構成市町村底上げによる取組の推進

京都府後期高齢者医療広域連合・京都府・京都市

【京都府の概要】

人口:2,555,379人(高齢化率:28.5%)(平成31年3月31日時点)

後期高齢者被保険者数:367,925人(平成31年3月31日時点)

構成市町村数:26

1人あたり医療費:1,021,655円/年(平成30年度)

後期高齢者健診受診率:22.1%(平成30年度)

京都府

ページの先頭へ戻る

取組概要

後期高齢者への保健事業の体制強化のための組織横断プロジェクトチームの組成

広域連合と府が協働してのデータ分析・研修の実施

円滑な事業スタートにつなげるための府広域連合独自の補助制度の創設と市町村・京都府との間の密な情報交換の実施

ページの先頭へ戻る

取組の経緯

京都府後期高齢者医療広域連合は、平成29年度の保険者インセンティブの結果が47都道府県中最下位であった。また、平成28・29年度の低栄養防止・重症化予防事業での取組はなく、一体的実施に向けた準備はほとんどできていない状況にあった。

さらに、広域連合内には、保健事業に関する事務手続を市町村に伝達する担当はいたものの、保健事業を円滑に進めるために市町村支援をする担当者は不在であった。

そこで平成30年度に、保健事業に関して広域連合内の2つの課である総務課と事業課を横断して、プロジェクトチームを組成し、保健事業をはじめ、保険者機能の向上に努めることとした。

プロジェクトチームの運営に当たっては、事務局長の全体統括のもと、事務局次長(兼総務課長)が企画立案から事業展開への落とし込みまでを担当することとし、円滑な市町村支援を目指した。

<京都府後期高齢者医療広域連合の体制図>

(資料)京都府後期高齢者医療広域連合提供資料より作成。

ページの先頭へ戻る

京都府後期高齢者医療広域連合における保健事業に関わる現状

広域連合内の体制

広域連合の職員数は22名であり、府内26構成市町村の中から派遣されている。

保健事業に関しては、従来は業務課が国からの連絡事項等を構成市町村に伝達していたが、平成30年度からは事務局次長が直接市町村と協議を行うとともに、令和元年度からは京都府を退職した保健師を非常勤職員としてメンバーに加え、事務局体制の強化を図った。

医療専門職の配置により、京都府及び構成市町村の保健事業を担当する保健師等との間での連携構築が着実に進んでいる。

ページの先頭へ戻る

外部との連携体制

保健事業の実施にあたっては、広域連合だけでは完結せず、外部の様々な関係機関との連携も必要となる。

また、令和2年度から導入される後期高齢者の新たな質問票への変更に際し、医師会をはじめ関係団体に情報提供を行い、導入準備に向けた調整を行っている。

ページの先頭へ戻る

KDBシステムの活用

平成30年度までは、広域連合にはKDBシステムが設置されておらず、国保連の保険者機能支援を活用して分析等を行っていた。令和元年度に保健師の配置とセットでKDBシステムを導入し、広域連合内でもデータ分析や対象者抽出等が可能な環境が整った。

また、後期高齢者のKDBシステムが未開通の構成市町村においても、改正高確法施行後は、諸手続が簡素化されることから、広域連合として、KDBシステムによるデータ活用が全ての市町村で展開できるよう推進・支援を図っている。

今後は、非常勤保健師を中心として、KDBシステムを活用したデータ分析、事業評価等も進めていく予定である。

ページの先頭へ戻る

一体的実施に向けた支援の状況

京都府と合同によるデータ分析とそのフィードバック(京都府)

京都府は、高齢化を見据え、市町村と連携してライフステージに応じた切れ目ない健康増進対策による府民の健康寿命の延伸を目指し、地域の健康課題の分析やライフサイクルに沿った効果的な施策展開を推進することを目的として、平成30年度に国保ヘルスアップ支援事業の財源を用いて、健康長寿・データヘルス推進プロジェクト[1]を立ち上げた。

同プロジェクトでは、本庁プロジェクトである健康長寿・データヘルス推進プロジェクトと保健所プロジェクトである健康長寿・データヘルス協議会に分かれ、検討が進められた。

同プロジェクトは、後期高齢者医療、市町村国保・全国健康保険協会京都支部の各被保険者のデータを用いて分析を行い、その分析結果をもとに、市町村別健康課題と重点施策の明確化、府域の健康課題の明確化が行われ、市町村にフィードバックがなされた。

