第14回厚生科学審議会臨床研究部会 議事録

医政局研究開発振興課

日時

令和元年8月21日(水) 16:00~18:00

場所

労働委員会会館講堂(7階)

議事

○伯野研究開発振興課長 それでは、定刻になりましたので、ただいまから第14回厚生科学審議会臨床研究部会を開催させていただきます。本日は部会の定数14名に対しまして9名の委員の方々に御出席を頂いておりますので、定足数に達していることを御報告申し上げます。なお、川上委員、新谷委員、花井委員、山口委員におかれましては御欠席されるとの御連絡を頂いております。また、田島委員におかれましては、30分程度遅れて御出席との御連絡を頂いております。事務局のほうですが、迫井審議官が他の公務のため欠席させていただきます。また、吉田局長ですが、1時間程度遅れて参加させていただく予定になっております。
 事務局より、委員の交代について御報告を申し上げます。臨床研究部会委員につきましては、清水先生、羽鳥先生、矢守先生が御退任されまして、今回より新たに、3名の委員の方々に御参加いただいております。簡単で恐縮ではございますが、御紹介をさせていただきます。
 まず、国立研究開発法人国立がん研究センター東病院臨床研究支援部門長、研究企画推進部長の佐藤暁洋先生です。続いて、北海道大学病院病院長補佐、臨床研究開発センター、センター長の佐藤典宏先生です。続いて、公益社団法人日本医師会、常任理事の平川敏夫先生です。どうぞ、よろしくお願いいたします。また、楠岡委員、国忠委員、新谷委員、花井委員、増田委員、山口委員、渡部委員につきましては、一度、任期を迎えたところでありますが、今回、改めて御参画いただいているところです。
 なお、それに伴い、本日は議題1で部会長・部会長代理の選出を改めて行うこととしております。また、本日は東北大学大学院文学研究科准教授の田代志門先生に御参加いただいております。どうぞよろしくお願いします。また、慶應義塾大学大学院法務研究科教授の磯部哲先生にも参考人として御参加いただいております。どうぞよろしくお願いいたします。
 続いて、本日の会議資料についてですが、お手元のタブレットを操作して御覧いただきますようお願いいたします。まず、タブレットの一番上ですが議事次第、その下に座席表、その下の03資料として委員名簿、その次の04からが資料の中身です。資料1-1、これまでの議論を踏まえた拠点の整理事項、資料1-2、臨床研究中核病院の承認要件の見直しの考え方、資料2-1、臨床研究法附則第2条への対応について、資料2-2は田代参考人の提出資料、資料2-3は磯部参考人の提出資料です。参考資料が1~4まであります。資料の不足等ないかと思いますが、よろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、円滑な議事進行のため、カメラ撮影はここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。
 それでは、早速議事に入らせていただきます。まず議題1ですが、臨床研究部会長の選出等についてです。先ほど申し上げましたように、前回まで楠岡委員に部会長をお願いしていましたが、今回、一度任期が切れた上で再度お願いをさせていたただいた関係上、改めて部会長・部会長代理の選出の手続が必要となります。部会長の選出につきましては、厚生科学審議会令第6条第3項に、「委員の互選により選任する」とされております。この委員には臨時委員は含まれませんので、委員名簿において「◎」が付いております川上委員、楠岡委員の2名の互選により部会長を選任することとなります。川上委員におかれましては、御欠席になるということを事前に伺っておりましたので、事務局にて川上委員の御意見を確認させていただきましたところ、臨床研究に精通されている楠岡委員を是非とも推薦したいとのことでしたので、御報告させていただきます。いかがでしょうか。ありがとうございます。よろしいでしょうか。それでは、楠岡部会長には改めて部会長席に移動していただき、以後の議事進行をお願いできればと思います。
○楠岡部会長 ただいま、本部会の部会長を仰せつかりました楠岡です。前回に引き続き務めさせていただきますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。皆様の御協力を得て円滑に議事を進めていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、早速議事を進めていきたいと存じます。まず、部会長代理の指名です。審議会令第6条第5項に、「部会長があらかじめ指名する者」とされており、部会長が部会長代理を指名することになっております。この部会長代理につきましては、前回に引き続き、藤原委員にお願いしたいと思っておりますので、藤原委員、どうぞよろしくお願いいたします。
○藤原部会長代理 ただいま、部会長代理の御指名を頂きました藤原です。部会長をしっかサポートしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
○楠岡部会長 よろしくお願いいたします。それでは、議題2に入ります。議題2は、今後の臨床研究・治験活性化に係る方向性についてです。事務局より資料1の説明をお願いいたします。
○吉田治験推進室長 プライベートファイルの上から4つ目、04資料1-1、「これまでの議論を踏まえた拠点の整理事項」を開けてください。本件については今年3月に一度、いわゆる『中間取りまとめ』を行っております。その『中間取りまとめ』の中で臨床研究中核病院、すなわち拠点に関連するあり方について、主な論点がありました。これをこの枠の中に記載しております。この中で2番目と3番目、具体的には研究開発が進まない領域の臨床研究・治験に関しては、国として、それらの領域に特化した拠点のあり方について検討する必要があるということと、拠点としての機能を維持しつつ、他施設を支援するための拠点の考え方を議論していく必要があるということ、この2点については、ヒアリングを行って議論を行ったところです。
 次のページは、特定領域の臨床研究を推進する拠点の整備についてヒアリングを実施し、その議論を行った内容を整理したものです。特定領域型拠点として想定する領域ということで、次のようにまとめております。幅広い疾患領域に関して、その全ての領域を指定することについては、リソースの集約等の観点から困難であると。したがって、特定領域として国が取り組むべき分野を整理する必要があるが、次の観点から特定領域を検討していくべきではないかということで、特に臨床研究の取組が行いにくい領域、現在の治療法の開発等が十分ではない領域、長期にわたる安定的な取組が求められる領域です。なお、ヒアリングにおいては、これらを踏まえた具体的な領域として、小児領域と神経系疾患の領域などが挙げられました。
 その下が、特定領域型の拠点に対して求められる役割です。まず、全国に点在する患者及び研究者を適切につなぐネットワークのハブ機能ではないかと。具体的には、関連学会とも連携した治験・臨床研究のネットワークの事務局機能、拠点を中心とした多施設共同治験等の積極的な推進、特定領域に精通した適切に対応可能な倫理審査委員会等の設置です。これ以外にも専門領域に係る人材の育成、レジストリなど研究開発に使えるデータ基盤の管理、研究費の成果物を蓄積できる安定的な組織運営基盤、コンパッショネートユース等の適切な実施が挙げられております。また、このような役割が求められる一方で、既存の臨床研究中核病院に求められる幅広い臨床研究の支援基盤については、必ずしも全て同水準であることを求める必要はないのではないかという意見もありました。
 次のページは臨床研究の支援機能、あるいは産業界から求める拠点の役割についてヒアリングをした結果と、その議論を整理したものです。臨床研究の支援に係る役割分担については、様々な支援が必要である中で、それらの支援業務について学術性・専門性、支援業務の場所等を踏まえ、次のようなイメージに大別できるのではないかと思います。
 1)は学術性・専門性が高く、集約的に実施することで我が国全体としての研究の質の確保に資する業務です。具体例としては、医師主導治験・特定臨床研究等の試験計画の立案作成支援、それらの研究に係るプロジェクトマネジメント、薬事戦略支援、安全性情報管理、データマネジメント・モニタリング・監査に関する相談、特殊な研究計画の立案及び解析を要する研究に対する統計解析支援です。2)は必要に応じて1)の支援を受け、研究機関において対応していくべき業務です。具体例としてはデータマネジメント、オンサイトモニタリング・監査の実施及び実施支援、CRC業務、統計解析支援ということでした。
 このような分類を精査した上で、1)に含まれる研究支援業務を、臨床研究中核病院において、特に求めていく役割として位置付けてはどうかということです。併せて2)に挙げられる業務については、医療機関の研究支援部門の規模や研究に応じて異なりますが、研究の実施が役割として求められている病院においては、臨床研究中核病院の助言を得つつ、一定程度自立的に実施できるように求めることとしてはどうかということでした。
 次に、プライベートファイルの上から5番目、05資料1-2、「臨床研究中核病院の承認要件の見直しの考え方」を開けてください。以上のヒアリングを整理した結果を受け、具体的に臨床研究中核病院の要件にどのように取り込んでいくかという議論で、これが今日の本題になろうかと思います。まず最初のページに書いてあるのは、特定領域の臨床研究を主として実施する臨床研究中核病院の要件変更の考え方を整理したものです。(1)の対象となる領域については、これまでの議論を踏まえ、想定する領域として小児疾患、神経難病を想定して検討を進めます。また、特定領域において担うべき役割を含めて改めて整理した上で、主として特定領域の臨床研究を実施する臨床研究中核病院としての要件を設定することにしたいと考えております。
