第2章 雇用・失業情勢の動向

2020年の雇用・失業情勢は、感染症の影響により幅広い産業で経済活動が抑制されたことで、有効求人倍率の大幅な低下、就業者数の大幅な減少、完全失業率の上昇のほか、非労働力人口の増加などの動きがみられた。2021年に入り、経済社会活動が徐々に活発化し、日本経済が感染症の影響から持ち直しつつある中、完全失業率は2021年平均で2020年から横ばいの2.8%、有効求人倍率は前年差0.05ポイント低下の1.13倍となった。一方、経済社会活動や個人消費は一進一退の状況が続いており、雇用・失業情勢の改善状況も一定ではない。また、経済社会活動の抑制措置が「宿泊業,飲食サービス業」など、特定の産業分野に集中的に行われてきたことなどから、その改善状況は産業ごと、職種ごと等に細分化してみると様相が異なる。
 本章では、こうした2020年から続く感染症の影響からの改善状況を含め、2021年の雇用・失業情勢について概観する。

第1節 雇用・失業情勢の概観

雇用・失業情勢は長期的に改善傾向で推移していたところ、2020年は感染症の影響により弱い動きとなったが、2021年は新規求人に持ち直しの動きがみられた

雇用・失業情勢の改善傾向と感染拡大後の動向について概観する。
 第1-(2)-1図は、新規求人倍率、有効求人倍率、正社員の有効求人倍率及び完全失業率の推移である。リーマンショック後の2009年以降、新規求人倍率、有効求人倍率、正社員の有効求人倍率は長期的に上昇傾向、完全失業率は低下傾向が続いており、2019年平均で有効求人倍率は1.60倍、完全失業率は2.4%であった。しかし、2020年の感染症の影響による景気減退から、いずれの数値も悪化し、2020年平均では有効求人倍率は1.18倍、完全失業率は2.8%となった。
 2021年は、完全失業率は2%台後半を横ばいで推移し、年平均2.8%と、2020年に続き2019年より高い水準で推移した。また、有効求人倍率は年平均で1.13倍と、2019年平均及び2020年平均と比べて低い水準となり、雇用情勢に厳しさがみられた。一方、経済社会活動が徐々に活発化する中、長期的に続く人手不足の状況も背景に、新規求人に持ち直しがみられ、新規求人倍率は年平均で2.02倍となった。

雇用・失業情勢の持ち直しの状況は地域によって異なる

有効求人倍率及び完全失業率の状況を地域別にみていく。
 第1-(2)-2図の(1)により、地域別の有効求人倍率の推移をみると、2020年第Ⅰ四半期(1-3月期)以降、いずれの地域でも有効求人倍率は大きく低下したが、2021年にはおおむね持ち直しの動きがみられた。一方、「北海道」「南関東」「近畿」は持ち直しの動きが弱く、横ばい圏内で推移した(付1-(2)-1表)。
 同図の(2)により、地域別の完全失業率の推移をみると、2020年第Ⅰ四半期(1-3月期)以降、完全失業率はいずれの地域でも上昇した。2021年に入ると、おおむね低下傾向に転じたものの、「北海道」「南関東」「近畿」は、他の地域と比較して高い水準で推移した(付1-(2)-2表)。

2021年の我が国の就業率は約6割であり、就業者のうち約半数が正規雇用労働者、約3割が非正規雇用労働者である

次に、我が国の労働力の概況をみていく。
 第1-(2)-3図により、2021年の我が国の労働力の概況をみると、我が国の15歳以上人口に占める就業者の割合は約6割であり、就業者のうち、約半数が正規雇用労働者、非正規雇用労働者は3割程度となっている。

第2節 就業者・雇用者の動向

労働市場への参加は感染症の影響を受けて停滞しているが、長期的にみると着実に進展している

本節では、人々の労働参加の状況や就業者・雇用者の動向についてみていく。
 第1-(2)-4図により労働力に関する主な指標の長期的な推移をみると、2012年~2019年にかけて我が国の労働参加が進んだことが分かる。この間、労働力人口、就業者数、雇用者数は増加し、非労働力人口は減少を続けた。その結果、労働力率は、2019年には62.1%と2012年から3.0%ポイント上昇した。他方で、自営業者・家族従業者数は減少した。また、完全失業者数は、リーマンショック後の2009年以降着実に減少した。しかし、2020年の感染症の影響により、幅広い産業で経済活動が抑制されたこと等から、労働力人口、就業者数、雇用者数は減少し、完全失業者数、非労働力人口は増加した。
 2021年は、経済社会活動は徐々に活発化したが、感染状況に応じて緊急事態宣言の発出等による行動制限が断続的に行われた。労働力人口は6,907万人(前年差5万人増)、就業者数は6,713万人(同3万人増)、雇用者数は6,016万人(同11万人増)、完全失業者数は195万人(同3万人増)、非労働力人口は4,171万人(同26万人減)、休業者数は208万人(同50万人減)と、一部では持ち直しがみられるものの、依然として雇用情勢に感染症の影響が及んだ。一方、労働力率は62.1%と2019年と同程度に回復し、感染症の影響により停滞しているものの、長期的にみると労働市場への参加は着実に進んでいることがうかがわれる。

2021年の雇用情勢は、感染状況により経済社会活動の抑制が繰り返される中で停滞がみられたが、感染状況の改善やワクチン接種の進展等に伴い、年後半にかけて改善がみられた

次に、感染症の影響による雇用情勢の変化について、2019年以降の月次データ(季節調整値)を確認することで詳細にみていく。
 第1-(2)-5図により、2019年~2021年の我が国の労働力に関する主な指標の動きについて月次データでみると、最初の緊急事態宣言が発出され、感染拡大防止のために経済活動が大幅に抑制されたことにより、2020年4月~5月に労働市場に大きな変化が生じたことが分かる。この間、労働力人口、就業者数、雇用者数が減少し、非労働力人口が増加した。休業者数は2020年4月~5月に大幅に増加した一方で、各企業の雇用維持に向けた努力や政策による雇用の下支え効果もあり、完全失業者数や完全失業率の大幅な増加・上昇はみられなかった。
 その後、徐々に経済社会活動が再開される中で、労働力に関する指標も緩やかに持ち直しの動きが続いた。2020年12月には、労働力人口は6,926万人、就業者数は6,719万人、雇用者数は6,014万人、非労働力人口が4,168万人と、着実な持ち直しがみられた一方で、完全失業率は、2020年10月の3.1%まで上昇した後、2%台後半程度の水準を横ばい圏内で推移した。
 2021年に入ると、1月に緊急事態宣言が発出された。2021年の緊急事態宣言は、対象地域が限定的であったことに加え、飲食店に対する営業時間短縮要請等、特定の産業分野に対する集中的な経済社会活動の抑制措置が中心であったこと等から、最初の緊急事態宣言が発出された2020年4月~5月と比較して、各指標への影響は限定的となったが、1月~3月の間、労働力人口、就業者数が減少、非労働力人口が増加するなど、最初の緊急事態宣言が発出された2020年4月~5月以来の各指標の悪化がみられた。
 その後、2021年4月に再び緊急事態宣言が発出され、9月末に緊急事態宣言が全面解除となるまで、対象地域においては断続的な経済社会活動の抑制措置が続いた。緊急事態宣言下となった4月~9月にかけての雇用情勢の動向をみると、新規感染者数が比較的少なかった5月~7月の間は、労働力人口、就業者数、雇用者数はいずれも増加傾向、非労働力人口は減少傾向で推移したが、7月~9月の間は、いずれの指標も悪化した。また、休業者数や完全失業者数は、この間横ばいで推移した。経済社会活動の抑制措置が行われる期間が長引き、足下の経済情勢に弱さがみられるようなったことから、7月以降は雇用情勢が悪化したものとみられる。
 緊急事態宣言が全面解除となった10月以降は、ワクチン接種の堅調な進展も相まって、経済社会活動が徐々に活発化し、雇用情勢にも一貫して持ち直しの動きみられた。
 このように、2021年は、2020年と比較すると感染症の拡大による雇用情勢への影響は少なくなったものの、感染状況の悪化に伴い緊急事態宣言等の発出による経済社会活動の抑制が繰り返され、足下の経済情勢に弱さがみられると、雇用情勢が停滞する期間もあった。一方、ワクチン接種の進展などにより経済社会活動が活発化していく中で、特に、緊急事態宣言が全面解除となった10月以降、雇用情勢は改善傾向となったといえる。

