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2019年1月15日 第8回雇用政策研究会(議事録)

職業安定局雇用政策課

○日時

平成31年1月15日(火) 1000 12:00

 

○場所

厚生労働省共用第6会議室

○出席者

委員

樋口座長、神吉委員、黒田委員、玄田委員、清家委員、鶴委員、堀委員

田端大臣官房審議官(職業安定担当)、北條職業安定局雇用開発部長、堀井雇用環境・均等局総務課長、志村人材開発統括官参事官(人材開発総務担当参事官室長併任)、高松政策統括官付労働政策担当参事官室企画官、弓職業安定局雇用政策課長、大野職業安定局雇用政策課長補佐、労働政策研究・研修機構井嶋 俊幸統括研究員(兼)調査部統計解析担当部長

○議題

  雇用政策研究会報告書(案)について

○議事

  

○職業安定局雇用政策課長 それでは、お時間となりましたので、ただいまから平成30年度第8回雇用政策研究会を開催させていただきます。委員の皆様におかれましては、御多忙中お集まりいただきまして、ありがとうございます。

 本日は、阿部委員、荒木委員、大竹委員、神林委員、黒澤委員、佐藤委員、宮本委員、山本委員が御欠席となっております。また、清家委員は遅れての御参加を予定しております。土屋職業安定局長につきましては、急遽業務の対応がございまして、欠席となりますことをお詫び申し上げます。

 本日の資料ですが、資料1として雇用政策研究会報告書概要()、資料2として雇用政策研究会報告書()、資料3として参考資料()、資料4として労働力需給推計の概要()、資料5として労働力需給推計関係資料()となっておりますので、御確認いただければと思います。本日の研究会は、ペーパーレスでの開催とさせていただきます。ダブレットの使用方法については、卓上の操作説明書を御確認いただければと思います。御不明な点がございましたら、事務局職員にお申し出ください。

 それでは、議事に入ります。今後の議事進行は座長にお願いいたします。

○樋口座長 それでは、よろしくお願いいたします。本日は、雇用政策研究会報告書()及び労働力需給推計()について御議論いただきたいと思っております。意見交換については、まとめて後ほど行いたいと思います。まずは事務局から報告書()の説明をお願いいたします。

○職業安定局雇用政策課長 それでは、カメラ撮影の関係については、ここまでとなりますので御退席をお願いいたします。

(カメラ退室)

○職業安定局雇用政策課長 それでは私から、まず資料1の雇用政策研究会報告書概要()に基づいて御説明を申し上げます。今回、概要()については初めて研究会にお示しするものです。1ページです。雇用政策研究会報告書概要()として、人口減少・社会構造の変化の中でウェル・ビーイングの向上と生産性向上の好循環、多様な活躍に向けてとしております。背景として、人口減少、技術革新について記載しております。そうした背景を踏まえた施策の方向性として、2つの大きな柱を立てています。1つはウェル・ビーイングの向上と生産性向上の好循環、もう1つは多様な人々が活躍できる社会の実現です。この2つの柱が相互補完的な関係と位置付けています。

 まず、ウェル・ビーイングの向上と生産性向上の好循環です。就業面からのウェル・ビーイングの向上として、技術革新等の劇的な変化に直面し、ライフスタイルが多様化する中では、就業面からのウェル・ビーイングの向上を図ることが重要としているところです。具体的な対応としては、働き方の主体的な選択、円滑な労働移動や転換、マルチキャリアパスを可能とするための就業環境の整備等について取り組んでいくこととしています。また、下の囲みで、生産性向上というタイトルがあります。こちらについては、企業における人材育成・生産性向上を進めていくことが重要としており、この両者の好循環を生み出すことが重要と位置付けているところです。

 右側ですが、多様な人々が活躍できる社会の実現という、もう1つの柱があります。働くことを通じた活躍の機会を提供することは社会参加の手段の1つとして、人々の生活を豊かにするものと考えております。さらに、就業率の向上を図り、社会としての活力を維持する観点からも、こうした取組は重要と位置付けています。具体的な対応としては、高齢者、女性、障害者、生活困窮者等、様々な方の活躍を支援していくことが重要と位置付けております。

 一番下ですが、こうした取組により、2040年の我が国が目指すべき姿として、一人ひとりの豊かで健康的な職業人生の実現、人口減少下での我が国の経済の維持・発展を目指すこととしております。

 2ページは、ウェル・ビーイングの向上と生産性向上の好循環について抜き出した概要の資料となっております。下の左側がウェル・ビーイングの向上でして、多様な働き方の実現として、長時間労働の縮減や同一労働同一賃金の実現、就職氷河期世代における正社員化を支援。また、労使の話合いを前提としつつ、多様な正社員の普及・拡大の推進、希望・特性に応じた柔軟できめ細やかな雇用管理の推進。また、労働者が自らの雇用契約内容や、我が国における労働関係法令・各種ルールをきちんと把握できるような支援といったことを位置付けています。その他の支援としても、労働者の主体的なキャリア形成支援、外部労働市場の機能強化、副業・兼業、雇用類似の働き方に関する検討等という項目を立てて、施策の推進を位置付けています。

 右側の生産性向上ですが、企業における人材育成・生産性向上の推進が重要であるとしているところで、各種訓練に対する助成、キャリアアップ支援等の取組を推進することが重要としております。

 3ページは、多様な人々が活躍できる社会の実現についての概要となっております。下の柱を簡単に御説明いたします。まず左上ですが、長寿化に対応した高齢者の活躍促進として、年齢にかかわりなく希望に応じて働き続けることができるような環境の整備の推進、また、シルバー人材センターにおける取組の推進です。次の項目では、女性の活躍推進、地域の実情に応じた雇用対策の推進、右側ですが、様々な事情を抱える人の活躍支援、外国人材の受入れ環境の整備、働き方に中立的な税・社会保障制度の確立等となっています。

 私からは報告書()についての御説明ということで、次に、資料2の本文についての御説明に移ります。資料2は報告書()としております。こちらについては、変更点を中心に御説明申し上げたいと思います。

 まず、2ページの序章についてです。これまでお諮りしていたものには、序章は記載していませんでしたけれども、こちらにおいては序章を記載しております。我が国経済が長期にわたって景気回復局面にあるということ、雇用情勢も着実に改善しているということ、全国的にも改善が進んでいるということ、また、人口が減少傾向にありますが、女性や高齢者の就業率が上昇しており、就業者数が増加しているということを記載しています。