 (2)が研究の実施に係る能力です。これは研究の実績及び論文実績についてです。これらは、評価の対象が当該特定領域に限定されるということを踏まえると、現行どおりの措置のままとすることでよいのではないかと。一方で多施設共同治験については、当該領域の国内研究者・研究機関と連携した研究を推進する方向性を踏まえ、通常の臨床研究中核病院と同等、又はそれ以上の実施を求めるべきではないかと考えております。
 (3)が研究の支援実績です。研究の支援機能については、臨床研究実施に関する支援機能として、既存の臨床研究中核病院と同等の支援実績を求めてはどうかと考えます。また、特定領域に関する研究者をつなぐ役割を求める観点からは、いわゆるネットワーク形成を推進するため、学会とも連携可能なネットワークの形成、ネットワークを利用した研究実施の調整等を行う事務局機能の設置を求めてはどうかと考えております。
 (4)が特定領域型の拠点として求める体制・業務についてです。領域の特殊性等を踏まえ、疾患レジストリの構築、既存のレジストリとの連携、バイオバンクの活用等を要件として求め、人員要件について検討を行うことを考えております。
 次のページをお願いします。では従来からある、いわゆるオールラウンド型の臨床研究中核病院の要件に関しては、どのように変更したらいいかということです。大きく2つあって、(1)が支援機能に係る見直しです。臨床研究中核病院において、より積極的に行っていくべきと考えられる、学術性・専門性が高く、集約的に実施することで我が国全体としての研究の質の確保に資する支援業務について、支援機能の評価において適切に反映されるように、承認要件を改正してはどうかと考えております。
 (2)が適切な評価を行うための見直しについての考え方です。これには4つあります。1つ目の○が、臨床研究の実績評価の考え方の見直しです。具体的には、臨床研究や医師主導治験の実施件数、論文件数について、件数の見直しの要否を検討する。併せてプロトコール論文や筆頭著者の所属に関する取扱いなど、実績の計上に際して確認すべき事項について、考え方の整理を行いたいと考えております。
 2つ目の○は、臨床研究中核病院が行うべき支援機能の見直しです。これについては、(1)の内容を踏まえ、要件として求めるべき支援数の妥当性について検討を行いたいと思います。また、支援業務の範囲や支援実績の計上方法、既存の人員要件などの確認すべき事項についても、考え方を整理したいと思います。
 3番目の○は、新たな取組に関する要件化の必要性の検討です。患者申出療養の申請機関としての役割、先進医療の相談機関、あるいはリアルワールドデータの収集体制の整備など、今後の研究開発の実用化等において重要となる取組に関して、現時点において体制要件として追加で求めるかどうかを含め、考え方の整理を行いたいと考えております。
 4番目の○は、継続的な取組の評価に関する検討です。臨床研究中核病院における研究の実施及び支援の継続的な取組について、適切に評価、確認ができるようにするために、更新の制度を含めた考え方の整理をしたいと考えております。
 次のページ以降は、ただいま説明した方向性を各論に落としたものです。3ページは、臨床研究中核病院の役割です。これには、今後期待することを含めた具体的な役割について、趣旨を適切に書き出し、役割として明示すべきではないかと考えております。
 4ページは、承認要件の中の研究実績についてです。平成27年度以降の臨床研究中核病院の研究実績を踏まえ、求めていくべき研究実施件数について検討したいと考えております。また、特定領域の臨床研究を主として実施する臨床研究中核病院については、実績件数が現在においても通常の機関と比べて半分になっていることを踏まえ、実施件数の変更を行う必要があるかどうかを検討したいと思っております。
 5ページは、承認要件の中の多施設共同臨床試験の実績についてです。主として特定領域の臨床研究を実施する臨床研究中核病院については、多施設共同研究・多施設共同治験の実績要件も反映させる必要があるのではないかと考えております。また、領域横断的に臨床研究を実施する現状の臨床研究中核病院に関しては、実施状況を踏まえ、要件の引上げの要否も検討してはどうかと考えております。
 6ページが、承認要件の中の論文実績です。特定領域の臨床研究を主として実施する臨床研究中核病院については、現在でも実施件数が通常機関の半分になっていることを踏まえて、実施件数の変更を行う必要があるかどうかを検討したいと考えています。また、現状の要件に関しては、平成27年度以降の臨床研究中核病院の研究実績を踏まえ、求めていくべき研究実施件数について検討したいと思います。併せてプロトコール論文や筆頭著者の所属に関する取扱いなど、計上に際して確認すべき事項を整理したいと思います。
 7ページが、承認要件の中の他施設支援についてです。臨床研究中核病院に求める支援機能として、支援を行っていくべき支援業務を明示した上で、当該支援の実施を評価の中心とできるように、要件を変更してはどうかと考えております。併せて、支援件数の計上に関する技術的な整理も行いたいと考えております。
 8ページは、承認要件の中の研修実施の実績です。研修の実施については引き続き取り組んでいきますけれども、研修の質や内容に関する取組を求めることについて、検討を行うべきではないかと考えております。これには、研究計画をあらかじめ提出・公表することを求めるべきかということも含まれております。また、特定領域型の拠点については、当該領域に特化した研修の実施を求める要件を追加する必要があるのではないかと考えているところです。
 9ページが、承認要件の中の管理者の業務です。管理者の業務として体制整備を求めますけれども、これについて特に従事者に求める要件等については、柔軟な運用に改善するという観点から、技術的な変更の検討を行いたいと考えています。
 説明は以上ですが、今日はただいま説明した見直しの方向性に関して御議論を頂いて、もし委員の先生方に一定の了解を頂けるのであれば、次回以降、これについてそれぞれの要件の具体的な数値、あるいは具体的な規定の書きぶりを、今日の方向性の資料に併せて用意した形で提示した上で、御議論を頂ければと考えております。
○楠岡部会長 ただいまの事務局からの御説明に関して、御意見等を頂きたいと思います。資料1-1の全般的な方向性に関しては、今まで議論してきたところで、特に今回新しい点としては、特定領域に関しての承認要件とその位置付け、臨床研究中核病院全体の今後の承認要件のあり方、また、今は少し曖昧なままになっているようなところをクリアにすることが中心になろうかと思います。是非、御意見を頂きたいと思います。
○佐藤(暁)委員 2点、御確認させていただきたいと思います。資料1-1の最後の臨床研究の支援に係る役割分担に関しては、1)と2)で分けていただいていますね。もちろん全体的にはそのとおりだと思うのですけれども、例の中に安全性情報管理などがあります。これはどちらかと言うと下のデータマネジメントとかオンサイトモニタリングみたいな形で、試験ごとに体制を組む場合が多いかと思うのです。必ずしも上ではないのではないかという気もするので、具体的な要件を決めるときには、そこは1つ御検討いただきたいと思っているところです。
 もう一点は、資料1-2の4ページです。医師主導治験と臨床研究の実績ということで、「新薬・新医療機器等の開発」と「診療の最適化のための研究」のバランスと御記載いただいていますね。もちろんそのとおりだとは思うのですが、必ずしもそれが1対1で、新薬・新医療機器の開発と診療の最適化が、医師主導治験と臨床研究の数というようになっているわけではなくて、例えば既存薬を適用拡大するとか組み合わせるようなところも、医師主導治験でやっているのですが、それはどちらかと言うと診療の最適化のほうに当たるのではないかと思うので、そこら辺は御考慮いただけるような形で、数値目標などを御検討いただけるといいのではないかと思いました。
○楠岡部会長 ただいまの2点に関して、事務局から何かコメントはありますか。
○吉田治験推進室長 御指摘については今後、検討していきたいと思います。
○楠岡部会長 安全性情報に関しては、確かに医師主導治験をする場合は、主に事務局が担当するところですが、規模によって実施施設では十分できない場合、中核病院の支援を受けながらという形になろうかと思います。それは必ずしもどちらか一方がという話ではないかと思います。ほかにはよろしいでしょうか。
○国忠委員 1点分からないところがあって、御質問したいと思います。資料1-2の1ページ、研究の支援実績についてです。特定領域の中核病院の研究の支援機能については、「同等の支援実績を求める」と書かれているのです。一方で資料1-1の2ページの一番下では、ヒアリングにおいては、そういう役割が求められる一方、「既存の臨床研究中核病院に求められるような幅広い臨床研究の支援基盤については、必ずしも全て同水準であることを求める必要はないのではないか」という意見もあったと。こういう意見に基づけば、最初の「同等の支援実績を求める」というのは、ちょっと言いすぎというか、特定の臨床中核ではどこかほかを支援することに重きを置くよりも、むしろ多施設共同治験のようなことを積極的に進めるほうがいいというストーリーで、ずっときているような気がするのです。ですから、ここの所で「同等」と書くべきなのでしょうか。そこまで書かなくてもいいのではないかと思ったのです。
○吉田治験推進室長 書きぶりに関しては、もしかしたら誤解を招く可能性があるのかもしれません。基本的に特定型の場合でも領域横断型の場合でも、例えば多施設共同研究のような場合においては、その臨床研究の実施を支援するという意味では、その役割は変わりませんので、差を付ける必要はないのではないかという考えに立っています。ただ、そういった御意見もありますので、今後詳細な要件を詰めるときに、そこは参考にした上で御議論を頂ければと思います。