感染症の拡大による雇用・失業情勢への影響はリーマンショック期と比較すると限定的だが、感染状況による変動は大きい

ここで、感染症の拡大が雇用情勢に及ぼしている影響の特徴を、リーマンショック期における雇用情勢と比較することで確認していく。
 第1-(2)-6図は、それぞれのショックの発生月1を基準時点(基準月)としてその後の変化の状況を比較したものである。各指標の水準について比較してみると、ショック発生後当初は、感染拡大期には、最初の緊急事態宣言が発出された2020年4月~5月を中心に、就業者数の急激な減少とそれに伴う非労働力人口の増加、休業者数の急増がみられた。リーマンショック期においては、就業者数の減少や非労働力人口の増加が比較的継続的にみられたのに対し、感染拡大期においては、各指標の一時的な悪化後はおおむね改善傾向で推移していることが分かる。また、完全失業者数の増加幅は、各企業の雇用維持の努力や雇用調整助成金等による下支え効果もあり、リーマンショック期と比べて低く抑えられた。
 他方、リーマンショック期と比較すると、感染拡大期における各指標は、ショック発生からある程度月数が経過した時点でも比較的大きく増減していることが特徴的である。感染症の再拡大による緊急事態宣言等の発出や、それらの解除により、経済社会活動の抑制・再開が繰り返されることで、雇用・失業情勢が敏感に受けた影響がうかがえる。人手不足の状況や直近の経済情勢の違い等があるため、一概にはいえないものの、労働力に関する主要指標からみると、感染症の拡大局面における雇用・失業情勢の悪化は、リーマンショック期と比較すると総じて限定的であるといえるが、今後も感染症の動向やそれに伴う経済社会活動の抑制の状況が雇用・失業情勢に及ぼす影響については注視していく必要がある。

2021年の労働力率は前年差0.1%ポイント増の62.1%となった。女性は全ての年齢階級で、男性は「15~24歳」及び60歳以上の年齢層で上昇

次に、労働力率の推移についてみていく。労働力率とは、労働力人口が15歳以上人口に占める割合を示した指標で、人々の労働参加の状況を表す。
 第1-(2)-7図により、男女別・年齢階級別の労働力率の推移をみると、2013年以降、女性や60歳以上の年齢層を中心に労働参加が進んできたことが分かる。労働力率は、2019年までは、女性の全ての年齢階級において、男性の「15~24歳」と60歳以上の年齢層において上昇傾向にあった。しかし、2020年には感染症の影響により、女性を中心に労働力率の低下の動きがみられた。
 2021年の労働力率は、感染状況により経済社会活動が抑制された影響で労働参加の停滞もみられた一方で、感染症の拡大を踏まえた働き方や企業の事業活動が定着し、ワクチン接種等の感染症対策も進展したことから、男女計で前年差0.1%ポイント増の62.1%、男女別にみると男性が同0.1%ポイント減の71.3%、女性が同0.3%ポイント増の53.5%であった。2019年の数値と比較しても、男女計では同水準、男女別にみても男性が2019年差0.1%ポイント減、女性が同0.2%ポイント増となり、感染症の影響による減退から、2019年とほぼ同水準にまで労働力率は回復したことが分かる。

2021年は正規雇用労働者では増加、非正規雇用労働者では減少がみられた。正規雇用労働者は特に女性で堅調に増加

続いて、雇用者の動向について雇用形態の観点からみていく。
 第1-(2)-8図は、役員を除く雇用者の数の推移を雇用形態別にみたものである。景気変動の影響を受けやすい非正規雇用労働者の数は、2009年にはリーマンショックによる景気減退の影響から一時的に減少がみられたものの、2019年までは増加傾向にあった。男女別にみると、男性、女性ともに非正規雇用労働者数の増加傾向が続いており、特に、女性において大きく増加していた。また、正規雇用労働者の数は、全体では2015年以降増加傾向にあり、男女別にみると、女性では2015年以降一貫して増加傾向が続いているが、男性では2019年に減少がみられた。
 2020年には感染症の拡大による景気減退の影響により、男性及び女性の非正規雇用労働者において、減少がみられた。2021年は、感染症の影響から経済社会活動の抑制措置が行われた期間が長引いたが、正規雇用労働者は、特に女性の増加がみられたことから、全体では前年差31万人増の3,587万人となり、非正規雇用労働者は、男性、女性ともに減少がみられ、同25万人減の2,075万人となった。

人口に占める正規雇用労働者の割合は男女ともに一貫して上昇傾向が続いている

さらに、第1-(2)-9図により年齢階級別・雇用形態別に人口に占める雇用者の割合の推移をみると、人口に占める正規雇用労働者の割合は男性、女性ともに2020年まで「25~34歳」などの幅広い年齢層で上昇している。一方、非正規雇用労働者の割合は2019年までは男女ともに主に60歳以上の年齢層で上昇してきたが、「25~34歳」では男女ともに低下傾向にある。感染症の拡大による景気減退の影響から非正規雇用労働者の減少がみられた2020年には、その割合が、女性や60歳以上の年齢層を中心に低下した。
 2021年は、正規雇用労働者の割合は、引き続き、男女ともに幅広い年齢層で上昇がみられたが、非正規雇用労働者の割合は、女性の60歳以上の年齢層で上昇がみられたものの、男女ともにおおむね横ばい又は低下傾向がみられた。

「宿泊業,飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」では依然として雇用者数の回復が弱いが、「情報通信業」「医療,福祉」等では雇用者数の増加がみられた

続いて、2019年以降の月次データ及び四半期データから雇用者数の動向をみることで、感染症の影響を踏まえた雇用情勢の動きを確認する。
 まず、雇用者数の動向を産業別にみていく。第1-(2)-10図により、2020年、2021年の産業別の雇用者数の動向を2019年同月差でみてみる2
 2020年は、最初の緊急事態宣言が発出された2020年4月以降、「宿泊業,飲食サービス業」「卸売業,小売業」「生活関連サービス業,娯楽業」等の対人サービス業を中心に雇用者数が減少し、2020年8月~9月にかけては「製造業」の雇用者数の減少幅が拡大した。一方、「情報通信業」「医療,福祉」は、2019年同月を上回る水準で推移しており、特に「医療,福祉」は2020年11月以降増加幅が拡大している。
 2021年に入ると、2020年に雇用者数の減少がみられた産業のうち、「卸売業,小売業」「製造業」では減少幅の縮小がみられるものの、それ以外の産業では2019年同月を下回る水準が続いている。緊急事態宣言下において飲食店への営業時間短縮要請や外出自粛要請が断続的に行われていたことから、「宿泊業,飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」においては雇用者数の回復が特に弱く、減少幅の拡大がみられる月もある。一方、「情報通信業」「医療,福祉」の雇用者数は2020年に続き2019年同月を上回る水準が続いた。
 以上から、「宿泊業,飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」といった対人サービス業では、2021年に入っても依然として感染症の拡大及びそれに伴う経済社会活動の抑制による影響が続き、雇用者数の回復はみられない一方、「情報通信業」「医療,福祉」等では一貫して雇用者数の増加がみられるなど、産業ごとに様相が異なっていることが分かる。

