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2020年12月21日 第4回雇用政策研究会(議事録)

職業安定局雇用政策課

○日時


     
     令和2年12月21日(月) 1000 12:00

 

○場所


東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館
厚生労働省 職業安定局第1会議室(12階)
 

○出席者

委員

樋口座長、荒木委員、大竹委員、神吉委員、黒田委員、佐藤委員、清家委員、鶴委員、堀委員、山本委員

田中職業安定局長、志村大臣官房審議官(職業安定担当)、達谷窟高齢・障害者雇用開発審議官、蒔苗職業安定局総務課長、宮原職業安定局雇用開発企画課長、石垣労働基準局総務課長、田中雇用環境・均等局総務課長、河野人材開発統括官参事官(人材開発総務担当)、高松政策統括官付政策統括室労働経済調査官、溝口職業安定局雇用政策課長、戸田職業安定局雇用政策課長補佐

○議題

 アフターコロナを見据えた雇用政策の方向性について(とりまとめ)
 

○議事

○雇用政策課長補佐 それでは、定刻になりましたので始めさせていただきます。
 ただいまより令和2年度第4回「雇用政策研究会」を開催いたします。
 委員の皆様におかれましては、御多忙の中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。
 本日は、阿部委員、神林委員、黒澤委員、玄田委員、宮本委員が御欠席となっております。
 それでは、早速ですが、議事に入らせていただきます。
 今後の議事進行につきましては、樋口座長にお願い申し上げます。
○樋口座長 皆様、おはようございます。
 本日ですが、これまで3回にわたりまして本研究会で委員の皆様から様々な御議論をいただいてまいりました。その内容につきまして、事務局のほうで報告書として取りまとめ案を作成させてもらいました。まずはその内容の説明を受けたいと思います。
 それでは、資料1について、事務局より説明をお願いいたします。
○雇用政策課長 おはようございます。雇用政策課長の溝口でございます。
 今、資料1の御説明ということです。資料2のほうが報告書の本体でございますが、こちらの内容を説明用に整理いたしましたのが資料1でございますので、これに基づいて御説明させていただきます。
 御覧いただいて、1ページ目に、今回の雇用政策研究会の開催趣旨、検討の経緯等を記載しております。こちらの説明は割愛いたします。
 2ページ目からが報告書の内容でございますけれども、まず冒頭に今後の雇用政策を実施するに当たっての基本的視点を取りまとめておりまして、読み上げますと、「コロナ禍では、感染状況の動向等に敏感に影響を受け、社会経済活動のレベルが敏感に変動し、「短期的に大きな局面変化」が続くことが予測され、雇用・失業情勢への影響を適切に分析・把握した上で、財源・政策資源の効率的な配分といった観点も含め、運用までを含めた機動的かつ効果的な雇用政策を実施していくことが求められる。その際、アフターコロナを見据えて、働き方、暮らし、企業経営を視野に入れ、人材の有効活用、ウェル・ビーイングの向上につながる構造的変化に向かって政策展開が必要である」としております。
 以下、今回の報告書の中身でございますけれども、その下にございますとおり、左側に新たに顕在化した課題、右側にアフターコロナを見据えた政策の具体的な方向性といったことで整理をしております。
 課題につきましては、新たに顕在化した課題というのが2ページ目にございまして、その次のページに対応の加速が求められる課題ということで、大きく2つに整理しております。
 まず、左側の新たに顕在化した課題につきまして、冒頭、新型コロナの長期化の下での女性への影響とミスマッチの拡大等として4点挙げてございます。1つ目は、新型コロナウイルスの感染状況の動向等に影響を受けて、これまでに経験したことのない「短期的な局面変化」が続く中で、休業が長期化する懸念があり、労働者のモチベーションや生産性の低下等が課題である。
 2点目が、「宿泊業、飲食サービス業」「小売業」などでは、パート・アルバイトとして就労する女性の非正規雇用労働者が多いといった産業特性がありまして、女性の非正規雇用労働者に強い影響が生じている。また、女性が不本意に非労働力人口化した状態も続いているといったこと。
 3点目が、新型コロナウイルスは、幅広い業種に影響を及ぼしているといったことで、リーマン・ショック後に雇用の受け皿となっていた対人サービス業種等においても厳しい状況にある中で、ミスマッチも拡大をしており、労働移動にも一定の求職期間が生じる懸念がある。
 4点目が、新型コロナウイルスの影響は地域によって異なっており、地域ごとの課題に応じた対応が求められるとございます。
右側の政策の具体的な方向性でございますけれども、新型コロナウイルス感染症禍における労働市場のセーフティネット機能の強化といたしまして、1点目は、雇用調整助成金等による雇用維持の取組への支援と、勤め先企業が休業中でもウェル・ビーイングと生産性の向上を図るために、雇用調整助成金の教育訓練のコースによる支援に加えて、出向元及び出向先双方の企業に新たな助成制度を創設するとともに、産業雇用安定センターによるマッチング体制を強化するということ。
 2点目が、マザーズハローワーク等における子育て中の女性等を対象とした担当者制による職業相談・職業紹介等の支援に加えて、子育て中の女性等が仕事と家庭の両立を図りやすいテレワークが可能な求人といったように、女性求職者の様々なニーズを踏まえた求人開拓を行う等、早期再就職を支援することで、不本意な非労働力人口化を防止する。
 3点目が、一定の求職期間を経たとしても、職業情報提供サイト「日本版O-NET」等を活用しつつ、キャリアコンサルティング、充実した離職者訓練、求人開拓と合わせたきめ細かな再就職支援等を経ることで、ウェル・ビーイングと生産性の向上を実現できる新たな職に転職できる「失望なき労働移動」を目指していくといったこと。
 4点目が、事業転換やキャリアチェンジ等を促進する都道府県の取組への支援に加えまして、地方での就職を希望される方々に対しまして、ニーズに応じた再就職支援を実施するということを挙げております。 
 また左側に戻りまして、課題として、就職(内定)率の低下と就職氷河期世代への影響を挙げております。この中で2つ挙げておりまして、2021年3月大学等卒業予定者の就職(内定)率は過去2番目に大きな低下幅であった。企業の採用活動が後ろ倒しの影響等も想定されますけれども、引き続き注視が必要である。就職活動についてもオンライン化が進んでいるということ。
 2点目が、就職氷河期世代の方々の課題でございましたので、本人や御家族だけの問題ではなく、社会全体で受け止めるべき重要なものであるということを挙げております。