○国忠委員 支援というのが全くインディペンデントな支援なのか、あるいは試験の中での支援なのかによるのです。確かに多施設共同試験の中で、ほかの施設に対する支援ということを考えれば、それはもっともだと思うので、その辺りをはっきりさせていただければ結構かと思います。
○楠岡部会長 ほかにありますか。
○平川委員 この大きな枠組みの話で教えていただきたいと言いますか、確認したいのです。そもそも臨床研究中核病院というのは、国際水準の非常に高いレベルでの臨床研究、あるいは医師主導治験の中心的な役割を果たすという、いわば病院中の病院という非常に選ばれた、レベルの高い病院だという認識です。ですので、その要件を非常に厳格化するという意味の議論には賛成ですけれども、今のお話を伺っておりますと、要件を緩和するというようにも聞こえるように思うのです。他方、特殊な領域と言いますか、特定の領域と言いますか、研究開発が進まない領域があるのも明らかなことです。また、他施設において支援を行う機能の必要性が高まっているということも理解いたします。そこで、特定領域の拠点自体、臨床研究中核病院の枠組みとは別に議論することはできないのでしょうか。そもそもそこを教えていただきたいのです。
○楠岡部会長 これは今までの議論でもずっとあった中で、御指摘のように、特定領域に関しては、ナショナルセンターがもともとある中で、特定領域の臨床研究中核病院と機能をどういうように整理するかという議論に戻ることになるかと思います。事務局のほうからお願いいたします。
○吉田治験推進室長 最終的に臨床研究中核病院、あるいは拠点という形で役割を持たせるということを考えると、今ある臨床研究中核病院の制度の中に位置付けるという方法が、一番合理的と考えております。ただ、その際に今お話があったように、役割というものを考えたときに、横断的に支援するような病院、若しくは特定領域に特化して支援する病院といった、2つの役割があるのではないかという議論が行われて、こういう提案になっているというのが1点です。
 あと、先ほど要件の緩和というお話がありましたが、今回の方向性において、事務局としては緩和するという意図は全く持ち合わせておりません。むしろ全体的には厳しくなる方向という認識でおります。もし1点誤解があるとすれば、もともと小児等も含めた特定領域においては、一部の承認要件において、あらかじめ緩和された要件で現行では設定されております。現状でもそういう差が付いているので、その部分に関してはそれを維持するのか、更にそれを通常の臨中と同じ要件に戻すのかという議論は、これからあるかと思うのですけれども、それを更に緩和するということは、現状の方向としては考えてないという状況です。
○楠岡部会長 よろしいですか。ほかにありますか。
○佐藤(典)委員 臨床研究中核病院に求められる役割で、支援の部分を明確にしてより重きを置くということは非常に賛成です。逆に、今まではそこが不十分だったと思っておりますので、是非、取り上げていただきたいと思います。その中で、どういう専門性の高い職種が必要かというところで種類を挙げられておりますが、今の中核病院の人員要件に必ずしもそれが反映されていないということは、多分、事務局でも認識されていると思います。プロジェクトマネジメントもしかりですし、臨床試験で言えばスタディマネジメントという言い方もありますが、なかなか資格要件が難しいところではあると思いますけれども、現場の臨床研究を支援するほうからすると、今、一番足りない人材は、臨床研究をきちんとマネージする、あるいは、先ほど楠岡部会長からお話がありましたが、本来、研究者がすべきかもしれないけれども、そこはどうしてもできないから研究をサポートしながらプロジェクトを進行させていく役割の人なので、そこのところをきちんと評価していくということが1つ大切なのかと思っております。
 あと、細かい各論になってしまいますが、資料1-1の最後の所に「データマネジメント・モニタリング・監査に関するコンサルタント」と書いてあります。これでは相談を受けるだけの話になってしまって、中核病院としてはデータマネジメント・モニタリング・監査業務そのものも行っているので、ただ相談を受けるだけではなくて、そういうことも含めて支援機能をきちんと評価する形を取るとしていただきたい。
 前回まとめていただいた『中間取りまとめ』の合意事項ではないけれどもこういう意見があったという中に、現行の中核病院は、基準を満たすために自施設の臨床研究の支援で精一杯ではないかみたいな議論がありました。確かに、そういう一面があることはあるのですが、支援を高く評価することでそれをカバーできるという一面もある。甘くするというのではなく適正な数ということで、自分の病院の支援はほどほどこのぐらいにしておいて、とにかくほかにやりましょうと。自分の病院もそのままやれ、ほかもたくさんもっとやれということになると、ますますリソースが足りなくなってきますから、甘くではなくてそこのバランスをしっかり取った形で、自施設の研究の実行もそうだけれども、この度、支援に重きを置きましょうというのであれば。そこのバランスを取った上でないと中核病院もリソースが限られていますから、結局は数値要件を満たすために走ってしまうということになりかねませんので、そこはバランスが取れたような検討をしていただければと言いますか、具体的なところはこれからだと思いますが、その辺りを一緒に考えていければと思っております。
○楠岡部会長 事務局、いかがですか。
○吉田治験推進室長 御指摘の点については、これから詳細な要件を事務局で書き下しますので、その際に検討したいと考えております。
○藤原部会長代理 2点ほど、今後の議論で考えていただきたいことがあります。
 1つ目ですが、臨床研究中核病院のいろいろな研究費の支援は、今、AMEDの実用化研究推進事業か何かの名前だと思いますが、そこから得られています。以前、私は中核病院にいましたが、サイトビジット等でその評価がされる際には、長い歴史を踏まえてかもしれませんが、臨床研究、臨床開発の非常に早期の部分ばかりの実績がチェックされて、本当に大事な診療ガイドラインに載るような研究や、先ほど、佐藤委員がおっしゃっていたような適応外使用の是正、あるいは、コンパラティブ・エフェクティブネス・リサーチと言いますが、既存の治療法でどれが一番優れているのかというのを検証するとか、そういう後期の開発の評価は全くなされないことが多くて、シーズ管理やパイプライン管理、文科省の橋渡し拠点の評価のようなところばかり聞かれて、本当の患者さんにつながるところの臨床研究の推進の評価がされていないと思っています。ですので、今回、要件を見直す場合には、橋渡し拠点の評価法とは全然違うものを、きちんとAMEDと突合と言うか相談していただいて、臨床研究中核病院に合った評価指標にしていただくような方向性を考えていただきたいと思います。
 2つ目ですが、これは以前からの日本全体の問題ですが、臨床研究という言葉、臨床試験という言葉、治験という言葉が非常に入り乱れて使用されています。外国を見ると、臨床試験は臨床研究とはきちんと分けて使われることが多い、あるいは、治験という言葉は外国にはありませんので、英語で言えばクリニカルトライアルということが、日本の中で認知されていないという印象を持っています。今回に限らず、患者さんに直接つながるデータというのは、基礎研究と前向きの観察研究のような臨床研究もありますが、最終的には侵襲、介入を伴う臨床試験が非常に大事になりますので、そこの実績を評価するというところを書き分けてもらいたいと思います。
 更に言えば、臨床研究法で臨床研究というものの定義がされていますが、それは我々がこれまで医学系指針で使ってきたような臨床研究の定義とは微妙に異なって、あるいは、医療法での臨床研究の定義も少し異なると思います。臨床研究法の臨床研究には、少し世界で使われている臨床研究の定義とは違う定義が使われていて、これは実績要件のカウントのときにも非常に混乱を来すと思うので、そこの用語の整合性等も踏まえて今後の議論を進めていただければと思います。
○楠岡部会長 ありがとうございました。前半の話は、どちらかというとAMEDへのご指摘ですが、私はAMEDでPSをやっておりますので少し言い訳をさせていただきますと、AMEDでの実地調査は、AMEDが行っている事業に対する評価という形なので、どうしてももともと始まっている文部科学省のTR事業に引っ張られているようなところがあります。後から走り出した厚生労働省事業が合体したとき以来、同じ報告フォーマットをそのまま使っているという点があります。この点に関しては、今、AMEDのPDPSPOの間でもいろいろ意見があり、そこは今後改善していくことになっていくかと思います。
 それから、あくまでも、そこはAMEDの補助金事業等の評価であり、臨床研究中核病院としての評価は、厚生局の毎年の実地調査が行われている中での評価ということになってきますので、おのずから評価の視点は違います。厚生局での場合は、今回の議論の中で継続に関して基準をどうするかということが議題に上がっておりますが、それを前提として考えていくような話になっていくかと思います。
 事務局から、後半について説明をお願いします。
○吉田治験推進室長 後半の件ですが、臨中の場合、実績要件としてカウントできる試験は、臨床研究法の臨床研究ということで、いわゆる特定臨床研究と非特定臨床研究をカウントすることになります。確かに、特定臨床研究という言い方が、もしかしたら誤解を招いている可能性があるのかもしれないのですが、定義上は介入臨床試験を対象にしているということです。
 また、その際に、いろいろな実績を出していただくわけですが、きちんと論文を出していただき事務局でそれを全部チェックした上で、例えば、ときには介入ではない研究や対象ではない研究も入っていたりしますので、現状でもそういうものを除いた形で、介入臨床試験を対象にしてきちんと評価しております。ただ、臨床研究法で言う特定臨床研究の定義等を含めて、周知や啓発が少し行き渡っていないのかという点もありますので、そこは今後、工夫できればと考えております。