正規雇用労働者は女性を中心に堅調に推移しているものの、非正規雇用労働者数は男女ともに感染症の影響が依然として及んでいる

次に、雇用形態別の雇用者数の推移をみていく。第1-(2)-11図により、男女別・雇用形態別に2019年以降の雇用者数の動向を四半期データによりみると、最初の緊急事態宣言が発出された2020年第Ⅱ四半期(4-6月期)~2021年第Ⅰ四半期(1-3月期)にかけて、男女ともに非正規雇用労働者が減少した。一方、男性の正規雇用労働者には大きな増減はみられず、女性の正規雇用労働者は、それ以前からの増加傾向が続き、堅調に推移した。
 2021年第Ⅱ四半期(4-6月期)以降は、引き続き、女性の正規雇用労働者が増加傾向で推移した。一方、非正規雇用労働者は、第Ⅱ四半期(4-6月期)及び第Ⅲ四半期(7-9月期)には、女性で前年同期差で増加に転じたが、第Ⅳ四半期(10-12月期)は男女ともに非正規雇用労働者の減少がみられた。また、2019年の同時期の雇用者数の水準には戻っておらず、感染症の拡大及びそれに伴う経済社会活動の抑制措置による影響が依然として及んでいることが分かる。

「宿泊業,飲食サービス業」「卸売業,小売業」「生活関連サービス業,娯楽業」などで女性の非正規雇用労働者を中心に雇用者数が大きく減少した

さらに、第1-(2)-12図により、産業別に男女別・雇用形態別の雇用者数の前年同期差をみると、2021年第Ⅰ四半期(1-3月期)に「宿泊業,飲食サービス業」「卸売業,小売業」「生活関連サービス業,娯楽業」等で女性の非正規雇用労働者を中心に大きく減少した。「卸売業,小売業」では第Ⅱ四半期(4-6月期)及び第Ⅲ四半期(7-9月期)に回復したが、緊急事態宣言下の経済社会活動の抑制が続いた影響もあり、「宿泊業,飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」では、引き続き男女ともに非正規雇用労働者を中心に減少傾向が続いている。
 一方、「情報通信業」では正規雇用労働者を中心に、「医療,福祉」では女性の正規雇用労働者・非正規雇用労働者ともに雇用者数が増加している。そのほか、「建設業」では男性の正規雇用労働者・非正規雇用労働者ともに減少がみられた。
 雇用者計をみると、産業ごとに差異がみられた。前年同期差では、「製造業」「運輸業,郵便業」「卸売業,小売業」では回復傾向にある中、2019年の同時期の水準と比較すると、「建設業」「製造業」「宿泊業,飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」で継続してマイナスとなっており、特に「宿泊業,飲食サービス業」のマイナスが特に大きくなっている。一方、「情報通信業」「医療,福祉」は、前年同期差、2019年同期差のいずれでみても、雇用者数は増加している。これは、感染症の影響下において、テレワーク勤務やオンライン会議が促進されたことや、医療や介護等の現場での負担が増大したことから、「情報通信業」「医療,福祉」の人材の需要が拡大した影響があると考えられる。

感染症の影響下でも非正規雇用労働者から正規雇用労働者への転換は堅調

ここまで、感染症の影響により、非正規雇用労働者が減少している一方で、正規雇用労働者は堅調に増加していることをみてきた。正規雇用労働者の伸びの堅調さは、非正規雇用労働者からの転換の動きにも現れている。第1-(2)-13図は、15~54歳の年齢層で過去3年間に離職した者について「非正規雇用から正規雇用へ転換した者」の人数から「正規雇用から非正規雇用へ転換した者」の人数を差し引いた人数の動向をみたものである。これによれば、「非正規雇用から正規雇用へ転換した者」と「正規雇用から非正規雇用へ転換した者」の差は、2013年以降一貫して年平均でプラスとなっており、労働市場において正規雇用労働者への需要が底堅いことがうかがえる。2021年においてもその傾向は続いており、年平均でプラス12万人となっている。

不本意非正規雇用労働者割合は引き続き低下傾向となっている

続いて、非正規雇用労働者の動向について詳細にみていく。第1-(2)-14図は、非正規雇用労働者に占める不本意非正規雇用労働者(現職に就いた主な理由が「正規の職員・従業員の仕事がないから」と回答した非正規雇用労働者をいう。以下同じ。)の人数とその数が非正規雇用労働者に占める割合(以下「不本意非正規雇用労働者比率」という。)の推移である。男女計でみると、2013年以降、不本意非正規雇用労働者数はおおむね減少傾向で推移し、不本意非正規雇用労働者比率も、2013年第Ⅰ四半期(1-3月期)の19.9%から2021年第Ⅳ四半期(10-12月期)には10.6%まで低下した。男女別にみると、2021年は、不本意非正規雇用労働者数は、男女ともに減少しており、不本意非正規雇用労働者比率は、2021年平均で男性が17.1%、女性が7.9%となっている。

2021年は個人の都合により非正規雇用を選択する者は増加に転じた一方で、2020年に続き「家事・育児・介護等と両立しやすいから」非正規雇用を選択する者は女性を中心に減少した

不本意非正規雇用労働者が近年おおむね減少傾向にあることをみたが、実際に非正規雇用労働者として働いている者は、どのような理由で非正規雇用を選択しているのだろうか。
 第1-(2)-15図は、非正規雇用を選択している理由別に非正規雇用労働者数の動向をみたものである。2019年までの状況をみると、「正規の職員・従業員の仕事がないから」という理由で非正規雇用を選択する不本意非正規雇用労働者が減少し、「自分の都合のよい時間に働きたいから」等の個人の都合により非正規雇用を選択する者が増加傾向にあったことが分かる。2020年には、感染症の影響により小中学校の一斉休校が行われるなど、感染症の拡大により個人の働き方に影響が生じたことから、「家事・育児・介護等と両立しやすいから」という理由で非正規雇用を選択していた労働者は女性を中心に大幅に減少した。
 2021年は、「自分の都合のよい時間に働きたいから」等の個人の都合により非正規雇用を選択する者は増加に転じたが、「家事・育児・介護等と両立しやすいから」という理由で非正規雇用を選択していた労働者は女性を中心に減少しており、2020年に続き個人の働き方に感染症の影響が及んでいることが分かる。

障害者の雇用者数・実雇用率は過去最高を更新した

障害者の雇用状況について第1-(2)-16図によりみてみる。2021年の障害者の雇用者数は、前年比3.4%増の59.8万人となり、18年連続で過去最高となった。また、2021年の実雇用率は、前年差0.05%ポイント増の2.20%と10年連続過去最高となった。
 雇用障害者数のうち、身体障害者は前年比0.8%増の35.9万人、知的障害者は同4.8%増の14.1万人、精神障害者は同11.4%増の9.8万人となっており、特に、精神障害者の伸び率が近年大きくなっている。

