~ヒト、動物、環境の健康を~ 「ワンヘルス(One Health)」ってなぁに?



動物からヒトへ、ヒトから動物へ伝播可能な感染症(人獣共通感染症)は、すべての感染症のうち約半数を占めています。また、抗菌薬の不適切な使用を背景としたヒト、動物、食品、環境等における薬剤耐性(AMR)を持つ細菌の出現が、国際社会で大きな課題となっています。

ワンヘルス・アプローチとは、こうしたヒト、動物、環境の健康(健全性)に関する分野横断的な課題に対して、関係者が協力し、その解決に向けて取り組むことを指します。この動きは世界的にも広がっています。

厚生労働省では、ワンヘルスの考え方を広く普及・啓発するとともに、分野間の連携を推進しています。人獣共通感染症については、たとえば家きんや野鳥の鳥インフルエンザ発生について農林水産省および環境省と情報共有を行い、連携した対応がとれるようにしています。

また、国立感染症研究所において、主にマダニが媒介する重症熱性血小板減少症候群(SFTS)をはじめとする愛玩動物や野生動物の感染症の調査研究などに取り組んでいます。2016年からは医学・獣医学の横断的な連携、人獣共通感染症の予防・探知・治療などの対策強化を図るために、医師会・獣医師会と連携して毎年ワンヘルスに関するシンポジウムを開催しています(今年は12月3日に神戸国際会議場で開催予定)。

薬剤耐性(AMR)については、国内におけるヒト、動物、農業、食品および環境の各分野における薬剤耐性菌および抗微生物薬使用量(または販売量)の現状および動向を把握するためにワンヘルス動向調査を実施しています。

ワンヘルス・アプローチの下での連携強化・協力枠組み構築の重要性がさまざまな国際的な場面で謳われています。2023年5月に日本が議長国として開催したG7長崎保健大臣会合では、「G7長崎保健大臣宣言」のなかで、G7初となる保健・農業・環境の関係省庁が参加するワンヘルスに関するハイレベル専門家会合を開催することに合意しました(次号で会合の内容を報告します)。

毎年11月は、「薬剤耐性(AMR)対策推進月間」です。薬剤耐性(AMR:Antimicrobial Resistance)は、感染症の原因となる細菌などに抗微生物薬が効きにくくなる、または効かなくなることです。薬剤耐性の普及・啓発を通じて、一人ひとりの理解を促進します。

連携シンポジウム、ワンヘルス・アプローチに基づく人獣共通感染症対策はこちら

薬剤耐性(AMR)対策についてはこちら

G7長崎保健大臣会合公式ページはこちら


 

出典 : 広報誌『厚生労働』2023年11月号 
発行・発売: (株)日本医療企画(外部サイト)
編集協力 : 厚生労働省