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- 第4回社会保障審議会年金部会 議事録
第4回社会保障審議会年金部会 議事録
日時
令和5年5月30日(火)16:30~18:30
場所
東京都港区新橋1-12-9新橋プレイス
AP新橋 3F Aルーム
AP新橋 3F Aルーム
出席者
- 会場出席委員
-
- 菊池部会長
- 玉木部会長代理
- 出口委員
- 小野委員
- 権丈委員
- 小林委員
- 駒村委員
- 是枝委員
- 佐保委員
- 島村委員
- たかまつ委員
- 永井委員
- 原委員
- 平田委員
- 百瀬委員
- オンライン出席委員
-
- 武田委員
- 深尾委員
- 堀委員
議題
(1)年金部会における議論の進め方(案)
(2)次期制度改正に向けた主な検討事項(案)
(3)被用者保険の適用拡大
(2)次期制度改正に向けた主な検討事項(案)
(3)被用者保険の適用拡大
議事
- 議事内容
- ○総務課長 定刻になりましたので、ただいまより第4回「社会保障審議会年金部会」を開催いたします。
皆様、お忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。
初めに、本日の委員の出欠状況を報告します。
嵩委員から御欠席の連絡をいただいております。
また、権丈委員からは遅れて参加される旨の御連絡をいただいているほか、島村委員も到着が遅れておられるようです。
武田委員、深尾委員、堀委員はオンラインでの御参加となります。
出席委員が3分の1を超えておりますので、会議は成立しております。
続いて、資料の確認をお願いします。
本日の部会はペーパーレスで開催しております。傍聴者におかれましては、厚生労働省のホームページから資料をダウンロードして御覧いただくようお願いいたします。
本日の資料は、
資料1 年金部会における議論の進め方(案)
資料2 次期制度改正に向けた主な検討事項(案)
資料3 被用者保険の適用拡大
はなっております。
また、参考資料として、労働政策研究・研修機構が5月16日に公表した調査の結果を御用意しております。この調査は、社会保険の適用拡大の対象となった企業の対応状況や対応意向、また、適用拡大に伴う短時間労働者の働き方の変化などを調査したものです。この調査の主な結果につきましては、本日の資料3の中で紹介いたします。
最後に、オンライン会議における発言方法につきまして、オンラインで参加されている委員におかれましては、御発言の際は「手を挙げる」ボタンをクリックし、部会長の指名を受けてから御発言をお願いいたします。御発言の終了後は、マイクをミュートにしていただくようお願いします。
本日の会議は、傍聴希望者向けに動画配信システムでライブ配信を行っております。
私からは以上でございます。以後の進行は、菊池部会長にお願いいたします。
○菊池部会長 皆様、本日もお忙しいところお集まりいただきまして、どうもありがとうございます。
カメラの方は、ここで退室をお願いいたします。
(カメラ退室)
○菊池部会長 それでは、早速、議事に入らせていただきます。
本日は「年金部会における議論の進め方(案)」、「次期制度改正に向けた主な検討事項(案)」、そして、「被用者保険の適用拡大」、以上3つを議題としております。
まず、議題1及び2につきまして、事務局から御説明をお願いいたします。
○総務課長 まず、資料1を御覧ください。「年金部会における議論の進め方(案)」でございます。
左側の黒い太線で囲ってあるところが、年金部会の進め方の案となっております。本日、第4回の部会の後、それぞれの課題について順次議論をお願いしたいと考えております。議論いただく課題の内容につきましては、この後、御説明する資料2に掲げられております。
その後、年明け、令和6年1月になりますと、経済前提専門委員会より、基本的な考え方などの経過報告を受け、また、財政検証に併せて行うオプション試算についても御議論をいただきます。令和6年春には、経済前提専門委員会より結果の報告を受け、その後、厚生労働省で検証作業を行い、令和6年夏には、財政検証の結果を御報告いたします。その後、制度改正の内容について、より具体的な御議論をいただき、令和6年末に、部会としての取りまとめをお願いしたいと考えております。
次に、資料2を御覧ください。「次期制度改正に向けた主な検討事項(案)」といたしまして、これまで3回の年金部会で、委員の皆様から御指摘いただいた課題を事務局で整理いたしました。
4つに分類しておりますが、「総論的な事項」として、こちらに掲げられているようなこと、2点目に、「多様なライフコースに応じた年金の給付水準の示し方」とございますけれども、こちらは、いわゆるモデル年金と言われているもの以外の示し方があるといったところを念頭に置いたものでございます。
また、マル2の「現役期と年金制度の関わり」としまして、本日御議論いただく被用者保険の適用拡大のほか、子育て支援、障害年金などの御議論をしていただきたいと思っております。
また、マル3「家族と年金制度の関わり」として、遺族年金、いわゆる「年収の壁」、3号被保険者、加給年金。
最後、マル4で「その他の高齢期と年金制度の関わり」ということで、在宅老齢年金制度などの高齢期の働き方との関係、基礎年金の拠出期間の延長、マクロ経済スライドの調整期間の一致、年金生活者支援給付金について御議論をいただければと思っております。
資料1・2の説明は、以上となります。
○菊池部会長 ありがとうございました
それでは、御意見・御質問などございましたら、お願いいたします。
本日から、座席の配置を変えていただきまして、私から非常に見晴らしのよい配置としていただきましたので、何かございましたら、会場の方は挙手でお伝えいただければと思います。オンライン参加の方は、挙手ボタンを押していただければと思いますが、いかがでしょうか。
それでは、たかまつ委員からお願いします。
○たかまつ委員 検討事項(案)について、2つお伝えしたいことがあります。
1つは、マル1の「総論的な事項」のところや、そのポツにある年金教育のところで、前回も申し上げたのですが、子供の声を聴く場をぜひ設けていただきたいなと、この部会が主体となって開催できないかというところです。前回も申し上げましたが、今年4月から施行されましたこども基本法によりまして、若者の政策を決める際には、若者の声を聴くことというのが、政府や地方自治体に義務づけられました。年金制度が、今決めたことが、今の子供たち初め将来世代にわたることなので、ぜひ、当事者の方の話を聴く場を設けていただきたいという点です。
2つ目は、現役世代の給付金額をより多くするために、どうやって世代間格差をなくしていくのかという点についても、ぜひ、お話しする機会を設けていただきたいというところです。今で言うと、マル4の「その他の高齢期と年金制度の関わり」の「マクロ経済スライドの調整期間の一致」とか、この辺りのところをもう少し幅広い議論でお話しさせていただきたいなと思っています。将来世代の給付を増やすために、今の受給者の方に理解していただくこと、あるいは、我慢していただくことも場合によっては必要かと思いますが、一定以上の所得の方への課税を初め、給付の在り方について、幅広く議論する機会を設けていただきたいと思いました。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、出口委員お願いします。
○出口委員 今後の議論の進め方のところについては、大枠了解でございますが、2つほどお願いをしたいと思っております。
まず第1に、前回も申し上げましたが、人口減少の今後の流れを踏まえたときに、社会保障全般とリンクした大きな改革の視点からの検討もぜひお願いしたいと思っています。人口構成が大きく変化していく中で、現役世代の負担増を抑えながら、全世代型社会保障を実現するという切り口から、将来のグランドデザインをしっかり示して、それを実現する一つの方策としての年金制度の議論を進めていただきたいということが、まず1点目でございます。
2点目は、検討事項のところにございますが、「基礎年金の拠出期間の延長」と「マクロ経済スライドの調整期間の一致」の、早い段階での議論をぜひお願いしたいと思っています。次期改正に向けた議論としては、この辺りが最大のポイントとなると受け止めています。この2点については、建設的な議論を行うためにも、できるだけ早い段階で取り上げていただいて、現行制度の問題点と対応方法の選択肢をできるだけ分かりやすく示して、丁寧に進めていただけたらと思っております。
以上、2点でございます。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、是枝委員お願いします。
○是枝委員 2点御提案があります。
1点目は、まず、「家族と年金制度の関わり」の中で、同性カップルの年金制度上の扱いについて、一度検討すべきではないかと思います。
2点目は、年金部会のアーカイブ配信ですが、今はライブだけで配信となっていますが、なるべく関心を持っていただいた方がタイムリーに見ることができるように、一定期間アーカイブ配信を行うように提案させていただきます。他府庁の審議会におかれても、内閣府の税制調査会やこども家庭庁のこども家庭審議会などでは、アーカイブも行っておりますので、より開かれた国民的議論の場とすべく、アーカイブ配信について検討をお願いいたします。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、佐保委員お願いします。
○佐保委員 ありがとうございます。
議論の進め方について、1点質問いたします。令和2年改正に向けた議論では、2018年12月から、「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」が設置され、適用拡大に伴う関連データや動向の検証、関係者からのヒアリング等による実態把握などが行われ、2019年9月に年金部会に対し、議論の取りまとめが報告されています。
次期制度改正に当たっては、このような懇談会を設置する予定はあるのかどうか。それとも、懇談会は設置せず、年金部会において議論を進めるのか、現時点でお分かりであれば、教えてください。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
事務局、いかがでしょうか。
○年金課長 ただいまの御指摘は、私どもも前回の経緯として承知しております。
その上で、今回についてどうするかは決めておりません。部会長とも御相談しながら、あるいは、本日、適用拡大の議論がありますので、先生方の意見も踏まえながら、検討していきたいと思っております。
○菊池部会長 ありがとうございます。
駒村委員から手が挙がっています。
○駒村委員 ありがとうございます。
こういう守備範囲で議論が始まっていくということで分かりました。
前回お願いしたのは、新人口推計では、外国人の比重が増えていくことを踏まえて、外国人の加入者・受給者の実態を把握していただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
○菊池部会長 ありがとうございます。
ほかにはいかがでしょうか。
会場はよろしいですか。
オンラインの方もよろしいですかね。
ありがとうございます。
それでは、年金部会における議論の進め方と次期制度改正に向けた主な検討事項に関しては、ただいま、皆様からいただいた御意見も踏まえて、事務局と相談させていただきながら、次回以降の年金部会の議題を検討してまいりたいと存じます。
どうもありがとうございました。
早速ではございますが、本日から、個別の課題の検討が、1巡目の検討に入ってまいります。本日は、まず議題3「被用者保険の適用拡大」についてでございます。事務局から説明をお願いいたします。
○年金課長 年金課長でございます。
資料3を御説明します。画面あるいはお手元に御用意ください。
「被用者保険の適用拡大」ということで、目次がございますが、資料が70ページ近くあります。1巡目の議論ですので、ここでは方向性を示すというよりは、現状あるいは課題につながるようなデータを充実させています。なるべく議論の時間を長くということで、駆け足で御説明することをお許しください。
