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2020年10月23日 第1回雇用政策研究会(議事録)

職業安定局雇用政策課

○日時

令和2年10月23日(金) 1400 16:00

 

○場所

中央労働委員会講堂(労働委員会会館7階)

○出席者

委員

樋口座長、荒木委員、神吉委員、神林委員、黒澤委員、黒田委員、佐藤委員、清家委員、鶴委員、堀委員、宮本委員

田中職業安定局長、志村大臣官房審議官(職業安定担当)、達谷窟高齢・障害者雇用開発審議官、蒔苗職業安定局総務課長、石垣労働基準局総務課長、田中雇用環境・均等局総務課長、河野人材開発統括官参事官(人材開発総務担当)、高松政策統括官付政策統括室労働経済調査官、溝口職業安定局雇用政策課長、戸田職業安定局雇用政策課長補佐

○議題

 アフターコロナを見据えた雇用政策の方向性について(論点整理)

○議事

  

○雇用政策課長補佐 定刻になりましたので始めさせていただきます。ただいまより「令和2年度第1回雇用政策研究会」を開催いたします。委員の皆様におかれましては、御多忙の中お集まりいただきまして誠にありがとうございます。
 研究会の委員については、資料1の名簿のとおり、15名の先生にお願いをしており、研究会の座長は樋口委員にお願いをしております。本日は阿部委員、大竹委員、玄田委員、山本委員が御欠席されています。また、清家委員は14時45分を目途に、荒木委員は14時50分を目途に、途中で御退室される予定となっております。
 それでは、雇用政策研究会の開催に当たって、まずは田中職業安定局長から御挨拶申し上げます。
○職業安定局長 職業安定局長の田中でございます。委員の先生方におかれましては、大変御多忙のところ、お集まりいただきましてありがとうございます。また、樋口先生におかれましては、引き続き当研究会の座長をお引き受けいただき、重ねて感謝申し上げます。
 この雇用政策研究会は、大変長い歴史と伝統のある研究会でありまして、前身となった研究会も含めますと、昭和40年代から開催されております。今のような形になったのは昭和59年に梅村又次先生が座長として発足してからと聞いております。本研究会の委員の先生方におかれましては、専門的な立場からの御知見に基づきまして、行政に対する多くの御助言を頂いてきており、労働市場の構造変化等に対応した的確な雇用政策の推進に、多大なる御貢献を頂いてまいりました。
 直近では、昨年の令和元年7月に、「人口減少・社会構造変化の中で、ウェル・ビーイングの向上と生産性向上の好循環、多様な活躍に向けて」と題した報告書を取りまとめていただき、行政としても、その方向性に沿った取組を進めているところです。
 他方で今年初めから、新型コロナウイルス感染症が拡大し、社会経済活動も大きく変動をしております。それに伴いまして、雇用・失業情勢や、人々への働き方にも大きな影響を及ぼしております。感染拡大防止と社会経済活動の両立を図る「新しい日常」なども提起される中、昨年度に取りまとめていただきました報告書についても、新型コロナを受けて取組を加速させるべき点や、取組を推進するに当たって、より一層注意を要する点などが様々あるように思います。このような観点から改めて、アフターコロナを見据えた雇用政策の方向性について、御議論を頂きたいと考えており、今般、雇用政策研究会を開催することとさせていただいた次第です。
 スケジュール感といたしましては、年内に一度御議論を取りまとめさせていただきたいと考えておりまして、是非とも活発な御議論をお願いできればと存じます。何卒よろしくお願いいたします。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございました。続きまして、樋口座長から御挨拶を頂ければと存じます。
○樋口座長 皆様こんにちは。雇用政策研究会は、田中局長からお話のありましたように、昨年の令和元年7月に「人口減少・社会構造の変化の中で、ウェル・ビーイングの向上と生産性向上の好循環、多様な活躍に向けて」と題しました報告を出したところでございます。ところが、足下で大変な状況になっておりまして、新型コロナウイルス感染症の拡大、そしてそれによる社会経済活動の変化を通じまして、雇用・失業情勢、働き方に大きな影響が現われていると認識しております。当研究会は、通例ですと、2、3年間を置きまして、その間に起こったことについて、いろいろと見通しを議論していくというようなことでした。ところが、このような状況、コロナ禍において大変な状況になっているということで、例えば、パート・アルバイトを中心とした非正規雇用労働者の、特に女性や学生の雇用に大きな影響が生じていること、さらにはテレワーク等のIT技術を活用した働き方が急激に進展していること、休業の長期化など、経済活動の停滞による労働者の生産性やモチベーションの低下、そして労働移動をめぐるミスマッチやマッチング機能のデジタル化などの様々な面で課題がみえてきている部分でもございまして、今後の雇用政策のあり方、方向性につきまして議論をしていく必要があると考えております。
 新型コロナウイルスの感染状況が、今後の雇用・失業情勢の動向がどうなっていくのかといった点との兼合いもありますが、スケジュール感としましては、まずは年内を目途に御議論を頂き、そして一度取りまとめをしていきたいと考えております。また、その後、まさに多くの議題が山積されているところですので、この会も続けていければと考えておりますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。以上です。
○雇用政策課長補佐 ありがとうございました。それでは議事に入る前に、本日はズームによるオンライン会議ということで、改めて簡単に操作方法について御説明させていただきます。現在、皆様の画面には、我々事務局の映像、及び、各委員の皆様が映っているかと思いますが、まずは、画面左下のマイクのアイコンがオフになっていることを御確認ください。本日、研究会の進行中は、事務局の方で、委員の皆様のマイクをオフとさせていただきますが、御発言をされる際には、画面下の「参加者」のボタンをクリックしていただき、その後に表示されるポップアップ画面の右下の「手を挙げる」のボタンをクリックしていただければと思います。その後、樋口座長の許可があった後に、御自身でマイクをオンにしていただいてから御発言をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。なお、会議の進行中、通信トラブルで接続が途切れてしまった場合や、音声が聞こえなくなってしまった場合など、何かトラブルがございましたら、事前にメールでお送りしております電話番号か、チャット機能で御連絡いただきますよう、よろしくお願い申し上げます。オンライン会議に係る説明については以上となります。
 続きまして、議事に入らせていただきます。今後の議事進行につきましては、樋口座長にお願い申し上げます。
○樋口座長 それでは早速ですが、資料2の開催要領及び資料3の議事の公開につきまして、事務局から説明をお願いいたします。
○雇用政策課長補佐 まずは資料2の「雇用政策研究会開催要領」について御説明いたします。
 1.の「目的」ですが、効果的な雇用政策の実施に資するよう、現状分析を行うとともに、雇用政策のあり方を検討するということになっておりますので、委員の皆様におかれましては、よろしくお願い申し上げます。
 また、3.の「構成」ですが、本研究会は職業安定局長が学識経験者の参集を求めて開催するものであり、今回は15名の委員の方に御参集を頂いております。
 さらに5.の「その他」ですが、本研究会の庶務は、職業安定局雇用政策課で行うことといたします。
 続きまして、資料3「議事の公開」について御説明いたします。本研究会につきましては、原則公開とさせていただきます。ただし、資料の[1]から[4]に該当する場合であって、座長が公開しないことが妥当であると判断した場合には、非公開とすることができることといたします。資料2、資料3の説明につきましては、以上となります。
○樋口座長 ただいまの説明につきまして、御質問、御意見がございましたら、手を挙げるボタンをクリックしていただき、私が指名した後、お名前を名乗ってから御発言をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。
よろしいでしょうか。御意見がないようですので、それではただいまの資料のとおりの取扱いとさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。
 続きまして、今回の研究会で議論を行う論点や、今後の進め方、関連する資料について、事務局から説明をお願いいたします。
○雇用政策課長 雇用政策課長の溝口でございます。よろしくお願いいたします。資料4です。1ページ左側に開催趣旨があります。先ほど座長からも御説明いただいたとおりで、年内を目途に、アフターコロナを見据えた雇用政策の方向性について、確認をお願いしたいと考えております。
 その下、○の3つ目ですが、本研究会は通常ですと、労働力需給推計を改訂してきているところではありますが、今回につきましては新型コロナウイルス感染症の影響がまだ継続、変化しているということで、まずは足下の雇用・失業情勢や働き方等の変化について、把握可能な情報を基に分析をして御議論いただくということで、新たな需給推計は当面は実施しないということとさせていただければと思っております。
 右側です。「構造的な課題」と、「新型コロナウイルス感染症による影響」です。前回の報告書で挙げられたとおり、構造的な課題を我が国の経済社会は有しておりますので、今後も引き続き課題の解決に向けて取り組む必要があります。
 続きまして○の2つ目、一方、これらの課題について、新型コロナウイルス感染症が経済社会に及ぼしている影響により、取組の加速又は停滞などの変化が生じているか否かについて検討する必要があるということで、その際、一時的な経済ショックの面と、不可逆的な面があることを念頭に置く必要があると考えております。
