化学物質対策に関するQ&A(リスクアセスメント関係)

 ※令和6年2月28日更新
 ※主な更新箇所:No.9-6を追加、No.11-4, 11-9, 11-12, 11-14を更新
 

一般

 

対象物質

 

対象範囲

 

一般消費者の生活の用

 

実施主体

 

実施時期

 

体制

 

危険有害性の特定

 

リスク見積り

 

CB(コントロール・バンディング)

 

CREATE-SIMPLE(クリエイト・シンプル)

 

リスク低減措置

 

RA結果の活用

 

その他

 

本編に無い疑問等は、化学物質管理に関する相談窓口にお問い合わせください。
相談先は、以下のページをご覧ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000046255.html

 
略語   正式名称
     
安衛法 労働安全衛生法(昭和47年法律第57号)(厚生労働省所管)「労安法」と略すこともある
化管法 特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律(平成11年法律第86号)(経済産業省、環境省所管)
毒劇法 毒物及び劇物取締法(昭和25年法律第303号)(厚生労働省所管)
化学物質リスクアセスメント指針 化学物質等による危険性又は有害性等の調査等に関する指針(平成27年9月18日 危険性又は有害性等の調査等に関する指針告示第3号)
GHS 化学品の分類およ及び表示に関する世界調和システム(Globally Harmonized System of Classification and Labelling of Chemicals)
SDS 安全データシート(Safety Data Sheet)

一般

Q1-1.なぜリスクアセスメントを行わなければならないのか。

A.

リスクアセスメントとは、事業者及び労働者がその危険性や有害性を認識し、事業者が労働者への危険または健康障害を生じるおそれの程度を見積り、リスクの低減対策を検討することです。
これにより、化学物質の危険有害性によって起こりうる労働災害の未然防止に繋げることがリスクアセスメントの目的になります。

Q1-2.リスクアセスメントはどのような手順で実施するのか。

A.

リスクアセスメントは大きく次の5つのステップで実施します。
1.化学物質などによる危険性または有害性の特定
2.リスクの見積り
3.リスク低減措置の内容の検討
4.リスク低減措置の実施
5.リスクアセスメント結果の労働者への周知
各ステップの概要については、パンフレット等で確認することができます。

 <厚生労働省 労働災害を防止するためリスクアセスメントを実施しましょう>
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11300000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu/0000099625.pdf

対象物質

Q2-1.塗料やシンナー等の混合物の場合、リスクアセスメントの義務が課されたリスクアセスメント対象物であるかをどのように確認したら良いか。

A.

リスクアセスメントの義務が課される物質は、ラベル表示及びSDS交付義務が課された物質と同一です。
そのため、塗料やシンナーなど、提供された化学品のSDSの「15.適用法令」に「労働安全衛生法 第57条の適用あり」、「労働安全衛生法 表示(または通知)対象物」などの記載があれば、リスクアセスメントの実施義務対象物質が成分として含まれていることになります。
また、SDSの「3.組成及び成分情報」に記載された各成分の情報から「職場のあんぜんサイト」に掲載されている表示・通知対象物のリスト等で確認することもできます。
なお、対象物質は今後も国(政府)によるGHS分類結果に基づき追加されることが予定されています。

 <職場のあんぜんサイト 表示・通知対象物質(ラベル表示・SDS交付義務対象物質)の一覧・検索>
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/anzen/gmsds/gmsds640.html

対象範囲

Q3-1.労働安全衛生法では、「危険性または有害性等の調査」となっているが、危険性と有害性のどちらかのリスクアセスメントを行えばよいか。

A.

危険性と有害性のどちらか一方を実施すれば良いというわけではありません。
取り扱っている化学物質が危険性と有害性の両方に該当するのであれば、危険性と有害性それぞれのリスクアセスメントを行う必要があります。リスク見積り手法によっては、危険性と有害性のどちらも同じ方法で実施することもできますが、危険性と有害性でそれぞれ異なる方法で見積もることが必要な場合もあります。
また、リスク低減措置についても危険性と有害性それぞれの観点から検討・実施する必要があります。

Q3-2.研究や分析等で化学品を少量だけ取り扱う場合もリスクアセスメントが必要か。

A.

リスクアセスメントは業種や事業規模、物質の取扱量等に関わらず、リスクアセスメント対象物を取り扱うすべての事業場が対象となっています。そのため、少量・多品種を取り扱う試験研究業や教育業(大学の研究室等)でも、リスクアセスメントを実施する必要があります。リスクアセスメントの具体的な実施方法としては、取扱物質、作業手順から防護措置を簡単にチェックする方法などが考えられますので、各事業者が適切な方法で行うようにしてください。

Q3-3.少量多品種の化学物質を取り扱っているが、全ての化学物質についてリスクアセスメントを実施しなければならないか。

A.

化学物質ごとに危険有害性の種類や程度が異なりますので、原則、個々の化学物質についてリスクアセスメントを行っていただく必要があります。
ただし、研究や分析など多品種を同一作業で扱っているような場合、すべての物質に対してリスクアセスメントを行うと多大な労力がかかる場合があります。そのような場合には、次のような観点から優先順位を決定し、効率的にリスクアセスメントを行ってください。
・明らかに有害性が高い物質(ばく露限界値が他の物質に比べて10~100倍厳しい等)
・明らかに含有率が高い物質(他の物質の含有量が微量)
・明らかに揮発性が高い物質(他の物質が低揮発性等)
危険有害性の種類ごとに最もレベルの高い危険有害性を有する(例:揮発性が高く、ばく露限界値が低い)化学物質についてリスクアセスメントを実施し、リスクが低いと判断できる、あるいはリスクに基づくリスク低減措置を講じれば、他の物質についてもリスクが低い、十分なリスク低減措置を講じていると判断することができます。

Q3-4.反応等で対象物質を製造する場合、リスクアセスメントは必要か。

A.

