高等植物:クワズイモ

クワズイモ

一般名

クワズイモ

分類

サトイモ目 Arales、サトイモ科 Araceae、クワズイモ属 Alocasia
(APG分類体系ではオモダカ目、サトイモ科、クワズイモ属)

学名 Alocasia odora (Lodd.) Spach
英名 Chinese taro
生育地

四国南部、九州南部~琉球、中国(南部、台湾)、インドシナ、インドの暖帯から亜熱帯に分布。低地の常緑樹林下にはえる。
クワズイモ属の植物は、しばしば観葉植物として鉢植えで栽培される。

形態

全体の高さが1m以上になる多年草。根茎は棒状で太く、横伏し、しばしば地表に出る。根茎には葉痕が輪状に残る。葉は鮮黄色で、茎の先端に束生し、葉柄は太く、長さは 60~120cm。葉身は楯形につき、広卵状の矢じり形で鋭頭、基部は心形。側脈は 10~12対で、葉縁は波状になる。
花期は 5~8月。花茎は長さ 15~25cm。仏炎苞は黄緑色でやや白色を帯び、筒部は長さ 4-8cm、舷部は約 10cm。果実は球形の液果で赤色に熟す。

クワズイモの写真
クワズイモ
(写真提供:御影雅幸)
サトイモの写真
サトイモ
(写真提供:後藤勝実)
クワズイモの葉の写真
クワズイモの葉
クワズイモの根茎の写真
クワズイモの根茎

                                                     (写真提供:杉村康司)

  

 
クワズイモ偽茎断面の写真
クワズイモ偽茎断面
クワズイモの根茎断面の写真
クワズイモの根茎断面
クワズイモの根茎断面の写真
クワズイモの根茎断面
クワズイモの果実の写真
クワズイモの果実
  
                                  (写真提供:杉村康司)
毒性成分

シュウ酸カルシウム( calcium oxalate )

食中毒の型 消化器系の中毒、接触刺激性の中毒
中毒症状 悪心、嘔吐、下痢、麻痺、皮膚炎など
発病時期 摂食後すぐに発症
発生事例

(症例1)
2000年6月30日に鹿児島県の宿泊施設で、刺身のつま及び味噌汁の具として使用されたクワズイモの茎を食べた客4名中4名が中毒症状を訴えた。

(症例2)
2008年9月21日 福岡県宗像市で開かれたイベントで、販売された芋類に観葉植物のクワズイモの茎が混入し、買って食べた人に食中毒とみられる症状が出た。イベントで販売された芋類約60束の中に、誤って 10~20束のクワズイモが紛れ込んでいたことが原因。

(症例3)
2008年11月11日に延岡市内のスーパーから、はすがら(ずいき)(サトイモの茎)を購入し、同日、日向市内で酢の物にして摂食した2名中2名が、口腔内のしびれ(イガイガ痛み)の症状を呈し、病院で加療した。購入した「はすがら」に「クワズイモ」が混入したことを原因とする食中毒と判断した。クワズイモが自生している場所にサトイモを植栽しており、収穫時にクワズイモが混入したことが原因。

患者数
(過去7年間)

発生件数 患者総数 摂食者総数
2013年 1件 1人 1人
2012年 1件 5人 5人
2011年 0件 0人 0人
2010年 2件 6人 9人
2009年 0件 0人 0人
2008年 3件 30人 30人
2007年 1件 4人 4人
(2013年12月31日現在)
 厚生労働省発表

直近10年間の有毒植物による食中毒発生状況は、こちらのページ
予防対策

クワズイモは不溶性のシュウ酸カルシウムを含んでいて、この針状結晶による刺激により、中毒症状を発症すると考えられている。
口に含んだ時点で、強い刺激を感じるため、すぐに吐き出し、口を洗浄する。また、飲食以外にも汁に触れることで皮膚炎を起こすことがあるため、観賞用として扱うときにも、ゴム手袋等を使用し、汁が直接肌に触れないようにする。

毒性成分の
分析法

光学顕微鏡による不溶性シュウ酸カルシウムの観察。
HPLCによるシュウ酸の分析。
(「長崎県衛生公害研究所報 46(2000)」より)

諸外国での
状況

肉質の茎や根茎から採れるデンプンは、十分に晒して食用とする地域もあるが、処理が不十分だと中毒する。

間違えやすい
植物

地上部(葉、葉柄)の様子が、サトイモと非常によく似ている。
  作成:後藤勝実、月岡淳子(京都薬科大学附属薬用植物園)