 2枚目、具体的な論点ですが、課題を大きく2つに分類をしております。1つ目が働き方の変化に関する課題です。[1]ですが、今回、完全失業率の上昇は緩やかですが、休業者の大幅な増加や労働時間の調整が進んでおりまして、賃金も減少している。パート・アルバイトを中心とした非正規雇用、女性に大きな影響が生じているところです。また一部は非労働力化しているというところもあります。そういったことで、点線の四角で囲ってありますとおり、非正規雇用、女性等の課題ということと、現下の副業・兼業等の課題を挙げさせていただいております。
 [2]ですが、感染拡大防止と社会経済活動の両立のために、テレワーク等IT技術を活用した非対面・非接触型の働き方が急速に拡大しています。そういった観点の課題を下の四角に掲げさせていただいています。
大きな2つ目ですが、労働市場の需給調整機能等に関する課題ということです。[1]としては、営業時間の短縮、外出を控える動きなど、急激な需要減退を生じる動きがあり、そういったところにつきましては、雇用過剰感が急速に高まったところです。しかし、感染拡大前に、人手不足感が非常に高い状況であったこともあり、今後必要な人材を確保するために、雇調金等も活用しながら、企業は労働時間調整や休業を通じて、雇用を可能な限り維持しようとする動きが見られているところです。そういったことから、課題として労働力の未活用に関する課題、休業の長期化による労働者の生産性の低下に関する課題を2つ掲げさせていただいております。
 [2]ですが、そういった需要減少につきましては、感染症の拡大が収まれば一定の回復が見込まれるとは思われますが、全ては感染症をピークとして、感染症拡大前からの構造的な課題が顕在化・加速化している可能性があります。また、足下、新型コロナウイルス感染症の影響で求職者、求人者のニーズも変化しているといったこともあります。そういったことから、労働移動等に関する課題として、能力開発等を入れておりますし、右側のほうでマッチング機能等の課題を掲げさせていただいている中で、デジタル化といったものも触れています。資料4の説明は以上です。
 続いて資料5の説明をさせていただきます。
○雇用政策課長補佐 雇用政策課課長補佐の戸田と申します。よろしくお願いいたします。続きまして、資料5について御説明いたします。先程、資料4で御説明申し上げた課題に関連して、足下の雇用・失業情勢や働き方等の変化に関するデータについて、幅広く集めております。全部で83ページあり、2ページに目次がありますが、大きく5つのセクションに分かれております。分量が多いので、かなりの駆け足でポイントを絞った説明になりますが、御容赦いただければと存じます。
まず、足下の雇用・失業情勢です。4ページですが、直近8月の有効求人倍率は1.04倍となっており、低下傾向にあります。また、直近8月の完全失業率は3.0%となっており、上昇傾向にあります。
 5ページですが、民間エコノミストの将来予測によれば、完全失業率は、2021年の第Ⅰ四半期をピークとして、今後高まっていくことが予想されております。
 6ページですが、直近8月の有効求人数は2か月連続の増加となった一方で、有効求職者数の増加が続いているため、有効求人倍率が低下していることが分かります。
 7ページですが、新規求人数に持ち直しの兆しがある一方で、新規求職者数の減少が続いており、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止の観点から、求職活動を控える動きがみられます。
 8ページですが、新規求人数を業種別にみると、多くの業種で前年と比較しマイナスが続いており、上の表の右側の赤枠部分、特に「宿泊業,飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」では、直近8月が4割を越えるマイナス幅となっております。
 9ページですが、就業地別・都道府県別に有効求人倍率をみると、黄色の部分で直近8月は13都府県において、1倍を下回る水準となっております。
 10ページですが、就業地別に新規求人数をみると、赤枠で囲った地域において、相対的に大きな増加幅となっております。
 11ページですが、左がリーマンショック時、右が足下の数字になっており、黄色の部分ですが、前職を事業主都合で離職された新規求職者数は、直近8月が前年同月比で42.1%の増加となっており、前年と比較しプラスが続いていることに留意が必要であるものの、その増加幅は2か月連続で縮小しております。
 12ページですが、都道府県別に新規求職者数をみると、青枠で囲った地域におきまして、相対的に大きな減少幅となっております。
 13ページは、8月の労働力調査の概況を整理しております。資料の左から3列目の上段部分ですが、就業者数が前月より11万人増加した一方で、完全失業者数が前月より9万人増加した結果、8月の完全失業率は、前月より0.1ポイント上昇いたしました。また、資料の右から2列目の上段ですが、雇用者数全体が前月より13万人増加となったものの、その右側にある雇用形態別の内訳として非正規雇用労働者の前年同月差をみますと、8月は120万人の減少となっており、大きな減少幅となっております。
 14ページは、参考として、同様に7月の労働力調査の概況を整理しております。
 15ページも、参考として、雇用統計の一部を時系列データとして整理しております。
 16ページ、17ページは産業別、雇用形態別の雇用者数を整理しており、17ページを御覧ください。非正規雇用労働者は、右側の青枠部分で「飲食店」「生活関連サービス業,娯楽業」「医療業」「サービス業」などにおいて、減少がみられます。他方、正規雇用労働者は、赤枠部分で、左側中段の「情報通信業」、右側下部の「医療業」等において増加がみられます。
 18ページは、参考として、2019年度の産業別にみた非正規雇用労働者の割合について整理しております。
 19ページですが、雇用形態別・性別にみると、図の中ほどですが、女性のパート・アルバイトにおいて、大きな減少がみられる状況となっております。
 20ページですが、雇用形態別・年齢別にみますと、パート・アルバイトでは、特に15歳から34歳、35歳から54歳において、大きな減少幅が続いております。
 21ページですが、休業者数の前年同月差の動向をみますと、図の右上部分になりますが、増加幅の縮小が続いており、平常時に近い状況まで戻っております。ただし、労働力調査の休業者には、例えば、月末1週間は仕事をしていたものの、それ以外の期間において休業されていた方などは含まれないことから、解釈には一定の留意が必要だと考えております。
 22ページですが、産業別に休業者をみますと、赤枠で囲った産業において、大きな増加が生じた4月以降、その増加幅の縮小が大きくなっております。
 23ページですが、2か月目の調査世帯のみを対象とした集計結果により、前月に休業者であった方の翌月の就業状態を整理しております。これまで多くの方が仕事に戻っており、完全失業者となった方は、約2%から4%にとどまっております。
 24ページですが、2か月目の調査世帯のみを対象とした集計結果により、当月に完全失業者であった方の前月の就業状態を整理しています。一番左の赤枠ですが、2か月連続で完全失業者である方が、8月は前年差で43万人増加となっており、その増加幅が拡大したことに注意が必要だと考えております。
 25ページですが、世帯主との続柄別に完全失業者をみますと、足下では2人以上世帯のうち子どもがメインになりますが、その他の家族、それと世帯主の配偶者が増加傾向にあります。なお、図の左側のリーマンショック後には、世帯主である完全失業者の増加が顕著であったことが分かります。
 26ページからは、女性の雇用に着目しながら御説明いたします。
 27ページですが、足下では男女ともに完全失業率が上昇傾向にあります。なお、図の左側のリーマンショック後をみますと、あくまでも「相対的には」ということではありますが、男性への影響が強かったことが分かります。
 28ページ、29ページは、8月の労働力調査の概況を男女別に整理しております。
 30ページですが、性別でみた雇用者数の動向を整理しており、2020年3月と8月を比較しますと、男性は53万人の減少、女性は63万人の減少となっており、相対的に女性への影響が大きい状況にあります。なお、図の左側のリーマンショック後をみますと、男性雇用者への影響が強かったことが分かります。
 31ページは、参考として、2019年度の産業別にみた女性雇用者の割合について整理しております。
 32ページですが、産業別、男女別で雇用者数の動向を整理しており、女性の雇用につきましては、「製造業の一部の業種」、左下の「小売業」、右側の「宿泊業」、「飲食店」、「生活関連サービス業,娯楽業」などにおいて、前年差のマイナスが続いています。
 33ページですが、探している仕事の主従別で完全失業者の動向を整理しており、右側が女性となっておりますが、足下では15歳から34歳の若年世代において、主にしていく仕事を探している完全失業者の方が増加しております。
 34ページですが、母子世帯の世帯主の方の就業状況を整理しております。完全失業者が大きく増加している状況にはないものの、直近8月は雇用者数が減少し、非労働力人口の減少幅が縮小しており、一部が非労働力人口化していることも考えられることから、引き続き注視が必要だと考えております。
 35ページですが、女性の非労働力人口が4月に急増し、その後減少傾向にあるものの、引き続き非労働力人口化した状態が続いていることが分かります。
 36ページからは、若者の雇用に着目しながら御説明いたします。
 37ページですが、右側の表にあります2021年度の新卒者の採用計画をみますと、6月調査時点での計画ということに留意が必要ですが、全産業で前年度比5.6%の減少が見込まれております。