 右側になりまして、新たな就職氷河期世代を生むことなく、就職氷河期世代には継続的な支援を実施していくという中で2つ挙げておりまして、1点目が、新卒応援ハローワークの積極的な利用を周知する。個別の状況に応じたきめ細やかな支援を実施するほかに、大学のキャリアセンター等と連携した対策を講じてく等、新たな就職氷河期世代を生まないといった観点から、取組を進めることが重要である。
 2点目が、就職氷河期世代の方々がより厳しい状況になることを防ぐために、引き続き着実に支援を実施することが重要であるということを挙げております。
 左に戻りまして、3つ目の固まりですけれども、財・サービスの変化と業務のデジタル化ということで、非対面・非接触やデジタル化が進む中で、財・サービスの提供方法や業務内容・タスクの面での変化が生じていき、今後、仕事における様々な場面でのデジタル技術の活用が必須であるという課題でございます。
 右側にございますとおり、デジタル技術の活用によってエンパワーされた人材の育成といったことで、アクセスしやすく多様な方法での能力開発の機会の提供、継続的にリスキニングできる仕組みを充実することによって、デジタル技術によりエンパワーされた人材の育成を推進することが重要であるという指摘をしております。
 さらに、本文の中で、コロナ禍での副業・兼業ですとかフリーランスといった働き方の変化についても留意するような指摘をしているところでございます。
 3ページ目は対応の加速が求められる課題ということで、1点目が、左側でございますけれども、新型コロナによる求職活動や企業ニーズの変化と対応ということで、感染拡大防止の観点から、本来、求職活動を望んでいるが、不本意に控えている可能性があるということ。
 2点目が、求職活動にも非対面・非接触が求められる中で、デジタル技術を活用すれば、求職・求人双方へのサービス向上の可能性がある。
 3点目が、足下では、労働需要が減退しておりますけれども、長期的には引き続き人手不足感がある中で、テレワーク等の働き方の多様化やデジタル化の進展などを踏まえて、企業では人材確保・育成や生産性の向上が課題である。
 4点目が、喫緊の資金需要が生じる事業主への支給の迅速化と、その活用状況に関するデータの保有・蓄積による政策効果等の検証の両立が図られて、機動的な雇用政策の実施が求められるということを指摘しております。
 右側になりまして、雇用政策のデジタル化の推進による機動的・効果的な対応とサービス向上といたしまして4点挙げておりまして、1点目が、ハローワークにおいて求人・求職申込みのオンライン化に加えて、職業相談も試行的なオンラインでの実施などに取り組んでいる。また、雇用調整助成金等は申請のオンライン受付の対応も図っております。
 2点目が、今後、求職者等には、対面型の支援に、オンラインを活用して「つながり」を維持しながら継続的に支援を実施する等、デジタル技術を活用した支援を組み合わせながら、その態様・ニーズに応じたきめ細やかな支援を効果的に実施することが重要である。
 3点目が、企業にはということで、労働市場や働き方の多様化を踏まえた人材確保・育成や雇用管理改善について、提案型の総合的コンサルテーションを提供していくことが求められる。また、労働市場の需給調整機能を高める観点から、民間人材サービスとセーフティネットとしてのハローワーク等の機能との在り方等を検討する必要がある。
 4点目が、雇用関係の助成金のオンライン申請化ですけれども、支給迅速化と適正な支給を図る観点、活用状況・効果の分析と財源・政策資源の効率的な配分による政策の効果最大化を図る観点から、不断の取組として推進することが重要であるといったことを指摘しております。
 左側に戻りまして、2つ目の固まりで、テレワークの急速な拡大とその後の出勤勤務への回帰といったことで3点ございます。1点目が、テレワークは急送に拡大しましたけれども、緊急事態宣言を契機に緊急的な対応としてのテレワークが適用された人・会社では、定着せずに、出勤勤務に戻る動きが見られるということ。
 2点目が、テレワーク等の急速な拡大で、テレワークの実施に際して様々な課題が指摘されているということ。
 3点目が、同一職場・同一時間に働くことを前提としない働き方が広がれば、管理職のマネジメントの在り方も重要になってくる。また、若年層を中心に人事評価やキャリア形成への不安も高まっているといったことを挙げております。
 右側でございますけれども、テレワーク等のデジタル技術を活用した個人の多様な働き方の推進として、1点目が、テレワーク等は、中長期的に多様な働き方を推進していく観点からインフラ・人事制度・仕事能力等に関する環境整備を推進支援し、恒常的に促進・定着を図っていくことが重要であるということ。
 2点目が、厚生労働省で設けられております検討会の議論の結果を踏まえて、「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」の必要な改定に取り組み、周知を徹底することが重要であるということ。
 3点目が、デジタル技術を活用した働き方について、労使双方の立場から、就業時間の考え方の確認であるとか管理職の在り方、人事評価・育成方法等を話し合うことが重要であると指摘しております。
 左に戻っていただきまして、3つ目の大きなくくりですが、コロナによる危機やデジタル化の進展による変化の加速ということが挙げられまして、予見可能性のない危機の発生に対し、事後的に柔軟に対応していかなければならない。さらには事後的な対応力を予め向上させる重要性を再認識するといったことでございます。
 右側になりまして、個人や組織の変化・危機への対応力の向上といたしまして2点ございまして、1点目が、個人の「変化・危機への対応力」を高めることが重要だということで、日頃から多様な価値観に触れることができる学習習慣、アクセスしやすい学習機会が重要であるということ。
 2点目が、目指すキャリアに必要なスキルを可視化し、主体的なリスキニングを促進するために「日本版O-NET」のコンテンツをさらに充実し、労働市場の情報基盤を整備することが重要だということを指摘しております。
 その下、緑色のところで、今後留意すべき動向として4点挙げてございます。
 1点目、左端からですけれども、今後の賃金動向ということで、現下の新型コロナの影響が本格化してから初めての春闘の動向による賃金格差の拡大ですとか、フリーランスも含めた収入損失の懸念など、働き方の多様化も含めたところについて注視していく必要があるということ。
 2点目が、働き方の違いによるウェル・ビーイングの動向ということで、テレワークの拡大等により時間や場所を有効に活用できるような働き方を期待する一方で、エッセンシャルワーカーなどのサービス業での働き方もありまして、働き方の多様化が進展していく中で、その違いによるウェル・ビーイングの変化にも注目する必要があるということ。
