自然毒のリスクプロファイル:魚類:フグ毒
概要版
フグの種および有毒部位 | フグ目フグ科のフグは猛毒のフグ毒テトロドトキシンをもつ。毒力の強さはフグの種類および部位によって著しく異なる。一般に肝臓、卵巣、皮の毒力が強い。このため、フグによって食用可能な部位が異なる。日本沿岸でみられるフグ科魚類の毒性と食用の適否は以下のリストをクリックして確認されたい。 日本沿岸でみられるフグ科魚類
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中毒発生状況 | 毎年30件程度のフグ中毒が発生し、約50名が中毒する。そのうち数名程度が死亡する。死亡率が高く、日本で起こる食中毒死亡者の過半を占める。 | |||||||||||||||||||||||||
中毒症状 | 食後20分から3時間程度の短時間でしびれや麻痺症状が現れる。麻痺症状は口唇から四肢、全身に広がり、重症の場合には呼吸困難で死亡することがある | |||||||||||||||||||||||||
毒成分 | フグ毒テトロドトキシン。東南アジアやバングラディシュの淡水産フグおよびアメリカフロリダ州の汽水フグによる中毒では、麻痺性貝毒が原因毒素であった。 | |||||||||||||||||||||||||
備考 |
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科名 | 種類(種名) | 部位 | ||
筋肉 | 皮 | 精巣 | ||
フグ科 | クサフグ | ○ | - | - |
コモンフグ | ○ | - | - | |
ヒガンフグ | ○ | - | - | |
ショウサイフグ | ○ | - | ○ | |
マフグ | ○ | - | ○ | |
メフグ | ○ | - | ○ | |
アカメフグ | ○ | - | ○ | |
トラフグ | ○ | ○ | ○ | |
カラス | ○ | ○ | ○ | |
シマフグ | ○ | ○ | ○ | |
ゴマフグ | ○ | - | ○ | |
カナフグ | ○ | ○ | ○ | |
シロサバフグ | ○ | ○ | ○ | |
クロサバフグ | ○ | ○ | ○ | |
ヨリトフグ | ○ | ○ | ○ | |
サンサイフグ | ○ | - | - | |
ハリセンボン科 | イシガキフグ | ○ | ○ | ○ |
ハリセンボン | ○ | ○ | ○ | |
ヒトヅラハリセンボン | ○ | ○ | ○ | |
ネズミフグ | ○ | ○ | ○ | |
ハコフグ科 | ハコフグ | ○ | - | ○ |
- 本表は、有毒魚介類に関する検討委員会における検討結果に基づき作成したものであり、ここに掲載されていないフグであっても、今後、鑑別法および毒性が明らかになれば追加することもある。
- 本表は、日本の沿岸域、日本海、渤海、黄海および東シナ海で漁獲されるフグに適用する。ただし、岩手県越喜来湾および釜石湾ならびに宮城県雄勝湾で漁獲されるコモンフグおよびヒガンフグについては適用しない。
- ○は可食部位
- まれに、いわゆる両性フグといわれる雌雄同体のフグが見られることがあり、この場合の生殖巣はすべて有毒部位とする。
- 筋肉には骨を、皮にはヒレを含む。
- フグは、トラフグとカラスの中間種のような個体が出現することがあるので、これらのフグについては、両種とも○の部位のみを可食部位とする。
ナシフグについては以下のものに限り食用が認められている
可食部位 | |
筋肉(骨を含む) | 有明海、橘湾、香川県および岡山県の瀬戸内海域で漁獲されたもの |
精巣 | 有明海、橘湾で漁獲され、長崎県が定める要領に基づき処理されたもの |
リスクプロファイリング・魚類:フグ毒

英名 | Red-eyed puffer |
学名 | Takifugu chrysops |
全長 | 25cmの小型種 |
特徴 | 体の背面と側面は桃色または赤褐色の地色に小斑点が散在する。各鰭も赤褐色である。背面と腹面に小棘(とげ)はなく、平滑である。 |
分布 | 我が国特産種。房総半島から高知沖までの本州中部太平洋側に分布する。 |
毒性
部位 | 肝臓 | 卵巣 | 精巣 | 皮 | 筋肉 | 腸 |
食用の可否 | × | × | ○ | × | ○ | × |