 38ページですが、15歳から21歳の従業者、メインは学生の方だと思われますが、通学の傍らに仕事をしていた従業者が、足下では大きな減少が続いております。
 39ページからは、労働時間と賃金の動向について御説明いたします。
 40ページですが、出勤日数あたりの総実労働時間の前年同月差につきまして、要因分解をしております。足下では、緑の「一般労働者の所定外労働時間」と、赤の「パート労働者の総実労働時間」のマイナス寄与が続いています。
 41ページ、42ページは、産業別に一般労働者の所定外労働時間と、パート労働者の所定内労働時間を整理しております。多くの業種では、5月を底として、前年同月比の減少幅が縮小しています。しかしながら、特に「製造業」「宿泊業」「飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」では、大きな減少幅が続いています。
 43ページ、44ページは、産業別に一般労働者とパート労働者の出勤日数を整理しております。
 45ページから48ページでは、労働時間とも連動しますが、賃金の動向に関して整理しています。足下では、一般労働者の所定外給与や賞与などを含む特別給与のマイナス寄与が続いていることが分かります。
 49ページから55ページは、企業活動や企業の雇用人員判断の動向について整理しております。時間の関係もありますので、説明は割愛させていただきます。
 56ページに飛んでいただきまして、テレワークの関係について御説明いたします。
 57ページは、コロナ前の2019年の状況となりますが、企業におけるテレワークの導入状況を整理しております。左上図ですが、テレワークを導入している企業割合は上昇傾向にあり、今後導入予定である企業も含めますと、2019年は29.5%となっております。テレワークを導入している企業割合につきましては、右上図ですが、大企業ほど高いといった特徴、左下図ですが、「情報通信業」「金融,保険業」で高いといった特徴、右下図ですが、「南関東」「近畿」「四国」で高いといった特徴がみられます。
 58ページは、2019年度の状況ですが、テレワークの実施状況を整理しています。左上図ですが、テレワーク制度等が導入されていると回答した雇用型テレワーカーの割合は、令和元年度は9.8%となっております。雇用型テレワーカ―の割合につきましては、右上図ですが、女性に比べ、男性の割合が高く、男女ともに加齢に伴い割合が低下するといった特徴、左下図ですが、赤枠の「情報通信業」「学術研究,専門技術サービス業」で割合が高く、青枠の対人サービス業で割合が低いといった特徴がございます。右下図ですが、地方圏に比べて、「首都圏」「近畿圏」「中京圏」で割合が高いといった状況もみられます。
 59ページからは、民間調査を活用し、緊急事態宣言前後のテレワークの状況を整理しております。左側ですが、緊急事態宣言発令後、正社員のテレワーク実施率は上昇し、解除後はやや低下していることが分かります。右側ですが、新型コロナウイルス感染症の収束後もテレワークを希望する割合は64.9%となっており、年代、性別でみますと、若年層と女性で高い状況にあります。
 60ページは、職種別・産業別にテレワークの実施状況を整理しております。左側の職種をみますと、特に赤枠にあります職種では、テレワークの実施率が高くなっています。他方、下位の5種ということではありますが、青枠にあります職種では、テレワークの実施率が低い水準となっております。
 61ページ、62ページは、テレワークの課題について整理しており、4月と5月を比較しますと、テレワークの慣れによって不安が解消している部分がある一方で、若者を中心として社内の評価、キャリアへの不安が高まっている可能性が示唆されます。
 63ページからは、副業・兼業について御説明いたします。
 64ページですが、今回データを整理した調査の概要について整理しております。
 65ページですが、副業されている方の特徴について整理しております。
 66ページ、67ページは、副業される理由について「本業の業種別」「1か月あたりの本業・副業を含めた総実労働時間別」に整理をしています。両ページにおける黄色部分ですが、金銭的な理由を選択する割合につきまして、業種でみれば、「宿泊業,飲食サービス業」「生活関連サービス業,娯楽業」が高く、1か月あたりの本業・副業を含めた総実労働時間でみれば、相対的に労働時間の長い区分において高い状況にあります。足下では、新型コロナウイルス感染症の影響により賃金が減少しているため、金銭的な理由で副業を望まれる方が増えてきているといった情報もあり、過重労働にならないよう、より一層注意が必要だと考えております。
 68ページですが、労働時間が長い方のほうが、相対的に強い不安、悩み、ストレスがあると回答された方の割合が多くなっていることが分かります。
 69ページからは、転職等をめぐる概況について御説明いたします。
 70ページから72ページは、労働力調査における転職者の動向について、性別、年齢別、雇用形態別に特徴を整理しております。
 73ページに飛んでいただきまして、転職者の産業間の動きについて、2020年第Ⅰ四半期と第Ⅱ四半期の前年同月差の変化を比較することで、その特徴を整理しております。左側が現職の産業、上が前職の産業となっており、右下の赤字部分ですが、黄色のセルが前年差の減少幅の拡大等が大きいもので、ピンクのセルが前年差の増加幅の拡大等が大きいものとなっております。特徴としては、右下へ向かう斜めのラインで黄色が多くなっており、同業種間での転職の減少がみられることが分かります。また、右から5列目ですが、新型コロナウイルス感染症の影響が大きい「宿泊業,飲食サービス業」では、「卸売業,小売業」「医療,福祉」などに転職された方が、緊急事態宣言後に増加していることが分かります。
 74ページからは、ハローワークにおける転職等の状況について整理しております。今回、ハローワークシステムを活用し、令和2年1月以降に前職とハローワークを通じて再就職した現職の2つが把握可能なデータを整理し、令和2年1月から3月と、同年4月から8月のそれぞれにおける再就職者全体を分母にした構成比を比較することで、その特徴を分析しております。
 75ページですが、フルタイムでの就職を希望され、現職がフルタイムである方の移動の状況を整理しております。先ほど申し上げました二時点を比較しますと、季節性が除かれていないことに留意が必要ですが、左図でみれば他職種への再就職割合が上昇しております。一番右の図ですが、他職種への再就職割合の水準につきましては、「一般事務員」「商品販売」「接客・給仕」などが高くなっておりますが、例えば、赤枠の左から3番目の「接客・給仕」、右側の「飲食物調理」「自動車運転」などにおきましては、その割合が上昇していることが分かります。
 76ページですが、ハローワークにおける他職種転換の際の就職先につきまして整理をしております。例えば、左上の前職が「接客・給仕」であった方は、緊急事態宣言前後を比較しますと、「商品販売」「一般事務員」「飲食物調理」「介護サービス」などへ再就職された方の構成比が上昇していることが分かります。
77ページ、78ページは、パートでの就職を希望され、現職がパートである方の移動の状況を整理しておりますが、説明は割愛させていただきます。
 最後に79ページ以降は、補正予算や令和3年度の概算要求に関する参考資料となっておりますが、説明は割愛させていただきます。長くなりましたが、私からの説明は以上になります。
○樋口座長 どうもありがとうございました。時間の関係で駆け足の説明になっていたかと思います。ただ、かなり情報はたくさん入っていると思いますし、また、これを作成するに当たり、先生方から御助言を頂きまして、新たにデータ等も追加していると聞いております。
 それでは、これから自由討議に移りたいと思います。まず、御質問、御意見がありましたら、繰り返しになって恐縮ですが、サービス内の「手を挙げる」というボタンがありますので、それをクリックしていただき、指名した後にお名前を名乗って、御発言をお願いいたします。なお、途中で退席される方がいらっしゃいますので、まず、その方から優先的に御発言をお願いしたいと思っておりますが、まず、最初、清家委員いかがでしょうか。
○清家委員 恐縮です。退室といっても、このままオンラインをまた別の会議のほうに切り替えるだけなのであれなのですけれども、この後、そちらのほうに移ります。この資料は、今、樋口先生が言われましたように、大変情報量も豊富で、よくまとまっていると思います。
 それで、これはよく言われることかとは思いますけれど、2点申し上げたいと思います。今般、随分在宅での勤務、それから、時差出勤等も進み、その中でいろいろな課題も、また良いところも見えてきたわけです。これはよく言われることですけれども、中長期的にも、今、求められております女性であるとか、高齢者の就労を促進するためにも必要なことでもありましたので、このアンケート調査などを見ましても7割近い方が、この後も、引き続きこういうオンラインでの働き方を希望しているというような結果も出ております。是非、今般のこの経験をいかして、もちろんできる職種、やりやすい職種と、そうではない職種はあると思いますが、可能な職種においてできるだけこうした働き方の進むような施策を講じていただくとよろしいのではないかと思いました。
 もう1つは、これもよく言われているわけですけれども、今、この足下で求人は大分落ち込んできていて、一方で、求職者の求職活動もなかなか難しくなってきているわけです。それで、有効求人倍率も下がってきましたし、また、女性など中心に、いわゆるディスカレッジドワーカー イフェクト、つまり求職意欲を消失してしまった方なども増えているということもあったかと思います。、そこで学卒者の就職でけれども、これもよく言われるわけですけれども、大学生、高校生は、来年の春に就職する人たちは二重苦といいますか、求人そのものが少なくなってきてしまっているということと、求職活動、就職活動が従来のようにうまくできないということで、この2つのダブルパンチになってしまっているわけです。
