職業能力評価基準を活用した人材育成の手引き

     <職業能力評価基準を活用し人材育成の手引きを作成(ロジスティクス分野)>

                                                                                    



       物流現場で働く中堅管理者を対象として、職業能力評価基準を活用して、訓練評価システムを構築








~公益社団法人 日本ロジスティクスシステム協会
 

物流現場で働く中堅管理者(現場主任・リーダー)育成の手引き

○業界を取り巻く環境及び導入のきっかけ

   ロジスティクス分野では、労働集約的な物流現場の管理運営にあたって、成長期を通じて豊富な現場経験を有し広い知見を有する管理者層が各社内で育成され、長年にわたって後進の指導にあたってきました。しかしながら、近年、この分野では、(1)現場管理層が退職時期を迎え、指導ノウハウの継承が困難、(2) 物流子会社や物流業務のアウトソーシングの進展、非正規雇用への依存の高まり等による現場作業員へのノウハウ継承・蓄積の機会の減少、(3)各種コンプライアンスの要請、各種情報システムの整備等に伴う管理業務の複雑化、が問題となっていました。
  このため物流現場における中堅管理者層の再構築(人材育成・能力向上)が喫緊の課題となっていることから、職業能力評価基準を活用して、物流現場で働く中堅管理者(現場主任、リーダー)の育成を目的とした評価・訓練システムを構築しました。

○取組方法

  社団法人日本ロジスティクスシステム協会(当時)を事務局とし、学識経験者、企業委員からなる委員会、プロジェクトチームを組織し、検討を行いました(厚生労働省委託事業「平成21年度事業主団体による職業能力評価制度の整備事業」として実施)。検討においては、職業能力評価基準を活用して、能力評価項目を選定し、評価ガイドライン・評価シート・教育カリキュラム・評価マニュアルを作成し、これらのツールを統合・編集して「物流現場で働く中堅管理者(現場主任・リーダー)育成の手引き」としてまとめました。
  さらに、関係企業にご協力いただき、今回構築した評価・訓練システムの実行可能性や有効性を実証するために教育訓練トライアルを実施しました。教育訓練トライアルは、中堅管理者の方が20名以上参加し、6日間にわたり基礎的な講習、グループ討議・発表、評価を行いました。トライアル参加者からは概ね有意義であった旨のご意見をいただきました。
  また、同協会の会員企業を対象として、今回の取組を紹介する説明会を開催するとともに、完成した手引きについては、会員企業へ配布し周知を図りました。その後、具体的に活用を希望する企業へも手引きを追加で配布しています。 

○手引きの内容

1 物流現場で働く中堅管理者(現場主任・リーダー)育成の手引き」では、次のとおり企業内での人材育成の手順を解説しています。
  1.  ステップ1 現況把握
  2.  ステップ2 能力要件(目標レベル)の設定と教育課題の把握
  3.  ステップ3 教育カリキュラムの策定
  4.  ステップ4 教育カリキュラムに基づいた教育訓練の実施
  5.  ステップ5 事後評価
  6.  ステップ6 その他(支援体制の整備)
 

2 上記1の各ステップで活用できる「評価シート」を紹介しています。評価シートは、物流現場で働く中堅管理者(現場主任・リーダー)に必要とされる「心構え」、「専門知識」、「管理能力」について、職業能力評価基準を基にニーズ調査や企業でのヒアリング調査の結果を参考に、24項目を選定しています。また、実際に評価を行う場合、評価者や職場環境によって左右されないように、3段階の判定基準(評価ガイドライン)もこの24項目毎に作成しています。




3 さらに、職業能力評価基準を基に評価シートの24項目毎に訓練内容を例示した「教育訓練カリキュラムシート」も作成しています。


※手引き、評価シート及び教育訓練カリキュラムシートは、こちらからダウンロードすることができます。

※手引きは作成当時のまま掲載されており、現在の内容と異なる場合がございますので、ご注意ください。

○今後の課題

 今回対象とした物流現場で働く中堅管理者は、現場を長時間離れるのは困難であるため、業務を行いながら参加可能な教育訓練カリキュラムを作成することが必要です。また、中堅管理者の育成を自社のみで行うことは、特に中小企業にとってはハードルが高いため、教育訓練カリキュラムの作成、教育訓練の実行に対する支援体制を築くことも不可欠です。
 そして、支援体制の一環として、同協会においては、作成した評価シートの24項目の中で、最も実践力が要求されている「改善の進め方」の部分に焦点をあてた教育カリキュラムとして、「物流現場改善士資格認定講座」を平成22年度から開講しています。