<分析結果の概要(京都府)>

(資料)京都府より提供。

ページの先頭へ戻る

市町村職員向けのデータ分析支援のための研修会の開催(京都府)

広域連合では、これまで構成市町村向けの独自の研修会等は開催していないが、データ活用能力向上等、保健事業の企画立案にあたっては、人材研修の必要性を感じていた。そうしたところ、令和元年度の夏に府が主体となり、人材育成研修会が開催された。

具体的には、国保・衛生・介護保険担当部署、保健所の関係者を対象として、外部有識者(統計専門家)が講師となり、基礎編・分析編に分けて実施された。

<研修の内容>

【基礎編】

 1日目:統計学の基礎知識の習得、実務で参照する公的統計

 2日目:データ分析に活用するExcel操作

【分析編】

 1日目:統計理論と手法(2群の検定)

 2日目:集団演習①(特定健診データを用いた健康課題の抽出)

 3日目:集団演習②(健康課題に対応する事業計画の立案と発表)

(資料)京都府後期高齢者医療広域連合提供資料より作成。

ページの先頭へ戻る

円滑な保健事業の取組実施支援としての補助制度の創設(広域連合)

広域連合は、平成29年度の保険者努力支援制度の得点が全国最下位に落ち込んだことから、保険者機能の強化が迫られ、早期脱却に向けた具体策を講じることが必要となっていた。

当初は、国の補助制度を活用した低栄養防止・重症化予防の取組について事業募集を行ったが、実施要件のハードルが高かったため、構成市町村からの応募や問い合わせは全くなかった。

そこで、保険者インセンティブの財源を活用し、保険者努力支援制度の加点要件のうち、すべてを満たさなくても、要件充足に向けて段階的に取組を進める事業に対して、府広域連合独自の補助制度を設けることとした。(広域連合・市町村間で事業計画案の協議を重ねる中で、結果として保険者インセンティブを獲得できるまで高めることができた。)

ページの先頭へ戻る

一体的実施に向けた市町村との意見交換会の開催(広域連合)

広域連合では、令和元年10月28日から30日の3日間かけて、府内の構成市町村に対して、令和2年度からの一体的実施に向けた国の状況、広域連合から市町村への委託の概要、財政措置の在り方、次年度の事業実施に係るアンケート調査の実施状況等を把握するとともに、今後のスケジュール等も提示した。

特に、事業実施パターンや情報提供の方法、事業実施イメージに関しては、図解しながら市町村に対してわかりやすい説明を行うように努めた。

<意見交換会での説明資料(事業実施イメージ)>

(資料)京都府後期高齢者医療広域連合提供資料より作成。

<意見交換会の主な内容>

Ⅰ 高齢者の保健事業と介護予防等の一体的な実施について

 1 一体的実施に係る国通知等について

 2 一体的実施に係る委託契約締結までの流れ

 3 一体的実施に係る体制整備・事業実施について

 4 一体的実施等に係る財政措置について

 5 一体的実施に係る市町村アンケートについて

Ⅱ 国保データベース(KDB)システムの導入について

Ⅲ 健診の質問票(質問項目)の変更について

(資料)京都府後期高齢者医療広域連合提供資料より作成。

ページの先頭へ戻る

一体的実施に係る市町村アンケート調査(広域連合)

広域連合は、令和2年度以降、構成市町村の取組の現況を把握するため、さらには具体的事業につなげていくために、2段階に分けてアンケートを実施した。

11月上旬にまず初回のアンケート調査を実施し、その時点で回答可能な項目について把握した上で、12月中旬に、より確定した情報の提出を求めた。

本アンケートでは一体的実施に係る実施意向を把握するだけではなく、保健事業実施計画(データヘルス計画)の中間見直し及び次期保険料算定に反映させるように詳細なつくりとなっている。