 先ほど御説明がありましたように、幸い、今、ハローワークも頑張っておりますし、雇調金の効果もあるのかもしれません。そして、何よりも、先ほど少し御説明がありましたけれども、雇主自身が、この直前の人手不足状況の認識が非常に強く残っているために、良い人材を確保したいというマインドは残っているとは思いますが、下手をすると、プチ就職氷河期みたいになってしまう可能性もあります。そこで、今、これを政府のほうで、厚労省あるいは文科省なども取り組んでいただいていると伺っておりますけれども、是非企業側に、経営者団体などに新規学卒者の就職活動について、来年の卒業生については、数年、新卒採用の範囲に含めてもらうということを、是非、強力に求めていくべきではないかなと思っております。
 最初に申し上げたのは、この足下の課題に対応するということが、実は中長期的な課題解決にものにつながっていくということで、短期と長期でウィンウィンの関係だというわけです。こ短期的な問題と、中長期的な問題が、若干、違うところもあるので、それについては、施策的にも分けていかなければいけないだろうと思っております。
 もう1つだけ付け加えますと、給付金、雇調金のことなどについて、先ほど少し申し上げましたけれども、雇調金なども本来は一定の期間の間の雇用維持に対する給付金で、雇用保険会計を財源として支給されるわけです。けれどもこれがどうなるのか分かりませんけれども、これについては、今回は緊急事態への対応という観点で、少し従来と違う形の給付とかといったものであると考えておりまして、これは中長期的にはできるだけ速やかに、元の正常な状態というか、本来のあるべき姿に戻していくようにするのがよろしいのではないかと思っています。最初にお時間を頂きまして、樋口先生、どうもありがとうございました。
○樋口座長 どうもありがとうございました。リーマンショックのときに比べて、あるいはほかの景気後退期に比べて、やはりこの長期化が進んできているということで、新たな課題というのもまた見えるようになってきているかと思います。続いて、途中退席と伺っておりますので、荒木先生いかがでしょうか。
○荒木委員 ありがとうございます。私もこの後に授業がありますので、中途で退室させていただきます。大変詳しい資料をありがとうございました。現在起こっているテレワークとか、副業・兼業あるいは転職行動を詳細に現象面について分析していただき、大変参考になりました。こういう状況をどう受け止めるかということが政策上、大事かと思いますけれども、テレワークなどは典型的ですが、これまでの仕事のやらせ方自体の見直しが始まってくる。今回、メンバーシップ型からジョブ型雇用というように言われますけれども、雇用契約、労働契約の中身が大きく変わってくるだろうと考えております。それが具体的な求人の内容とか、あるいは仕事の割り振り等々でも影響してくると思いますので、働き方の変化の中で副業・兼業、非正規とかありますが、そもそも正社員も含めた雇用関係というものが大きく変わってくるだろうということも認識して、議論していく必要があるのではないかというのが1点です。
 もう一点は、今回のコロナ禍の中で、あれは小学校の休校の対応でしょうか、給付金が雇用類似の人々についても払われました。雇用類似就業者を雇用政策としてどのように受け止めるかという研究会もやっておりましたけれども、かなり先駆けた形で給付金支給がなされたように思います。
 タスク型の仕事も増えてくるということになると、雇用と独立自営の中間のグレーゾーン、雇用類似の人々、これが重要になってくると思います。こういう人々について、雇用政策としてどこまでカバーリッジに入れていくのかということが重要な課題となると思いますし、そういう問題を全部雇用政策で受け止めるのか、あるいは社会保障政策、税制とか、ほかの領域とのコラボレーションをどう行っていくか、いろいろこれまで余り詰めていなかった課題が、浮上してくるのではないかと考えております。
 今回、年内に取りまとめということですので、今、申し上げた2点は、いずれも、かなり長期的な検討を要する課題ですので、今回の報告書にどうこうということは考えておりませんが、今回の取りまとめに当たっても、そういう大きな流れがあるということを前提に検討していければ、という感想を抱いております。以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。御指摘のように、実は新型コロナウイルスが発症する以前、4、5年前を遡ってみると、急激に雇用が伸びた側面が、例えば行政であったり、あるいは先ほどの雇用類似の働き方、自営とか、そういうところでもそうでしょうし、あるいは学生アルバイトのところも急激に伸びたところが、実は今年に入っての、このウイルスの影響というので、逆に今度は、急激にそこが減少するというような変化が起こっている中に対して、雇用政策として、あるいはほかの政策と連携を取りながら、どのようにそこのところに対応していくのかということも考えなければいけないというような御指摘だろうと思いました。
 これからは、皆様、どうぞ自由にお手を挙げていただきまして、御発言いただければと思っております。どなたでも結構です。よろしくお願いいたします。清家先生、荒木先生から、まだこの点を言っておいたほうがいいということがありましたら、続けてお願いしたいと思います。
○清家委員 もう、十分でございます。ありがとうございます。
○樋口座長 よろしいですか。それでは、お願いいたします。
○佐藤委員 中央大学の佐藤です。資料は非常に勉強になって、どうもありがとうございました。3つぐらいあるのですが、1つは、清家さんが言われたこととかなり重なるのですが、今回のコロナ禍の影響、これについてどうするかということはもちろん大事ですが、荒木委員が言われた、少し先も見るというのは、すごく大事かなと思っていて、そうしたときに、今回のコロナ禍のインパクト、もちろん労働市場の影響、働き方の影響があったわけですけれども、マイナスはたくさんあったと思いますが、プラスの面もあったと思いますので、これは今後も、それを広げていくかということがすごく大事で、清家さんも言われたように、例えば、全員これまで在宅勤務は向かないと思っていた仕事も含めて、かなりの部分は在宅勤務をしなさいということが起きたので、その結果、例えば、特に女性ですが、今まで短時間勤務だった人が、在宅だったら8時間働ける人が出てきたりとか、今まで出張は無理だったのだけれども、みんな出張できなくなったので、例えば大阪で働いている人が、東京本社のジョイントのプロジェクトに入れるとか、つまり、やはりプラスの面もあったということをきちんと押さえておくことも大事かなと思っていて、もし、そういうものがあるとすれば、今後どうなるか、また元に戻そうというところもあると思いますが、やはり新しい働き方、人のマネージメントについて何をコロナ禍から拾い上げて、これからも続けていくのかということをきちんと議論したほうがいいかと思いますので、そのプラスの面もきちんと見ていくことが大事かなと思います。
 そうしたときに、テレワークで言えば、先ほどの調査のようにいろいろ働いている不安があるわけですが、やはりうまくいった所と、うまくいっていなかった所の何が違うのかということで、例えば在宅勤務になる前に、上司と部下の信頼関係ができていたらうまくいったけれども、目の前にいるからだけでは、実は信頼関係はなかったわけです。そういうところで、在宅になるとマイクロマネージメントみたいなことが起きてしまったりということがあるので、多分、これから大事なのは、オンラインで在宅勤務を強いてやるために、実は対面のときにどういうマネージメントをするかということがすごく大事になってくると思うので、そういう意味では、在宅の仕事の仕方を変えるわけではなく、それを組み込んだ対面と在宅を組み合わせた仕事になってきたときに、実は対面のところの仕事の仕方も変わってくる。
 もう1つは、マネージメントだけではなくて働く人の側です。今回の在宅になると、例えば、普通であれば、8時に家を出て、東京だと9時から仕事を始めて、残業しないと6時に仕事を終えて帰って来ると、7時に家に着くのです。結構、見ると、在宅になったらいつから仕事をしているのですかと聞くと、9時からではないのです。家を出る8時から仕事を始めて、帰って来る7時まで仕事をしている人は結構いたりするのです。つまり、社員一人一人が新しい働き方、マネージメントができているのかということで、これからの仕事と、仕事以外の境界のマネージメントみたいなものもすごく大事かなと思いますので、そういう少し先を見て、今回でマイナスもあるけれども、プラスの部分をどういかしていくのか。それをいかすためには、働く人も企業のマネージメントも何が必要なのかということをやっていただければと思います。
 あと1つは、荒木委員がジョブ型雇用の話をしたのですが、今、急にジョブ型雇用が話題になっていて、例えば在宅勤務がうまくいかないのはメンバーシップ型雇用だとかという議論があるのですが、いろいろな企業もマスコミはジョブ型雇用を導入します、議論しています。これは何のことを言っているのかというのはばらばらで、昔の成果主義の話とかああいうように、やはりちょっときちんと整理したほうがいいかと。変えなければいけないところはあると思いますけれども、ジョブ型雇用に変えると言っている企業が何を変えようとしているのか、本当は実はばらばらで、何か流行として使われている感じがするので、私は、やはりきちんと議論、整理できるような考え方を提示する、その中で企業が、大企業は、うちはこういうことをやるのだということが分かるようにしていただくと、働く人も迷わなくていいのかなと思います。どうもありがとうございました。