製造工程段階で、リスクアセスメント対象物を生成する場合は、製造後の作業についてリスクアセスメントを実施することが必要です。また、製造中間体についてもリスクアセスメントの対象となります。

Q3-5.ラベルに危険有害性の絵表示があれば、リスクアセスメントを実施しなければならないのか。

A.

危険有害性を有するすべての化学品がリスクアセスメント対象物に指定されているわけではありません。そのため、ラベルに危険有害性の絵表示があるからといって、必ずしもリスクアセスメントの実施義務があるとは限りません。ただし、絵表示があるということはその化学品が何らかの危険有害性を有していることになり、仮にリスクアセスメント対象物でなかったとしても、そのような化学品はリスクアセスメントの努力義務の対象となります。
リスクアセスメント対象物以外にも危険有害性を有する化学品は多く存在していることから、ラベルで絵表示を確認したら、SDSで詳細を確認し、リスクアセスメントを実施するよう努めてください。
 

Q3-6.リスクアセスメント対象物からそれ以外の物質に代替すれば、リスクアセスメントは実施しなくても良いか。

A.

リスクアセスメント対象物以外であれば実施義務はありませんが、代替後の化学物質が何らかの危険有害性を有している場合には、リスクアセスメントを実施するよう努めなければなりません。 また、物質の代替を検討する場合には、
・ばく露限界値がより大きい化学物質
・GHS 又はJIS Z 7252「GHSに基づく化学品の分類方法」に基づく危険性または有害性の区分がより低い化学物質
など、危険有害性が低いことが明らかな化学物質への代替を行うものとし、危険有害性が不明な化学物質等への代替は避けなければなりません。

一般消費者の生活の用

Q4-1.リスクアセスメント対象物を含む化学品でも、一般消費者用に販売されているものは、リスクアセスメントをしなくても良いか。

A.

リスクアセスメントはSDS交付の義務対象である通知対象物に対して課せられています(安衛法第57条の3第1項)。そのため、SDS交付の義務から除外される「主として一般消費者の生活の用に供されるための製品」については、リスクアセスメントの実施対象からも除外されます。ただし、業務用洗剤等のように業務に使用することが想定されている製品は、スーパーやホームセンター、一般消費者も入手可能な方法で譲渡・提供されているものであっても上記除外には該当しないため、SDS交付義務の対象であり、リスクアセスメントの対象となります。

なお、リスクアセスメント対象物以外であっても危険有害性を有する化学品は、リスクアセスメントの努力義務の対象ではあるため、必要に応じてSDSを入手し、リスクアセスメントを実施するようにしてください。

Q4-2.ガソリンを使った発電機での作業について、ガソリンのリスクアセスメントは必要か。

A.

市販のガソリンを想定される用途の範囲内で使用する場合は、「主として一般消費者の生活の用に供するための製品」として義務の対象からは除外されるため、リスクアセスメントの実施義務はありません。
しかし、工事現場等で給油の作業等を行う場合には様々な危険が伴い、不完全燃焼による一酸化炭素中毒などの労働災害なども発生しています。そのため、リスクアセスメントの努力義務の対象としてリスクアセスメントを実施し、その結果に基づき換気や作業手順等の見直しに取り組むよう努めてください。

実施主体

Q5-1.どのような事業場がリスクアセスメントを行う義務があるか。

A.

業種や事業場規模に関わらず、労働安全衛生法施行令別表第3第1号(製造許可物質)及び別表第9で指定された物質並びに(令和7年4月1日以降)労働安全衛生規則別表第2で指定された物質と当該物質を裾切値以上含む混合物を取扱う全ての事業場が、使用量に関係なくリスクアセスメントを実施する義務があります。
そのため、製造業や建設業だけでなく、清掃業や卸・小売業、宿泊業、飲食店、医療・福祉業などのサービス業も幅広く対象となり得ます。

Q5-2.塗装作業を外注する場合、リスクアセスメントを実施するのは塗装作業を請け負った事業者か。

A.

塗装作業を請け負った事業者が、購入元等から入手した使用塗料のSDSを使って、リスクアセスメントを実施して下さい。

Q5-3.元請事業者が塗装作業を下請事業者に任せた場合、リスクアセスメントは誰が実施しなければならないのか。

A.

原則、現場作業員を直接雇用している下請事業者が当該作業にかかるリスクアセスメントを実施し、必要に応じてリスク低減措置を講ずる必要があります。
しかし、複数の下請事業者が混在して作業を行う場合等、下請事業者だけではリスクアセスメントやリスク低減措置の実施等における決定等ができない場合には、元請事業者が作業場における監督者として現場全体のリスクアセスメントを行い、その結果を各事業者に提供することが必要です。また、下請事業者が行う個々のリスクアセスメントに参画・支援することが望まれます。
なお、元方事業者と関係請負人における安全衛生管理については、化学工業や自動車製造業、建設業などを対象としたマニュアルやリーフレット等を公表していますので、参考にしてください。

<厚労省 安全衛生関係リーフレット等一覧>
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudoukijun/gyousei/anzen/index.html

Q5-4.元請事業者のもと、複数の下請事業者が同一作業場で作業を行う(混合作業)場合、リスクアセスメントは誰が実施するのか。

A.

