高等植物:ヒメザゼンソウ

ヒメザゼンソウ

一般名

ヒメザゼンソウ

分類

オモダカ目Alismatales、サトイモ科Araceae、ザゼンソウ属 Symplocarpus

学名 Symplocarpus nipponicus Makino
生育地

北海道、本州、朝鮮に分布し、低山から山地の湿地や湿った林縁に生える。

形態

短い根茎がある多年草。早春に葉を出す。葉は根生して長い柄があり、長さ10~20cm、幅7~12cmで長卵
状心形または卵状長楕円形。葉が展開した後、6月頃に花(花序)を出す。花序を覆う仏炎苞(ぶつえんほう)は暗紫褐色で、長さ約4cm、卵円形のボート状で肉厚。花序は広楕円体で、長さ約1cm。果実は翌春に熟する。

雪融けとともに芽を出したヒメザゼンソウの写真
1.雪融けとともに芽を出したヒメザゼンソウ
展葉中のヒメザゼンソウの若い葉の写真
2.展葉中のヒメザゼンソウの若い葉
(左上の1枚はオオウバユリ)
中毒植物が採取された場所のヒメザゼンソウの写真
3.中毒植物が採取された場所のヒメザゼンソウ
ヒメザゼンソウの葉上部の写真
4.ヒメザゼンソウの葉上部
2)山菜のオオバギボウシ(ウルイ)の写真
5.山菜のオオバギボウシ(ウルイ)
オオバギボウシの葉上部の写真
6.オオバギボウシの葉上部
展開したヒメザゼンソウの葉の写真
7.展開したヒメザゼンソウの葉
5)ヒメザゼンソウの花(6月頃開く)の写真
8.ヒメザゼンソウの花(6月頃開く)
 

    (写真提供 :1.8.富山県中央植物園 山下寿之氏、2.富山市科学博物館 太田道人氏、
             3.新潟県 魚沼保健所 、4.7.富山大学極東地域研究センター 和田直也氏、
             5.6.富山県中央植物園)

毒性成分 シュウ酸カルシウム
中毒症状 口のしびれ、悪心、嘔吐、下痢、麻痺、皮膚炎など
発病時期 摂食後すぐに発症。
発生事例 2014年4月、新潟県魚沼市在住の男性が同市内の山林で食用のウルイ(オオバギボウシ)と思われる野草を採取し、同日夜、自宅でゆでて1家族4人中1人が食べたところ、喫食直後に口のしびれを呈し、医師の治療を受け入院した。翌日までには回復し、退院した。

患者数

年  発生件数  患者総数 摂食者総数
2014年 1件 1人 1人
ヒメザゼンソウによる食中毒は、 2014 年初めて報告された。
(2014年12月31日現在)
 
直近10年間の有毒植物による食中毒発生状況は、こちらのページ
中毒対策 展葉中の若い葉が山菜のオオバギボウシ(ウルイ)と似ているため、注意が必要。展開した成葉は特徴がはっきり出て識別しやすいため、開いた葉を選んで確認する。山菜取りは初めての場所は避け、夏に葉や花で種類を確認し、間違いやすい有毒植物が混生してないことを確かめた場所で行うのが望ましい。

毒性成分の
分析法

クワズイモに準ずる。

光学顕微鏡による不溶性シュウ酸カルシウムの観察。

HPLC によるシュウ酸の分析。

間違えやすい
植物

山菜として食べられるオオバギボウシ(ウルイ)と、若い葉がよく似ている。ヒメザゼンソウの葉は、平行する側脈の数がオオバギボウシより少なく、それらをつなぐ網目状の横脈が目立つこと、葉の先端がオオバギボウシのように鋭く尖らないこと、などで識別できる。なお、オオバギボウシと有毒なバイケイソウ類を見分ける際、オオバギボウシには葉柄があることが識別点とされるが、ヒメザゼンソウにも葉柄があるので注意が必要。
  作成:中田政司(富山県中央植物園)