 3段落目ですが、足下の雇用情勢の改善や労働参加の進展については、前回の雇用政策研究会報告書でまとめていただいた労働力需給推計の想定を大きく上回って実現しているということ、次の段落ですが、一方で人手不足が深刻化しており、今後AI等の技術革新等により、仕事や働き方を取り巻く環境が大きく変化することが見込まれていること、次の段落ですが、こうした課題や変化を踏まえつつ、労働者一人ひとりが自ら望む生き方について働き方改革を足がかりとして、就業面からのウェル・ビーイングの向上と生産性向上の好循環に加えて、多様な人々が活躍できる社会の推進を図っていくことが必要であるとしているところです。

 ウェル・ビーイングについては、下の脚注で注釈を付けさせていただいています。前段がウェル・ビーイングの一般的な注釈でして、後段からは、本報告書でいう就業面からのウェル・ビーイングの向上についての説明を付けております。「本報告書でいう就業面からのウェル・ビーイングの向上とは、働き方を労働者が主体的に選択できる環境整備の推進・雇用条件の改善等を通じて、労働者が自ら望む生き方に沿った豊かで健康的な職業人生を送れるようになることにより、自らの権利や自己実現が保障され、働きがいを持ち、身体的、精神的、社会的に良好な状態になることをさす」としております。

 こうした取組を通じてウェル・ビーイングの向上を図っていくということですが、2ページの下から2行目の所からですけれども、「団塊ジュニアが65歳を超え、65歳以上人口がピークとなる2040年頃を見据えれば、こうした施策の実現を図ることは、職業生活が長期化する中において、格差の拡大のリスク、技能の陳腐化のリスク、職業の不安定化や失業等のリスク等の様々なリスクを取り除き、人々が長期的に安定的に就業できる環境を整備することにもつながるものである」としております。

 次からが第1章です。データのリバイスとか用語の適正化等を行っていますが、内容的な変更点を中心に御説明してまいります。6ページの下のほうから雇用慣行の変化とあります。内容的には7ページを御覧ください。7ページに途中から「また」と始まっている段落がありますが、その上の文章です。「勤続年数が賃金上昇に与える効果については、男女間においても違いがみられ、こうした違いが19902000年代にかけて生じてきた男女間の賃金格差の拡大に影響している可能性が指摘されている」ということで、賃金の現状についての追記をいたしました。

 次に、9ページの第2章から始まっている項目ですが、内容的には11ページです。11ページに、産業構造の変化、職業生活の長期化に対応した雇用の安定の充実という項目がありますが、中身としては、12ページの下段の5行目に「こうした中」から始まっている部分です。「こうした中、賃金については、今後AI等の進展により、定形業務が機械化された結果、賃金格差が拡大する可能性が指摘されており、AI等の進展に対応したスキルの習得を支援することが重要である」として、ここの項目についてはAI等の進展の影響を記載していますが、賃金格差の拡大の懸念、また、それに対応するためのスキルの習得の支援ということを追記いたしました。

 次は、15ページです。第3章、ウェル・ビーイングの向上と生産性向上の好循環となっていますが、前回お諮りしたときには雇用の質の改善と生産性向上の一体的推進というタイトルでした。こちらについて、雇用の質という用語では限定的な誤解を与える可能性があるのではないかという御指摘を頂き、ウェル・ビーイングという言葉を使わせていただいています。また、一体的推進ではなく好循環のほうが適切ではないかという御指摘を踏まえ、このようなタイトルといたしました。

 第3章の文章の下段に、「さらに」から始まる文章があります。前回の御議論の中で、第3章と第4章の関係が不明確であるという御指摘を頂きました。こうしたことからこの段落を付け加えており、「さらに、こうした好循環は、第4章の「多様な人々が活躍できる社会の実現」とも補完的な関係にある」ということで、第3章と第4章が補完的な関係であることについての説明文を記載しているところです。

 その下からが、就業面からのウェル・ビーイングの向上として、多様な働き方の実現、長時間労働の縮減等という形の文章が記載されております。16ページの中ほどの段落に、「さらに」から始まっている文章がありますが、健康経営についての記載を設けるべきではないかという御意見を頂きました。こうしたことを踏まえて、「長時間労働の是正の推進は、社員の健康の維持・増進に大きく寄与するものと考えられる」と記載しており、「「健康経営」を通じた従業員の健康問題の改善が企業・組織の生産性や業績の向上につながる可能性がある」ということと、「生産性を向上させる観点からも、長時間労働の縮減を含め、従業員の健康増進に配慮した取組を進めることが望ましい」という記載を追記しております。

 17ページ、最低賃金の引上げに向けた支援という項目があります。その最後の段落ですが、なお書きがあります。最低賃金の引上げがもたらす影響や効果について、きちんとフォローアップする必要があるのではないかという御指摘を頂きましたので、「継続的にフォローしていく必要がある」と記載しています。

 19ページです。雇用契約内容や雇用ルールに関する労働者の理解促進という項目があります。その2行目からですが、「雇用者のうち、「雇用契約期間の定めの有無」が分からない者は約478万人、「雇用期間の定めがある」者の中でも、その期間が分からない者は約195万人となっている」との記載があります。雇用契約期間が不明な方の人数等について具体的な記述を設けるべきという御指摘を踏まえ、追記いたしました。

 21ページですが、職場・職業に関する情報提供等という項目がありまして、下から2行目にジョブ・カードに関する記載があります。「ジョブ・カードは中高年齢者の円滑なキャリアチェンジや非正規雇用者の正規雇用への転換にも有効である」と、ジョブ・カードについて、転職にも資するものであるということを具体的に記載したものです。

 22ページ、④副業・兼業、雇用類似の働き方に関する検討等という部分があります。こちらについては冒頭で、「新たな技術の開発、オープンイノベーション、起業の手段や第2の人生の準備として有効であり」ということで、兼業・副業のメリットについて具体的に記載すべきという御意見を踏まえて追記をしております。また、一番下の行においても、「一方、労働者が仕事以外の領域に積極的に関わることにより、中長期的に企業の「稼ぐ力」を高める可能性があるとの指摘もある」ということを記載しています。