○楠岡部会長 臨床研究の用語の問題に関しては、もともと平成16年でしょうか、臨床研究に関する倫理指針が最初に出来たときに、一番最初の指針の内容はほとんど臨床試験に関する倫理指針だったのですが、タイトルが臨床研究に関する倫理指針となっていていました。私もパブコメの中でそのことは指摘したのですが、結局そのまま臨床研究に関する倫理指針となりました。ただ、その後の改定で観察研究も入ってきたので、その時点ではある意味、臨床研究に関する倫理指針という形になったわけです。
 今回、法律になったときに、藤原部会長代理からも御指摘があったように、通常、臨床研究というと観察研究まで含むかなり広いところを言っている中で、ある特定の領域が今は臨床研究法の対象になっているというところもあるので、言葉に関しては、どう使い分けるかということを少し整理していかないといけないかもしれない。結局、いろいろな議論をするときに、臨床研究法に言う臨床研究とか、いわゆる臨床研究とか、やたらにクオーテーションマークを付けながら議論しないといけないというのは甚だ不便なところがあるので、その辺りは、今後、少し整理が必要かもしれないと思います。また、事務局でも考えていただければと思います。ほかに何かございますか。
○渡部委員 2つあります。まず、資料1-1の3枚目の2)です。中核病院の支援を受ける施設も自立化して、それなりの体制を整えるようにということかと思います。その「べき」や「一定程度、自立的に」という所が、今後、何試験以上とか、こういう病院はという要件まで決めるのか、推奨のような形でとどめるのかということがよく分からなかったので、教えていただければと思います。
 2つ目は、資料1-2の8枚目のスライドです。研修実施の実績ということで、現行の要件は何回以上と書いてあります。これも回数だけではなくて、中身をしっかり検討することが必要ということは散々議論してきました。例えばCRCは、確か楠岡部会長の研究班で、初級者、上級者のシラバスを作って、それに基づいて今実施されているかと思います。ほかの職種に関しても、そういうものを整えるということも必要なのではないかと思いましたので、よろしくお願いいたします。
○吉田治験推進室長 御指摘については、これから詳細な要件を決めるときに検討したいと思います。
○山下企画調整専門官 1点目のお話ですが、今、臨床研究中核病院の要件としてどうしていくかというところで、その外にまで踏み込んでこの場で議論するかということで、具体の数字、あるいは別の病院制度にまで踏み込んで、こうするということを確定的に言うことは難しいかと思っています。一方で、臨床研究中核病院から見た立場、あるいは臨床研究の活性化議論のあり方の中で、この話をやっているものと認識しておりますので、その中で、一定の意見の方向性としてはこうあるべきだというところを取りまとめるという意味合いで、そこまではいきたいというのが、1点目の回答です。
 2点目は、シラバスの整備についてです。こちらも過去の予算事業等で整備してきたという実績がありますので、今後そのようなことをどうするかということについて、予算側の検討をする必要はあるのかというところまでは申し上げられるかと思います。
○楠岡部会長 シラバスに関しては、国立大学病院の臨床研究のグループで作られたものとか、あるいは、関東のそういう病院の研究班みたいな所で作られたものとか、今、いろいろ出来てきていると思うので、そこは、また事務局で1度整理していただいて。別にこれといってオーソライズするわけではないのですが、どういうものがあるのかというリストがあれば、実施する側も、実施施設が行う研修に一番適したものを選んでやっていただける。
 もう一点は、法律など状況がどんどん変わっていきますので、内容も変えていかなければならないことがありますので、その辺りのことも少し見ながらやっていく必要があるかと思います。研修をやっていただくためには、テキストブック、シラバスのようなものがないと、なかなか進まないところがありますので、これは今後の課題として続けていきたいと思います。また事務局のほうでもお願いしたいと思います。ほかに何かございますか。
○国忠委員 先ほど、国内で臨床研究を進める上で、臨床研究中核病院のレベルの高さというお話をされて、確かに、この5年の間にすごくレベルが上がってきていると思うのです。ここに書かれている要件は、割とミニマム・リクワイアメント的なことなのかと思うのですが、今後、既に5年たった臨床中核病院などの継続性を考えた場合に、更にレベルを上げていく、要件を高めていくようなことはお考えなのでしょうか。
○吉田治験推進室長 継続的な取組の評価というところになるかと思います。実際にこういう評価を行うに当たって、レベルを上げるためには、継続要件として例えばこういうことができなければいけないということがあったときに、今ある要件に対して、更にもう少し上を目指してやっていただくという考え方があるかと思うのです。もしそれができていたのであれば、更に上の要件を目指していただく。こういうことを繰り返していくと、おのずとそれは臨中全体の底上げにつながる、その要件が厳しくなると同時にそれを達成できれば成長しているということになりますので、そういう方向性はありなのだろうと思っています。ただ、具体的にどういう評価の仕方をしていくのかということについては、これから一緒に検討できればと思っております。
○楠岡部会長 要件に関して、今は論文の数や研究の数という数ベースでやっています。従来は、例えば地域ごとに同じようなプロトコールでゴールも同じようなものが3つ、4つ走っていて、結果的に、確かにいい結果は出ているのですが、症例数が少ないので、国際的なジャーナルではなかなか受け付けてもらえないようなものがあり、しかし、それを1つに取りまとめると結構大きな数になるし、当然のことながらいいジャーナルにもアクセプトされる。
 そうすると、今まで4件だったものが1件になってしまうというように、ただ数だけ見てしまうと逆に減ってしまい、質をどう評価するかという非常に難しい問題が出てくるわけです。そこも含めて考えていかないと、ただ数をこなすことだけによって、結果的に一つ一つの研究が矮小化してしまっては本末転倒です。これはスタートして5年たって、徐々にそういうことが見えてきたというか方向性が出てきたところなので、今すぐには難しいと思いますけれども、次の5年にかけては、そういう視点も含めて継続要件や承認要件も考えていく必要があるかと思います。
○平川委員 今の実施要件の見直しの内容についてです。医師主導治験を実施した件数という形で今は出ておりますが、やはり、実施して取り掛かったというだけではなくて、実際に成果に結び付いているものがどの程度あるのか。例えば、薬事の承認、あるいは添付文書の内容に見直しがあったとか、やはりそういった成果の評価まで踏み込んで考える必要があるのではないかと思います。
○佐藤(典)委員 今の平川委員の御意見は、ごもっともだと思っております。難しいですがそういう方向性、どうしても入口の数だけで決まってしまうところがあり、そうはないと思うのですが、とにかく研究をしてしまえばいいとなりがちなので、是非、評価で出来上がったものに関する一定の重み付けも含めて考えていただきたいという意見です。
 もう1つは、我々は拠点としていろいろ御意見を頂いておりますが、その中で、それぞれの拠点の特徴は何ですかと結構言われます。日本全国を通すと同じような、俗に言う金太郎飴みたいな拠点よりは、特徴があってもいいのではないかと思っています。先ほど藤原部会長代理がおっしゃった、橋渡しに引っ張られた評価方法はよろしくないとは思うのですが、やはり大学の立場からすると、どちらかと言うと開発型の研究に少し比重を置いてくる可能性があるということになります。ですから、それぞれの拠点の中で、開発型が強いとか標準治療やガイドラインの臨床研究が強い所があってもいいと思うのです。
 ですから、評価の仕方も両方、かつではなくてオアだったり、あるいは、こちらが得意な所は、こちらは多めだけれども、こちらは少なめでいいとか。何でもかんでも全て同じ拠点のレベルで、開発もしなさい、エビデンスも作りなさい、何もしなさいというのではなくて、日本トータルとして力を発揮できるように、かつにするところとオアにするところを上手にバランスを取ってやっていただけると、日本全体としていい拠点ができてくるのではないかと思っています。ただ、数値を作るだけではなくて、それがアンドなのかオアなのかも含めて、日本全体のためになるような基準づくりがあってもいいかと思います。
○吉田治験推進室長 御意見ありがとうございます。大きく2つポイントがあります。1つは、実際に行った実績、結果が、薬事承認等の成果につながっているかという観点です。もしその観点で考えると、実際にその試験が終わってからそういう成果が出るまでには非常に時間がかかりますので、長期のフォローアップが必要になってきます。ですので、そういう長期のフォローアップを、いかに評価の中に盛り込んでいくかという方法論を議論する必要が出てくるのかと。
 もう1つは、成果を考えたときに、その範囲です。今申し上げた医薬品なり医療機器の承認は非常に分かりやすいのですが、例えば、既存の診療の最適化を考えれば、診療ガイドラインを改善したとか、先ほど、藤原部会長代理から御指摘があったような、現場で運用されている方法についてより良い改善をしたとか、そういう評価をどのように比較するかという話も出てきます。それに関しては、一概に成果の範囲を特定できないのかと。そうすると、それぞれの成果の種類に相応した評価が必要になってきますので、それを考えなければいけないという問題も発生すると思います。