3ページは、適用拡大を進めるにあたっての基本的な考え方になります。
まず、「被用者にふさわしい保障の実現」ということで、厚生年金という被用者を支える仕組みを拡大すると、こういう観点が1つです。
それから、2番目、働き方や企業による雇い方の選択をゆがめないと。負担の回避、あるいは就業調整に対して中立になるような形を目指すということです。
それから、3番目は「社会保障の機能強化」。本人にとって、報酬比例給付が加わることはもちろんですが、基礎年金全体の水準の確保にもつながるという効果がございます。
この3点からこれまで適用拡大を進めてまいりました。
4ページは、これまでの経緯になります。最初は平成16年改正の辺りで話し合われて平成24年改正で実現したのち、令和2年改正(前回改正)で拡大をしました。事業主側の経営への影響に対する懸念から段階的に進めてきたというのがこれまでの経緯でございます。
5ページ目、現在の適用拡大のルールの概要であります。真ん中の段に表がありますが、2016年10月から「5つの要件」で始まりました。「20時間以上、8.8万円、1年、学生、それから500人超」と、これが右のほうになって特に企業規模要件は50人超まで拡大しています。
6ページは要件について、どういう考え方で設定しているかです。
20時間以上については、被用者としての実態を備えているかどうかを判断する基準として、労働時間を基にし、さらには雇用保険の適用の時間も参考にしています。
8.8万円については、健康保険等より高い設定になっていますが、こちらは、国民年金の第1号被保険者の定額負担あるいは給付水準とのバランスから経緯として入っております。
それから、学生の話があって、一番下は企業規模要件でして、こちらは法律の本則上は、既に企業規模要件はありませんが、附則で「当分の間」の経過措置という形で設定をしております。
7ページ目は、どれぐらいの規模感かという人数です。これは前回改正時のものをアップデートしたもので、ちょっと数字が変動しているものですが、大まかなイメージということで御紹介します。
フルタイムの下が短時間被保険者で、これまでに青いところに記載がある「52万人」、「180万人」の部分が企業規模要件50人超ということで既に決定された対象です。その右側のところ「130万人」が、企業規模50人以下、さらにその右側の非適用事業所については、フルタイムの方も適用除外になっています。これが右側の縦ですが、フルタイムで「200万人」という数字が括弧で書いていますが、ここについて「非適用業種、5人以上、個人事業所」の場合だと20万人、その下に短時間の方が「9万人」とあり、こういった数字が今後の適用拡大を考える上での規模感になります。
続いて8ページは、前回の財政検証のオプション試算の結果です。これは適用拡大の範囲を3パターンで広げた場合に、給付水準にどのような影響があるかというもので、赤い字で書かれておりますが、どのケースにおいても、特に基礎年金の水準についてプラスの効果を持つという結論が得られています。これが、先ほど御紹介した機能強化という側面のエビデンス的な数字でございます。
9ページ以降は、これまでの御指摘ということで、この部会でも一度御説明しております。9ページは、前回の年金部会議論の整理で、10ページは、附帯決議、あるいは法律の附則の規定です。11ページ、12ページ、13ページは、昨年の「全世代型社会保障構築会議」の報告書のうち、適用拡大、勤労者皆保険の部分の抜粋、こちらも再度のお配りになりますので、説明は省略します。
14、15、16ページは、第1回~3回の年金部会でいただいた御意見をまとめたものです。総論的事項からそれぞれのテーマについてですが、さらに、今日ご議論いただいて、御意見がさらに増えていくと考えております。
17ページからは「短時間労働者の適用拡大」についてで、18ページは短時間労働者の適用拡大のイメージになります。一番上の企業規模要件は、これまで拡大してきたものをさらにどうするかというところで、それから先ほどの要件にもあった「20時間」あるいは「106万円」、これは「8.8万円」相当ですけれども、この2つをどう考えるか。この赤い長方形で囲われた四角の部分の拡大、これが短時間労働者に対する適用拡大のイメージです。
19ページからは、データの御紹介です。19ページは、現に加入されている短時間被保険者の数で約79万人です。昨年10月の適用拡大によって、それまで60万人程度だったものが約20万人増えています。同様に、事業所数については右側の青いところですが、現在は8万事業所となっており、それまで3万事業所程度だったのが、大きく増えたということで、500人~100人超への適用拡大による影響と見ております。
20ページは、その入られている方の性別・年齢階層別の分布、男性については、60代以上の方が多く、女性については、中高齢層で満遍なくいらっしゃるというデータです。
21ページは、入られている方の標準報酬月額の分布で、下が報酬、上は人数です。これは時系列で見ておりまして、青が、この制度が始まった平成28年当時、それから、赤、緑、ピンクと移っていきますが、右上のほうに上昇しています。賃金が上がってきて、それから、人数も増えてきているということで、収入増を伴いながら適用拡大が進んでいることが見てとれます。
22ページは、入っていらっしゃる方の業種別の分布です。一番多いのは卸・小売業で14万7,000人、それから、公務という数字がございます。
23ページは、実際入っているかどうかではなくて、現在、どういった業種に多くパート労働者がいらっしゃるかというデータです。これを見ると、左側ですが、卸・小売業が一番多くて、宿泊、飲食業が2番目になっています。それから、右側は、その占める割合ですが、やはりこの2つが高いというのがございます。
先ほどの22ページと比較しますと、22ページは今入っていらっしゃる方ですが、潜在的な加入者といいますか、加入になり得る方では23ページで、そういった違いが見てとれると考えております。
24ページ、現在、企業規模要件50人まで拡大が決まっていますが、その先として50人未満と50人以上で分けて見た場合に、業界別で雇用者が占める割合が違うかというものです。結論は、傾向の違いは見られないということで、これまで拡大の対象が多かった業界が、引き続き対象になってくると考えられます。
25ページも、同じ50人で分けて見た企業数の分布です。御覧いただくと、産業に関係なく、全産業とも圧倒的に49人以下の企業が多くなります。どんな大企業でも1社というカウントになりますので、そういう意味では50人以上の企業は、絶対数としては少なくなり、49人以下が多くなります。企業規模要件を撤廃した場合には、この49人以下の企業が対象になるわけですが、多くは法人ということで、既にフルタイムの方は適用されている一方で、企業規模要件が撤廃になった場合は短時間被保険者の方が増えてくるということで、企業への影響はこういうところで見てとれます。
26ページは、短時間で働いていらっしゃる方について、雇用者の分布で見ております。こちらは先ほどと少し違う色合いになっておりまして、50人以上の企業で働いている方が多くて約7割というデータです。そういう意味では、これまでの適用拡大により、来年10月までには、各業界とも満遍なく多くの短時間労働者の方が適用の対象になる一方で、そこから先については青い層の方々が、適用されていない形で残るといいますか、いらっしゃることが分かります。
27ページから32ページまでは、参考資料で配っているJILPTでおまとめいただいた調査からスライドという形で抜いたもので、原典はお配りしたものを御覧いただければと思います。これは昨年の適用拡大の前後で、企業あるいは雇用者の方がどういう意識の変化あるいは行動の変化があったかという狙いで調べていただいたものになります。
27ページは、従業員501人以上企業で、これは平成28年10月から既に適用されておりますが、この企業の方に伺ったものです。その下ですが、「できるだけ適用する」という方針の企業が増えています。それから、右側は、実際にそこで働いていらっしゃる方の標準報酬の推移で、こちらも先ほどのグラフと同じですが、右上のほうにシフトしてくる傾向です。
それから下は、同じ501人以上の企業の方に対して、今後の方針ということで聞いており、企業規模ごとでみた場合に企業規模が大きいほど、今後も適用を推進するという層が多くなっています。
28ページは、昨年から対象になった100人超の企業に伺ったものです。最初は、適用の方針で「できるだけ適用する」としたのが55.1%、それから、その理由が右側にあって、「適用する」というところは、人数の確保や待遇の改善、定着を図りたいという御意見があります。他方で「適用しない」という方針では、御自身が希望しない、あるいは、人件費の増加につながるという答えが出ております。
それから、何らかの見直しを行ったかどうかについて、「見直しを行った」というのが38%で下のグラフです。その右側が見直しの内容で、労働時間の延長あるいは短縮を行ったという回答です。
29ページも、昨年10月から対象になった100人超企業にお尋ねしたものです。今度は、労働時間がどのように変わったかという質問に対して、下の右側ですが「適用推進のための見直しのみを行った」企業では、労働時間が「長くなった」という回答が多い一方で、「適用回避の見直しのみを行った」というところは「長くなった」ところは0でして、両方行ったところは、その中間となっています。
その下は、見直しの有無にかかわらず、労働時間に何か変化があったかという点について聞いたところ「横ばい」が多くなっています。企業の取組みの方向性が労働時間の変化に影響するという点が見てとれると思っております。
続いて30ページは、来年10月から適用拡大になる50人超の企業に伺ったものです。これも同じように、どのように調整するかという質問について、来年の話なので「未定・わからない」が一定数いらっしゃいますが、「推進する」というのが28%あり、理由についても、先ほどと同じように「適用しない」のところでは、「人件費の増加につながる」としたのが30%です。先ほどの100人超の企業ではこの回答は10%でしたので、企業規模が小さくなるとこの観点からの回答が少し増えています。
31ページは、労働者御本人に聞いたもので、どういう理由で短時間労働者として働いているかということで、労働時間が短い方ほど「自分の都合のいい日・時間に働きたい」という回答が多くなっています。それから、その下は、被用者保険に加入できるという条件について、求人情報として魅力を感じるかというお尋ねで、こちらも労働時間ごとに聞いていますが、労働時間が長い方ほど魅力を感じる割合が高いということでした。
32ページも御本人に聞いておりますが、適用拡大の認知度についてで、100人超の既に適用拡大されている企業では、「知っている」が約8割である一方で、これからの企業も含めると57%、こういう数字です。
それから、中段の右側ですが、昨年10月の適用拡大に際して、社会保険に加入したか、あるいは回避したかということの内訳です。こちらは、被保険者の種類別に聞いておりまして、第1号被保険者では「変わらず加入した」あるいは「延長して加入した」という方が77%、他方で、第3号被保険者については、約半分が「回避した」と回答し、もう約半分の方は「加入した」となっています。これがいわゆる「年収の壁」と言われる就業調整で、その下に理由がありますが、加入した方の理由としては、適用によるメリットになります、年金額を増やしたいから、という回答があります。他方で、しなかった理由の中で一番多いのは、手取り収入の減収となっています。この辺りは「年収の壁」の問題ですが、先ほどの検討項目にも掲げたとおり、改めての回で取り上げたいと思っており、本日は適用拡大を中心に議論をお願いしたいと思っております。
33ページは、先ほどのJILPTと違う資料ですが、就業調整の有無と理由について聞いており、参考としてつけたもので本日は説明を省略いたします。
