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2020年11月16日 第2回雇用政策研究会(議事録)

職業安定局雇用政策課

○日時

令和2年11月16日(月) 1000 12:00

 

○場所

東京都千代田区霞が関1-2-2 中央合同庁舎5号館
厚生労働省 職業安定局第1会議室(12階)
 

○出席者

委員

樋口座長、阿部委員、荒木委員、大竹委員、神吉委員、黒澤委員、黒田委員、玄田委員、佐藤委員、鶴委員、堀委員、宮本委員、山本委員

志村大臣官房審議官(職業安定担当)、蒔苗職業安定局総務課長、石垣労働基準局総務課長、田中雇用環境・均等局総務課長、河野人材開発統括官参事官(人材開発総務担当)、高松政策統括官付政策統括室労働経済調査官、溝口職業安定局雇用政策課長、戸田職業安定局雇用政策課長補佐

○議題

 アフターコロナを見据えた雇用政策の方向性について(論点整理3)

○議事

  

○雇用政策課長補佐 それでは、定刻になりましたので始めさせていただきます。
 ただいまより「令和2年度第2回雇用政策研究会」を開催いたします。
 委員の皆様におかれましては、御多忙の中をお集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
 本日は、神林委員、清家委員が御欠席となっております。
 また、宮本委員は10時45分を目途に途中から御参加される予定となっており、阿部委員は10時50分を目途に途中で御退室される予定となっております。
 それでは、議事に入る前に、本日はZoomによるオンライン会議ということで、あらためて簡単に操作方法について御説明させていただきます。
 本日、研究会の進行中は、事務局の方で委員の皆様のマイクをオフとさせていただきますが、御発言をされる際には、画面下の「参加者」のボタンをクリックしていただき、その後に表示されるポップアップ画面の右下に表示されます「手を挙げる」のボタンをクリックしていただければと思います。その後、樋口座長の許可があった後に、御自身でマイクをオンにしていただいてから御発言をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
 また、本会議室から御参加いただく皆様におかれましては、御発言の前にお名前を名乗っていただいてから御発言いただきますよう、お願い申し上げます。
 なお、会議の進行中、通信トラブルで接続が途切れてしまった場合や、音声が聞こえなくなった場合など、何かトラブルがございましたら、事前にメールでお送りしております電話番号かチャット機能で御連絡いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。
 オンライン会議に係る説明については以上となります。
 続きまして、議事に入らせていただきます。
 今後の議事進行につきましては、樋口座長にお願いいたします。
○樋口座長 皆様、おはようございます。お元気でしょうか。佐藤先生、かわいいお人形で。
○佐藤委員 中大のマスコットです。
○樋口座長 本日ですが、まず労働政策研究・研修機構から資料2について説明をさせていただきます。続きまして、山本委員から資料3について御説明をいただき、その後、厚生労働省から資料4、5、6について説明を受け、自由討議に入りたいというように思っております。
 それでは、資料2の「コロナ禍における仕事・生活への影響-JILPT個人調査(5月・8月)の結果から-」について、労働政策研究・研修機構の高見副主任研究員から説明をお願いします。
○高見副主任研究員 おはようございます。労働政策研究・研修機構(JILPT)の高見と申します。本日は、貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。
 コロナ禍の仕事・生活への影響について、JILPTが5月と8月に実施しました個人アンケート調査の結果を基に御報告させていただきます。画面共有がされませんので、お手元の資料を先生方は御覧いただければと存じます。
 まず2ページ目のところで、本日の報告内容のアウトラインをお話しさせていただきます。
○樋口座長 ちょっと待って。お手元に資料2というのはございますか。大丈夫ですか。
 では、お願いします。
○高見副主任研究員 2ページ目のところでございますが、最初に、JILPTコロナ関連調査、個人調査と企業調査がございますが、その概要を御説明いたします。次に、JILPT個人調査の主な事実発見を御紹介いたします。その後、調査結果の幾つかのポイントについて、詳細な御説明をいたします。順番に述べますと、在宅勤務(テレワーク)の定着状況について、次にウェブ会議活用・時差通勤等の定着状況について、その次に収入減少と家計への影響について、最後に、フリーランスの状況についてでございます。
 3ページ目にお進みください。3ページ目はJILPTコロナ関連調査の概要をお示ししております。JILPTでは、個人調査と企業調査を継続的に実施しております。個人調査は5月と8月に行い、次回は12月に調査を予定しております。調査対象、調査期間、方法、有効回収数などはここに記載のとおりでございますが、本調査の特徴といたしまして同一個人を追いかけた、いわゆるパネル調査の設計となっております。4月以降の個人の状況の変化を追えるのが特徴でございます。
 企業調査につきましては、6月と10月に調査を実施いたしました。調査対象、調査期間、方法、有効回収数などは、ここに記載のとおりでございます。調査設計の詳細や各項目の単純集計は下記にあります記者発表資料に記載がございます。
 では、次、4ページ目です。JILPT個人調査の主な事実発見について御説明いたします。新型コロナは雇用面にも大きく影響したということが調査によって明らかになりました。例えば5月調査におきまして、自身の雇用や収入に「大いに影響があった」割合が16.3%、「ある程度影響があった」割合が28.7%と、影響があった割合は4割超に上りました。
 具体的な影響内容としましては「勤務日数や労働時間の減少」や「収入の減少」が多く挙げられました。
 そうしたコロナの影響は対面サービスの業種など特定の業種・職種あるいは首都圏など特定の地域に集中しているということも示されました。
 また、女性、非正規雇用、低所得層ほど、コロナ下において大幅な月収減少を経験しており、そうした月収の減少を経験した層ほど、世帯全体の家計収支で「赤字」となっておりました。
 加えて、8月調査によりますと、休業者のうち休業手当が支払われていない割合も一定程度存在しておりました。
さらには、緊急事態宣言の発令時には、在宅勤務・テレワークの実施が大幅に拡大いたしましたが、宣言の解除後、その割合は急速に減少したことが見てとれました。
 では、5ページ目以降、各論に入ります。
 まずは在宅勤務(テレワーク)の定着状況について、ここではフルタイムの就業者を対象に調査データを分析した結果をお示しいたします。在宅勤務の適用割合の推移を示した図1を御覧ください。在宅勤務の適用割合は4月頭時点に比べて緊急事態宣言期間中では急速に高まりました。しかし、7月末の数値が示すように、その割合は緊急事態宣言の解除後に大きく減少したことがうかがえます。もちろん、御覧いただいたように地域差もありまして、首都圏(一都三県)では緊急事態宣言前からの適用、宣言解除後の定着割合も高く出ております。
 この急増と急減の傾向は在宅勤務の実施日数についても同様でございます。図2では、緊急事態宣言時に在宅勤務を適用された人に限って在宅勤務日数の推移を見たものでございます。例えば5月の第2週の状況を見ますと、在宅勤務の実施日数5日の割合が大きいなど、在宅勤務を週の大半、実施した人が多いことが分かりますが、5月の最終週以降の数値を御覧いただきますと、在宅勤務日数は大幅に縮小し、7月の最終週の時点では、行っていない、0日という割合が約半数に上ることが見てとれます。
 次、6ページで在宅勤務の適用や実施の業種や職種などによる違いについて御説明をいたします。ここでは、在宅勤務の適用時期にも留意して調査データを分析し、どのような業種・職種等で緊急事態宣言より前に在宅勤務が適用されていたのか、あるいはどのような業種・職種等で緊急事態宣言を機に在宅勤務が適用されたのかというのを見ております。
 図3、図4を御覧いただきますと、業種別では情報通信業等の特定の業種、職種別では管理職や専門・技術職といった特定の職種を中心に4月頭時点で在宅勤務の適用があったということが分かります。また、4月以降の局面では、在宅勤務の適用がやや多様な業種・職種等に広がったようにもうかがえます。ただ、緊急事態宣言下においても適用が特定の業種・職種に偏っているということも同時に確認できると思います。
 なお、業種・職種による違い以外は本日の資料では記載しておりませんが、下記にあります出典では、性別、企業規模、所得階層、地域による違いにも言及しております。
 次、7ページ目にお進みください。7ページ目では、緊急事態宣言が解除された後の在宅勤務の定着状況について、7月最終週時点の在宅勤務日数を見た結果を御紹介いたします。ここでの集計対象は、緊急事態宣言期間中に在宅勤務が適用された人のみでありまして、そうした層が宣言解除後に在宅勤務をどの程度行っているのかというのを見たものでございます。
 図5を御覧いただきますと、業種別では建設業や卸売・小売業、サービス業などで0日の割合が高い。逆に情報通信業では3日以上の割合が高くなっていることが分かります。
 また、図6を御覧いただきますと、職種別ではサービス職、技能・労務職で0日の割合が高く、管理職、専門・技術職で3日以上の割合が高くなっているということが分かります。
 本スライドでは、業種・職種による違いのみ図示いたしましたが、これも下記の出典で、これ以外にも例えば女性、中学、高校卒、勤続5年未満、年収300万円未満などの層で0日の割合が相対的に高く、首都圏(一都三県)居住者で3日以上の割合が高いということが示されております。
 次、8ページにお進みください。8ページ目は在宅勤務の定着状況について、在宅勤務の適用時期による違いを示してございます。具体的には、緊急事態宣言より前の適用か、緊急事態宣言を機とした緊急避難的な適用かによる定着状況の違いでございます。
 図7を御覧いただきますと、これは各時点の平均在宅勤務日数を在宅勤務の適用時期別に示しております。これを見ますと、4月頭時点、つまり、緊急事態宣言より前から適用されていた層では、同宣言の解除後、在宅勤務日数はやや低下しつつも、5月末以降も平均2日程度の水準を維持しており、在宅勤務が一定程度定着していると読むことができます。 
 一方で、4月以降、つまり、緊急事態宣言を機に適用された層では、5月末以降、日数が大きく減少し、7月末時点ではおよそコロナ前の水準に戻ってきているということが確認されます。こういうような層では在宅勤務が定着しているとは言い難いと読むことができるかと思います。
 つまり、まとめますと、緊急事態宣言を機とした緊急避難的な在宅勤務というのは、その後、十分定着していないと言うことができます。在宅勤務を「新しい働き方」として定着させていくためには、在宅勤務に適した環境整備や必要な教育訓練の実施など恒常的な取組が求められるのではないかというように思います。