外国人労働者数は過去最高を更新するも、増加率は減少した

最後に、第1-(2)-17図により、外国人労働者の状況についてみると、2021年10月末の外国人労働者数は約172.7万人となり、2007年に外国人雇用状況の届出が義務化されて以来過去最高を更新したものの、感染症の拡大による外国人の入国制限等の影響から、増加率は0.2%と鈍化した。在留資格別にみると「身分に基づく在留資格」が最も多く、次いで「専門的・技術的分野の在留資格」「技能実習」が多い。前年比でみると、「特定活動」「専門的・技術的分野の在留資格」の増加率が大きかったが、「技能実習」「資格外活動」では減少率が大きかった。国籍別にみると、ベトナムが最も多く、次いで中国、フィリピンが多い。

第3節 求人・求職の動向

2021年は新規求人数に回復傾向がみられる中、有効求人数が増加したものの、有効求職者数も年後半に増加がみられ、有効求人倍率は横ばいで推移した

本節では求人や求職者の動向についてみていく。
 第1-(2)-18図により、労働力需給の状況を示す指標である新規求人倍率、有効求人倍率、新規求人数、新規求職申込件数、有効求人数及び有効求職者数の動向について概観する。
 まず、労働力需要を示す新規求人数、有効求人数については、2009年以降長期的に増加傾向にあったが、感染症の拡大による景気減退の影響から、最初の緊急事態宣言が発出された2020年4月~5月を中心に急激かつ大幅に減少した。2020年7月以降は、経済社会活動が徐々に活発化し、長期的に続く人手不足の状況も背景に、新規求人数に緩やかな回復傾向が続き、有効求人数にも持ち直しの動きが続いている。その結果、2021年平均では、新規求人数は前年比4.1%増、有効求人数は同1.6%増とやや増加がみられた。
 一方、労働力供給の状況を示す指標である新規求職申込件数3、有効求職者数については、2009年以降長期的には減少傾向で推移している。感染症の影響による大幅な増加は新規求職申込件数ではみられなかったものの、有効求職者数は2020年6月~7月に大幅に増加した。2021年は、新規求職申込件数は横ばいで推移した一方で、有効求職者数は年後半に増加がみられた。その結果、2021年平均では、新規求職申込件数は前年比0.5%増、有効求職者数は同6.6%増と増加がみられた。
 以上の労働力需要、労働力供給の状況から、求職者1人に対する求人件数を表す求人倍率の状況をみると、2021年の新規求人倍率は年平均で前年差0.07ポイント上昇の2.02倍となり、月別にみても回復傾向がみられた。一方、有効求人倍率は、有効求人数が増加傾向で推移したものの、年後半には有効求職者数の増加も同時にみられたため、年平均で前年差0.05ポイント低下の1.13倍となり、月別でみても横ばいで推移した。
 次に、雇用形態別に求人・求職の動きをみていく。第1-(2)-19図により、正社員の求人・求職の動向をみてみる。新規求人数、有効求人数は、2009年以降増加傾向で推移していたが、2020年の感染症の拡大による景気減退の影響から、最初の緊急事態宣言が発出された2020年4月に新規求人数が大きく減少し、有効求人数も2020年は減少傾向で推移した。その後、新規求人数が徐々に持ち直しの動きが続く中で、2021年は有効求人数にも緩やかながら回復がみられた。その結果、2021年平均で、正社員の新規求人数は前年比5.8%増、有効求人数は前年比3.8%増と2020年の水準からの増加がみられたものの、2019年平均と比較するといずれも下回る水準となった。
 一方、正社員の新規求職申込件数、有効求職者数は、2009年以降長期的に減少傾向で推移しており、新規求職申込件数には感染症の影響による大幅な増加はみられなかったものの、有効求職者数は最初の緊急事態宣言が解除された後の2020年6月~7月を中心に大幅に増加した。その後は、新規求職申込件数が横ばいで推移する中、有効求職者数は2021年前半までは緩やかに減少していたが、年後半には増加がみられた。その結果、2021年は、年平均で正社員の新規求職申込件数は前年比2.2%減と減少したものの、有効求職者数は前年比4.2%増と増加しており、2019年平均と比較しても、新規求職申込件数は下回る水準となっている一方、有効求職者数は依然として2019年平均を上回る水準で推移している。
 2021年の正社員の新規求人倍率は、年平均で前年差0.11ポイント上昇の1.52倍と回復傾向がみられるが、有効求職者数の水準は減少せず、有効求人数も年後半に増加傾向がみられたことから、正社員の有効求人倍率は年平均で前年と同水準の0.88倍となった。
 次に、第1-(2)-20図により、パートタイムの求人・求職の動きをみてみる。パートタイムの新規求人数、有効求人数は、2009年以降長期的に増加傾向で推移していたが、2020年の感染症の拡大による景気減退の影響を受け、2020年4月~5月に新規求人数が大幅に減少、有効求人数も大幅に減少した。その後、新規求人数が緩やかな増加傾向で推移し徐々に持ち直していく中、有効求人数も増加傾向で推移し、2021年後半には強い持ち直しの動きもみられた。その結果、2021年平均では、パートタイムの新規求人数は前年比0.9%増、有効求人数は同2.0%減となったが、2019年の水準と比較するといずれも大きく下回っている。
 一方、パートタイムの新規求職申込件数、有効求職者数は、2009年以降長期的に減少傾向で推移しており、新規求職申込件数は2020年の感染症の影響による大幅な増加はみられなかったものの、有効求職者数は2020年6月~8月に大幅に増加した。その後は、新規求職申込件数が横ばいで推移する中、有効求職者数は2021年前半までは横ばいで、2021年後半には増加傾向がみられた。その結果、2021年平均では、パートタイムの新規求職申込件数は前年比5.9%増、有効求職者数は同11.1%増となり、2019年の水準と比較すると、新規求職申込件数はほぼ同水準となった一方で、有効求職者数は2019年の水準を依然として大きく上回る水準となっている。
 2021年のパートタイムの新規求人倍率は、年後半には回復傾向となり、年平均で前年差0.11ポイント低下の2.16倍となった一方で、有効求人倍率は、有効求人数、有効求職者数がいずれも増加傾向がみられたため横ばいで推移し、年平均で前年差0.15ポイント低下の1.14倍となった。

おおむね全ての産業で人手不足感が強まる動きとなっている

労働力需給の動向を産業別に詳しくみていく。まず、短観を用いて、第1-(2)-21図により、雇用人員判断D.I.の推移を産業別にみると、2019年には全ての産業で「不足」超であったところ、2020年は感染症の拡大による景気減退の影響を受けて、全ての産業で人員の不足感が弱まり、「宿泊・飲食サービス」「製造業」では「過剰」超に転じた。その後、2021年にかけて「宿泊・飲食サービス」以外の産業ではおおむね一貫して人員の不足感が強まっており、「製造業」も2021年には「不足」超で推移している。「宿泊・飲食サービス」については、感染状況やそれに伴う緊急事態宣言の発出等による行動制限の影響を受けて大きく変動し、2021年は営業時間短縮措置が長期間にわたって実施されていたことなどから、唯一「過剰」超の状態が続いていた。2021年12月調査の時点では「宿泊・飲食サービス」でも「不足」超に転じているが、今後も感染状況やそれに伴う経済社会活動の水準の変化に応じて動向を注視していく必要がある。

