人材育成事例051
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(1)経営層のメッセージ ソリューション事業とSI事業を両輪に「信頼と技術で応えるSSL」というDNAを大切に、「圧倒的に強い会社」を目指しています。そこには、社員一人ひとりの強みや個性から新しい概念を生み出す共創の場があり、常に組織創造力を向上させるために、自らの力を最大限に発揮できる環境があります。 (2)『キャリアデザインサポート室』の方針と役割(別紙1参照) 上記の方針をもとに、『キャリアデザインサポート室』は以下の方針で活動しています。 「社員一人ひとりが”自分らしさ”を発見し、個性と能力を十分に発揮することができるライフキャリア形成=生涯・個人の人生とその生き方の表現」を支援しています。 役割は、次のとおりです。 ・ 職業を通して個人の生き甲斐、働き甲斐まで含めた「キャリア形成」を支援する ・ 個人が自らキャリアマネジメント(自立・自律)ができるように支援する ・ 「個人」と「組織」との共生の関係づくりを支援する 主な業務は、「相談業務」、「教育、普及活動」、「環境への働きかけ」を行なうことです。 キャリア形成支援で留意していることは、企業方針に鑑み、人材戦略、組織目標をもち、それに照らし合わせた活動をすることです。 |
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<キャリア形成支援の導入に至った背景、時期> (1)IT企業にもとめられている人材 IT企業において、プロジェクトを成功させるためには、プロジェクトマネージャーの役割は大きく、専門分野の知識をもった人材が必要です。2002年に社内では、プロジェクトマネージャーの不足が課題になっていました。プロジェクトマネージャーに必要な教育の実施に加え、プロジェクトマネージャーになるためのキャリアパスが必要になってきました。 (2)独自のキャリアパス そこで、2003年4月『SSLキャリアデザイン制度』を施行しました。経済産業省のITSS(ITスキルスタンダード)を参考に、当社独自にコア人材の定義とキャリアパスを明示しました。 2007年9月には職群別に定義されたスキル・実績の基準をもとに、社員自らがキャリアを管理し、現場が主体となって着実なスキルアップを図るためのツールとして活用できるよう、全体的に内容を一新しました。 (3)幹部職と社員の『キャリア面談』の導入 2007年の『SSLキャリアデザイン制度』の改版に伴い、年1回、幹部職と社員の『キャリア面談』を開始しました。その時に、幹部職全員が「キャリア面談研修」を受講しました。 (4)個人のキャリア相談窓口の設立 2007年12月には、「個人」のキャリア支援と「組織」との共生をめざして『キャリアデザインサポート室』を設立し専任のキャリア・カウンセラーをおき活動を開始しました。 <支援の内容> (1)「マネー」「健康」「キャリア」の3本柱の教育とキャリアフォロー面談でトータルな支援 キャリア形成には、職業的発達課題、心理的発達課題を考慮して対応することが重要であり、当社では、入社1年目、6年目、10年目、20年目、50歳、役職離任向けという節目にキャリア研修を行なっています(別紙2)。 1年目のキャリア研修は、「人間関係」、「仕事理解」、「キャリア・ビジョン」の3部構成で実施しています。20年目以上のベテラン社員の研修は、「マネープラン」、「健康:セルフケア」、「キャリア&ライフ」の3つの構成で実施しています。研修受講1年後には、キャリアデザインサポート室によるキャリアフォロー面談も実施しています。 (2)20代の若手社員の早期戦力化と人間的成長の支援 新人は、約3ヶ月の新人教育終了後、配属された職場で、OJT指導者のもとで約1年間の指導を受けます。OJT指導者をトレーナー、新人をトレーニーと呼んでいます。トレーニーは、トレーナー、幹部職が、「トレーニー報告書」を通して指導をうけ、計画・実績・評価を行なっています。 3ヶ月に一度キャリア・カウンセラーもトレーニーと約15分の面談を行ない状況確認をしています。多くの人は、少しずつ職場に慣れて仕事に取り組んでいますが、なかには職場の人間関係が上手くいかないことや仕事の進め方がわからずに不安を感じている人もいます。そのような場合は、アドバイスを行ない、状況に応じて継続してフォローを行なっています。簡単に解決できない状態の時には「希望面談」につなげることもあります。トレーニーへのフォローの特徴は、自主性をもち行動することで、職業意識の変容や精神面での成長につなげていることです。 2年目には、自分の1年間の経験や成長を発表する「2年目社員コンベンション」があります。3、4年目には若手社員面談、5年目にはお客様やビジネスの視点で発表する「5年目社員コンベンション」、6年目には「キャリア・ビジョン研修」、7年目にはキャリアフォロー面談があります。