同一の場所で複数の事業者が混在作業を行う場合、作業を請け負った事業者は、作業の混在の有無や混在作業において他の事業者が使用する化学物質等による危険有害性を把握できません。そのため、元請事業者が混在作業について事前にリスクアセスメントを実施し、その結果を各事業者に提供することが必要です。

Q5-5.化学品を保管・運搬するだけの運送業者等はリスクアセスメントを実施する必要はあるか。

A.

化学品を運搬する業務は、化学品の製造・取扱いには該当しないため、リスクアセスメント実施義務の対象外となります。
ただし、運送業者が化学品を小分けにしたり、容器を開けて作業を行う等、労働者がばく露する可能性がある場合は、化学品の取扱いに該当するため、リスクアセスメントを実施してください。
 

Q5-6.譲渡・提供先からリスクアセスメントの実施要請を受けたが、リスクアセスメントは譲渡・提供者に実施義務があるのか。

A.

リスクアセスメントは、自らが使用する労働者に化学品を取り扱わせる事業者が実施するものです。そのため、譲渡・提供者が譲渡提供先のリスクアセスメントを行うことは出来ません。 そのため、譲渡・提供者による譲渡・提供先のリスクアセスメントの実施支援を妨げるものではありませんが、実施主体はあくまでも譲渡・提供先の事業者です。

実施時期

Q6-1.リスクアセスメントはいつ実施するのか。

A.

リスクアセスメントの実施時期については、次のように定められています。
<法律上の実施義務>
・対象物を原材料などとして新規に採用したり、変更したりするとき 
・対象物を製造し、または取り扱う業務の作業方法や作業手順を新規に採用したり変更したりするとき
・上記のほか、対象物による危険性または有害性などについて変化が生じたり、生じるおそれがあったりするとき(新たな危険有害性の情報がSDSなどにより提供された場合など)
<指針による努力義務>
・労働災害発生時(過去のリスクアセスメントに問題があるとき)
・過去のリスクアセスメント実施以降、機械設備などの経年劣化、労働者の知識経験などリスクの状況に変化があったとき
・過去にリスクアセスメントを実施したことがないとき(施行日前から取り扱っている物質を、施行日前と同様の作業方法で取り扱う場合で、過去にRAを実施したことがない、または実施結果が確認できない場合)

原材料や作業内容、危険有害性等が変化したときに実施することが義務付けられていますが、これまでリスクアセスメントを実施していない等においても、実施するよう努めてください。

Q6-2.リスクアセスメントの実施時期について、「化学物質等による危険性または有害性等について変化が生じ、又は生ずるおそれがあるとき」とはどういうときか。

A.

新たな危険有害性の情報がSDSなどにより提供された場合、濃度基準値が新たに設定された場合などをいいます。令和4年5月の省令改正によって、SDSを交付する譲渡・提供者には、SDSの記載項目のうち「人体に及ぼす作用」について、令和5年4月1日より、5年以内ごとの定期的な確認や、確認の結果変更がある場合には確認後1年以内の更新が義務付けられます。
譲渡・提供先は、更新されたSDSの入手等を通じて危険有害性の変化を把握した場合には、新たなSDSに基づき、リスクアセスメントを実施しなければなりません。

Q6-3.原材料の新規採用や変更を行う場合、取扱いを開始した後にリスクアセスメントを行えばよいか。

A.

労働災害を防止するためには、必要なリスク低減措置を実施した上で新たな化学品の取扱いを開始することが必要です。
そのため、新規採用や変更によって新たな化学品の取扱いを開始する前に、リスクアセスメントを実施し、その結果に基づくリスク低減措置を検討・実施した上で取扱いを開始する必要があります。

Q6-4.リスクアセスメントが義務化される以前から同じ物質を同じ手順で使用している場合にもリスクアセスメントが必要か。

A.

従来から取り扱っている物質を従来どおりの方法で取り扱う場合は、リスクアセスメント実施義務の対象にはなりません。
しかし、過去にリスクアセスメントを行ったことがない場合等には、事業場における化学物質のリスクを把握するためにも、計画的にリスクアセスメントを実施するようにしてください。

Q6-5.リスクアセスメントは毎年見直しをしなければならないか。

A.

化学物質の新規採用や変更、作業手順の変更等を行う場合には、その都度リスクアセスメントの実施が義務付けられていますが、同じ化学物質を、同じ作業条件及び同じ作業手順で取扱う場合の見直し頻度については定められていません。

ただし、令和4年5月の省令改正によって、令和5年4月1日からリスクアセスメント対象物については、ばく露の程度を最小限度とすることが義務化され、ばく露状況に変化がないことを確認するため、過去の化学物質の測定結果やリスクアセスメントの結果に応じた適切な頻度で再確認をすることが望まれます。

体制

Q7-1.リスクアセスメントを実施する前に実施体制を決める必要があるか。

A.