 少し話題が変わりますが、9ページ以降においては、ウェブ会議活用・時差通勤等の定着状況について調査結果の御紹介をいたします。具体的には、ウェブ会議、テレビ会議の活用、時差出勤、サテライトオフィスなど勤務場所の変更といった事柄が緊急事態宣言中にどの程度適用され、7月末時点までどの程度継続されているのかを示しております。
 まず9ページの表1を御覧いただきますと、これは業種別の結果を示しております。これを見ますと、情報通信業、製造業、金融・保険業、不動産業などでこれらの働き方の導入あるいは定着率、どちらも高いということが分かります。太字で示しているところでございます。
 次、10ページの表2は職種別の結果を示してあります。これを見ますと、これも太字で示しておりますが、管理職、専門・技術職、事務職ほど、これらの働き方の導入、また、定着率というのが高くなっている。逆に輸送・機械運転職、建設作業・採掘職、運搬・清掃・包装作業などの職種で低いということが分かります。
 次、11ページの表3を御覧ください。これは企業規模、コロナ前である昨年1年間の個人年収、居住地域別に同じものを見ております。これを見ますと、大企業、年収の高い層、首都圏ほどこれらの働き方の導入・定着率が高いということが分かります。
まとめますと、調査結果からは、このような層を中心にウェブ会議等が「新しい働き方」として定着の可能性があるということが見てとれるかと思います。
 次のトピックに移ります。12ページ、13ページで収入減少と家計への影響について調査結果の御紹介をいたします。コロナ下で誰がどの程度、月収の減少を経験したのか。図8を御覧ください。これを見ますと、女性、非正規雇用、低所得層ほどコロナ下で月収が3割以上減少を経験するなど、大幅な月収減少を経験していることが分かります。この中には失業等によって収入を失った者も含まれておりますが、雇用が継続している者において労働時間の減少に伴って収入が減少したケースも含まれているということでございます。
 次、13ページです。図9、これは続きでございますが、先ほど月収の減少を経験した層を御覧いただきました。図9を御覧いただきますと、月収の減少を経験した層ほど世帯全体の家計収支で赤字というようになっております。これは赤で囲ったところでございます。特に月収3割以上を減少した層では、「かなり赤字」という割合が高いことも目を引きます。前のスライドの結果と合わせますと、非正規雇用やコロナ前に低所得層であるほどコロナ下で収入減少を被り、家計面で苦境に陥った様子がうかがえるかと思います。
次、最後の事項として14ページ目以降、フリーランスの状況について調査結果の御説明をいたします。JILPT調査では、農林漁業を除く、雇い人のない、店主以外の自営業主としてフリーランスを対象に調査を行っております。なお、フリーランスは内職も含みます。フリーランスについて、図10に示しますとおり、8月調査に基づけば、仕事や収入への影響があった割合は合計65.3%であり、これは雇用者である正社員の39.3%、非正社員の43.9%と比べて大きな割合を占めていることが分かります。フリーランスがコロナ下で甚大な影響を受けたということがこの図からも分かります。
 どういう影響があったか、影響の中身について図11でコロナ問題発生から緊急事態宣言の期間までのものをお示ししてございます。これを見ますと「売上高・収入の減少」というのが52.1%で最も大きくて、ほかにも「事業活動の抑制や休止」など、様々な影響が見られました。また、これらの影響について7月末現在まで影響が継続している割合も多くございました。
 次、15ページのところですが、表4では、フリーランスで働く者の就業状態の変化を見るために、5月末時点、6月末時点、7月末時点の就業形態・状態というのをお示ししております。7月末現在で自営業に就いている割合というのは、これを見ますと84.5%であって、4月1日時点と比べて15.5ポイント下回っております。また、働いていないという割合、右2つですが、これは合計が2.4%であり、うち、求職活動していないという割合が1.7%ありました。下には比較のための参考として、雇用者における就業状態の推移を載せております。
 次、16ページでは、図12として、フリーランスの仕事時間の変化を示しております。4月の第2週、これを御覧いただきますと、4月の第2週以降、20時間未満と非常に短いですが、この層が大幅増加していることから示されるように、仕事時間が大幅に減少し、7月末の時点でもコロナ前の水準を回復していないということが分かります。
 右側の図13では、比較のために雇用者の労働時間変化を参考としてお示ししております。これを比べてみますと、雇用者と比べてもフリーランスの仕事時間の減少幅が大きいということが分かります。
 次、17ページでは、図14としてフリーランスの売上高の変化を示してございます。フリーランスのうち、4月以降、コロナ前の売上高の水準を維持している割合、ここでは100%以上というようにしておりますが、その割合は3割程度と小さく、多くの者が売上高減少を経験しているということが分かります。売上高は、これを見ますと50%未満に落ち込んだ割合というのも小さくないということが分かるかと存じます。なお、一概には比べられませんが、右側の図15に掲載した雇用者の月収の変化と比べてみますと、生活への影響はフリーランスにおいて雇用者より大きいということが推察されるかと思います。
 最後、18ページでフリーランスについて仕事の継続見通しと支援策の利用状況についてまとめてございます。図16にある今後の仕事の見通しを見ますと、これまでどおりという割合も63%程度と多いのですが、体制を縮小して継続するという割合も10.5%ありまして、分からないという割合も18.6%と大きな割合を占めております。また、細かなところですが、廃業して転業あるいは転職、引退という割合も合計すると3.3%程度ございました。
 最後に、経営支援策の利用については、8月調査時点で既に利用を申請したり、今後の利用申請を考えたりしている経営支援策としては、持続化給付金というのが30.1%と多く挙げられました。調査時点において既に持続化給付金を受給していた割合も22.1%ございました。
 以上で報告を終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 何か御質問があるかと思いますが、後でまとめてお受けしたいというように思います。
 それでは、続きまして、資料3に基づきまして山本先生からお話をいただきます。日本家計パネル調査、慶應がやっております調査の中で特にCOVID-19特別調査を行っておりますので、この調査結果について就業・ウエルビーイングの変化についてお話をいただけるというように思います。
 それでは、山本先生、お願いいたします。
○山本委員 おはようございます。慶應大学の山本でございます。
 今、樋口先生からお話があったように慶應のパネル調査でコロナの影響を捉えるための特別調査を行いましたので、その内容を紹介させていただきまして、この雇用政策研究会の議論の材料にしていただければというように思います。
 資料、共有ができないということで、ページ番号を言ってまいります。
 まず2ページ目、調査概要になりますが、日本家計パネル調査、そもそもの本体調査、こちらは日本全国の個人を対象として無作為抽出をしているものです。KHPSとJHPSという2つの調査を別々に行っていたのですけれども、2014年に統合しているということになりますが、KHPS、JHPSのサンプルというように呼んでいますが、ところどころ新規対象者を足していって、現在は2020年1月調査では5,470のサンプルが使えるということです。この調査はオンライン調査ではなくて留置訪問調査をしているということになります。
 3ページ目がコロナ特別調査ということ。本体調査は1月調査時点で大体2月頃に調査を行っているのですけれども、その頃、コロナの影響が少なかった、コロナ前というようにみなせる時期で、その直後にコロナが普及したということで、緊急事態宣言が解除された直後、5月下旬から6月上旬に調査を実施して影響の度合いをはかろうということを足して行いました。
 対象はJHPSの2020年1月に回答した5,470人で、調査方法は郵送調査ということです。回収率は70%で3,891というようになっているということです。ちなみに、現在、第2回調査を行っていて、第3回調査も行う予定に検討しているということになります。
 特徴としては、本体調査と同じような質問項目を聞くということで、コロナのビフォア・アンド・アフター、これを遡って思い出して回答してもらうものではなくて、その時点、その時点の情報を使うことができるということで比較が非常に正確になるのではないかというところが言えるかと思います。特にメンタルヘルスですとか幸福感とか、そういう主観的なもの、あるいは振り返って回答するのが難しいものに関しては正確なものが取れているというように言えるかと思います。
 それから、慶應のパネル調査は世界各国の家計パネル調査を横串で比較可能にしているデータベース、CNEFというのがあるのですけれども、そこに参加しておりまして、そこでのプロジェクト参加者と一緒になって国際共同プロジェクトを立ち上げて、そこでできるだけ共通の質問項目を入れてコロナについて調べて国際比較をしていきましょうということにしています。ですので、各国のデータを使えば国際比較も同じ質問項目ですることができるという特徴があるかと思います。
 4ページ目です。具体的に内容に移っていきたいと思いますけれども、今日お示しするものは本体調査、それから、特別調査をひもづけている、雇用者に限定しているということで2,103サンプルだということです。様々なアテンションバイアス、脱落バイアスとかいろいろなものがあるということもあって、今回は簡易的なウエートをつくって、労働力調査の性・年齢層・雇用形態でウエートをして母集団推計をしているというようなものにしています。
 5ページ目が分析内容なのですけれども、今回は非常にシンプルに就業状況とか生活時間、それから、ウエルビーイングなどが2時点、2月頃と5月下旬から6月上旬ぐらいにかけてどういうように変化したのかというところを見ていこうということでたくさんの図をお見せしたいというように思います。それから、属性による違いに着目しているわけなのですけれども、その中でも男女間格差に関しては前回、私は欠席しましたが研究会でも議論になったということもお聞きしておりますので、その男女間格差が属性の違いによってどれぐらい生じているのかというようなところも御説明できればと思います。同様に企業規模間格差についても要因分解をしようということです。
 今からお示しするところは慶應の石井先生と樋口座長と私で論文にしようというようにしているところなのですが、データがいろいろ五月雨的に納品されていて、ネット調査ではないのですごく納品に時間がかかって、実は先週、全部のデータがそろったばかりでして、ほとんどデータのクリーニングもきちんとチェックできていないという状況での御報告になってしまうことをお許しください。ですので、少しデータの不具合などがあれば結果が変わる可能性があるということになりますが、大きくは変わらないとは思います。また、非常に急いでやって、私も昨日、夜中まで作業してようやくお見せするものが出来上がったというところなので少し足りないところもあるかもしれませんけれども、御了承ください。
