食中毒予防:ジビエは中心部までしっかり加熱して食べましょう! ~ジビエの生食は危険です~




秋から冬の終わりにかけての時期は、狩猟期間のため、「ジビエ」という言葉をよく聞くようになりました。
 
ジビエとは、シカ、イノシシなど、狩猟や有害鳥獣として捕獲の対象となり食用とする野生鳥獣、またはその肉のことをいいます。
 
生または加熱不十分な野生のシカ肉や、イノシシ肉等を食べると、E型肝炎ウイルス、腸管出血性大腸菌や寄生虫による食中毒のリスクがあることを、皆さんはご存じでしょうか。
今回は、ジビエによる食中毒の予防について紹介します。
 

ジビエの生食は危険です


ジビエは、牛や豚などの家畜と異なり、飼料や健康状態などの管理が行われていないため、どのような病原体を保有しているのかわかりません。そのため、ジビエを生や生焼けの状態で食べるのは大変危険です
 
ジビエによる食中毒の原因となるウイルス、細菌、寄生虫には次のようなものがあります。  

E型肝炎ウイルス

E型肝炎ウイルス(HEV)は、急性肝炎(まれに劇症肝炎)を引き起こすウイルスです。調理の段階でも、血液を介して感染するおそれがあるため、皮膚の傷からウイルスが体内へ入ることのないよう注意する必要があります。
潜伏期間は15~50日で、発熱、悪心、食欲不振、腹痛、褐色尿、黄疸などの症状が現れます。特に、妊婦の方は重症化(劇症肝炎に移行)する割合が高くなります。

腸管出血性大腸菌

腸管出血性大腸菌は、家畜の腸内に存在し、ジビエからも検出されています。潜伏期間は3~8日で、発熱、腹痛、下痢(水様便、血便)などの症状が出ます。
重症化すると、溶血性尿毒症症候群(HUS)や脳症などの合併症を発症します。

旋毛虫(トリヒナ)

旋毛虫(トリヒナ)とは、トリヒナ症の原因となる寄生虫です。冷凍に強いので、冷凍しても死にません。日本では、クマ肉を原因とする食中毒の報告があります。

トリヒナ症の症状は、筋肉痛、発熱、悪寒、浮腫、好酸球増多です。最悪の場合には、感染4~6週後に呼吸麻痺で死に至ります。



 

ジビエによる食中毒を防ごう


いろいろな病原体を保有している可能性のあるジビエですが、食中毒予防の方法は以前の掲載記事で紹介したお肉の食中毒予防と同じです。
 
まずは温度管理。お肉についている菌が増えないように、お肉は必ず冷蔵庫または冷凍庫で保存しましょう。
また、お肉はビニール袋や容器に入れて、ほかの食品に肉汁などが付かないようにします。
 
次に、お肉に付いている細菌やウイルスによるほかの食品への二次汚染を防ぐために、

お肉を扱ったときは、洗浄剤を用いて、手をしっかり洗いましょう。

お肉を扱った調理器具は、よく洗浄、消毒しましょう。
消毒は熱湯がオススメです。可能なら、「肉・魚」と「野菜」用に別々の包丁とまな板を用意すると安心です。

お肉を焼く箸と食べる箸は別々にしましょう。
お肉を焼く際に使用する箸やトングなどには、お肉についていた病原体がついてしまいます。



そして最後に、
お肉をしっかり焼いて、病原体をやっつけましょう!
 
病原体がお肉の内部まで入り込んでいる可能性があるので、表面だけでなく中心部までしっかり火を通すことが大切です中心温度75℃で1分間以上加熱してください。
ジビエは冷凍することも多いと思いますが、冷凍保存したものも中までしっかり焼きましょう。




食中毒予防を心がけて、ジビエを安全においしく楽しみたいですね!

 

参考


1. ジビエ(野生鳥獣の肉)の衛生管理(厚生労働省ウェブサイト)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/shokuhin/syokuchu/01_00021.html

2. お肉はよく焼いて食べよう(厚生労働省ウェブサイト)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000049964.html