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2018年10月19日 第6回雇用政策研究会(議事録)

職業安定局雇用政策課

○日時

平成30年10月19日(金) 10:00 ~12:00

 

○場所

厚生労働省議室

○出席者

委員

樋口座長、阿部委員、神吉委員、神林委員、玄田委員、清家委員、鶴委員、山本委員
田端大臣官房審議官(職業安定担当)、岸本職業安定局総務課長、富田労働基準局総務課長、吉田雇用環境・均等局雇用環境・均等企画官、志村人材開発統括官参事官(人材開発総務担当参事官室長併任)、奈尾政策統括官参事官(労働政策担当参事官室長併任)、弓職業安定局雇用政策課長、久保職業安定局雇用政策課雇用政策係長

○議題

(1)事務局追加資料について
(2)これまでの主なご指摘事項と政策の方向性について
(3)労働力需給推計について(非公開)
 

○議事

                                
 

○雇用政策課長 お時間より少し早いのですけれども、皆様おそろいでございますので、ただいまより平成30年度雇用政策研究会(6)を開催させていただければと思います。私は、雇用政策課長の弓でございます。

 委員の皆様におかれましては、御多忙の中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。本日の委員の皆様の出席状況でございます。御欠席の委員の方につきましては、荒木委員、大竹委員、黒澤委員、黒田委員、佐藤委員、堀委員、宮本委員が御欠席ということでございます。また、清家委員は途中での御退席を予定しているところでございます。土屋職業安定局長については、急遽業務の対応がございまして欠席となりますことをおわび申し上げます。

 本日の資料についてですが、資料1「委員名簿」、資料2「研究会スケジュール」、資料3「事務局追加資料」、資料4「これまでの主なご指摘事項について」、資料5「雇用政策研究会報告書(骨子素案)。資料6、資料7については非公開での議事資料です。委員の皆様には、机上に配布させていただいていますが、資料6「需給推計について」、資料7「労働力需給推計報告書()」、資料8「議事の公開について」となっています。

 本日の研究会については、資料67を除きましてペーパーレスでの開催とさせていただいています。使用方法については、卓上の操作説明書を御確認いただければと思います。また、不明な点がございましたら事務局職員にお申し出いただければと思います。

 それでは、議事の進行については座長にお願いできればと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○樋口座長 それでは、よろしくお願いします。本日、まず最初に事務局から前回の会議で、皆様から頂きました意見に基づきまして追加資料を用意していただいてますので、それについて御議論いただきます。その後、これまでの主な御指摘事項と政策の方向性について。そして最後に、労働力需給推計の3つを取り上げていきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 なお3点目の労働力需給推計については、議事の公開の基準にのっとり非公開とさせていただきます。また、労働力需給制度に関する資料67については委員のみ配布しておりますので、御了承を頂きたいと思います。

 それでは1つ目の議題であります。事務局から追加資料について、説明をお願いいたします。

○雇用政策課長 それでは資料3「事務局追加資料」について御説明申し上げます。まず2ページ、フルタイムの労働時間の推移についての所定内労働時間、所定外労働時間の推移のグラフです。所定内労働時間については、バブル期を境に大きく減少しています。こちらは1980年代後半から1990年代前半に掛けまして、週法定労働時間が短縮された影響があるものと考えられるところです。一方、所定外の労働時間についてはバブル期で減少していますが、それ以降、大きな変更は見られないところです。

 3ページ、フルタイムの労働時間の分布についてお示ししたものです。左側が所定内労働時間の分布、右側が所定外労働時間の分布について、1990年、2010年、2017年についてのグラフを示しています。まず所定内労働時間については、1980年や1990年と比べまして2010年、2017年において大きく分布が変わっています。時間が短くシフトしているといったことが確認されるところです。所定外労働時間の分布、右側ですが、こちらについては実線が景気が良かった時期、1990年と2017年です。こちらのほうが景気が悪かった1980年や2010年に比べますと、長時間の方の割合が高いといったことが確認されるところです。

 4ページ、管理的職業従事者の労働時間の分布についてです。こちらについては、正規雇用者の分布と比較して、就業時間が短い方の割合が比較的高いといった状況が確認されるところです。

 5ページ、事業所における雇用期間の定めありから雇用期間の定めなしへ転換した方についてのグラフを示しております。2017年に増加しています。こちらの内訳を見ますと、卸売・小売や宿泊業・飲食サービス業等において増加していることが見られるといったところです。20184月以降に、5年を越えた場合には無期転換の申込みの権利が発生することになり、それに先立っての増加といったことも考えられるところです。まだこちらは2018年の数字が出ていませんので、2017年までの数字ということになりますが、こういった状況です。