 同じ項目の中の一番最後の段落、23ページですが、なお書きです。働き方改革の推進が余暇時間を増大させることにより、「副業・兼業を現実的な選択肢としてなりうる環境を整備するもの」と考えているということについても記載をいたしました。

 次は、26ページです。非正規雇用労働者に対する職業訓練の実施等による生産性の向上という項目があります。この中で、なお書きとして最後の所ですが、「「雇用期間の定めがある」者の中でみると、雇用契約期間が長くなるほど、職業能力開発を受けている者の割合が高くなるという傾向」があるということで、雇用期間の長期化が能力開発に寄与する可能性について、こちらも前回の御議論で御指摘を頂いた内容について追記をしております。

 その下からが第4章、多様な人々が活躍できる社会の推進でして、27ページからが長寿化に対応した高齢者の活躍促進です。ここの部分については、前回多くの御議論を頂きました。その中で、2段落目の途中からですが、まず報酬の関係としては、「この際、成果を重視する評価・報酬体系の構築に向けた環境整備を図ることも重要である」ということを追記しております。また個々人の健康状態に違いがあるということについても明記すべきという御意見を頂きまして、「個々人の健康状態により違いがあると思われるものの」という文言を追記しています。

 また、「なお」からの段落ですが、派遣・職業紹介における週40時間までの就業を可能とする要件緩和等のニーズを踏まえた取組について具体的に記載しており、こうした地域や会員の方々のニーズを踏まえた取組の推進が必要であるということを記載しています。高齢者の一番最後の所ですが、社会参加について、「定年退職前の早い段階から社会的活動に関わることが重要である」ということを記載しています。

 27ページの一番下からが女性の活躍推進に向けた取組となっております。女性の活躍の場の拡大に向けては、「女性を単なる労働力としてみるのではなく、女性活躍の場が広がることが、多様性を生み、付加価値を生み出す原動力となるという認識が社会的に広く共有されることが不可欠である」という、社会的な認識の共有の重要性について記載いたしました。また、家事負担等についての取組も必要という御指摘を頂き、その下からは家事負担の軽減等に関する取組についても記載しております。

 28ページの下のほうからは、様々な事情を抱える人の活躍支援についてです。項目の一番最後の所、29ページの中段ですが、生活困窮者について関係機関のネットワークづくりの推進の必要性について記載しております。

 31ページからは第5章で、需給推計についての記載となっています。需給推計の内容については後ほど井嶋部長から御説明いただくところですが、今回は前提条件等について簡単に御説明いたします。2040年までの労働市場については、2段落目ですが、なぜ2040年を見据えているのかについてここで説明をしております。「我が国の人口は11,000万人まで減少し、団塊ジュニア世代が65歳を超え、65歳以上の人口は2042年には約3,900万人とピークを迎える」といったことと、「こうした状況を踏まえると、2040年までの労働市場を見据えながら、本研究会報告で示した就業面からのウェル・ビーイングの向上や、多様な人々が活躍できる社会の実現に向けた雇用労働施策を推進することが重要である」としております。その下からは、需給推計で推計していただいた数値についての記載となっております。

 32ページを御覧いただくと、なお書きがあります。今回の需給推計においては、改正入管法に基づく新たな外国人材の受入れについては含まれていないという状況です。こちらについては、介護、建設分野等14分野についての受入れを予定していますが、生産性向上や国内人材確保のための取組を行った上で、向こう5年間で約30万人を上限として運用することが予定されているところです。こうしたことから、当制度に基づく外国人材の増加のみならず、新たな対策を講じることによる女性や高齢者等の就業者数の増加も見込まれているということで、今般の推計には含まれていないということです。私からの説明は以上です。

○樋口座長 ありがとうございました。続きまして労働力需給推計の説明に移ります。労働政策研究・研修機構の井嶋統括研究員より説明をお願いします。

○労働政策研究・研修機構井嶋俊幸統括研究員()調査部統計解析担当部長 労働政策研究・研修機構の井嶋でございます。資料4を使いまして、労働力需給推計の概要について御説明いたします。簡単にポイントだけ御説明したいと思います。

 1ページ目の2、推計方法の所で書いておりますように、労働力需給に関する計量経済モデルによるシミュレーションを実施いたしました。これは2015年版の推計に使用したモデルを踏襲しておりますが、将来の経済前提の変更や直近の各種実績を踏まえ、外生変数の将来設定の更新等を行うとともに、モデルにつきましても関数の一部の見直しを行っております。

 この計量経済モデルですが、3つのブロックから構成されており、1つ目が労働力需要です。これは産業別の生産額から労働力需要を推計するものです。

 2つ目が労働力供給です。国立社会保障・人口問題研究所が平成29年に推計した日本の将来推計人口の中位推計を使い、ここに書いてある1)から4)までの説明変数によって推定される労働力率を乗じて労働力人口を推計しております。

 3つ目、この2つの労働力需要と労働力供給につきまして、賃金を媒介として調整を行うことにより就業者数を推計するという仕組みになっております。

 2ページです。この推計を行うに当たり、参考を含めて3つのシナリオを想定しております。1つ目が成長実現・労働参加進展シナリオです。これは各種の雇用政策等を適切に講ずることにより、若者・女性・高齢者の労働市場への参画と経済成長が進む場合、これを経済成長と労働参加が進むケースとしております。

 2つ目がゼロ成長・労働参加現状シナリオです。経済成長を達成できないまま、現在の性・年齢階級別の労働力率が変化せず、政策効果がほとんど出ない場合ということになります。これが経済成長と労働参加が進まないケースとしております。

 参考シナリオとして、この中間のようなケース、経済成長と労働参加が一定程度進むケースとして、ベースライン・労働参加漸進シナリオというものを設けております。

 3、政策変数等の設定についてです。このモデルの中で使っている実質経済成長率と物価変化率は、内閣府で出している「中長期の財政運営に関する試算」でございまして、経済成長と労働参加が進むケースにつきましては、内閣府が出しているほうの成長実現ケースを使っております。