 6ページ目が結果になりますが、まずは就業への影響ということで、コロナによって、これまで、調査時点ですので5月下旬から6月上旬にかけての時点です。それまでにおいて失職の経験があるかどうか。それから、今後12か月にそういったようなことが起きると考えるかという予想も聞いてもらっています。これを見ると割合としては4%ぐらいということなのですけれども、属性による違いを見ると60歳以上ですとか若干女性が多い。それから、大卒以外、非正規雇用が均等に多くなっている。それから、産業別に見ても、職種別、生産・保安、サービスで顕著になっている。それから、三次産業のうちの飲食・宿泊、500人未満、中小と呼んでいいのか分かりませんけれども、今回は中小と呼びますが、500未満というところで顕著になっていって、先行きの見通しも同じようになっているというようになっています。
 7ページ目が、今度は休職に関してです。1日でもコロナによって休んだ日があった人の割合を示していますが、全体で25%ぐらいということです。分布を見ると女性ですとか大卒以外、非正規、サービス、飲食、中小、それから、特定警戒地域で多くなっているということです。
 次のページがその理由についても聞いていまして、勤務先からの要請で休職をしたという人がいます。その中でも、その休職が有給だったのか、無給だったのかということで分けて聞いているのですが、両方足し上げると8割ぐらいが仕事を勤務先からの要請による休職だというように分かるのですけれども、圧倒的に有給での休職が多いのですが、無給も2割ぐらいはいるということで、例えば無給に注目すると60歳以上ですとか女性とか大卒以外、非正規、サービスなどのところで多くなっているということが分かります。
それから、9ページ目が別の理由で、子供の休校・休園による自主的な休みということを挙げた人は割合としては8%ぐらいなのですけれども、女性にかなり顕著に偏っている。業種もサービス職に増加というように思いますし、ここでは地域、特定警戒地域での割合が大きくなっているというのが特徴かと思います。
 それから、10ページ目では、今度は転職希望についても増加した人の割合を見ているのですけれども、これも先ほどと同じような女性や非正規、大卒以外、業種でいくと飲食・宿泊といったところで顕著だというのがあります。
 それから、11ページ目は収入に関してですけれども、仕事からの収入になっています。このグラフは若干見にくいと思うのですけれども、2本、それぞれ棒が立っていまして、2月と4月の月収を書いています。ですので、全体を見ると2月から4月にかけて減少しているということが分かります。点ですとか折れ線で示しているのは、その差ではなくて減少した人の割合を右側の軸で示しているということです。ですので、仕事からの収入が減少していって、減少した人は全体で見ると30%ぐらいということが分かります。減少者の割合が大きかったところを見ると、女性や大卒以外、非正規、生産・保安職、サービス職、飲食などが顕著だということになります。
12ページ目は収入が減少することなどによって生活が苦しくなって国や自治体の経済的な支援を申請したというような人とこれから申請するという可能性があるというように考えている人についてグラフにしていますが、ここでは男性のほうが多いです。それから、大卒以外というところが特徴で、それから、生産・保安職で多いということ、あるいは1次・2次産業でも多いということで、これは雇調金、ノウハウが製造部門ではあるので、そういったところが影響しているのかと。飲食・宿泊などは持続給付金などがあるのかなというように思います。
 それから、13ページ目ですけれども、今度は労働時間です。先ほどの高見さんの報告にもありましたが、労働時間、やはり雇用者でも大きく減少していまして、月の労働時間は正規、非正規合わせたところで見ると40時間から33時間ぐらいまでかなり7時間程度減少しています。その中でも折れ線グラフで減少した比率ですけれども、顕著だったのが50歳代以下、それから、男性、大卒、正規雇用などで顕著というところが出ております。
 それから、14ページ目は、テレワーク、在宅勤務のことも聞いているのですけれども、ここでは生産性、どちらが効率的ですかというように答えて主観的に評価してもらっています。この棒グラフは在宅勤務のほうが効率はいいと答えた人たちを表していますけれども、若年層や男性、大卒、正規雇用などで高くなっているというところがあります。
 それから、15ページ目からは生活時間への影響を見ています。これを見ると、まず家事時間です。家事時間は2月から4月にかけて増えているというところが見てとれます。どこで顕著に増えているかというと、女性とか20~30代です。それから、大卒、非正規、販売、サービス、飲食などになるということなのですが、労働時間でいくと男性とか大卒とかで顕著に減っているのですが、それが家事時間の増加には相対的に見るとなかなかつながっていなくて、まだまだ女性の家事時間が増えているというようなところが特徴かと思いまして、16ページ目の育児時間でも似たようなところが言えるのかなというように思います。
 それから、17ページ目は、学習時間です。労働時間が減ってステイホームすることになって学習時間を増やした人がどれぐらいいるかというと、確かに増えてはいます。週20分程度の学習時間の増加が平均で見られるということです。若者、大卒、正規雇用、専門的職種、それから、影響が大きかった飲食・宿泊業でも多くなっているというのが特徴かと思います。
 睡眠時間は、家にいることが多くなったせいか増加しているということが分かっていますが、顕著なのが若年、それから、女性のほうが増加しているというようなところと影響を受けた飲食や宿泊でも顕著になっているということが言えると思います。
 それから、19ページ目ですけれども、ウエルビーイングというようにくくっていますが、主に健康とか主観的生産性への影響を見ています。メンタルヘルスの指標として、ここではK6という6項目で状態をはかるインデックスを使っています。これは5点以上の人は何らかの問題がある。重度の問題点はないのですけれども、何らかの問題があるというようにされるしきい値とされているものですが、ここでは、5点以上の人の割合を示していまして、これを見ると、全体で見るとその割合が多くなっているということで、4月は50%を超えているということで、半分以上の人がメンタルに支障にあるというような状況になっているということです。どこで顕著かというと、60歳以上ですとか、女性、大卒以外、非正規雇用、サービス職、飲食・宿泊、中小企業などで多くなっているというところになっております。
 それから、20ページ目は仕事をする上でのワークエンゲージメート、これはユトレヒト大学のインデックス、尺度で、3項目で追加することについて見るというものですけれども、これは値が大きいほどエンゲージメントが高いということなのですが、エンゲージメントは少し高くなっているというところがあります。
 この折れ線グラフは逆で、悪化している人、低下している人の割合を見ているのですけれども、悪くなっているのは、やはり女性とか大卒以外、非正規雇用、サービス職などで顕著だということが見てとれます。
 21ページ目はHPQという主観的生産性。仕事のパフォーマンスを自己評価してもらっているもので、点数が高いほど、これはパフォーマンスがよい、高いというように判断するものなのですけれども、この平均点を見ると、全体で見ると減少しているということで生産性が主観的には減っているのではないかというところがありまして、その内訳を見ると、40・50、大卒以外、男性など、あと大企業でも多いというところが見られています。
 幸福感に関しては低下傾向にありますということで、特にサービス職などは顕著になっているというところがございます。
以上、いろいろな属性で就業とか生活時間、ウエルビーイングについて見てみたのですけれども、男女間の差がどこでも見られた。また、同時に正規、非正規の差としても見られているといったような形で、女性に例えば顕著に仕事の収入が減ったとかメンタルヘルスが悪化したというようなところが女性の問題なのか、それとも、非正規雇用が多いといったような問題なのかということを調べるためにワハカ分解を行いました。ここでは、属性として年齢、学歴、職種、業種、事業規模という非常にシンプルなものを用いて、このいろいろな項目の男女差がこの毒性によって説明できる部分とそうでない部分を分けてみました。
 例えば23ページ、左の図は休職している人は女性で多いです。この棒グラフ全体は女性が多い。そのうちの男女の差が8%ぐらいあるのですけれども、そのうちの例えば非正規が多いから休職を余儀なくされた人が多いというような属性による要因というのが上の薄い側、棒グラフのパーツになっています。2番目に濃い真ん中がそれでは説明できない部分ということですので、属性によって違う部分が男女の差の半分弱ぐらい、半分に満たないということで、属性をコントロールしてもやはり差が残るのだということが見てとれます。転職希望についても同じで、ここは属性による寄与度が大きいのですけれども、それでも差は残るというところです。
 仕事収入の減少者の割合、これもやはり同じです。属性を除いても残る。メンタルヘルスについても同じになっています。これは同じことを簡単な回帰分析で、例えばメンタルヘルスの得点を説明変数にして、説明変数に男性は何ということを置いて、それで男性のほうがメンタルヘルスがよいというような結果が出てくるのですけれども、その結果、その設計をここに書いた属性をコントロール変数として入れて、これらの属性が一緒だったとして性別なりの件数がどうなるかというように見ると小さくはなるのですが、やはり統計的に有意な差は残るというところが出てきています。
 同じことを企業規模間で行っています。500人以上と500人未満というように分けているのですけれども、こちらはコロナによる休職、転職、それから、メンタルヘルスあたりは属性の影響がほとんどない。ほとんどないところも多いですけれども、それ以外による部分というところが大きいというところで、ここは小さい企業だからこそ休職が多かったりとかメンタルヘルスが悪くなる人が多かったというようなところがあるのかなというように思います。
 それから、仕事の収入の減少については属性の違いでほぼ説明ができるということになるかと思います。
 ということで、最後だけ少し分析的なところをしましたけれども、属性によるいろいろなものの違いについて慶應のパネルデータで見た結果を御紹介しました。
 私からは以上です。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 お二人とも、足元で今、何が起こっているかというようなことについて御報告いただきました。ふだん、こういう調査をしないとどうしても1年後、2年前、3年前はどうだったかというようなことに公的統計を使った場合になりがちなのですが、まさに足元において何が起こっているかということについて、この調査で分かるようになってきたということだろうというように思います。
 それでは、続きまして、資料4と5について、事務局から説明をお願いしたいと思います。資料の準備のほど、よろしくお願いします。
○雇用政策課長 雇用政策課長の溝口でございます。
 資料4でございます。「ご議論いただきたい事項について」ということですけれども、1点目は、新型コロナが雇用・失業情勢に与える影響について、資料5で御説明をしますが、事務局の説明資料の中でその基本的な特徴を整理した案を作成し、それに加えて前回の研究会の御指摘を踏まえた追加の資料もお示ししておりますので、御指摘をいただきたいと思っております。