 トータルで言うと、そういうことを総合的に評価できるような仕組みを導入していく必要があるかと考えていますので、その辺りは、今後、先生方も含めて一緒に御相談できればと思っております。
○佐藤(暁)委員 成果ベースを求めるというのは御意見としてはすごくよく分かるのですが、今、事務局が説明されたように、例えば、がんであれば、どこのフェーズを担当するかで、そのまま直接診療ガイドラインの変更につながるとか、承認につながるというのは違うと思います。例えば、フェーズⅡの所でやった結果が企業やほかの所に引き継がれて、フェーズⅢで承認と。でも、成果としてはⅡがなければできなかったということになるので、そこを評価するのは、期間や方法を含めてすごく難しいことではあるのかと思います。趣旨として成果を出すべきだということはよく分かるのですが、評価方法はなかなかいろいろ難しいところがあるのかというのは、臨床研究をやっている側としては、そういう印象を持っています。
○楠岡部会長 ほかに何かございますか。よろしいでしょうか。ただいま、いろいろ出していただいた御意見を踏まえて、事務局で整理をお願いします。また、次回に向けて、具体的な承認要件の案の検討も行っていただきたいと思っております。その際には、何人かの委員にも御参画いただき、意見をもらいながら進めていただきたいと思っております。参加いただく委員として、私と藤原部会長代理、佐藤典宏委員、本日は御欠席ですが新谷委員、まずは、その4人の方を考えているところです。余り人数が多くなってくると部会を開いているのと同じことになってしまいますので、まず、そのサブグループで事務局と一緒にたたき台を考え、それをまた部会に提示するような形でやっていきたいと考えておりますが、そのような形でよろしいでしょうか。佐藤委員、よろしくお願いいたします。新谷委員には、事務局からお願いしたいと思います。進めている中で、何か個別のことで問題が出た場合は、その領域に特に詳しい委員の御意見も求めたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 では、この体制に関しては以上とさせていただき、議題3は、臨床研究法附則第2条への対応についてです。これに関しては、参考人として、田代先生、磯部先生においでいただいております。どうぞ御着席ください。田代先生、磯部先生、どうぞよろしくお願いいたします。それでは、まず、事務局より資料2の説明をお願いします。
○吉田治験推進室長 それでは説明いたします。プライベートファイルの上から6番目、06資料2-1「臨床研究法附則第2条への対応について」というファイルを開けてください。臨床研究法については、実は宿題がありました。先端的な科学技術を用いる医療行為、その他必ずしも十分な科学的知見が得られていない医療行為について、施行後2年以内に検討を行って必要な対応を講じるということになっています。これについての検討の進め方ですが、まず先端的技術等の医療行為に対する法制上の措置等の検討を行うに当たりまして、事例として従前に附帯決議で提起されている手術・手技の研究への措置について検討できればと思っています。具体的には、臨床研究法の規制対象である医薬品等の研究との相違点を整理しながら、手術・手技の研究に対する法規制等の措置の要否及びその考え方について議論を行いたいと思います。その材料となるのが、1つは平成30年度厚生労働科学特別研究で行った国内外の規制状況の調査結果です。もう1つは、今日お招きしている倫理的、社会的及び法学的見地に関する有識者からのヒアリングです。これらの検討結果を踏まえまして、その他の先端的技術等の医療行為に係る措置を検討するに当たり、必要な考え方を整理したいと考えています。
 2ページ目です。まず、その材料の1つである厚生労働科学特別研究の結果です。これについては、平成30年度に保健医療科学院の佐藤元先生に研究をお願いしていました。その概要を御紹介します。まず(1)として、手術・手技に係る国内外の規制状況です。国内には、手術・手技に関する研究を直接対象とした法規制は存在しないということです。また、アメリカ、イギリス、ドイツ、フランス、この4か国に対して、調査を行ったところ、手術・手技に関する研究を直接対象とした、これらに特化した法規制は存在しないということでした。また国内に目を向けると、手術・手技の診療における規制として、一部の手術・手技については、医療法における高難度新規医療技術としての手続が求められているところです。
 これらの結果を踏まえまして、報告書の中では次のような考察が行われています。まず手術・手技に関する研究と手術・手技を用いる診療を区分することは、困難ではないかということ。2つ目として、診療として実施される場合であっても、特に医薬品等を用いない場合は、診療と研究の区別については医師の裁量に委ねられる傾向が見られ、診療のうち研究として扱うべきものの選別や基準が、医師の裁量に任されている部分が大きいということです。3つ目として、手術・手技に関する臨床研究の特徴として、技術の性質が多様であるということ、術者の技量や提供体制による個別性が高いということ、医薬品等に比べて、手術・手技に関する技術の伝播性という観点からは限定的であるということなどが挙げられています。4つ目として、手術・手技への法規制は、医療現場における医師の判断への制約が大きくなり、医療現場の萎縮につながるのではないかという懸念が示されています。
 この報告書の内容を踏まえまして、事務局では、手術・手技を含めた医療技術に係る研究と医薬品等の研究との相違点として、次の点が考えられるのではないかと整理しました。1つは、多様性ということです。技術の性質が簡便な手術・手技から複雑な手術まで幅広く想定されるので、医薬品等と比べると製品化に適していないことが多いのではないか。2つ目として、個別性ということです。術者の技量や提供体制によっても、有効性やリスクのばらつきに幅があるため、一概に判断できないのではないかということ。3つ目として、伝播性ということです。医薬品と比較して製品化に適していないことが多く、当該技術が画一的に広まりにくいのではないかということです。
 3ページです。もう1つの材料は、今日お招きしています有識者の先生からのヒアリングです。医師や患者の権利等を考慮した診療と研究への影響に関する倫理的見地及び臨床研究法の立法時の理念を考慮した法学的見地からの問題点について、社会的な課題も含めて検討を行う必要があると考えています。したがいまして、今日お招きしています田代先生、磯部先生からヒアリングを実施したいということで、このような企画をしています。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。それではただいまの説明にありましたように、臨床研究法附則第2条への対応に向けたヒアリングについて、進めていきたいと思います。
 まず資料2-2として、参考人の田代先生から資料のテキストを頂いていますので、御説明を願いたいと思います。
○田代参考人 東北大学の田代と申します。私からは、生命倫理、研究倫理を専門とする立場から、「手術手技の臨床研究に対する規制のあり方について」と題して、意見述べさせていただきます。
 基本的な方向としては、先ほどの厚労科研の研究班の結論と大きく変わるものではありません。お手元の資料2-2、2ページの所に結論を書いています。手術手技の臨床研究を法の対象とすべきか否かということに関してですが、臨床研究法を作るべきかを議論した際に、研究班が作られ、私自身もそこに関わっていたわけですが、その研究班を受けて検討会が開かれました。そこでは、法の対象をどのように設定するかという議論において、被験者に対するリスク、これは主に身体的なリスクを勘案し、もう1つは、研究結果が社会に及ぼすリスクという点で、「社会的リスク」を勘案して対象を決めるということになり、現在に至っているわけです。これを考えると、手術手技の臨床研究というものを対象とすることは、妥当ではないと考えています。
 その理由ですが、被験者に対するリスクについては、手術手技の場合、先ほど事務局からの説明にもありましたが、新しい技術が研究ではなく診療の一環として導入されることも多く、研究のみを規制しても、そもそもリスク低減効果というのは小さいことが挙げられます。その一方で、実際には臨床研究法とほぼ同時期に、世界的にも珍しい、新しいタイプの規制だと思いますが、診療の一環として導入される手術手技に関して、一定の手当てが導入されており、既にリスク低減が図られているわけです。これを併せて考えると、全体として是非とも手術手技の臨床研究を規制しなければいけないという理由はあまりないと思います。
 次に、これはよりはっきりと言えますが、医薬品等とは異なり、つまり、モノではありませんので、企業の関与がほぼ想定しにくいわけです。通常、企業が関わっている手術手技の研究というと、それは医療機器の研究になりますので、純粋な手術手技の研究だけで、企業が関与することは想定しにくい。かつ技術の普及も人員や設備に左右されますので、相対的に社会的リスクが低いということもあります。この観点からも、対象とすることは難しいと思います。
 その理由について詳細をもう少し述べさせていただきます。3ページはこの部会の第1回目でも示された、「臨床研究に係る制度の在り方に関する検討会」の報告書の概要です。法規制の範囲、青で囲った所ですが、先ほど述べましたように、臨床研究に参加する被験者に対するリスクと、研究結果が医療現場の治療方針に与える影響の度合い等の社会的リスクの双方を勘案して、現行の範囲としているわけです。ですので、この方針を変えないかぎり、手術手技を法の対象に入れるというのは難しいと考えています。