また、同アンケートには市町村が回答しやすいよう、高齢者の保健事業と介護予防等の一体的な実施に係る基本方針のイメージも添付している。

<市町村アンケートの項目>

<現況>

1 人員体制について

 回答部署・医療専門職の配置数

2―① 高齢者を対象とする保健事業について

2―② 介護予防事業について

2―③ 主に高齢者を中心とした健康増進に資する取組について

 事業名・従事する医療専門職・実施部署・対象年齢・関係団体等への委託・データ活用・関係団体との連携・自主グループ等の活用・会計区分

<今後の方向性>

1 市町村の基本方針に掲げる実施事業について

 実施期間・実施場所(通いの場等)・対象見込・実施回数・経費見込・特記

2 市町村基本方針に掲げる実施体制について

企画調整担当:配置部署・職位・職種・業務分担する関係部署・地域担当との兼務、他市町村との兼任・配置期間(予定)・経費見込み・特記

地域担当:地域包括支援センター、事業内容・職種・実施形態等(町内の担当部署)・配置期間(予定)・経費見込み・特記

(資料)京都府後期高齢者医療広域連合提供資料より作成。

ページの先頭へ戻る

広域連合の支援を受けた市町村の取組<京都市におけるフレイル対策モデル事業>

取組の経緯

京都市は平成30年度に組織改編を行い、介護予防推進部署を介護保険部門から健康づくり部門に移管した。その際、一般介護予防事業等については新たに配置された職員が担当となり、これまでの一般介護予防事業等の実施状況を把握すると同時に、より健康づくり(栄養・口腔等)の視点を取り入れた事業等を検討していくことが必要となった。

<京都市地域介護予防推進センターの概要>

(資料)京都市提供資料

京都市では、一般介護予防事業を進めるうえで重要な機関であり、各区に地域の介護予防の拠点として設置している地域介護予防推進センターについて、今後の事業の方向性を確認するために、担当者が広く情報収集を行った。その際、厚生労働省担当者から情報収集をする機会があり、そこで得た情報を活用して、財源も含め市としての新たな介護予防の取組について検討を進めた。

京都市は広域連合が国の特別調整交付金を活用した補助制度を設けているという情報を得て、広域連合に新たな事業の実施方法の相談等を行ったところ、前述の保険者インセンティブを活用した補助制度の活用を提案され、新規事業(試行的な取組)を検討することとした。

しかしながら、検討の開始時期がすでに平成30年度の後半であったことから、年度内でできる事業の枠組みを検討した。

結果、地域介護予防推進センターが関わる1つの自主グループ(住民が主体となって、地域で自主的に介護予防に取り組むグループ)の協力が得られることとなり、当該自主グループに対して医療専門職等の関与を試行的に実施することとした。

<試行実施の概要>

(資料)京都市より提供。

ページの先頭へ戻る

取組の準備

令和元年度の事業は、平成30年度の2か月の試行期間の中で明らかとなった課題を踏まえつつ、介入するグループ数を増やすとともに、地域介護予防推進センターの事業実態に則した取組とすることとした。

<試行実施で明らかとなった成果と課題>

<成果>

「専門職が連携して関与すること」は事業効果を総合的に高めるだけでなく、参加者の行動変容のきっかけともなる。

「効果の見える化」は事業効果の検証につながるだけでなく、参加者の意欲の向上にもつながる。

<課題>

高齢者数に対して専門職の数は限られるため、効率的な関与が必要である。

測定結果の集約に手間がかかるため、対象者を増やすにあたっては、より簡易にデータの集約や整理を行う仕組みが必要である。

(資料)京都市提供資料より作成。

令和元年度についても、財源は広域連合の補助金を活用し、モデル事業として実施することとした。この補助金は国の特別調整交付金を活用することになるため、申請にあたっては広域連合との間で複数回の調整を重ね、国に対する補助の申請書を完成させた。

また、京都市が事業開始前に、京都府医師会・京都府歯科医師会に対して、事業の実施内容・予算規模・スケジュール等の説明に出向いたところ、ともにフレイル・オーラルフレイル対策について関心が高かったことから、事業内容等のご理解をいただくことができた。

<医師会等への説明資料(抜粋)>

(資料)京都市提供資料より作成。

ページの先頭へ戻る

具体的な取組概要

令和元年度のフレイル対策モデル事業では、京都市内でも高齢化率が他の区より5ポイントほど高く、一方で地域介護予防推進センターによる自主グループの育成・支援が進んでいる東山区をモデル対象として選定し、そこで活動する50ほどの自主グループに対し、体力測定やフレイルに関するチェック等を行うとともに、状態悪化傾向等が考えられる10グループに協力してもらい、フレイル対策に取組んでもらうこととした。