 経済成長と労働参加が進まないケースにつきましては、これは私どものほうで独自に、2040年までほぼゼロ成長となるように設定をいたしました。

 参考シナリオの経済成長と労働参加が一定程度進むケースにつきましては、内閣府の「中長期の財政運営に関する試算」のベースラインケースというものを使っております。

 2)最終需要項目につきましては、日本経済研究センターの第44回中期経済予測の2030年までの推計値を使っております。

 3)具体的な成長分野の市場規模に関わる政策目標値としましては、日本再興戦略から未来都市戦略までの一連の戦略における成長分野の市場規模に関わる政策目標を使っております。例えば、aの健康長寿産業市場規模ですと2022年に26兆円、2030年に37兆円になるというような設定を行っています。このようにaからnまで設定を置いているところです。

 ただし、iの医療・介護費用の家計と政府負担分につきましては、これは2040年を見据えた社会保障の将来見通しの経済成長のケースのものを使っております。このように、経済成長と労働参加が進むケースについては以上のものを用いておりますけれども、3ページの黒ポツに書いてありますように、経済成長と労働政策が進まないケースでは、医療・介護費用の家計と政府費用の合計以外については設定を置かないということでやっております。この医療・介護負担の家計と政府負担分の合計につきましては、経済成長と労働参加が進まないケースにおいてはベースラインケースというもののシークェンスの値を使っております。

 それから、参考シナリオについては、その間ぐらいになるというようなことで設定をしているということでございます。

 労働力供給についてです。労働力人口を算出するための労働力率を説明するため、説明変数を以下のように1)から6)まで置き、7)の労働時間ですが、労働力供給に関する設定ということでこちらのほうにまとめて記載をしております。こちらにつきましても、4ページに書いておりますように、経済成長と労働参加が進むケースでは1)から7)までを全て前提としており、経済成長と労働参加が進まないケースにおきましては、余り経済成長から影響を受けないような1)2)6)については同じ設定とし、3)4)5)7)につきましては、経済成長が伸びないケースとして、ここに書いてあるような設定をしております。参考シナリオについても、同じような考え方で設定をそれぞれ行っています。

 このように設定をした形での数値についてですが、資料1、報告書の概要の4ページを御覧ください。ここでは2040年までの就業者のシミュレーションの結果を記載しております。2017年の実績値6,530万人から2040年の経済成長と労働参加が進むケースでは6,024万人と、ここでも506万人の減少にはなりますが、経済成長と労働参加が進まない場合には5,245万人と1,285万人の減少となっておりますので、経済成長と労働参加が進んだ場合には約779万人の増加になるということです。

 次の5ページで男女別にこれを見ております。男性につきましては、2017年の実績値が3,672万人でして、2040年の経済成長と労働参加が進むケースでは3,195万人と477万人の減少になります。ただ、経済成長と労働参加が少ないケースと比べて234万人の増加となります。ここの増加分ですが、右の労働力率の見通しによりますと、高齢者の労働力率が上昇するということで減少の程度が少なくなっているということになります。女性につきましてはその下のグラフですが、2017年実績値2,859万人から、2040年の経済成長と労働参加が進むケースでは2,829万人と30万人の減少にとどまっています。これが成長しない場合は2,284万と575万の減少ですので、545万人の差が出てくるということになります。こちらも右の図ですが、女性については、25歳以上の全ての年齢層で労働力率が上昇するという推定結果になっております。

 資料46ページです。今回の労働力需給推計を行うに当たり、実はAI等の新たな技術の進展による影響を考慮できないかということで検討していました。ただ、なかなか思うような数値が入手できなかったこともあり、今回ここでは労働生産性への影響という形で試算をしております。

 AI、ロボット、IoTの進展が雇用に与える影響ということで、実はOECDのほうで推計を行っておりまして、特に事務作業などのルーチン業務において、仕事の自動化のリスクが高いものと見込まれているという結果が出ております。AI等の進展は、雇用の喪失につながるという側面もありますけれども、これを逆に見ますと労働生産性の向上に寄与する側面もあると思われます。このため、OECDが推計した仕事の自動化リスクにつきまして、今後のAI等の進展が今回の労働力需給推計モデルの生産額に影響を与えないことや、OECDの推計については、いつこのような形で顕在するか時期が示されていないのですが、今回の推計に合わせて2040年時点で全て顕在化するという仮定を置いた上で、労働生産性の上昇幅への変換をすることによって、AI等の進展が労働生産性に与える影響を推定したところです。

 OECDの推計した仕事の自動化リスクを使って、AI等新たな技術が導入されなかった場合の雇用量の増分を計算して、その増分を上乗せした労働力需要量を逆算いたしました。これによりますと、2017年から2040年にかけて、AI等の進展が労働政策に与える影響は年率0.8%であることが確認されました。この需給推計モデルでは、例えば経済成長と労働参加が進むケースにおいては施策等によって労働供給が増加しますが、実は、それを上回るように労働需要が増加するということになり、大きく労働生産性が向上するということになってこの需要増に対する結果になっております。この経済成長と労働参加が進むケースにおける2017年から2040年の年平均労働生産性の上昇率が2.5%というのは、仮にAI等の新たな技術の進展による労働生産性の影響が全てこの2.5%に折り込まれたとしても、なお年率1.7%はAI等新たな技術の進展以外の資本蓄積や労働者の能力向上等により達成する必要があるということになります。

 今の話が7ページに示した図3です。一番左が経済成長と労働参加が進むケースで2.5%の上昇です。一番右ですが、このうちの0.8%がAI等の効果で、それ以外がAI等の効果を含まない場合の労働生産性の上昇率ということになります。この1.7%というのは、何かしらの形で達成をしないと経済成長も行われないという結果になっております。

 すみません。この資料の中で図12040年の数値ですが、先ほどお示しした概要には2040年の両ケースの差が780となっておりますが、779の誤植でございます。すみません。訂正をお願いいたします。説明は以上です。

○樋口座長 ありがとうございました。それでは、ただいまの説明を踏まえ、これより自由討議に移ります。どなたからでも結構ですので、御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。

 皆さんから事前に御意見を頂いておりますが、なるべく書き込むようにということで対応しました。まだ不十分だとか、ここはちょっとということがございましたら御指摘いただければ有り難いと思います。

○黒田委員 御説明ありがとうございました。前回まで連続して3回の会議を欠席させていただきまして、その間いろいろな議論があったと思います。もし、重複するようなことがありましたらお許しください。