○樋口座長 どうもありがとうございました。これまでの先生方の御意見は、なかなか整理するのは難しいのですが、要は、今、起こっている問題、そして、また、コロナウイルスが発症する以前のものと比べて、やはり大きな変化が起こってきている。起こってきているけれども、それにもプラスとマイナスがあり、そして、今後、この問題が落ち着いた後も、元に戻るとは限らないだろうと。あるいは戻さないほうがいいこともあるのではないかというようなことから、この問題を注視していくべきだという御意見だったと思います。特に、議論を少し整理したらどうかと。どうも、いろいろな所で、いろいろなことが言われていて、テレワークを1つ取っても、かなり違っている。人によっては毎日テレワークをしている人もいれば、週に1日とかという方もいたりするわけです。テレワークと在宅というのは、何となく混在して使われているということもあったりするわけですが、佐藤先生からは、そういうところについても議論が少し拡散しているのではないか。特にジョブ型という話がありましたけれども、ジョブ型と言ったものについても、皆さん違ったことを意味していることがあるということから、そこについても議論を整理していくべきだというようなことだったと思います。ほかにいかがでしょうか。
○神林委員 皆さん、おはようございます。今、佐藤さんがおっしゃったみたいに、朝7時から、パリから参加しているので、大分変わったと言えば変わったと思います。ただ、1つ大きな論点として、大きな変化があったと皆さんはおっしゃっているのですけれども、一体、本当なのかというのは、今日提出された資料の中でもきちんと整理しておく必要があると思います。リーマンショックのときと比較が一番分かりやすいと思いますが、変わっているところと、変わっていないところというのがあると思います。規模とか、労働時間が減少する、実質賃金が減少するといったようなところというのは、ある意味で、リーマンショックのときの調整と同じことが起こっているわけで、テレワークが増えた増えないという話は、別途、統計を取るとしても、私は大きな変化というのは、本当に起こっているのかというのはきちんと把握するべきだと思います。
 その上で、パッと見で、リーマンショックのときとちょっと違うところというのは、既に何点か出てきていると思いますが、1つは、男性に関しては、多分、リーマンショックのときと余り変わらないような調整行動が起こっているのではないかと。女性に関して、実はリーマンショックのときは、パートタイマーが増えて女性の雇用そのものは増えているのです。それが今回に関しては、女性の雇用に関してもネガティブな影響というのが出てきているというのが1つあると思います。
 その1つの背景は、正規社員、正規職の人が実はこの間減っていないということが大きいのかなと思います。労働力調査で既に出ていると思いますけれども、前年同月比で着々と正規職は増えていますので、ここまでのネガティブなショックがあったとしても、正規職は余り減少しないという、ここ10年ぐらい労働市場の基底にあるトレンドというのは、多分、変わっていないのかなというように理解できるのではないかと思います。その分、休業するという傾向が増えているのですが、これは政府のアナウンスの仕方あるいはほかの制度の対応の仕方等々、リーマンショックのときと違いますので、休業が増えるというのは一時的な、たぶん今回限りの現象かもしれません。その点についても少し留意する必要があるのかと思います。
 あとはリーマンショックのときとの違いで言えば、実質賃金が下がっているのですが、これが物価がリーマンショックのときに減少して実質賃金を下支えしていたのですが、今回は物価が下がらない。恐らく、これは個人的な臆測ですが、消費税の増税をきっかけとしたデフレからの脱却という傾向が昨年来あったので、それが関与しているのかなという気はするのですけれども、実質賃金の傾向がまるで違うというところは、念頭に置いておいたほうがいいのかと思います。ただ、そうはいっても、労働力フローの構造あるいは転職行動の構造というのは、変わったと言えば変わったのかもしれませんけれども、数字を見る限り、余り変わっていないと判断することもできる程度だと思います。そうなると、全体的な構造のどこが変わって、どれだけ変わっていないのかというのは人によって、見る人によって違ったところを指してしまうので、慎重にここが変わっているのだけれども、ここは変わっていないということを整理して、議論の土台をイコールフィッティングにしておいたほうがよいと思います。
 あと、付随的に2つの論点ですけれども、荒木さんがおっしゃっていた雇用類似が増えているというのは、統計上、これは自営業が増えているということで表われているのですか。そこがよく分からないところがあります。
○樋口座長 すみません、今の点をもう一度お願いできますか。
○神林委員 追加的な論点として、雇用類似が増えているというのは、統計的に自営業家族従業者が増えているということで捉えられているのかどうかということが1つです。
 もう一点は、契約内容が変わっているかもしれないという荒木さんからの御指摘があったと思いますが、ハローワークの求人票で、それは把握できるのかなというのが1つです。もし、両者が正しいとしたら、あと2か月以内の中で既存の統計あるいはデータで、ある程度互換指数は把握できるのではないかと思います。以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。今、出された点で事務局とデータを整理しないと、なかなかお答えできないところもあると思います。特に雇用類似の話、それが増加しているのかどうかということについて、これは整理した上で、また次回にでもその結果をお話できればと思います。
 神林先生がおっしゃるのは尤もというところがありまして、何が変わっていないのか、何が変わっているのか、特に従来から日本の企業の雇用調整のやり方のところでは、人のほうは何とか維持しながら、時間と給与のところで調整していくというところというのがあったかと思いますけれども、ただ、今回違うと言ってはいけないのかもしれませんが、やはりリーマンショック等々では、製造業に対する影響ということが非常に大きかったのに対して、今回、業種が大分違ってきている。宿泊、飲食とか、小売といった所の影響あるいはサービス業への影響。もちろん製造業でも起こっておりますが、それがどうもいろいろな違いという形で見えるのかもしれないということについては、これは業種別に検討を加えていかなければいけないということだろうと思いますが、そのように精査させていただきたいと思います。神林先生のほうで何か今のところでありましたら、もう一度追加なりをお願いしたいと思いますが、いかがでしょうか。そのような形でよろしいですか。
○神林委員 いえ、つまり、分析してほしいということなのですが、構造的要因と、一時的な要因に分かるようにというのが1つと、もう1つは、統計上の問題として、大きな流れと言われているテレワークとか、リモートワークということだと、統計上、どこに表れているのかというのを解釈するということ。あとは、タスクがジョブ型と呼ばれるような雇用というのが、ハローワークのデータで把握できるのかどうかということです。第1点はかなり大きい話ですが、2点目と3点目はテクニカルの話なので、さほど時間は掛からないと思います。お願いします。
○樋口座長 分かりました。恐らく、緊急宣言時のときと、その後とまた状況も、労働市場の情勢も大きく変わってきているということもありますので、それも含めて整理させていただきたいと思います。ほかにいかがでしょうか。
○鶴委員 事務局の詳細な説明、どうもありがとうございました。私からは3点あるのですが、最初、事務局からの説明で、非常に面白かったというか、興味深いというか、これ、一体何でそうなのかという点として、やはり男女の影響の差が出ているということで、特に女性の悪影響が強いということ。確かに27ページ、これは先ほど神林委員もおっしゃられたように、今回のコロナ危機というのは、リーマンショックの世界経済危機のときと何が違うのかということを、きちんと整理しておく必要があると思います。それで、対面型というか、三密型、私はフェイス・トゥー・フェイス産業と呼んでいるのですが、これはいろいろ1つの産業の中でも影響を受けたものとそうではない所とあるので、そこを非常にきめ細かく見ていく必要があると思いますが、そこは非常に影響を受けたということで、その影響の受け度合いの、まばら具合というのが多分違うのだろうということで、そういうことも含めて、例えばリーマンショックとの違いというのは丁寧に見る必要があるということ。
 27ページを見ると、失業率の上がり方って、リーマンショックのときは男性のほうが最後に非常に上がっている。今回は今のところ、余り上がり方に差がないと、その後の30ページだと、やはり雇用者数の減り方というのも女性のほうが多いということ。
最初、事務局のほうは、女性への影響ということで強調されて、確かに非正規の影響というところが非常に今回のほうが大きいということであれば、女性の比率は高いわけなので、そういうものが影響している。つまり、非正規というところが、より影響を受けていると見るのか。
 また、事務局の31ページの資料を見ると、やはり対面型というか、三密型の飲食業とか、小売が女性の割合が高いですので、今回、特に受けた産業というのが、もともと女性の割合が、正規、非正規関係なしに高いので、今回は特に女性のほうがより影響を受けたのかとか、余り産業的な特徴とか、雇用形態ということではなくて、もっと別に理由があるのか、ここは分析のお話になるので、女性への影響が強くあったということを言う際に、何がより本質的な影響なのかということについて、もう少し説明というか、分析が必要であればお願いしたいという点が1点です。