 2点目が、本日のJILPTの高見研究員からの御説明と山本先生からの御説明を踏まえまして、「働き方」に与えている影響ということで御議論いただきたい。
 3点目が、1点目と2点目を踏まえまして、アフターコロナを見据えた職業生活の安定に向けた課題ということで、前回も御議論いただきましたけれども、中長期の観点も含めて今後の課題について御議論いただければと思っております。
 引き続いて、資料5でございますけれども、事務局説明資料でございます。
 2ページに目次がございますので、こちらを御覧いただければと思います。
 目次を御覧いただくと、前回研究会でお示しした資料や、いただいた御意見を踏まえまして、新型コロナが雇用・失業情勢に及ぼしている影響の特徴について、事務局の案として現時点でどういったものがあるかということをリーマンショックとの比較も念頭に置きながら整理をしております。
 その後、前回の研究会で御指摘をいただいた女性、休業者、フリーランスが含まれる雇用的自営の動向について追加で資料をお示ししております。
 また、労働需給のミスマッチにつきましては、前回でお示ししておりませんでしたので、今回整理をしております。
 次の雇用調整助成金につきましては、前回の研究会で御指摘をいただいておりますが、新型コロナ対応で講じている特例等の制度概要とともにサンプル調査の結果をお示ししております。このサンプル調査につきましては、現時点ではサンプル数も6万件弱の限られたものでございます。また、調査方法や内容も限られておりますので、今回は暫定的なものとして基本的な情報を御議論の目安としてお示しさせていただいているものですので、御留意をお願いいたします。
 以上でございます。
○樋口座長 もう既に見ていただいているということだろうと思いますので、資料4と5、また後で議論の中で詳細には触れるかというように思います。
 それでは、続きまして、資料6について、人材開発統括官参事官室から説明をお願いします。能力開発についての言及です。よろしくお願いします。
○人材開発統括官参事官 人材開発統括官付総務担当参事官でございます。
 資料6の2ページを御覧ください。人材開発施策の概要についてお示しをいたしております。離職者訓練、在職者訓練、労働者の自発的な学びをする教育訓練給付というのを実施いたしております。
 3ページを御覧ください。公的職業訓練につきまして、月別の受講開始者数の推移をお示しいたしております。新型コロナ感染症の拡大に伴う一部休講によりまして3月から5月は落ち込んだものの、求職者支援制度の受講開始者数、7月以降増加に転じているところでございます。
 4ページを御覧ください。職業能力開発促進法に基づき策定をしております職業能力開発基本計画は5年計画でございますが、対象期間が今年度末でございますので、次期基本計画の策定に向けて昨年秋から研究会で御議論をいただいたものでございます。
緑の色でお示ししておりますように5つの柱でまとめていただいたものでございます。
 次のページを御覧ください。「新たな日常」の下での職業訓練につきまして、幾つかおまとめをいただいております。
 また、次の6ページでございますが、「最後に」ということで、コロナ禍で今後どのような課題があるかというのは十分見通せないところでございますけれども、現時点で考えられる課題や留意点として整理をしていただいたものでございます。
 説明は以上でございます。
○樋口座長 ありがとうございました。
 この中で言及されていること、今、説明がなかったことが多々あるかというように思いますが、それについては御質問、御意見の中で皆様からいただければというように思っております。デジタル人材の話とか、あるいはここでいうエッセンシャルワーカーの能力開発というのがどういうように具体的に行おうというように厚労省は考えているのかということについて、後で私のほうからも御質問したいというように思っております。
 それでは、今後、自由討議に移りたいと思います。御質問、御意見がございましたら、手を挙げるボタンをクリックしていただき、私が指名した後、お名前をおっしゃってから御発言をお願いしたいと思います。
 まず鶴先生、お願いします。
○鶴委員 鶴でございます。
 御指名どうもありがとうございます。また、詳細な御説明をいただきまして大変ありがとうございました。特にJILPTと山本先生の御説明は、現状、どうなっているのかということが非常によく分かる説明で大変勉強になりました。
 ちょっと在宅勤務の話について感想と質問なのですけれども、JILPTのほうの御説明で非常に印象に残ったのは、やはり在宅勤務の体制をもともと整えたところは緊急事態宣言が終わった後もそれほど割合が減っていない。ただ、急ごしらえに導入したところは、その後、元に戻っている。なかなか準備ができていないところというのは、やはりいろいろな個別の事例とかそういうことのお話を伺っても混乱が大きくて、なかなか効率が悪い、生産性が上がらないとか、そういう不満というか、うまくいかない点ばかりがクローズアップされているところがあったなということなので、やはりかなりきちっと準備ができていたかどうか。また、それは今後、準備をすればかなり解決できるいろいろなインフラの問題であると思うのですけれども、そこが調査で非常にはっきり出たなという感じがしております。
 質問は、山本先生の御説明、非常に興味深くお話を伺ったのですが、特に14ページで主観的生産性の比較をされているのです。ここを見ると、やはり年齢別で主観的生産性の評価が全然違う。つまり、若い人たちのほうがうまくテクノロジーを使って適応しているのですけれども、なかなか年齢層の上の人がこの新しい状況に溶け込んでいないという状況は非常にはっきり出ているなという印象を持ちました。
 あと学歴でかなりここも差があって、やはりこのZoomとかこういうものも含めて学歴というところはそういう使い方とかそういうものへの対応ということができているのか。これは多分、今後の分析だと思うのですけれども、それ以外の要因、学歴がより低い人は先ほどのいろいろ影響が出て飲食とか宿泊とか非正規、そういうところの人たちが多いというところもあるのかもしれません。ちょっとそこがどういうように見られているのかなということと、あと販売職の人たちがかなり在宅勤務の効率性は高いというように出ていて、一方、後の御説明だと生産性が悪化したという割合も結構高かったなと。販売職の方々についてどういう解釈をされているのか。まだこれから分析されるところだと思うのですけれども、非常に興味を持ったので、もし山本先生、お教えいただければありがたいです。
○樋口座長 ありがとうございました。
 それでは、今の御質問で、高見さんに対する質問は在宅の比率が大きく低下して、もともと準備して、コロナ以前からそれを実施しているところというのは残っているのに対して、急ごしらえでやったところというのはなかなか残るのが難しいのではないか。それの意味について少しお話しいただけたらと。続いて山本先生についても御質問が2つぐらいあったかと思います。この14ページの主観的生産性のところで、年齢で見ると若い層でどうも年齢が高いように見える。これは単に年齢の問題なのかどうかというような御指摘と、販売職についての御指摘について。
 では、まず高見さんからお願いできますか。
○高見副主任研究員 鶴先生、ありがとうございます。私から簡単に御回答いたします。
 先生御指摘のとおり、今回の8ページのスライドでお示ししたとおり、在宅勤務が緊急事態宣言を機に適用された層ではコロナ前の水準に戻ってしまった。それより前に適用された層では多少平均日数は落ちていますが、そこそこ定着しているというような結果をお示ししました。
 インプリケーションとしましては、先生が今、おっしゃいましたように体制整備の問題が大きくあろうというように考えております。御承知のとおり、在宅勤務のテレワークに関しては、生産性維持ですとかマネジメントの役割とか成果管理とか教育訓練とか、あるいは従業員の孤立感の問題とかコミュニケーションとか、あとは在宅勤務に適した環境整備。自宅の就業環境整備ですとか、そういうものがいろいろ課題として挙げられているところと存じます。ですので、こういうような課題を解決せずに緊急避難的に適用されたところでは、やはりなかなか続かないということが結果として示された。在宅勤務というのは、新しい働き方として定着させていくためには、こういうような課題というのをこれから労使で解決していかなければいけないというように考えているところでございます。
 以上です。
○樋口座長 では、山本先生。
○山本委員 御質問、コメント、ありがとうございます。今後の分析に生かしていきたいと思います。
 主観的生産性、在宅の主観的生産性、いろいろな要因によって決まってくると思いますけれども、若年が高く評価しているのは御指摘のとおり、やはりIT環境、デジタル環境に慣れているといったようなところが大きいのかなというように思います。それに関連して、まだ今、分析途中ですけれども、ITスキルについて表計算ソフトが使えるとかプログラミングができるとか、そういったようなスキルをはかっているのですが、その得点が高い人ほど在宅勤務の生産性は高いというように評価しているので、そことも関係してくるのかなというように思います。
 それから、あとはもう一つの要因としては、やはり在宅勤務を実施している人のほうが主観的生産性は高いというような結果も途中段階ですけれども、出てきておりまして、そういう意味では、男性とか大卒とか正規雇用とかのほうが在宅勤務の実施率は高いので、そこも影響しているのかなというように思います。
 販売に関しては、差が出やすいというところなのかなと思います。これは営業職とかも入ると思うのですけれども、意外と在宅でできてしまうという部分と、なかなかそれが難しいという人がいて、そこが多様な結果になっているのかなと。今回、いろいろな統計を見てみると、意外と販売職で在宅勤務ができているというのが結構特徴なのかなというように思っているところです。
 以上です。
○鶴委員 ありがとうございました。よく分かりました。
○樋口座長 ありがとうございました。
 御指摘の点は、やはり政策を考えていく上でも必要になる視点かなというように思いますので、個別企業の対応、労使の対応というのがあると思いますが、政策的にどうするのかというところも今後の議論に生かしたいと思います。
 それでは、続きまして、大竹先生、お手をお挙げでしょうか。
○大竹委員 ありがとうございます。
 2つコメントがあります。
 一つは、今、議論になった在宅勤務の話なのですが、企業タイプや職種によって在宅勤務の導入が異なっているというのは自然だと思います。コロナ以前からそういう研究があって、在宅勤務によって生産性が高まるというところと、そうでないところがあるというのは、そもそも違いがあるのだということだと思います。一方で、今まで日本の場合だと在宅勤務は不可能だという思い込みが結構あったところが、実際やってみたらできるようになったという大きな意識の変化があったということは強調してもいいのではと思いました。