 4点ほどございます。まず、1点が資料2、研究会報告書の16ページです。先ほど、「さらに」という真ん中ぐらいの段落の「こうした長時間労働の是正の推進は」というパラグラフについて追記をしたという御説明を頂きました。内容自体は私自身も同意するところなのですが、もう少し加筆していただきたい点があります。長時間労働の是正の推進は、健康の維持・増進に大きく寄与するものと考えると書いていらっしゃいます。もちろん、長時間労働の是正はそういったプラスの面もあるかと思うのですが、一方で最近よく聞かれるのは、これまでの業務の量や業務の質というのはそのままで、長時間労働を是正して早帰りを励行するという中で、今後は1時間当たりの労働強度が非常に高まっていくのではないかという懸念です。その意味では、長時間労働の是正だけをひたすら推進することになると、むしろ労働強度のほうが上がってしまって、健康面にはマイナスの影響がある可能性もなくはないという点を追記していただければと思います。

 また、同じパーツのパラグラフで、プレゼンティーイズムの説明がございます。米国の研究を引用なさっていますが、既に日本の研究もいくつか出ています。産業医大のチームが一昨年、賃金センサスを使ってプレゼンティーイズムの試算もしています。最近ではこうした日本のデータを用いた研究もでてきていますので、こうした研究を引用していただくとより良いのではないかと思います。これらが1点目です。

 2点目は20ページ、リカレント教育の所です。ここの内容自体には私自身は賛同するところではあるのですが、読み手によっては、第二のキャリアのための勉強というようなことだけに議論が集中しているようにも読めてしまう印象があります。私が慶應の山本先生と最近検証した分析ですと、若い人たちが自己研鑽の時間を以前よりも確保しなくなってきているという結果も見えてきています。特定の年齢に限らず、全ての人が学んでいくというようなトーンに少し変えていただいたほうがいいかなと感じております。

 第3点目ですが、23ページの真ん中ぐらいのパラグラフで「なお、働き方改革の着実な推進は」という所、こちらも追記していただいたという御説明があったと思います。恐らく意味は分かるのですけれども、現在、できるだけ長時間労働を是正しましょうという流れになっている中で、長時間労働を是正すれば余暇時間が増大するのだから副業・兼業をやりましょうと推進するのは、ロジックとして少し破綻しているような気がいたします。これ以外の箇所でも副業兼業の推進というトーンで書かれているところがいくつかあるのでそうした印象をもってしまうだけなのかもしれません。したがって書き方だと思うのですが、働き方改革によって余暇時間が増大する、その結果として、その余暇時間をいろいろなことに使える、その中のオプションの1つとして、副業や兼業もあるのではないかという中立的なトーンで書かれたほうがよろしいのではないかと思います。これが3点目です。

 それから、これは完全に瑣末なこと、私の読解力の問題だと思うのですが、3ページの真ん中のパラグラフ、「また、1997年以降」という所があります。読んでいて若干違和感があったのは、就業者数は2012年から5年間で250万人増加していて、このうち220万人は非正規雇用が増加したことによるということは、正規雇用は30万人の増加なのかなと読んでしまう人もいるように思います。そのように読む人からすると、続く文章の数字がちょっと不思議な感じもしまして、ここは少し文章を補っていただくなどしたほうがいいのかなと思いました。以上です。

○樋口座長 ありがとうございました。今の御意見について皆様から何かありますか。では、最後の3ページについて説明していただけますか。

○職業安定局雇用政策課長 最後に御指摘いただきました3ページの部分です。こちら、非正規が220万人増加しておりますが、正規については約70万人増加しております。この差でトータルが合わないのですが、ここについては自営・家従の減少が影響している部分があります。その後で2015年からの3年間で更に135万人とありますが、ここは減った後に増加したところを記載して、増加の部分についての記載をしておりますが、御指摘のとおり少し分かりにくい文章になっているかと思いますので、もう少し記載ぶりについて検討させていただければと思います。

○樋口座長 他の点について何か事務局からあれば。今、3点あったと思います。

○職業安定局雇用政策課長 1点目の御指摘であります16ページですが、発想としましては、生産性の向上を通じまして、長時間労働の是正が円滑に進むことが促進されるという観点からも、その生産性の向上ということの両者の好循環が必要ということを書かせていただいている部分はありますが、そうしたことが明確に読み取りにくい部分もあろうかと思いますので、そちらについてはもう少し記載ぶりを検討させていただければと思います。また、引用についても検討させていただければと思います。

 2点目のリカレント教育についても、もう少し幅広く読み込めるような形での記載を検討させていただきます。

 副業・兼業の余暇時間の関係についてです。おっしゃるとおり、選択肢の1つとして記載したつもりではありますが、まだ記載ぶりが、「選択肢となりうる環境」という形で書かせていただいており、「なりうる」に思いは込めたつもりではありますが、もう少し分かりやすい表現がないか検討させていただければと思います。

○樋口座長 よろしいですか。では、ほかにありますか。

○玄田委員 御説明ありがとうございます。私は特に修正ということではなく、感想めいたことなのですが、今回の雇用政策研究会のまとめについてどういう方向でやるのかというのは、当初やや不安な感じもしましたが、資料11ページが一番良いと思うのですが、「好循環」というキーワードと「相互補完」というキーワードを前面に出したことによって、報告書全体の統一感というか、メッセージがかなり明確になったのではないかと思っております。

 その上で、2ページ以降の施策についても、大変そのとおりだと思うと同時に、一方でやや思いますのは、こういう政策は、これまで厚生労働省の雇用政策の中で全く抜け落ちたものというよりは、これまでも進めていたものをより着実に強化していくことであるのだなという印象を持ちましたので、そういうことを書く必要があるかどうか私には分かりませんが、思いとしては、これまでも取り組んできたことを着実に実行していく方向で、これを理解されるといいのではないかと思いました。

 1点、需給推計について、これは若干要望になるかもしれませんが、今回、目玉のAIを一生懸命苦労されて推定されて、生産性向上0.8%という数字が非常に何とも言えず微妙で良いという感じがして、これに過度な期待もせず、また逆に過小に評価せずということで、今はこのぐらいの水準でまずは冷静に受け止めながら、AIのことを考えていくべきではないかということだと思いましたので、特にこの点についても異論があるというわけではありません。