令和4年5月の省令改正によって、令和6年4月1日からリスクアセスメント対象物の製造・取扱事業場等において化学物質管理者を選任することが義務化されます。
化学物質管理者は、ラベル・SDS等の作成の管理、リスクアセスメント実施等、化学物質の管理に関わるもので、リスクアセスメント対象物に対する対策を適切に進める上で不可欠な職務を管理する者として位置づけられており、リスクアセスメントは化学物質管理者の管理のもと実施することが求められます。

危険有害性の特定

Q8-1.リスクアセスメントを実施する際に、SDSに記載されたどの情報を活用すればよいか。

A.

リスクの見積り時に活用するSDS記載情報は主として次の5項目です。(項目番号はJIS Z 7253より)
2-危険有害性の要約
8-ばく露防止及び保護措置
9-物理的及び化学的性質
10-安定性及び反応性
11-有害性情報
なお、リスク見積り手法によって、どの情報を使用するかは異なってきます。例えば、コントロール・バンディングは、上記の「2」に記載されたGHS分類区分と「9」に記載された沸点等を活用します。また、実測値による方法や使用量等から推定する方法では、「8」に記載されたばく露限界値を活用します。

Q8-2.粉体を水に溶かし、水溶液として使う作業をする場合、リスクアセスメントはどの作業単位で実施しなければならないのか。

A.

リスクアセスメントは、対象の化学物質等を取扱う作業ごとに行うことが原則です。そのため「粉体を溶かす作業」「水溶液を使用する作業」でそれぞれリスクアセスメントを実施する必要があります。
ただし、リスクを評価する上で密接な関係にある複数の作業工程を1つの単位とする場合、同一場所において行われる複数の作業のうち有機溶剤作業と溶接作業などのようにリスクが影響し合うものを1つの単位とする場合など、実状に応じた作業単位でのリスクアセスメントが適切な場合もあります。

Q8-3.アスファルトは、どの状態のときに(どの段階で)リスクアセスメントをすればよいか。

A.

アスファルト原材料を取扱う工程、アスファルト合材の製造工程、アスファルト合材を用いた舗装や防水工事等の作業工程がリスクアセスメントの対象となります。
なお、建設業者が舗装・防水工事後、施主に引き渡した後は、「一般消費者の生活の用に供される製品」となるため、リスクアセスメントの対象ではありません。

リスク見積り

Q9-1. リスクアセスメントの実施方法は決められているか。

A.

リスクアセスメントは次の3つのいずれか又は組み合わせで実施すれば良いことになっています。採用しなければならない方法は決められていません。
1. リスクアセスメント対象物が当該業務に従事する労働者に危険を及ぼし、又はリスクアセスメント対象物により当該労働者の健康障害を生ずるおそれの程度及び当該危険又は健康障害の程度を考慮する方法
2. 当該業務に従事する労働者がリスクアセスメント対象物にさらされる程度及びリスクアセスメント対象物の有害性の程度を考慮する方法
3. 前二号に掲げる方法に準ずる方法(有機溶剤中毒予防規則、特定化学物質障害予防規則等で具体的な措置が規定されている場合に、当該規定を確認する方法など)
上記3つの具体的な方法として「化学物質リスクアセスメント指針」で複数の方法が例示されおり、「職場のあんぜんサイト」には、複数のリスクアセスメント支援ツールが提供されていますのでご活用ください。

また、一部の業界団体等では典型的な作業におけるリスクアセスメントの実施方法、リスクアセスメント結果に基づく必要な措置をまとめたマニュアル等を作成している場合があります。これら業種別のマニュアル等がある場合にはマニュアル等に従った方法でも構いません。

このようにリスクアセスメントの方法は、1つに限定されるものではなく、事業者の実態に応じ、各方法の特徴を踏まえて選択・組み合わせて実施することが可能です。

<職場のあんぜんサイト 化学物質のリスクアセスメント実施支援>
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc07.htm

Q9-2.現場ごとに取り扱う化学物質や作業環境が異なる場合、リスクアセスメントはどのように実施すべきか。

A.

取り扱う化学物質や作業環境が異なる場合には、現場ごと、取り扱う化学物質ごとに実施することが原則です。
一方、同じ物質を同じ条件で取り扱う場合のリスクは同じになりますので、評価情報を共有することが可能です。
また、取扱う化学物質の有害性や揮発性、取扱量や作業時間、換気条件等の作業環境から、最もリスクが高くなる条件でリスクアセスメントを実施し、必要なリスク低減措置を実施することにより、全化学物質についてリスクの低減化が図られたことになります。

また、一部の業界団体等では典型的な作業におけるリスクアセスメントの実施方法、リスクアセスメント結果に基づく必要な措置をまとめたマニュアル等を作成している場合があります。これら業種別のマニュアル等がある場合にはマニュアル等に従った方法でも構いません。

Q9-3.特別規則(特定化学物質障害予防規則、有機溶剤中毒予防規則等)の対象物質は、従来から特別規則に従った管理を実施しているが、リスクアセスメントは別途必要か。

A.

特別規則の対象であっても、リスクアセスメントの実施は義務付けられています。
ただし、特別規則対象物質の場合は、特別規則に定める具体的な措置の実施状況を確認することでリスクアセスメントを実施する方法があります。

Q9-4.化学関係とは無縁の業種で、化学の知識も乏しい。リスクアセスメントをどう進めたらよいか。

A.