続いて、個人事業所の適用拡大です。35ページが現行の適用ルールで、この赤枠のところが強制適用であり、法人については、1人でも雇用されている場合は強制適用になります。個人の場合は、5人以上か未満かで分かれておりまして、さらに、5人以上については、法定業種かそうでないかということで分かれています。法定業種は、17業種あって、それ以外の非適用業種について例示として書いています。
次は歴史的経緯についてで、36ページを御覧いただきますと、この17業種に至るまでの変遷が大正から始まっています。直近では、前回改正で17番目の士業を追加し、その前は昭和28年でかなりあいています。当時の文献等を調べますと、小規模の事業体であったり、あるいは労働者の変動が大きくて把握がなかなか難しいということを勘案して、適用する対象を決めてきたという経緯があります。今後は同じようなことが言えるのか、あるいは、状況が大分変わっているのかというところがポイントかと思っております。
37ページからはデータになります。まずは事業所数で、法人・個人で業界別に見ています。法人は基本的に強制適用になりますので、個人は薄い青のところの数字になりますが、多いのは飲食サービス業が約21万、それから、クリーニング・理容・美容が約9万と、こういったところです。
38ページは比率で見ておりまして、やはり同じ業界の比率が高くなっています。
39ページですが、先ほど法人の場合は基本的に強制適用になるということで申し上げましたが、その法人の割合を見ております。下側が法人の規模ですが、右のほうで100人、50人と増えていくと、さすがにこのぐらいの人数を雇っている企業は法人化しているということです。左側は法人化の割合が低くなってまいりまして、10人以下あるいは5人未満ですと、そこにあるような業界は、法人の割合が低くなっている。つまりは個人でやっていらっしゃるということになります。
40ページ、先ほどは事業所数でしたが、今度は働いていらっしゃる方の数でして、これも多いのは飲食サービス業が約67万人、それからクリーニング・理容・美容が約18万人という数字です。
41ページは、今の実数を比率にしたもので、これも幾つかの業界では個人事業所が多くなっています。
42ページは御参考で、今は強制適用の事業所でないところは、労使の合意で任意包括として厚生年金の事業所になることができます。そのデータを挙げており、幾つかの業種で、この任意適用が多いというのが見てとれます。
次からは、働き方の多様化に伴って今後の適用の在り方をどう考えるかというテーマでまとめたものです。
44ページは、週労働時間20時間未満の短時間労働者への適用拡大についてで、これは「全世代型社会保障構築会議」の報告書から赤いところを抜いたものです。それから、2段落目には、複数の事業所に勤務するマルチワーカーの方についての検討という指摘をいただいております。以下、そのデータになります。
45ページは、厚生年金が適用されない形で働いていらっしゃる方が、どれぐらいいるかについてです。左側は第1号被保険者、右側は第3号被保険者について、就業形態別の割合ですが、赤で囲っている部分になりまして、約4割の方が、会社員または公務員という働き方をされています。本来であれば、厚生年金が考えられる働き方をされているということです。
46ページは第1号被保険者の方について、左側の円グラフでは総数1,435万人のうち、先ほど紹介した4割(507万人)の方が会社員または公務員となっていますが、その方々について右側で労働時間別あるいは賃金別でみております。例えば、色を塗ったところですが、15~20時間未満には45万人の方がいらっしゃるということですので、20時間未満で働いている方の規模感が、この辺りで把握できるかと思っております。
同様に、47ページは、第3号被保険者の方についてで、こちらは、やはり総数の約4割(370万人)の方の分布状況を右側で見ておりまして、労働時間でみると、週15~20時間未満の層に100万人いらっしゃることが分かります。
48ページですが、週労働時間20時間未満の方への適用の議論については、雇用保険について適用拡大を検討するというのが、3月のこども・子育て政策のプランに掲げられております。セーフティネットの構築という観点から、適用拡大を検討していくと聞いており、年金がこれと直ちに連動するということではありませんが、過去の経緯の中で、雇用保険の適用範囲を参考にしたこともあり、どうするかということを検討していく必要があると考えています。
49ページからは、話が変わって副業・兼業に関するデータです。左側は、本業も副業も雇用者として働いていらっしゃる方のデータで、実数が増えており、それから全体に占める割合も増えているというデータです。右側は収入階級別に並べたもので、多いのは収入が低い層の方々、家計の足しといいますか、生活の必要性から副業・兼業されているというのが想像されます。一方で右側の層では、雇用者総数に対する割合が高くなっており、こちらは、様々な能力を生かされて複数の仕事をされている方というのが想像されます。
50ページはJILPTの調査で、副業・兼業を行う理由ということで、被保険者の種別に分けて聞いていますが、第1号被保険者の方では「一つの仕事では、日々の生活を維持できないから」が多くなっています。他方で第3号の方では、そういう回答はやや減りまして、むしろ時間を有効に活用したい、あるいは、自分で活躍したい、そういう回答が多くなっています。
その下は、今は第1号あるいは第3号として加入されているわけですが、副業・兼業先の時間を通算して社会保険を適用することへの御意見ということで、第1号の方々は「望ましい」という回答が多く、第3号の方々は、そこは減って「何とも言えない」という回答が多くなっています。
51ページは現行の適用ルールで、例えば2つの事業所についてそれぞれ適用基準を満たしていれば、厚生年金が適用になります。そして、その2つの事業所の給料を合算して報酬月額を決めて、年金給付あるいは保険料の計算に用いており、そういうような現行手続の紹介になります。
52ページからは、フリーランス・ギグワーカーの方への適用の話です。冒頭は「全世代型社会保障構築会議」の報告書で、ここで御指摘いただいているのは、2段落目ですが、労働基準法上の「労働者」に該当する方々については、被用者保険が適用される旨を明確化すること、それを早急に講ずるべきであるということです。これは、今の実務でも該当するところですので、私どもとしても、しっかりと対応していくところと思っています。
報告書では、「そのうえで、」ということで、上記以外の「労働者性」が認められない方については、新しい類型の検討も含め、働く方々の実態あるいは諸外国の例を参考としつつ、検討を深めるべきである。こういう御示唆をいただいておりまして、その実態が分かるような資料を集めております。
53ページは、まず、フリーランスといいましても、どれぐらいの方がいらっしゃるのかという調査です。一番サンプルが多いのが左側の内閣官房の調査でして、そこにあるような方を定義として、462万人ということです。
54ページは、その方々がどういう業種に就かれているかというところで、多様な業種に就かれていることが見てとれます。
55ページ。そういう働き方を選択した理由を聞いておりまして、自分の仕事のスタイルで働きたい、あるいは、自由にしたいということで、まさにフリーという言葉に近い回答が多くなっています。
56ページ。これは、働き方の継続の意思ということで聞いておりまして、続けたいという方が多いということです。
57ページ。年収について、フリーランスとしての年収が赤い実線です。点線はフリーランスとはまた別で、一般の雇用者の年収を別の統計から取っており、そこと並べると、同じような傾向にあるということです。
58ページ。年齢構成で、40代以上のミドル・シニア層が中心になっています。
59ページ。1日当たりの就業時間あるいは就業日数で、こちらは、まさに多様な状況で、そこは一般の雇用者、労働者の働き方とは違う形が見てとれます。
60ページ以降は、フリーランスの方々に対するこれまでの政府全体の取組みの御紹介です。60ページは、上の箱で2つのことを言っております。1つは、ガイドラインを令和3年3月に定めたというもの。それから先ほど御紹介した実態調査です。箱の一番下ですが、取引の適正化に関する法律が提出され、4月末に成立しました。議論の中心は、取引の適正化、あるいは、契約の明確化を図る、そういう形での保護が進んでまいりました。
61ページは、令和3年3月のガイドラインの内容です。適用と関係してくるのは、右側の労働関係法の上の部分です。このところに、フリーランスの方に労働関係法令が適用される場合ということで書いてあり、基本的考え方として、契約の形式が請負なのかどうなのかといった名称にかかわらず、実態に基づいて「労働者」かどうか判断するということです。ここで労基法上の「労働者」と認められる場合には、当然、労働法に関する様々なルールが適用されるということで、ガイドラインに示されています。
その下では、「労働者性」をどう判断するのかということで、労働法の世界ですが「使用従属性」を見て、他人の指揮下において行動されているか、あるいは、報酬が労働の対価として支払われているか、こういう点を確認して「労働者性」を捉えるということについて、ガイドラインで明記されています。この「労働者性」の判断に基づいて被用者保険の適用も関わってくることになります。
62ページは、少し話がそれますが、先ほど御紹介した、取引の適正化の法律についての概要です。こちらは、適用に関する話というよりは、契約をきちんと書面で明示する、あるいは、報酬をきちんと支払われる期日を設定する、そういうことが定められています。
63ページは、今の厚生年金保険法の適用に関する条文です。第9条では「使用される者」と簡潔に定義されておりまして、これを実務で解釈して運用しています。「使用される者」とは、適用事業所に労務を提供し、これに対して一定の報酬を支払う「使用関係がある者」になります。
その下ですが、労働基準法で言う「労働者」、先ほど「労働者性」について御紹介しましたが、この「労働者」は厚生年金法の「使用される者」に含まれることになります。つまりは、「労働者」ということであれば、イコール厚生年金の「被保険者」になることについては確立しています。
他方で、逆が真でないところがあり、厚生年金の「使用される者」ではあるけれども、「労働者」ではないというのが、最初の箱の※のところで書いてある「法人の代表者」で、この方々は労働基準法の「労働者」ではありませんが、法人から労務の対象として報酬を受けている場合には「使用される者」となって、被保険者資格を取得することになります。実際、実務の取扱いでも、こういう方々に対して厚生年金・健康保険の適用を行っております。
一番下は、その「使用される者」の解釈です。労働基準法と同じですが、形式的な契約形態にかかわらず、事実上の使用関係にあるかどうかで判断します。フリーランスの方についても、先ほどのガイドラインにもあった「労働者性」があるのかどうか、あれば厚生年金の被保険者として適用になりますが、他方で、労働者性がない場合についてどう考えるかというのが、この議論のポイントになってくると思っております。
64ページ。諸外国の比較でして、先ほどの報告書では、諸外国の例も引きながら、ということですが、各国とも検討中で参考になるような知恵を得られてないという状況です。引き続き、情報収集に努め、参考になるようなものがあれば、御紹介したいと思っております。
ここで挙げているのは、各国の年金制度における対象者の比較で、日本以外の国については、一番上に書いておりますが1階建てとなっており、日本でいう厚生年金に相当する制度があって、そこに被用者も自営業者も加入するという仕組みです。日本の場合だと、フリーランスの方が労働者なのかということで、国民年金と厚生年金のどちらに加入するのかという問題が出てまいりますが、諸外国については、加入する制度は一つであるということで、あとは、どれぐらいの収入あるいは所得の基準で入るかどうかで適用が決まってきます。ここが日本と仕組みとして違っており、日本の仕組みが特殊というか、例外的な形であると思っております。
