第3章 労働時間・賃金等の動向

2024年の月間総実労働時間は、働き方改革1の取組の更なる進展を背景に減少し、2024年の年次有給休暇の取得率は、過去最高を更新した。
 現金給与総額は、所定内給与及び特別給与の伸びがけん引し、4年連続で増加した。実質賃金においては、減少率は縮小したが、物価上昇を背景に、3年連続で減少した。一般、パートそれぞれの実質賃金は3年ぶりにマイナスから脱した。賃上げについては、現行の調査方法となった1999年以降、改定額、改定率ともに過去最高を更新した。
 本章では、労働時間、賃金及び春季労使交渉等の動向について概観する。

第1節 労働時間・休暇等の動向

月間総実労働時間は一般労働者、パート労働者ともに減少

従業員5人以上規模の事業所における労働者一人当たりの2024年の月間総実労働時間は、働き方改革の取組の進展やパートタイム労働者の増加等を背景に、前年差1.4時間減の、137.0時間であった(第1-(3)-1図)。産業別にみると、2024年は「情報通信業」「金融業,保険業」以外の産業で月間総実労働時間が減少した(第1-(3)-2図)。就業形態別にみると、2024年の一般労働者の月間総実労働時間は、前年差1.1時間減の162.3時間となった(第1-(3)-3図)。パートタイム労働者の月間総実労働時間は、前年差0.7時間減の80.2時間となり、高齢者の労働参加の進展等を背景に、前年より減少幅が拡大した。
 また、男女別の月間総実労働時間の推移をみると、前年から、男性は2.0時間減少し、152.1時間となり、女性は0.4時間減少し、120.5時間となった(第1-(3)-4図)。女性の正規雇用労働者が増加していることなどから、月間総実労働時間の減少幅は女性の方が小さくなったと考えられる。

週60時間以上就労雇用者の割合は、引き続き低下

週60時間以上就労している雇用者(以下「週60時間以上就労雇用者」という。)の割合は、2024年4月から時間外労働の上限規制がこれまで適用除外となっていた「建設業」及び「運輸業,郵便業」等に適用となったことから、2024年は4.6%と、前年より0.4%ポイント低下し、2020年以降で低下幅が最も大きくなった(第1-(3)-5図)。男女別にみると、正規雇用労働者の割合が高い男性の減少幅が、女性よりも相対的に大きくなっている。また、年齢別にみると、週60時間以上就労雇用者の割合は全ての年齢階級で10%を下回っており、最も割合が高い年齢階級は、「45~54歳」の5.7%、低い年齢階級は「15~24歳」及び「65歳以上」の2.2%となった。過去10年間をみると、週60時間以上就労している雇用者の割合が高い年齢階級ほど、低下幅は大きい傾向となっている。

年次有給休暇の取得率は、比較可能な1984年以降、過去最高を更新

年次有給休暇の取得率は上昇傾向であり、男女計、男性、女性いずれについても、比較可能な1984年以降、過去最高となった(第1-(3)-6図(1))。
 企業規模別の年次有給休暇の取得率は、全ての企業規模で上昇した(第1-(3)-6図(2))。過去10年間の推移をみると、企業規模の大きい企業ほど、年次有給休暇の取得率は高い傾向にあるが、2024年調査では企業規模「30~99人」の取得率が6割を超えるなど、中小企業で年次有給休暇の取得率の上昇幅が大きくなっている。産業別の年次有給休暇の取得率をみると、過去10年間において、特に「医療,福祉」「卸売業,小売業」について年次有給休暇の取得率が大きく上昇した(第1-(3)-6図(3))。