このように20代の社員に対して、職場全体で社員の成長を支援しています。(別紙3) (3)希望する全社員に対する相談支援と体制 専任のキャリア・カウンセラーがいて、予約をすることで誰でも就業時間内に面談を受けることができます。1回約50~90分で、面談回数は相談内容によっても異なりますが、1回から5回ほどです。申し込み方法は、電話でもメールでも可能です。 相談者は、新人から中堅社員、幹部職、外国籍の社員、派遣社員、契約社員までさまざまです。相談内容も自分自身に関すること、職場の人間関係、自分のキャリア、人生の転機、ワーク・ライフ・バランスに関することなどあります。上司からは、部下の指導や、モチベーションが下がっている部下やメンタル不調者への接し方などがあります。最近は、グローバル人材の育成、障がい者への接し方、育児や介護を抱えての働き方、役職離任後や定年後の生きがいなどの相談が増えてきており、ダイバーシティに関する内容も多くなっています。 社内には、ほかにも「人事サポートライン」、「健康管理室」という相談窓口があるので、社員は自分の相談内容に応じて選択し利用しています。『キャリアデザインサポート室』での相談は、自分で解決したいという思いを持っている人が多く、約8割は自己解決ができています。 社内の専任のキャリア・カウンセラー4名全員はSE経験者で、人材開発に携わった経験もあるので、研修の企画やインストラクターも行ないます。熟練レベルの2級キャリア・コンサルティング技能士試験の有資格者で専門性をもっています。 <支援に対する従業員の反応、満足度等> (1)職業発達課題にあわせたキャリア研修で行動変容へ 現在90%の社員がキャリア研修を受講し、「キャリア」を自分のものとして捉えるようになりました。研修評価も、5段階で4.5以上の高い評価で、8割以上の人が、キャリア研修の効果を感じています。「振り返りのいい機会になり、課題も見えた」、「強みや価値観などを見直す機会になった」、「人間関係が希薄になる傾向があったが、見直すきっかけになった」、「マネープランで、トータルなキャリアプランを考える機会になった」、「定年を迎えるにあたっては、総合的なプラン設計の重要性を感じた」という意見が多くあります。研修受講後に自ら行動をおこしている人が増えています。 (2)面談で自己効力感を高め、モチベーションアップ 専任のキャリア・カウンセラーは3年目、4年目、11年目社員の必須の面談に加え、キャリア研修受講1年後には希望者にキャリアフォロー面談を実施しています。面談は約80分ですが、個々の課題に対応することで、「じっくりと話す機会になった」、「アドバイスや情報提供がよかった」など、面談を受けたことに対する満足度もあがっています。キャリア・カウンセラーは、面談では過去の実績や経験から、本人が気づかないスキルや特性を見いだし、フィードバックをします。そのことで自己効力感も高まり、自分のモチベーションの源泉も確認できるようです。 そのほか、ベテラン層への支援の強化、役職離任後や定年後を加味した支援、若手層のメンタルヘルス強化や現場で抱えている課題に対しての協力要請があります。その都度、専門性を生かして、個別に対応しています。 (3)面談結果を上司に公開することが組織活性化への一歩 相談者の問題が個人だけで解決できない場合は、環境・組織に介入することもあります。職場から意見収集を行ない、情報分析し改善や提案を行なっています。 2008年から実施した必須の面談は事業部別の傾向を分析して、経営層や幹部職に報告をしていました。しかし、社員への育成には、個々の詳細な情報がほしいという要望もあり、2010年からは、面談者個人の情報を本人の了承のもと公開しています。それが、「管理職への報告&ヒアリング」です。(別紙4)公開する内容は、入社3年目、4年目、11年目社員の必須の面談でのキャリアに関する情報で、できること(CAN)、期待されていることや役割(MUST)、やりたいこと(WANT)を整理した内容です。9割の人は、上司である課長、部長、本部長に公開を了承しています。 幹部職も、「報告&ヒアリング」の実施を肯定的に捉えていて、部下や職場状況の把握にとどまらず、自分のマネジメントスタイルの検証にも役立っているようです。また幹部職は日頃言えないことを話せる場でもあり、自分で話して自分で解決する姿も見受けられます。 『キャリアデザインサポート室』は第三者の中立な立場として、個人の面談内容を上司に公開することで、“社員と上司をつなぐ橋渡し”の役割をしています。 上記のように専門のキャリア・コンサルタントが、専門知識をいかし職業発達課題にあわせた企画や面談を行ない、「個」と「組織」との共生の成果が出始めています。 <支援による効果、成果(業績との関係など)> (1)キャリア開発のKeyは幹部職と社員のオープンな関係づくり 社員とキャリア・カウンセラーとの面談結果(Can、Must、Want)を幹部職に報告することで、幹部職と社員で実施する年1回の「キャリア面談」を効果的に進めることになっています。