 4ページ目、被験者リスクです。臨床研究法では当然ながら、一定以上の身体的リスクのある臨床研究を念頭に置いていて、現状では、未承認・適応外の医薬品・医療機器がこれに該当するとされているわけです。ただし、これは自由診療で行われているようなものも含め、医療の一環として実施される未承認・適応外使用を縛っているものではありません。「被験者リスク」というものは何なのかということを考えると、これは患者さんが負う身体的リスク全てのことを言っているわけではなく、研究に参加する患者さんが特異的に負うリスクなわけです。それは何かと言うと、そもそも本人のためではない、研究目的の処置のためにリスクや負担を被るということで、それを最小化するために研究の規制は作られているわけです。
 ですので、5ページ目にありますように、ありとあらゆる「危ない医療」を臨床研究の規制の中に入れ込むということはできません。臨床研究を規制する制度でカバーし難いのは、医師が目の前の患者本人のためであると主張し、患者さん家族も納得している場合、その場合には、「診療」扱いになるわけです。研究として実施しなさいということを、医師に強制するということは、そもそもできませんし、一定程度医師の裁量が認められているわけです。手術手技の場合、新規性の高いものも必ずしも研究として実施されないということは、それが妥当かどうかということを含めて、国際的にも様々に議論されてきました。過去の米国で実施された調査でも、当時、革新的な医療技術について論文化した外科医のうち、それを「研究」だと認識していた人は6割程度であって、手技を臨床に導入する前に倫理審査を受けたのはその半数以下だという報告があります。
 これはどういうことかを考えますと、国内でもあることですが、手術手技の修正や改変を臨床の中で繰り返した後に、それをレトロスペクティブな観察研究として、倫理審査委員会にもそう申請し、後向きの観察研究として公表されていくということがあるわけです。そういう意味で、手術手技は観察研究と介入研究の区別というのが、なかなか明確に付けにくい領域の1つではないかとは思います。6ページ目は参考です。
 7ページ、ではどうして米国でこういった手術手技の、仮に新しいことをやったとしても、それが必ずしも研究規制を受けないのかということを説明します。1つは、そもそも研究に関する法規制としては、薬事に関するものと被験者保護に関するものがあるわけです。薬事規制は、そもそもモノの安全性・有効性に関係しない研究には及びませんので、新しい手術手技をカバーしていません。被験者法規制も、事前の研究目的がはっきりしていないものには及ばないわけです。つまり、他人のためのリスクの引受けが研究目的ということですから、そうではなく、あくまでもこの人のためにやっていることですと、個別性を重んじてこの人のためにやっている医療ですよという話には、被験者保護規制は及ばないわけです。ですので、研究計画書に基づいて治療法が割付けされるとか、治療にとって必要のない検査が実施されるというようなことがない限りは、規制対象にはならないということになります。
 8ページ目は参考ですが、もちろん被験者保護規制と薬事規制以外にも、社会的価値による規制が存在しています。これは、ここにも書いていますが、種としてのヒトに関わるような、主に出生を介するようなものです。これはかなり別問題として考えたほうがいと思います。
 9ページ目、以上のようなことから、全てを研究規制でカバーするのは難しいわけですが、では診療としてやられるものをどうするのかという問題が残ります。ただ、これについては、日本は既に手当てをしてきました。2016年の医療法施行規則改正によって、「高難度新規医療技術等」という制度が導入され、既に一定の手当てが行われているわけです。これは、正に臨床研究法を作る話をしていたときに、並行して腹腔鏡手術死亡事故などが起きて、やはり新しい医療行為を診療として実施する場合にも、一定程度の手当てが必要ではないかという議論が起こったことによって作られました。具体的には、「高難度新規医療技術」又は「未承認新規医薬品等」に該当する場合は、院内での事前審査が必須になるという仕組みです。このうち前者が手術手技の規制に該当するわけで、具体的な中身としては、当該病院で初めて実施するリスクの高い手術手技が対象になります。10、11ページは定義ですので飛ばします。
 12ページ目、2点目の社会的リスクに話を移したいと思います。社会的リスクですが、これは研究結果が診療現場に与える影響ということを念頭に置いて議論されていましたが、当初「ディオバン事件」等々にありましたように、不適切な企業の関与を念頭に置いているわけですので、現状では、企業資金により当該企業の製品を評価する臨床研究が、臨床研究法の対象となっています。純粋な手術手技の場合、医薬品等と異なり、こうしたケースが想定できないということと、もう1つは、研究結果が臨床現場に与えるインパクトという点でも、医薬品等とは違いがあると考えられます。医薬品等とは異なり、術者の経験や能力、医療機関の設備等を無視して、論文の結果のみによって新しい医療技術が直ちに普及するということが想定しにくいというのが、その特徴かと思います。
 13ページ目に、手術手技の発展の仕方が医薬品と違うといったことについての、参考的なものを載せてあります。14ページ目は、結論ですので、もう一度同じことを書いていますが、やはり臨床研究法の立法根拠となっていた被験者リスクへの懸念、社会的リスクへの懸念ということから考えると、手術手技の臨床研究を法規制の対象とするのは、妥当ではないのではないかと考えます。
 残された課題として、2点挙げさせていただいています。15ページ目ですが、まず懸念されるのは、手術手技の臨床研究を法の対象外とすることにより、臨床研究法の運用の仕方がかなり効率化されていき、一回審査や全施設で同一の説明文書といった方法が手術手技の臨床試験、多施設共同臨床試験では使えなくなるという不利益というものも、将来的にはあり得ると思います。しかし、どちらかと言うとこれは研究倫理指針を改正していただいて、一回審査や同一説明文書の使用を指針でも原則化することで、対応可能なのではないかと考えています。
 16ページ目です。もう1つは、結局のところ、こういった新しい技術を患者さんに用いるというときには、診療目的で行う場合と研究目的で行う場合があり、臨床研究法はやはり後者のことしか見れませんので、研究の外で目の前の患者のために未確立の医療を提供するということを、国としてどう規制していくのかというグランドデザインを考える必要があると考えています。これまで、それぞれの領域でいろいろな手当てがされてきた経緯がありますので、現状では少しデコボコがあるように思います。「高難度新規医療技術等」には手術手技以外に未承認医薬品や医療機器の使用が含まれていますが、特定機能病院のみが義務になっています。また、未確立の細胞治療や遺伝子導入細胞を含む細胞治療に関しては、診療の一環であっても再生医療法によって規制対象になっているのですが、In vivo遺伝子治療を診療として行う場合には、特に規制されていない、といったこともあります。
 17ページ目に少し粗い表を作りましたが、全体像がかなり分かりにくくなっているのは事実です。こういった研究の外で目の前の患者のために新しい医療技術を使うということについて、どうすべきかということについては、もう少し分かりやすいグランドデザインが必要かなと思っています。私からは以上です。
○楠岡部会長 どうもありがとうございました。御質問、御意見については、後ほどの御議論でまとめて受けたいと思いますので、続きまして磯部先生の御発表に移りたいと思います。資料2-3として磯部先生から資料提出を頂いていますので、御説明をお願いいたします。
○磯部参考人 慶應義塾大学の磯部と申します。このような機会を与えていただき恐れ入ります。
 私の資料は資料2-3です。すみません、こんなお聞きぐるしい声で、私の体調や能力の関係で、田代先生みたいに分かりやすく説明できないと思います。資料2-3の後半に田代先生の論文の抜粋が付いています。これは本来、田代先生の資料に付くべきものでしたので、私の話を聞くふりをして、是非そちらを読んでいただければと思います。
 私の資料は資料2-3、全部で12ページにわたります。今回、附則2条についてどう考えるかということで、法学の見地から話せということを頂きました。既に資料2-1でも説明があったように、附則2条が先端的な科学技術を用いる医療行為その他の必ずしも十分な科学的知見が得られていない医療行為についてと載せた、この経緯は言うまでもなく、群馬大学の件があったということになります。そういう意味では、臨床研究法がディオバン等を受けて作られていた、たまたま出来上がるそのとき、2014年に明るみに出たあの事件で、こういう附則が出たということなのだろうと。果たして手術手技について、この2年で必ず臨床研究法の枠内で対応しなくてはいけないのだろうかということ自体が、少し悩ましい問題かなと思った次第です。
 資料の10ページ以下に小さい字で恐縮ですが、当時の国会の議論ということを少し参照として載せてあります。手術手技については、個別性が非常に高いこと、医薬品のような大量生産といった社会的リスクが小さいこと、諸外国でも規制していないといったことから、今回は対象にしない、しかし今後、通常治療として実施されている科学的根拠の確立していない医療とのバランスも含めて検討する。こういったことが繰り返し言われていたということが確認できるかと思います。
 12ページ目は、そのような科学的根拠が明らかでない医療行為ということで、自由診療一般についても、そういうものもあるのだということから、これについて全部考えていきたいということが示唆されているということです。果たして臨床研究部会で、自由診療のあり方そのもののようなことまで、本気で考えているのでしょうかということが、よく分からないので、そういう意味ではそもそもの原則、原点に立ち返って、臨床研究法がどのような経緯でできて、何を目的に何を対象にどのような規制を及ぼしたのか、その中に果たして、手術手技といったことが含み得るのかというロジックで考えていくべきだろうというのが、私の基本的な考え方です。