最後、年金広報の取組みということで、65ページ以降です。広報、周知については、しっかりとメリットを伝えるべきであるということで、これまでの部会の議論でもご指摘いただきました。私どもとしても、広報を充実したいということで、66ページの下ですが、幾つか検討しております。中でも、左側3つは新しい取組みを考えており、まずは、好事例の収集で、企業の取組みによって企業活動が活性化した企業、こういう好事例を収集して、そういうものについて有識者を含めた検討会を開催して活用を検討したいと考えています。それを踏まえて、メリットをしっかりと伝えるような広報コンテンツを作成して、一番右にあるとおり広報を実施したいと考えています。広報は、これまでの適用拡大でも進めていますが、来年10月にはまた適用対象が広がりますので、しっかり展開していきたいと思っています。
67ページは、現在の適用拡大の広報について、ホームページやパンフレットの御紹介です。
68ページは、左側のマル1からマル3の類型の方が、右の黄色に塗っているような形で年金額が増えていくというメリットについて、先ほどの好事例の収集と併せて、今後も周知を進めてまいりたいと思っております。
駆け足になりましたが、私からの資料説明は以上になります。よろしくお願いいたします。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、御意見・御質問がございましたら、お願いいたします。
まず、会場の皆様、そして、オンラインの皆様という順番で行きたいと思います。それでは、私の左手の皆様でご意見などあれば挙手をいただければと思いますが、いかがでしょうか。
佐保委員からお願いします。
○佐保委員 ありがとうございます。
前置きですが、今後、各テーマについて深く議論されると思いますので、第3号被保険者制度や「年収の壁」などについては、各テーマの回次で話をしたいと思っており、今日は議題である「被用者保険の適用拡大について」意見を申し上げたいと思います。
令和2年改正法は、社会保険の適用拡大について踏み込み不足であり、不十分な改革内容であったと考えております。連合としては、雇用形態や勤務先の事業所の規模などの違いにより社会保険の適用有無が変わることは不合理であるという認識の下に、速やかに企業規模要件を撤廃するとともに、個人事業主に係る非適用業種の見直しや、5人未満の事業所への適用などを実現すべきと考えております。
企業規模要件の段階的引き下げはあくまでも経過措置であることを踏まえ、次期改正でまずは企業規模要件を撤廃することをこの年金部会において早期に共通認識とし、そのことを前提に、標準報酬月額の上限の拡大や、複数事業所で勤務する労働者に対する適用を徹底する仕組みの構築に向けた議論を進めるべきだと考えております。
また、4ページには、適用拡大のこれまでの経緯が記載されておりますが、例えば今後賃金要件を具体的に議論する際には、そもそも賃金要件がどのような経緯で設定され、どのような根拠に基づいた金額であるかなど、議論を深めるための資料を準備いただければと思っております。
続いて、18ページの短時間被保険者数及び特定事業所数の推移について、企業規模要件の引き下げにより強制適用分が大きく増加しておりますが、一方で、任意適用の被保険者数、特定適用事業所数は、あまり大きな変化が見られません。早期の厚生年金保険の適用が将来の年金額に大きく影響することを踏まえれば、次期改正までの間、任意適用事業所を増やしていく取組みも重要と考えます。
そのために、任意適用事業所において、どのような課題認識の下でそのような判断に至ったのか、労使ではどのようなやり取りが行われたかなどを調査した上で、任意適用事業所を増やすための取組みを議論すべきと考えます。
私からは以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、是枝委員お願いします。
○是枝委員 私からは3点申し上げます。未適用事業所について、20時間以上の労働者について、最後に、20時間未満の労働者についてです。
まず1点目に、適用義務のある未適用事業所への対応です。資料3の7ページにありますが、まず、適用拡大以前の問題として、そもそも適用義務のある未適用者が105万人ほど残されていることが大きな問題です。人手不足の時代の中、法律に反して、社会保険を適用せずに労働者を雇っている事業主に対しては、もっと厳しく接してもよいのではないかと思います。罰則の強化も含めて、何らかスピードを上げる制度的な工夫ができないのか、検討の余地があると思います。
2点目に、20時間以上の短時間労働者への適用拡大です。一日は誰にとっても24時間であり、労働基準法で週40時間以内と定めている中、その半分以上、雇用関係の下で働いている者を、被用者性があるとみなす現行の労働時間基準には一定の合理性があると考えております。たくさんの課題がある中、より被用者性が高い者につき、まず社会保険に取り込むことが喫緊の課題ですので、次期年金改正では、まず、週20時間以上の労働者における適用拡大への法制化を行うべきだと思っております。
その上で、企業規模要件についてですが、参考資料にも示されていますが、2022年10月の100人超500人以下の企業への適用拡大は、滞りなく行われたと評価してよいのではないかと思います。次、2024年10月実施の50人超100人以下の企業への適用拡大の結果を見極めた上で、次回改正で、企業規模要件を撤廃するべきではないかと思っております。
続いて、学生の適用除外についてですが、こちらは、2019年9月に「働き方の多様化を踏まえた社会保険の対応に関する懇談会」の報告書でも問題提起されておりますが、私は、学生の適用除外についても撤廃してよいのではないかと考えております。学生については、学生特例の猶予制度もありますが、保険料を追納しなければ年金額には反映されません。大学生の半分ほどが、貸与奨学金を借りて、返済を行っている中、数年分の国民年金保険料を追納するという負担は大変重いものでございます。
大学院の進学者が増えたり、学び直しによる再入学などが増えていく中、学生であっても、週20時間以上就労する被用者性の高い者については、社会保険に適用したほうが本人の保険料負担の軽減と給付の充実につながるのではないかと思っております。こちらについては、社会保険の問題ではなく、所得税の問題なのですが、学生が所得税で103万円の壁が非常にきつくありまして、年収が103万円を超えた途端に、親の扶養控除ががつんと消えるという現象が起こります。配偶者控除は段階的に消えていくのですけれども、学生の扶養控除が、いきなり0か100かという形になっていて、社会保険を適用したとしても、税のほうで就労調整が起きてしまう可能性がありますので、所得税のほうも併せて検討をすべきだと思います。学生のアルバイトにおける就労調整とか、社会保険加入の希望、その効果などについては、ぜひ、学生側の立場及び事業主側の立場からの意見もお伺いしたいと思います。次回以降で結構ですが、もし、分かる範囲で教えていただければと思います。
3点目、週20時間未満の労働者の適用拡大についてです。こちらは、次回の法改正では難しいとは思いますが、将来的に、週20時間未満の労働者を公的年金制度でどのように扱うのがよいのか、少しずつ論点を整理していくべきだと考えております。その1つの方向性は、権丈委員の提案する「厚生年金ハーフ」という構想かと思います。事業主には、労働時間にかかわらず一律で保険料を徴収する一方、20時間未満の労働者は、保険料の納付を任意とした上で、その任意納付を行わなかった場合は、給付は半分とするという構想かと思います。
この構想については、雇用という働き方しか存在せず、2号と3号しかいないと考えた際には、非常にきれいな制度に見えます。しかし、実態としては、自営業者に近いのに、雇われて働いている時間がわずかにあって、その雇われ部分のわずかな収入と保険料をもって基礎年金の満額を受けられるような仕組みだとすると、それは大いに不公平なものとなってしまいます。権丈委員がおっしゃるとおり、社会保険制度としてのゆがみの根源は1号にあり、1号があるがゆえでのひずみも持ちながら、悪さ加減の比較等の指摘の必要があるわけですが、もし、事業主に労働時間にかかわらず一律で保険料を徴収することを考えるのであれば、週20時間未満の労働者については、1号被保険者と2号被保険者の中間ぐらいの位置づけですので、例えば「1.5号被保険者」とでも名づけて、厚生年金と国民年金のミックスで対応するという方策もあるかと思います。
「1.5号被保険者」につきましては、厚生年金保険料は通常どおり18.3%の労使折半としつつ、それが国民年金保険料に満たない場合については、残額を国民年金保険料として労働者に支払っていただくということもあるかと思います。つまり、2号になり切れていない部分は、1号としての保険料も一部求める形で、負担と給付の公平性を確保できるのかなと思っております。これは、8.8万円より下のところに適用拡大した際に、国民年金との公平性をどう担保するかという観点でも大変重要になってきます。
現在の1号被保険者に認められている、学生や障害年金受給者あるいは低所得者の納付猶予、減免などについての1.5号の扱いについては、厚生年金部分については通常どおり納付いただいて、残額の国民年金保険料につき猶予や免除をした上で、それを受けたら給付調整を行うという形があり得るかと思います。権丈委員の「厚生年金ハーフ」案では、低所得者については、厚生年金の労働者負担分も免除できるという構想かと思いますが、短時間労働者が必ずしも低所得者ではないという前提の下、どのような制度設計がよいのかということを考えていきたいと思います。
育児や介護などのケアを担いつつ、週20時間未満働く人は、現行の2号被保険者と3号被保険者の中間、言わば「2.5号被保険者」として、報酬の18.3%の厚生年金保険料を払っていただいて、残額については免除する、基礎年金は満額支給するというような形でもよいのかなと思います。3号や「年収の壁」の議論については、別の機会に譲りますが、この「2.5号被保険者」という形でも、「年収の壁」がきれいに消える形となります。こちらも完璧な構想ではなく、もちろん問題点は多く含んでおるのですが、「厚生年金ハーフ」など、ほかの案と悪さ加減の比較をしながら、将来的に、20時間未満の労働者に適用拡大する際には、どのような枠組みがいいのか、この年金部会にて少しずつコンセンサスを固めていきたいと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、駒村委員お願いします。
○駒村委員 ありがとうございます。
6ページに記述してあるマル2ですね。定額の国民年金保険料よりも低い負担で基礎年金に加えて報酬比例部分の年金が受けられることが不公平であると書いてあるのですけれども、これは、国民年金の1万6,500円相当と、最低報酬の8万8,000円に18.3%を掛けて、この2つがバランス取れているということだと思います。バランスとれる下限が8.8万円だというようなことを言っているのだと思いますけれども、これは、基礎年金の拠出金の構造、それを加入者レベルに落とすと、大体報酬の5%相当が基礎年金拠出金で、13%相当が厚生年金相当なので、そうした構造を無視して、表面的に金額を比べて、それがバランス取れているかどうかという、不公平論はちょっとおかしいのではないか。財政構造まで遡るとこういう議論はできないのではないかと思います。もし、8.8万円の方の保険料が全額基礎年金相当だったらば、厚生年金の報酬比例部分はゼロ保険料ということになってしまいますので、そんなことはないわけですので、ここの不公平であるという議論は、財政構造上ちょっと納得できない記述になっています。
それが18ページのほうになると、この8.8万円の下限のロックを外してしまえば、もう少し下までこの範囲が広がってくる。給料部分の縦方向に押し込めることができることになると思いますので、先ほど佐保委員もおっしゃいましたけれども、この賃金要件の8.8万円は、本当にこれは必要なものなのかどうなのか。合理的根拠があるのかどうなのかということは、きちんと議論したほうがいいのではないかと思います。