2021年の新規求人はおおむね増加傾向にあるが、産業により増加傾向に差がみられる

次に、求人の動向について、産業別、職業別に詳しくみていく。
 第1-(2)-22図は、新規求人の前年差の推移を産業別にみたものであるが、パートタイム労働者を除く一般労働者4(以下この章において「一般労働者」という。)、パートタイム労働者ともに新規求人数は2019年には前年差で減少に転じていたところ、2020年は、感染症の拡大による景気減退の影響により、全ての産業において求人数が減少した。雇用形態別でみると、一般労働者の新規求人数は、「サービス業(他に分類されないもの)」「製造業」「卸売業,小売業」「医療,福祉」等で、パートタイム労働者の新規求人数は、「卸売業,小売業」「宿泊業,飲食サービス業」「医療,福祉」「サービス業(他に分類されないもの)」等で大幅な減少がみられた。この結果、全体(パートタイムを含む一般労働者)の新規求人数では「卸売業,小売業」「サービス業(他に分類されないもの)」「宿泊業,飲食サービス業」「医療,福祉」「製造業」等で大幅な減少となった。
 2021年は、おおむね全ての産業で新規求人数は増加傾向にあり、一般労働者では「製造業」「サービス業(他に分類されないもの)」「建設業」等で、パートタイム労働者では「製造業」等で求人が増加している。「卸売業,小売業」「宿泊業,飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」等では緊急事態宣言の発出等に伴う行動制限が続いた影響から新規求人数の回復が弱く、産業により求人数の回復に差がみられる。

職業別の新規求人数についても回復状況に差がみられる

次に、第1-(2)-23図により、新規求人数の推移を職業別にみてみる。2019年には、パートタイムを除く常用労働者、常用的パートタイムともに減少に転じていた。2020年は、全ての職業において求人数が減少し、パートタイムを除く常用労働者については「サービスの職業」「専門的・技術的職業」「生産工程の職業」「事務的職業」「販売の職業」で、常用的パートタイムについては「販売の職業」「サービスの職業」「運搬・清掃・包装等の職業」で大幅に減少している。この結果、全体(常用労働者)の新規求人数では「サービスの職業」「販売の職業」「専門的・技術的職業」「生産工程の職業」等で大幅な減少となった。
 2021年は、いずれの職業でも求人数はおおむね回復傾向にあり、パートタイムを除く常用労働者、常用的パートタイムともに「生産工程の職業」「専門的・技術的職業」を中心に求人数が増加している。一方、パートタイムを除く常用労働者では、「サービスの職業」「販売の職業」、常用的パートタイムでは「販売の職業」「事務的職業」で新規求人数の回復が弱く、産業別と同様、職業別の新規求人数についても、職業間で回復に差がみられる。

「宿泊業,飲食サービス業」では新規求人数の回復が弱い状況が続いた

さらに、第1-(2)-24図により、産業別の新規求人数の動向を2019年同月差でみる5と、2020年1月以降おおむね全ての産業で新規求人数が2019年同月を下回る水準となっており、特に、「卸売業,小売業」「宿泊業,飲食サービス業」「医療,福祉」「製造業」の減少幅が大きかった。2021年は、年平均では2020年を上回る水準となり、「製造業」「医療,福祉」等は減少幅の縮小がみられたが、その他の産業は依然として回復が弱く、「宿泊業,飲食サービス業」では、減少幅が拡大している月もみられる。

新規学卒者の就職率・内定率は上昇傾向にあったが、2021年3月卒は低下、2022年3月卒においては一部大学新卒者を除き横ばいか上昇している

第1-(2)-25図により、新規学卒者の就職率及び就職内定率の推移を卒業区分別にみてみる。新規学卒者の就職率及び就職内定率は、リーマンショック期にいずれの区分でも低下した後、人手不足や景気拡大等を背景にしておおむね上昇傾向が続いていたが、感染症の影響により、2021年卒の新規学卒者の就職率は低下となった。2022年卒の新規学卒者の就職率は、高校新卒者は横ばい、短大新卒者及び専修学校(専門課程)新卒者では上昇したが、大学新卒者ではやや低下となった。

転職者数は2019年まで増加傾向が続いたが、2020年以降は減少傾向となっている

これまでにみた労働力需給の動向も踏まえ、労働移動の状況について、転職者(過去1年以内に離職経験のある就業者)の動向をみていく。第1-(2)-26図の(1)により、転職者数の推移をみると、リーマンショック期の2009年~2010年にかけて大幅に落ち込んだのち、労働力の需給の改善が進む中で2011年以降増加を続け、2019年は353万人となった。しかし、感染症の影響で2020年、2021年と減少が続き、290万人まで減少している。
 こうした転職者数の変動の背景をみるため、同図の(2)で前職の離職理由別の転職者数の推移(前年差)をみると、「より良い条件の仕事を探すため」という理由が労働力需給の動向を反映して大きく変動しており、雇用情勢が良好な時期に増加し、厳しい時期に減少している。また、転職者全体の動きは、「より良い条件の仕事を探すため」という理由による転職者の動向に結果的に左右されていることが分かる。他方、「会社倒産・事業所閉鎖のため」「人員整理・勧奨退職のため」「事業不振や先行き不安のため」という理由による転職者は、リーマンショック期の2009年のように、雇用情勢が厳しい時期に増加し、雇用情勢が良好な時期に減少する傾向がある。2020年以降についてみると、感染症の影響により、「人員整理・勧奨退職のため」という理由による転職者が増加した一方、「より良い条件の仕事を探すため」という理由による転職者が大きく減少したこと等により、転職者数は大きく減少している。

労働移動者の総数はおおむね全ての産業で減少がみられる

さらに、産業ごとの労働移動の動向についてみていく。
 まず、第1-(2)-27図により、どのような産業において労働移動(同一産業内、他産業間いずれも含む。)が活発な傾向にあるかをみてみる。同図の(1)は労働移動の多い主要10産業それぞれにおける労働移動者(過去1年以内に離職経験のある就業者。以下同じ。)の「送出数」と「受入数」について2013年から感染症の影響を受ける前の2019年までの平均の数を示したものである(同一産業内での移動を含む。)。これによると、「卸売業,小売業」「製造業」「医療,福祉」等で労働移動者の総数が多いことが分かる。「送出数」「受入数」の動向をみると、「宿泊業,飲食サービス業」「卸売業,小売業」等では送出数が受入数を上回る(送出超過)一方、「医療,福祉」「サービス業(他に分類されないもの)」「情報通信業」等では受入数が送出数を上回っている(受入超過)。
 続いて、同図の(2)により、2019年~2021年にかけての各産業における「送出数」「受入数」の変化をみると、労働移動者数全体の減少に伴い、おおむね全ての産業で「送出数」「受入数」ともに減少している。特に、2013年~2019年の平均の「送出数」「受入数」の水準からみると、「卸売業,小売業」「製造業」「宿泊業,飲食サービス業」では「送出数」「受入数」ともに比較的減少幅が大きく、「医療,福祉」「情報通信業」では比較的減少幅が小さい。

産業内、産業間の労働移動はいずれも全体的に減少しているが、一部の産業では産業内の移動が増加する動きもみられる

次に、第1-(2)-28図により、主な産業における同一産業内、他産業間における労働移動の状況についてみてみる。同図の(1)は、労働移動の多い主な産業における転職者の受入数のうち、2013年~2019年の平均の同一産業からの移動者、他産業からの移動者のそれぞれの割合をみたものである。これによると、「医療,福祉」「製造業」「宿泊業,飲食サービス業」等では比較的同一産業からの移動が多いのに対し、「サービス業(他に分類されないもの)」「生活関連サービス業,娯楽業」「運輸業,郵便業」等では他産業からの移動が比較的多いことが分かる。
 続いて、同図の(2)により、2019年~2021年の変化をみると、同一産業からの移動については「情報通信業」を除く産業で減少しており、「製造業」「宿泊業,飲食サービス業」での減少が大きい。他産業からの移動については「生活関連サービス業,娯楽業」を除く産業で減少しており、「製造業」で大きく減少し、「運輸業,郵便業」「卸売業,小売業」「宿泊業,飲食サービス業」等でも減少している。

