「日本一健康で元気なまち」
をつくるための基盤整備

千葉県船橋市

【船橋市の概要】

人口:640,012人(高齢化率:23.9%)(平成31年4月1日時点)

後期高齢者被保険者数:76,212人(平成31年4月1日時点)

後期高齢者1人あたり医療費:823,874円/年(平成30年度)

後期高齢者健診受診率:48.7%(平成30年度)

千葉県船橋市

ふなばし健やかプラン21マスコットキャラクター「すこちゃん」

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体制の特徴

健康づくり・介護予防を一体的に実施する組織編制による早い段階からの事業検討

国保の事業を拡大した形での事業展開

地区単位での健康課題の分析と普及啓発

まちづくりの一環としてのポピュレーションアプローチ

「健康」をキーワードにまちづくり、地域づくり

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体制整備に至る経緯

船橋市では、市全体の地域包括ケアシステムの確立のために、平成26年に船橋市地域包括ケア推進本部を立ち上げ、5分野(住まい・予防・生活支援・介護・医療)に関するサービスを一体的に提供する仕組みの構築を推進してきた。

推進本部の本部長は副市長、本部員は健康福祉局長、建設局長、病院局長並びに所管部長が就き、各分野ごとに専門部会を設置した。介護予防・疾病予防、健康づくり事業については、健康づくり課が事務局を務める予防部会で各事業計画や進捗管理を行うようになった。

推進本部による進捗管理を進める中、平成27年10月の組織改編、予防事業の一元化を図るため健康づくり課を保健所内に設置した。

このように、船橋市では健康づくり課が、国が高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に関する方針を提示する前から、国民健康保険(以下「国保」という)の保健事業、高齢者の保健事業、介護予防事業を担当しており、一体的な実施の基盤となる体制が整備されていた。

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現行の体制

市内の体制

船橋市における高齢者の保健事業・介護予防に関する取組は、健康福祉局内の健康・高齢部に位置付けられた保健所の健康づくり課が担当している。

健康づくり課は、特定健診・がん検診係、予防接種係、特定保健指導係、介護予防推進係の4係から成り、平成31年4月1日時点で66人の職員(常勤職員43人、非常勤・臨時職員23人)が配置されている。

後期高齢者医療制度の保険給付は同じ健康・高齢部ではあるが、保健所とは場所の離れたところに位置する本庁の国保年金課が担当している。

後期高齢者医療広域連合との窓口は国保年金課で、保健事業は健康づくり課の担当であるため、広域連合からの情報の共有等、連携しながら事業を進めている。

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健康づくり・介護予防を一体的に実施する組織編制による早い段階からの事業検討

船橋市では、高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に向けた国の動向を踏まえ、庁内での体制整備・事業内容の検討を早くから進めてきた。

健康づくり・介護予防に関しては、健康づくり課内で事業の整理を行った結果、75歳となり国保から後期高齢者医療制度に移行する際、保健事業の断絶があることが問題として浮かび上がった。

<船橋市における国保と後期高齢者を対象とする保健事業の実施状況>
健診 特定保健指導 重症化予防事業 フレイル予防対策事業
国民健康保険被保険者 実施 実施 実施 令和元年度試行
後期高齢者医療被保険者 実施 未実施 未実施

(資料)船橋市提供資料より作成。

同じ市民であっても、75歳を境に事業対象でなくなることは問題であるため、船橋市では国保の保健事業からの継続性を意識した事業の組み立てを行うこととした。

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高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施に向けた体制整備

幹部も含めた一体的実施に向けた意識合わせ

船橋市では、副市長を本部長とした地域包括ケア推進本部を設けており、そこの場において、介護予防・各種施策の進捗管理等を行っている。介護予防・疾病予防、健康づくり事業もその対象であり、その場において、事業担当となる健康づくり課から概要の説明を行っている。

また、令和2年度からの一体的実施に向けて、議会説明も必要であり、市長を含めた市の幹部にも実施に向けた事業内容や職員の確保について説明を行い、おおむね了承を得ている。