 6ページ、副業を持つ雇用者の割合についての国際比較の資料を準備させていただきました。左側、赤と青の部分があります。赤については、雇用者に占める自営・家従の副業を持つ方の割合。青については、雇用者に占める雇用者の副業を持つ方の割合を国別に示しているものです。日本はイギリスに並び、この比較している国の中では低い水準となっていますが、自営・家従については諸外国と比べて、それほど低い水準ではありませんが、雇用者の副業を持つ方の割合が低い状況が確認されるところです。右側は、副業の産業別の雇用者数についてのグラフを作成したものです。こちらは日本だけになります。まず自営・家従については、農林漁業の副業を持つ方が多いといったことが確認されるところです。雇用者の副業としては、卸売・小売や医療・福祉などで多いといったところが確認されるところです。

 7ページは、今、グラフの中で示したものを、更に本業と副業先の産業別にクロスでの数字を取ったものです。黄色の色が付いている部分は、同一産業のところが分かりやすいように色を付けています。その他青の部分については、同一産業以外のところで同一産業以上に副業を持っている方が多い部分について、マーカーを引いているところです。副業先の雇用者を産業別に見ますと、やはり製造業での小売や製造業との宿泊、飲食サービス業などに青のマーカーが付いています。本業を製造業として、副業先を卸・小売や宿泊・飲食業という方が青のマーカーが付いている状況が確認できます。

 8ページ、収入と時間当たり、週当たりの労働時間との生活の満足度の関係を示したものです。満足した方の割合の数字を記載しています。こちらは収入が高くなり、また労働時間が短くなるにつれて満足度は高まるということです。逆な言い方を申し上げれば、収入が高くとも労働時間が長時間に及ぶ場合には、満足度が低くなる。また一定の労働時間で切ってみますと、やはり同じ労働時間の中では収入が高い方が満足度は高くなるといった状況です。簡単ですが、以上です。

○樋口座長 ありがとうございました。それでは今の説明について、御質問、御意見ありましたらお願いいたします。

○鶴委員 6ページに、雇用者に占める副業を持つ者の割合、国際比較があるのですけれども、先ほど御説明いただいたように、雇用者に占める雇用者の副業を持つ割合というのは、日本は他の国に比べて低いと。イギリスとは余り変わらない状況だと思うのですけれども。特に北欧でこの割合が高いというのが、もし御存じだったら教えていただきたいなと。労働時間というのが、結構、この副業を持つ者の割合というのに影響を与えるのか、それからここに挙げている国で、副業に関して日本と異なる法制度やそういう形でより取り組みやすい形になっているかどうかなど、もしこの図を説明できる背景ということで事務局で御存じであれば教えてください。

○樋口座長 お願いします。

○雇用政策課長 鶴先生がおっしゃるように、何かその制度的な背景によることが考えられますが、申し訳ありません。そちらのその背景までの分析はできている状況ではありません。

○樋口座長 では、ちょっと調べてもらって分かれば、教えていただくということに。あるいは委員の方で、どなたか。それでよろしいですか。他にどうでしょう。

○山本委員 追加資料、ありがとうございます。労働時間の所の3ページで、前回も申し上げたのですが、賃金センサスを使うのもいいとは思うのですが、やはり労働者個人への調査である労働力調査を使ったほうが時間の比較ができるのかなと思います。

 4ページ目は、労働力調査を使っていらっしゃるのですが、少し図の作り方が混乱すると思いました。管理的職業従事者で短時間の労働者がかなりいるというところがあるので、右側の辺りは、多分、形は変わらないのでしょうけど、短時間を除くともうちょっと管理的な人たちの水準が上がると思うので、そうするともしかしたら正規雇用者や平均よりも長時間労働になっている可能性もあります。これは比率だと思いますので、ちょっと作り方を変えるとまた違う見え方がしてくるのかなと思います。

 5ページ目の無期転換ですが、これはまだよく分からないということだと思うのですが、2016年~2017年に大きく高まっていて、非常に注目すべき数字なのかなと思うのですが、何か他の調査、統計ではなくてもアンケート調査などでこういった傾向が見えてきているのかどうかなど、そういった情報をお持ちであれば教えていただきたいと思います。

○樋口座長 お願いします。

○雇用政策課長 まず労働力調査と賃金構造基本統計調査については、前回も御指摘いただきました。すみません、本日の資料には特に付けていません。申し訳ありませんが、労働力調査と賃金構造基本統計調査の数字について確認をさせていただきましたときに、就業時間の分布を見ますと、ピークの所はそれほど変わらないのですが、若干、その労働力調査のほうが分布としては長い方が多いという傾向が見られるのかなということは確認しています。

○樋口座長 ごめんなさい、何が多い。

○雇用政策課長 すみません、月当たりの就業時間が長い方の割合が、労働力調査のほうが若干長めに出るということです。また委員の皆様には別途、資料はお渡しできるように準備させていただければと思います。

 今回、御提示した資料4ページの作り方については、御指摘を踏まえ適正な作り方に努めていきたいと思っています。また「期間の定めなしへの転換」の所については、我々が当時、把握したものは2013年~2017年までの調査ということで、こちらを使わせていただいているところです。他に何か資料がないのか、また改めて確認させていただければと思います。