 そういったこと、内容も含めて、田代先生の内容とそれほど変わることを言うことはないだろうと思いますが、改めて資料2ページを御覧いただければと思います。田代先生の資料では、手術手技の研究についてと既に書かれていて、臨床研究法の話ですから研究ということさえやればいいのかもしれませんが、附則2条自体は別に研究に限った書きぶりにはなっていない、自由診療のことも議論に出ていたということです。果たして、では診療なのか研究なのかと、それぞれについて、これまでの我が国がどのような規制の枠組みを設けていたのか、この従来の法規制のあり方、趣旨といったことに配慮する必要があるということが、申し上げたい1つ目です。そこでは、法令とガイドラインを使い分けてきたといったことをいろいろ書いていますが、2つ目、3つ目のポツでお話します。研究行為については、学問研究の自由ということを尊重することから、法律で国が研究の内容審査を行うといったことは、本来は原則、許されない考えではないかと思います。もう1つ、診療についてであれば、これは医師の裁量で行うということを尊重してきたということは、最後の政府参考人のコメントにも出ていましたが、患者の治療を目的として高度な専門性に基づき医師の裁量で対応することが基本になるかと思います。
 先ほど、田代先生の資料の10何枚目かで、ボコボコがあるという分かりやすい表がありましたが、手術手技について、これを医療行為として行う場合には、医療法の話もありましたが、まずもってやはり医師法の話なのだろうと思います。まずもって医師免許を持っている者が、診療行為としてこれを行う場合には、医師、患者関係こそを基本として法的には考えていくというのが大前提だったのではないかと思います。医事法の中では、インフォームドコンセントや説明義務といったことも重視されてきたわけです。やはり医療の内容というのは、あくまで医師と患者の対話を通じて決定されるものであって、個別的な医師、患者関係の中で決定された判断を尊重し、他者の介入は控えるべきだというのが、ここで言う裁量という意味ですので、何か一部の人に専権的な判断を認めようという趣旨では全くないということである。それはやはり堅持するべきではないかと考えます。
 改めて診療、研究をそれぞれどうやってきたかといったことは、後ろのほうに少し書いてありますが、6ページ目がそもそもの規制枠組みです。診療については基本的に事前の法規制というのはないと。医師法や医療法による行為や場所、あるいは薬機法による物など、そういったものについての規制はありますが、医療行為の内容それ自体について事前に何か規制するということは、本来しないという立場を取っています。一方、研究については、これは事前にプロトコールを審査する、インフォームドコンセントといったことが要求されるということになりますが、7ページ目で医療行為については、基本的には医師の裁量を尊重するというやり方であるということ。
 8ページ目ですが、医学研究については事前のプロトコール、審査するといった仕組みが必要だということになりますが、しかし我が国ではこれを法令で規制するということは、原則的にはない、主に倫理指針によってきたのだと。それにはそれなりの先人の知恵というのがあり、それは今後も重視されるべきではないかと考えます。学問の自由の尊重というのは、重要だろうと。もちろん近時、臨床研究法等の法化の流れがあって、研究について一定の法律化ということはあり得るかと思いますが、少なくとも従前はこう考えてきたのだと思います。
 3ページ目に戻っていただきたいと思います。研究という面においては、学問の自由を重視しながら慎重な法規制を検討する、診療については、医師の裁量を重視しながら考えていくという大きな前提の上で、改めて臨床研究法についてです。これについては、立法時の経緯等を踏まえれば、適応外・未承認の研究や製薬企業から資金提供のある研究については、身体的リスクや社会的リスクといったことから、これを法規制するということになったということです。このこと自体が果たして妥当なのか、定義はそれで妥当なのかということも含めて、まだ様々な議論があるところだろうと思います。しかし少なくとも、現行の臨床研究法を前提にした上で、手術手技が同じような意味において、身体的リスク、社会的リスクといったことから、法規制を及ぼすべきものであるのかと言えば、それは必ずしもそうではないのではないかというのが、以下に書いてある話です。リスクにも様々あると、医薬品と比べて特定企業からの経済的要因が生じにくい、特定の者に何らかの開発利益が所属するといったことは観念しにくいといったことから、臨床研究法の規制の趣旨・枠組みに必ずしもなじまないのではないかと考えます。
 第2のポイントとしては、おおよそ法規制を及ぼすときには、法規制の対象とは何ぞやといったことの定義を明確にしなければならないということになろうかと思います。その点、臨床研究法は、医薬品等をヒトに対して用いることうんぬんということです。医薬品等を用いる、医薬品等とは何かと言えば、薬機法上にも定義があるということで、ある程度、客観的に定めることができますが、手術手技については、そのような定義付けが可能かといえば、必ずしも容易ではないのでないかと思えたということになります。その点では、臨床研究法の規制対象に1つ、手術手技を付け加えれば済むという話では全くないだろうと考え、少なくとも現行の高難度新規医療技術について、診療上のものをそちらに引き取っていただき、研究については倫理指針でといったことなど、その他の方策といったことも考えるべきなのではないか、少なくとも第一印象としてはそのように考えています。
 4ページ目ですが、これもそういう意味では附則がうんと話を広げた、必ずしも十分な科学的知見が得られていない医療行為についてというもの全般、一般について、何か申し上げるべきことがあるかということになります。これについても、先ほど田代先生がボコボコがあると言った残された課題丸2で、御指摘になっていたとおりだろうと思いますが、様々なタイプのものがあると思います。その中で手術手技だけを取り上げる合理性があるかといえば、それは厳しく問われなければならないだろうし、仮に手術手技を含めて十分な科学的知見が得られない医療行為について規制するとすれば、それはそもそもそういうことをどこまで行ってよいのか。リスクにはあるなし、その程度にはばらつきがあるだろうといったこと、さらにはその伝播性の程度といったことにもばらつきがあるということになるかと思われますので、これをここで対象として議論するのは、大変なのではないかなと強く感じたということです。
 再生医療については、確かに1つ、そういう意味では立法で規制をしたということが、最近の例としてあるわけですが、これについてはレジュメ6ページに少し挙げています。研究行為と医療行為を基本的に同一の規律の下で規制したという点で、これまでの規制立法では見られない手法を採用しているということが言えるだろうと思います。そのことをもって、この枠組みには重大な問題があるとして批判も強いということは、指摘せざるを得ないかと思います。医療ということについてであれば、医療の個別性といったことを先ほど申し上げましたが、そうした個別性を一切考慮しないまま、画一的に医療行為の適否を判断するということ自体、この枠組みは不適切ではないかという批判。研究行為としての規制という意味においては、とにかく第一種については特にそうですが、審査基準が必ずしも明確ではない中、国がその内容について審査するという点で、学問の自由との抵触関係といったことが出てくるのではないか。そういった点で、再生医療法というのは少なくとも、ここは慎重にもっと検討するべきかもしれませんが、1つの例として参照するべきではないと私は考えています。手短ですが、以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。それでは、田代先生、磯部先生の御発表、先ほどの事務局の説明を含めて、御質問、御意見がありましたらお願いしたいと思います。
 田代先生、磯部先生にお伺いしたいのですが、この附則第2条に書かれている内容に関してということで、新たな手術手技について、いわゆるフィージビリティを見る、あるいは安全性を見るというような、薬などで言うとⅠ相試験や、あるいはⅡ相の早期に当たるようなところというのは、臨床研究法の対象に含める必要はない。明らかに確立している2つの手術手技のAとBを、特定の疾患の患者さんで、どちらが治癒率が高いかを確認しようという場合は、これは当然、研究という形になるわけですが、それは現状においては指針の中で行っていけばいいと、そういう解釈でよろしいでしょうか。
○田代参考人 研究として行う場合には、もちろん指針の中でやっていただくということでよいのではないかと思っています。今、楠岡先生に言われて1つ思い出したのですが、臨床研究法の中でも、医薬品や医療機器に関しても全てを特定臨床研究とはしておらず、リスクが高いものということになっているわけです。医薬品の場合は、その線引きがいいかということもありますが、一応、未承認や適応外といったクライテリアがはっきりしていますが、手術手技でそれを求めるというのは、相当難しいところがあると思います。そういう意味でも、手術手技の中で特定のものだけを切り出して、この法律の中で規制するという作業は、かなり無理があるのではないかなと思います。
 考え方としても、今、楠岡先生がおっしゃったやり方で、大きな問題は起きないのではないかと。とりわけ初期の段階で少し危ないことをするとなると、幸い今、高難度医療技術の制度が手当てしているので、診療として行われる場合には、そこが歯止めになる設定になっているわけです。ですので、これ以上のことを対応する必然性がちょっと見えにくいというのが現状かと思います。
○楠岡部会長 ありがとうございます。
