団体等検定事例case 01 公益社団法人日本看護家政紹介事業協会 家政士団体検定

※本ページの内容は、検定実施団体へのヒアリングに基づき作成されたものです。最新の情報と異なる場合がありますので、詳細は各団体にご確認ください。

公益社団法人日本看護家政紹介事業協会

◆業種 看護師・家政婦(夫)職業紹介事業

正会員数 353名(令和7年3月末現在)
特別会員数(家政婦(夫)) 5,325名(同上)
社内検定受検者数(累計) 1,341名
 ※令和7年度から団体検定として実施予定
認定社内検定から団体検定への移行を図り、受検者のより一層の拡大を図ることで、家政サービスに従事する、より多くの技能者のスキルアップを図るとともに、家政サービスの専門性と社会的認知度を高めることを目標とする。

実施する検定の概要

  • 社内検定から団体検定に移行
  • 衣・食・住の家事支援サービスを中心に、介護や子育て支援など生活全体をサポートする専門技能に係る検定(単一等級【上級】)

背景・目的

  • 家政サービスニーズの増大と多様化に対応した人材の育成・確保
  • 家政サービスの専門性と社会的認知度を高め、社会的地位の向上と処遇改善を図る

構築前後の取組

  • 家政婦(夫)の職務を遂行する上で必要な職務能力を整理、体系化
  • 実技試験の採点基準の客観性、公正性を担保するための取組
  • 団体検定への移行の推進

資格取得者の処遇改善に向けた取組

  • 紹介に当たって検定試験合格をアピールし賃金引上げを働きかけ
  • 資格取得者の活用に向け自治体に要望

構築等の効果・メリット

  • 家政婦(夫)の自己研鑽の促進、仕事に対する誇りと自信の付与
  • 家政サービスの専門性に対する社会的理解の促進、処遇の改善

認定社内検定から団体検定への移行を図り、受検者のより一層の拡大を図ることで、家政サービスに従事する、より多くの技能者のスキルアップを図るとともに、家政サービスの専門性と社会的認知度を高めることを目標とする。
家政士団体検定の学科試験 学科試験

(1)実施する検定の概要

 公益社団法人日本看護家政紹介事業協会(以下「看家協会」という。)が家政サービス職種について実施する検定(以下「家政士検定」という。)は、平成28年3月に「公益社団法人日本看護家政紹介事業協会家政士社内検定」として厚生労働省より認定を受け、その後、令和7年3月に「家政士団体検定」として認定を受けています。

 「家政サービス」とは、生活全体のサポートという視点にたち、各家庭の事情に応じて柔軟に家事作業ができる家政婦(夫)が提供するサービスをいい、検定では、衣・食・住にかかる家事支援サービスを中心に、介護や子育て支援など、家族に寄り添って生活全体をサポートし、また、コミュニケーションやホスピタリティなど人間関係力に優れた「オールラウンドの生活支援パートナー」としての知識が求められます。
家政士団体検定の実技試験 実技試験

(2)背景・目的

 人口の減少と少子高齢化が急速に進み、高齢夫婦だけの世帯やひとり暮らしの高齢者が増加するとともに、仕事と育児を両立できる働き方が可能となる社会の実現が求められています。
 こうした中、介護や支援が必要な高齢者や子を持つ共働き夫婦をはじめ家政サービスに対するニーズが増大するとともに、内容も多様化しており、このようなニーズに的確に応えることのできるサービスの向上や人材の育成、確保が強く求められています。

 こうした社会の要請を踏まえ、家政士団体検定は家政サービスに関する優れた技能を有する者に資格を付与することにより、利用者がサービスを選択する際の明確な指標となり、安心と信頼を提供することを目的としています。

 また、検定制度を設けることにより、家政婦(夫)にとっても、自己啓発のための学習目標を明確にし、質の高い業務遂行への意識付けとなり、結果として個人の能力向上に大きく寄与するものです。

 さらに、団体検定への移行に伴い、受検対象者が拡大することで、家政士団体検定の社会的認知度が高まり、ひいては合格者の処遇改善につながることを期待しています。

(3)構築前後等の取組

① 社内検定の認定前

 検定構築に向け、目指すべき家政婦(夫)像を明確にするとともに、「使える」「見える」職業能力評価基準を作成することを目的に、調査研究委員会を設置し、家政婦(夫)の職務を遂行する上で必要な職務能力を整理し、能力ユニットごとに体系化しました。

 職務分析とそれに基づく試験問題の作成に当たっては、「コミュニケーション」や「基本的マナー」に係る技能の中から、家政婦(夫)としての職務の特性を踏まえて特に求められる技能をどのように抽出するか、また、「介護」、「育児」に係る技能の中でも、特に家政婦(夫)に求められる事項は何か、につき実務に習熟した者による議論を重ねました。


 また、実際に職務遂行上発生するトラブル事例を集め、その防止のために必要な取組みや行われている工夫を反映するように心がけました。
 以上の検討を踏まえ、実技試験は、衣・食・住の3課題としました。

② 社内検定の認定後

 実技試験の採点基準の客観性、公正性を担保するため、毎年、試験前に各会場の責任者が集まり、実技試験を試行実施しています。
 ここで、試験環境や使用する器具、材料等を確認し、試行例に基づき採点基準の統一を図っています。

 さらに、会場ごとに、検定運営業務に携わる検定員、検定補佐員等向けの、試験方法や採点基準に関する研修を実施しています。

③ 団体検定への移行

 受験対象の拡大のため、団体検定に移行しました。
 現在、訪問介護事業や家事代行業等会員以外の事業所で働く者や大学等の家政関連学科の在学生・卒業生等、会員以外の者への効果的な広報・周知方法に取組んでいます。

(4)資格取得者の処遇改善に向けた取組

 家政婦(夫)の賃金等労働条件は、雇い主である個人家庭や施設等と家政婦(夫)との間で決定されるものですが、会員紹介所において、紹介に当たって求人者に対し検定試験合格者であることを強くアピールし、賃金引上げをお願いするなど、処遇の改善に取り組んでいます。

 また、地方自治体に働きかけ、介護予防・日常生活支援総合事業を実施するに当たり各自治体が要件としている研修の受講を家政士検定の合格者には免除することを要請するなど職域の拡大を図っています。

(5)検定制度構築の効果・メリット

 検定制度の構築により、各家政婦(夫)がこれまで自己流で行っていた業務を見直し、知識と理論に裏付けられた技能を体系的に習得する契機となりました。

 また、家政婦(夫)が自己研鑽を積んだり、苦手な分野に取り組むための動機づけにもなっています。
 さらに、検定合格者にとり、厚生労働省の認定を受けた検定試験を突破したことが、自らの仕事に対する誇りと自信につながっています。

 さらに、社内検定の認定を受けたことにより、家政婦(夫)を含めた家政サービス関係職業の専門性に対する社会的理解が促進され、自分の家庭で働く家政婦(夫)が家政士検定を受検することを応援し、合格したことにより賃金を引き上げる雇い主も出るなど処遇の改善につながった例もみられます。

 今回の団体検定認定を契機に、周知・広報活動を強化することで、家政士検定の認知度を高め、今後一層、検定合格者の処遇改善につながるものと期待しています。