 2点目は、これは佐藤委員がおっしゃられたジョブ型の話ですが、私も閉口するというか、テレワークをやるためにはジョブ型でなければ駄目だとか、成果主義を導入しないと駄目だとかという話なのですが、大昔というか、それは半世紀ぐらい前の全くICTとかそういうものがないような時代だと、なるべく仕事が切り分けられて、成果が測りやすく、そういうような仕事でなければ、なかなかテレワークはできないというタイプの時代というのはあったのだと思いますが、今はデスクトップ上で職場を再現することはできるので、随時呼び出したり、議論する。それで、ほとんどが私はテクノロジーをどれだけ使えるかということで、概計し得る問題だというように思っているので、テレワークをやるためにジョブ型にしなければいけないとか、成果主義にしなければいけないという、そこにもっていくのはどうなのか。ジョブ型は重要だという話は、多分、このまま行くとコロナ以降、私は変わっていないと思いますし、もちろん自立的な働き方というのが、もっとイノベイティブな企業等をそういうことを目指すために、そこは重要になっていると思っていますので、そういう観点から進めるというのはいいのですけれども、ちょっとそこは誤解がある。
 3点目は、今日、リモートとか、テレワークの話と、雇用類似の話と、副業・兼業という話が出たと思いますが、何かそれはコロナ前というのは、この3つはどのように考えるのかなと、私の中でも必ずしも明確なものはなかったのですが、コロナ以後、結局、同じレベルフィールドで、こういう問題で考えられるなと。つまり、職場とかオフィスというのがどういう意味なのかと言ったときに、雇用類似の働き方をしているというのは、もちろん職場に行くわけではないですよね。そうすると、リモートしていると、それは雇用されているのか雇用されていないかというそこの違いということになってくるわけですし、リモートという環境があれば副業・兼業というのは非常にやりやすくなる。通勤時間も必要なくなるということです。正に自分の割り当てをどうするのかということが非常にやりやすくなる。また、地方の企業に対しても、副業・兼業ということが可能になる。そういう状況だと思います。ですので、コロナ禍においては、私が今、申し上げたものを、結構統一的にいろいろ考えていくということが可能になっていると思っています。雇用政策研究会でも、今、いろいろ議論が出ているのですが、そういうものを統一的に議論していくべきなのかなと、皆様の御意見を聞きながらも思いました。以上です。
○樋口座長 どうもありがとうございました。最初の今回の男女の雇用の影響の違いですが、特に見てみると失業だけではなく、あるいは失業以上に就業者、雇用者が女性で減っている。その人たちが必ずしも失業者にならないで無業化、非労働力化しているという影響が出ており、この点をどう考えていったらいいのか。例のリーマンショックの後、アメリカで女性の労働力率、就業率が大きく低下し、それがなかなか回復してこないということがあって、失業というだけではなく、むしろ無業化と言いますか、再び専業主婦になるような形が影響として出ています。
 特に飲食、宿泊や小売というのは、どこの国でも女性の比率が高いのですが、その比率が日本の場合、ほかの国に比べて極端に高いとか、あるいは、製造業においては男性の比率が高いとか、もともと産業の違いというのを反映しやすい構造があったところに、今回のようなことが起こっているという問題も含めて、私も考えてみたいと思います。
 あとは正にリモートという従来とは違った、あるいは従来からあったのかもしれませんが、それが普及する中において、いろいろな面で独立して個別に起こっているのではなく、割と連鎖的に統一的に見ることもできるのではないかという御指摘は、非常に参考にさせていただきたいし、対策を考える上でもそういったものが必要になってくるのかもしれないと思いました。宮本先生、手を挙げていただいておりますのでよろしくお願いします。
○宮本委員 最初に、大変詳細で情報量の豊かな資料の作成と御提供をありがとうございました。勉強になりました。私の場合、皆様に比べると相変わらず、やや周辺的なところからの議論になってしまうことをお許しいただいた上で、3点ほど申し上げたいと思います。
 まず第1点目です。今正に座長が無業化のようなことも含めて、完全失業に還元できないいろいろな問題性をおっしゃったわけです。休業状態にある人たちのこれからの困窮というのは、深刻になっていく可能性があります。資料からも学ばせていただいたように、15~34歳という比較的若年層と女性に、相対的に影響が大きくなっているということも絡むわけですけれども、今休業状態の人たちを何とかする。例えば、住居確保給付金とか生活福祉資金の総合支援資金というのが出ているけれども、そろそろこれにもタイムリミットが近づいてきているのです。いずれも在職中の方にも出ていて、在職中でありつつ、これを受給して何とかやり繰りしていたところが、そろそろ限界に近づいてきているということについては、どこか念頭に置いておく必要があるのではないでしょうか。
私などが比較的関わっている困窮者支援の現場というのは、これまでだったら引きこもりのような、アプローチとしてはある種リハビリ的な対応をしていくべき相手が多かったのです。今は本当に夜の街でバリバリ活躍していたような人たちがどんどん押し掛けてきていて、支援員や相談員もどう対応していいか分からないような、そういうギャップも生まれてきています。この問題点というのは、狭義の雇用ではないのかもしれませんが、むしろ雇用の観点からも何らかの対応が必要なポイントになっていきます。年末にいくに従って、この問題がだんだんだんだん深刻化していく蓋然性が高いということは、見ておいていいのではないかと思います。
 2番目が、佐藤先生等が問題にされているテレワークの話です。私自身、テレワークの拡大というのは非常にポジティブに捉えていいと思うのですけれども、先ほど佐藤先生がいみじくもおっしゃったように、女性の就労時間が比較的長く取れるようになってきています。ただ、そうした中でテレワーク×メンバーシップ型というところから、ひょっとすると見えないサービス残業というのが、相当深刻化していく可能性があります。
 よく「ワークライフバランス」と言いますけれども、「そうではない。家事ワーク、ケアワークを含めて、ワークワークバランスなんだ」とおっしゃる方がいます。私は、より正確にはワークワークライフバランスだと思うのです。ペイドワークとケアワーク、家事ワークです。そしてライフというのは、休息であったり睡眠であったり趣味の時間であったりします。「ケアと家事はライフだから、しっかりできていいでしょう」みたいに言ってしまうのは今時、間違いです。
 ワークワークライフバランスに対するテレワークの影響、特に女性に関わる影響がどう出てきているのか。これはもう本当に巷のうわさのレベルというか、SNSからの声に過ぎませんが、テレサビ残(テレワークサービス残業)での悲鳴が聞こえてきます。私は認定子ども園協会とも付き合いがあり、そこの調査だと、被調査者の15%の女性がストレスから子供に手を挙げたとか、手を挙げそうになったというデータも出てきているわけです。このどこまでが雇用政策研究会の範囲なのかというのは、微妙なところがありますけれども、今おっしゃったジョブ型、メンバーシップ型リモートワークという観点に、更にワークワークライフバランスへの影響というのを、どこかの射程に置いておく必要があるではないかと思います。
 3番目の問題が、一番雇用政策研究会らしいかもしれません。雇用調整助成金といった施策の分析・影響というのは、恐らく次回あるいは次々回になるかもしれませんが、その意味で、もし可能であったら、データなどをお示しいただければということです。
雇用調成助成金はかなり柔軟な運用が可能なように、皆さん御尽力があったと認識しております。ただ、そうした中で雇調金というのは、これまで後ろ向きだというように、どうしても決め付けられがちだったわけですけれども、例えば訓練給付がどれくらい活用されていくのかということは、非常に重要だと思います。また、今回の訓練給付が中小企業に限っては、倍くらいに給付額が上げられているし、オンラインでの研修も可能であるという形で、よく見てみると非常に使い手出のある形になってきていると思います。
 ただ、これがどこまでリテラシーとして伝わっているのか。実は都道府県が雇調金の対応をするときに、東京都の労働産業局などは雇調金を出すに当たっては、専門家派遣をやっているのです。そして雇調金の使い方などをアドバイスするということもやっているのですけれども、たまたま東京都との仕事との関わりでよく見てみると、訓練給付についてはそうした専門家からもアドバイスが、ほとんど何もいってないようなところがあります。無理かもしれませんが、最終的には訓練給付労働移動支援助成金との関係も含めて、転職にも使えるような給付になるかどうかも含めて関心があるのです。できれば次回以降、施策の分析に関わるときに、雇調金の訓練給付や労働移動支援助成金の使われ方とか、先ほどお示しいただいた飲食業からサービス業、福祉へという流れの中で、その支援にツールとしてどれくらい機能したのかという辺りも、何か参考になる材料を頂ければと思います。
○樋口座長 2番目の点という形で宮本委員から出されたのは、要は雇用政策の守備範囲に従来のものだけではなく、やはり関連する施策とのパッケージを考える必要があるのではないかということでした。例えば住宅の問題もありますし、佐藤委員からは税金や社会保険の関係も含めて考えていくべきだということで、正に狭い意味での雇用政策だけでなく、時には困窮者対策までも含めて考えていくという必要性を、御指摘いただいたと思います。
 また、第3点目では、データ等々についてもより詳しい説明が必要だということであったかと思います。訓練給付の問題も含めて従来、雇用政策の議論といったときに、従来、雇用政策の中身については議論していたけれども、それをどう申請するのか、スピード感はどうかというようなことは、少なくとも我々研究者の間ではなかなか議論になってなかった。そういうところについても利用のしやすさとか、あるいは効果も含めて検討していくべきではないかという御指摘だろうと思います。この点についてはまた事務局とも相談して、次回あるいはその後になるかもしれませんが、少し議論をしたいと思っております。
 ほかにいかがでしょうか。では堀先生にお話いただいてから、神吉先生にお願いします。
○堀委員 本日は詳細な資料を頂きまして、どうもありがとうございます。私からは先ほど清家先生からも御指摘のあった新規学卒者について、幾つか申し述べさせていただければと思っております。