 3点目が、地域の雇用・失業情勢の動向ということで、今回の研究会では地域の経済や雇用・失業情勢に関するデータは定量的に整理できませんでしたけれども、コロナの影響は地域により様々である。地域の社会経済活動を支える基盤や雇用の受け皿となっている産業に対する対応や地方移住の動向、地方にいながら都心で働くといった新たな動きにも注目する必要がある。
 4点目が、今後の雇用・失業情勢や賃金等の分析ということで、冒頭に基本的な視点として御指摘しているとおり、今後も短期的な局面変化が続くことが懸念される中で、雇用・失業情勢や賃金等への影響の範囲も内容も変化をしていって、長期的に影響を受けた対象においては深刻さを増すなどの懸念もある。こういったことについて、引き続き注意深く分析・把握することが大切であり、それにより柔軟かつ機動的な政策を目指すこと。また、今回の研究会では、性別、業種別等の属性に着目して、課題の整理にも取り組んできましたけれども、同じ属性内でもばらつきが生じている可能性があり、そういったことにも注意しつつ、政策の効果検証を進めるといったことを指摘しているところでございます。
 4ページ以降は、研究会でお示ししてきました新型コロナウイルスが及ぼしている雇用・失業情勢等への影響の特徴を整理したものの概要をまとめております。
 最後になりますけれども、副題につきましては、「コロナ禍における労働市場のセーフティネット機能の強化とデジタル技術を活用した雇用政策・働き方の推進」としているところでございます。
 説明は以上でございます。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 今回の報告書を取りまとめるに当たりまして、幾つか、基本的にはこれまでの議論を踏襲しているのですが、例えば順番でいきますと、取りまとめの概要につきましては、何が起こっているのかというようなファクトファインディングにつきましては、むしろ後ろの4ページ、5ページ、6ページで取りまとめさせていただきました。本来でありますと、その後に行うべき政策ということが出てくるのだろうと思いますが、今回につきましては、この行うべき政策をむしろ前のほうに出させていただきまして、2ページ目、3ページ目でこれをまとめていることになるかと思います。
 さらに、今回、基本的な視点がやはり重要であるということで、2ページの頭のところに、今後の雇用政策を実施するに当たって基本的視点というようなことが書いてありまして、まずは喫緊の課題、ある意味では緊急避難的な対策という求められるものも重要でありますが、同時に、今後の社会の変革につながっていくような施策を先行していくのだというようなことで、2ページ目の左側、新たに顕在化した課題、そして、3ページの対応の加速が求められる課題という形で、今後の社会につながる対応の加速化というようなことをまとめて、それに対する対策がアフターコロナを見据えた具体的な政策の方向性というようなことでこれを強調させていただいたという、それが右側にあるということになるかと思います。
 ただし、3ページの下のところで、アフターコロナを見据え今後留意すべき動向という形で緑色の囲みがございますが、ここについては今後の動向に留意する。留意するということは、今後も研究会を随時必要性に応じて開催させていただき、そこで検討していく課題という形で、こういうものがありますということを示させていただいたということになります。その報告書と資料2以降の順番が若干前後するところもございますが、そのような形で資料1を中心にまとめさせていただいたということになります。
 以下では、皆様から御意見を伺いたいと思いますが、資料1、資料2、今説明しませんでした資料3、これらにつきまして御意見、御質問がございましたら、「手を挙げる」ボタンを押していただいて、そして御発言いただければと思います。
 もし、御質問、御意見がなければ、今回は取りまとめの回になりますので、委員の皆様からそれぞれ一言ずついただければと思いますが、まず、御意見、御質問はいかがでしょうか。お手をお挙げいただければ、よろしくお願いいたします。
 皆様の御意見は十分反映されていますでしょうか。これをもう少し強調したほうがいいというようなことがあれば、御指摘いただければと思いますが、いかがでしょうか。
 山本委員。
○山本委員 取りまとめをありがとうございます。報告書には様々なことが盛り込まれているので、特にはないのですけれども、資料1で幾つか気になったところがございます。
 まず1つは、2ページ目の中段の右側です。テレワーク等のデジタル技術を活用した個人の多様な働き方の推進というところで、テレワーク等は「恒常的に推進・定着を図っていくことが重要」というふうに強調されています。これはそういう見方もあるとは思うのですけれども、やはりテレワークをできる環境をつくることは大事だと思うのです。つまり、テレワークを選択できるようになることは大事だと思うのですけれども、テレワークが無条件でいいというわけでもないと思うのです。なので、「恒常的に推進・定着を図っていくことが重要」というのはちょっと言い過ぎなのかなと思いまして、必要に応じてできるように、また、多様性に応じてやりたい人はやるとか、向いている仕事はやるとか、あるいは非常事態が起きたらできるようにする。そういった選択可能性ないしはテレワーク可能性を高めていくことが大事というような打ち出し方にしたほうがいいのかと思いました。それが1つです。
 次に、資料1はアフターコロナを見据えたというところに着眼されていて、それは結構だと思うのですけれども、まず、日本で失業率が高くなっていないことに対する一定の評価のようなことが書かれてもいいのかなと。短期的には、そういう意味では感染拡大防止と失業率の上昇防止というのがそれなりに両立できていたということだと思いますし、アメリカなどに比べれば失業率の急激な上昇は防げているというようなところは、政策の効果もかなりあると思いますので、少し強調してもいいのかなと思いました。
 もう一つは、顕在化した課題になるのか、対応の加速が求められる課題なのか、エッセンシャルワーカーの賃金につきまして、報告書では丁寧に書かれているのですが、特に最近は看護師が不足しているにも関わらず、なかなか埋まらないと。恐らく市場メカニズムがあまり働いていないからなのかなと思うのですけれども、そこに対する手当てというか、看護師ないしはエッセンシャルワーカーの需給の調整が進むようなことをしないと、これはアフターコロナではないのですけれども、感染に対する対応が取れないような気がするので、そこも強調したほうがいいのかと思いました。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 今、山本委員から3点ほど御指摘がございましたけれども、皆様、いかがでしょうか。
 清家委員。
