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IDESコラム vol. 24
感染症エクスプレス@厚労省 2018年10月19日

「旅の笑えるハプニングと笑えないハプニング」

IDES養成プログラム 2期生:船木 孝則

 こんにちは。IDES2期の船木孝則です。
 日本時間の10月17日20時~24時、スイスのWHO本部で緊急委員会が開催され、現在のコンゴ民主共和国におけるエボラ出血熱の流行の状況が「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(PHEIC)」の状況にあるかが議論され、結果をいち早く知るため、私たちは真夜中まで待機していましたが、結果的に、該当しないと判断されました。予断を許さない状況は続いているので、引き続き情報収集し、皆様に適宜お知らせいたします。このようなPHEICは、渡航制限がかかるなど、渡航者に影響を及ぼすものであるため、皆様にも関心を持っていただけたら嬉しいです。

 本日10月19日は、「遠(10)くへ行く(19)」の語呂合わせで、海外旅行の日とされているそうです。私は海外旅行が好きですが、皆様も遠くへ旅することが好きな人は少なくないと思います。
 私も、仕事で海外に行くことがありますが、恥ずかしながら以前イタリアにいった時に、いわゆる食あたりをおこしたことがあります。イタリアからの帰国便にまさに搭乗しようとした瞬間から、なんとなく体のだるさを感じ、悪夢のフライトが始まりました。座席につくやいなや、全身倦怠感とめまい、嘔気が始まり、その後数回嘔吐、到着前には下痢の出現と、まさに食あたりの症状でした。ただでさえ辛いこの状況では、眠ることすらできず、浅い眠りの中で、「マルモレの滝」の夢を見て目を覚ます有様。揺れがある機内で過ごした約半日は、なぜかとても鮮明に覚えています。こうなってしまうと、ある意味エキサイティングではありますが、せっかくの、楽しい旅行も台無しになってしまいます。

 旅でのハプニングは楽しい思い出になることもありますが、私の例のように、おぞましい記憶になることや、旅行自体を台無しにしてしまうこともあります。
 ハプニングの原因となるものは、それぞれの国の状況、気候など、思わぬものがリスクであったということはよくあることでないでしょうか。ですが、治安や、感染症については、ある程度情報を集めることで備えることができます。
それぞれの国での保健医療体制も異なりますので、医療へのアクセスの容易さも異なります。病院にかかったときに、目が飛び出るほどの金額を請求されることがあることはご存じの通りです。ですので、保険に入ることで、予め「備える」こともできるでしょう。また、ご病気をお持ちの方は、旅行先でも病気が悪くならないように、または悪くなった場合に備えて、かかりつけの先生や専門家に対処方法などを予め聞いておくことで「備える」こともできます。
 安心して、旅行を楽しんだり、出張先で活躍するためには、旅程の確認だけでなく、「リスク」への、しっかりした「備え」が重要であることを、あえて強調しておきます。

 これから年末に向けて、旅行の計画を立てる方もいると思います。私からは、「感染症」への備えをしていただくよう皆様にお願いしたいと思います。渡航する国でそれぞれ特色があり、流行している感染症が違います。厚生労働省検疫所サイト「FORTH」を見て、渡航先の感染症情報を見てください。自分が打っておいた方が良いワクチンはないか、非常時のために携帯しておいた方がよいものはないか、などを確認しましょう。また必要なワクチンは、種類により必要な回数が異なり、完了するまでに要する時間が異なるため、旅行までに余裕をもって早めに受診されることをおすすめします。
 国によっては、予防接種を受けた証明書を要求され、証明できなければ、入国できないことがあります。黄熱ワクチンが典型例で、主にアフリカ及び南米の熱帯地域の国々では、入国時に予防接種証明書(イエローカード)の提示を求められる国があります。一方で、黄熱の流行している国を出国してから他国に入国する時に、予防接種証明書の提示を求める国もありますので、注意が必要です。せっかく飛行機で移動しても、入国できないことが起こるのです。この証明書は一度発行されれば一生涯有効ですので、大切に保管してください。詳しくは、渡航先の国の駐日大使館などに確認してください。
 こうした点では、旅行に関する医療を専門的に扱っている病院の渡航者外来やトラベルクリニックに相談することも是非、積極的にお考えください。

 旅での感染症のハプニングは、可能な限り避けていただきたいと思います。
 皆様が、海外渡航の備えをすることで、楽しい海外旅行が台無しにならないよう、また、海外出張で活躍できるよう、心よりお祈りしております。

参考:
・海外へ渡航されるみなさまへ
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/index.html
・厚生労働省検疫所:FORTH 海外で安全に過ごすために
https://www.forth.go.jp/index.html
・厚生労働省検疫所:海外渡航のためのワクチン
https://www.forth.go.jp/useful/vaccination.html
・外務省海外安全ホームページ
https://www.anzen.mofa.go.jp/index.html
・外務省:海外安全情報配信サービス(たびレジ)
https://www.ezairyu.mofa.go.jp/index.html
・CDC (米国疾病管理予防センター):Travelers’ Health (英語のみ)
https://wwwnc.cdc.gov/travel/
・国土交通省 観光庁:訪日外国人旅行者数・出国日本人数の推移
http://www.mlit.go.jp/kankocho/siryou/toukei/in_out.html

 

(編集:成瀨浩史)

●当コラムの見解は執筆者の個人的な意見であり、厚生労働省の見解を示すものではありません。
●IDES(Infectious Disease Emergency Specialist)は、厚生労働省で平成27年度からはじまったプログラムの中で養成される「感染症危機管理専門家」のことをいいます。

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