産業間の労働移動は減少傾向にあるものの、一部の産業間では労働移動者が増加している動きもみられる

さらに、第1-(2)-29図により、産業間の労働移動の状況をみてみる。同図の(1)は、産業間で労働移動をした者について、現職の産業別に前職の産業(どの産業から移動してきたか)を2013年~2019年の平均でみたものである。これをみると、「製造業」や「卸売業,小売業」では他の産業からの移動を比較的多く受け入れていることが分かる。また、「卸売業,小売業」と「宿泊業,飲食サービス業」との間、「製造業」と「卸売業,小売業」との間で相互の移動が多いほか、「サービス業(他に分類されないもの)」から「製造業」や「卸売業,小売業」への移動も比較的多い。
 同図の(2)により2019年~2021年にかけての変化をみると、労働移動者全体の減少に伴い、多くの産業間で労働移動者が減少する中、「建設業」「情報通信業」「医療,福祉」では比較的産業間移動の減少は小さかった。また、「医療,福祉」から「教育,学習支援業」、「建設業」から「医療,福祉」など、労働移動者が増加する動きもみられる。

第4節 失業等の動向

完全失業率は感染拡大前の水準には戻っていない

最後に、失業や非労働力人口の動向についてみていく。
 第1-(2)-30図は、完全失業率の推移を男女別・年齢階級別にみたものであるが、2018年までは男女ともにおおむね低下傾向にあった。特に、「15~24歳」の年齢階級で完全失業率が大きく低下していたが、2020年の感染症の影響により、男女ともに幅広い年齢層で完全失業率の上昇がみられた。
 2021年は、感染症の影響が依然として残る中で、完全失業率は男女計と女性では横ばい、男性はやや上昇し、年平均では男女計で2.8%、男性は3.1%、女性は2.5%であった。年齢階級別にみると、男性は34歳以下の若年層や「55~59歳」「65~69歳」の比較的年齢の高い年齢階級で、女性は55歳以上の年齢層で完全失業率が上昇している。

非自発的理由による完全失業者数の水準は依然として高い

続いて、第1-(2)-31図により、年齢階級別・求職理由別の完全失業者数の推移をみると、2013年~2019年にかけて、全ての求職理由においておおむね減少傾向で推移した。特に、非自発的な理由や新たに求職活動を始めた完全失業者は65歳未満の年齢層、自発的な理由は45歳未満の年齢層で、それぞれ減少傾向で推移していた。2020年の感染症の拡大による景気減退の影響を受け、幅広い年齢層で、特に、非自発的な理由や、新たに求職活動を始めた完全失業者数が増加した。
 2021年は、感染症の影響が依然として残る中で、45歳未満の年齢層では新たに求職活動を始めた完全失業者が、45歳以上の年齢層では非自発的な理由による完全失業者数がそれぞれ増加している。
 また、非自発的な理由による完全失業者の内訳の推移をみると、2013年~2019年にかけて、「勤め先や事業の都合」「定年又は雇用契約の満了」のいずれの理由も減少傾向にあったが、2020年の感染症の影響によりいずれの理由も増加しており、特に、「勤め先や事業の都合」による完全失業者が大幅に増加した。
 2021年には、「定年又は雇用契約の満了」、「勤め先や事業の都合」による完全失業者はともにおおむね2020年と同程度の水準であった。

感染症の影響が長引く中、長期失業者が増加している

最後に、第1-(2)-32図により、失業期間別の完全失業者数の推移をみると、「失業期間1年以上」の完全失業者(以下「長期失業者」という。)の数、「失業期間1年未満」の完全失業者(以下「1年未満失業者」という。)の数はともに2019年まで幅広い年齢層で減少傾向が続いていた。2020年の感染症の拡大による景気減退の影響から完全失業者数が増加し、1年未満失業者の数が全ての年齢階級で増加した。
 2021年は、完全失業率は2%台後半を横ばいで推移する中、1年未満失業者の数は幅広い年齢層で減少傾向にあるものの、感染症の影響が長引く中で、失業期間の長期化の傾向がみられ、長期失業者数は「65歳以上」を除く全ての年齢階級で増加している。その結果、年齢計では、1年未満失業者の数が前年差9万人減の125万人であったのに対し、長期失業者の数は同14万人増の67万人となった。

長引く感染症の影響により完全失業者の水準は高止まりしているほか、非労働力人口の水準は感染拡大前の水準に戻った一方で、「65歳以上」で増加がみられた

2020年の感染症の拡大以降の状況を更に詳細に確認する。ここでは、完全失業者数とともに、感染拡大初期に特徴的であった非労働力人口の動向についても併せてみていく。第1-(2)-33図により、男女別・年齢階級別の完全失業者数の動向を2019年同月差でみると、2020年4月以降、感染症の影響による景気減退から、男女ともに完全失業者が増加しており、女性よりも男性の方が増加幅は大きい。2021年は、年平均では男女ともに2020年と同程度の水準となっており、大幅な減少はみられていないが、男性では「25~34歳」「35~44歳」を中心に、女性では「25~34歳」を中心に、2019年同月からの増加幅が縮小している。
 第1-(2)-34図により、男女別・年齢階級別の非労働力人口の動向を2019年同月差でみると、最初の緊急事態宣言が発出された2020年4月以降、全国的に様々な分野で経済社会活動が抑制された影響により、女性を中心に非労働力人口が増加したが、年後半には減少傾向がみられた。2021年は、男女ともに45歳未満の年齢層を中心に減少となったことから、年平均で男性は2020年と同程度の水準、女性は2020年を下回る水準となった。一方、男女ともに「65歳以上」の年齢階級で非労働力人口の増加がみられるなど、感染リスクを避けるために就労を控える動きもあると考えられる6
 感染拡大後の完全失業者数と非労働力人口の推移を併せてみると、最初の緊急事態宣言が発出された2020年4月からの感染拡大初期において、完全失業者数、非労働力人口はともに増加したものの、2020年後半~2021年にかけて非労働力人口は元の水準に戻り、女性については感染拡大前の2019年と比較しても少ない水準で推移している。一方で、感染症の影響が長引くにつれ、完全失業者数は、感染拡大前の水準と比較して依然として高い水準で推移しているほか、「65歳以上」の年齢階級で非労働力人口が増加しているといった状況も表れており、引き続き注視が必要である。

コラム1–2 労働市場における「ミスマッチ」の状況について

第2章でみてきたように、2021年の雇用情勢は、年後半にかけて行動制限等が解除され経済社会活動が活発化していく中、求人数や雇用者数等の指標が改善し、雇用情勢の底堅さがみられた。一方、完全失業率はおおむね横ばいで推移し、第4節でみた長期失業者の増加といった課題も顕在化した。
 企業の労働力需要が高まっている局面においては、失業に関する課題も解消方向に向かうが、実際の労働市場においては、求人と求職者の間でのマッチングが円滑に行われず、両者のニーズが一致しないミスマッチが生じ得る。このような雇用のミスマッチは、求人と求職者の間の職業能力や労働条件の不一致や、これらの情報の非対称性などによるものであり、失業期間の長期化とも重要な関係があると考えられることから、労働市場政策を検討する上でも、近年の労働経済学研究でも重要な領域である。
 本コラムでは、労働市場のミスマッチ研究を紹介するとともに、感染拡大前後の我が国の労働市場におけるミスマッチの状況をみていく。