第2節 賃金の動向

就業形態計の現金給与総額は4年連続で増加

労働者一人当たりの賃金である現金給与総額2の推移をみると、2024年の就業形態計の現金給与総額は、前年比2.8%増と、4年連続で増加した(第1-(3)-7図(1)(2))。
 就業形態別に現金給与総額をみると、一般労働者の現金給与総額は、所定内給与及び特別給与の増加がけん引し、前年比3.2%の増加となった。パートタイム労働者の現金給与総額は、所定内給与が過去10年間で最大の増加幅となった。パートタイム労働者の時給は前年比4.3%増加の1,343円となり、過去10年間でみても増加傾向である(第1-(3)-8図)。この背景には、最低賃金の引上げや同一労働同一賃金の取組の進展のほか、労働力需給の引き締まりが考えられる。
 2024年の現金給与総額の伸び率の寄与度分解をみると、高齢者の労働参加の進展等によるパートタイム比率が上昇したことから「パートタイム労働者比率による要因」がマイナスに寄与したが、33年ぶりの高水準となった春季労使交渉の賃上げや経常利益拡大などを背景として、「一般労働者の所定内給与による要因」が前年比1.6%、「一般労働者の特別給与による要因」が前年比1.2%のプラスの寄与となった(第1-(3)-9図)。
 また、現金給与総額の推移を月次でみると、所定内給与及び特別給与の伸びがけん引し、36か月連続で前年同月比増加となった(第1-(3)-10図)。一般労働者については45か月連続で前年同月比増加、パートタイム労働者については38か月連続で前年同月比増加となった。
 さらに、産業別3の現金給与総額は、全ての産業で増加した(第1-(3)-11図)。事業所規模別の現金給与総額は、全ての事業所規模で増加し、特に、事業所規模「5~29人」の現金給与総額は前年比2.5%上昇し、33年ぶりの上昇幅となった(第1-(3)-12図)。このように、2024年は産業、事業所規模にかかわらず、現金給与総額の伸びがみられ、全体として力強い動きとなった。

実質賃金は就業形態計では3年連続減少したが、一般、パートでは3年ぶりにマイナスから脱した

実質の現金給与総額(以下「実質賃金」という。)を年次でみると、前年比0.3%減と、3年連続で減少した(第1-(3)-13図)。しかし、就業形態別の実質賃金を年次でみると、一般労働者が前年比0.0%、パートタイム労働者が前年比0.7%増と3年ぶりにマイナスから脱した。一般労働者及びパートタイム労働者の実質賃金がマイナスから脱したにもかかわらず、就業形態計の実質賃金が減少した理由としては、第1-(3)-9図でみたように、パートタイム労働者比率が上昇したことによるものである。
 実質賃金の推移を月次でみると、2024年6月には、特別給与が増加したことから、実質賃金は27か月ぶりに前年同月比増加となった(第1-(3)-14図)。その後、実質賃金は8~10月は前年同月比減少、11~12月は再び前年同月比増加となった。実質賃金の伸び率は、増減を繰り返しながら推移しているが、物価上昇の影響を受けつつ、2024年全体でみるとマイナス幅が縮小となった。就業形態別の実質賃金を月次でみると、一般労働者の実質賃金は、2024年6月には、27か月ぶりに前年同月比増加となった後、8~9月には前年同月比減少、10月には横ばい、11~12月には再び前年同月比増加と、就業形態計とほぼ同様の動きがみられた。パートタイム労働者の実質賃金については、就業形態計、一般労働者よりも高い伸び率で推移しており、2024年は、9月を除き、5~12月まで前年同月比で増加した。

所定内給与は全ての事業所規模で前年から増加、産業別では幅広い産業で前年比2%を超える伸び率

事業所規模別の所定内給与をみると、全ての事業所規模で前年から増加した(第1-(3)-15図)。事業所規模によっては前年比2%を超える伸び率となっており、春季労使交渉による賃上げの着実な実施など、賃上げの動きが広がっていることがうかがえる4。「30~99人」については、前年比3.4%増と他の事業所規模よりも高い伸び率となっているが、この要因としては、パートタイム労働者比率の上昇率が他の事業所規模と比較して相対的に弱かったこと5が考えられる。産業別の所定内給与をみると、幅広い産業で前年比2%を超える伸び率となった。
 また、所定外給与の動向を確認する。事業所規模別の所定外給与をみると、事業所規模「500人以上」を除き所定外給与が減少した。産業別にみると、時間外労働の上限規制によって所定外労働時間が減少した影響により、「建設業」「運輸業,郵便業」などの産業について減少したが、「製造業」「情報通信業」などの産業については増加した。事業所規模「500人以上」の事業所については、「製造業」「情報通信業」などが所定外給与を押し上げたと考えられる。