○樋口座長 よろしいですか。今の管理的職業従事者が出ている4ページの、短時間の管理的職業従事者が多いというのは、これは雇用者ですか。限定して。

○雇用政策課長 雇用者です。

○樋口座長 限定しても。

○雇用政策課長 限定しても。山本委員がおっしゃるように、短時間の方が比較的に多いという形ですので、短時間での管理職的な立場で働いていらっしゃる方は、これであると一定割合いらっしゃるという数字が出ている状況です。

○樋口座長 神林さんは、管理的職業を兼業なさっているけれども、これはこういうものですか。短時間の管理的職業従事者が、労働者でも多いと。

○神林委員 はい、そうだと思います。

○樋口座長 そうなのですか。よろしいでしょうか。他にどうでしょう。よろしければ、2つ目の議題に移ります。これまでの主な御指摘を受けまして、事項と政策の方向性について、整理させていただきましたので、事務局から説明をお願いします。

○雇用政策課長 それでは資料4に基づきまして、「これまでの主なご指摘事項について」で御説明します。

 こちらの資料ですが、今回、研究会において委員の皆様から頂いた御意見を整理したものです。若干、要約している部分もありますけれども、点線部分の中で書いている事項については、委員の皆様からの御意見です。左上にタイトルを付けています。こちらはテーマごとにまとめる際に、タイトルとして事務局が作成したものです。

 簡単に下線部を中心に御説明します。まず我が国の経済労働市場の変化と課題です。適度な人手不足感が、長時間労働の緩和等、労働条件を改善させる可能性もある。労働需給がタイトになることによって、正規転換や賃金上昇を進められるのではないか。緩やかな人手不足の維持を政策目標として掲げてはどうか。所得分配に関しては、労使自治が現在の規範、労使分配の現状を評価する、あるいは将来的なターゲットを定めるような方向は望ましくない。労働市場の現状について経営者に詳細に伝えることが重要。

 2ページです。無限定正社員や非正規雇用労働者に関する課題への対応です。このページから、点線の枠囲みの下に政策の方向性を記載しています。こちらについては、委員の皆様の御指摘から考えられる政策の方向性について、事務局として整理したものです。後ほど御説明します骨子の素案と内容が重複する所ですので、この政策の方向性の部分については、骨子の素案のほうで読み上げさせていただければと思います。

 無限定正社員や非正規雇用労働者に関する政策への対応の委員の皆様からの指摘事項です。最初のマルです。日本型雇用で守っている部分と、そうでない部分の差が大きくなっている。職務限定正社員、地域限定正社員の普及も十分ではない。労働者がその意欲と能力を発揮できる状況をどのように作るか。雇用の質について評価していく必要。労働者の満足度に注目し、どのような指標によって満足度が高まるのか議論してはどうか。雇用の質は労働者が希望に沿った働き方を実現できているかどうかで測るべき。本人以外に起因する就業上の制約を雇用政策によって取り除くことが重要。

 3ページです。専門人材の育成・将来を通じた職業能力開発。管理職の人材育成や評価の仕組みが整っていない。長期化する職業生活の過ごし方において、どのように職業生活と高等教育機関ないしは様々な教育機関が連携していくか。リカレント教育で身につけたスキルを活用できる選択肢が必要。中小企業の現場でいかに人材育成へのニーズが高まっているかがわかる。

 4ページです。外部労働市場の拡大。技術革新が進む中での労働移動の円滑化について考えなければならない。社会全体として労働市場における労働力の分配を考えていくべき。労働市場の流動性、さらに雇用システム全体についても考えるべき。卒業後3年程度は、適職選択過程と捉えるべき。

 5ページです。労働者の主体的なキャリア形成の支援。情報が不足していることが考えられるので、どのように解決するかを考える必要がある。労働条件が改善されない産業では、その産業において必要なスキルが認知されていない可能性がある。スキルの見える化を進めるべき。カウンセリングやメンタリング等の広い意味での学習を可能にするような体制整備が大事。学生の意欲・能力をどう活かしていくのかが重要。

 6ページです。兼業・副業、雇用類似の働き方に関する検討等。ウーバー等のような新しい働き方の普及等を踏まえて方向性を考えるべき。働き方が柔軟過ぎると、健康やプライベートに悪影響を与えうるという懸念がある。今後は雇用類似の働き方等、雇用関係にない労働形態も含めて議論する必要。働き方を個々人が自律的に選択できることが、雇用の質を高めるために重要。

 7ページです。企業の生産性向上。労働市場を軸に置いて、それから逆に他の政策も含めて、どうあるべきかという議論をすべき。生産性の向上については、非正規を含めた全体の底上げが重要。新しい技術による生産性の向上を、きちんと人々に分配できるような、社会の仕組みを考えていく必要。時間当たりの生産性、時間当たり付加価値を向上させるため、雇用政策として何ができるのかを考えていく必要。AIIoTの成果の配分についても議論する必要。中小企業で生産性が向上しない背景等、仕事の質や企業規模等によるばらつきが問題。