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医療専門職の確保

船橋市では令和元年度からの一体的実施にあたり、企画調整を担う保健師として、常勤保健師1名を専従で配置し、地域で活躍する医療専門職に、非常勤の保健師もしくは管理栄養士を雇用する予定である。人員配置が整い次第、年度の早い段階から事業着手する予定である。

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KDBシステム等の活用

市にはKDBシステムだけではなく、住民基本台帳とリンクする市独自の健康管理システムが導入されている。令和2年度より健診の質問票が新しくなるため、情報システム課に相談して健康管理システムの改修も行った。

健康づくり課内にもKDBシステムの端末はあり、分析は可能な状況にあったが、これまでKDBシステムを用いて後期高齢者医療制度の被保険者の状態像を確認したことがなかった。一体的実施においては、KDBシステムをはじめとしたデータ分析に基づいた現状分析や対象者の抽出等が求められていることから、改めてKDBシステムを活用した。

具体的には介護保険サービスの利用状況別に糖尿病性腎症重症化予防の対象者を抽出し、概数の把握を行った。

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令和4年度までの事業実施計画の策定

船橋市では、既に令和元年6月の時点で上記に挙げた事業について計画を立てており、下記のように対象者数の推計を行い、令和2年度からの一体的実施に向けた人員体制の確保のための根拠資料を整理した。

また一体的実施は単年で終わるものではないため、令和4年度までの訪問対象者数、事業量の見込みを立て、事業実施計画も策定している。

<保健事業の対象者数の見込み>
平成30年度 令和元年度 令和2年度
対象者数 出現率 対象者数 出現率 対象者数 出現率
フレイル予防対策(後期) 272人 0.82% 312人 0.82% 320人 0.82%
糖尿病性腎症重症化予防 120人 0.36% 137人 0.36% 140人 0.36%

※令和元年度健診受診者38,000人、令和2年度(見込み)39,000人をもとに算出

(資料)船橋市提供資料より作成。

このように整理した内容は、広域連合の広域計画を受けて策定する基本的な方針にほぼ活かされることになっている。

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市内関係団体との連携

医師会・医療機関との顔の見える関係づくり

船橋市では、健診をはじめ各種事業に協力いただいている医師会・医療機関とは、常に顔の見える関係づくりを心掛けている。

後期高齢者の健診については、健診そのものの実施だけではなく、結果のデータ化も含めて船橋市医師会に委託している。令和2年度からの後期高齢者の質問票の変更についても丁寧な説明が必要と考え、複数回にわたり説明を行った。

具体的には、令和元年9月の時点で医師会に対し、後期高齢者の新質問票について説明を行った。また、個別医療機関には、12月上旬に市から文書で案内をするとともに、1月の個別医療機関の担当者が集まる医師会の会合において市の担当者が説明を行った。

また、平成30年度より国保被保険者を対象とした保健事業(慢性腎臓病対策事業・糖尿病性腎症重症化予防事業等)の説明を行うために、年1回市の健康づくり課の保健師・管理栄養士が全医療機関を訪問している。医療機関が事業の対象者や事業内容をイメージしやすいように、健診データから当該医療機関を受診中の患者のデータを2~3例抽出し、持参して医師の治療内容および保健指導内容について情報共有を行った説明をしている。今年度の訪問の際には、糖尿病性腎症重症化予防事業についてだけではなく、令和2年度からの高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施に関する事項の説明も行った。

ケアマネジャーとの協議の実施

令和2年度の事業計画を立てる中で、健診データから糖尿病性腎症重症化予防およびフレイル予防の対象者を抽出し、併せて介護保険サービスの利用状況も確認したところ、介護保険サービスの利用者が多数含まれていることがわかった。介護保険サービスの利用者には、ケアマネジャーが関与しているため、ケアマネジャーとの連携の必要性を感じ、ケアマネジャー協議会において市内で活動する主任ケアマネジャーとも協議を実施した。

