高等植物:ジャガイモ

ジャガイモ

一般名

ジャガイモ(別名: ジャガタライモ、馬鈴薯、バレイショ、ポテト)

分類

ナス目 Solanales ナス科 Solanaceae、ナス属 Solanum

学名

Solanum tuberosum L.

英名

potato

生育地

南米アンデス原産で、世界中の温帯地方で広く栽培される。日本へは江戸時代に伝来し、明治初めに全国に普及した。

形態

高さ50~100cmの多年草で、柔らかく、特異な臭いがある。地中に横にはう地下茎をもち、夏~秋にその先端に肥大した塊茎をつける。葉は互生し、長い柄があり、羽状複葉で 5~9枚の奇数の小葉に分かれる。6~7月ごろ上部の葉腋から花序を出し、数個の白~うす紫色の花をつける。最近の品種ではトマトのような果実をつけることがある。果実はアルカロイドを含むので食べない方が良い。

 ジャガイモの花の写真
ジャガイモの花
ジャガイモ(塊茎食用部分)の写真
ジャガイモ(塊茎食用部分)
ジャガイモの若い果実の写真
ジャガイモの若い果実
ジャガイモの皮が緑になったものの写真
ジャガイモの皮が緑になったもの
(明るいところに置くと緑に変色し有毒に)
ジャガイモの芽が出たものの写真
ジャガイモの芽が出たもの
(芽のつけねは有毒)
芋の切り口の写真
上:芋の切り口
下:皮が緑の芋
(写真提供: 矢原正治)
毒性成分 ステロイドアルカロイド: α-chaconine, α-solanine 等
化学式
中毒症状

嘔吐、下痢、腹痛、目眩、動悸、耳鳴、意識障害,痙攣、呼吸困難。
ひどい時は死に至る

発病時期 食後おおよそ30分から半日
発生事例

(症例1)
2009年、7月16日午前10時20分ごろ、奈良市の市立小学校の6年生が、学校で栽培して収穫したジャガイモを、家庭科の授業で自分たちで炒めるなどして食べたところ、2クラス53人のうち、35人が吐き気や腹痛を訴え、このうち午後1時時点で、男児9人、女児8人が救急車で病院に搬送された。症状は全員比較的軽い。市保健所の検査で、調理済みのジャガイモで市販品の数倍~10倍程度の100g当たり最大50mg、皮部分には104mgのソラニンが含まれており、ソラニンが原因と断定した。子供の場合、20mg程度で食中毒を起こすという。残りのジャガイモにはソラニンの含有量が多い緑色の皮のものもあったが、児童らは皮付きのまま食べていた。
(2009年 朝日新聞、毎日新聞報道)

(症例2)
2006年7月、東京都江戸川区内の小学校で、理科の実習用に校内で栽培したジャガイモを13日及び14日に収穫し給食室で保管、18日午前10時30分ごろから給食室で調理員が皮付きのまま茹で上げ、6年生4クラス(児童:127名、教職員:5名)に提供。「茹でジャガイモ」を喫食後、30分後から腹痛、吐き気、喉の痛みの症状を呈したが、いずれも軽症で、全員快復している。患者は6年生の児童75名と教職員2名。小学校に残っていた茹ジャガイモ2個と、参考品として同一の畑に残っていた生のジャガイモ2個を、東京都健康安全研究センター食品化学部食品成分研究科で検査したところ、ジャガイモの皮や芽に多く含まれるソラニン類が高濃度に検出され、これが原因であることがわかった。
(2006年 東京都報道資料)

患者数

(過去5年間)
発生件数 患者総数 摂食者総数
2013年 3件 9人 38人
2012年 3件 28人  62人
2011年 1件 5人 47人
2010年 3件  42人  82人
2009年 1件 35人 56人

(2013年12月31日現在)
厚生労働省発表

直近10年間の有毒植物による食中毒発生状況は、こちらのページ

中毒対策

ジャガイモは収穫・購入後、新鮮なうちに食べ、長期間保存しない。保存する場合は冷暗所に置き、芽の出やすい環境(高温、明所)に放置しない。
親芋で発芽しなかったイモ(芯が硬くなっている)、光に当たって皮がうすい黄緑~緑色になったイモの表面の部分、芽が出てきたイモの芽及び付け根部分などにソラニン等のステロイドアルカロイド配糖体が含まれるので、このようなものは食べない。保存中に芽が出た場合、芽の付け根の硬くなった部分にはソラニンが多く含まれるので、確実にとり除く。掘り出した新鮮なイモでも、小さいもの、地中の浅い所にあったイモにはソラニン類が入っているので食べない方がよい。
ソラニン類は水に溶けやすいので、蒸す料理ではなく、ゆでる、二度ゆでする調理方法をとると中毒する確率が減るが、熱によって分離されない。

毒性成分の
分析法

TLC法(標準品とRf値、発色の色を比較)

その他の
参考になる情報

 

(1)財団法人 日本中毒情報センターHP 『ソラニン中毒』
http://www.j-poison-ic.or.jp/tebiki20070907.nsf/SchHyodai/CD75207CA29076A1492567DE002B8A19/$FILE/M70115_web20081205.pdf#search='ソラニン中毒'

(2)ジャガイモの可食部分は、100gあたり平均7.5 mg(0.0075 g)のソラニンやチャコニンを含んでいて、そのうち3~8割が皮の周辺にある。一方、光に当たって緑色になった部分は100 gあたり100 mg(0.1 g)以上のソラニンやチャコニンを含んでいるといわれている。また、芽や傷のついた部分にもソラニンやチャコニンが多く含まれる。体重が50 kg<の人の場合、ソラニンやチャコニンを50 mg(0.05 g)摂取すると症状が出る可能性があり、150 mg~300 mg(0.15 g~0.3 g)摂取すると死ぬ可能性がある。
(農林水産省HP)

(3)市販のジャガイモによる中毒より、学校菜園、家庭菜園で収穫したものによる中毒事故が多い。

(4)マウス毒性はヒトよりかなり強く、致死量500mg/ LD50(経口)と報告されている。

間違えやすい
植物
最近の品種には、ミニトマトのような果実がつく場合があるが、果実は食べない方が良い。
  作成:矢原正治(熊本大学薬学部附属薬用資源エコフロンティアセンター)