それから、8ページは、事務局に、もう少し丁寧な資料を用意していただいたほうがいいと思うのですけれども、適用拡大、3号を減らしていくことと、それから、1号を減らしていくことが必要です。極端に言えば、国民年金1号を0人にはできませんけれども、徹底的に減らしていくことが、制度の安定性につながっていく。極端に言うと、国民年金の加入者が0になれば、基礎年金拠出金は0になって、保険料収入も0ですけれども、国民年金には積立金のみが残るという財政構造になって、財政は安定するのではないかと思います。そういうことは現実にはないと思いますけれども、このケースIIIで、2から3になると、マクロ経済制度の停止期間のギャップが8年まで縮まってくるということで、同時停止に近い状態まで持ってこられるということを示唆しているわけですけれども、この辺、もう少し詳しくお金の流れというか、この2から3のところの財政状況を詳しく説明する資料があれば、もう少しこの意義が分かっていただけるような資料になるのではないかと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
先ほどの佐保委員も含め、今後に向けていろいろお求めいただいている分もありますので、それは事務局で受け取って、今後の議論に向けて御検討いただければと思います。
それでは、小林委員お願いします。
○小林委員 御説明ありがとうございました。
多様な働き方や女性の社会進出、将来の安心の確保の観点から、被用者保険の適用拡大の方向性については、理解できるものの、企業経営に与える影響を念頭に置いた議論が必要だと思っております。私が懸念している影響とは、社会保険料の事業所負担の増加、主に第3号被保険者資格を維持するための就業調整による人手不足の加速化についてです。この点を踏まえて、3つのテーマについて、意見を申し述べたいと思っております。全ての点について、厚生労働省事務局から、何らかのコメントを少しでもいただけたらなと思っております。
まず、1つ目のテーマは、議論の前提となるデータについてです。今後の議論をより意味のあるものにするための提案として、お聞きいただければ幸いです。合計3点ですが、1点目です。先ほど申し上げた、私の懸念点を踏まえた議論を行うためには、100人超の適用拡大を境に、事業主と被保険者の社会保険料の負担や年金の受給見込額、従業員の働き方がどう変わったのかが分かる、詳細なデータが不可欠です。従業員の働き方の変化については、今回、データをお示しいただきました。他方、保険料負担や年金の受給見込額の変化については、今回の資料に見当たらないと思っております。適用拡大に関する次回の議論までに、何らかの参考となるデータをお示しいただくよう、改めてお願い申し上げます。
2点目についてです。2024年10月に50人超へ拡大した場合、短時間被保険者数と適用事業所数がどの程度増えるかを知りたいと考え、7ページの効果推計、19ページの推移など、関係のありそうなページを拝見したのですが、結論が出ませんでした。今、厚生労働省の手元にデータがあれば、この場で御回答いただくか、もしくは、次回資料として提示いただくよう、お願い申し上げます。
3点目です。33ページになります。就業調整の理由について詳細なデータを取っておりますが、これだけでは詳細な分析は難しいと思います。回答者が、1号被保険者なのか、3号の被保険者なのか、週に何時間働いているのかといったバックグラウンドとのクロス集計があれば、理路整然とした議論が行えるものと考えます。回答者の属性が分からないのであれば、その点に留意して、このデータを使うことが適切だと考えます。
2つ目のテーマに移ります。広報の徹底についてです。2024年10月には、従業員数50人超の規模にも適用拡大されます。パート労働者の中には、社会保険の適用拡大によって手取りが減り、社会保険加入のメリットを感じずに、労働時間を短縮する労働者も存在します。資料3の32ページ、右側の棒グラフによりますと、第3号被保険者のうち、約半分が労働時間を短縮し、社会保険加入を回避しています。中小企業の人手不足に拍車がかかっているという見方もできるのではないでしょうか。資料3の66ページに、被用者保険適用拡大のさらなる推進に向けた環境整備、広報の充実を行っていくとの記載がございます。その際、制度に対する誤解や理解不足に基づいた働き方の選択を防ぐという視点を持ち、今後、適用拡大の対象となる企業を含めた、幅広い中小企業の労使双方に対する広報を、政府として強化すべきと考えております。
3つ目のテーマは、今後の適用拡大に向けた工程についてです。現時点では、従業員数50人超への適用拡大が決定しておりますが、資料3の9ページから12ページ辺りを見ますと、今後は、企業規模要件の撤廃、個人事業所の非適用業種の解消に向けた議論が行われるものと思います。基本的に、適用拡大という方向性に異論はないものの、社会保険料は、税と異なり、累積が赤字であっても、負担しなければなりません。また、人手不足を加速化させる可能性も否定できません。企業経営の急激かつ大きな悪影響の発生を避ける必要があります。企業規模要件を拙速に撤廃するのではなく、20人、10人という形で細かく段階を設定し、その都度、労使双方への影響を調査し、その時々の状況に応じて、段階の細かさやスケジュールを柔軟に見直すことが重要ではないかと思います。今後、適用拡大、撤廃に向けたスケジュールの進め方について、政府の現時点での考え方を御教示ください。
以上です。よろしくお願いします。
○菊池部会長 ありがとうございます。
最後は、ここでこれから議論することだとは思いますが、特に1つ目に関して、データの所在等についての御質問がございました。最後について、小林委員よろしいですか。これからここで議論すると。
○小林委員 それは承知しております。
○菊池部会長 事務局、いかがでしょうか。
○年金課長 1つ目は、適用拡大をした場合に、負担と給付がどう変わるかというところについて、これは、それぞれの報酬や労働時間で変わってきますが、1つのイメージは、資料3の68ページにあげており、ここではパターン1、2、3ということで、それぞれの方が適用拡大前だとこれぐらいの負担、受取りであったのが、拡大後はこうなりますと示しています。人によって変わってくるので、個々の例をミクロで言うと、こういう変化が例として考えられますが、マクロな影響と言われれば、今はちょっと分かりません。
それから、2つ目の来年10月に50人超に拡大した場合にどれぐらい増えるのかという人数については、7ページに、企業規模50人超だと180万人程度、50人以下とした場合には、130万人程度が新たに適用されるというのが今、手元にある数字です。
去年の拡大時の例で見ますと、推計よりも若干少ない数になる見込みです。というのは、短時間労働者として適用されるのではなく、正規職員、フルタイムになっている方もいらっしゃいまして、適用拡大に伴う短時間労働者への適用という意味では、この当時よりも、減っている可能性があるのですが、現時点の推計としてはこの数字でございます。
それから、就業調整のデータは確かに様々でして、今お話がありました33ページは、令和3年の調査ですので、去年の適用拡大前になります。そういう意味では、去年の10月のほうが、より切迫感といいますか、リアルなものとして調整を検討された可能性があり、本日御紹介したJILPTの調査では、調整された方が約半分というデータになっています。どういった形でどのタイミングで調査するかになるのですが、御指摘もありましたので、ちょっと調べて、何かほかに追加で出せるか検討したいと思います。
以上です。
○小林委員 いずれにしましても、新しいデータを収集して、推測を、どのぐらい、どう増えるのかというところを、しっかり議論の場にしたいので、ぜひよろしくお願い申し上げます。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
権丈委員はよろしかったですか。
○権丈委員 僕は手を挙げていなかったけれども、先ほど私の名前がでてきたこともありますので、発言しようかなというのがあります。こうした会議では、発言しなければいけない人たちにまず発言してもらおうというのが姿勢としてありまして、手を挙げてなかったんですけどね。
資料2の「次期制度改正に関する主な検討事項(案)」についても発言していいですか。
前回、原委員から加給年金について、そして、原委員と島村委員から遺族年金についての詳細な説明がありまして、私は2人の意見に賛成するという意見を述べたので、「家族と年金制度の関わり」のところに、最初に遺族年金があるけれども、その次に加給年金を置いてもらいたいと思います。
一昨年の2021年の「年金学会シンポジウム」でも、遺族年金と加給年金の改革が、これからのなすべき年金改革の最優先に位置づけられていました。「加給年金は、可及的速やかに改革をすべき」と言って滑っているのもいましたけれども、年金に詳しい人たちは、大体遺族年金と加給年金をしっかり改革していくのは、次の課題であるなというのが落ち着いている話です。いわゆる「年収の壁」とかを年金部会で話し合うのは、素人丸出しでちょっとあれだなというのもあるのですけれども、いろいろ年金局の事情もあるのだろうからと思いますが、年金部会が持つ限られた時間を効率的に使うという目的を掲げるとすれば、遺族年金と加給年金を最優先に置くべきではないかと思います。
今日のテーマの適用拡大についても、コメントしておきますと、適用拡大は、本当に政治力学を学ぶ上でのよい教材になるわけですが、この種の議論をする際に、2つのアプローチが考えられます。1つは、次の一手をどうするかというアプローチがある。これまで取られてきた適用を、どの範囲まで拡大するかという2004年前夜から取られてきた手法はこれです。もう一つのアプローチは、目指すべきゴールを先に描いて、それに向けて、みんなで時間をかけて努力していこうというアプローチになります。
今回は、全世代型社会保障構築会議の報告書がベースになっているので説明しておくと、この報告書は後者のアプローチを取っています。資料3の12ページを御覧ください。黒い星の3つ目に、週労働時間20時間未満の短時間労働者への適用拡大が書かれています。第1段落の最後のほうに、「そのための具体的な方策について、実務面での課題や国民年金制度との整合性を踏まえつつ」とあります。これ、線を引かなければいけないぐらい大事なところですね。
この文章は何を意味しているかを説明したいので、次に、資料3の15ページを御覧ください。最後の文章に、「20時間未満の短時間労働者について、国民年金制度との整合性等を踏まえつつ、被用者保険の適用拡大を図るためには、厚生年金の事業主負担のみを課す形にならざるを得ないのではないか」と書かれています。この発言は、この年金部会で私がしたわけですけれども、第2回会議でしたのは、議事録を見ると、「事業主負担のみを課す形になるといいますか、そうならざるを得ません」と発言しています。事業主負担のみを課す形になるように、全世代型社会保障構築会議の報告書は書かれています。20時間未満は別に被用者保険の適用拡大されていないので、1号の人は1号、3号の人は3号、その上に厚生年金の事業主負担が載るというものなので、この制度を不公平と言うのであれば、今の制度は不公平ということになるわけです。
そういうことで、当時、昔は「1.5号」と呼んでいたけれども、全然受けもしなかったので、香取さんがあるときから「4号」と言い始めたから、この前は「ハーフ」と言って、それで、みんなの記憶に残ったかなという段階ですね。だから、20時間未満のところは、1号も手をつけない、3号をも手をつけない。ただ上に載せるというだけの話ですね。全世代型社会保障構築会議の報告書は、その事業主負担のみを20時間未満に課す形になっていて、構築会議の報告書に基づくと、事業主負担の形にどうしてもなるのですね。なるというか、そういうふうになるように書いているわけです。
岸田内閣の下で言われている「勤労者皆保険」は、岸田さんが政調会長をしていたときにまとめていた報告書に、「所得の低い勤労者の保険料は免除、軽減しつつも、事業主負担を維持することなどで、企業が事業主負担を回避するために生じる見えない壁を壊す」と書かれています。これは、私は、第2回年金部会で話した「厚生年金ハーフ」を、20時間未満のところに適用するという話になります。だけど、ここは被用者保険を適用拡大してないのだから、国民年金1号との整合性を持って、20時間未満には適用拡大していないのだから、昔のままで被保険者による選択肢もない。全世代型社会保障構築会議の報告書では、適用拡大というよりは、適用除外規定の見直しと書かれています。つまり、被用者に対して、適用を除外している規定そのものがおかしいのであって、適用をどこまで可能なのかという、適用拡大のアプローチはもうやめていいよねという表現に似ています。
