人材育成事例117

 
 
 
 
    株式会社ミルボン
新入社員教育とグローバル人財を中心として
 
 
 
 
情報掲載年度 2013年度
情報掲載日 2013/9/11
都道府県 大阪府
 
資本金 3億円以上
従業員数 300人以上
産業分類 製造業
 
 

昭和35年、ユタカ美容科学株式会社として設立され、業務用ヘア化粧品の専業メーカーとして業容を拡大、昭和40年には株式会社ミルボンに社名変更し、美容室向けの本格的市場づくりを開始した。「顧客第一主義」の理念のものと、パーマネント用器具とパーマ剤とのセット販売を業界で初めて実施し、以後も育毛市場への参入など、ヘアサロン市場に密着した情報収集と分析に基づく経営戦略のもと、順調に発展を続けてきた。

ヘアカラーが美容業界の主流になると判断するや否や、ヘアカラーを中核とした事業再編・構造転換に踏み切り、美容業界から強い支持を得て今日に至っている。平成13年、東証一部に上場し、現在では業務用ヘアケア化粧品の総合メーカーとして国内トップの地位を確立している。

近年は国内にとどまらずグローバル化戦略を推進し、北米・アジア地区を中心に展開を進めている。


株式会社ミルボンウェブサイト
 
 

当社は早くから人材育成を重視しており、昭和59年に大阪市都島区に研修センターを開設していたが、平成3年、専用研修センターを大阪市城東区に新築移転し、社員教育の一層の充実を図ってきた。

 

当社は、「モノを売るだけではなく、製品と美容技術とを組み合わせたソフトを提供することにより、顧客である美容室を繁栄させる」ことを経営戦略としている。業務用ヘア化粧品の総合メーカーとして、ターゲットを美容室に絞り込むとともに、美しい髪を創る事業を通じて、人々の心に潤いをもたらすことを目指してきた。

 

こうした事業展開を支えるために、「美容の明日を考えていくことに前向きに取り組める人」が必要とされる。このため、当社は、「リーダーシップ(目標を掲げ、それに向けて先頭を走れる人)」、「チャレンジシップ(自分は何をやりたいかという目的意識を明確に持ち、それにチャレンジしていける人)」、「グローバルシップ(多様な価値観を受容し、俯瞰(ふかん)的な視野を持つ人)」を求め、「課題解決力を有し、お客様(美容室)の立場に立った行動ができる人材」を育てることに重点をおいている。

 

このような理念に基づき、当社は伝統的に人材育成の重視を会社のポリシーとしており、長期にわたる新人研修のほか、2~4年目社員への毎年の研修、昇格研修、マネジャー研修など、さまざまなステージに対応した研修プログラムに取り組んでいる。

 
 

当社は、課題解決力を備えた社員を育成し、かつ主体性を持ち人間的な魅力を備えた人材を育てるために、新入社員から管理職に至るまで、多様な階層別研修を充実させている。

新入社員教育とそのフォロー研修、中堅社員研修、職場リーダー研修、マネジャー研修などを実施するほか、公募制のグローバルリーダー育成研修、グローバルタレント基礎研修なども開催している。(別紙1「社員研修一覧表」参照)

中でも力を入れているのは新入社員教育であり、7か月にわたり実施している。ここでは、「新入社員教育(ミルボンパーソン研修+フィールドパーソン研修)」と公募型の「グローバルタレント基礎研修」を事例として紹介する。


(1)新入社員研修(ミルボンパーソン研修+フィールドパーソン研修)

当社は業務用ヘア化粧品を主力商品としており、その顧客は美容室である。当社では、顧客を訪問する営業社員をセールスマンとは言わず、「フィールドパーソン」と呼んでいる。フィールドパーソンは、当社の基本理念を理解し、顧客の立場に立って「悩み」や「相談ごと」に真剣に応じることができ、顧客の課題解決のために情報収集や分析整理が行なえて、その上で必要な提案を顧客に示し、顧客の同意を得てそれを実行し、その成果によって当社製品が導入されるようになるという重要な役割を担っている。

当社は、前述のとおり、ヘアカラーがこれからの美容界の主流になると判断し、ヘアカラー中心の事業構造にいち早く転換を図ることによりトップシェアの地位を確立した。これは顧客の立場に立脚し、顧客ニーズを汲み上げ、それを経営戦略に反映させるという当社の基本理念から生まれた経営行動であった。この戦略を支えるキーとなるのがフィールドパーソンであり、顧客の信頼を得るフィールドパーソンを育成するために、当社では新入社員に対して7か月に及ぶ研修を実施している。なお、研究員や生産部員として採用された者も、美容の基礎を習得するため、前半の3ヶ月間をミルボンパーソン研修として一緒に受講することになっている。(別紙2「フィールドパーソン研修カリキュラム」参照)

