高等植物:ドクゼリ
ドクゼリ
一般名 |
ドクゼリ(別名:オオゼリ) |
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分類 |
セリ目 Apiales、セリ科U mbelliferae、ドクゼリ属 Cicuta |
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学名 |
Cicuta virosa L. |
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英名 | water-hemlock、cowbane | ||||||||||||||||
生育地 |
北海道、本州、九州の湿地、小川などに群生する。 |
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形態 |
多年草。葉は2回羽状複葉で小葉は長さ3~8cmの長楕円形、不規則に深く切れ込んだ鋸歯をもつ。精油を含みほのかな香りをもつが食用セリの独特の香りとは異なる。茎は分枝し中空。草丈60~100cmに達する6~8月頃に複散形花序に多数の白~淡桃色の小さな花をつける。果実は長さ約2.5mmの卵球形で、縦に走る隆状は太くてやや木質化しており黄色みを帯びている。大型の根茎の表皮は緑色で筍状の短い節があり、節の間は中空。全草に猛毒のポリイン化合物(シクトキシン類)を含有している。 ![]() ドクゼリ(芽生え)
![]() ドクゼリ(花)
![]() ドクゼリ(根茎)
![]() セリ(全草)
![]() セリ(花)
(写真提供:磯田 進)
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毒性成分 | ポリイン化合物:シクトキシンcicutoxin、ビロールA virol A、ビロールB virol B
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食中毒の型 | GABA拮抗性中枢神経興奮作用 | ||||||||||||||||
中毒症状 | 嘔吐、下痢、腹痛、目眩、動悸、耳鳴、意識障害、痙攣、呼吸困難など | ||||||||||||||||
発病時期 | 30分以内の短い潜伏期間の後に発症。 | ||||||||||||||||
発生事例 |
(症例1)3月初旬に宮城県大崎市の民家において、夕食時にガマと間違って採取したドクゼリの地下茎の煮物を食べた女性2人が、突然気分が悪くなり、病院に運ばれ、うち1人は痙攣、意識不明の重体となった。もう1人は嘔吐し入院した。 (症例2)4月末に青森県で、前夜に近隣で山菜と思い採取したドクゼリをお浸しにして食べた男性が午前1時頃に脱力感と手足のしびれを感じ嘔吐した。 (症例3)4月下旬に宮城県の企業の職員食堂で、昼食時にワサビと間違えて採取したドクゼリをすりおろしてご飯にふりかけ食べたところ、午後2時頃から36人が痙攣などの食中毒症状を起こした。入院した12人のうち重体1名を含む4名が集中治療を受けた。 |
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患者数 |
厚生労働省発表 直近10年間の有毒植物による食中毒発生状況は、こちらのページ |
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中毒対策 | 生育地には食用となるセリが混在しているが、両者の香りは判別可能な相違がある。同様に水辺に育つワサビの葉は心形であり、香りが異なる。摘み取る際に葉を揉んで香気を確認すること。生長期には、ドクゼリは、草丈が大きくなり、根茎は辛みがなく、中空で節があり筍状であることが特徴である。 | ||||||||||||||||
毒性成分の |
GC-MS法
Smith RA, Lewis D: Vet Hum Toxicol 29:240-241. (1987) |
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諸外国での |
ドクゼリは、北半球の温帯に分布する植物で、食中毒に関する論文が出されている。 Archives de pediatrie : organe officiel de la Societe francaise de pediatrie(2008),15(2),139-41. Pediatriia(1966),45(5),80-2 Tidsskrift for den Norske l geforening : tidsskrift for praktisk medicin, nyrkke (1951),71(18),577-8 |
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その他の |
ヒト致死量50mg/Kgと推定、LD50(mouse, ip)9.2mg/Kg, (cat, po)1) Cicutoxin類は、吸収が早いので迅速な治療が必要。呼吸困難に対して気道を確保し、酸素吸入を、痙攣に対してはペントバルビタール等の抗痙攣薬の静注が必要である。また、強制利尿や血液透析などにより体外への排出を行うこと。2) 1)Natural Products, editors W. Steglich et. al. (2001) |
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間違えやすい |
春先の山菜採りの時期は草丈が短いため、葉はセリ、根茎はワサビと間違いやすい。 | ||||||||||||||||
作成:関田節子(昭和薬科大学)、渕野裕之(医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター) |