 まず、清家先生もおっしゃるように、新卒者の就職は、全体として余りいい状況になく、悪化していっているという状況です。先ほどから多くの先生方がおっしゃっていたように、新規学卒者の問題、例えばリーマンショックや就職氷河期といった、過去に景気が悪化していったときと同じように捉えるべき部分が、あると思っております。ただ、リーマンショックのときと大きく違うこととしては、先ほど来話題になっておりますように、産業ごとの状況が非常に大きく違うということです。これは当然、新規学卒者に対する採用の抑制にもつながっていることから、結果として大卒であれば学部学科による違い、あるいは高卒であれば学科による違いが、かなり大きくなってくるのではないか。そして新規学卒者だと、余り性別による分析がされないことが多いのですけれども、性別によるマイナス、特に女性の就職が難しくなってきているのではないかという感じがしております。したがって、全体として悪くなっているというのも大変だと思うのですけれども、どこが悪くなっているのかという詳細について、より詳しく分析していただけると大変助かります。
 特にコロナ禍においては休校期間の影響が非常に大きく、高卒採用開始時期は1か月遅れました。また、大卒については私の推測ですけれども、普段であればキャンパスで友達に会って、友達が頑張っているから自分も頑張ろうというところもあるかと思うのです。しかし結果的に孤立してしまって、就職活動をやめてしまうという学生も一定数出てきている可能性もあります。したがって、これも正に先ほど座長がおっしゃった労働政策以外の部分の影響が非常に大きかったと思うのです。そうした部分の影響が今回の特徴的なことではないかと考えております。
 それから今回、いろいろ分析してくださって大変勉強になったのですけれども、もしサンプルサイズが許すのであれば、地域ごとの分析を更に深めていただけると大変助かります。事例レベルではありますが、今、フリーターのインタビュー調査などをしております。例えば非正規でフリーターで仕事を失った場合に、都市部では比較的転換がうまくいっているようでしたけれども、地方ではうまくいってない人がおりました。。事例なので実際にどうかは分からないのですけれども、特に非正規の場合は地域を越えて移動するわけではないので、地域ごとの労働市場の場合に、どうやったらうまく転換していけるのかということについて、分かる範囲で詳細に教えていただけると大変助かります。以上です。
○樋口座長 新卒というか、就職あるいは企業からすれば採用ですが、それらの視点について、もう少し詳細な見方、分析をするべきではないかという御指摘だと思います。私もこのデータを見せていただいて驚いたことの一つが、24歳以下の雇用が大きく減少していて、その中の7割ぐらいが学生アルバイトという形での就業者の減少であるということです。そこがある意味、学生の貧困の問題という形で困窮者の問題です。これには文科省が奨学金ということで出して、今回対応しているわけですが、雇用政策の対象とは余り考えてこなかった問題も目に付くようになってきています。ここについてもどうしたらいいかと思っているところです。お待たせしました。神吉先生、お願いします。
○神吉委員 今回、非常に詳細なデータを頂き、大変勉強になりました。私自身はデータ分析の専門ではないので、それは他の先生方にお任せするとして、制度的な方向性をお話ししたいと思います。
 一時的かもしれないけれども失業ないし非労働力化の伸展が見られるなかで、それに対する再参入支援が非常に有用になってくると思います。雇用類似の働き方も含めて、雇用以外への保護がまだまだ追い着いていない現在の状況に鑑みると、やはり雇用にとどまることで受けられる保護が非常に大きい。そこで、なるべく失業、非労働力に移行しないように予防することが、まず必要になってくるのではないかと思います。
 制度として今回、雇用維持に大きな役割を果たしたのが、雇用調整給付金・助成金だと思うのです。それは正に宮本先生がおっしゃったように、就業させることが助成の対象になることを前面に打ち出し、いろいろな要件を緩和するなどして、非常に役立ったのですけれども、正に緊急対応という側面もあります。ただ、時限措置でもありますので、特例措置の後どうするかを考えなければいけないときにきています。
 需要は回復するにしても、先ほど清家先生や荒木先生がおっしゃっていたように、働き方や必要とされるスキルの変化は中長期的に不可逆で、アフターコロナに対応できるスキルアップが必要だと考えます。休業でとりあえず急性期対応をした上で、今はそろそろその先の可能性を考える局面であって、次は出向や教育訓練に対する補助金、助成金に重点をシフトしていく。そして、それを政策的に打ち出していくべきと思っています。
 賃金補償に加えて、ここで「雇用シェア」とある在籍出向や教育訓練を通じて、新しい経験やスキルを身に付ける機会として助成を積極的に扱うことができたら、ICTを中心とした新しいスキルを得て、元の企業に戻る場合にはそこで還元することもできれば、需要の大きい産業職種への労働移動が結果的に促進される側面もあるかもしれません。労働市場全体で見てもスキルアップ、労働市場の価値の増大につながっていく、そういう可能性がある制度だと思っています。そういう意味で助成を拡大し、今回の特例措置の期間が終わった後も、フォーカスをシフトして活用していける方向性が打ち出せればと思っています。そのためには手続を分かりやすくすることも大事ですし、そういったメッセージ性を打ち出すことで、コロナで起きたマイナスを減らすだけではなく、むしろプラスを目指していく前向きな施策とできたらいいのではないでしょうか。
○樋口座長 ありがとうございました。正に、いろいろ見て、データを見てみると、このコロナの問題が顕在化した2月、3月の局面、そしてまた、4月の局面、その後、5月以降、かなり変わってきているところもあるかと思います。それは、全ての業種で、例えば、人手が余っている状況から、業種によってやはり違いが出てきて、逆に、中にはエッセンシャルワーカーなどでも人手不足が起こってきているとか、逆に離職者が増えて、それを補うのにどうしたらいいかというところもあったりして、そういうところへのスキルのサポートをいかにして、いわゆるミスマッチというものを解消するような支援の仕方も検討していくべきではないかと思います。また、この点についても議論していきたいと思います。ほかはいかがでしょうか。黒澤さん、いかがですか。
○黒澤委員 すみません、皆さん、本当にお久しぶりです。前回は途中でまた伺えなくなってしまいまして、樋口先生をはじめとして皆様に大変御迷惑をお掛けしまして、本当に申し訳ございませんでした。そして、この度は、詳細なる資料を頂き、ありがとうございます。大変、勉強になりました。私からは、大きく分けて2点ほど、もう言い尽くされてしまったところはあるのですが、申し上げます。1点目は、先ほど佐藤先生がおっしゃったようなテレワークの関係です。在宅勤務が増ましたが、ただし強制的に在宅をせざるをえなかった組織が少なくなかった、つまり最適な条件の下ではなかったので、やはり在宅は駄目じゃない、生産的ではないねという印象を持たれた組織や職場もあると思うのです。ですので、いや、違うのだよと、実は、いろいろな環境を整備すればうまくいくのだという情報をしっかり提供しないといけないなと。佐藤先生がおっしゃったプラスの部分をしっかり情報提供すべきと思っております。
 例えばその中で、育児や介護などで、外注が大変難しい状況が、とくに介護などはまだ続いているわけです。そうすると、米国などでも、やはり家庭内労働における重荷が女性に過度に集中してしまい、それが結局、男女格差の拡大につながるのではないかという懸念がある。ただ、例えば今回、内閣府の「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」を見ると、例えば、感染拡大前に比べて、仕事より生活を重視するようになった割合は、テレワークを経験したほうが多くて64%ぐらいで、通常どおりの勤務者だと34%です。また、男性がテレワークを利用した家庭では、家事とか育児の時間が増えていて、そうしたシフトが起こった家庭では、起こらなかった家庭に比べて、感染前からの生活の満足度の減り幅が、妻だけではなく夫も少ないことが分かっています。つまり、テレワークという経験が家庭内分業のあり方をも変えるきっかけになっていって、それが夫婦の満足度を高めている。ですので、柔軟な働き方が可能な職場が増えれば、男女格差の拡大も抑えられるのだということが分かるわけで、こうしたエビデンスを集めて情報提供することが必要だと思います。
 もうひとつ、慶應大学とNIRAの調査によると、全国就業者のうちテレワーク利用者割合は、2020年1月は6%だったのが、4月、5月には25%まで増えています。しかし、それでも25%しかないのです。日本の場合は完全なるロックダウンではなかったので、在宅以外の形で働き続けた人たちもたくさんいらしたということがあって、今、さらに多くの方々が元の働き方に戻ってしまいつつある。それこそ神林先生がおっしゃったように、余り変わっていない部分が、かなり実はあるのではないかということを感じております。
 ただし、先ほどのNIRAと慶應大学の調査によると、テレワークにおける効率低下の下がり幅が一番小さかったのは、勤務時間や場所などの働き方を自分で選ぶことができて、ICTを積極的に取り入れている職場だというのが示されています。ですので、そもそもテレワークという働き方が進んでいた所では、このコロナ禍でテレワークはますます進み、ますますこれからもそういうやり方でやっていこうねという所と、全くそれに対応できずにいた所との格差が、実はより増えてしまったのではないかと思います。