(1)労働経済学における「ミスマッチ」の概念の整理

労働経済学において、「ミスマッチ」という概念は多義的に用いられており、様々な文脈で用いられる「ミスマッチ」の概念を整理した川田・佐々木(2012)によると、「ミスマッチ」が用いられる文脈は大きく2つに分けられ、それぞれの文脈で表す意味が異なる。
 一つ目の意味のミスマッチは、労働市場全体からみたとき、産業や職業ごと、または地域間で分割されている複数の労働市場間7で労働者が適切に分配されていないことを表す。すなわち、ある労働市場では労働力供給が過剰で失業が発生しているにもかかわらず、別の労働市場では労働力が不足している状態が、労働市場全体からみたときにミスマッチの生じている状態と呼ばれる。こうしたミスマッチが生じている場合、職業紹介を通じた労働力需給の調整や、職業訓練等を通じたスキルの付与等により、労働市場間で労働力の再分配を行うことが、労働市場政策として支持される。
 二つ目の意味のミスマッチは、個別の企業と労働者の属性間に相性の不一致が生じている状態である8。企業と労働者が雇用契約を結ぶ際、企業が労働者のスキル、能力、選好などを完全に把握することや、労働者が企業や職務内容との相性、職場の雰囲気などを入職前に完全に把握することは困難であり、こうした情報の非対称性から生じる齟齬により企業の生産性や労働者の能力発揮などに悪影響が及ぼされている状態がミスマッチと呼ばれる。こうしたミスマッチを解消するためには、転職などの際の情報の非対称性の緩和(企業情報の開示など)を通じて、外部労働市場を活用しやすくすることで、より自らに合う企業で労働者が能力発揮できるよう支援すること等が労働市場政策として支持されることとなる。
 上記でみてきたように、労働経済学における「ミスマッチ」の概念は、用いられる文脈によって異なり、どのような意味を持って用いられているかにより支持される労働市場政策も異なる。労働市場における「ミスマッチ」を考える上で、このような文脈による概念の違いを丁寧に理解することは重要である9

(2)感染症の影響下における我が国の労働市場の「ミスマッチ」の状況

我が国の労働市場について、UV分析等から感染症の影響下のミスマッチの状況を分析していくとともに、近年のミスマッチ測定において主流となっているSahin et al(2014)によって開発された手法を土台として推計したミスマッチ指標をみていく10

①UV分析

まず、UV曲線の状況をみていく。UV曲線(またはベバレッジ曲線とも呼ぶ。)とは、労働力供給を失業率(U)11、労働力需要を充足率(V)で表したときに、その組み合わせによって描かれる曲線を指す。一般的に、欠員率が上昇(低下)すると、失業率は低下(上昇)しやすいことから、縦軸に失業率(U)、横軸に欠員率(V)をとると、失業率(U)と欠員率(V)の関係はおおむね右下がりの曲線として描かれる。このとき、失業率は需要不足失業率と構造的・摩擦的失業率12に分解できるため、UV曲線の動きを分析すること
 (以下「UV分析」という。)により、労働力需給の動きや構造的なミスマッチの状況を分析することができる。
 UV分析においては、失業率(U)と欠員率(V)の組み合わせが、右下にシフト(失業率が低下、欠員率が上昇)するとき人手不足の拡大を、左上にシフト(失業率が上昇、欠員率が低下)するとき需要不足失業の増大を示している。また、UV曲線と45度線の交点は労働力需要(欠員)と労働力供給(失業)が一致した状態であるので、45度線上の失業率は需要不足のない状況での失業率、すなわち構造的・摩擦的失業率となる。そのため、失業率(U)と欠員率(V)の組み合わせが、右上にシフト(失業率・欠員率ともに上昇)するとき、構造的・摩擦的失業率の上昇を、左下にシフト(失業率・欠員率ともに低下)するとき、構造的・摩擦的失業率の低下を示している。
 コラム1-2-①図により、2007年以降の我が国のUV曲線の動向をみると、リーマンショック後の2008年以降、UV曲線の左上へのシフト(需要不足失業率の上昇)がみられた後、2010年~2019年は、UV曲線の右下へのシフト(労働力不足の拡大)が続いた。2020年には感染症の拡大による景気減退の影響から、1月以降UV曲線の左上へのシフト(需要不足失業率の上昇)がみられた。その後、2020年後半にはやや右上へのシフト(構造的・摩擦的失業率の上昇)がみられたが、2021年には右下へのシフト(労働力不足の拡大)となった。行動制限が解除され、経済社会活動が徐々に活発化するにつれて、感染拡大前から続く人手不足の状況に戻りつつあることが分かる。また、感染症の感染拡大以降のUV曲線は45度線付近で推移しており、感染症の影響下における雇用失業率はおおむね構造的・摩擦的失業率と一致していることが分かる。この水準を、UV曲線と45度線が交わっていた2015年頃と比較すると、感染症の影響下における構造的・摩擦的失業率の水準は低いことが分かる。
 UV分析においては、失業率を労働力供給の指標としており、失業率が低く、雇用者数が減少していなければ、構造的・摩擦的失業率の水準は低くなる。感染症の影響下における雇用調整助成金等の政策効果により失業率が一定程度抑えられており、企業の採用や労働者の求職活動の抑制といった、感染症の影響下の労働市場特有の事情も失業率に影響している可能性があることに留意が必要である。
 したがって、構造的・摩擦的失業率の水準については、一見すると感染拡大前後で低下したようにみえるが、これをもって雇用ミスマッチが縮小したといえるかは他の分析でも確認する必要がある。

②就職率・充足率による分析

ここでは、失業者以外の人も含め、より多面的に労働市場におけるミスマッチの状況を分析するため、公共職業安定所の職業紹介における求職者の就職率と求人の充足率の関係からミスマッチの様子をみていく13。就職率は新規求職申込件数に占める就職件数の割合、充足率は新規求人数に占める就職件数の割合である。縦軸に就職率、横軸に充足率をとったとき、原点と各点を結ぶ直線の傾きは新規求人倍率を表している。そのため、就職率と充足率が等しい45度線上は新規求人倍率が1倍となり、45度線から下方へのシフトは労働力需要(求人数)の不足、上方へのシフトは労働力供給(求職者数)の不足を示すこととなる。また、原点を通る同一直線上の各点は、労働力需給のバランスが同一である状態(新規求人倍率が同じである状態)を示している。労働市場で適切な労働力の分配が行われているのであれば、就職率と充足率が高くなり、その逆であれば低くなるので、原点を通る同一直線上での左下方へのシフトはミスマッチの拡大を、右上方へのシフトはミスマッチの縮小を示している。
 コラム1-2-②図により、2008年以降の就職率と充足率の関係をみると、リーマンショック後の2008年以降、2010年までは右下方へのシフト(労働力需要の不足)となったが、2010年~2019年は左上方へのシフト(労働力供給の不足)がみられた。2020年以降の感染症の影響下においては、感染拡大初期に就職率が一時的に大幅に低下したものの、労働市場全体としては、依然として労働力供給が不足傾向にあることが分かる。
 ミスマッチの動向をみるため、原点を通る同一直線上におおむね位置する2017年頃と、2020年1-3月平均、2021年10-12月平均を比較すると、2017年頃と比較して、感染症の影響下の2020年1-3月平均、2021年10-12月平均は新規求人倍率がおおむね同水準であり、労働力需給のバランスは同じであるにもかかわらず、就職率が低くなっており、ミスマッチの拡大傾向がみられた。
 このように、求職者と求人の動向からミスマッチの状況を分析すると、感染拡大前後においてミスマッチの拡大傾向がみられ、①でみたUV分析とは異なる結果となった。感染症の影響下といった労働市場に特殊事情がある局面におけるミスマッチ分析においては、分析手法の違いによって評価が異なることもあり、その特殊事情を考慮に入れつつ、多面的に分析することが必要となる。