 それから、もう一点、在宅勤務に関わることなのですが、山本さんの分析でも若年層ほど在宅勤務の生産性が高いという結果は、4月だからというところはあると思うのです。私、ある製造業で在宅勤務の生産性に関する評価の研究をやったのですが、在宅勤務に慣れるというスピードは圧倒的に若い人が速くて、年齢が高い人はすごく時間がかかったと答えています。しかし、7月ぐらいの調査だと生産性が高くなった、かなり在宅で仕事ができると言っている人は年齢が高い人が多くて、若い人のほうが少ないのです。それは恐らく仕事の中身が自宅でもできる管理の仕事というのが多いのと、ネットワークが既に完成している人たちが多いので自宅でもできるのだろうというように思います。ですから、ここの話は、4月段階でそもそもネットワークに慣れていない、在宅に慣れていないという状況が強く反映されていたという可能性を少し考慮しておく必要があるかなというように聞いていて思いました。
 それから、もう一点は違う観点なのですが、在宅勤務にしても、それから、転職行動とか学習行動とかということについても、このコロナの事態がどのくらい続くのかという見通しにかなり大きな影響を受けている。恐らく早い段階だと、これが2~3年続くような、あるいはもっと続くパーマネントな影響だと思っていた人は少なくて、この場をしのげればと思っていた人が多いのではないかと思います。しかも、春の段階だと学校も休みだったという状況もあって、それから、夏も夏休みがありますから、そういう状況と、それから、最近になるとまたはやってきたということで、そんな簡単に収まらないという期待形成ができてきたときには、人々の行動も変わってくる可能性があると思います。
 それで一番難しいのは政策的にどうするかということだと思うのです。短期的だったら経営をつなぐような形、あるいは生活を一時的につなぐという形の支援に集中すればいいのですが、長くなるということをみんなが認識するようになってくると、それを推進する形に政策を変えていかなければいけないというところは難しいと思います。
 分科会でも見通しを出せないのかと感染症の人たちに聞いているのですが、科学的には分からないというのが実態で、この冬を越えないと分からないというのがあるので、結構政府として期待形成をどちらに誘導して、そして、その下で政策形成をしていくというところが非常に今、難しい状況にあるというように感じています。だから、もう少しすれば方向性がはっきり分かって政策の方向性をきちんと提示していくことができるのかなと思いました。
 後半は感想です。
○樋口座長 どうもありがとうございました。貴重な御意見、ありがとうございました。
 確かに高見さんの調査結果を見ても、やはり月々、非常に大きく変わってきている。まさに非常事態宣言のような、それを発令しているような状況においては、在宅就労であるとかというようなことも増えているのですが、それが終わると、少し落ち着いてくるとまた在宅就労が減ってとか生産性についてもというようなところで、今後の話をする上でも、まさにコロナ、どう対応していくのかというのが、コロナがどうなるのかというのが非常に重要だし、政策的にも、もう既にこういう政策で行くのだと決めないで、むしろ柔軟に対応していかないと難しいなというようなこともあるかと思いますが、御指摘の点もまた今後議論したいというように思いますので、ありがとうございました。
 それでは、佐藤さん、手を挙げてらっしゃいますか。
○佐藤委員 中央大学の佐藤です。どうもありがとうございます。
 鶴委員、大竹委員とも重なるのですけれども、この在宅勤務、高見さんのスライド8のところの解釈なのですが、コロナ禍で、緊急対応で在宅勤務がその後、定着するかどうかは確かにその前に取り組んでいたもの。それは当然、在宅勤務がなじむような仕事だったりとか環境があったかなということになると思うのですけれども、問題は、戻ったところなのですね。確かに在宅勤務と言っても出社禁止に近いところがあったわけですね。出てくるなみたいな。特に家で仕事しているというよりは出てきては駄目ですよみたいなのも多分広い意味で在宅勤務に入ってしまっているのかな。これは多分、業務上ももともと戻らざるを得ない、これも一部あると思うのです。
 ただ、それ以外に、一つの企業の中に同じ部門でもやれているところ、つまり、社内体制が同じでもやれているところとやれていないところがある会社は結構多いのですけれども、そういう会社でも続けようというようにシフトしたところ、かじを切ったところと戻してしまっているところと両方あるのです。
 私、多分大竹委員が言われたのはすごく大事で、それは何で決まるかというと、一番大きいのはトップが今後どうなるかの見通しなのです。つまり、来年度、ワクチンが出てもこれからは例えばダイバーシティー、多様な人材が活躍できる。今回で確かに難しかったのをやってみたら、出張できなかった人も、みんな出張できなくなったので地方の事業所と一緒の仕事もオンラインでできるようになったとか、在宅であれば8時間働けるとか、いろいろプラスのものも出てきたので、あるいは取引との関係も、営業も対面、訪問してやれるのが分かってきたので、今後のことを考えると、やはり新しい日常という話で、これからの仕事の仕方、働き方を変えるのだというようにトップが打ち出したところと、そうではないのだと、やはり元に戻したほうがいいのだとか、現場のマネージャーも元のほうがやりやすいと思って戻してしまった。これは混在しているのです。
 そういう意味では、政策として大竹委員が言われたように今後どうなるかという見通しですね。やはりこれからコロナが多分しばらくは続くと思う。それだけではなく、新しい働き方へ変えていくことが多様な人材が活躍できるために大切ですよみたいな、大事なのですよとメッセージを出すと、つまり、トップがどちらに向いているかというのがこれからの働き方を考える上ですごく大事なのかなと思うので、それがないと戻すという圧力がすぐ働いてしまうなというように思って、そういう意味では、今回の研究会でも何かメッセージを出せるといいかなというように思っています。これが一つです。
 あと、山本委員の生産性の話なのですけれども、いろいろと在宅勤務になると生産性が落ちる、私は落ちて当たり前ではないかと思っていて、変わらないとか上がるほうが例外的な気がしていて、これはやはり緊急対応だったと思うのです。なので、特に生産性のところは分からないのではないかなと思っていて、ですから、私は山本委員や高見さんに少しパネルで見ていただいて、あるところからまた回復する。確かに本人のITスキルもあるし、管理職のマネジメントもありますね。つまり、慣れていないところなら当然落ちるのだけれども、ある程度やっていくと上がるのですよみたいなメッセージを出していただくと、先ほどの長期的にどうするかということにつながるかなと思いますので、ぜひ今後のパネル調査にすごく期待していますので、よろしくお願いします。
 以上です。すごく長くなりました。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 今後コロナがどうなるかというような話と、それに応じて対応というのも変わってくる可能性がある。あるいはトップの指揮ということもあると思いますが、その一方で、この緊急避難だとそれの対応に限界があるということから、要はコロナがどうなるかとは別にと言ってはいけないのですが、この在宅就労であるとかテレワークであるとかというようなことをどのようにしていくのか。そこにおける人材の育成、能力開発というようなことというのも緊急避難だけではなくて、今後、日本の働き方をどのようにしていくのかということと関連してやはり考えていかないと難しいような、そういった御指摘だろうというように思います。
 それでは、荒木委員、お願いします。
○荒木委員 ありがとうございます。大変勉強になりました。
 今の議論の続きなのですけれども、在宅勤務で生産性が上がるとか上がらないとかという議論がありました。政策的には、今後、どうすればよいかということなのですけれども、生産性が上がらないという場合に、何が障害となっているか。つまり、在宅勤務にしたけれども、労働基準法などの労働時間規制が桎梏となって自由に働けない。制度を変えてもらったら在宅勤務でも生産性が上がるのに、現状の制度がそれにフィットしていないためにそれほど生産性が上がらないということなのか。
 つまり、出社した場合と比べると生産性が下がっているのは、企業の情報をコピー、ダウンロードできるかとかそういう問題から始まって、労働時間管理で、コンピューターを入れた時点から全て労働時間とカウントする結果、かえって働きにくい状況が生じているとか、そういう制度的にどういう問題があるかということまで調査で分かってくると何をどう対応すればよいかが分かる。そういう点については何か調査を開始されているのか、あるいは今後予定があるのか、もしあれば教えていただければと思います。
○樋口座長 ありがとうございました。
 それでは、今の点、まず山本委員から今後の調査の予定で生産性向上の阻害になっている要因が在宅就労に関する法規制であるとかというようなところにあるのか、あるいは何か要因があるのかという、今、調査に入っていないとすれば今後入れていく予定というのはあるのですかという御質問だろうと思いますが、どうでしょうか。
○山本委員 ありがとうございます。
 調査で取れている情報に関しては、職場の人材管理のタイプとか、それから、どんな種類の業務、タスクが多いかとか、それから、スキルが多いかとか、そういったようなことは取れているのですけれども、法的なところについてどう窮屈に感じているかとか、課題があるかとかというのはまだ取れていませんので、やはりそこは今後の調査、まだ行う予定ですので、恐らく緊急回避的に在宅をやったりというようなところのときと、これから多分フェーズが変わってきて、法的にもきちんとした形で在宅勤務をやっていかなければいけないとか労働時間管理をしていかなければいけないということのフェーズに移ってきていると思いますので、新しい調査でもそこの辺りを答えられることができればというように思います。
 それから、皆さんにおっしゃっていただいた今後の時系列での変化、これについてもいろいろと調査していきますので、結果が出てきたら報告できる機会があればというように思っています。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 それでは、高見さん、どうぞ。
○高見副主任研究員 委員から多々貴重な御指摘をいただき、ありがとうございます。今後の調査への御指摘と理解しておりますが、今後のJILPTの調査においても、在宅勤務がそもそも緊急事態のときにどういうような形であったのか。つまり、佐藤委員がおっしゃったような、いわゆる自宅待機状態だったのか、本当に仕事をしていたのかとか、そういうような何で在宅したのか、何で戻ったのかというものについても調査をすることを考えております。あとは職場の特性とか上司のマネジメントとの関係とか、そういうものについても調査を計画しているところでございます。
 私からは以上でございます。
○樋口座長 ありがとうございます。
 なかなかこういう質問票の形式で答えを引き出せるかどうかというところもありまして、ヒアリング等を併用する形でそういったところはできればというように思っております。
 鶴さん、手を挙げてらっしゃいますか。
○鶴委員 すみません、これまでの議論にも関連で一言なのですけれども、在宅勤務の割合というか、最適なものというのは一体何だったのかなという。最適なものをどういうように考えるかという視点が重要だと思っていて、ある一定の条件が必要である。また、先ほど慣れるのに時間がかかるという話はアジャストメントコストの話ですね。そうなったときに最適なレベルは、コロナ前の状況でやはり最適なレベルはもう少し高くて、そこに行っていなかったなという認識は持っているのです。