○清家委員 私は、この報告書案はもうこれで完璧であると思い、特に意見を言うつもりはなかったのですけれども、今、山本委員がコメントされた1点目については、私は反対の意見です。ここはこのような書きぶりをぜひ残していただきたいと思います。せっかくテレワーク等の可能な職種については普及したのに、今、それをまた安易に元に戻すというような傾向も出てきているのは、中長期的な働き方改革を考えたときにはよろしくないと思いますので、私としては、この「恒常的に促進・定着を図っていくことが重要」というふうに書き入れていただいたことで、この報告書はとてもエッジの効いたものになったと考えており、そこは私はぜひ残していただきたいと思います。
 それ以外はもう全く意見はございません。
○樋口座長 ほかの皆様。
 鶴さん、どうぞ。
○鶴委員 私も、先ほど山本先生が御指摘されたところの関係なのですけれども、これは既に事務局にコメントを申し上げて、大分追加等をしていただいた点なのですが、今回、特に女性が非労働力化しているということが、私はやはり相当問題だなと。つまり、F2F産業、飲食・宿泊といったところにいた人が別の産業になかなか行けないということで、もう諦めてしまっている。職探しを諦めてしまっているわけですから、失業率も上昇しないし、そういう人たちはパートでやっていると、1人当たりの賃金とかも、その人たちが抜ければむしろプラスの方向へなるということで、そういうところだけ見ると、マクロの数字を見ると、ちょっと明るい要素が強調されてしまうので、そこはむしろ逆に深刻なのかなということです。
 ダグラス有沢の法則が日本経済の中でどういうふうになってきたのかと。これは大竹先生もかつて論文をお書きになって、一時弱まったりということがあったと思うのですけれども、多分、リーマンとかそういうときにまた強まって、実際に今回の報告書でも御指摘いただいているのですね。
 むしろ失業率が上がるというか、職探しが積極的にできるということが出てくるほうが評価できるような状況なのかなと。これはもちろんトランジションプロセスということなのですけれども、失業率の評価というところは、私も非常にアンビバレントな心境でございまして、そこをどう評価するのかというのはあると思います。
 それから、テレワークは山本先生と清家先生、御意見がちょっと違うというところだと思うのですけれども、私もお話を聞いていて、両方とも何か重要なことをおっしゃっていただいて、テレワークせずにまた元に戻ってしまうというところが非常に大きな問題だと思います。ただ、コロナという状況がなかったときには、やはりテレワークを選択できる、やりたい人がやれるという状況が確保されるということが非常に重要だと私はいろいろ申し上げてきたのですけれども、テレワークは恒常的にやっていけるようなインフラの部分ですね。その準備とかインフラとか、そういうところを非常にしっかりやるということを強調していただくと、多分、山本先生、清家先生がおっしゃっていることは両方ともつながるのではないかなと、お話を聞いていてそういう印象を持ちました。
 以上です。
○樋口座長 ほかにいかがでしょうか。
 今、議論の点について、清家先生、手を挙げていらっしゃいますか。
○清家委員 私も今の鶴委員の意見に賛成です。私も山本さんの言われた、環境を整備して選択肢を広げるという趣旨には大賛成ですので、書きぶりをあまり弱くしないように、恒常的にできるよう環境を整備するというふうに強調されればよろしいかなと思っておりまして、今の鶴委員の御意見に賛成です。ありがとうございます。
○樋口座長 うまくまとめていただきましたので、そういったことで。
 大竹委員。
○大竹委員 私も清家委員と鶴委員の意見に賛成です。清家委員のご提案のように文言や順番を変えていただくだけで両方の先生の御意見が正確に伝わるかなと思いました。
 テレワークは、やはり選択肢があるだけだと難しいと思います。テレワークができるけれども、みんなやらないという状況があると、普及しません。テレワークすることが普通だという環境にすることが大事なので、そこがうまく伝わるというのがポイントかなと思って聞いていました。
○樋口座長 ありがとうございます。
 今回、アフターコロナを見据えてという形で、足元で何が必要なのか、それが果たして将来の生活、暮らし、働き方にどうつながっていくのか、それをまた支援していくことが重要ではないかという形で、このコロナ、テレワークのところも書かせていただいたと思います。今、4人の先生方からの意見を踏まえまして加筆修正をさせていただきたいと思いますが、その点、御了承いただけますでしょうか。
 佐藤先生、何かございますか。
○佐藤委員 基本的に今のまとめでお願いできればと思うのですけれども、僕は、山本委員が言われたように、確かに選択できるようにというのは賛成なのです。ただ、現状で言うと、そこまで企業は取り組んでいなくて、緊急事態でそういうことも考えずに在宅みたいになってしまって、それは大変なので戻してしまったという企業がすごく多いのです。ですから、やはり環境整備を十分やった上でという状況になっていないというのが僕の判断で、そういう意味では、山本委員のおっしゃるとおりなのですけれども、もう少し環境整備を。
 あと、現状の仕事の仕方だとできないというだけで、実は例えば小売店の店舗でも、主任クラス以上は月に3回在宅をやっていますなどという会社があるのです。つまり、仕事を組み直してやれています。そこまで踏み込んでいるかというと、やっていないのですね。ですから、環境整備と同時に、仕事の中身を見直して、もう少し在宅なりテレワークできるような仕事をやった上で選択できるようにということが大事かなと。今、やはりそういう意味ではまだ過渡期かなという気がするので、樋口座長がまとめていたような形でやっていくのがいいと思います。
○樋口座長 ありがとうございます。
 御指摘のように、在宅イコールテレワークというふうに用語として使うことがあるのだけれども、在宅イコール自宅避難という面が特に緊急宣言下においては大きかったのではないかというような見方もありますので、ここのところは皆さんの御意見を反映させる形で加筆したいと思います。
 もう一点、山本委員から御指摘のあった失業率、43.1%でしたか。上がったとはいえ、それでも海外に比べれば低いではないかというようなことをどう評価するかというところでございますが、先ほどのアフターコロナのところで、今後の雇用情勢に留意しろというようなことを書かせていただいているのですが、ここのところは、今後、どういう動きになるか分からないときには、まさに企業は一生懸命雇用を守ろうとしながらも、企業自身の倒産とか閉鎖というようなことがあるかもしれない。そういったことに対して留意しろということなのですが、御指摘のこれまでの失業率が率としては低いということももう一度御議論していただく。
 例えば、鶴委員がおっしゃったダグラス有沢の法則、女性の就業がどうも非労働力化という形で起こっていたりというのは今回書き込んでおりまして、それに対する緊急対策というのは出ているのですが、それ以外のところでも、例えば高齢者はどうなのだとかいうようなところが十分な議論ができていなかった面もありますし、今後のテーマとして検討していく必要があるのかなということで、今後留意すべきというところで次回以降、御議論いただけたらと思っておりますが、山本委員、どうでしょうか。