③ミスマッチ指標と職種別労働力需給の動向

最後に、近年の労働市場のミスマッチ研究において、ミスマッチ測定の手法として注目を集めているSahin et al(2014)により開発された手法を用いて、ミスマッチ指標及び職種別の労働力需給の動向を分析する。
 労働市場におけるミスマッチの測定に関しては以前から数多くの研究がなされており、これまでに様々な手法が開発されてきた。代表的な手法として広く用いられてきたのが、Jackman and Roper(1987)の手法であり、労働市場間の求人と求職の分布の違いをみるものである。しかし、この手法の問題点としては、労働市場ごとのマッチングのしやすさ(以下「マッチング効率性」という。)は同質であるという仮定を置いていることであり、現実には職種や地域など、労働市場ごとにマッチング効率性は異なると考えられる。
 Sahin et al(2014)により開発された手法の特徴は、各労働市場の異質性を前提とし、マッチング効率性の違いをコントロールしている点である。ミスマッチ指標の算出にあたっては、経済全体の雇用のマッチ数を最大化するため、労働市場における最適な求人と求職の配分(以下「最適マッチ数」という。)を、マッチング関数の最適化問題から算出する。最適マッチ数とは、求職者の市場間における再配分によりこれ以上新規求職者が増えない状態を表し、Sahin et al(2014)の手法におけるミスマッチ指標は、最適マッチ数と比べて、実際の労働市場における求職者の配分はどれだけのマッチが失われているかを示す。
 コラム1-2-③図は、Sahin et al(2014)の手法を土台に、川田(2019)、川田(2020)及びそれらを応用した川上(2021)の手法を用いて、厚生労働省「職業安定業務統計」を用いて推計したミスマッチ指標及び職種別の求人・求職の超過数を示したものである14。まず、同図の(1)により、職業中分類、職業大分類それぞれの区分で推計したミスマッチ指標から労働市場におけるミスマッチの動向をみると、2020年以降の感染症の影響下において、職業中分類、職業大分類いずれでみてもミスマッチ指標の上昇がみられ、2021年には、年初に大幅な上昇がみられ、その後はいったん低下したが、依然として感染拡大前の2019年の水準より上回って推移している。さらに、同図の(2)により職種別に最適マッチ数からみた求職者数の過不足の状況をみると、「一般事務員」「その他の運搬等の職業」では感染拡大前から求職者が大きく超過状況にあり、感染症の影響下においてやや弱まっているものの、依然として超過状況が続いている。そのほか、「接客・給仕の職業」「商品販売の職業」等で感染症の影響下において求職者の超過傾向が強くなっている一方、「介護サービスの職業」「社会福祉の専門的職業」等では求職者が過小となっている。
 本コラムでは、多面的に我が国の労働市場におけるミスマッチの動向を分析してきた。これまでもみてきたように、ミスマッチの程度は、活用する指標や分析手法によって様々な評価がありえるため、慎重な検討が必要であるが、いくつかの分析からは、労働市場全体や特定の職種でミスマッチが拡大している可能性もみられ、今後の動向にも注視していく必要がある。
 なお、職種別の労働力需給の動向からは、感染症の感染拡大以前から、事務職では求職者超過、介護・福祉職では求人超過が続いているなど、構造的な労働力需給のミスマッチが起きている兆候がみられる。本白書の第Ⅱ部では、こうした分野別の労働力需給の展望も踏まえ、労働者の主体的なキャリア形成の支援を通じてミスマッチを解消するための課題について分析を行っている。

注釈

  1. 1基準時点(基準月)としたショックの発生月については、感染拡大期においては新型コロナウイルス感染症の感染者が国内で初めて確認された2020年1月とし、リーマンショック期についてはリーマン・ブラザーズが破綻した2008年9月としている。
  2. 2産業別の雇用者数の動向を前年同月差でみた数値は付1-(2)-3表に、前年同月比でみた数値は付1-(2)-4表に掲載している。
  3. 3正社員の求職者数(新規、有効)はパートタイムを除く常用の求職者数(新規、有効)を指す。
  4. 4常用及び臨時・季節を合わせた労働者をいう。常用労働者は雇用契約において雇用期間の定めがないか又は4か月以上の雇用期間が定められている労働者(季節労働を除く。)をいう。また、臨時労働者は、雇用契約において1か月以上4か月未満の雇用契約期間が定められている労働者をいい、季節労働者とは、季節的な労働力需要に対し、又は季節的な余暇を利用して一定の期間(4か月未満、4か月以上の別を問わない。)を定めて就労する労働者をいう。
  5. 5産業別の新規求人数の動向を前年同月差でみた数値は付1-(2)-5表、前年同月比でみた数値は付1-(2)-6表に掲載している。
  6. 6一方、感染拡大後の日本とアメリカの非労働力人口の水準について、2020年第Ⅰ四半期を基準に比較すると、感染拡大後の我が国の非労働力人口の増加は、アメリカよりも低い水準で抑えられていることが分かる。(付1-(2)-7図
  7. 7ここでは、企業の属性(業務上必要とされる技能、所在地等)や労働者の属性(取得資格、居住地等)が観察可能であり、双方の属性の間には相性があることを前提としている。このとき、ある企業の求人に応募するのはその企業と相性の良い属性の労働者のみであるため、労働市場は属性ごとに分割され、複数の労働市場(例えば、看護師の労働市場、事務職の労働市場など)の存在が想定されることとなる。
  8. 8ここでは企業や労働者の属性が外部から観察することが困難であり、就職面接や就業経験等を通じてしか互いの属性を観察できない場合を前提としているため、企業や労働者の属性による労働市場の分割は起こりえず、単一の労働市場が想定されることとなる。
  9. 9川田・佐々木(2012)は、本コラムで紹介したミスマッチの概念の基本的な整理に加え、これまでの労働市場のミスマッチ分析について、代表的な研究を紹介しながら、それぞれの研究の背景にある前提条件や政策的な帰結を丁寧に整理しているため、より詳細なミスマッチに関する議論については、同論文を参照されたい。
  10. 10一般的に、UV分析やミスマッチ指標等により観察可能なミスマッチの状況は、(1)でみてきた一つ目の意味に近いものである。なお、その際に何をミスマッチと定義しているかは、分析手法や文脈によって異なる点に留意する必要がある。
  11. 11UV分析における失業率は、自営業者や家族従業者の変化の影響を除くため、雇用失業率とするのが一般的であり、本コラムにおいても雇用失業率を用いている。
  12. 12「平成14年版労働経済の分析」では、それぞれ以下のように説明している。なお、構造的失業と摩擦的失業は、両者を明確に区分することは困難であり、本コラムにおいてはまとめて「構造的・摩擦的失業」としている。
    1. 需要不足失業:景気後退期に需要が減少することによって生じる失業
    2. 構造的失業:労働市場における需要と供給のバランスはとれているにもかかわらず、企業が求める人材と求職者の持っている特性(職業能力や年齢など)との違い(質の違い)があるため生じる失業
    3. 摩擦的失業:転職や新たに就職する際に企業と労働者の持つ情報が不完全であることや労働者が地域間を移動する際に時間がかかることなどにより生じる失業
  13. 13就職率と充足率の関係については、「平成14年版労働経済の分析」で詳述している。
  14. 14詳細な算出方法は付注1を参照。データの観察期間は、2017年9月~2021年9月である。