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自然毒のリスクプロファイル:高等植物:アジサイ

高等植物:アジサイ

アジサイ

 

一般名

アジサイ(別名 : シチヘンゲ、紫陽花)

英名 Japanese hydrangea
分類

バラ目 Rosales 、ユキノシタ科 Saxifragaceae アジサイ属 Hydrangea

(APG 分類体系ではミズキ目、アジサイ科、アジサイ属 )

学名

Hydrangea macrophylla (Thunb.) Ser. f. macrophylla

 
生育地

本州中部太平洋岸に野生するガクアジサイ H. macrophylla (Thunb.) Ser. f. normalis (E.H.Wilson) H.Hara から改良された 日本原産の 園芸植物で、 100 種以上の品種があると言われている。 欧米で品種改良され、逆輸入されたセイヨウアジサイ H. macrophylla (Thunb.) Ser. f. hortensia (Lam.) Rehder も含めて、アジサイと総称されることも多い。 全国各地の公園・寺院・庭などに植えられていて、「アジサイ名所」も各地に知られている。 

形態

落葉低木。高さ 1 2 メートル。葉は光沢のある淡緑色で葉脈のはっきりした卵形で、周囲は鋸歯状。 6 7 月に紫(赤紫から青紫)の花を咲かせる。一般に花と言われている部分は装飾花で、本来の花は中心部で小さく目立たない。花弁に見えるものは萼(がく)である。

(写真提供:富山県中央植物園)

毒性成分

毒性成分は、未だ明らかではない。

古くから、アジサイには青酸配糖体が含まれているとされ、半ば定説のようになっている。 それは、 1920 年のアメリカでの家畜の中毒例が元になっていると考えられる。アメリカノリノキ Hydrangea arborescence L. というアジサイの近縁種によって牛や馬が中毒し、その原因は hydrangin と名付けられた ”glucoside” と報告されている。しかし、 1963 年になって hydrangin の構造が再検討され、この化合物は、青酸配糖体に含まれるはずの窒素を含まず、植物一般に見出されるクマリン誘導体のウンベリフェロン umbelliferone に他ならないことが、種々の化学分析によって証明された。にも関わらず、その後も青酸配糖体説が一人歩きしてしまったようである。

2008 年に発生した食中毒を機に、毒性成分が再検討されているが、未だ定かではない。京都薬大の吉川らは、中国四川省産アジサイの葉部・茎部の成分検索を行い、新規青酸配糖体 hydracyanoside 6 種を報告した。しかし、これら青酸配糖体は、京都産のアジサイ抽出物には含まれず、品種によって成分・含量にかなりの差があるとの見解だった。実際、各地のアジサイから青酸配糖体の検出を試みた結果が寄せられているが、陽性・陰性どちらの結果も得られている(私信)。 なお、ユキノシタ科ジョウザンアジサイ Dichroa febrifuga Lour. 由来の 生薬ジョウザン(常山)の抗マラリア成分、嘔吐性アルカロイドの febrifugine がアジサイにも含まれているとの報告もある。このアルカロイド の可能性も指摘されてはいるが、やはり明らかではない。

中毒症状 嘔吐、めまい、顔面紅潮
発病時期 食後 30 40
発生事例

症例1) 2008 6 13 日、茨城県つくば市の飲食店で、料理に添えられていたアジサイの葉を食べた 10 人のうち 8 人が、食後 30 分から吐き気・めまいなどの症状を訴えた。

(症例2) 2008 6 26 日、大阪市の居酒屋で、男性一名が、だし巻き卵の下に敷かれていたアジサイの葉を食べ、 40 分後に嘔吐や顔面紅潮などの中毒症状を起こした。いずれも重篤には至らず、 2 3 日以内に全員回復した。

患者数 
(過去6年間) 

 


  年     発生件数      患者総数      摂食者総数
2013年      0件         0人          0人
2012年      0件         0人          0人
2011年      1件         5人          43人
2010年      0件         0人          0人
2009年      0件         0人          0人
2008年      2件         9人          11人

(2013年12月31日現在)
 
直近10年間の有毒植物による食中毒発生状況は、こちら

中毒対策 刺身のツマのように、時々料理に添えられることがあるが、食用は避けるべきである。

諸外国での状況

 

中国では、アジサイそのものが八仙花(はちせんか)と呼ばれる生薬で、抗マラリア剤とされるが、やはり嘔吐性が強いので頻用はされないらしい。

その他

 

アジサイ中毒に関連すると思われるアマチャ(甘茶)による中毒が、 2009 2010 年、相次いで発生した。いずれも花祭りで子供がアマチャを飲んで嘔吐症状を訴えたもので、 2009 4 月岐阜県岐南市では、 119 人の園児のうち 28 人が , 2010 4 月神奈川県南足柄市では、小学一年生 99 人のうち 45 人が嘔吐症状を訴えた。幸いいずれも軽症で、一日以内に全員快方に向かったという。アマチャ Hydrangea serrata (Thunb.) Ser. var. thunbergii (Siebold) H.Ohba はアジサイに近縁なので、同じ成分を含んでいても不思議はない。しかし、古くから薬用として用いられ、日本薬局方にも収載されていて、有毒成分の存在はこれまでまったく報告されていない。
  作成:数馬恒平、紺野勝弘 (富山大学和漢医薬学総合研究所

 

 

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