そういう「勤労者皆保険」という目標に向かって、今の年金政策は進んでいると。そこに、事業主負担を新たに迫られる人たちが、いかに抵抗していくかというレントシーキングが展開されて、そうした状況の中で、労働市場では、本格的に労働力希少社会が始まり、労働力を獲得するために、支払余力のある企業が、適用除外規定によって守られて、言わばダンピングしているような企業に対して、容赦ない勝負を仕掛け始めているというのが現状かなと。
そうした状況を眺めながら、年金局は、この案件を進めていくために、年金部会をどのように活用していくかを考えているだろうけれども、これまで、年金部会はあまり役に立たなかったんだよねというのがある。今回は、役に立ちたいなと思っています。
こうした状況を理解したメディアは、どこまで弱者の人生を救えるかという課題を担っているわけですが、そういうドラマが展開されているものとして、年金回りの政治経済学的な動きを、これからも楽しませてもらおうと思っていますということで、終わりたいと思います。
以上です。どうも。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、小野委員お願いします。
○小野委員 ありがとうございます。
3ページに、「適用拡大はどのような働き方であっても、共通に保障される給付である基礎年金の給付水準の確保につながり」とありますように、適用拡大は給付水準を引き上げる効果があるということです。それを数値で示したのが8ページの資料なわけですが、なぜこうなるかというのは、前回の財政検証において作成いただいた資料の中で、解説されているということでございます。
また、64ページで、先進諸国の制度の一覧をお示しいただきまして、ありがとうございました。以前、被用者保険につきまして、所得比例型の制度を持つ諸外国の例から見ても、胸を張っていられるような状況でないと申し上げましたけれども、2016年に、1層型の定額制度に移行したイギリス以外の所得比例型の国の適用要件を確認しますと、日本の厚生年金の適用要件の特殊性が確認できるのではないかということでございます。
被用者保険の適用拡大は、これはもう将来世代の給付水準を引き上げることや、それによって、将来世代が負うことになる公的扶助の負担というものを抑制する効果があるということだろうと思います。したがいまして、この政策は、負担ではなくて、未来への投資と捉えるべきだと思いますし、この投資をしないという選択は、この将来世代に背を向けることになることは、認識すべきだと思います。
それと、被用者保険の適用拡大は、年金にとどまらず、医療保険にも影響します。適用拡大により、国や都道府県が財源の半分を負担する国民健康保険の被保険者が、国庫負担の割合が低い協会けんぽとか国庫負担がない組合健保に移ることによりまして、医療保険における公費負担の節約に寄与するということもあります。医療保険部会の2019年の資料が、医療保険における国費の節約を示していたと記憶しております。こうした効果も認識する必要があると思います。このようなことから、最低限、企業規模要件の撤廃と非適用業種の解消は実現していただきたいと思います。
それから、JILPTの資料を拝見しましたが、第3号被保険者は就業調整するのだというような、ステレオタイプ的な見方は当たらないと思いますし、そうやって決めつけてしまうと、その結果として、また、変な不公平が発生することも十分認識すべきだと思いました。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、出口委員、お願いします。
○出口委員 被用者保険の適用拡大につきましては、これまでずっと申し上げてきましたとおり、さらに進めていくことが重要だと思っておりますが、留意すべき事項として、3点申し上げたいと思います。
まず第1に、当然、対象となる層、企業あるいは業界、こういうものに偏りが見られるので、雇用や企業経営の動向を適切に把握して、現実に対応可能な進め方を考えていく必要があると考えております。
第2に、この件については、年金だけでなくて、医療保険制度に与える影響についても、十分考慮、精査いただく必要があると考えております。
第3に、マイナンバーはじめデジタル技術を積極的に活用しないと、現実的には、実務上の手間と負担が相当大きなものになってくると思います。あるいは、プッシュ型の周知、広報の展開、こういうものの環境を整備していただくことも必要かと考えております。
先ほど、事業主負担増のお話がございましたが、経団連においては、現在、サプライチェーン全体での成長と分配の好循環を目指し、「パートナーシップ構築宣言」の拡大を推進しています。政策的な支援と共に、当然、事業主負担増の部分も含めた円滑な価格転嫁などの取引慣行が、もっと広く実践される。その中で、コスト上昇分も確実に反映できる。こういうことが適用拡大の推進にも資するのではないかと、聞いていて思いました。これは、あくまでも意見でございます。
これは、あくまでも意見でございます。以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、私の右手におられる皆様から、御発言のある方は、挙手をお願いしてよろしいでしょうか。
全員ですね。それでは、たかまつ委員からお願いします。
○たかまつ委員 3点述べさせていただきます。
私は、基本的に、適用拡大すべきだと考えております。特に、企業要件の50人以下が適用されないということは、撤廃すべきだと考えています。それは、同じ働き方をしているのに、企業の規模で差があるのは不公平だと考えているからです。また、私は、自身で中小企業の経営者をしているわけですが、中小企業としては、当然、厚生年金の事業主負担を払いたくないとか、手続が煩雑という気持ちは理解できますが、それだと、競争にさらされた際に、大企業に採用や魅力度で劣ってしまうことがあります。長期的に見ると、中小企業にとっても私はよくないと思うので、撤廃すべきだと考えています。
2点目は、フリーランスの実態に合わせて、自営業者として第1号被保険者になるのか、労働者として2号被保険者になるのか、違いが非常に分かりにくいのではないかなと思っております。なので、定義などを分かりやすく設定することはできないか。または、サイトで、分かりやすく周知することとか、事業者や働き手が相談できる窓口があるといいと思っております。フリーランスの人で、もし、労働者なのに、自営業者として都合のよいようにされているという疑いがある場合、相談できる窓口があると、とてもよいと思いました。
3点目は、副業など多様な働き方についてです。若い人は多様な働き方を望んでおりまして、副業などしたい人も、私の周りにもたくさんいますが、副業をし、雇用先が2つ以上になると、本業先の事務手続が非常に煩雑になると聞きました。企業によっては、社会保険の手続が煩雑になるから、副業を推進する会社であっても、副業に際しては、雇用され、厚生年金に入ることは禁止しているということが会社によってはあると聞きました。手続の効率化や工夫など、会社の負担を少なくすることも検討していただきたいです。そうすると、会社にとっての負担も減ったり、若い人の希望する働き方もできるようになって、副業とか多様な働き方が実現できるのではないかなと思っております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
永井委員、お願いします。
○永井委員 ありがとうございます。
被用者保険の適用拡大が今回の議題ということですが、いわゆる「年収の壁」や第3号被保険者制度も適用拡大に大きく関わるものです。ただし、そのような課題の議論の必要性は認識しつつも、資料3の3ページにありますように、基本的考え方に沿って、適用拡大を早期かつ確実に進めるべきだと考えております。被用者保険の適用拡大との議題の名称も、そのような事務局の認識の下で設定されたものと理解しております。短時間労働者には、被扶養範囲内で働く労働者だけでなく、単身やシングルなど様々な人が存在しており、1人でも多くの労働者にふさわしい保障が実現するよう、この場でぜひ前向きな議論をしていきたいと思っております。
その上で、3点意見を申し上げます。
1点目は、先ほどもありました27ページ以降のJILPTの調査ですが、令和4年10月の適用拡大に伴う企業の調整方針及び雇用管理の見直し状況について、被用者保険を適用しないという方針で調整した企業の主な理由として、「短時間労働者自身が希望しないから」が9割を占めており、30ページにある令和6年10月に向けた企業の調整方針についても、「短時間労働者自身が希望しないから」が8割以上を占めています。そして、本人が希望しない理由として、32ページにある通り、手取り収入の減少、扶養から外れてしまうことが多くを占めていると理解していますが、加入するメリットが分からないとの回答も2割を超えており、適用となれば、負担が減り給付が充実する第1号被保険者の2割以上が加入を回避していることからも、事業主からの説明などが十分ではなく、正しい制度理解が進んでない可能性があるのではないかと考えております。
これまでの私の発言でも、制度の誤解などによって就業調整が発生しているという現場の実態に触れさせていただきましたが、事業主が短時間労働者に対してどのような説明を行っているのか、当該労働者がどの程度正しく理解しているかといった実態を把握することも重要ではないかと考えています。適用事業所に対して行う調査に直接関わっておられる日本年金機構とも連携しつつ、そのような調査もぜひ検討していただきたいと思っています。好事例の収集という話もありましたので、ぜひ検討いただきたいと思っています。
2つ目も関連しますが、キャリアアップ助成金について触れたいと思います。キャリアアップ助成金の中には、所定労働時間を延長することにより、当該有期雇用労働者などを新たに社会保険の被保険者とした場合に助成するという制度があります。私が属する労働組合のUAゼンセンでも、手取りを目減りさせないよう、このような助成金の活用を労使協議の議題とすることがあります。助成金制度そのものは、年金部会で直接的に論点とすべきではないかもしれませんが、そのような助成金制度が特に中小企業における短時間労働者への社会保険の適用拡大にどの程度影響したのかといったデータも踏まえつつ、適用拡大に向けた前向きな議論をすべきと考えています。
最後に3点目ですが、資料3の40ページ目から、個人事業所で働く常用雇用者数の割合について記載があります。このデータは平成28年経済センサスによるもので、ここでは飲食サービス業や洗濯、理・美容業などが他業種よりも多くなっていますが、この間の長期化したコロナ禍で、飲食サービス業などが大きな影響を受けており、現在は状況が変わっているとも考えられます。適用拡大に係る議論は今回だけではないと思っておりますので、今後はぜひ、直近の状況を示しての議論もできるようにしていただきたいと思っております。
以上です。ありがとうございます。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、原委員お願いします。
○原委員 ありがとうございます。
私からは、大きく分けて2点です。資料3について、コメントをまずさせていただきます。あと1つ、確認させていただきます。