今後、糖尿病性腎症重症化予防事業を後期高齢者に対して実施していく際、介護保険サービスを既に利用している人については、初回訪問はケアマネジャーが訪問する日程とあわせることも検討している。ケアマネジャーと一緒に訪問することにより、対象者の不安を軽減するとともに、服薬や健診の情報を持ち合わせていないケアマネジャーにこれらの情報を共有できることになるとも考えている。

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広域連合・国保連合会による支援

広域連合については、令和2年度からの委託に向けて、人員体制等について各種問い合わせをしている。市町村向けの説明会も開催されており、そこにできるだけ参加するようにしている。また令和2年度以降の事業意向調査も複数回来ている。船橋市としては、上記の通り、事業概要についての概ねの整理はついているため、その内容について回答する予定である。

国保連合会からはKDBシステムの活用に関する研修も実施されている。実際に抽出の作業を行っている中で、研修会とおりに抽出できないこともあり、具体的な操作方法を教えてもらうため、詳細な使い方についての問い合わせ等をしている。

<船橋市における一体的実施に関する体制イメージ>

(資料)船橋市提供資料より作成。

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高齢者の保健事業と介護予防の一体的実施に向けた取組の具体的内容

地区単位での健康課題の分析と普及啓発

「健康」を意識したまちづくりを推進している船橋市は、千葉大学の持つ健康維持や予防医学等の知見を活かすことが重要であると考え、平成29年度に同大学と包括的な連携に関する協定を締結した。

平成29年度には、国立長寿医療研究センターが事務局本部を務めているJAGES[1](日本老年学的評価研究) に参加し、高齢者の生活実態に関するデータの収集を行っている。JAGESからは他市の結果との比較のフィードバックを受け、市の立ち位置について確認している。

また、JAGESで収集したデータについては、市が独自で地区単位での分析も実施し、「フレイル」についての普及啓発に用いるために、様々な機会で住民に提示している。中でも、市民ヘルスミーティング[2]においては、地区別分析の結果をもって住民同士に議論してもらう場を設け、「フレイル」についてより意識を高めてもらうように努めている。

<地区分析の一例>

(資料)船橋市より提供。

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国保の事業を拡大した形での事業展開

後期高齢者医療制度被保険者に対する糖尿病性腎症重症化予防事業(令和2年度新規事業)

船橋市は、平成28年度より国保の被保険者に対する糖尿病性腎症重症化予防事業を市直営で実施しており、一定のノウハウを有している。

令和2年度以降は、このノウハウを用い、対象を後期高齢者医療の被保険者にも広げて事業展開することを予定している。

ただし、後期高齢者であるということに配慮して、対象者の選定基準は以下のようにすることを予定している。

【対象者】

後期高齢者医療制度被保険者のうち、健診結果でHbA1c8.0%以上かつ尿蛋白+以上の者(140人)

【実施方法/支援内容】

かかりつけ医がいる場合には連携を図るとともに、療養上の指示・指導のもと、保健指導を実施

後期高齢者医療制度被保険者に対するフレイル予防対策事業(令和2年度新規事業)

令和元年度からは、65歳以上の国保被保険者に対して、糖尿病性腎症重症化予防事業と並んで、市直営で低栄養防止対策のための訪問事業を開始した。

令和2年度以降は、この仕組みを下記のように後期高齢者にも拡大することを予定している。

【対象者】

後期高齢者医療制度被保険者のうち、健診結果で低栄養状態が疑われる者(320人)

【実施方法】

かかりつけ医がいる場合には連携を図るとともに、療養上の指示・指導のもと、保健指導を実施

初回訪問:栄養状態および生活状況、治療状況等のアセスメントを実施し、改善に向けた行動計画を本人とともに作成

3か月後:訪問や電話で状況把握(目標変更可)

6か月後:立てた目標に対する評価(体重変動、食事摂取量、買い物回数等)