 8ページです。企業における取引環境等の整備。人手不足の状況下において、なぜ企業が労働条件を改善できないのかを考えることが重要。人手不足だが賃金が上昇しない理由として、労働市場が競争的でない、あるいは労働市場の調節機能が働いていないことがある。競争を阻害する規制の存在や、独占が生じているのではないか。法令やガイドラインの整備、あるいは、改善のためのコンサルタント等の導入支援が政策として必要。他社との競争の中で、一社のみが価格を上げることは難しい。

 9ページです。働き方改革に一層の推進等による就業環境の改善。働き方改革のみならず価格の上昇が重要。最低賃金や労働時間規制を通じたコストプッシュで価格を上げていくことも考えられる。賃金に関しては労使自治という側面が大きいが、もっと政府が介入することも議論するべき。賃金を上昇させることで労働力を増加させることが重要。就業非希望者であったとしても、賃金や働き方の柔軟性が増し、雇用の質が上がれば、就業を希望するようになるのではないか。

 10ページです。人口減少下での誰もが活躍できる社会の推進。高齢化への対応としての2025年や、高齢化が進展して企業数が減少していく社会を念頭に置いて議論してはどうか。シルバー人材センターは、労働に加えて福祉的な機能を強化すべき。労働施策の中には、健康問題も含まれる。高齢者や女性は、就労の満足度を高める要素が多様なので、働き方における選択肢を十分に確保し、労働者が最適な選択をできるようにすることが重要。30代、40代は2020年の予測値に比べるとまだ低い。こうした層へのアプローチが必要。女性の活躍等については、総合的に評価すべき。キッザニアや保育園に来ている主婦()層に対してアプローチする等、求職者の開拓が必要。求職者開拓とともに求人条件の緩和が必要。看護・保育といった産業に対して高学歴の女性が入って行っている。団塊世代は就職時期が高度経済成長期であり景気が良かったが、団塊ジュニア世代はそうでなかったので、政策的にどのように埋め合わせるかが重要。仕事以外において人々が担う役割まで含めた生活全体の質が重要。配偶者控除や在職老齢年金の制度、保育所や介護施設の整備等、社会保障も含めて労働行政以外についても広く議論するべき。保育士と介護士の資格の転換を考えてはどうか。こういった御指摘を頂きました。

 資料5をお開きいただければと思いますが、これまでの御指摘を踏まえて研究会報告の骨子素案を作っています。1ページは、序章と書いています。第1章、我が国の経済・労働市場の変化です。こちらについては、これまでの事務局として提出した資料なども含めて、整理をさせていただいているところです。

 第1章、我が国の経済・労働市場の変化ですが、最初のマルが、景気の回復に伴い、雇用情勢は大きく改善。次に、生産年齢人口減少の中で女性・高齢者の就業率の上昇により就業者数は増加。企業の設備投資や人的資本投資・教育訓練投資は低迷、労働分配率は低下。賃金は上昇傾向にあるものの、賃金の伸びは生産性の伸びに比べて小さい。サービス産業や中小企業等における生産性は低く、正規・非正規の賃金格差は依然として存在。徐々に変化する雇用慣行。働き方改革関連法の成立。今後、時間外労働の減少、同一労働同一賃金の実現を期待。

 第2章は、課題を整理させていただきました。社会構造・人口構成の変化の中での課題。(1)無限定正社員、非正規雇用に関する課題。無限定正社員は、長時間労働、汎用的専門性の欠如、仕事と家庭の両立困難等の問題が顕在化。非正規雇用は、低賃金、不安定雇用、職業能力開発機会や正社員への転換機会の欠如の問題が依然として存在する一方で、業務の主な担い手へと変化しつつある。年功賃金体系の変化、企業・労働者双方における転職ニーズの高まり。産業構造変化と職業生活の長期化に対応した、社会としての長期的な雇用の安定の確保。

 (2)は、人口減少・人口構成の変化の中での女性・高齢者等の活躍促進です。若年者の減少・65歳以上の高齢者の増加による年齢構成の変化。女性の就業率は上昇傾向にある一方、出産・育児等で離職した女性はこれまでのキャリアを活かして再就職することが困難な場合も。高齢化や女性の就業の進展に伴う短時間労働を希望する就業者の増加。就業率上昇の中にあっても、人手不足が深刻化。一方で、人手不足の深刻な状況は生産性向上や労働条件の改善の好機。2ページです。高齢者の就業ではミスマッチが存在。AI等の進展は雇用創出と雇用喪失、いずれにもつながり得るとの指摘がある。