資料3のJILPTの調査についてですが、興味深いデータがたくさんありまして、その中で、28ページとか30ページのところですが、28ページで言うと、昨年10月に対象となった企業については、適用するという理由は、法律改正で決まったことだからということに次いで、短時間労働者自身が希望したからということになっておりますし、また、被用者保険は適用しない方針で調整したという部分においては、短時間労働者自身が希望しないからというところが9割を超えたという、令和4年10月の調査が28ページに出ておりました。また、30ページの、令和6年10月に向けてということですが、適用するという方針で調整を行う企業は4割ぐらいですか。あと、左の円グラフを見ると、中立となっているところで、短時間労働者の意向に任せるというところが22%とあります。一方、適用を回避する主な理由としては、短時間労働者自身が希望しないから、が割合としては82%となっています。この調査を見る限り、適用を回避する理由として、短時間労働者自身が希望しないからという、特に、そこのところの理由が一番に上がっているのが興味深いところになっています。
となれば、今後、対象となる短時間労働者の方々については、社会保険制度とか、その給付の理解について、つまり、負担だけではなく、給付の内容の理解、そして、加入することのメリットについて、もっと周知していく必要があるのだろうと思います。そのためにも、最後の項目の5.にありましたとおり、66ページにもありますが、適用拡大に関する年金広報の取組みは、まだまだ必要であり、その充実について、好事例の収集とか、検討会を通しての広報コンテンツの作成、継続的な広報、啓発活動の展開といったものを行っていく必要があると思います。
そこで、1つ質問あるいはお願いなのですが、32ページに、「適用拡大の短時間労働者への影響について」という項目がありまして、その真ん中の右の表に、「令和4年10月の適用拡大に伴い被用者保険に加入または加入回避した短時間労働者の内訳」があるのですけれども、第1号であった人については、77%が加入したということですが、第3号被保険者については、時間短縮して、加入を回避したと回答した人の割合が約48%であったという調査結果があります。改めての時でよいのですが、この48.1%という、時間短縮して加入を回避した第3号被保険者の年代別などの内訳がわかれば、そういった割合などを教えていただきたい、そういう資料があれば、教えていただけるとありがたいです。
もう一つは、皆さんが触れてないところで、52ページからのフリーランスについてのコメントを少しさせていただきたいと思います。フリーランスは、割と新しい言葉だと思うのですけれども、個人事業主ともいえると思います。53ページに定義がありますけれども、一般的には、独立して専門性を持って、いろいろなところから仕事を受けて事業を行うというような人だと思われます。ただ、1社のみから仕事を受けるなど、専属性などが高くて、「労働者性」が認められる人は、もちろん被用者保険が適用されるように、必要な対応を行っていかなければいけないと思います。
一方で、それ以外の本来の意味でのフリーランスについてですが、55ページに、理由という調査があるのですけれども、こちらでは、なぜフリーランスという働き方をしているかということで、自分の仕事のスタイルで働きたいためと、約6割の人が答えていて、働く時間や場所を自由とするためという人は、約4割となっています。これも興味深い結果で、もう少し細かいことを聞きたいところではありますが、そういった働き方は、基本的には、スキルを持って、幾つかの業者から仕事を受ける。自分の責任でもって、自分の働きやすい働き方・環境で働いているという人も多いと思います。働き方の多様化が進む中で、自分なりのスタイルで働いているということだと思います。そういった中で、ガイドラインや取引の適正化等に関する法律ができたことは、業務委託を受けるような働き方をしている人にとっては、環境整備につながるものと思っています。一方で、そういった方々の働き方の自由度、柔軟性に影響を与えるようなことに仮になるようなことにはならないか、そういった人たちが働きづらくならないようにしたほうがいいのではないかと、思う気持ちもあります。多様化するキャリアを前提とした議論が必要なのではないかと考えます。
さらに言えば、その仕事の依頼元が、もちろん幾つか受けている方にとっては、会社から受けるだけではなく、個人から受けることもあるので、そうなると、現行の被用者保険の事業主負担とか保険料折半とか、そういったルールが適用しづらい場合もあるのではないかと思います。フリーランスとして働く人たちの実態をよく把握して、どういう形がいいのか、何か新しい形なのか、分からないですが、そういうことについては、引き続き検討していくのがいいのではないかと思います。
なお、最初の部分の繰り返しになりますが、フリーランスと言っても、実態として、現行の労基法上の労働者に該当するような方々については、被用者性も認められて、被用者保険が適用されるということは明確にした上で、適用に向けて、必要な対応をとっていくように進めていくのがよいかと思っております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
1点、3号の48%の中身というか、そこだけいかがですか。
○年金課長 こちらは、今、手元にある数字としては、この内訳は分かっておりません。ただ、これは、御本人にアンケートをしていまして、そのアンケートの調査表を見ると、年代とか性別が記載事項にありますので、その個票を抜いていって、この回答をした人がどうだったかというのは、ちょっとお時間いただければ分かるかと思います。これはJILPTともちょっと相談をさせていただきたいと思っております。
以上です。
○菊池部会長 よろしいでしょうか。
それでは、平田委員お願いします。
○平田委員 ありがとうございます。
被用者保険の適用拡大に関しまして、短時間労働者の企業規模要件に関しましては、撤廃でよいと思います。理由は、これまで何度も述べてきておりますので、ここでは割愛いたします。
そして、労働時間が週20時間未満の短時間労働者への適用拡大ですが、これに関しては、使用者が保険料を負担する観点から、被用者とは何かということを掘り下げるべきではないかなと思います。事業主負担分があるのは、労働者が安心して就労できる環境、基盤を整えることは事業主の責務であり、事業主の利益に資するからでもある、という考え方がありますが、では、どこまでの人について、使用者がその負担をするのかということです。このことは、全体の納得を得て、国民全体で進んでいくためにも、とても大事な議論になるのではないかと思っております。
もう一点です。個人事業所の非適用業種、5人未満を雇用する個人事業所への適用拡大ですが、これも、検討しつつも、実施してよいのではないかと思っております。理由としましては、従業員規模も同じですけれども、保険料の支払能力などについて、個人か法人かということが、判断基準として妥当なのか? というところがあるのではないかと思います。昨今、個人による起業が非常に増えていますし、今後、さらに増えるのではないかと思っています。つまり、法人と個人の差がどんどん小さくなるような現状が見えるなかにあって、個人だからということが、非適用の理由になり得るのかということは、検討すべきではないかと思っております。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
百瀬委員、お願いします。
○百瀬委員 2つ質問があります。
1つ目は非適用業種についてです。昭和28年の健保法改正や昭和60年の年金改正の際の旧厚生省の説明を国会議事録で確認したところ、非適用とされた業種では、適用業種と比べて、賃金形態や雇用形態で特殊な場合があること、あるいは、事業所や従業員の変動が著しく、保険適用技術上の難しさがあることなどが、非適用の根拠とされておりました。
今日では、こうした説明が説得力を失いつつあると思いますが、現時点において、業種によって、適用・非適用の違いを設ける積極的な理由があれば、事務局に御説明いただきたいと思っております。それが1点目になります。
2点目が、被用者保険の適用拡大全般についての質問です。今回の年金部会のテーマが、厚生年金の適用拡大ではなく、被用者保険の適用拡大となっておりました。現に、厚生年金と健康保険の適用は一体的に行われていますし、過去の適用拡大でも、厚生年金と健康保険は、同時に適用拡大が実施されています。
一方で、公的年金の世界と医療保険の世界では、適用拡大の効果がかなり変わってくると思います。例えば、健康保険の場合、適用拡大を進めていくと、健康保険の被扶養者から健康保険の被保険者に移る動きもありますが、国保の被保険者、特に、ある程度収入のある国保の被保険者が健保の被保険者に移ってくる動きがあって、国保の財政に与える影響も大きいと考えられます。
そうしたことも考慮した場合、年金部会なので、厚生年金の議論しかできないとは思うのですが、健康保険への影響も含めた議論をしなくても良いのでしょうか。また、今回も、厚生年金の適用拡大と健康保険の適用拡大は一緒に行うという理解で良いのでしょうか。例えば、ある基準以上は厚生年金だけ適用拡大して、健康保険は適用拡大しないというように、厚生年金と健康保険で適用拡大の範囲がずれる可能性もあるかどうかというところをお聞きしたいと思います。
以上です。
○菊池部会長 事務局、どこまで見通しているかというのは、ここで議論するという部分は。
○年金課長 2点目についての医療保険との連携は、これまで、実務上の理由あるいは共通の仕組みとして被扶養認定とか行っている関係で、一緒にやってきたというのが経緯としてありますし、適用拡大に際しても、基本的に一緒にやるということで議論してきました。年金だけで進めることではないと思っており、前回の懇談会でも、両局合同で運営させていただきました。この問題については、医療のほうは、先ほど御指摘もありましたが、特に国保という存在が関係してきます。今時点では、今後も一緒にやるのかどうかについては全く何もないですが、これまでは、基本的に一緒にやってきたという中で、今後はどこまでできるのかというところと思っております。
それから、1点目のほうは、経緯としてはおっしゃるとおりで、小規模であったり、あるいは、働かれる方の移動が多いという経緯で業種の取扱いが進められてきたものであり、実務上や技術上の理由が国会答弁でもあげられています。
これが、今はどうなのかというところについては、IT化ではありませんが、手続とかいろいろな電子化など、かなり変わってきています。それから、法人化という意味でも、かなりの数が法人になっているという中で、法人か個人か、あるいは業種間で何か違いがあるのかについては、昔とはかなり状況が変わってきているのだろうと思います。ただ、そこは、資料にお示ししたとおり、影響がある業界が見えてきますので、よく話をしていくということだと思っております。
以上です。
○菊池部会長 よろしいでしょうか。
○百瀬委員 ありがとうございました
○菊池部会長 続きまして、島村委員どうぞ。
○島村委員 よろしくお願いいたします。意見と質問をさせていただければと思います。
標準報酬の額の下限を下げる点についてですが、年金における所得の再分配ができるという意味では意味があると思っています。ただ、結果として、賃金労働をしたほうが、その賃金以外の働き方をするよりも、保険料負担の点でも給付の面でもよくなって、賃金労働のほうに誘導する効果を持つことになるかと思います。だからこそ、先ほど是枝委員から、1.5被保険者の説を御提案いただいたかと思うのですけれども、働き方に中立な制度にするということも1つ考えるポイントなのかなと思っていて、その点でも整合的なのかは、考える必要があるかなと思いました。
制度が複雑になり過ぎるという気もしておりまして、その点もどう考えるか、私自身も、賛成とも反対ともまだ言えない状況ではあるのですけれども、ちょっと考えなければいけないと思っております。
1つ質問させていただきたいのが、65歳以上の方々について、高年齢者雇用安定法が改正されて、業務委託の道が開かれていると思うのですけれども、その人たちについては、厚生年金保険の使用される者に当たると理解をされて、運用されているのか、そうではないのかについて、御教示をいただければと思います。
以上です。
○菊池部会長 いかがでしょうか、事務局。
○年金課長 2点目の働き方の方は、年齢的には、70歳まで厚生年金の被保険者ですが、適用事業所で労働者として働かれているわけではないということですか。業務委託ですか。
○島村委員 それを念頭に置いて、社長さんたちだけが例外的にということなのか否かというところを、確認させていただければと思いました。