○山本委員 今後のことはおっしゃるとおりですし、私が申し上げたのは緊急回避的に雇用調整助成金の拡充とかいろいろなことをして、短期的なセーフティネットは十分に働いていたというところは一旦評価した上で、今後、政策が少なくなっていく中でどう動向が変わっていくかというのは注視しなければいけませんよというのは、アフターコロナを見据えた政策というところで注意点が書かれているのでいいと思うのですけれども、本当に4月、5月、6月辺りのことについて、少し評価してあげてもいいのかなという程度ですので、資料1の作りがアフターコロナに焦点が当たっているので、そういう意味ではなくてもいいのかもしれないなと思ってはいます。
○樋口座長 ありがとうございます。
 実は、これはこことは別なのですが、JILPTで雇用調整速度についてマクロのデータで各国比較をやっておりまして、その中で日本の特徴として、やはりこれまでも言われていた雇用、マンタームでの調整というのは遅いのだけれども、時間が中間かなと。例えばG7の国々で比較したときですね。日本は人員単位での調整は他のどの国よりも遅く、逆にほかのG7の国々に比べて賃金調整、給与調整が速くなってきているというようなこともあります。今の話は2019年まででやっているのですが、今回、2020年の動きを見ると、特にアメリカは、これまでの雇用調整の速度以上の速度でマンタームという調整が行われているということが出てきたりしている。次回以降、御議論いただけたらと。片方で失業というところでは非常に手厚い企業のサポートがなされているのかもしれませんが、一方において賃金、所得のところの議論があって、これは釈迦に説法で皆さん十分に承知の上での御議論だと思いますが、ここをどう考えていったらいいのかというようなことが雇用政策としてもあり得るかなと思っておりますので、ぜひこの点についても次回以降、御議論いただけたらと思います。ありがとうございます。
 ほかにございますか。
よろしければ、こういう形で取りまとめをさせていただきたいと思います。内容等について御指摘、御修正の御意見も今出ましたので、その点については修正させていただきまして、私のほうに今後の修正、皆様にも御相談させていただきますが、御一任いただければと思いますが、よろしいでしょうか。
 (「異議なし」と声あり)
○樋口座長 どうもありがとうございます。では、そのようにさせていただきます。
 それでは、皆様から、今回取りまとめに当たりまして、一言ずつ御意見いただければと思っております。
 清家委員から順番にお願いいたします。
○清家委員 ありがとうございます。今回、皆さんの意見をよく反映していただいて、とてもいい報告書になったと思います。事務局と樋口座長の御尽力を多としたいと思います。
 私としては、先ほども申しましたように、今回当面の課題への対応はもちろん大事なのですけれども、そこで得られた経験を中長期的な働き方改革に生かすということも大切だと思いますので、先ほどちょっと議論させていただいたテレワーク等をしっかりと日本の社会に定着させていくような方向にこの政策も進めて頂けるよう期待しております。ありがとうございます。
○樋口座長 ありがとうございます。
 それでは、佐藤委員。
○佐藤委員 本当に短期間にこれまでの雇用政策、今後の取組で整理していただいて、どうもありがとうございました。
 私も清家委員と同じように、今回大変だったのは事実なのですけれども、ここで得られたプラスの面を次にどう生かしていくか。特に多様な人材が活躍できるように長期的に日本が取り組んでいくにはプラスの面がすごくあったと思いますので、それを広げていくということをぜひやっていただければと思います。
 そういう意味で、どうも在宅勤務やテレワーク環境整備というと、システムとかハードみたいなことになると思うのですけれども、今の仕事の仕方とか業務の在り方を見直すということもすごく大事だと思うので、そうすることによって新しい働き方ができるというところに一歩踏み込むようなほうに持っていただけるといいかなと思います。
 そういう意味で、少し強いメッセージを出していかないと、経営者の方とか部長以上の人は、やはり昔のほうが楽だというのはすごくあるのです。やはり変えていくのが大変なのは事実なのです。ただ、経営トップ等が少し先を見て取り組んでもらうためには、こういう研究会でメッセージを出すのはすごく大事だと思いますので、そういう意味ではすごくありがたかったかなと思います。
 もう一つは役所ですね。こういう研究会の運営も、次回の雇用政策研究会は全部対面になってしまうというのではなく、両方選択できる。大竹さんなども参加しやすくなるわけなので、あるいは海外からも参加しやすい。今回の委員、神林さんも、僕は知らなかったのだけれども、OECDから参加していたという話を聞いたので、そういう意味では海外にいても、海外の研究者の意見を聞いたりとか、我々が出張先からも参加できるというのがありますので、ぜひ、新しい研究会運営ということも、この次以降に生かしていただければと思います。
 どうもありがとうございました。
○樋口座長 ありがとうございました。
 それでは、堀さん、お願いします。
○堀委員 お願いします。
 今回、事務局におかれましては、短期間に包括的にまとめていただきまして、誠にありがとうございました。今回の報告書のメッセージとして、今後の調整に応じて機動的な対応をしていかれるということは大変重要なメッセージだと感じております。今後、状況は全く不透明なのですけれども、大きく政策として広げた風呂敷をどう畳んでいくかという出口戦略もいずれ議論されるのだろうと期待をしております。
 今回はどうもありがとうございました。
○樋口座長 ありがとうございました。
 神吉さん。
○神吉委員 このたび大変勉強になりましたし、いろいろ考えるきっかけになりました。
 この研究会での成果は、データそれ自体が非常に価値のある重要なものです。これを歴史資料としてアーカイブ化して終わらずに、きちんと生かしていくということが非常に重要なのだと思います。その生かし方としては2つあって、次に来る非常時に関して対策を打つための基礎資料、エビデンスとしていくこと。それから、今回、コロナ禍であぶり出されたのは、結局、想像もしていなかったことがおきたというよりは、正規・非正規、企業規模、産業、地域間、それから男女間の格差問題などに根差す脆弱性が顕在化したという面が大きかったと思いますので、非常時を待たずに、平時に、労働市場のいわゆる基礎体力のようなものを向上させていくことの必要性を明らかにしたのではないかと思います。
 ですので、この報告書の取りまとめ方として、双方に目配りする視点が表れていることは非常によかったと思います。