英名 | Smooth-backed blowfish |
学名 | Lagocephalus inermis |
全長 | 1mに達する大型魚 |
特徴 | 体の腹面に小粒状突起があるが、背面に小棘(とげ)はない。鰓孔は黒く、背鰭の基部が黒い。 |
分布 | 南日本、東シナ海、南シナ海、インド洋 |
毒性
部位 | 肝臓 | 卵巣 | 精巣 | 皮 | 筋肉 | 腸 |
食用の可否 | × | × | ○ | ○ | ○ | × |

英名 | Eyespot puffer |
学名 | Takifugu chinensis |
全長 | 50cm程度 |
特徴 | 体の背面と側面の紋様はトラフグとよく似て、胸鰭の後方には白く縁取られた大きな黒い斑点があるが、トラフグに比べ全体的に紋様が不鮮明である。背面と腹面に小棘(とげ)がある。 |
分布 | 主として東シナ海、黄海に分布。まれに本州中部以南 |
毒性
部位 | 肝臓 | 卵巣 | 精巣 | 皮 | 筋肉 | 腸 |
食用の可否 | × | × | ○ | ○ | ○ | × |

英名 | Grass puffer |
学名 | Takifugu alboplumbeus |
全長 | 15cm以下の小型種 |
特徴 | 体の背面は深緑色で、腹面は白い。体の側面から背面には白い小さな斑点が散在する。胸鰭のすぐ後ろにやや大きな黒い斑紋があるが、白い縁取りはない。背面と腹面に小棘(とげ)がある。 |
分布 | 北海道を除く日本沿岸、韓国釜山、台湾 |
毒性
部位 | 肝臓 | 卵巣 | 精巣 | 皮 | 筋肉 | 腸 |
食用の可否 | × | × | × | × | ○ | × |

英名 | Brown-backed toadfish |
学名 | Lagocephalus cheesemanii |
全長 | 40cmに達する中型種 |
特徴 | 体の背面および腹面に小棘(とげ)がある。背面の小棘(とげ)は背鰭まで達しない。尾鰭の中央部は突出する点がシロサバフグと異なる。 |
分布 | 九州から北海道南部の太平洋沿岸、東シナ海 |
毒性
部位 | 肝臓 | 卵巣 | 精巣 | 皮 | 筋肉 | 腸 |
食用の可否 | × | × | ○ | ○ | ○ | × |

英名 | Spottyback puffer |
学名 | Takifugu stictonotus |
全長 | 40cmの中型種 |
特徴 | 体の背面と体側面に藍青色の小点がごま粒のように密在する。背鰭と尾鰭は黒いが、胸鰭と尻鰭は黄色い。背面と腹面に小棘(とげ)がある。 |
分布 | 北海道南部以南、黄海、東シナ海に分布。 |
毒性
部位 | 肝臓 | 卵巣 | 精巣 | 皮 | 筋肉 | 腸 |
食用の可否 | × | × | ○ | × | ○ | × |

英名 | Finepatterned puffer |
学名 | Takifugu flavipterus |
全長 | 25cm以下の小型種 |
特徴 | 体の背面は褐色で、腹面は白い。体の背面には円形をした小さな斑点(小紋)が不規則に散在する。尻鰭は淡黄色。背面と腹面に小棘(とげ)がある。 |
分布 | 北海道以南の日本沿岸、韓国、台湾 |
毒性
部位 | 肝臓 | 卵巣 | 精巣 | 皮 | 筋肉 | 腸 |
食用の可否 | × | × | × | × | ○ | × |
英名 | |
学名 | Takifugu flavidus |
全長 | 40cmの中型種 |
特徴 | 幼魚と成魚で模様が大きく異なる。背面と腹面に小棘(とげ)がある。胸鰭後方上部に不定形の黒紋がある。尻鰭は黒色か暗黄色。 |
分布 | 渤海、黄海、東シナ海 |
毒性
部位 | 肝臓 | 卵巣 | 精巣 | 皮 | 筋肉 | 腸 |
食用の可否 | × | × | × | × | ○ | × |

英名 | Striped puffer、Yellowfin puffer |
学名 | Takifugu xanthopterus |
全長 | 60cm以上になる大型種 |
特徴 | 体の背面と側面は青黒色の地色に背面から体側後方に向かって白い縞が走っている。各鰭は鮮やかな黄色を呈する。背面と腹面に小棘(とげ)が密生している。 |
分布 | 相模湾以南、黄海、東シナ海に分布。 |
毒性
部位 | 肝臓 | 卵巣 | 精巣 | 皮 | 筋肉 | 腸 |
食用の可否 | × | × | ○ | ○ | ○ | × |