特別給与は、全ての事業所規模で前年から増加、産業別では幅広い産業で前年から増加

事業所規模別の特別給与の伸び率をみると、全ての事業所規模で特別給与は前年比プラスとなっており、特に事業所規模「5~29人」では前年比12.1%増加し、他の事業所規模よりも高い伸びであった(第1-(3)-16図)。事業所規模「5~29人」については、他の事業所規模よりも所定内給与の伸び率が低いことなどから、特別給与による賃金上昇の寄与が高いと考えられる。産業別の特別給与の伸び率をみると、好調な企業収益を背景に、幅広い産業で前年比プラスとなっており、伸び率が10%を超える産業は「建設業」「卸売業,小売業」「宿泊業,飲食サービス業」「医療,福祉」であった。

労働分配率は、企業の資本金規模にかかわらず、ほぼ横ばい

マクロ経済における労働分配率6については、賃金は景況の動きよりも遅れて反応することから、労働分配率は、好況時の初期には低下し、不況時の初期には上昇しやすいことに留意が必要である。
 企業の資本金別の労働分配率7をみると、過去10年間における景気拡大局面では、全ての資本金規模において労働分配率は低下傾向であった(第1-(3)-17図)。2020年は感染拡大による景気後退の影響により企業収益が悪化し、労働分配率は大幅に上昇した8が、2021年以降は、経済社会活動の活発化に伴い、企業収益が増加したことで、労働分配率は低下傾向となった。2024年には、いずれの資本金規模の企業でも労働分配率はほぼ横ばいで推移した。
 産業別の労働分配率をみると、労働集約的な産業ほど労働分配率が高い傾向があることが分かる(第1-(3)-18図)。このため、2024年第Ⅳ四半期(10-12月期)の「医療、福祉業」の労働分配率(後方4四半期移動平均)は82.8%、「建設業」の労働分配率(後方4四半期移動平均)は67.6%、「製造業」の労働分配率(後方4四半期移動平均)は59.3%となっているなど産業により労働分配率の水準にばらつきがみられているが、推移をみると2024年は幅広い産業でほぼ横ばいとなった。

第3節 春季労使交渉等の動向

2024年春季労使交渉では賃上げ率は5.10%、33年ぶりの高水準

春季労使交渉とは、多くの企業の労働組合9が、毎年2~4月頃にかけて、賃金引上げ等を中心とする労働条件の要求を各企業等(使用者)に提出する、団体交渉を指す。通常、個別企業が労使交渉を行う前に、労働者側は、日本労働組合総連合会(以下「連合」という。)等の労働組合の全国中央組織が、使用者側は(一社)日本経済団体連合会(以下「経団連」という。)といった経済団体が、それぞれ交渉の方針を示している。賃金交渉にあたっては、2月頃に、主に大手企業の労働組合が要求を提出し、3月に交渉を行い、回答が3月終わり頃にとりまとめられる。中小企業については、大手企業交渉結果を踏まえ交渉が開始され、7月頃まで交渉が行われ、最終的な結果がとりまとめられるのは7月以降となる。
 政府としては、政労使の意見交換の実施や三位一体の労働市場改革10等、賃上げを実現するための環境整備に取り組んでいる。
 賃上げ集計結果をみると、2024年は、厚生労働省が2024年8月2日に公表した「令和6年民間主要企業春季賃上げ要求・妥結状況」では、妥結額は17,415円、賃上げ率は5.33%となった(第1-(3)-19図)。また、経団連の「2024年春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果」11では5.58%となった。連合が2024年7月3日に公表した「2024春季生活闘争第7回(最終)回答集計結果」では5.10%と33年ぶりの高水準となった。

2024年の賃金の改定額、改定率ともに、現行の調査方法となった1999年以降で過去最高

春季労使交渉の結果を踏まえた2024年の賃金改定の状況12について、一人当たり平均賃金の改定額は11,961円、改定率は4.1%と、現行の調査方法となった1999年以降13、改定額、改定率ともに最高値となった(第1-(3)-20図)。5,000人以上規模企業の改定額は15,121円、改定率は4.8%となるなど、大きく賃金を増加させたほか、100~299人規模企業においても改定額は10,228円、改定率は3.7%となるなど、底上げが行われたものの、改定額、改定率ともに企業規模によって差がみられた14