 取りまとめ自体には異存ございませんで、ただ、テレワークできる分野で、テレワークの推進はぜひ進めるべきだと思いつつ、エッセンシャルワークはどれだけデジタル化が進展したとしても、医療や介護などの対人ケアワークなどは必ずニーズが残るところですので、それに対してのセーフティネットの張り方みたいなものをもう少し考えてもよかった気はいたします。
 それから、セーフティネットの張り方に関して、雇調金であるとか、経済振興政策なども含めて、広く張っていくのか、それとも特定産業や特定の属性に関して重点的にやるべきかという問題がありますが、実際に打たれた政策の効果の検証をしてフィードバックする姿勢が非常に重要だと思っています。
 取りまとめでも3ページの最後のところに上がっていますけれども、実際に打たれた雇用政策の評価は今後必須になってくると思います。できればそういった政策を打ち出す時点で、その評価を検証するシステムを組み込んでおくことができないのだろうかと。これはこの研究会の外側の問題なのかもしれないのですが、そういった必要があるのではないかと思っております。
 私からは以上です。どうもありがとうございました。
○樋口座長 ありがとうございました。
 まさにEBPMの重要性ということを指摘されているのですが、それを各政策にどう織り込んでいくか。今回、デジタル化ということが政策にとっても重要だというような話を入れさせていただきましたが、まさにそれの使い方についても今後検討していきたいと思います。
 大竹委員、いかがでしょうか。
○大竹委員 今回の雇用政策研究会は、コロナという緊急事態があったために、従来と随分違った形になったと思います。それに対して報告書も雇用情勢とそれに対する短期的な対応と長期的な対応についてうまくまとめられていて、そして、概要版も政策をどうすべきかというところが非常に分かりやすくうまくまとめられたと思っております。
 コロナの影響については、今回、雇用・失業への影響もきちんとまとめられていましたが、課題として、今も議論がありましたように、刻々と情勢が変わるものに対して、その状況把握をして対応していくということに関して政策的なデータ整理がうまくできていないということがあげられます。これは雇用政策だけではなく、感染症対策もそうですが、それについて報告書にも盛り込ませてもらいましたが、クレジットカードや位置情報、求人情報というようなデジタルのデータを即時に使っていく、新しいデータの手法を使っていかないと、急激に変わっていくときに即時の政策対応ができない。それから、雇用政策への評価もできないということが、今回の経験で分かったということだと思います。
 企業もテレワークを経験して、最新の技術の有効性を広く認識して、一部の企業かもしれませんが、働き方改革に大きく踏み込むことができたと思うのです。それが女性活躍、あるいは仕事と家庭との両立や、高齢者の活躍につながるということが、今までいろいろな政府の報告書で幾ら言っても、実現できないという状況だったものが、実際にその有効性を多くの企業が経験して、一気に広まる形になった。それが今回の報告書でもかなり説得的に書くことができるということにつながったのだと思います。
 ですから、それは民間企業だけではなく、政府も会議の上ではそうなのですけれども、データ活用についても新しいデータの有効性を認識できたということなので、それを積極的に使って、政府自身のデータもよりよくしていただいて、即時に対応できるような仕組みをつくっていく機会にしていただければと思いました。
 もう一点、今までは、今回の分析も、コロナの対策やその影響についてどう雇用政策が対応するかという議論だったのですが、どこかの段階でコロナの政策対応と雇用政策の間のトレードオフが起こってくる可能性があり、実際に今回も起こっていたと思うのです。そして、それをどこかで議論するような仕組みをきちんとつくっていく必要があると、分科会に出ていて痛感しております。
○樋口座長 ありがとうございました。
 それでは、山本先生、お願いします。先ほどエッセンシャルワーカーについての雇用条件について云々という御議論をいただいたのですが、それも次回からのテーマという形で入れさせてきたいと思っておりますので、その点、御了承いただきたいと思います。
 それでは、御意見、感想をいただきたいと思います。
○山本委員 ありがとうございます。
 報告書、それから図表の資料など、とても充実したものが作成されたと思います。事務局の皆様、本当にありがとうございました。
短期と長期がうまく盛り込まれていて、長期的な視点が多めに入っているというところがすばらしいなと感じております。恐らくほとんどの方がこれまで必要だと言われてきた働き方改革を推進するための絶好の機会にこのコロナ・ショックというのをするべきではないかと。実際に一部ではそうなっているというところで、その流れを絶やさないというようなメッセージが出されたのはとても説得力があるし、大事なタイミングかと思います。
 特に個人的には、働き方のデジタル化の推進というところが盛り込まれている。それを進めることで、先ほどテレワークの環境整備というふうにありましたけれども、まさにタスクの、業務の中身そのものが変わっていく。そうするとテレワークもしやすくなりますし、高度なタスクに変わっていって、生産性も上昇していくというような、いい姿が描けるところが見えてきているかなと思いますので、そこが入ったのはとてもいいかなと思っております。
 それ以外は、いい方向に進むと同時に、やはり格差というところ、できる企業、できない企業、あるいはできる労働者とそうでない労働者というところで、先ほども出てきたエッセンシャルワーカーやほかの労働者との違いも出てきますので、そういったようなところも取りこぼさないように注視していくことが大事かなとも感じました。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。
 荒木委員、お願いします。
○荒木委員 ありがとうございます。
 もう既に皆様御指摘のように、今回、緊急対策の問題のみならず、長期的な視点における雇用政策について議論していただいて、大変ありがたいと思いました。
 今回は、雇用政策研究会ですから雇用問題、労働市場問題なのですけれども、社会的により多く被害を受け、要保護性が感じられたのは、フリーランスとか独立自営業者、つまり雇用政策のセーフティネットの及ばないところで、雇用類似の働き方をしている方々でした今回、副題は労働市場のセーフティネット機能の強化ということなのですけれども、セーフティネット機能の強化という場合に、雇用のセーフティネットから漏れる人たちで、雇用類似の働き方をしている人たちのセーフティネットのあり方、これが世界的にも注目されていると思いました。
 そういうことで、今回はフリーランスの方々についてもいろいろと書き込んでいただいたのは大変ありがたかったと思います。このことは雇用政策におけるセーフティネットとそのほかの社会保障を含めた別のセーフティネットとの連携問題が非常に重要となってくるということでもありますので、そういうことも念頭に、この報告書が読まれるとありがたいと思います。