「職場のあんぜんサイト」で初級者から上級者までを対象とした複数のリスクアセスメント支援ツールが提供されています。
初級者向けとしては、
・爆発・火災等のリスクアセスメントのためのスクリーニング支援ツール(危険性のみ)
・CREATE-SIMPLE(危険性・有害性)
などがあり、比較的容易にリスクの見積り等を実施することができますので、まずはこれらのツールをご活用ください。
ただし、各支援ツールには特徴や限界がありますので、リスクを見積もった結果が事業場の実態とそぐわない場合やリスク低減措置の検討に繋げられないような場合には、より精度の高い別の見積り手法を検討する等の継続した改善を図ってください。

 <職場のあんぜんサイト>
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc07.htm

Q9-5.リスクアセスメントとしてコントロール・バンディングを使ったが、結果としてリスクレベルが高く評価され、対策として代替物質への変更などが提示されたが実施が困難である。他にどのようなリスク見積り手法があるか。

A.

「職場のあんぜんサイト」で提供されているリスクアセスメント支援ツールのうち、有害性に関してはコントロール・バンディングが最も簡易なツールとして位置づけられ、簡易なツールであるほど安全側の評価、つまりリスクが高く評価される傾向にあります。
各ツールにはそれぞれ特徴や限界があるため、簡易なツールを活用した場合には、リスクを見積もったとしても、次のようなリスク低減措置に繋がらない場合が想定されます。
・リスク低減措置を検討してもリスクレベルが下がらない場合
・具体的なリスク低減措置がわからない場合
・導入コストがかかるリスク低減措置の場合
そのような場合には、より精度の高いツールを活用してリスクアセスメントを実施してください。
・CREATE-SIMPLE
・業種別のリスクアセスメントシート
・検知管を用いた化学物質のリスクアセスメントガイドブック
・リアルタイムモニターを用いた化学物質のリスクアセスメントガイドブック など

なお、これらのリスク見積り手法を実施するためのツールや、リスク見積り手法の選択についての考え方の例を「職場のあんぜんサイト」で紹介していますので、ご活用ください。

 <職場のあんぜんサイト リスクアセスメント支援ツール>
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc07.htm#h2_2
<職場のあんぜんサイト リスクアセスメント実施・低減対策検討の支援>
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc07.htm#h2_3
 

Q9-6.粉じん作業環境測定で第一管理区分であった。化学物質のリスクはないと考えて良いか。保護具はしなくても良いか。

A.

作業環境測定基準における粉じん測定は、じん肺の予防を目的としているため、肺胞にまで到達可能な「吸入性粉じん」が対象です。しかし、粉じんの中に金属等の有害物質が含まれている場合があり、この場合は、粉じんの作業環境の測定の第一管理区分の結果から、じん肺以外の特定の化学物質による健康障害リスクもないと考えることはできません。この場合、粉じんに含まれる有害な化学物質をSDS等から特定し、リスクアセスメント対象物に該当する場合は、必要なリスク低減措置を講ずる必要があります。また、当該物質に、濃度基準値が設定されている場合は、労働者がばく露する程度を濃度基準値以下としなければなりません。現時点でリスクアセスメント対象物に該当しなくても、国によるGHS分類で有害性があると区分されている物質についても、同様の措置をとる努力義務があります。

CB(コントロール・バンディング)

Q10-1.コントロール・バンディングのStep2「GHS分類区分」の選択肢にない区分がSDSに記載されていた場合、どのように入力するのか。

A.

コントロール・バンディングのStep2「GHS分類区分」の選択肢にない区分((例えば「急性毒性 区分5」)がSDSに記載されていた場合は、コントロール・バンディングの「その他」を選択してください。

Q10-2.混合物のSDSに沸点の記載がない場合、コントロール・バンディングには何を入力すれば良いか。

A.

含有成分のうち最も沸点の低い物質の沸点を入力することで、より安全側で評価することになります。
なお、含有成分の沸点も不明な場合には”-”を入力することで、中揮発性(作業温度20℃の場合に、沸点50~150℃)として評価されます。

Q10-3.混合物のコントロール・バンディングの入力方法を知りたい。

A.

混合物の場合、成分ごとに入力する方法と混合物として一括入力する方法があります。
成分ごとに入力する方法は、Step1の化学物質数を”成分数”とし、各成分について、Step2の各項目を選択・入力します。成分ごとに入力することで、各成分のGHS分類区分またはばく露限界値(許容濃度等)を考慮した有害性ランクが決定されます。
一方、混合物として 一括入力する方法では、Step1の化学物質数を”1”とし、Step2の”GHS分類区分”の『選択』をクリック、SDSの「2.危険有害性情報の要約」に記載されている「健康有害性の分類区分」を入力します。この場合、各成分の許容濃度は考慮できず、入力した混合物のGHS分類区分から有害性ランクが決定されます。
コントロール・バンディングはあくまで簡易的な手法であるため、実施者がやりやすい方法を採用して構いません。

Q10-4.コントロール・バンディングの物質リストに含まれていない物質の場合、どのように入力すれば良いか。

A.

コントロール・バンディングのStep2の「化学物質名称」の検索ボタンで表示される物質リストに該当しない場合には、入手したSDSを元に「GHS分類区分」や「沸点」を選択・入力してください。
なお、物質リストに該当した場合であっても、自動反映によるGHS分類区分はあくまで参考としてご活用ください。

CREATE-SIMPLE(クリエイト・シンプル)

Q11-1. CREATE-SIMPLEとコントロール・バンディングとは何が異なりますか。

A.