 欧米などは職を失った方はたくさんいらっしゃるわけですが、本格的なロックダウンがあったので、職を失っていない方ほとんどはテレワークに行かざるを得なかったと思うのですが、日本ではそうでなかった。つまり欧米ではこれまでテレワークを普通だったらやらないような人までやらざるを得なくなって、ICTスキルのレベルアップにつながったと思うのですが、日本はそこまで行かず、かえって企業間格差が拡大したという側面があるのではないかと思うので、その辺りを、今後、政策的にどのように考えるのかということも、1つポイントになるのかなと感じました。これらが1点目です。
 2点目は能力開発についてです。コロナ渦で非労化し、失業した非正社員、特に女性が多いということですが、そういう方々への能力開発というのと、先ほど神吉先生や宮本先生もおっしゃっていましたが、より中長期的な、正規雇用者も含めた雇用者全般におけるICT分野のスキルの付与や労働移動という文脈での能力開発をどう考えるかということです。前者については、既にマッチング機能のハローワークでのデジタル化が進められてはいますが、コロナにおける新たな生活様式が求められる中でのオンライン化はもちろんのこと、働きながら、あるいは育児、介護をしながら求職や転職活動をしたり教育訓練を行うことで、より効率的にスキルの習得してもらうためにハローワークなどにおける就職支援や公共職業訓練についても、eラーニングやオンラインベースでのサービスを、今後はますますやるべきだと思います。ただその際は、インフラの整備や職員、教員の訓練も非常に重要になります。また、eラーニングを導入した場合、学習成果を評価基準に対応させる仕組みが、職場での実技による試験以上に、重要になってくると思います。
 中長期的な能力開発の中身についてですが、今回のコロナ禍で、恐らく働く上でのICT化はかなり加速すると思うのです。そうすると、前から言われているように、AIに取って代わられない、AIと補完的なスキルの習得をどう支援するのかも考えなければいけない。これは公的な訓練についても、先ほどの雇調金等の対象となる企業内での能力開発でもですが、そこではやはり企業へのコンサルティング支援が増々重要になってくると思うので、その辺りを押さえておいたほうがよいかなと思いました。以上です。すみません、長くなりまして。よろしくお願いします。
○樋口座長 どうもありがとうございました。今、黒澤先生がおっしゃったように、テレワークのところで、これはJILPTで、そのうち報告させてもらおうと思っていますが、調査をやってみると、やはり緊急宣言の下において、急速にそれを実施している人たち、あるいは企業が増えたのですが、その後また、急速に減少するというものを描いているのです。どこが追随で継続してやっているのかを見ると、コロナの前からやっているところがやはり継続してやっているとか、そこにおける能力開発であるとか、そういったものの重要性がすごく顕著に表れてきているということもありまして、御指摘のとおりというところです。ここでも能力開発支援と雇用安定というか、両面をバランスを取りながらその点も考えていきたいと思っております。特にデジタル化の下における能力開発というのは、これはもう待ったなしの点になってきておりますので、こういった問題についても考えてみたいと思います。黒田先生、最後、お待たせしました。どうぞ。
○黒田委員 ありがとうございます。黒田です。まず事務局におかれましては、本当に大部な資料をありがとうございました。しかも短期間で御用意していただいたので、大変だったことと思います。私も大変、勉強になりました。資料についてというよりは、先を見据えて大きな流れについて考えていくという、ほかの先生方とも同じ視点で2点、私から述べさせてください。
 ほかの皆様の御意見にもあったとおり、確かにコロナが終わったらまた元の状態に戻るという可能性もゼロではない。そういう意味では、全てが、これまでのことが大きく変わっていくことを前提にすべきではないかもしれないということもあろうかと思います。実際、リーマンショックだけでなく、その後に起こった東日本大震災のときも、節電がきっかけで働き方が大きく変わっていくのではないかということが盛んに、言われていたわけですが、翌年には働き方はもう、ほぼ完全に元に戻っていたということもありました。ただ、これまでの大規模な負のショックと今回との大きな違いは、インフラは導入していたけれども、これまでほとんど誰も使っていなかったテレワークが、今回は一時的にせよ急速に普及したという点だと思います。そのテレワークの継続を希望している人がかなりいることもみえてきています。ちなみに、今回の雇用政策研究会も今回初めてオンライン会議になったわけですが、個人的にはとても効率的で、生産性も高くなったのではないかと思っております。今回の緊急事態宣言の下で、テレワークをしなかった方々が、インフラが整備されていなかったからできなかったのか、そもそもテレワークができない職種なのかということは分けて考える必要はあると思いますが、仮にテレワークが可能な職業においてテレワークがこのまま更に普及するとした場合について、2点意見を申し上げます。
 1点目の論点は労働時間管理の在り方です。2019年から始まって、所定外労働時間の上限規制が始まったわけですが、この法律はコロナの前の体制を基にしたもので、基本的には、出社して退社までを管理すれば概ね労働時間を把握することが可能だったといえるかと思います。このときにできた労働時間管理の法律がベースとなって、現在在宅ワークをされている方は、始業・終業の時間を上司に報告をするとか、企業によっては、PCやマウスがアクティブになっているかどうかで時間管理するなど、何らかの方法で管理をしなければいけない状況が続いています。しかし、今後さらにテレワークが普及し、いつでもどこでも働けるという環境が一般的になっていくと、今までのような厳格な労働時間管理や健康確保を、企業に委ねるのが益々難しくなっていくと思います。
 もちろん、テレワークの普及により仕事と生活の境界が曖昧になり、再び長時間労働社会に戻ってしまうリスクには注意は必要ではあるとは思うのですが、企業にとっても労働者にとっても、現在の労働時間管理をこのまま続けていくことが、負担になっている可能性は果たしてないのか。あるいは、労働時間管理はやるにはやっているけれど、形骸化していて、実労働時間の管理になっているのかどうか。新しい働き方がもし普及していくのであれば、それに対応した新しい労働時間管理の在り方を考えていく必要があるのではないか。中長期的に労基法の見直しなどを見据えて、今から議論していく必要があるのではないかというのが1点です。
 2点目は、先ほど黒澤先生におっしゃっていただいた能力開発に関してで、若干の補足になりますが、今回、在宅ワークで特に不安を感じているのが、62ページのアンケート調査でも見えてきたとおり、特に20代、30代が多いことを非常に私は注目しています。これまでは入社して、ゼロから職場全体で仕事を教えてもらえるという形で、少しずつ人的資本を蓄積していくのが日本的な教育スタイルだったわけですが、今後、在宅ワークが普及していくならば、教育投資、教育訓練が新たな形になっていく可能性もあると思います。宮本委員も訓練給付ということをおっしゃっていましたが、このコロナの時代に入社したばかりの20代の人たちの人的資本の蓄積が低くなって、いわゆるロストゼネレーションみたいなことになってしまうと、中長期的に日本の生産性も落ちていくことになる可能性があると思います。教育訓練や能力開発を公的にどの程度サポートしていく必要があるのか、そうしたことの検討、議論が必要かと思いました。以上になります。
○樋口座長 ありがとうございました。皆さん、テレワークのスキルの問題、あるいは、これをどう実施していくのかということについて、やはり議論するべきだという御指摘。フリーランスの話も、あるいは雇用類似の話も含めて、そこについてもやはりある程度の方向性みたいな議論をするべきではないかというお話だったかと思います。一通り御意見を頂きましたが、改めてまた。佐藤先生、お手を挙げましたか。
○佐藤委員 少しだけ、大したことではないのですが。
○樋口座長 どうぞ。
○佐藤委員 黒田委員が言われたことで、あと、皆さんもおっしゃられたのかな、つまり、今年の4月に入社した人で、職を得られた人たち、あるいは、今年、就職活動をして来年就職する人はかなりコロナの影響が、つまり、就職したのだけれど、今、黒田委員が言われたように、初期キャリアの段階での人的支援投資の在り方が従来と相当違う可能性があって、これはもしかすると長期的に影響するかも分からないので、今回のコロナ禍で在宅とオンラインの研究は結構出ているのですが、今年就職した人が従来と、つまり初期キャリアの段階で、企業内で受けているOFF-JT、OJTの状況がどうなっているのか、上司、部下の関係、先輩との関係も。多分、来年の4月以降もそういうことが起こると思うので、是非、堀さんの所でやられたのかも分からないですが、何らかの形で、少し、やはり就職はできたのだけれども、従来と同じように初期キャリアの段階で、教育訓練が受けられたのか受けられていないのか、ちょっとフォローしていく必要があるかと思いました。以上です。
○樋口座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。リモートの生産性が向上した結果として時間短縮になっているのかもしれませんが。事務局から何か、よろしいですか。それでは、少し時間が早いようですが、本日の会議はここまでにして、皆様から頂きました御意見は、事務局と相談して整理させていただきたいと思っております。次回の日程等について、連絡を事務局からお願いします。
○雇用政策課長補佐 次回の第2回雇用政策研究会については、11月16日の10時からの開催を予定しております。後日、改めて御案内を送らせていただきますが、どうぞよろしくお願いします。
○樋口座長 それでは、どうもありがとうございました。また、次回、よろしくお願いします。以上で、本日の会議は終了したいと思います。どうもありがとうございました。
 

 

 

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