 1点、むしろもう少し強調してもいいかと思いましたのは、資料15ページの需給推計についてです。右下の女性の労働力率の見通しについて、私はこれはかなり注目すべき図表だと思っておりました。経済成長と労働参加の見通しが立った場合には、女性の労働率のM字カーブがもちろん解消されているのですが、解消どころか、解消から台形になると同時に、台形の高さがより高くなる可能性がもっとあるのだということは、この図表の持っているかなり大きなメッセージで、単にM字カーブを解消することだけが目標ではなくて、恐らくは短時間雇用の活用などの部分と保育の部分と両方必要だと思うのですが、そういうことを進めていくと、実は女性がもっと労働参加する余地は残されているのだということの、より強いメッセージにもなっているような印象を持ちました。

 そういう面では、報告書の32ページの冒頭での「M字カーブのほぼ解消されている」という書き方は、若干弱いかと思うのです。つまり、繰り返しになりますが、経済成長と労働参加が進めば、女性はもっと働ける余地があって、言い換えれば、もっと働きたいと思いを持ちながらも働けない女性がまだまだいるので、M字カーブの解消を1つの結論とするのではなく、さらに、もっと拡大をする余地があって、この部分を注目していくべきだというメッセージになっても、この推定と矛盾しないように思いましたので、是非その辺りは場合によっては御検討されてもいいのではないかと思いました。

 改めて拝見すると、今後の課題みたいなこともあるかということも思いましたが、それは後で時間があったら述べさせていただきます。以上です。

○樋口座長 ありがとうございました。もし時間があったらというと。

○玄田委員 では、これが最後なので。好循環とか補完を考えたときに、これはどちらかと言うと、労働市場の全体の施策であるか取組であるというふうに報告書は書いてあるように思いましたが、最近、就業支援のようなことの研究会とか、実際、ヒアリングをしますと、もう少しミクロベースというか世帯単位の支援が雇用政策でも大事だと思うことを、実は堀さんと一緒に出ている研究会の中でも感じることが多くて、直近の言葉で言うと、7040とか8050という言葉が最近は非常につぶやかれるようになって、親と子が共倒れをしていくことが、これから深刻になってくるのではないかということなのです。

 そういうときは、もちろん福祉面での対応は大事だけれども、実は問題を抱えている親には子供も就業に問題を抱えていて、例えば、サポステで30代後半の親の支援をしようと思ったら、実は10代後半から20代の子供も就労に問題を抱えていて、言葉はあれですが、両方が障害になってなかなか働けないとすると、親子丸ごと支援していかないと、親だけ支援したり、子供だけ支援しても、問題はなかなか解決しなくて、両方が抱えている問題に同時に対応していかないと、好循環とか相互補完という関係はなかなか見えないと思うのです。

 今まで雇用政策というのは、どちらかと言うと個人単位の支援が大前提であることが多かったと思うのですが、もしかしたら、これからの時代は、特に人生100年時代を考えると、親子で共に問題を抱えている、就労面の問題を抱えているケースがますます増えてくるし、これを放置すると、個人単位の様々な就業格差が、世帯単位の格差の更なる拡大になるようなおそれもあると思うので、好循環、相互補完というメッセージは、マクロベースだけではなくて、もっとミクロな世帯などの問題の就労施策などでも、これからもっと注目していく問題になるのではないかと思いました。

 これは今回の報告書で書くべきことだというふうには必ずしも思いませんし、今回のこれは良くまとまっていると思いますので、今後、就業政策を考えるときの多様な働き方は、個人だけではなくて世帯とか家族単位で見ていく時代に入っているのだということを、次回のこの政策研究会あたりでは、より詳しく議論できたらいいということを感じた次第です。以上です。

○樋口座長 どうもありがとうございました。次回の宿題も頂きました。

○清家委員 とても良い報告書に仕上げていただいたので、2点だけ感想を申し上げたいと思います。いろいろな議論をさせていただきましたが、とてもバランスの良い目配りの利いた報告書になったと思います。ちなみに御承知かと思いますが、今年、ILOILO創設100年を記念して仕事の未来についての報告書を出しますが、実はその提言の柱が3つあって、1つが3つの投資なのですが、人への投資、ルールとか労使関係を含めて雇用に関する制度への投資、リーセントな良好な雇用機会への投資という、3つの面での投資を強調しているわけです。

 この報告書を改めて見ますと、人への投資の話も入っていますし、また、制度への投資、良好な様々な雇用環境をつくるという意味での制度的な枠組みづくり、良好な雇用機会をつくるという良い雇用機会への投資の話も入っているわけです。そこで別に平仄を合わせる必要は必ずしもないのかもしれませんが、そういった世界の雇用について考える方向性とも整合性があると思っており、そういう面でもとても良い報告書にしていただいたと思います。

 もう1点は、先ほど玄田さんが言われたことですが、これはある面で良い意味での予想外というか、労働力推計ですが、前回の推計のときに比べて、今回は予想以上にこの数年間でも女性や高齢者の労働力率が高まったわけです。そういう面では、この間の労働政策といいますか働く意思と能力のある労働力を、その能力をできるだけ活用できるようにしようという政策が、ある面では功を奏したのだと思います。こういう報告書で、そういう自画自賛みたいなことは余り書かないほうがいいので、そこまで書き込む必要はないと思いますが、私はこういう予測は余りオプティミスティックにならない、最悪の状況を予測して対処するのがよろしいと思いますので、その面で今回の予測が前回の予測に比べて、言わば上方に修正されたのはとても良いことであって、そういう面で、先ほど玄田さんが言われたように、またこれが将来の推計において上方に再推計されるといいとも思いました。以上です。

○樋口座長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。

○神吉委員 報告書をありがとうございました。全体的にいろいろな意見を、しかも多様なテーマに関してまとまって、本当に良い報告書だと思います。大枠に関しては、特に異論はないのですが、若干、概念として気になる部分がありますので、それだけ述べさせていただきます。

 今回、資料2の研究会報告書で、若干書きぶりが変わった部分がありまして、特に第3章のウェル・ビーイングの向上と生産性向上の好循環ということです。その下の目次を見ますと、就業面からのウェル・ビーイングの向上とあって、ウェル・ビーイング自体には特に異存はないのですが、若干気になるのは、この就業面ということです。概要のほうでも就業ということを前面に出されていて、ただ、この内容で書かれていることは、恐らくそれまで雇用の質を高めるという、その部分だと思うのです。若干気になるのが、この就業というものと雇用というものが、どのように位置付けられているかという、その相対的な関係です。中を見ますと、恐らく就業のほうがやや広く、副業人生といったように広く考えられているのではないかと思います。