 第3章です。職業生活の長期的な安定を目指した雇用・労働政策です。(1)「無限定」を前提としない働き方の拡大。ここからが、先ほどの御意見でタイトルとして付けさせていただいたものが、それぞれの項目の柱立てとなっています。その中に政策の方向性として、先ほどの資料の下に書いてありましたものを、そのまま並べているといった作りとなっています。

 ①無限定正社員や非正規雇用労働者に関する課題への対応。無限定正社員の働き方の改善。職務限定正社員・勤務地限定正社員・勤務時間限定正社員等の普及促進。本人の希望に配慮したキャリア形成支援。無限定な働き方・限定的な働き方を労働者が主体的に選択し、円滑な移動や転換、マルチキャリアパスを可能とするための環境整備。非正規雇用労働者の正社員転換等のキャリア形成支援。雇用契約内容や雇用ルールに関する労働者の理解促進。

 ②専門人材の育成・生涯を通じた職業能力開発。専門人材の育成の推進。ライフステージに応じたリカレント教育。企業のニーズに対応した人材育成。企業を超えた能力発揮を可能とする人材育成の仕組みの整備。社会人として学び続けることを可能とする環境の整備。

 ③外部労働市場の拡大です。中途採用の受入促進に向けた施策の推進。賃金に関する情報を含む職務や職場に関する情報提供。中途採用に対応した賃金制度等の整備の促進。

 ④労働者の主体的なキャリア形成の支援です。職業能力・職務遂行能力の見える化の推進。キャリアコンサルティング、セルフ・キャリアドックの普及促進。学校段階からの労働市場の動向に関する情報提供、就業意識の啓発。

 ⑤兼業・副業、雇用類似の働き方に関する検討等。働き方の変化等を踏まえた労働時間管理等の検討。雇用類似の働き方に関する保護等の在り方の検討。

 3ページです。(2)生産性向上、取引環境の改善、働き方改革の一体的推進。①企業の生産性向上。AIICTの活用に向けた人的投資の促進。労働集約型産業におけるAIICT等を活用した業務の効率化。企業による個人の希望・特性等に応じた雇用管理の推進。非正規労働者に対する職業訓練の実施等による生産性の向上。働き方改革による業務プロセス改善、効率的な働き方等の推進。②企業における取引環境の整備。サプライチェーンにおける優越的地位の濫用防止等の取引適正化。消費者意識の変革も含めた過剰サービス等の見直しへの機運醸成。③働き方改革の一層の推進等による就労環境の改善。長時間労働の縮減、時間当たり付加価値の最大化。同一労働同一賃金の実現。最低賃金の引上げ、賃金引上げに向けた支援。

 (3)として、人口減少下での誰もが活躍できる社会の推進。①高齢者の活躍による経済成長サイクルの推進。②就職氷河期世代(団塊ジュニア世代)への対応。③女性の活躍促進に向けた社会環境の整備。④外国人材の受入れ環境の整備。⑤様々な事情を抱える人の活躍支援。⑥働き方に中立的な税・社会保障制度の確立。

 第4章は、後ほどの需給推計を踏まえた形での記載になります。2040年・日本の姿です。労働力需給推計の活用による経済・雇用政策のシミュレーションを行いたいと思っています。(1)2040年の労働市場。(2)AI・自動化の進展による雇用への影響という形での骨子の素案を作成したところです。以上です。

○樋口座長 ありがとうございました。それでは、ただいま事務局から説明いただきましたので、自由討議に移りますが、どなたからでも結構だと思います。本日は、今後の研究会の取りまとめに向けて、資料5「雇用政策研究会報告書(骨子素案)」を作成するとのことですので、資料4「これまでの主なご指摘事項について」を踏まえて、また、資料5の骨子案を中心に御意見を頂けたら幸いです。まず、第2章の社会構造・人口構成の変化の中での課題について、御意見を頂きたいと思います。その後、第3章の職業生活の長期的な安定を目指した雇用・労働政策の方向性について、御意見を頂きたいと考えておりますので、よろしくお願いします。

○清家委員 これは2章の部分と3章の部分両方にかかるのですけどいいですか。

○樋口座長 ただ、時間の関係で、清家委員は両方。

○清家委員 有り難うございます。

○樋口座長 では。

○清家委員 これはつながっている部分ですので。私としては強く違和感を感じるところととても賛成のところと両方あるので、それぞれ2つずつ申し上げたいと思います。1つは、これは2章と3章に重なっているのですが、無限定正社員と正社員、正規雇用の問題を取り上げているのですが、これは無限定正社員の問題もあるし、非正規の問題もあるけれども、それは同じ程度の大切な問題あるいは大変な問題なのでしょうかということです。こういうふうに並べられると、両方同じぐらい重要な問題で、両方解決しなくてはいけないというふうに取られると思います。しかし、今、多くの人が無限定の正社員を選択しているということは、いろいろプラス・マイナスはあっても、無限定の正社員のほうが限定付きの非正規雇用よりいいから選択されているわけだと私は思います。

