新型コロナウイルス最前線


第10回
IHEAT(アイ・ヒート)で保健所に専門家を応援派遣
~保健師、看護師、医師などの登録派遣制度で体制強化~

 

世界中で大問題となっている新型コロナウイルス感染症。本連載では、その動向や対策などを紹介しており、今回は、対策の要となる保健所の体制強化について、厚生労働省の担当者が解説します。併せて、「コロナ禍の雇用・女性支援PT」のマザーズハローワーク視察の模様とマスクの正しい着用等の啓発動画についてお伝えします。


 

——新型コロナウイルス感染症対策の要となっている全国の保健所。その役割と現状について教えてください。

五十嵐●日本では、コレラや結核等の感染対策をはじめとする公衆衛生課題への対応のため、1900年代初めには地域における相談所が設置され、1937年の保健所法の制定後も、一貫して地域住民の健康や公衆衛生の向上に取り組んできました。戦後はまだ、日本人の死因の一位は結核だったことをご存じでしょうか。その後、人口構造や疾病構造の変化で、公衆衛生課題に応じて、保健所の効率化を図ってきた経緯もあります。
 今回の新型コロナウイルス感染症においても、全国の保健所は地域の実情に応じた迅速な対応を行っています。保健師等の専門職による感染源の特定をするための積極的疫学調査など、貴重な疫学データを確保することも重要な役割です。

近藤●死因や健康問題が、感染症からがんや生活習慣病にシフトしていく過程で、保健所や保健師の役割も検診業務が主になるなど変化してきました。そのため、保健師の数は増えてはいるものの、保健所で感染症対策に従事する保健師よりも、自治体で検診業務に従事する保健師のほうが多くなっており、新型コロナウイルス感染症の流行に際し、人員配置の問題が生じました。


——コロナ禍での保健所の体制整備は、どのように行われたのでしょうか。

五十嵐●新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、通常の保健所の人員体制では対応できないことが予測されたため、昨年6月に、全庁的な応援体制の構築を含めた保健所の即応体制の整備を進めました。昨年8月には保健所の人員体制の強化の一つとして、感染拡大時に即座に対応できるように体制を整備するため、保健師等の専門職の増員が不可欠であると認識し、都道府県単位での専門人材派遣の仕組みとして「IHEAT」を創設しました。

近藤●IHEATは、保健師や看護師、医師等の専門職が事前に登録し、感染症の流行が拡大している保健所に応援に行くものです。今年3月時点で3,000人以上の登録がありました。
 登録時には、応援に行ける地域を事前に選んでもらい、必要時には、その地域の保健所に応援に行きます。保健所としても、土地勘があり、地域の言葉や文化がわかっている人が応援に入るのは大きな助けになります。

五十嵐●保健師や看護師、公衆衛生医師等の専門職であれば登録でき、疫学調査等の技術的な研修なども各自治体で計画しており、国も財源支援をしています。研修ツールは既にHPで一般公開していますので、ご関心のある方は登録前でもご視聴いただくことが可能です。感染症が発生した際に、お住まいの地域で、一人でも多くの専門職の方々にご活躍いただきたいと思います。

近藤●コロナ禍のなかで、時に危険な目にあいながらもそれを顧みず、深夜早朝まで休みなく働いてきた全国の保健所職員には多くの人が感謝しています。だからこそ、このIHEATを活用してほしいです。



IHEATについて

 


<コロナ禍の雇用・女性支援PTアクションレポート>
女性の仕事と子育ての両立を応援!マザーズハローワーク東京視察
~きめ細かい就職支援サービスを提供し、女性の就職をサポート~


今年2月に発足した「コロナ禍の雇用・女性支援プロジェクトチーム」では、6月25日の第5回目の会合で取り組みに関する報告書(7月2日公表)をまとめ、7月5日には、子育て中の女性等の就職支援を行っている「マザーズハローワーク東京」を視察しました。


 マザーズハローワークは、仕事と子育ての両立をめざし、就職を希望する子育て中の女性を主な対象として2006年4月に設置。子ども連れでも来所しやすい環境を用意しています。

 主なサービス内容として、①担当者制によるマンツーマンの伴走型支援、②仕事と子育てが両立しやすい求人情報の収集・提供、③再就職を目的とした託児付きセミナー等きめ細かな就職支援を行っています。現在は、全国204拠点(ハローワークに設置しているマザーズコーナーを含む)で展開しています(2021年度)。コロナ禍においてはオンラインでの相談受付などにも取り組んでいます。

 今回の視察では、仕事と子育てが両立しやすい求人の展示や、託児付きセミナーについて説明を聞き、キッズスペースを備えた個室相談ルームや保育士を配置したチャイルドコーナーを確認しました。

 視察メンバーからは「マザーズハローワークがこれほど手厚い支援で、雇用につなげられ喜ばれていることを初めて知った。もっと認知度を高めていくべきではないか。敷居が高いと思われているようでもあるので、気兼ねなく来所してもらえるような広報ももっとすべきではないか」「求人開拓に当たっては、子育て女性のニーズを訴えるだけでなく、育児中の女性の、時間の制約による生産性の高さなど、雇用のメリット・魅力もアピールできると、マッチングの効率化や多様化を進めることができるのではないか」など、マザーズハローワークの支援に対する感想があがりました。加えて、マザーズハローワークが提供する保育サービス情報や就職支援に関するデータの分析・活用などについても意見がありました。

 視察後、大隈厚生労働大臣政務官は「しっかり支援の目詰まりをとっていく、あるいは、きちんと求めておられる方に届けていくということを更に強くしていきたい」とコメントしました。

 また、チームリーダーである三原厚生労働副大臣は「自分が職をなくし、一番困っているときに、ここが心の拠り所になってくれて、仕事だけではなくて色んな相談にのってもらえる、マザーズハローワークというのは本当に素晴らしいなと視察で感じることができました。
 女性のデジタル技能の学び直しや再就職の支援、ひとり親に対する職業訓練など、全国のハローワークに加えて、子育て中の女性などに特化したこのマザーズハローワークも支援の一翼を担うものと考えていますので、是非ご利用いただけたらなと思っております」とコメントしました。

コロナ禍の雇用・女性支援プロジェクトチーム

マザーズハローワーク・マザーズコーナー

 



「マスクの正しいつけ方」動画(政府インターネットテレビ)

ポスターダウンロード
 


 

出  典 : 広報誌『厚生労働』2021年8月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省