 具体的に言いますと、雇用だけではなくて、第3章の「就業面からのウェル・ビーイングの向上」の④の所で入ってきている雇用類似の働き方に関する検討というものがありますので、雇用だけではなくて、その周辺の雇用類似もここに入っているのだろうと思われるのですが、恐らく就業というともう少し広くて、雇用に類似しない自営といった働き方も本当は入ってくるはずで、そうなってくると、この中身とタイトルがややミスマッチであるかなと思います。

 これを「雇用面からのウェル・ビーイングの向上」としてしまうと、これは狭すぎるのかもしれませんが、それは避けたいところです。就業面ということを言いたいのであれば、就業の中での雇用の位置付けです。ここは雇用政策研究会ですから、その中でも雇用に関する部分に働き掛けるという意義付けです。それは積極的な意味もあろうと思いますが、これだけフリーランスなどが広がっていくという時代では、もしかすると相対的に影響力が下がっていくのかもしれないのです。それを踏まえた上での相対的な位置付けを確認するような言及があってもよいかと考えています。

 若干、雇用類似の働き方の位置付けで気になる部分が他にもあります。11ページの「働き方改革の推進、働き方の選択肢の拡大」とタイトルが付いている部分の最後の段落ですが、「我が国が目指す同一労働同一賃金の実現等を通じ」という文章がやや長いので、それがどこまで掛かっているのか分からないのですが、特に最後の所です。「必ずしも雇用関係によらない働き方といった働き方の選択肢を整備していくことが必要である」とあるのですが、これがなぜ出てくるのか、やや唐突感があると思います。

 この前の雇用類似の働き方に関しては、23ページ以降で今後検討を進めることが必要だと述べられているのみで、今回検討してもいないですし、実際どのような保護が必要かという検討がまだ進んでいないにもかかわらず、ここが積極的に進められる選択肢であるかのような書きぶりをしているのは、やや違和感があるかなというところです。私からは以上です。

○樋口座長 ありがとうございました。実は、ここは非常に我々も苦労して書いた所で、雇用と言うと、何となく雇用主、雇うほうからというイメージが非常に強いのではないかと。本来、「働くということから」という意味で、働くことによるウェル・ビーイングと言うほうが、働き手のほうからの印象が強くなるのではないかということで、おっしゃるように自営をどうするのかという、統計的にはそういった問題がいろいろあると思うのですが、そこの所を一応こういう表現にしたということなのです。

 雇用のほうがよろしければ、また雇用としますが、「雇用面からのウェル・ビーイング」と言うと、どういう意味かなというところで、むしろ事務局に私のほうから、「働くということ、じゃあ就業だよね」という話で言ったのです。

○鶴委員 私は就業というか、就業者の立場でのウェル・ビーイングという整理のほうが分かりやすいなと。ウェル・ビーイングというのは結構幅広い概念で、通常は我々雇用者の、雇用主でもいいのですが、やはり処遇というところに非常に観点を集中しがちだったのですが、ウェル・ビーイングというのは働く人、それが雇用者であり就業者であり、処遇というところを超えて、どれくらいやり甲斐を持っているか、働き甲斐があるか、どれくらい没頭できるかという、いわゆるエンゲージメントと言われる話ですが、そういう話とか、ここにあるようにメンタルヘルスとか、そういうものもここに入ってくるわけです。そうすると、幅広い概念で働き手の状況を総合的に評価、どういう状況なのかというところを見ていくというのがポイントなので、雇用者としてしまうと、結局これまでの処遇、賃金がどうなのかといったような非常に狭い意味での処遇というところから、もう少し広げて考えていきましょうというメッセージが伝わりにくくなると思います。そういうことであれば、雇用類似の働き方というところも含めて考えているということが、この概念の重要性というものが、これからどんどん出てくるのではないのかなと。そういう意味でも、今回このウェル・ビーイングというのをキーワードで使ったということは、私は非常に大きな意義があると思います。以上です。

○樋口座長 両面あるので、どうしますかね。事務局としてはどちらかにしてほしい、任されても困るというところですかね。

○職業安定局雇用政策課長 樋口先生からも御説明いただきましたように、多分、定義的に言うと、雇用者というのが中心になるというのはおっしゃるとおりでして、ただ、雇用面という形で捉えてしまうと、鶴先生の御指摘、また、神吉先生自身もおっしゃっていたように、何か狭く捉えられがちな可能性があるということで、働いている方目線ということと、また、そうした働くということについての様々なウェル・ビーイングの向上ということを考えた場合に、「就業面からの」という用語を使わせていただきました。

 おっしゃるように、雇用類似の働き方などについては、まだまだ検討が始まった段階でして、今後の取組による部分というのが大きいわけではありますが、その打ち出しとしましては、就業面という打ち出しをさせていただいて、また、11ページの所で後段の書きぶりとの整合性が取れていないのではないかということにつきましては、この表現ぶりについても検討させていただければと思います。

○樋口座長 いかがですか。後段について修正を加えるということ。

○職業安定局雇用政策課長 11ページの部分については検討させていただきますが、可能であれば「就業面からの」という文言は使わせていただければと思っています。

○樋口座長 雇用類似の働き方と言われているものが増えていく、それを促進するのだと思われると困るということですよね。

○神吉委員 促進するもしないも、実態のほうが先に進んでいて、そもそも政策的介入でどこまでできるかということが、まだこれからの検討段階ということだと思います。

 ここは厚く書いてほしいという、そういう要望ではないのです。ウェル・ビーイングには全く異論はありません。ただ、この就業というのは専門特性なのかもしれないのですが、やはり法律的な観点から見ると、どうしても契約関係で切り分けますので、雇用とそれ以外のものを含む就業というのは、指しているものが大分違うだろうとどうしても受け取ってしまうので、その違和感を述べさせていただきました。

 結局、需給推計も賃金という雇用労働の対価を手掛かりに分析しているわけですよね。やはり念頭にあるのは雇用なので、政策として今後、広く就業全体、もっと自営やフリーランスの働き方も含めた本当に多用な働き方のことを考えていくのだということを打ち出すのは、全く問題ないと思います。そうあるべきだと思うのですが、ここで挙げている分析は結局雇用の分析なので、若干そこにミスマッチを感じるという点だけです。