 だとすると、確かに無限定の正社員は、ここに掲げられているような問題があるけれども、それよりは仕事は限定されているけれども、非正規で働くことの問題のほうがずっと大きいので、今、多くの人は無限定の正社員になりたいと思って就職しているのだろうと考えられます。しかしこういうふうに並べると、両方とも同じぐらい問題だと。特に無限定のほうが先に出ると、無限定のほうが問題だという印象を与えると思いますが、私はそれは正しくないと思います。それは違うと思います。私は、両方問題があるけれども、職種が限定されている非正規の雇用に関わる問題のほうが、無限定だけれども正社員でやっている人たちの問題よりもずっと大きいと考えています。

 もう少し言えば、例えば無限定の正社員の長時間労働といった問題はそれなりに解決可能かもしれませんが、非正規雇用の問題は基本的には正社員に転換していかないと解決できないような問題が多いのではないでしょうか。物事は何でもプラスとマイナスあり、マイナスはもちろん両方にあるのですが、最終的にはプラスとマイナスのバランスは、どちらがより相対的に大切ですかという話だと思うのです。ついでに申しますと、無限定正社員との関係、あるいは後の雇用の流動化との関係でも言えると思うのです。例えば、今、議論になっている学卒の一括採用の問題などについても、学卒の一括採用は確かに就職がそこでできないと、取り返しがつきにくいとかいったような問題はありますが、一方では若者の失業率をものすごく低く抑える、あるいは若い人が若いときからしっかりと能力開発を受けることができるというメリットも大きい。そのプラスとマイナスを考えれば、私は学卒一括採用制度は維持すべきだと思います。

 要するに、両方プラス・マイナスはあるのだけれども、どちらがより大切かという話で、それを並列的に並べるられると、どっちもどっちというような、職務限定の非正規の選択もいいのだと、無理して職務限定の正社員にならなくてもいいのですと呼び掛けているようにも見えてしまう。特に無限定正社員の問題を冒頭に出したり、あるいは3章も無限定を前提にしない働き方の拡大と言っているというようなことは、無限定を前提にするのはよくないことで、これを前提にしないのを拡大すべきといった感じを受けます。ここに価値観が入っていますよね。つまり、無限定は余りよくないので、無限定を前提としない働き方を拡大すると言っているということは、それを前提としない働き方を増やさなくてはいけないと言っているということですよね。それについて私は疑問を持っています。

 特に、これは当たり前ですけれども、正社員の雇用が安定しているのは、会社の都合から言えば無限定で働いてくれるからですよね。ですから、雇用の安定も維持したい、無限定は嫌だと、そういう訳にはいかないので、どちらがより重要かという話です。ただ、無限定の正社員が持っている問題点、例えば労働時間の問題などを改善することは大切です。しかしこれを読んでいると、無限定の正社員は良くない、というようなメッセージに受け止められかねないので、私はそれは間違っていると思います。

 もう1つは、例えば職務限定正社員を増やすということについてです。勤務地限定正社員はいいのですが、職務限定正社員を増やす、あるいは専門職の人材の育成とか、要するにこれも考え方としては、無限定正社員はリスクが大きい、職務限定のほうがリスクが小さい、そう言っているように読めるのですが、本当にそうなのでしょうか。特に、技術が高速度で変化したり、産業構造が大きく変化したりするときは、職務限定のほうがリスクは大きいかもしれません。なぜなら、その限定された仕事しかできないのですから。あるいは、先ほど申しましたように、そもそも正社員を職務無限定にしているということは、職務限定で雇うと、その仕事が要らなくなったりしたときには雇っていられないから、職務限定では正社員は雇えないということもあるのだろうと思うのです。

 正社員の中の話、企業の中の話だけではなくて、職種といったようなものが安定的に存在して、例えば経理の仕事をやっていれば、会社が駄目になってもどこかに移れるだろうとかいうイメージは従来はあったと思います。しかし経理の仕事も技術革新でなくなるかもしれないのです。ここのストーリーは、職務限定はどちらかと言うと市場を通じて雇用が保障される、無限定は企業の中に閉じ込められて危ない、といった発想だと思うのですけれども、それは本当にこれからもそうなのでしょうか。従来はそういうところがあったかもしれないけれども、正にここで言っているような技術の進歩のようなものを考えると、本当にそうですかということです。

 最初に非常に違和感を感じたと申し上げた点は、職務無限定を前提としないであるとか、あるいは職務限定は課題の筆頭に挙げて問題視するとかいったことには、とても違和感を感じるということなのです。大体皆さんも職務無限定で働いているわけですから、それでは自分たちは職務限定に変えるかというと、そうはしないわけでしょう。それは考えたほうがいいのではないかと思います。