賃上げ実施企業割合は約9割

平均賃金の引上げを行った企業の割合及びベースアップ15の実施状況について、2024年の賃上げ実施企業割合16をみると、春季労使交渉などを反映して、前年に引き続き高い割合となり、企業規模計で91.2%に達している(第1-(3)-21図(1))。企業規模別にみると、「5,000人以上」の規模の企業においては賃上げを実施又は実施予定と回答した割合が99.1%に達した。また、「100~299人」の規模の企業においては「5,000人以上」の規模よりも10%ポイント近く低い水準となっており、企業規模が小さいほど実施割合が低い。
 2024年の一般職のベースアップ実施企業割合17をみると、春季労使交渉などを反映して、前年を上回る5割以上の企業が実施又は実施予定であり、比較可能な2004年以降で過去最高となった(第1-(3)-21図(2))。企業規模別にみると、「5,000人以上」の規模の企業においては78.5%であるが、「100~299人」規模企業は47.2%と、約30%ポイントの差があり、企業規模が大きいほど実施割合が高い結果となった。
 2024年においては、賃上げやベースアップを実施又は実施予定の企業割合が前年よりも更に上昇している18ものの、規模の小さい企業は大きい企業よりも実施割合が低く、改定率についても、規模の大きい企業よりも小幅となっている。春季労使交渉などを通じて、大幅な賃上げが続いているが、持続的な賃上げに向けては、我が国の大半を占める中小企業の労働者の賃上げやベースアップの動きがより活発になり、賃金の増加を国民全体で実感できるようになっていくよう、引き続き、政労使一体となった取組が望まれる19

夏季一時金及び年末一時金は、3年連続で増加

夏季・年末一時金妥結状況の推移をみると、2024年の夏季一時金の妥結額は89.9万円、前年比6.29%増、年末一時金の妥結額は89.1万円、前年比4.93%増と、ともに3年連続で増加した(第1-(3)-22図)。

2025年の春季労使交渉においては、賃上げ分3%以上、定昇相当分を含め5%以上を要求

2024年の春季労使交渉においては、33年ぶりの大幅な賃上げとなり、ベースアップを実施する企業も多数見受けられた。ここでは、2025年の春季労使交渉の動向について、労働者側、使用者側の双方から確認する。
 まずは、労働者側の動向を確認する。連合は、2024年11月28日に「2025春季生活闘争方針」を公表し、「みんなでつくろう!賃上げがあたりまえの社会!」というスローガンの下に、「「人への投資」をより一層積極的に行うとともに、国内投資の促進とサプライチェーン全体を視野に入れた産業基盤強化などにより、日本全体の生産性を引き上げ、国際収支を改善し、持続的な生活向上の実現をめざす」こと等に取り組むこととしており、サプライチェーン全体で生み出した付加価値の適正分配の取組について言及している。その上で、「賃上げ要求」としては、「すべての働く人の生活を持続的に向上させるマクロの観点と各産業の「底上げ」「底支え」「格差是正」の取組強化を促す観点から、全体の賃上げの目安は、賃上げ分3%以上、定昇相当分を含め5%以上として、その実現をめざす。」とし、前年の水準と同程度の賃上げ要求を掲げている。また、大手労組との格差是正を図るため、「中小組合については格差是正分を積極的に要求する。」とし、「賃金実態が把握できないなどの事情がある場合には、格差是正分1%以上を加え、18,000円以上・6%以上を目安とする」、とした。
 次に、使用者側の動向を確認する。経団連は、2025年1月に公表した「2025年版経営労働政策特別委員会報告」において、賃金引上げについて、「ここ2年間で醸成されてきた賃金引上げの力強いモメンタムを社会全体に「定着」させ、「分厚い中間層」の形成と「構造的な賃金引上げ」の実現に貢献することが、経団連・企業の社会的責務といえる。その達成の鍵は、働き手の7割近くを雇用する中小企業と、雇用者数全体の4割近くを占める有期雇用等労働者の賃金引上げが握っている。とりわけ、中小企業における賃金引上げには、適正な価格転嫁と販売価格アップが不可欠である。」「物価上昇が継続する中、働き手の実質的な生活水準の維持と企業における人材の確保・定着の観点から、月例賃金(基本給)の引上げにあたっては、「賃金・処遇決定の大原則」に基づき、制度昇給(定期昇給、賃金体系・カーブ維持分)の実施はもとより、ベースアップ(賃金水準自体の引上げ、賃金表の書き換え)を念頭に置いた検討が望まれる。」としている。
 こうした中、企業側が、2025年3月12日に、多くの民間主要労働組合に対して、賃金、一時金等に関する回答が示された。足下の急激な物価上昇などに対応するため、基本給を底上げするベースアップや賞与で、労働組合側の要求に軒並み満額か要求を上回る回答があった。
 連合が7月に発表した「2025春季生活闘争第7回(最終)回答集計結果」によれば、加重平均での月例賃金は、賃上げ額16,356円、賃上げ率5.25%となった。組合員数300人未満の集計でみても、月例賃金は賃上げ額12,361円、賃上げ率は4.65%と高水準であり、大企業にとどまらず、中小企業にまで、賃上げの力強い動きに広がりがみられる。企業によっては、労働組合の要求を上回る回答やパートタイム労働者の時給引上げを回答するケースもあり、賃上げの力強い動きがみられる。