コントロール・バンディングと比較すると CREATE SIMPLE は、以下の3点からより精緻にリスクアセスメントを実施することができます。
・有害性の程度としてばく露限界値を用いていること
・取扱量少量(mL )単位が細分化されていること
・CB では考慮していない作業条件(含有率、換気、作業時間、保護具等)の効果を考慮していること

Q11-2. CREATE-SIMPLEの物資一覧等を確認したが対象物質が含まれていない場合はどのように対応するのか。

A.

CREATE-SIMPLEではリスクアセスメント対象物等の物質情報を収載していますが、すべての物質が収載されているわけではありません。物質一覧に含まれていない場合には、SDSを確認し、STEP2のばく露限界値やGHS分類情報、物理化学的性状を手入力してください。
また、収載済の物質でSTEP2の情報が自動入力された場合であっても、SDSを確認し正しく入力されていることを確認してください。

Q11-3.CREATE-SIMPLEで物質検索を行い、各種情報が自動入力されたが、「リスクを判定」すると「Step2の物理化学的性状を全て入力してください」とエラーが表示されたが、どのように対応すればよいか。

A.

CREATE-SIMPLEのリスクアセスメント対象では、吸入、経皮吸収、危険性(爆発・火災)を選択することができます。このうち、経皮吸収と危険性(爆発・火災)を対象とする場合には、次の物理化学的性状の入力が必須になります。
・経皮吸収:分子量、水/オクタノール分配係数、水溶解度、蒸気圧
・危険性(爆発・火災):引火点
また、CREATE-SIMPLEに収載され自動入力される物質であっても、一部の物質では物理化学的性状等の一部の情報のデータがないため、自動入力されない場合があります。その場合は
・SDSの「9-物理的及び化学的性質」等を確認し、物理化学的性状を手入力する。SDSにも記載がない場合には安全側の数値(例:蒸気圧の場合は0等)を手入力する
・リスクアセスメント対象の経皮吸収または危険(爆発・火災)のチェックをはずす
ことで判定を行うことができます。

Q11-4.CREATE-SIMPLEで塗料等の混合物はどのように評価するのか。

A.

混合物の場合、成分ごとに評価する方法と混合物としての一括で評価する方法があります。
(1)成分ごとの評価
全成分についてそれぞれ評価するか、SDS等から含有率が高い、ばく露限界値が最も低い、揮発性が大きい等、最も危険有害性高いと想定される代表物質を選定して実施します。なお、ver.3.0(2024年2月リリース)において、混合物中の成分(最大10物質)の一斉評価機能を追加しています。
(2)混合物として評価
SDSに混合物としてのGHS分類結果が記載されている場合には、CREATE-SIMPLEの「GHS分類情報」に手入力することで実施します。ただし、混合物のGHS分類を用いた評価では、成分ごとのばく露限界値を用いた評価に比べ、安全側に評価される傾向があります。

Q11-5.水酸化ナトリウム等の固体を溶かした水溶液は、液体・固体のいずれで評価すべきか。

A.

固体を溶かした水溶液は、液体としてリスクを判定してください。一般的に固体を溶かした水溶液の場合、溶かした固体は揮発しないため、低揮発性の液体として判定することができます。
なお、水酸化ナトリウム水溶液のように溶かした固体の揮発がない場合には、CREATE-SIMPLEによらずとも、定性的に吸入によるリスクは低いものと判断できます。ただし、皮膚や眼の接触等によるリスクがある場合には、SDS等に基づき対応を図ってください。
 

Q11-6.コントロール・バンディングやCREATE-SIMPLEでリスクアセスメントを行う場合、昇華性のある固体(ヨウ素、ナフタレンなど)は、液体または固体のどちらでリスクアセスメントを実施すればよいか。

A.

昇華性のある固体は、ばく露が懸念されるため、液体として取り扱うことが望ましいです。その際、揮発性については固体の蒸気圧に応じて次のように設定することが望ましいです。
・低揮発性:0.5kPa未満
・中揮発性:0.5~25kPa
・高揮発性:25kPa超
 

Q11-7.CREATE-SIMPLEで屋外作業を評価する場合、換気状況はどれを選択すべきか。

A.

屋外作業の場合は換気レベルC(工業的な全体換気)を選択してください。 なお、換気状況を始めたとした各項目の選択時の考え方等については、CREATE-SIMPLEのマニュアルや設計基準も参考にしてください。

<職場のあんぜんサイト CREATE-SIMPLE>
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc07_3.htm
 

Q11-8.同じ物質を異なる作業で実施している場合には、CREATE-SIMPLEではどのように考えればよいですか。

A.

例えば、アセトンを同じ労働者が作業A 、 作業 B 、 作業 C でそれぞれ1時間使用している場合には、それぞれの作業ごとにリスクアセスメントを実施してください。その際に作業時間は作業 A 、B 、 C の合計時間である 3 時間を入力すると、安全側としてリスクアセスメントを実施することができます。
 

Q11-9.CREATE-SIMPLEの評価結果として示されるリスクレベルはどのような意味か。

A.

