がある場合は接種を受けることによる副反応のリスクが高まることから、接種を控えた方がよい場合があります。
まだ診断されていなくても、感染症を繰り返しているなど免疫不全の可能性がある場合や、免疫抑制剤やステロイドなどの免疫抑制を来す治療を受けている場合、近親者に先天性免疫不全症の方がいる場合は、接種を控えた方が良い場合がありますので、医師に相談してください。
出生してから現在までに医療機関の受診や入院を必要とした場合は必ず医師に相談してから接種を受けてください。
また、母親が妊娠中や授乳中に免疫機能を抑制する薬(免疫抑制剤、膠原病・リウマチの治療薬など)の投与を受けた場合には、必ず医師に伝えた上で、接種について相談してください。
Q22 ロタウイルスワクチンの接種を受けた後に腸重積症のリスクが高まると聞きましたが、どのようなことに気をつければよいですか?
腸重積症は、ロタウイルスワクチンの接種に関わらず、乳幼児が罹患(りかん)することのある疾患で、まれな病気ではありません。
0歳児は、月齢が進むと、腸重積症という病気にかかりやすくなります。腸の一部が隣接する腸管にはまり込み、腸の血流が悪くなることで腸の組織に障害を起こすことがあるため、速やかな治療が必要となります。
ロタウイルスワクチンの接種を受けた後に腸重積症を発症する可能性もあるため、特に接種を受けてから約1~2週間の間に「突然はげしく泣く」、「機嫌が良かったり不機嫌になったりを繰り返す」、「嘔吐する」、「血便がでる」、「ぐったりして顔色が悪い」などの症状が一つでもみられた場合や、いつもと様子が違うと感じた場合は、速やかに医療機関を受診させてください。
特に、初回接種後、約1~2週間は腸重積症の発症の可能性が高まるといわれていますので、お子様の体調をよく観察してあげてください。
長期療養特例
Q23 やむを得ない事情で接種対象となる期間を超えてしまった場合に、定期接種を受ける方法はありますか?任意接種(自費)であれば受けられますか?長期療養特例の対象となりますか?
ロタウイルスワクチンは、安全性の面から、接種対象となる期間が限定されているため、接種対象となる期間を超えた場合には定期接種・任意接種のいずれも受けることができません。また、長期療養特例の対象ではありません。
健康被害があった場合
Q24 ロタウイルスワクチンの定期接種により重い副反応が起きてしまった場合は、健康被害救済を受けることができますか?
定期接種を受けたことにより健康被害が発生した場合は、救済給付を行うための制度があります。制度の概要は、厚生労働省ホームページ(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_kenkouhigaikyuusai.html )でご案内しています。申請については、お住まいの自治体にご相談ください。
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