○年金課長 今の「使用される者」という範囲は、労働者であれば、それは被用者になりますが、加えて、労働者ではない場合では、実務では法人の代表者が唯一という状況でございます。
○島村委員 ありがとうございます。
そこもちょっと考えていく必要があるかと思っております。
ありがとうございました。
○菊池部会長 それではオンライン参加の皆様、お待たせしました。御質問・御意見おありであれば、挙手機能もしくは画面で手を挙げていただいても分かりますが、まず、深尾委員からお願いいたします。
○深尾委員 ありがとうございます。
私、2点あります。1点目は、適用拡大の基本的考え方の2番目に、働き方や雇用をゆがめないという点があったと思いますが、一方で、今日の資料3でも分かるように、適用を回避する行動は結構取られているということも明らかだと思います。そういう面で見ると、適用を拡大しても、要件を残すと、当然、回避行動は残るわけで、かつ、今般、拡大したときに、ボーダーが変わりますので、どういう回避行動が起きるかについて、きちんと考えておく必要があると思います。別の言い方をすれば、経済学的に見れば、要件はできるだけなくすのが望ましいということだとは思いますけれども、もし残すとしたら、新たな回避行動がどう予想されるかという議論をしておく必要があるかと思います。
2番目は、一方で、小林委員からも御指摘がありましたが、最近行われた適用拡大を含めて、適用拡大が、中小企業を含めて、企業側の行動について、今日、少し議論がありましたが、例えば、利益や雇用にどういう影響があったかについても、できれば議論しておいたほうがいいと思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、堀委員お願いします。
○堀委員 どうもありがとうございます。年金部会で、当機構の研究成果を活用していただきまして、感謝申し上げます。私からは3点申し上げます。
第1に、社会保険の適用拡大につきまして、企業規模要件を外すこと、さらに、適用を除外されてきた業種や個人事業所も適用拡大する方向性に賛成であります。ただし、事前に、当事者である企業や個人に対してヒアリング等を行い、できるだけ適用拡大が円滑に進むように、御配慮をお願いできればと思っております。
第2に、週の所定労働時間20時間以上という基準につきまして、雇用保険につきましては、現在、厚生労働省の雇用保険制度研究会において、様々な意見が交わされているようであります。しかし、年金部会は、雇用保険の見直しいかんにかかわらず、当面は、所定労働時間20時間以上というラインは維持してよいと考えております。これだけ人手不足の状況にもかかわらず、20時間未満で働きたいというニーズを持つ方々は、子育て、介護、自身の病気など、20時間以上働くことは難しい、そんな理由を持っている方も少なくないため、ただ、適用拡大した場合に、労働時間を増やすこともできず、マイナスの影響だけが大き過ぎるのではないかと思慮しております。
当機構のお手元の参考資料の18ページ、図表II-5に、さらなる適用拡大でも加入しない理由を複数回答で尋ねております。最も多いのは、手取り収入の減少ですけれども、右から4つ目のセルに、育児・介護あるいは自分の病気で働く時間が増やせないという回答が、特に、20代、30代の子育て世代でございます。この点については、第3号被保険者の議論とも併せて、時間をかけて議論が必要だと考えます。
第3に、労働時間を合算して、週20時間以上になる方につきましては、事業所は違えど現在働いていらっしゃいますので、適用すべきと考えますし、デジタル化により、適用可能な状況が整い始めているのではないかと予想をしております。
私からは、以上です。
○菊池部会長 ありがとうございます。
それでは、武田委員お願いします。
○武田委員 本日は、大変充実した資料での御説明をありがとうございました。以前から申し上げておりますが、適用拡大は進めていくべきと考えております。賛成する理由については、3ページにまとめていただいているとおりですが、意見として、2点申し上げたいと思います。
1点目は、労働市場が大きく変化しており、企業の適用拡大に対する姿勢も変化してきているのではないかと考えます。長年、適用拡大を議論してきたわけですが、その間も、刻々と労働市場の状況は変わってきております。少子高齢化は、前から起きていることですが、足下では、女性やシニアの労働参加率が頭打ちになってきており、いよいよ本格的な人手不足という状況になってきています。
そうした中で、本日御説明いただいた資料3の28ページ、令和4年10月に適用拡大の対象となった企業の調査を拝見しますと、適用する方針で調整した企業の主な理由の1番は、法律改正で決まったから、2番は労働者が希望したということで、3番目以降が必要人数を確保したい、待遇改善、定着を図りたい、より長い時間働いてほしいと続きます。この時点から、企業が人材確保や労働時間の確保を適用の主な理由としていることが見てとれます。
さらに、令和6年10月の適用拡大の調査を見ますと、短時間労働者の待遇を改善して、定着を図りたいとの意見が2番目で、30%を超える水準になっていることが分かります。つまり、労働市場の変化によって、適用拡大に対する企業の捉え方も、以前に比べて変わってきていることが、この調査からも見てとれると思います。
2点目は、一方で、適用拡大回避の行動もあるということです。制度との関係について、先ほど他の先生がおっしゃったとおり、回避行動があるのも事実で、回避行動が起きる可能性があります。では、過去、どういった理由で回避行動が取られたか見ますと、令和4年10月の適用拡大のときも、令和6年の適用拡大の対象である企業の主な理由も、どちらも「短時間労働者が希望しないから」という回答が圧倒的で、9割です。先ほど深尾先生がおっしゃったとおり、それが最大の理由で、また起きる可能性があります。前回の議論にもありましたように、正しい広報が必要であることは言うまでもありませんが、では、短時間労働者がなぜ希望しないか、という理由を見ますと、税や、社会保障の制度、こうしたことが人々の判断に影響を及ぼしていることは事実です。税や社会保障制度の設計が正しいか正しくないかという議論は別にしましても、税や社会保障の現行の制度が、人々の意思決定に影響を及ぼしていることを、制度設計上考える必要があると思います。制度を設計するときに、そうした意思決定に影響を及ぼすことができるだけないように、簡素で中立な制度を、どう設計していくかが極めて重要と思います。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
それでは、最後になりますが、玉木部会長代理からお願いします。
○玉木部会長代理 今日の資料を拝見しましたが、大変力の籠もったもので、誠にありがとうございました。皆さんの御意見を伺っていまして、1つ考えてしまうことがございます。というのは、公的年金保険という巨大な制度の、あるいは社会保険の本と旨は何なのだろうか、ということでございます。社会保険というのは、リスクに満ちた市場経済に対して、国家が強制加入の制度をつくって介入する、そうすることによって、世の中にある様々なリスクをプールする、それによって個々の国民に対して安心を提供する、というところに意味があるのだろうと思います。
今日、いろいろ議論になりました適用拡大は、この安心を世の中の隅々まで浸透させる、そういう意味があるのだろうと思います。この安心というのは非常にうまい性質がありまして、一人が安心したからと言って、ほかの人の安心が損なわれることはございません。全員が安心することが可能でございます。また、適用拡大して、安心が隅々まで行き渡ることについて、社会的に大きなコストがあるかと言えば、そういうことではないわけですね。そういう意味では、リスクをプールするのは、安心を生み出す上で、大変効率の良い方法であろうかと思います。また、この辺は、経済学の教科書で公共財には排除性がないと言われるのですけれども、社会保険がもたらす安心は、政府が行うこととして、大変筋がよいものであろうと思います。
ただ、社会保険ということは、必ず負担がございますので、どうしても政治経済学になります。したがって、そこはいろいろな議論の留意すべき点になってきたわけでございますけれども、近年の人手不足という環境が人口動態に依存する部分が多いということからすると、長期化するだろうという予想は当然容易につくわけでございまして、そういった時期をうまく捉えて、政治経済学の摩擦を少しでも減じていくのが、人々の知恵というものではないかと思います。
その過程におきまして、特に、従来以上に大きな意味を持ってくるのが広報ではないかと思います。何人かの委員からも御指摘がありましたとおり、安心するはずの労働者が希望しないということは、実際にたくさん起きておりまして、また、その労働者とともに経済活動を行っている企業においも人手不足で困っているという状況を考えますと、広報については、厚生労働省の仕事、あるいは年金機構の仕事ということだけではなくて、もはや、事業主も巻き込んだ営みになるべきなのではないかと思います。その場合には、年金機構や厚生労働省の従来の様々な広報の御努力といったものは、個々の国民に対するものだけではなくて、事業主にも使ってもらう、あるいは、事業主と労働者の対話の材料になる、そういったプラットフォームを提供するものだ、そういうふうな意味合いも込めてよろしいかと思います。
そういった広報が奏功すれば、無用の不安が解消するでしょうし、また、人々の無用の心配とか、労働時間をどうしようかという無用の迷いとかいったものもどんどんなくなっていって、世の中がすっきりするのではないかなと思います。世の中がすっきりするというのは、これは社会保険制度への信認の向上とほとんど同じことでございますので、大変大事なことではないかと思います。また、この信認ということを考えますと、非常に大きな制度でございますので、国民の間に、これは公平な制度であることがすとんと腹落ちするような配慮といったものが非常に必要であろうかと思います。例えば、よく言われるのが、在職老齢年金とか、今日も少し出ました加給年金、遺族年金、こういったものについて、「なるほど、そういうことなのだな」とすーっと納得できる人が多ければ多いほど、納得できない人が少なければ少ないほど、この制度はより多くの安心をもたらすものになり得ると思います。そういった心にひっかかるもの、変だなと思う種になるものを、なるべく早く、なるべくスムーズに減らしていくことが必要ではないかと、強く思った次第でございます。
以上です。
○菊池部会長 ありがとうございました。
ちょうど時間が来てしまいまして、そろそろ終了させていただきたいと存じます。まだ、ここはちょっと言い残したというような方もいらっしゃるとは思うのですが、できれば、1巡して終わりではなく、追加分を、いろいろな御議論をいただいた後で、それに触発されて、2巡目の議論が展開できるような形になるのが、理想だと思っております。そこは、私の力量のなさでもあるのですが、各論の1回目で、非常に充実したいっぱいいっぱいの時間を使うような議論になってまいりましたので、今後、さらにそういう形になるかなということも予想されますので、その場合にどうすればいいのか。時間延長という形があり得るのか。あるいは、あまりやりたくはないですが、発言の時間を、お一人お一人をちょっと公平にというか、させていただいて、その上で2巡目の時間を確保するかと。その辺りは事務局とも相談させていただきながら、できるだけ御議論を十分いただけるようにさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。また、そういうことで何か注文等があれば、事務局にお寄せいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。
それでは、申し訳ありませんが、本日は、以上で終了とさせていただきます。
今後の予定につきまして、事務局からお願いいたします。
○総務課長 次回の議題や日程につきましては、追って、御連絡をいたします。
○菊池部会長 それでは、本日の審議は終了いたします。お忙しい中をお集まりいただきまして、どうもありがとうございました。