アクティブシニア手帳

【支援内容】

特定保健指導の対象者同様、生活改善に向け、半年間で実現可能な目標を立て、本人のセルフマネジメントを向上させるとともに、対象者への保健指導を実施。必要に応じてかかりつけ医と連携を図る。

介護予防を視野に入れた支援(地域の運動教室、市民ヘルスミーティング、公園事業等の紹介)

アクティブシニア手帳をフレイル対象の媒体ツールとして活用

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まちづくりの一環としてのポピュレーションアプローチ(ふなばしシルバーリハビリ体操)

船橋市では、リハビリテーション医が考案したオリジナルの体操を地域で普及させている。まちづくりの一環として、自主グループ等による活動も推奨しているが、より多くの人が参加しやすいよう、市が主催して、26の公民館で毎月日にちを決めた教室も実施している。

この体操は、65歳以上の高齢者を対象としたポピュレーションアプローチであり、だれでも参加できるものであるが、参加者情報を確認すると、要支援1・2の人も参加しており、自立支援型のケアプランのサービス後の受け皿として活用されていることが分かった。

なお、このシルバーリハビリ体操は、市が養成している指導士がボランティアとして運営に参加している。

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体制整備における課題・今後の展望

船橋市は、既存の組織編制において健康づくりと介護予防が同じ部署に位置づいていることもあり、令和元年度の早い段階から、ハイリスクアプローチとポピュレーションアプローチを組み合わせて一体的実施に向けた準備を進めてきた。

令和元年度の後半は人材の確保と、計画をより詳細に具体化していく段階となっており、令和2年度からの円滑な事業実施が見込まれている。

いずれにしても、「健康」をキーワードにまちづくり、地域づくりをしようと考えており、そのためには、行政が根幹となる事業を決め、地域に出向いて働きかけていくことが重要であると考えている。

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人材確保による事業開始

事業予定としては、4月から人材を配置し、訪問を行う人員の確保ができ次第着手する予定である。
【一体的実施の当面のスケジュール】
令和2年度4月~7月:KDBシステム等を用いて、事業企画・調整・分析・評価等を実施
     8月~  :個別支援(ハイリスクアプローチ)・通いの場等への関与を実施

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船橋市版健康スケールによる高齢者の状態像の把握

船橋市では、市民の健康度を計るためには、要介護度のような重症度を表す指標ではなく、前向きな明るい指標が必要と考えた。そこで連携協定を締結した千葉大学が中心となっているJAGESの2013年度のデータをもとに、10の質問項目でリスクを点数化し、あなたの元気度や3年後の要支援・要介護になるリスクを示す船橋市オリジナルの健康スケールを協働で開発した。

健康スケールについては、その結果を個別の市民に提示するだけではなく、平成30年度から経年的に該当年齢(65歳、70歳、73歳以上)となる全住民を対象に郵送アンケート方式で測定し、市のデータベースにおいてデータを蓄積している。

この健康スケールのデータについては、令和2年度から改訂される後期高齢者の質問票の回答結果とも連動させながら分析したり、ハイリスクアプローチの保健指導計画に活用していく予定である。

また、アンケートへの未返送者には地域包括支援センターより実態把握のためのアプローチをしており、そのことが健康状態不明者へのアプローチにつながっている。

その他、通いの場でも健康スケールに関する質問項目の回答をしてもらうようにしており、通いの場等において参加者の状態のモニタリングにも活用することを予定している。

<船橋市健康スケール 結果通知 イメージ>

(資料)船橋市より提供。

1^ Japan Gerontological Evaluation Studyの略で、高齢者に関する各種データを収集しながら、健康長寿社会をめざした予防政策の科学的な基盤づくりを目的とした研究プロジェクト

2^ ふなばしシルバーリハビリ体操の公民館定期開催の枠組みを利用して、26の公民館で年2回ずつ開催。JAGES2016の結果について、各地区の良かった項目や改善が必要な項目といった地域の特徴を市民と共有するほか、市民が普段感じている地域の課題についても行政と話し合い対策を考えた。