 今後、もちろん、パーマネントショックなのか、それがテンポラリーなショックなのかということの違いを当然考える必要というのはあると思うのですけれども、業種によったり職種によって最適な比率というのは違うのですが、やってみたらできるという先ほど大竹先生もおっしゃった話というのは、要はもっと最適なものをコロナ前でも高くできるはずだったのにそこに至っていなかった。そこを今回、ある意味でそこに行けるという状況が一つ示されたということも私は大事な点なので、総合的に最適なものは何なのか、今はそこに対してどういう状況になるのか。そこに向かうためには一体何をやらなければいけないのかという全体的な整理というのは今後とも考えていく必要があると思いました。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 確かに職種とか業種によって在宅就労というかテレワークの可能性、どこまでできるのかというのは違っている可能性があると思います。その中で最大限どこまでできるのかというようなところというのも重要だろうと思います。JILPTのほうでも今、日本版O-NETの職種別の分類の中に数量という形で、それをどう入れていくか、調査はやろうとしているのですが、職種別にどこまで在宅就労ができるのか、できないのかというような数量化して可能性についてということで、これは山本先生のほうからもアドバイスを入れたりしているのですが、山本先生、何かありますか。手を挙げてらっしゃいますか。
○山本委員 ありがとうございます。
 まさに今のに関連したところなのですけれども、とても大事だと思います。最適値というのは、そういう意味ではマックスは在宅勤務可能性がどれぐらいあるかというところで、これを御案内のようにアメリカのO-NETを使って労働経済学ではコロナ直後からいろいろな研究がされていて、3割ぐらいが在宅勤務可能なのではないかというような数字が出されていて、日本でもそれぐらいの数字が試算されているということです。
 私もJILPTのデータを使って、そのうちのどれぐらいの割合が実際に在宅勤務できているかということを試算してみているのですけれども、通常期、コロナ前だと15%ぐらい。それが4月だと40%、5月だと五十数%というように確実に上がっていって、その後、また戻ってきているのですが、そういう意味では、そこがどこまで落ち着くかというところになるとは思うのですが、在宅勤務可能性というところに注目する。それから、在宅勤務可能性自体も、やはり仕事の中身を変えることによって、あるいはデジタル化を進めることによって変わってくると思うので、むしろ、そこを高めていくということも大事だというように思っています。
 それから、在宅勤務可能性という意味では、そのJILPTのデータを使ってコロナ前のときに、先ほども人材管理あるいは佐藤委員からもトップの判断、方針が大事ということが出ましたけれども、職場の人間関係がいいとか、きちんと人材マネジメントができていそうだというような特定化を行って、そういったような企業で働く労働者というのは在宅勤務可能性がほかの要因をコントロールしても高いというように出てきています。ですので、やはりこれまで佐藤先生が言われたように現場での方針とかによっても大分変わってくるのだというように思いますので、その辺りも報告書とかで提言されてもいいのかなというように思いました。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 ほかにどなたかいらっしゃいますでしょうか。
 黒澤先生、お願いします。
○黒澤委員 ありがとうございます。
 本当に勉強になりました。ありがとうございます。
 1点だけ、高見先生にJILPTの8枚目のスライドについてちょっとお伺いしたいのですけれども、このコロナ発生前の2つの曲線にあまり差がないというのは、これはどういうように解釈すればいいのかということをちょっとお伺いさせていただきたいのが一点です。それから、もう一つ、政策的にどういうようにするかということで、きっともう少し後で人材育成の話が出てくるとは思うのですが、今の一連のいろいろ御報告いただいた中で見てとれることとして、一つが企業規模間の格差と、もう一つは学歴というか、正社員、非正社員、もっと言えば低所得者とそれ以外の人々との格差が大きいということが見てとれます。
 つまり、今後のコロナの状況がどうなるかどうかということとは全く別に、今回、こういう調査を行うことで、そのような格差が存在することが明らかになったということです。その一つの要因としては、就いている職種とかそういうものがそもそも違うということはあるのですが、ITスキルの格差があるのではないか。そのボトムラインのITのスキルというものについては、今存在している公的職業訓練の枠組みよりももう少し簡単な形で取り組みやすいITスキルの付与する必要性というのが個人に対してあるのではないかと思います。他方で、企業間格差に対しては、中小企業に対する在職者訓練の枠組みの中でのITスキルのレベルアップ支援というものの必要性も、こういった情報を見ると明らかになったのではないかなと感じました。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。
 それでは、高見さんから、まず最初の御質問。
○高見副主任研究員 黒澤先生、ありがとうございます。
 今、御質問いただいたのは、JILPTのスライドの8ページ目の平均在宅勤務日数の推移というところで、在宅勤務適用時期が4月頭時点、緊急事態前から適用された層と緊急事態後に適用された層でコロナ発生前の日数があまり変わらないという御指摘だったと思います。まさにこれは面白いところでございまして、つまり、緊急事態前から適用された層では在宅勤務をそもそもやっていたから宣言が明けた後も定着している、というわけではなくて、やっている日数、平均数はあまり変わらないというのが発見です。
 何でこういうことが起こるかということですが、この「適用」というのは会社が適用しているわけです。JILPTは2014年にも在宅勤務、テレワークの調査を行いましたが、実際に勤務先以外、例えば自宅等でIT機器を用いてテレワークしていますかで「はい」と答えた人の中で、「それは在宅勤務制度、会社の制度に基づくものですか」というような質問をしたときに、たしか10%程度ぐらいしか制度に基づいていない。つまり、自己裁量とかでやっている方の割合が大半を占めていたという結果がありますので、このような0.83、0.89のような数値についても、会社の制度の適用によらずにしている割合がそれなりにいるということを示す数字だというように思っております。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。制度としてはなかったというのが実態だということだろうと思います。
 それでは、もう一つ、能力開発について、特にITスキル、デジタル人材の話が出ました。黒澤先生のほうから出されたかというように思います。特に公的能力開発の話とどういうようにその点、考えているのかというような御質問だろうと思いますが、これは能開のほうでお願いします。
○人材開発統括官参事官 人材開発統括官付総務担当参事官でございます。
 公的職業訓練におきまして、ITリテラシーを持った人材を幅広く育成していくということは大変重要であると考えております。先生御指摘のように離職者だけでなく在職者についても同様でございまして、現在、在職者に対しましてITリテラシーの訓練といたしまして、IT理解・活用力セミナーでございますとか、生産性向上支援訓練等を実施いたしているところでございます。引き続き、これらについて拡充等をしながら推進してまいりたいというように思っております。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございます。
○黒澤委員 ありがとうございます。
○樋口座長 離職者訓練とか在職者訓練というのは、在職者訓練というのは今の企業で役立つ能力開発を行っているというのが在職者なのですね。在職者の中で例えば転職を希望する人とかといった者に対する訓練というのは離職者訓練かな。どこに入ってくるか。
○人材開発統括官参事官 公的職業訓練の中での在職者訓練は、基本的には企業を通した訓練になります。転職を希望されている方に関しては、先ほど資料で御説明しました労働者の学び直し、教育訓練給付という制度を活用して学ばれている方が一定いらっしゃるという状況でございます。
○樋口座長 教育訓練は委託訓練。
○人材開発統括官参事官 雇用保険の教育訓練給付でございます。
○樋口座長 そちらですね。ということは、直接はやっていない。
○人材開発統括官参事官 そうですね。直接的にはやってございません。
○樋口座長 黒澤先生が一番よくこの分野、御存じなので。
○黒澤委員 いえ、そんなことはないですけれども、ただ、例えばイギリスとか、このコロナ禍のまさに4月にSkills Toolkitというのを始めています。時間的には1時間の短いものから75時間までのコースを、内容的にはデジタルスキルの本当に初歩的なところや、エンプロイアビリティーを高めるストレスマネジメントとかマインドセットとか、そうした今ですと大体七十を超えるオンラインのコースを無償で全ての人に提供するということを始めているわけですね。非常に手っ取り早く、1時間でも2時間でもいつでも自分の時間があるときにそれを受けてITスキルやエンプロイアビリティーをアップさせるということを手軽にできる国を挙げてのとり組みです。
 もちろん、今でもKhan AcademyやedXなどいろいろなすばらしいオンラインコースが、英語であればたくさんありますし、日本語でもユーチューブにいろいろアップされているわけですけれども、その辺のクオリティーコントロールを国としてきちんとやって、国民にシェアするという仕組みです。例えばそういうことをする可能性はないのでしょうか。
○樋口座長 いかがでしょうか。オンラインによるそういった能力開発支援みたいなものを国としてというか、厚労省として考えていらっしゃいますかということです。
○人材開発統括官参事官 今、オンライン訓練に関しましては、公共職業訓練の施設内訓練の学科の部分、あるいは民間教育訓練に委託します委託訓練の学科の部分において、このコロナを受けて始めているところでございますけれども、先生がおっしゃったイギリスの状況等も参考にしながら考えてまいりたいと思っております。
○樋口座長 ぜひ御検討ください。
 ほかにいかがでしょうか。
 玄田さん、顔がアップになってきましたが、いかがでしょうか。玄田さん、お願いします。
○玄田委員 事務局の準備された資料4との関係で高見さんと山本さんの発表を受けて感じたことをまず最初に申し上げると、やはり今回の研究会報告の中で「格差」という概念をもう一度、再検討しないといけないかなというのはまず大きな感想。もちろん、それがコロナによる一時的な格差だけではなくて、今回を契機に比較的うまくやっていける人たちとなかなかうまくいくことが難しい人たちの持続的な格差というものが起こり得るということは何となくお2人の報告を聞いていても感じます。