 もう一点は、働き方の多様化にどう対応するか。例えばテレワークのところでは、テレワークについてのガイドラインの必要な改定に取り組み、周知を徹底するということが謳われております。これはもちろんそうなのですけれども、ガイドラインは法制度の枠内での対応であり、ガイドラインで対応できる問題と、法制度自体を見直す必要性がある問題も背後にはあるのだろうと思います。
現状の問題点をいろいろと指摘していただいておりますので、私どもが参加している労政審の労働条件分科会など、労働基準法などの法制度でこの提言をどう受け止めるか、真剣に考えていかなければいけないと思っております。多様な働き方ができるように制度を整えていく中で、セーフティネットに守られた多様化というものをどう考えていくか。そういう点で、今回の御指摘は大変重要なものが多く、ほかの労働政策との連携もさらに図っていくべき提言になっているように思います。どうもありがとうございました。
○樋口座長 ありがとうございました。
 フリーランスも含めまして、ここでは賃金動向というところに入れさせていただいていますが、まさにその点についても議論していく必要があるのだと、十分認識しているかと思います。
 それでは、鶴委員。
○鶴委員 どうもありがとうございました。
 今回は他の委員の先生方も御指摘のように、非常に短い期間で、また、このようなコロナという大きな変化の中で報告書をおまとめになられたということで、特に事務局、それから樋口座長、大変な中でいろいろ御苦労あったかと思います。非常に包括的な報告書ができたということで、その御苦労に対して重ねてお礼を申し上げたいと思います。ありがとうございました。
 先ほどちょっと私もコメントを申し上げたのですけれども、特にリーマンのときとの比較というのも、かなり細かく見ていただいて分析していただいたということは、きちんとファクトファインディングということを積み重ねる意味でも、報告書として非常にいいなと思いました。
 概要は概要であれでいいのですけれども、ぜひ、外部などで厚労省としてもアピールしていくような場合は、何か比較、リーマンとの比較をちょっと分かりやすい表か数字も入れながらつくっていただくと、やっていただいた成果を幅広く、いろいろな政治の方々も含めて、今回の特色を頭に入れていただくのがいいのかなと思いました。
 これは修正ということではないのですけれども、副題がコロナ禍という言葉で始まりますね。コロナ禍という言葉はもう今、人口に膾炙された言葉ですので、これについてということはあれなのですが、私はあまり好きな言葉ではないのです。一言で今の状況を言えるので、政府系の文章とか、割とそういうところで非常にこの言葉が使われるのですけれども、禍いという、確かに戦時中に匹敵するような死者が出たり、耐乏生活を強いられていて、禍いであることは変わりないのですが、先ほど佐藤先生もおっしゃられたように、これでいいほうに持っていこうとか、これまでのさらにやるべきことが、新たなテクノロジーとか働き方改革でも加速されているところがあるわけですね。非常にポジティブな面をこの機会に捉えるということであれば、コロナに対して全て禍いばかりなのかなという、その考え方は、やはり私は絶対変えなければいけないし、これをいい方向に持っていく非常に大きなチャンスという、ポジティブに捉えることを考えなければいけないなというのを痛感しています。
 ただ、1点だけ、山本先生がおっしゃった格差ということがやはり非常に不気味な、これからこの問題がまたどういう形で深刻化していくのかなというのは、コロナの問題として私は非常に大きいことだと思っているのですけれども、それでもやはりポジティブな面ということを我々が考えて、そこで経済社会構造、価値観も含めて変えていくというのは非常に重要ではないかなと思いました。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 それでは、最後になりますが、黒田さん、お待たせしました。
○黒田委員 ありがとうございます。
 まず、事務局の皆さん、ありがとうございました。
 以下、他の委員と重複する部分もありますが、2点簡単にコメントです。今回の不測の事態をきっかけに、なかなか進まなかったテレワークを一時的にせよ多くの人が経験できたということは、多様な働き方を選択できる環境整備を一層進めていく必要があるという考えが日本に浸透するきっかけになったのではないかと感じています。
 ただし、今回の経験で観察された重要なこととして、在宅勤務が一時的にせよ広く普及した後、従来の働き方に戻るという大きく揺り戻しがあったという点があるかと思います。この点は、これまで働き方改革を推進する中で、長時間労働がなぜなかなか是正されないのかという理由がそのまま当てはまるのではないかと思っています。本当は多くの人がそこまで長時間労働したいと思っていないのに、上司や同僚の働き方や同業他社の動向を気にして長時間労働しか選択せざるを得なくなってしまい、結果として誰しもが望まない過当競争の長時間労働均衡に陥ってしまうという状況を我々はずっと経験してきました。今回のコロナ禍における在宅勤務は多くの人が初めて経験してみて、今後も継続したいという声が多かったと理解しています。ところが、やはり対面じゃないと・・・という人が出てくると、自分一人だけ在宅勤務はしにくくなり、結果的にみんなが従来の平常勤務を選択せざるを得ないという、元の均衡に戻ってしまう強い力学のようなものが、特に日本の労働市場には働きやすいのではないかか、具体的には恐らくピア効果が強く働いて多様な選択肢があってもそれを一人一人が自由に選択しづらい労働市場になっているのではないかと、今回のコロナ禍の揺り戻しを観察していて思いました。
 そういう意味では、日本の労働市場がどういう方向に進んでいくのが望ましいのかという強いメッセージを今回の報告書の中には盛り込んでいると思いますので、そうしたメッセージがきっかけとなって新しい均衡に転換していくということを期待したいなと思います。
 もう一点は今後の課題についてです。先ほど荒木先生がおっしゃった労働時間規制の見直しに関しては、同じ分科会に参加させていただく者として私も強く共感するところです。現在、テレワークにおける企業の労働時間管理の仕方は、これまで出社が前提となっていた労働時間規制を基に行われているわけですけれども、果たしてそれが在宅勤務という新しい働き方にうまくフィットするのかという検討はこれから必要になってくると思います。また、現在、医師をはじめとして一般労働者の労働時間の上限規制とは別の扱いになっている方々や、事務局の皆さんのような公務員の方々がやはり法規制の外にいらっしゃって、長時間労働をしている点なども今後考えていく必要があると思いました。また、ギグワーカーと呼ばれる働き方の検討も今後の課題として残されているかと思います。