○佐藤(典)委員 私も楠岡先生がおっしゃったような、明らかに臨床試験の形を取るときにどうするのですかということをお聞きしたかったのですが、答えは想定のとおりと言いますか、そのとおりなのですが。手術手技が法律になじまないというのが、何となく理解できるのと、法ができた趣旨に合わないから。ただ法ができた趣旨というのが、いわゆるディオバンの事件など、いろいろなことがあって、その反省で法律ができるということで、それはいいことですが、臨床研究全般として考えたときに、反省に基づいてつくる法律はいいけれども、臨床研究全体の整合性をどうするのだろうという問題も、やはり考えたほうがいいと思うのです。田代先生の表で示していただいたデコボコです。
 研究するほうからすると、明らかに臨床研究を臨床試験としてやるのに法律があり、また法律の中にも特定臨床研究と努力義務があり、指針があり、何がありということ。本来であれば被験者保護とデータのクオリティの信頼性の保証という2本の柱で、あとはそれぞれの研究者がリスクに応じてどういった対応をするかということを決めるのが、グローバルスタンダードだと思うのです。それが日本では、全然できていなくて、モグラたたきのように規制ができている形になっています。今回、2年の中でどうしようということではないですが、将来的にいろいろなデコボコの規制ではなくて、1つ筋が通ったような規制があって、その中で研究者あるいは倫理審査委員会が、リスクに応じてきちんとした評価を下す、プランを立てる、そういう方向性というのはあってしかるべきなのではないかなと思うのです。そういうことも含めて田代先生の御見解を頂ければと思います。
○田代参考人 ありがとうございます。私自身もそのように考えています。やはり、最後の所で、未確立の医療行為をどうするのかということについて、グランドデザインが見えないのではないか、ということをお話したのですが、それ以前に、そもそも全体がどういう規制になっているのかを正確に理解するのが難しいくらい制度が複雑になっています。私の作った表も、いろいろと理解が甘いところがあり、細かく注釈を書いていくと、どんどん複雑になってしまいます。今日最初に少し、この部会でも議論されていましたが、本来であれば、しっかりと法律で規制しなくてはいけないタイプの臨床試験というものと、指針下で自主性に委ねながらやってもらうような広い意味での臨床研究と、あとは医療行為としてやる場合の、せいぜい3つのルールぐらいがあって、それを使い分けるということで、いいと思います。日本の場合は更にそこに加えて治験もあるので、かなり方向性が見えにくいところがあります。
 是非、臨床研究部会でも、臨床研究法のことだけではなく、治験も含めて人を対象とする研究全体の規制のあり方がどうあるべきで、規制されるほうにとっても、どれが分かりやすいルールなのかということを、この後、詰めていっていただければと思います。現状では、佐藤先生が今おっしゃったように、問題に対応して個別のルールができているので、なかなか難しい。もちろん行政機関でもかなり努力をされていて、再生医療法の研究の部分を臨床研究法とハーモナイズさせるなど、今、少しずつ改善はされていると思いますが、やはりこの後、全体として大きく、1つか2つか3つか分かりませんが、大きなルールがあって、研究者にとって医療者にとっても、安心して研究や診療ができるという環境が望ましいとは思います。
○磯部参考人 私からも一言。資料の8ページの所に、昔の唄先生のジュリストの座談会、論文を引用したのですが、佐藤先生がおっしゃった問題意識は、私も共有するものです。どうも日本では、問題が生じるとそこに取りあえず対応するということで、医学研究についてのルール作りということについては、我が国はミレニアム指針の頃から、ヒトゲノムについてというところから始まっていく。問題が生じたときに、まずそこに対応していくということで、そういう意味ではフットワークを軽く、必要なところに対応をしていくという戦略もあるかとは思いますが、ここにあるように、おおよそヒトを対象とする研究は基礎的なルールが定まっていない中、いきなり応用問題から対応していき、そしてボコボコができていくという、このルールの成り立ち自体は余り幸せなことにならないだろうと思います。やはりいつかの時点で、時間を掛けて基礎たるルールといったことを、一般法として定めていき、その上で個別研究領域に特有な事象については、特則的な定めを置くという姿を展望していくというのが、本来望ましいのではないかと考えています。
○楠岡部会長 ほかに御意見はありますか。今回、診療と研究、技術に関してなかなか区分けが難しいところがあるということがはっきりしたのと、それから新規医療技術あるいは未承認薬に関して、医療法の中で義務付けられているのはまだ特定機能病院だけですが、そういうシステムが今はある。かつては適応外、あるいは少し新しい技術をコンパショネートユース的にやろうとして、病院の上層部に相談すると、それは研究でやってくださいと無理やり何か研究に仕立て上げて、倫理審査委員会で審査することでオーソライズしようという傾向があったわけですが、今、御指摘いただいたような点を踏まえて、そういうところはすごく改善されていって、本当に研究として必要なところと、それ以外のところをどういった枠組みでやればいいかということが、明示されてきていると思います。そういう点では、かなり進んでいるように私自身は考えていますが、そういう方向でこれからも進めていくことでいいという先生方の御意見ということで、理解してよろしいでしょうか。
○田代参考人 そのとおりだと思います。ただ、やはり少し課題はあると思っています。研究と診療の区別についても、日本の中で米国のようなはっきりとした定義を置いていないので、その線引きが良く問題になります。今でも、読み取れることは読み取れるのですが、つまりは目的や意図で区別していると思いますが、なかなかそれがはっきり書かれているものがないので、現場でも判断に困るところがあります。そういった線引きのための定義をはっきりさせていくということが必要だと思います。
 もう1つは、診療に関する規制として、今日、高難度新規医療技術等を出したのですが、現実には研究規制とオーバーラップしている部分もあり、そこも混乱を招くところがあるので、やはり全体としてどのように制度設計していくのかということを、再度考えて頂く必要があります。どうしても研究になると別の部署が管轄し、医療の一環となると別の部署が管轄するということがあるように感じますので、全体として、こういった未確立な医療技術を研究としてやる場合にも、診療としてやる場合にも、患者さんに大きな不利益がなく、かつ医療者、研究者から見ても、すっきりとした整理ができるということを目指して、ブラッシュアップしていただく必要があるかと思います。全体の方向としては、今、楠岡先生がおっしゃったとおりかなと思います。
○楠岡部会長 ありがとうございます。ほかにはありますか。よろしいでしょうか。それでは、ありがとうございました。
 そうしましたら、事務局では本日の意見を整理して、次回まとめて提示していただければと思います。次回、まとめたもので2条に関する部会としての判断を示せば、時間的には十分間に合うということでよろしいわけですね。では、よろしくお願いいたします。田代先生、磯部先生、どうもありがとうございました。
 次に議題4のその他です。事務局で何かありますか。
○吉田治験推進室長 はい、御議論いただくものではありませんが、1点だけ臨床研究法に基づく臨床研究の実施状況について、説明させていただきます。
 プライベートファイルの下から2つ目、11参考資料3、「臨床研究法の施行状況について」というファイルを開けてください。いつもの資料ですが、現時点でjRCTに登録されている臨床研究ということで、1,366件あります。また認定臨床研究審査委員会の数は、94件となっています。以上です。
○楠岡部会長 ありがとうございました。今年の4月には、旧指針で行われていたものの移行は全部終了しているので、4月以降にCRBにかかっているというものは、全て新規の研究だと思います。4月からこの集計までの間で、月平均何件ぐらいずつ新規が登録されている状況でしょうか。
○吉田治験推進室長 事務局のほうで調べてみますと、大体1か月当たり40から50件ぐらいのペースになっています。
○楠岡部会長 臨床研究法が施行されて、それで臨床研究の伸びが鈍るのではないかということは危惧されていたところではありますが、40から50件、新規に毎月増えているということは、委員の方々の感触としてはいかがでしょうか。もう少し先になれば、慣れてきてもう少し出てくると思いますが。
○佐藤(暁)委員 我々の所もそうですが、ものすごく減っている。全国で月当たり40件、県当たり1個みたいな数だと思うので、実感としてもそうですし、今のお話を聞くとやはり減ってはいるのだなと思います。
○佐藤(典)委員 北大で言うと、本当に去年は経過措置に力を注いだのもありますが、もう限りなくゼロに近いような数です。前年度の終わり頃から、少し申請が出てきて、1つ2つという形で承認は出てきているということになっています。でも、年で10幾つぐらいのペースでしょうか。3年くらい前だったらもう40ぐらいはいっていましたので、30か40、それぐらいですよね。ですから、まだまだというところですが、まだまだがどのくらいまでいくかというのは、全然、予測がつかないかなという印象です。
○楠岡部会長 ほかに御意見はありますか。ありがとうございました。それでは、全体を通して何か御意見はありますか。よろしいでしょうか。
 事務局から追加で何かありますか。
○伯野研究開発振興課長 はい、特にございません。長時間にわたり御議論いただきまして、ありがとうございました。また次回の日程等については、調整をさせていただいて、御連絡させていただければと思っています。ありがとうございます。
○楠岡部会長 それでは本日の部会は、これで閉会とさせていただきます。お暑い中、お集まりいただきまして、ありがとうございました。