 では、具体的にどういうことかという幾つか思いついたのは3つぐらいあって、一つは、正規、非正規の間の格差の再燃というか、前回のリーマンショックのときにやはり派遣が今回のフリーランスと同様にすごく注目されて、その後、派遣法の改正という対応につながったわけですし、2010年代、同一労働同一賃金を含めて非正規の処遇格差に対して、ある一定程度、私たちは何となくやるべきことはやったというか、それなりのめどはついたのではないかというちょっと安心しかけたところに今回のコロナ感染が起こった。今回の山本さんの報告を見ても、やはり正規、非正規の間には決定的な違いなども明らかだし、高見さんの分で、もしあれを正規、非正規に分けたら当然かなり違いが出てくるでしょう。もっと言えば、労働力調査を見ていれば、今回、非正規に圧倒的なダメージがあって、正規雇用者というのは、このコロナの中で全然減っていないという驚くべきことがあって、だから、今までいろいろなことを2010年代まで正規、非正規の格差でやってきたのだけれども、もしかしたら政策的にまだ足りないところがあるのではないかということをもう一度見直すというのも一つですね。
 2つ目は、規模間格差の復活という印象がすごくあって、大竹さんや私が大学院生だった頃は、格差は男女間格差と規模間格差というのが何となく2大テーマであって、もともとの二重構造論とかを含めて規模間格差をどう考えていくかというのはすごく大きかった。だけれども、どちらかというと最近の規模間格差というものの中身のほうが大事ではないかというので、職種とか勤続年数とか学歴とかいろいろになってきているのだが、山本さんの最後の図表を見ていても、やはり規模という問題は無視できないのではないかなと。大企業は今、大変なのだけれども、全日空とか、あれはどちらかというと雇用政策というよりも金融政策というか、緊急的な資金融資をどううまくやっていくかというのが一義的に問題で、雇調金の拡充とか云々というのはむしろ付随的な問題で、大企業は今回はやっていけるときに、中小企業施策はこのままでいいのかという。
 雇用政策は見ているとやはりほとんどが中小企業施策で、中小企業はかなり対象にしてやっているのだけれども、それで今、足りているから何とか今の雇用調整になっている気もするし、持続的なことを考えると先ほどのオンライン対応の職業訓練とかいろいろ考えると、中小企業とか大企業という問題をどう考えるのか。
 やや乱暴なことを言うと、中小企業は底上げが大事なのだけれども、今は何となく社会の流れというのは底上げするために生産性の低い中小企業にはお引取りいただいて、残ったところが上がればいいのではないのという。ただし、それだけでいいのか。特に雇用政策というのは、そういう新陳代謝を促すだけの中小企業施策でいいのかというのはとても気になるので、規模という問題は考えなければいけないのではないかなというのが2つ目。
 3つ目は、やはり見えない格差。山本さんのところ、最後に出てきた。やはり規模とか男女間は属性由来の他に、属性では説明できないところがかなり残っていて、この正体をはっきりつかむというのがこの研究会でできるかどうか分からないけれども、ある程度、何となく見通しをつけるというのは社会的に求められている気がしていて、そういう意味では高見さんので一番関心があったのは、御自身はあまり説明されなかったが、17ページのフリーランスの状況なのです。
 フリーランスが非常に収入面でも大変だ、売上げ、大変だと7月でも大変だと書いてあるのだけれども、7月分の売上げを見ると実は35.9%は100%以上と書いてあって、実はフリーランスが全部駄目になっているわけではなくて、少数なのだが今回をきっかけにフリーランスでもうまくやっているところもある。案外この辺りの明暗を分けているものがどこにあるのか。やはりオンラインみたいなものをうまく活用したフリーランスに好機があるのか、場合によっては、それは大企業とかといろいろなネットワークを持っているフリーランスに危機対応力があるのか。
 極論をすれば「危機対応力格差」みたいなものが今回起こっているので、その危機対応力格差というもののある程度存在をつかんで、それに対する対応をどうするか。今月の労働研究雑誌の提言で佐藤さんが書かれているように、今こそ、危機対応力のための職業訓練が大事といったロジックになるかもしれないし、また別のも出てくるかもしれないから、もうやめますけれども、格差というキーワードはやはり大事になるのではないかなというように感じました。いろいろ重要な御報告をいただいて感謝申し上げます。
 私からは以上です。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 格差という古くて新しいと言うべきか、やはりアプローチしなければいけない課題ということで御指摘いただいたのが正規、非正規の問題あるいは規模間格差の中で特に中小企業の政策、支援、さらには見えない格差という形で危機対応力格差。これは新しい言葉ですか。以前からよく使われている言葉。危機対応力格差。
○玄田委員 知らない。
○樋口座長 知らないということで、新しい言葉だったらますます魅力的な言葉だなと思ったのですが、そういうところについても焦点を当てた提言をしていかなければいけないのではないかというような御指摘だろうと思います。
 これだけ非常に厳しい状況の中で現状、失業率がこの水準でまだ済んでいるというのは、これはある意味では驚異的なことだろうと思うのです。しかし、その状況というのが、これだけ厳しい状況が続いていくであろう中において持続できるのか。そして、その中においてまた格差の問題というのが持続できないとすると、かなり今までの一過性の景気対策としての雇用政策だけではなくて、やはり持続、続いていく中でじわりじわりと企業が厳しい状況に追いやられて、雇用保障しようと思っても企業が継続できないというような状況というのも生まれてくる。その一方で、新しい働き方という在宅の問題ということも含めて考えていかなければいけないということですが、宮本先生、何かございますでしょうか。
○宮本委員 すみません、1時間目、講義で御報告をちゃんと聞けなかった、ほとんど聞けなかったのですけれども、そういう意味で今日は聞いているだけにしようと思ったのですが、今、先生方とやり取りを聞いていると報告を聞いたような錯覚に陥っていまして、事前の資料を拝見するだけでも随分勉強になっていたことに加えて、いろいろ関心も芽生えてきてしまいまして、本筋からは離れる話だと思うのですが、一つ、これは山本先生よりもJILPTの高見さんに伺ったほうがいいのかもしれませんが、御報告の中では恐らく非常に難しい問題で扱いようがなかったというように思うのですが、前回の事務局からの報告で、各分野を通して所定外労働時間が前年同月比で大幅に減少している。3割以上減っているというお話がありました。
 これは、一つは山本先生のお話にあったように主観的で生産性が増大したという面もあると思うのですけれども、テレワークになったことでサービス残業が増えているのかもしれないなというところもあって、その辺り、何か相関をうかがわせるようなものというのはあったでしょうか。つまり、リモートワーク、テレワークへの移行と所定外労働時間の減少と、いわゆるサービス残業、残業代請求というのが果たして心理的にもどれぐらいできるのかという問題もあると思いますし、その辺りの相関をうかがわせるものが何かあれば御教示いただけないかというように思うのですけれども、いかがでしょうか。
○樋口座長 山本先生、いかがでしょうか。
○山本委員 慶應の特別調査では残念ながらサービス残業、手当のつかない残業時間を調査していないために、これは来年の1月まで待たないと状況がちょっと分かりにくいというところ。すみません、この調査では分かりません。
○樋口座長 高見さん、どうぞ。
○高見副主任研究員 宮本先生の御意見、非常に貴重なところを突いていらっしゃいまして、在宅勤務と労働時間の関係で、JILPTの調査でも労働時間はかなり減っている。JILPTの調査は所定内と所定外を区別しておらずに実労働時間という形で取っております。在宅勤務をしている人は労働時間が増えるのか減るのかというのは今、分析中でございますが、少なくとも増えるという傾向は今のところ見えておりません。若干減っているのか、あるいはあまり変わらないというのが今のところの見立てでございます。すみません、雑なお答えで恐縮です。
○樋口座長 ありがとうございます。
○宮本委員 無理な質問だったのですけれども、ありがとうございました。
○樋口座長 堀さん、どうでしょう。
○堀委員 どうもありがとうございます。
 在宅勤務につきましては、先生方の鋭い御指摘がありましたので、私からは事務局の今回の力作であります雇調金のことについてちょっと教えていただけないかと考えております。
 今回はサンプル調査ということで基本的なことを整理していただいているのですけれども、現状、雇調金がどのような形で役立っているのかということを検討できるような形の分析というのは可能なのかということを教えていただきたいと思います。例えば雇調金があることで一時的に何とかしのいで、その後、経営状態がよくなるというような役割があるのか、あるいは雇調金を受けて、その後、経営状態がどうなっていくのかというようなパネル的にではないですけれども、その個別企業の状況みたいなものをキャッチアップしていけるような、そうした形式になっているのかどうかについて教えていただけないでしょうか。
○樋口座長 それでは、事務局、お願いします。
 先ほどの説明で、今回、調査した結果を時間の関係でスキップなさっていたところもありますので、もしあれだったらそれも併せて説明していただくといいかと思いますが、いかがでしょうか。
○雇用政策課長 雇用政策課長の溝口でございます。
 今、座長の御指示もございましたので、資料5のほうで雇用調整助成金の資料をつけております。26ページ以降でございます。
 27ページが、今回のコロナ禍での特例措置の概要を述べておりまして、28、29ページが、雇用調整助成金は休業が非常によく使われているのですけれども、それ以外の出向ですとか教育訓練というメニューもございますという紹介でございます。
 30ページ以降が、今、お話があったサンプル調査でございまして、サンプル数が6万件弱ということで、全体が170万件ぐらいあるので非常に少ない数での調査ということで御理解いただきたいと思います。
 この調査結果は、31ページ以降に産業別でその支給決定件数の多い順を並べてみたりとか、あと緊急雇用安定助成金ということで雇用調整助成金の対象にならない雇用保険被保険者でない方を対象とした助成金についても同じように産業別で32ページで記載しておりますが、同じような傾向が見られるということでございます。
 33ページが、それを同一産業内で事業所がどれぐらい利用されているのかというのを推計してみたものでございまして、これを御覧いただくと、「宿泊業、飲食サービス業」を見ますと、56.8%程度が利用されているという推計が分かるということでございます。
 34ページが、それを雇用者ベースで見ようということで、今回のサンプル調査で支給対象労働者数という数字が取れませんでしたので、休業等支給日数延べ人日で推計をしておるわけですけれども、この休業等支給日数延べ人日を平均雇用者数で割ってみると10.59というのが「生活関連サービス業、娯楽業」ということで、これは10.59日休業しているというわけではなくて、割合としてこの産業が高いということをお示ししているということでございます。
 先生御指摘の一時的にしのいでいる効果があるとか、パネル的に個別企業で状況が分かるのかというお話ですけれども、このサンプル調査というもの自体は、パネルはなくサンプル数の抽出自体もそれほど正確ではないので、あくまでも御参考というもので御理解をいただきたいと思います。