 以上になります。ありがとうございます。
○樋口座長 ありがとうございました。
 皆様の御意見と私も全く同じですが、今回、特に雇用政策についてのデジタル技術を使って、しっかり受給者らのその後の行動をフォローアップして頂きたいと。そして、その政策の効果を議論しながらそれを実施していくというようなことの重要性が、今までの雇用政策研究会の守備範囲を非常に広くしたのかな、広げたのかなというような気がします。今まで政策はいかにあるべきかというような議論、それぞれの先生方の持っている研究あるいはエビデンスに基づいて御発言いただき、それを取りまとめてきたというようなところがあるのですが、組織として、やはりそういったところについて、例えば雇調金についても、そこについてのどういう人がどういうふうに利用しているのかとかいうようなところですね。そして、その効果がどうなっているかということを随時見ながら検討していくべきだというのは、まさにそうかなと思いますので、その点、守備範囲が少し広がったのかなと思いながら、議論に参加させていただいたというところがございます。
 何か付け加えることはございますでしょうか。よろしいでしょうか。よろしければ、これで取りまとめさせていただいて、一部修正を入れた上で、一任していただきましたので、私のほうで責任を持って取りまとめたいと思っております。
 それでは、委員の皆様には、本年10月から4回にわたって研究会に御参加いただきありがとうございました。
 最後に、田中局長から御挨拶がございますので、お願いいたします。
○職業安定局長 職業安定局長の田中でございます。
 2020年度の雇用政策研究会の報告書の取りまとめに当たりまして、一言、御礼の御挨拶を申し上げます。
 本研究会では、アフターコロナを見据えた雇用政策の方向性について整理をするということで、本年10月から4回にわたって、委員の皆様には大変精力的に、熱心に御議論を行っていただきました。まずは厚く御礼を申し上げたいと存じます。
 新型コロナウイルス感染症につきましては、様々な雇用・失業情勢、あるいはその周りの社会的な動きに対して大きな影響を及ぼしております。その中で、報告書の中でも御指摘いただいたように、「短期的な局面変化」が続く不安定な状況にあり、休業の長期化、あるいはそれによる労働者のモチベーションや、生産性の低下への懸念も出てきております。さらに、非正規雇用労働者や女性への影響、特に不本意な非労働力化といった問題。ミスマッチの拡大や求職意欲を喪失したディスカレッジド・ワーカーの増加。さらにはテレワークの推進に関してはプラスの面とマイナスの面、特にエッセンシャルワーカーへの取組、さらには格差の問題、こういった様々な問題が幅広く、また、それぞれ連鎖して起こってきております。
 こうした中で、本日も御議論を頂きました報告書では、昨年の報告書における我が国の構造的な課題や雇用政策の今後の方向性を踏まえ、コロナの影響により、「新たに顕在化した課題」と「対応の加速が求められる課題」を整理していただきました。
総じて言えば、我が国のこれまでの労働市場や、そのセーフティネットのある意味弱い部分が露呈して見えてきたということではないかと思います。また、そのおかげで、どこにどのように手入れをしていったらいいかということも見えてきたと思います。そこをしっかり政策としてもやっていくということかなと思います。
 そういう観点から、アフターコロナを見据えた政策の方向性として、2つの大きな視点で労働市場のセーフティネット機能の強化、デジタル技術を活用した雇用政策・働き方の推進といった点をお示しいただきました。そのほかにも様々な今後留意すべき点についても幅広く御指摘いただきました。このレポートについては、コロナ感染症の雇用への影響を総合的、包括的に評価して、今後の対応の方向性をお示しいただいた最初のレポートになったのではないかと思いまして、今後の政策を進めていく上で大変重要な意義を持っているものと思います。
 今日も御指摘ありましたように、具体的な政策への反映をしっかりやっていきたいと思いますけれども、恐らく労働政策あるいは労働法制に係る基本的な部分についても十分に考えていかないといけないテーマが多いのではないかと思っておりますので、その点についてもしっかり対応していきたいと思います。
 今後、「短期的な局面変化」が引き続き、続くことになると思います。雇用・失業情勢への影響をしっかり、かつ迅速に分析・把握した上で、その変化に対して必要な施策を柔軟かつ機敏に実施していきたいと思います。先生方には、引き続き、御指導をよろしくお願いしたいと存じます。
 今後の報告書の取扱いにつきましては、本日いただいた御意見を踏まえて、樋口座長と御相談の上で、近日中に研究会報告書として、公表したいと考えております。
 最後になりますけれども、改めまして、今回、精力的に御議論いただいたことに感謝申し上げて、私の挨拶といたします。どうもありがとうございました。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 私は、今回の報告書では、できれば「新しい」雇用政策というのを、新しいという言葉を入れたいなと思っていたのですが、それはいろいろな意味で、やはり新しいところについて取っかかりを求めた報告書かなと思っていました。内容についても、労働政策、従来の雇用に限らずというようなところもございますし、また、そこにおける多様化が進展している中において、それぞれにどう対応していくのかというようなことについても御議論いただき、まとめられたというふうに思います。
 その結果として差が生まれるというようなことも、これはまだ今後の課題という形で残されていることかもしれませんが、そういったところもある。あるいは施策についても、単に立案するだけではなく、立案するプロセスにおいて、やはり今までやっている施策をちゃんとフォローアップしろという、そして、それに基づいて評価をした上でまた新たなものを考えていく。そういったローリングをしっかりと雇用政策としてもやれたというようなことを御議論いただいたと思います。
 これで今回の雇用政策研究会は閉じることになりますが、先ほども申しましたように、まだ宿題がありますし、世の中がどういう方向に変化していくのかというようなことを見定めることも難しい状況でございますので、事務局と相談しまして、また次回、開かせていただきたいと思っております。取りあえずは、今回のこの施策についての報告書も取りまとまったということで、一段落させていただきたいと思いますので、御協力どうもありがとうございました。いろいろ勉強させていただきました。どうもありがとうございました。
 以上で、第4回「雇用政策研究会」を終了したいと思います。どうもありがとうございました。

 

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