 逆に私としては大賛成な点を、また2つ申しますと、1つは、私はこれこそ一番大切だと思うのですが、これから政府がいろいろ何かやれることがあるとしたら、どのような働き方にするかというのは最終的には労使が決めることなのですから、労使が自由に決める働き方を自由にさせない部分を政策的には改めますということです。そういう意味で一番大切なのは、第3(3)⑥「働き方に中立的な税・社会保障制度の確立」だと思います。例えば、そこの(3)①にある「高齢者の活躍による経済成長サイクルの推進」であれば、在職老齢年金などはすぐにやめなくてはいけないはずです。

 在職老齢年金は、それ自体が高齢者の就労を阻害しているだけではなくて、今、実は政府がキャンペーンを張っている、繰下げ支給をすると年金がお得になりますと。例えば、65歳でもらえるはずの年金を70歳まで我慢したら、42%増しになりますと。今、政府は、それを更に70代の前半まで繰下げ受給の特典を引き上げましょうというキャンペーンを張っているわけです。これは高齢者の就労促進のためにとても良い政策です。しかし繰下げ支給の対象になるのは、在職老齢年金で削られた分の年金を更にもらわないで我慢したら、その部分だけが繰下げ増額の対象になるのです。ということは、例えば65歳で年金をもらい始める資格ができた人が、思い切り働いて年金の給付が全額カットされることになっていたら、それは自分が我慢したのではなくて、もともとカットされているのだから、70歳になってもらおうとしても、65歳のときと全く同じ額しかもらえない。

 そういう面では、繰下げ支給のメリットをキャンペーンしておいて、結果的にメリットは得られないという人は、だまされた感を持つことになり、そういう人はこれからたくさん出てくるかもしれません。これは、公的年金制度に対する信頼という面からもよろしくないし、そもそも繰下げ支給で雇用を促進しようというすばらしい制度を台無しにするという面からもよろしくないので、在職老齢年金制度は即刻改めないと、生涯現役社会の実現と整合的ではなくなると思います。

 あるいは女性の就労を促進するのであれば、税制の中に残っている配偶者控除の制度であるとかいったものも見直していかなければいけない。女性の就労を促進するという政策からおそらく最も整合的な税制は、配偶者控除をやめて、それを財源として子供子育て支援を充実するという政策だと思います。ですから、そのぐらい踏み込んで書かないと、ただの総論になってしまう。私は、これはとても大切なポイントだと思うので、少し具体的に今言ったような政策提言をしたほうが良いのではないかと思います。

 もう1つは、実は今回の報告書でも、これまでの報告書と同様、おそらく最も引用頻度の高いものとなるのは第4章なので、これはこれから議論すると思いますが、第4章の推計については、しっかりと推計を行い、また正しく書き込むことは、とても大切だと思います。ある面で言えば、この報告書の付加価値の全てとは言わないけれども、かなりの部分は第4章であるはずですから、そこは頑張っていただきたいと思います。以上です。

○樋口座長 それでは、今の話で無限定正社員について、それは冒頭に来ているということで、鶴さんは何か。

○鶴委員 3章の話で。

○樋口座長 もういいです。

○鶴委員 今、清家先生からいろいろ御指摘いただいて、確かにおっしゃるように、これまでの無限定正社員が全部駄目で、そういうのは全部やめてしまえと。そういうことにはならないことは御指摘どおりだし、そこはこれからある程度残っていく部分もあると。ただ、一方、これまでの正社員が無限定的な形になっていたのが、かなり大きな日本のいろいろな雇用の問題、長時間労働の問題とか、女性の活躍とか、ワーク・ライフ・バランスとか、労働移動の問題を含めても、そこに非常に影響していたことは事実だと思うのです。

 そうすると、ここで2つ並べると違和感があるというお話があったのですが、私は逆に2つ並べたほうがいいのかな。その代わり無限定が余り前面に出るのはどうかというのは御指摘どおりだと思うのですが、正規雇用と非正規雇用の話は表と裏だと思うのです。正規雇用の問題と非正規雇用の問題は表と裏の問題で、そこをお互いに切り離して議論してもしょうがないと。そこは一緒にやるべきです。正社員の問題を突き詰めていくと、ある程度無限定制度。そうなると、ある程度何らかしら限定を、勤務や職務地、労働時間、限定された働き方をどうするのか。

 一方、非正規の方々は限定されているわけですが、雇用の安定が一番問題になっていると。そうなると、無期雇用でただ限定して働くやり方を望んでいる人たちは非常に多いわけです。転換の話も今日事務局からありましたが、そういう制度もそういうほうに持っていこうと背中を押していくような仕組みにあるわけなので、ここは無限定というところが前面に出てくるよりも、やはり働き方の多様性をより増す。みんながいろいろな働き方を選べるようになっても、自分の選んだ働き方の処遇が非常に不公正な処遇になっていることでは困るわけなので、働き方の多様性を増す、そこで選べる。一方、どの働き方を選んでも、それは均等・均衡的な処遇が得られる。そういうものを目指して正社員の問題と非正規の問題を併せて考えていかなければいけない。