労働組合員数は4年連続で減少したが、パートタイム労働者の労働組合員数は過去最高

労働組合員数及び推定組織率の推移をみると、2024年は、労働組合員数991万人と3年連続で1,000万人を割り、推定組織率は16.1%となり、ともに4年連続で低下した(第1-(3)-23図(1))。また、2024年は、パートタイム労働者の労働組合員数は過去最高の146万人、推定組織率は8.8%となった(第1-(3)-23図(2))。

コラム1–4 賃金の実質化について

毎月勤労統計調査では、令和7(2025)年3月分から、実質賃金の国際比較の観点から統計ユーザーの利便性を高めるため、消費者物価指数の「総合」を用いて計算した実質賃金を追加的に公表することとした20
 2024年の消費者物価指数「持家の帰属家賃を除く総合」で実質化した実質賃金は前年比0.3%減となり、消費者物価指数「総合」で実質化した実質賃金は同0.0%となる(コラム1-(4)-1図)。

注釈

  1. 1働き方改革に関しては、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」(平成30年法第71号。以下「働き方改革関連法」という。)により、時間外労働の上限規制(大企業は2019年4月施行 中小企業は2020年4月施行)、年5日の年次有給休暇の確実な取得(2019年4月施行)等が定められ、順次施行された。
  2. 2「現金給与総額」とは、「きまって支給する給与(以下「定期給与」という。)」と「特別に支払われた給与(以下「特別給与」という。)」の合計額である。「定期給与」とは、労働協約、就業規則等によってあらかじめ定められている支給条件、算定方法によって支給される給与を指し、「所定内給与」と、所定の労働時間を超える労働に対して支給される給与、休日労働、深夜労働に対して支給される給与である「所定外給与」の合計額である。一般的に、「所定内給与」は、一般労働者において短期間で大幅な増減がみられることはあまりないが、「所定外給与」は所定外労働時間の変動に従って増減することから、企業の経済活動の状況等を反映して増減する。「特別給与」とは、賞与、期末手当等の一時金等や諸手当、あらかじめ就業規則等による定めのない突発的な理由等に基づき支払われた給与等の合計額を指し、企業の業績に従って大きく変動することから、経済の動向を反映して水準が変動する傾向にある。
  3. 3本節で産業に着目する場合は、「建設業」「製造業」「情報通信業」「運輸業,郵便業」「卸売業,小売業」「宿泊業,飲食サービス業」「医療,福祉」を中心に確認することとする。
  4. 4中小企業においては、感染症の拡大後には業績の改善を伴わなくても賃上げを実施するようになったという分析もある(井上(2025))。こうしたことを背景に中小の事業所も含め、全ての事業所において所定内給与が前年から増加したことも考えられる。
  5. 5所定内給与を基に算出したパートタイム労働者比率は、事業所規模「5~29人」については前年差0.57%ポイント上昇の40.29%、「30~99人」については前年差0.01%ポイント上昇の30.50%、「100~499人」については前年差1.01%ポイント上昇の23.77%、「500人以上」については前年差0.28%ポイント上昇の15.74%となった。
  6. 6労働分配率とは、企業の経済活動によって生み出された付加価値のうち、労働者がどれだけ受け取ったのかを示す指標であり、分母となる付加価値、特に営業利益は景気に応じて変化の度合いが大きいことから、景気拡大局面においては低下し、景気後退局面には上昇する特徴がある。内閣府「国民経済計算」又は財務省「法人企業統計」から算出する方法が一般的であるが、統計により付加価値の水準やトレンドが異なることから、労働分配率は一定の幅を持ってみる必要がある。また、労働分配率は産業による水準の差異が大きく、長期的には産業構造の変化が労働分配率に影響することにも留意する必要がある。なお、ここでは、資本金規模別や産業別の動向及び景気局面の動向について着目して分析を進めていくため、財務省「法人企業統計調査」の四半期別調査により算出した労働分配率(分母の付加価値額=営業利益+人件費+減価償却費)を用いる。なお、数値の動きは後方4四半期移動平均を用いている。