CREATE-SIMPLEのリスクレベルはI~IVの4段階(吸入ばく露においては、リスクレベルⅡをⅡ-AとⅡ-Bに細分化した5段階)で出力されますが、「STEP2 取扱い物質の情報」に基づく結果と、「STEP3 物質の使用状況」に基づく結果を比較することでリスクレベルが決定されます。
吸入ばく露を例に挙げる、STEP2の情報に基づく「ばく露限界値」または「管理目標濃度」と、STEP3の情報に基づく「推定ばく露濃度範囲」であり、その数値の比較によって、次のようにリスクレベルが決定されます。
・Ⅳ (大きなリスク): 推定ばく露濃度範囲の上限>ばく露限界値または管理目標濃度の上限値×10
・Ⅲ (中程度のリスク): ばく露限界値または管理目標濃度の上限値×10≧推定ばく露濃度範囲の上限>ばく露限界値または管理目標濃度の上限値
・Ⅱ (小さなリスク): ばく露限界値または管理目標濃度の上限値≧推定ばく露濃度範囲の上限>ばく露限界値または管理目標濃度の上限値×1/10
・Ⅰ (些細なリスク) :推定ばく露濃度範囲の上限≦ばく露限界値または管理目標濃度の上限値×1/10
※「化学物質による健康障害防止のための濃度の基準の適用等に関する技術上の指針」(令和5年4月27日付け技術上の指針第24号)を踏まえ、濃度基準値の1/2程度を越えると評価された場合は、確認測定を実施する必要があることから、吸入ばく露においては、リスクレベルⅡを以下のⅡ-AとⅡ-Bに細分化しています。
・Ⅱ-B(懸念されるリスク):ばく露限界値または管理目標濃度の上限値≧推定ばく露濃度範囲の上限>ばく露限界値または管理目標濃度の上限値×1/2
・Ⅱ-A(小さなリスク):ばく露限界値または管理目標濃度の上限値×1/2≧推定ばく露濃度範囲の上限>ばく露限界値または管理目標濃度の上限値×1/10
詳細については、「CREATE-SIMPLEの設計基準」ご確認ください。

<職場のあんぜんサイト リスクアセスメント支援ツール>
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc07.htm#h2_2
 

Q11-10.CREATE-SIMPLEの危険性は、プロセスの状況まで十分に踏まえてリスクを見積もっているか。

A.

危険性は、取扱量や換気状況、着火源の有無等の状況からリスクを見積もっていますが、CREATE-SIMPLEでは十分にプロセスを踏まえているわけではありません。基本的に取扱物質が潜在的に有している危険性のみを対象としているため、プロセスを踏まえる場合は別途「安衛研 リスクアセスメント等実施支援ツール」などをご利用ください。

<職場のあんぜんサイト リスクアセスメント支援ツール>
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc07.htm#h2_2
 

Q11-11.CREATE-SIMPLEは定期的に更新されるのか。

A.

CREATE-SIMPLEではリスクアセスメント対象物質の情報として、国によるGHS分類結果やばく露限界値等が収載されています。これらの情報が更新されることから、原則年1回データ更新を行う予定となっています。またその際には不具合等の修正にも努めています。
 

Q11-12.CREATE-SIMPLEはバージョンアップされますが、バージョンアップごとに再評価する必要があるか。

A.

必ずしも全ての物質について再評価する必要はありませんが、国(政府)によるGHS分類結果で区分の変更が行われた物質、濃度基準値の新規設定・変更が行われた物質、許容濃度等の勧告及び ACGIH TLVにおいて、ばく露限界値の新規設定・変更が行われた物質については、有害性情報の変更により再評価が必要となる可能性があります。また、作業内容が変更された場合や前回の評価から一定期間が経過している場合には、再評価を検討してください。
なお、旧バージョンからの主な変更点は、職場のあんぜんサイトに掲載されているCREATE-SIMPLEの更新履歴、マニュアル及び設計基準をご確認ください。
 

Q11-13.リスクの低減対策として、物質の代替を検討しています。CREATE-SIMPLEの実施レポートではどのように入力すればよいか。

A.

物質の代替を検討している場合には、代替後の物質のばく露限界値をCREATE-SIMPLEの対策後の列のばく露限界値 の欄に手動で入力してください。また、あわせて揮発性・飛散性レベルも変わる場合には、同様に手動で選択する必要があります。
 

Q11-14.ver.3.0(2024年2月リリース)において、初回のリスクアセスメントの段階で呼吸用保護具のオプションを選択できなくなったのはなぜか。

A.

リスク見積りのためのばく露の推定の段階で、最初から呼吸用保護具の装着を選択してしまうと、リスク低減対策を化学物質リスクアセスメント指針に示した優先順位に従って検討することなく、その結果を先取りして、最も優先順位の低い呼吸用保護具の使用を前提とした評価になってしまうためです。初回のリスクアセスメントを実施した後、化学物質リスクアセスメント指針に従って対策を検討した結果、呼吸用保護具の装着を選択した場合にどの程度のばく露になるかを推定する際は、呼吸用保護具の装着のオプションを入れて推定ばく露濃度を出してください。また、呼吸用保護具の選択を行う場合は、個人ばく露測定を行い、その結果に基づいて要求防護係数を算出し、それ以上の指定防護係数を有する呼吸用保護具を選択する必要があります。

リスク低減措置

Q12-1.リスクアセスメント実施後のリスク低減措置の実施は義務か。

A.