○清家委員 今、誤解があると思うのですが、この推計で賃金を使うというのは、雇用労働だけを前提にしているわけではなくて、賃金というのは、オポチュニティーコストという意味では、自営の就労にも影響を与えているのです。ですから、賃金を使っているから雇用労働に限定しているというのは誤解だと思います。

○樋口座長 働く者というのも、英語にすると全部エンプロイメントになってしまうのですよね。

○清家委員 就業で全然問題ないでしょう。

○樋口座長 いいですか、ありがとうございます。では、御指摘の後段については調整するということで。他にいかがでしょうか。

○堀委員 御説明ありがとうございました。今回の報告書はとてもバランスよくまとまっていて、私としては特段意見はないのですが、今後の要望として1点述べさせていただきます。先ほど玄田先生からも御指摘があったのですが、女性の労働力率の見通しの高さに、今回すごくびっくりした点もありました。もし、本当にこれだけ女性の労働力率が上がるとすると、かなり日本社会全体が大きく変わることを余儀なくされるだろうと推測します。そうしたときに雇用政策からはみ出すというか、雇用政策でできることと、なかなか難しいことというのが、恐らくかなり出てくるということで、今も雇用とは何かという専門的な議論があったわけですが、今後どのような形で雇用政策について考えていくかということについて、長期的に御検討いただけますと大変勉強になります。

○樋口座長 ありがとうございました。正に日本社会というか、企業だけではなくて、それぞれの世帯におけることも含めて、あるいは社会・地域ということとの関連なども考えていく必要があるだろうという、大きな課題になるかと思いますが、よろしいでしょうか。

○玄田委員 もう1つだけ、資料1の今回一番の顔になる所です。これを実現するウェル・ビーイング、生産性向上、好循環と相互補完のキーパーソンになるのは、女性管理職ではないかと思っています。どちらかというと今の雇用政策の最大のネガティブな課題は、やはりハラスメント問題で、言ってみれば今は生産性向上とウェル・ビーイングの悪循環が起こった結果が、ハラスメントの問題だと言ってもいい面があるのではないかなという気がしているのです。この前、リクルートが最近やっている調査を使って少しだけ見てみたのですが、やはりハラスメントの認識ですが、一番気付くのは女性の課長職で、女性の課長職がこの部分の問題に対して気付き、何か働き掛けをしていくというのが、今後ハラスメント問題の解決の課題かなという気がしています。

 なぜかということになると、またいろいろ議論があると思うのですが、これはとても良い絵が描いてあるので、誰がやるかといったときに、恐らくこれも今後の課題で、先ほど堀さんが言われたように女性の労働力率が上がるだけではなくて、女性にしかるべき権限と選択肢が与えられる状況になっていかないと、多分この好循環が回っていかないのではないかと思うのです。是非今後また将来の雇用政策研究会のときには、先ほど清家さんが言われたように、比較的、今は数としては良い方向に行っているので、一方で男女間の問題を考えたときに、もう1歩、2歩、やはり女性の働き方が変わっていかないと、この好循環は回らなくなるなということも、同時に今回の報告をまとめる中で感じたりもしたので、是非その辺りも注目しながら、もちろん女性の管理職を増やすということは、ずっと課題として上がっていながら改善していないということなので、今こうすればというのを申し上げることはもちろんできないのですが、誰がこれを進めていくのかといったときに、もし聞かれたときに、1つのキーパーソンになるのは、そういう女性の責任を持った立場の人たちがもっと増えていかないとということもあるのかなということを感じました。以上です。

○樋口座長 ありがとうございます。正に、この研究会報告が示唆する内容というのは、非常に大きなものなわけで、どう実現していくかというのは、もう1つ今後の課題ということでしょうね。よろしいでしょうか。では、どうもありがとうございました。ただいま頂いた意見を踏まえまして、修正をさせていただきたいと思います。修正内容については、必要に応じて委員の皆様にも御相談させていただきたいと思いますが、よろしければ私のほうに御一任いただければと思います。よろしいでしょうか。

(了承)

○樋口座長 ありがとうございます。それでは、委員の皆様には昨年の4月から8回にわたって、この研究会に参加していただきました。どうもありがとうございました。非常に貴重な報告書が取りまとめられたのではないかと思っています。

 それでは、事務局から今後の研究会の開催について、御連絡をお願いします。

○職業安定局雇用政策課長 事務局から連絡いたします。今回をもちまして、雇用政策研究会報告書の議論については終了となりますが、地域における人口減少などが課題となる中で、都道府県別の労働力需給推計を示すことも重要ということから、労働政策研究・研修機構におきましては、引き続き都道府県別の労働力需給推計を行うことを予定しています。出来上がりは来年度となることが見込まれていますが、推計結果については、改めまして皆様に御相談させていただくこともあろうかと思いますので、引き続きよろしくお願いします。

○樋口座長 どうもありがとうございました。それでは、雇用開発部長から御挨拶をお願いします。

○雇用開発部長 本研究会の取りまとめに当たりまして、一言、職業安定局長に代わりまして御礼を申し上げます。本研究会は、今後見込まれる人口減少とAI等の進展に伴う産業構造の変化を見据えつつ、我が国の雇用政策のあるべき方向性を御議論いただくべく開催をいたしました。昨年4月から8回にわたりまして、委員の皆様に熱心な御議論を頂きましたことに、まずは厚く御礼を申し上げます。

 本日、御議論いただいた報告書では、2040年の我が国が、一人ひとりの豊かで健康的な職業生活の実現、人口減少下での我が国の経済の維持・発展を実現できるよう、ウェル・ビーイングの向上と生産性向上の好循環を図ることと、多様な人々が活躍できる社会の実現という、2つの軸の下で、様々な施策の方向性をお示しいただきました。

 今後につきましては、本日頂いた御意見を踏まえて、樋口座長と御相談の上、近日中に研究会報告書として公表したいと思っています。出来上がりました報告書は、今後の各種施策の推進のために活用させていただきたいと思っています。

 最後になりますが、改めまして精力的に御議論いただきましたことについて、重ねて厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

○樋口座長 それでは、以上で終了いたします。どうもありがとうございました。

 

 

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