英名 | Vermiculated puffer |
学名 | Takifugu snyderi |
全長 | 35cmになる中型種 |
特徴 | 体の背面は茶色の地色に濃褐色の模様がある。腹面、尻鰭は白い。背面と腹面に小棘(とげ)はない。 |
分布 | 東北地方から九州沿岸、東シナ海 |
毒性
部位 | 肝臓 | 卵巣 | 精巣 | 皮 | 筋肉 | 腸 |
食用の可否 | × | × | ○* | × | ○ | × |

英名 | Brown-backed toadfish |
学名 | Lagocephalus spadiceus |
全長 | 35cm程度の中型種 |
特徴 | 体の背面および腹面に小棘(とげ)がある。背面の小棘(とげ)は背鰭まで達しない(この点がドクサバフグと異なる)。尾鰭の下方は白か灰色。 |
分布 | 鹿児島以北の日本沿岸、東シナ海 |
毒性
部位 | 肝臓 | 卵巣 | 精巣 | 皮 | 筋肉 | 腸 |
食用の可否 | × | × | ○ | ○ | ○ | × |

英名 | Green toadfish |
学名 | Lagocephalus lunaris |
全長 | 50cm以上に達する中型種だが、40cm以下のものが多い。 |
特徴 | 背面および腹面に小棘(とげ)がある。背面の小棘(とげ)は背鰭まで達する。背鰭基部は黒い。尾鰭中央部は深く切れ込んだものが多い。 無毒種のシロサバフグと混獲されることが多い。シロサバフグとは背面の小棘(とげ)の分布と尾鰭の形が違うが、その他の形態がよく似ているため区別が難しい。ドクサバフグは筋肉を含め全ての部位が有毒なため摂食してはならない。 |
分布 | 鹿児島以北の日本沿岸、東シナ海 |
毒性
部位 | 肝臓 | 卵巣 | 精巣 | 皮 | 筋肉 | 腸 |
食用の可否 | × | × | × | × | × | × |

英名 | Ocella puffer、Tiger puffer |
学名 | Takifugu rubripes |
全長 | 80cm以上に達する |
特徴 | 体の背側は黒い斑点が重なり合って黒褐色になる。胸鰭の後方には白く縁取られた大きな黒い斑点がある。尻鰭は白い。背面と腹面に小棘(とげ)がある。 |
分布 | 太平洋側では室蘭以南、日本海西部、黄海、東シナ海 |
毒性
部位 | 肝臓 | 卵巣 | 精巣 | 皮 | 筋肉 | 腸 |
食用の可否 | × | × | ○ | ○ | ○ | × |

英名 | Pear puffer |
学名 | Takifugu vermicularis |
全長 | 25cmの小型種 |
特徴 | 体の背面にある斑点は茶褐色に縁取られた白色で、互いが接するように密に分布する。ショウサイフグとごく近縁でよく似ている。胸鰭後方上部に黒紋があり、その周辺が白く花のように形どられているのが特徴。背鰭と胸鰭は黄色で、尻鰭は白い。尾鰭は黄色いが下縁は白い。背面と腹面に小棘(とげ)はなく平滑である。 |
分布 | 瀬戸内海、九州西岸、黄海、東シナ海に分布。 |
毒性
部位 | 肝臓 | 卵巣 | 精巣 | 皮 | 筋肉 | 腸 |
食用の可否 | × | × | ×* | × | ×* | × |

英名 | Panther puffer |
学名 | Takifugu pardalis |
全長 | 35cmになる中型種 |
特徴 | 体の背面、側面は赤味をおびた褐色で、黒褐色の小斑点が多く散在する。腹面は白い。皮にいぼ状の小さな突起が密布する。背面と腹面に小棘(とげ)はない。 |
分布 | 日本沿岸、黄海、東シナ海 |
毒性
部位 | 肝臓 | 卵巣 | 精巣 | 皮 | 筋肉 | 腸 |
食用の可否 | × | × | × | × | ○ | × |