  7. 7資本金規模が小さい企業ほど、付加価値額が低いことから労働分配率が高くなる傾向がある。中小企業の賃上げの動向が注目されているが、中小企業の労働分配率が高い要因は、付加価値額が低いことが考えられる。
  8. 8企業の利益が減少した場合、企業は利益の減少割合ほど、従業員や役員の給料等を減少させないことから労働分配率が上昇する。
  9. 9労働組合は、企業別労働組合が中心であるものの、それらが集まった産業別労働組合や、さらに、それらが集まった連合といった全国的中央組織をつくり、毎年の春季労使交渉を主導している。
  10. 10三位一体の労働市場改革は、リ・スキリングによる能力向上支援、個々の企業の実態に応じた職務給の導入、成長分野への労働移動の円滑化を指す。
  11. 112024年の春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果は、原則として従業員500人以上、主要22業種の大手企業244社のうち回答が把握できた135社の金額について集計した妥結結果である。
  12. 12「賃金引上げ等の実態に関する調査」は、中小企業や労働組合のない企業も含む民間企業(常用労働者100人以上。)について調査しており、第1-(3)-19図における従業員500人以上大手企業を調査対象としている「春季労使交渉・大手企業業種別妥結結果」、労働組合のある企業を対象としている「春季生活闘争(最終)回答集計結果」の春季労使交渉の調査と比較して、調査範囲が広い。
  13. 131998年調査以前は「一人当たり平均賃金」が増額した企業のみ調査しているため単純比較できない。
  14. 14なお、改定後の賃金を支給する企業の割合は、5月頃から徐々に上昇し、8月頃には約9割の企業に反映されることとなる。(付1-(3)-1図)。
  15. 15「ベースアップ」は、賃金表(学歴、年齢、勤続年数、職務、職能などにより賃金がどのように定まっているかを表にしたもの)の改定により賃金水準を引き上げることをいう。これに対し、あらかじめ労働協約、就業規則等で定められた制度に従って行われる昇給のことで、一定の時期に毎年増額することを「定期昇給」という。毎月勤労統計調査における現金給与総額は、マクロの賃金データであるため、その伸び率は「ベースアップ」の影響を受けやすく、各労働者の「定期昇給」による賃金増の影響は受けづらいことに留意が必要。
  16. 16「一人当たり平均賃金を引き上げた・引き上げる」企業の割合。
  17. 17賃金の改定を実施又は予定している企業及び賃金の改定を実施しない企業のうち定期昇給制度がある企業について集計したもの(一般職については、定期昇給制度がある企業の割合は、企業規模計で2024年86.3%)。
  18. 18物価高騰を受け、賃金改定の決定にあたり、物価の動向を重視する傾向がみられる。(付1-(3)-2図
  19. 192025年においては、政府は、春季労使交渉の開始に先立って政労使の意見交換を行い、政府は物価上昇を上回る持続的な賃上げの実現に向け、地方における官公需や中小企業と中小・小規模間の転嫁も含め、労務費の価格転嫁の徹底に一層全力で取り組むとした。また、厚生労働省では、賃上げの流れが地方や中小企業にも波及していくよう、2025年1~3月にかけて全国の都道府県労働局において「地方版政労使会議」を開催した。
  20. 202025年4月18日に、有識者からなる、内閣官房「賃金・所得統計の在り方に関する検討会」が開催された。この検討会では、実質賃金の国際比較をより容易にするとの観点から、欧米諸国の取組事例を踏まえ、
    • 現行の実質賃金系列に加え、消費者物価指数の「総合」で実質化した系列を追加的に算出し、ユーザーの利便性が高まる形で、統計情報の充実を図ることが適当、
    • 追加的に公表される「総合」で実質化した系列については、可能な限り、遡及系列を整備すべき、といった意見が示された。これに則り、2025年3月分から「総合」で実質化した系列を公表している。