 一時的にしのいでいるかどうかということについては、業界に対するヒアリングなども行っておりまして、その中では、やはり雇調金があることで経済活動が継続できている、事業活動が継続できているという声はいただいております。
 一方で、それが個別企業ごとに見られるかということでございますけれども、雇調金の支給データがそこまで今まだ整備されておりませんのと、それをやろうとすると多分雇用保険被保険者番号とか適用事業所の番号を追いかけていって支給状況を見ていくということになろうかと思うので、今のところでは、そういうことはできていないという状況でございます。
 以上です。
○堀委員 ありがとうございました。
○樋口座長 ありがとうございました。
 ほかに黒田先生、お願いします。
○黒田委員 黒田です。ありがとうございます。
 まず、高見さんと山本委員はありがとうございました。パネル調査といえば年に1回というのが定番ですけれども、短いインターバルで調査を行っていてとても画期的で勉強になりました。
 山本委員の分析で、こんなことが追加で見えてきたらとてもありがたいと思った点を一つだけ、コメントさせていただきます。男女格差についてブラインダー・ワハカ分解をやっていただいた23ページのところが非常に興味深いすばらしい知見が出ていると思いました。説明できないところがまだかなり残っているという濃いブルーの部分ところです。この部分が何なのかを特定化していくということが政策として今後どこに支援すべきかということにつながっていくので、大変重要かと思います。
 第1回のこの研究会でもリーマンショックのときには相対的には男性で、今回は相対的にどうも女性のほうに強く影響が出ているというところが議論にでていました。今回の分析では、この差が何なのかということを示していただいたわけなのですけれども、特定化できなかった部分にはいろいろなものが恐らく混在しているように思っています。例えば雇用不安も入っていると思うのですが、感染不安とか、あとは学校が休校になったことで育児もやらなければいけない、家事もやらなければいけないというような時間制約とか、そういったものを幾つかコントロールしていくと、この濃いブルーの説明できない部分がどれくらい減っていくのかがわかると、政策提言につながっていくのではないかと思います。
 例えば在宅勤務の有無とか家族構成とか、夫婦間で家事や育児をどちらがより多くやっているかとか、そういったことを見ていくのと同時に、今後の継続調査でも男女間の差がどのように変化していくかいうところが観察できるようでしたらぜひ紹介していただければありがたいと思いました。
 それから、今回は盛りだくさんだったので、事務局がせっかく用意してくださった資料にあまり時間を割けない現状になってしまいましたので、1点だけ、資料5の事務局が作ってくださった雇用的自営の部分にちょっとだけ意見を述べさせてください。
 こちらは第1回に出た雇用類似が増えているかどうかを受けて作っていただいたものだと思うのですけれども、今回御用意いただいたのは労働力調査のデータで、これは定義によると「月末1週間、仕事をした人で、なおかつ2つ以上した人はより時間が長かったほうを答える」というような調査になっていたかと思います。なので、単発で働くとか、本業はほかにあるけれどもという人はなかなかこの調査で追うことができないという状況かと思いますが、いわゆるギグワーカーがコロナ禍で急速に増えているということをこの研究会で把握しておく必要はないのかという点が少し気になりました。
 現在の公的統計ではなかなか把握できないことが労働市場で起きている可能性を、何らかの方法で確認しておく必要があるのかなと。そういう意味で公的統計では難しいかもしれないのですけれども、民間の調査とかでも構わないので、何らかの資料で捕捉できるといいのではないかと思いました。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 事務局で何か今のにありますか。
○雇用政策課長 雇用政策課長、溝口でございます。
 先生御指摘のとおり、今回お示しした雇用的自営の範囲は副業とかは入らないということでございますので、民間調査のほうで数字があるかどうかというのは調べてまた御回答したいと思います。
 以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。
 確かに副業・兼業の話というのがなかなか議論に上ってこなかったかというように思いますが、果たして所得が減って企業でも大分副業あるいは兼業を認めるといった変化が起こっているように見えるのですが、それがどうなっているかというところも含めて調べましょうということだと思います。
 では、神吉さん、どうぞ。
○神吉委員 大変すばらしい調査、ありがとうございました。本当に盛りだくさんなのですけれども、1点だけコメントしたいと思います。
 今、黒田先生から1点目に指摘されたことと重なる、男女間格差です。玄田先生も格差の要因分析をしっかりする必要があるのではないかとおっしゃっていたのですが、私も特にこの男女間格差で慶應の山本先生の調査で、山本先生も言及されていた生活時間への影響のところを興味深く拝見しました。
 指摘されていたとおり、労働時間の減少は男性、大卒、正規が多いにもかかわらず、そちらの生活時間への影響というのはあまり大きくはなく、むしろ女性のほうが生活時間への影響が大きく出ているというところがちょっと残念な気がしました。特に、生活時間の男女間格差が先進国の中で日本はかなり大きいというのはずっと前から指摘されているところです。コロナの影響があると是正の方向に動くのかなと若干期待していたのですけれども、そうではないのだなと一つ残念に思ったところです。
 そういった面から男女間格差を改めて見ていきますと、生活時間、特に家事・育児時間の意味です。これは余暇ではなくて立派な労働時間、無償の労働時間であると考えますと、女性の時間の配分を見たときに全体的に有償労働の部分は減っている一方で、無償労働の部分は増えている。すなわち、全労働の中での無償の、評価されない部分の負担が大きくなっているということではないか。ダブルシフトの中での無償割合が高まり、一方で、収入は減少しているのと併せて考えると、それはメンタルヘルスも悪化するでしょう。軽々に因果関係とはいいませんけれども、つながっていくのかなと思います。
 それから、休職希望や転職希望の属性以外の違いの寄与度の高さも、恐らく限られた時間を家事育児時間に回すために有償労働のほうの調整が必要となる側面もあると考えています。
 そういった問題に対して、政策としてどう具体化するかを考えていったときに、何が格差の原因なのかを追求していくのはもちろんですが、それが分かったとして、それをどう是正するかは、もしかするともう一段階あるのかなと思います。男女間の生活時間と労働時間の配分の格差が、社会的な規範意識の中で、家事育児は女性がやるべきという性別役割分業観から来ているのだとすると、こういった格差が起きるのもしようがないというか、むしろ、そうあるべきだとして終わってしまいかねない。つまり、女性は有償労働をセーブして無償労働に振り向けるべきなのだと、女性労働者自身もそう思って動いている部分があるかもしれません。ですので、男女間格差がまずは存在している。その要因が分かったとしても、それを是正すべき政策課題だと捉えているのかということ自体が、これから問われるのではないかと考えています。
 私からは以上です。
○樋口座長 どうもありがとうございました。
 我々、例えば雇用の視点からということで見ると、テレワークをしている人の家事時間はどうなっているかとかということになりがちなのですが、それだけではなくて、夫がテレワークをしている場合、妻の家事時間とか、夫自身の家事時間、育児時間というのがどうなっているかというようなこと。それと関連して、どこまで雇用政策として考えていくべきなのか。要は、もし家事時間、育児時間というのがテレワークをやっても変わっていない、通勤時間が短くなっているだけで家にいる時間は長くなっているわけですが、それに伴ってほかのところにあまり変わりがないとするならば、それに対してどういうように言及するべきなのか、あるいは政策としてどう考えていくのかというような非常に難しいところだと思いますが、そこについても多分皆さん、御意見を持っているというように思いますので、今後、議論していきたいというように思います。
 男女共同参画といった視点から見ていくというのもあるでしょうし、今、神吉さんのところも最後のところはいろいろな考え方がありますねというところの御指摘にとどまっていたかと思いますが、その点についても今後、皆さんの御意見をいただいていきたいというように思いますが、今日の段階で何か追加的にございましたら手を挙げていただくとありがたいのですが、よろしいですか。なければそろそろ。
大竹先生、では、お願いします。
○大竹委員 すみません、1点だけ。
 正規、非正規あるいは男女間格差の話なのですが、在宅勤務が広がって働き方が柔軟になったら、今まで非正規でしか働けなかった人が正規として働けるようになるということも考えられますので、今回の在宅勤務の普及によって、長期的に見ると、性別役割分担意識がそんなにすぐ変わらなかったとしても、正社員として働ける人たちが増えてくるという可能性はあるので、そういう明るい面も強調してもいいかもしれないとは思いました。
○樋口座長 ありがとうございました。
 ほかにいかがでしょうか。よろしければ、そろそろ時間が来ておりますので、本日の議論はと。ごめんなさい、荒木先生、どうぞ。
○荒木委員 すみません、もう時間なのにあれですけれども、正規、非正規の話をする場合、今回、非正規で非常に収入減少が著しいというのは、要するに非正規の方々が時給制労働者であったり日給月給制ということで、労働時間の減少が即、収入に直結しているからなのですね。ところが、非正規は時給でなければいけないとか、時間比例で賃金を払わなければいけないということは法制度的には何も決まっていないわけです。なので、正規、非正規の問題と一足飛びに行く前に、賃金の支払い形態がどうなっているかという、もう一つクッションがあるということは踏まえて議論したほうがいいのではという点が気になりました。
 以上です。
○樋口座長 分かりました。たしかJHPSで時間給とか給与の支払い方法とか、それと正規、非正規あるいは呼称によるものとかいろいろ分けて取っているので、そこのところというのは一足飛びに行かないで段階的にちょっと見たらどうかということだろうと思いますので、JILPTのほうでも、たしかそういうところというのは調査していると思いますので、調べてまた資料を提供したいというように思います。
 ほかにございますか。よろしいですか。よろしければ、本日の議論はここまでとしたいと思います。
各委員から出されました御意見について、今後、整理させていただきたいと思いますが、次回の日程等について事務局から連絡をお願いします。
○雇用政策課長補佐 次回、第3回雇用政策研究会につきましては、11月27日の14時からの開催を予定しております。後日、改めて御案内を送らせていただきますが、どうぞよろしくお願いいたします。
○樋口座長 本日はどうもありがとうございました。特に山本先生、高見先生、ありがとうございました。
 では、以上で終わります。

 

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