特定化学物質障害予防規則、有機溶剤中毒予防規則等の特別規則に講ずべき措置が定められている場合は、リスクアセスメントの結果に関わらず、定められた措置を必ず実施しなければなりません。
さらに、令和4年5月の省令改正によって労働安全衛生規則により、次のような義務が課されます。
・リスクアセスメント対象物に労働者がばく露される程度を最小限度とする義務(令和5年4月施行)
・リスクアセスメント対象物のうち濃度基準値が設定された物質については、屋内作業場で労働者がばく露される程度を濃度基準値以下にする義務(令和6年4月施行)

なお、リスクアセスメント対象物以外の危険有害性を有する物質についても、ばく露される程度を最小限度にする努力義務が課されるため、リスクアセスメントの結果を踏まえ、リスクが高いと判断した作業から優先して必要なリスク低減措置を講じるよう努めてください。

Q12-2.リスクを低減するためにはどのような措置を講ずるべきか。

A.

法令に定められた措置がある場合にはそれを必ず実施するほか、法令に定められた措置がない場合には、化学物質リスクアセスメント指針に基づき、次の優先順位でリスク低減措置の内容を検討する必要があります。
 1.危険性又は有害性のより低い物質への代替、化学反応のプロセス等の運転条件の変更、取り扱う化学物質等の形状の変更等又はこれらの併用によるリスクの低減
 2.化学物質等に係る機械設備等の防爆構造化、安全装置の二重化等の工学的対策又は化学物質等に係る機械設備等の密閉化、局所排気装置の設置等の衛生工学的対策
 3.作業手順の改善、立入禁止等の管理的対策
 4.化学物質等の有害性に応じた有効な保護具の使用
なお、これ以外の方法で有効なリスク低減措置がある場合は、その他の方法によっても構いません。
リスク低減措置の検討にあたっては、「リスクアセスメント実施支援システム(コントロール・バンディング)により出力される対策シートの一覧」や「作業別モデル対策シート」もご活用ください。

 <厚生労働省 リスクアセスメント実施支援システム(コントロール・バンディング)により出力される対策シートの一覧>
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148537.html
<職場のあんぜんサイト 作業別モデル対策シート>
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc07_6.htm

Q12-3.リスク低減措置を実施した後に改めてリスクの見積りを実施しなければならないか。

A.

リスク低減措置を実施した場合には、そのリスク低減措置の効果を把握するためにも、実施後のリスクを見積もることが望ましいとされています。
なお、CREATE-SIMPLE等のように換気や保護具等のリスク低減措置の条件を入力してリスクを見積るツールでは、条件を変更することで、リスク低減措置の効果をあらかじめ見積もることが可能です。

 <職場のあんぜんサイト リスクアセスメント支援ツール>
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/kag/ankgc07.htm#h2_2

RA結果の活用

Q13-1.リスクアセスメントの結果について、保存の義務はあるか。

A.

令和4年5月の省令改正によって、令和5年4月1日からリスクアセスメント結果等の記録を作成し、次のリスクアセスメントを行うまでの期間(次のリスクアセスメントが3年以内に実施される場合は3年間)保存することが義務付けられます。

Q13-2.リスクアセスメントを実施した結果を記載する決められた様式はあるか。また、結果を行政に提出しなければならないか。

A.

令和4年5月の省令改正によって、令和5年4月1日から、リスクアセスメント結果等の記録を作成し次のリスクアセスメントを行うまでの期間(次のリスクアセスメントが3年以内に実施される場合は3年間)保存することが義務付けられます。従来、労働者への周知項目として定められていた次の項目を記録として保存することが必要です。
・リスクアセスメント対象物の名称
・業務内容
・リスクアセスメント結果
・リスクアセスメント結果に基づき事業者が講じる労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置の内容
これらの記録については、様式は規定されていません。そのため各事業場で作成や管理がしやすい様式を活用して下さい。作成にあたっては、「職場のあんぜんサイト」に「リスクアセスメント実施レポート(結果記入シート)」の一例を掲載しており、またCREATE-SIMPLEで出力可能な「実施レポート」や「結果一覧」等もリスクアセスメント結果の記録として活用頂けますので、参考にしてください。

なお、行政への提出は不要ですが、リスクアセスメントの実施状況等の確認のため、労働基準監督署等から提示を求められる場合があります。

Q13-3.リスクアセスメント結果の周知はどのような方法で実施するのか。

A.

リスクアセスメントの結果は、SDSの周知と同様に、次のいずれかの方法で労働者が常時確認できるよう周知することが義務付けられています。
1.リスクアセスメント対象物質を取り扱う作業場の見やすい場所に常時掲示し、又は備え付ける
2.書面を労働者に交付する
3.電子媒体に記録し、かつ、作業場に当該記録を常時確認できる機器(パソコン端末など)を設置する

Q13-4.リスクアセスメントの結果等の記録について、次にリスクアセスメントを行うまでの間(次のリスクアセスメントが3年以内に実施される場合は3年間)保存しなければならないこととされていますが、対象の化学物質を今後使用しない場合、記録の保存は必要なのでしょうか。

A.

リスクアセスメント対象物の使用を中止した場合は以降の期間についてリスクアセスメント結果の保存の必要はありません。

その他

Q14-1.リスクアセスメントの実施について、罰則はあるか。

A.

リスクアセスメントの実施自体については、罰則は設けられていませんが、実施すべき要件に該当する場合に実施していなければ法律違反になり、労働基準監督署の行政指導の対象となります。