高等植物:ジギタリス
ジギタリス
一般名 |
ジギタリス ( 別名 : キツネノテブクロ ) |
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分類 |
ゴマノハグサ目Scrophulariales 、ゴマノハグサ科Scrophulariaceae 、ジギタリス属Digitalis |
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学名 | Digitalis purpurea L. | ||||||||||||||||||||||||
英名 | foxglove | ||||||||||||||||||||||||
生育地 |
西~南ヨーロッパ原産で、花が美しいため欧米諸国では花壇に植栽されることが多い。日本には江戸時代に渡来し、観賞用に栽培されるが、一部は、野生化している。 |
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形態 |
2 年生または多年生の 草本で、地上部には軟毛があり、5~7月に直立した茎の先端に紫紅色から白、ピンクなどの鐘状の花を総状に付ける。花色は多様で、内側には、斑点が見られる。茎生葉は互生で、根出葉は叢生となる。葉身は卵状の長楕円形で、根出葉や茎下部の葉は有柄であるが、上部の葉は小さく無柄となる。分枝はなく、1年目はロゼット様の葉を付けるのみである。 ![]() ジギタリス(有毒)
![]() ジギタリスの若葉(有毒)
![]() ジギタリスの葉(有毒)
![]() コンフリー(有毒)
![]() コンフリーの若葉(有毒)
![]() コンフリーの葉(有毒)
(写真提供:磯田 進) |
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毒性成分 |
ジギトキシン digitoxin 、ギトキシン gitoxin などの強心配糖体 。 |
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食中毒の型 | 筋繊維膜のNa,K-ATPase 阻害作用による心筋収縮力の増強、迷走神経刺激による心拍数の減少、房室結節の伝導抑制と不応期の延長など。 | ||||||||||||||||||||||||
中毒症状 | 胃腸障害、おう吐、下痢、不整脈、頭痛、めまい、重症になると心臓機能が停止して死亡することがある。 | ||||||||||||||||||||||||
発生事例 |
(症例 1 ) 2009 年4月23日、福島県いわき市 (症例 2 ) 2008 年4月23日、富山県砺波地方 |
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患者数 (過去5年間) |
厚生労働省発表 直近10年間の有毒植物による食中毒発生状況は、こちらのページ |
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中毒対策 | ジギタリスの他、スズランやキョウチクトウなどの強心配糖体を含んでいる植物を鑑賞目的に栽培していることが多く、食用と隔離して栽培するなどの注意が必要である。 | ||||||||||||||||||||||||
毒性成分の分析法 |
血清中のジギトキシンやジゴキシンは、酵素免疫測定法や蛍光偏光免疫測定法にて測定可能である(臨床検査業者にて依頼可能)。 また、LC-MS法での分析も可能である(J Forensic Sci, 45, 1154-8, 2000)。 | ||||||||||||||||||||||||
諸外国での状況 |
日本と同様にコンフリーと間違って食する例が多く見受けられる(J Chin Med Assoc, 73, 97-700, 2010)。 |
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その他の参考になる情報 |
ジギトキシン、ギゴキシンは、もともと植物内に含まれているものではなく、酵素分解により、二次的に生成した成分である。ジギタリス内には、強心配糖体の他、ジギニン diginin などのプレグナン配糖体やステロイドサポニン、フラボノイドも含まれている。
ジギトキシンは、うっ血性心不全の治療薬として用いられている。健常人に 0.01mg/kg 経口投与後、 3 ~ 4 時間後で最高濃度に達し、 3 ~ 6 時間で作用が発現する。血中半減期は 4 ~ 6 日である。主として肝で代謝され、糞便中に 25 %、尿中に 75 %が排泄される。しかし、有効血中濃度範囲が狭いことから、血中濃度モニタリングの対象となっている。 同属植物のケジギタリスに含まれているジゴキシンやラナトサイド C は、ジギトキシンに比べてアグリコン部に水酸基が 1 つ多いため、水溶性が高くタンパク結合率が下がり、作用時間が早くなるとともに排泄時間も早くなる。 |
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間違えやすい植物 |
葉がムラサキ科のコンフリーcomfrey(別名ヒレハリソウ、シンフィツム: 学名 Symphytum officinale L. ) と似ているため誤食され、死亡事故もある。 コンフリーは以前、食用とされてきたが、過剰に摂取すると肝障害を引き起こすピロリジジンアルカロイドを含むことがわかり、厚生労働省から摂食しないよう注意勧告が出ている。 |
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作成:奈女良 昭(広島大学大学院医歯薬学総合研究科法医学)、 神田博史(広島国際大学薬学部) |