事業スキームは、週1回のペースで実施されている自主グループの活動の場に、3か月間隔週計6回で医療専門職(管理栄養士・歯科衛生士等)がそれぞれ出向き、30分程度のミニ講座を実施し、休憩時間等に個別の健康相談を行うなどの内容とした。医療専門職による関わりが終わった後には、東山区地域介護予防推進センター(拠点)での体力測定会に参加いただき、効果検証を行うことを予定している。

<モデル事業のスケジュール例>

(資料)京都市より提供。

ページの先頭へ戻る

実施体制

モデル事業の企画は、京都市健康長寿企画課の介護予防推進担当(事務職2名)が主体となり、同じ課内にいる健康長寿推進担当(管理栄養士、歯科医師)に相談をしながら行い、併せて事業実施体制を構築した。

<京都市の体制図>

(資料)京都市提供資料より作成。

自主グループの活動の場に市職員(事務職、管理栄養士、歯科衛生士)や他機関の医療専門職が出向く際には、普段から自主グループの支援を行っている地域介護予防推進センターのスタッフも同行してもらっている。これは、関係性の構築できていない市職員等が単独で訪問するよりも、顔見知りのスタッフが同席することで、自主グループに円滑にかかわることができるためである。

事業開始当初は、実際の自主グループ(通いの場)でのミニ講座や個別相談等は、京都市健康長寿企画課の管理栄養士・歯科衛生士が担当した。

事業を進める中、将来的に自主グループへの医療専門職の訪問回数が増えることを想定し、並行して、京都府栄養士会・京都府歯科衛生士会に医療専門職の派遣協力について調整を進めた。その結果、自主グループへのミニ講座の実施内容等がある程度固まった令和元年12月頃から、医療専門職の派遣を行っていただけるようになった。

ページの先頭へ戻る

事業の横展開に向けた活動

令和元年度は東山区地域介護予防推進センターを対象として実施しているが、今後の全市展開を見据え、横展開を図るために、令和元年12月に、全地域介護予防推進センターの職員を対象として、関係する医療専門職等に参加いただき、研修会を実施した。

研修会では、グループワークを取り入れ、自主グループ(通いの場)の拡充や、医療専門職の関わり方等について議論した。

また、令和2年1月には、京都府歯科医師会に協力を得ながら、地域介護予防推進センターの職員や市内の歯科専門職を対象とした研修会を開催し、介護予防やオーラルフレイル・フレイル対策、口腔機能向上に関する知識等の向上を図るとともに、地域における関係者間での顔の見える関係づくりを試みた。

ページの先頭へ戻る

取組の成果・評価

手探りで事業を進める中、関係団体の協力を得て、効果的な取組の検討や体制づくり等を進めることができつつある。その一方で医療専門職による自主グループへの関わりについては、グループの主体性を妨げないよう、より慎重かつ丁寧に進めていく必要があることがわかってきた。

健診等のデータは活用できていないが、事業効果の分析のため、歩行姿勢の測定等を含めた体力測定値やフレイルチェックなどの情報を収集している。今後、参加者アンケートの実施も予定しており、事業実施結果の評価等を行うこととしている。

ページの先頭へ戻る

取組の成果

府全体での高齢者保健事業の底上げ

広域連合として、構成市町村の事業企画立案するに際し、広域連合独自の補助制度の用意等、予算の裏付けを行い、計画書等についてもこまめにフォローを行うことにより、府内の構成市町村の中でも、実施できることから着手しようという市町村が増えつつある。

令和元年度には、左記のように4市において事業が取り組まれ、令和2年度以降の準備が進められている。

特に、京都府内最大の市である京都市がモデル事業の展開等による先行的な取組に着手してくれたことは、他の自治体の取組を後押しするものとなり、次に続く市町村の展開につなげられればと考えている。

<令和元年度の取組>

(資料)京都府後期高齢者医療広域連合より提供。

ページの先頭へ戻る

取組の課題・今後の展望

高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に向けて、次年度以降は、関係団体との連携体制の構築を進めたり、導入されたKDBシステムの活用、さらには構成市町村向けの研修の実施等、構成市町村が着実に事業実施できるよう、広域連合としてのバックアップ体制を整えていきたい。

1^ 同プロジェクトの報告書は http://www.pref.kyoto.jp/kentai/news/kenkoujyumyoukoujyoutaisakujigyou-houkokusyo.html 参照。