英名 | Genuine puffer、Purple puffer |
学名 | Takifugu porphyreus |
全長 | 50cmになる中型種 |
特徴 | 体の背面は小さな黒い斑点が数多く密に分布するため黒褐色にみえる。胸鰭のすぐ後ろに大きな黒い斑紋があるが、白い縁取りはない。腹面は白い。尻鰭は黄色。尾鰭は一様に暗褐色。背面と腹面に小棘(とげ)はなく、なめらかである。 幼魚と成魚で背面の模様が異なり、幼魚では白い斑点がありコモンフグに似た印象をもつ。しかし、尻鰭が黄色いことと、背面に小棘がないことでコモンフグと区別できる。 |
分布 | 北海道以南の太平洋側、サハリン以南の日本海、黄海、東シナ海 |
毒性
部位 | 肝臓 | 卵巣 | 精巣 | 皮 | 筋肉 | 腸 |
食用の可否 | × | × | ○ | × | ○ | × |

英名 | |
学名 | Takifugu obscurus |
全長 | 45cmの中型種 |
特徴 | 体の背面は茶褐色。胸鰭と背鰭の基部に黒い斑紋があり、白い縁取りがあるが不明瞭なことがある。尻鰭は黄色。背面と腹面に小棘(とげ)がある。 |
分布 | 東シナ海、南シナ海、これに注ぐ河川 |
毒性
部位 | 肝臓 | 卵巣 | 精巣 | 皮 | 筋肉 | 腸 |
食用の可否 | × | × | ○ | × | ○ | × |

英名 | Slackskinned puffer |
学名 | Sphoeroides pachygaster |
全長 | 40cmの中型種 |
特徴 | 体は円滑で小棘(とげ)はない。 |
分布 | 本州中部以南 |
毒性
部位 | 肝臓 | 卵巣 | 精巣 | 皮 | 筋肉 | 腸 |
食用の可否 | × | × | ○ | ○ | ○ | × |
トラフグとマフグの雑種(Takifugu rubripes × Takifugu porphyreus) | |
発生状況 | 2022~2023年の調査では、福島県から千葉県および神奈川県(東京湾口)にかけ、多いときで1割程度の割合でトラフグまたはマフグと混獲されている。 その他のトラフグおよびマフグの産地では1%程度の割合でトラフグまたはマフグと混獲されている。 トラフグと混獲されることが多く、マフグの中には少ない。 |
特徴 | トラフグに比べて背面の棘が弱く、頭部側面の腹面との境(頬の部分)に黄色線が縦走する。臀鰭が黄色みを帯びることが多い。 |
文献 | Tatsuno R, Miyata Y, Yoshikawa H, Ino Y, Fukuda T, Furushita M, Takahashi H: Tetrodotoxin distribution in natural hybrids between the pufferfish species Takifugu rubripes and Takifugu porphyreus. Fish Sci, 85, 237-245 (2019) |

マフグ雌×トラフグ雄 F1雑種(山口県下関,180218)SL=364.5mm

トラフグ雌×マフグ雄 F1雑種(千葉県富津,230119)SL=175.1mm
ショウサイフグとゴマフグの雑種(Takifugu snyderi × Takifugu stictonotus) | |
発生状況 | 2022~2023年の調査では、宮城県において多いときで2割程度の割合でショウサイフグまたはゴマフグと混獲されている。 2012~2014年にかけて東日本沿岸(茨城県や福島県)において最大4割程度の割合でショウサイフグと混獲されていたが、このような大発生はその後急速に収束し、2023年の時点でこれらの地域ではほぼ見られなくなっている。 |
特徴 | 体表に小棘がなく平滑であるショウサイフグに対し、体表に弱い小棘がある。ただし、ゴマフグに比べて背面および腹面の棘は弱い。ショウサイフグの臀鰭は白いのに対し、臀鰭が薄い黄色であることが多い。 |
文献 | Takahashi H, Toyoda A, Yamazaki T, Narita S, Mashiko T, Yamazaki Y: Asymmetric hybridization and introgression between sibling species of the pufferfish Takifugu that have undergone explosive speciation. Mar Biol, 164, 90(2017) https://doi.org/10.1007/s00227-017-3120-2 |

ショウサイフグ雌×ゴマフグ雄 F1雑種(宮城県気仙沼,170710)SL=214.5mm
厚生労働省健康・生活衛生局食品監視安全課
水産安全係
電話 03-5253-1111(内線4244)