フィールドパーソン研修は、学科研修、美容技術研修、体験学習の三本柱で構成されており、4月から10月まで、新入社員は全国から研修所に集まり受講する。(研究員や生産部員は6月までの3か月を共同で受講し、その後は研究所や工場での研修を受ける。)

学科研修は、前半は業界や自社製品の知識、美容関連の理論を学び、後半になると

●「セールスデッサン」…架空の美容室を想定し、商品説明、商談までをロールプレイで行なう
●「臨店講習シミュレーション」…美容室での自社商品の使用方法の勉強会
 

などを通じて、行動レベルでの知識・スキルの習得を図るように組み立てられている。配属前には、再度当社の規程・ルールについての確認を行なう勉強会を開くなど、企業倫理とコンプライアンスについても十分な配慮をしている。

美容技術研修では、美容室の信頼を得るためには営業担当社員も美容実技についての理解と経験が不可欠であるとの観点から、美容室で行なわれる基本的な技術についての実習を行なう。新入社員が相互にモデルとなって技術の習得に努め、最後は一般の方をお呼びして、カウンセリングからカラー施術までを実際に行なうまでに至る。

体験学習は、入社直後の「マナー研修」やグループでの「会社案内制作」を通じて、仕事の基本やチームワークの重要性を理解させている。一人一台のパソコンを貸与して行なう「パソコン勉強会」や、情報の整理分析のための「KJ法勉強会」を体験した後は、先輩に同行しての「美容室見学」および代理店の人に同行する「代理店見学」を行なう。美容室スタッフと一緒に働く5日間の「美容室体験実習」を経て、最後に「美容室セールス実習」を行なって、7か月にわたる研修を締めくくっている。この後は配属となり、各拠点で仕事を進めながらOJT研修を受けることになる。長期にわたる濃密な研修を通じて、お客様の目線で話ができる「ミルボン社のフィールドパーソン」としての知識・技術・心構えが養われるだけでなく、会社に対する愛社精神が育まれるという結果も生んでいる。

 


(2)グローバルタレント基礎研修

サブマネジャー以上の社員を対象に公募制で実施している研修である。当社が中期事業構想に掲げたグローバル戦略を実践する上で、社内人材の意識をグローバル化することが求められた。組織の枠や世代を超え、意欲ある社員が主体的に行動する環境を整えるため、平成23年からスタートした研修である。グローバルタレント(人材)として必要なものの見方・考え方・スタンスを鍛えるとともにコミュニケーションの本質を理解し、国内外を問わず、他者(職場、他部署など)とうまくコラボレーションを図りながら目標達成していくためのスキルを、実践を通じて学習する。

この研修は、集合研修とアクションラーニング(計画の実践)を繰り返しながら、約半年間をかけて行なわれる。集合研修の内容は以下の通りである。

●グローバルマインドセット…グローバルな環境に身を置く上での考え方や心構えについて。
●異文化コミュニケーションの本質…異なる文化背景(経験)を持つ人とのコミュニケーションをどのようにとれば良いか。
●異質をエネルギーに変えるために…自分と異なる存在をいかにプラスの力に変換し、仕事効率を高めるか。

研修最終回では、経営層に対してチームで取り組んできたこと、今後取り組んでいくことをプレゼンテーションし、コミットメントを行なう。知識のインプットと実践による経験を通し、どのような環境においても成果を生み出せる人材を育成している。

 
 
 

当社は創業以来、モノを売ることよりも、美容室が繁栄するために情報や美容技術などのソフトやサービスを提供する経営戦略をとってきたが、今後もその路線に変わりはない。国内トップシェアの地位を確立した当社は、日本独自の美容技術を日本の文化にまで成熟させることを目指すとともに、今後はグローバル化に力を注ぎ、海外での展開に注力する計画である。このため、グローバル化に対応する社員教育をさらに推進していくとともに、グループ全体での人材交流を加速させる予定である。

同時に美しい髪を創る事業を通じて、人々の心の豊かさづくりをサポートすることに生きがいと喜びを感じる社員を養成することに、今後の教育の主眼を置いている。

 
 
別紙1:社員研修一覧表  
別紙2:フィールドパーソン研修カリキュラム