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IDESコラム vol. 26
感染症エクスプレス@厚労省 2018年11月2日

「日本から遠くて、近い 恐怖の感染症」

IDES養成プログラム 4期生:大塚 美耶子

 

 こんにちは。IDES4期の大塚美耶子です。
 IDES養成プログラムには今年の10月から参加しています。
 一昨日10月31日はハロウィンで、今年も何かと話題となりましたが、皆様如何お過ごしでしたでしょうか?
 私は、医師になる前は青年海外協力隊で統計隊員としてブルキナファソ国に赴任しておりましたが、幼少期にはカメルーンやUAE(ドバイ)に、学生の時にはイギリスやアメリカに滞在しており、何かと海外で生活が長く、様々な地域、文化に触れる機会がありました。ハロウィンの仮装の思い出は、小学生の時ドバイで、イスラム教徒だけでなく、様々な国の人が住むマンションで片端からトリック オア トリートをして事情を知らない人を驚かせてしまった覚えがあります。ハロウィンは一説によると古代ケルトが起源と考えられているお祭で、11月1日が新年とされ、大晦日にあたる10月31日の夜に先祖の霊が家族に会いに戻ってくると信じられていました。メキシコでは、11月2日は万霊節で、「死者の日」とされており、故人への思いを馳せ、語り合う祝日としているそうです。日本ではお盆のようなものですね。
 このハロウィンには、悪霊も一緒にやって来て、作物に悪い影響を与えたり、子どもをさらったり、現世の人間たちに悪いことをするため、この悪霊対策として、子どもたちは、悪霊に紛れてばれないようにしたり、人々は悪霊を驚かせて追い払うために、仮面をかぶったり、仮装をしたり、魔除けの焚き火を行ったといわれます。
 文化は、地域が違えば異なり、時が流れれば変化するということに興味深く思います。

 医療が整っている日本では、高齢者の肺炎を除けば、感染症に対して「命を脅かす」というイメージを持つ人は少ないと思います。10年ほど前に青年海外協力隊の統計隊員として西アフリカのブルキナファソ国の地方医療局に赴任していた際、私は感染症の専門家ではありませんでしたが、5歳未満の乳幼児の死亡原因の多くは肺炎、下痢、マラリアと、感染症によって小さな命が消えゆく現実を目の当たりにしました。そのとき、残酷な感染症に対して、恐怖を抱きました。感染症への考え方が大きく変化しました。
 2014年に世界を震撼させたエボラ出血熱。PHEIC(Public Health Emergency of International Concern, 国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)にはならなかったものの、最近またコンゴ民主共和国でアウトブレイクを起こしています。どんなに恐ろしい感染症も、地球の裏側での出来事となると、今ひとつ関係性がピンと来ないというのも分かります。
 実は、日本は、このエボラ対策には一役買っていることをご存じでしょうか。今年10月18日、エボラウイルスの中心部の内部構造を沖縄科学技術大学院大学が突き止めたとのニュースをご覧になった方も多いのではないでしょうか。既に、抗エボラウイルス薬としては日本企業が抗インフルエンザ薬として製造している薬が現地で治療に使用されています。その他、エボラ迅速診断キットも北海道大学と日本の企業がタッグを組んで試作品を開発し、無償で提供しています。
 日本が、遠い地の、致死率が高く、かつては治療法のなかった恐怖の感染症について、時を経て、日本の技術を通して、その地の人々の健康と、恐怖の感染症の克服に向けて奮闘していることを誇りに思います。
 私も、今後IDESの立場から国内外に対して、感染症対策を少しでもよりよくできるよう邁進して参ります。

<エボラ出血熱について>
https://www.forth.go.jp/moreinfo/topics/2018/04201410.html


(編集:成瀨浩史)

●当コラムの見解は執筆者の個人的な意見であり、厚生労働省の見解を示すものではありません。
●IDES(Infectious Disease Emergency Specialist)は、厚生労働省で平成27年度からはじまったプログラムの中で養成される「感染症危機管理専門家」のことをいいます。

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