幹部職には社員の話をじっくり聞く姿勢が芽生え、社員と将来への思いや意識を共有化するようになってきました。コミュニケーションがとれ、オープンな人間関係づくりができ信頼関係も生まれています。 また、幹部職には社員にどのような目標を設定し、経験をつませて成果をあげさせるかなどのマネージメントを振り返る機会にもなっています。その結果は、各事業部の業績向上にもつながっているようです。 (2)若手社員の高い定着率 昨今、大学卒の3割以上が3年以内に離職すると言われていますが、当社は、若手社員の定着率が高く、5年目で9割です。新人の採用数は、年度により異なりますが、内定者の時から、内定者フォロー教育を実施し、入社後も技術研修や能力開発の実施、自己啓発や資格取得への推進にも力をいれています。仕事を通してのスキル取得や、お客様や上司との人間関係構築をとおして、社員は成長実感をもっていて、それが定着率としてあらわれている結果だと思われます。 (3)社員の自律と組織の活性化 キャリア研修や面談をとおして、社員は「キャリア」に関しての意識が醸成されてきました。 『SSLキャリアデザイン制度』では、6つのレベルがあり、その上位3つのレベルは社内認定を行なっています。Platinum(全社認定)、Gold(全社認定)、Silver(事業本部内での認定)で、認定開始から5年になり、Platinum、Gold、Silverとして約300名が認定されており、プロジェクトマネージャー、ITエンジニア、アプリケーションエンジニアなどの職群の社員が職場で活躍し、成果を上げています。Silverとして認定を受けた社員は、Silver合宿研修や、Silver研修コミュニティ活動をとおして、部門を超えた人材交流や情報交流があり、それが組織の活性化にもつながっています。 また自己啓発を含めた資格取得も積極的に行なっており、全社で公的資格やベンダー系の資格など約4700の資格を取得しており、1人当たり平均4つの資格を取得しています。 (4)キャリア形成と“自分らしい”生き方を選択 社員は自分のキャリアを真剣に考えるようになり、ローテーションの希望もでてきました。弊社はSE職の単一業務ですが、システム開発、インフラ構築、セキュリティ業務、ソリューション業務など特性もあり、経験を生かして次のステップアップを望む人がでてきました。2010年に「申告制JOBチャレンジ制度」を導入し、業種の変更や、職場異動をする人が増えました。 また、45歳以上には「セルフ・プロデュース制度」という異業種への社外転身制度も導入しました。その支援を使い、自分が本当にやりたいことの実現にむけて転身した人もでてきました。 自分の遣り甲斐や価値観を明確して、5年、10年後のキャリアを考え“自分らしい”生き方を選ぶようになっています。 |
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若手社員のモチベーション維持・向上に力を入れてきた経緯もあり、若手社員のキャリアフォローは定着してきました。しかし、中堅以上の社員に対してのフォローはまだ十分とはいえません。多忙な上、私生活の変化も大きい30代の社員、ユングのいう「人生の午後」の時期にさしかかっているベテラン層の40代、仕事に忙殺され、気がつけば数年後に役職離任や定年を迎える50代、65歳以降の働き方を模索する60代、その人たちへの支援は今後の課題であると思っています。 そのためには、「マネー」「健康」「キャリア」の3本柱の教育を各層に広げていくこと、ベテラン層には65歳以降も働くことを視野にいれた市場状況の情報提供やキャリアのフォロー面談を強化していく予定です。 よい仕組みや人事制度ができ、理解ある上司のもとで、よい経験のできる環境にあっても、個人の意欲がなければ成長はできません。「最大のモチベーションは個人の成長意欲」であるといわれるように、基本は個人の意識であり、仕事や社会を通しての成長になります。しかし、予定どおりに人生や職業生活を歩むことは困難であり、ライフステージや置かれた状況に応じて方向転換や新たな進路選択が必要になることもあります。個人のアイデンティティが崩れた時にメンタルヘルスの不調をきたすとまで言われています。 個人を支えるのは、「専門性」、「良好な人間関係」、「働く意欲」という3つの要素であり、ライフキャリアに関する問題解決、支援のために有効なのが、キャリア支援であると思っています。社員が「イキイキ働く組織づくり」をするために組織全体の改善の支援をする予定です。 |
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【会長奨励】 | |||||||||||||||
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