 だから、第3(1)は、2つの話を取り上げながら、今申し上げたように、むしろキーワードは多様性、より多様な働き方を提供する、それが選択できる。それで、公正な処遇もセットで行われる。その中で正社員の問題と非正規の問題を一緒に考えていきましょうと。だから、私は、第3章で(1)(2)(3)と分けている構成の仕方は非常にいいやり方だと思いますし、特に(2)の生産性向上、取引環境の改善、働き方改革、これは3つ一体的にやらなくては駄目だと。一体的にやるから効果が出るし、私は補完的だと思っていますので、こういう考え方を強調されるということで、この流れはいいのです。清家先生御指摘のように、無限定というところが余り前面に出過ぎてしまうと先ほどの誤解が出てくるので、そこは少し表現の仕方を変えていただくだけで、中身、議論の進め方は余り違和感がなくできると思うので、そこは工夫していただきたいと。

 私は、少し小さな話かもしれないのだけれども、もっと本質的かもしれないのですが、3章のタイトルの「職業生活の長期的な安定を目指した雇用・労働政策」は、その安定というだけなのかと。これから高齢者雇用の話は政府でもまた議論はかなり進んでいくし、先ほど清家先生もおっしゃったように、正に社会保障の仕組みとかが関わってくるところだと思うのですが、気になるのは、例えば継続雇用、年齢を上げればいいか。もっと長く働くのだから、安定すればいいではないかという何か観点だけで物事を考えるのは問題で、もちろん安定は一番真っ先に大事ですが、そこでの質とか、充実とか、満足度というところも、しっかり見据えて議論してもらわないと困ると。安定だったらいいだろうと、余りそういうものが強く出過ぎるのは、これからの議論を考えても非常に問題かと思いますので、「長期的な安定・処遇制度の充実」ということで、「安定・充実」でもいいですし、これはどういう言葉をやれるかはお考えいただきたいと思うのです。単に雇用が安定すればいいということではなくて、そこで働く人たちが生き生きと充実して、満足度をもって、やりがいをもって働けることが、必ずセットで実現できるという第3章のタイトルにしていただきたいと。以上です。

○清家委員 私も鶴さんのおっしゃることは賛成です。私も両方をペアで考えなくてはいけないと思っています。ただ、そのときにお願いしたいのは、例えば第2(1)の書き方、「無限定正社員、非正規雇用に関する課題」というタイトルではないほうがいいと思います。それから、第3(1)、これは私が先ほど申し上げたように、無限定を前提としない働き方の拡大というのは、これから無限定を前提としない働き方の方向に進めていくのだという価値観が入っていますから、私はこのタイトルについては、もしこのままでしたら原案には賛成できません。ですから、例えばもう少し多様な働き方の拡大とか、そのようにしていただきたいと思います。以上です。

○樋口座長 そこはこの骨子案をまとめるときにも大分気を遣っていただいて修正していただきたいということですが、もし今の関連で何かありましたら。

○神吉委員 今の関連で、私は総論としては、無限定正社員の問題と非正規雇用の問題は、鶴先生がおっしゃったように表裏一体だと思っているので、こういうふうに並べるほうがいいと思います。ただ、少し曖昧だと思うのが、無限定ということの意味です。下のほうの3章を見ていくと、職務限定正社員・勤務地限定正社員・勤務時間正社員が並べてあるので、無限定の意味が職務と勤務地と時間の無限定性のことなのだと分かるのですが、この段階で少し分かりにくいのです。これは定義があるわけでもないですし、それに今のコアな正社員というのは、その3つのどれもが無限定であることがセットになっているのかもしれませんが、何の無限定が問題かで、問題状況が違ってくると思います。

 無限定正社員の問題と非正規雇用の問題は同時に、社会的な現象で見れば、男女の問題にもなっているわけです。勤務時間の問題は、男性パートナーの労働時間が長くなれば長くなるほど第2子の出生率に影響を及ぼすといった関係性はあるわけですから、そういった意味で女性の労働市場への参加を妨げますし、少子化の原因にもなり得る。また、勤務地に関して見れば、パートナーが頻繁に転勤することによって、他方のパートナーが高学歴であっても、そのキャリアを活かせないといった原因にもなっているわけです。そういった、何の限定・無限定かでの問題状況の違いを、もう少し丁寧に見ていってもいいかと思っています。

 それから、非正規の問題もいろいろ引っくるめ過ぎかと思うところがあります。これも経済的には多分、呼称で見ての非正規かもしれませんが、これも有期という期間の話と、パートという労働時間の問題と、派遣という直接雇用かそうでないかといった問題があるので、もう少し丁寧に問題状況を場合分けしてもいいと思います。以上です。

○樋口座長 今の御指摘も加筆できると思います。ほかによろしいですか。

○神林委員 今のお話を聞いていて考えたのですが、この報告書自体は、第1章で現状を認識して、第2章でそこから課題を取り上げて、第3章でそれに対応する政策を挙げるという構造になっていると思うのです。その第2章で最初に無限定正社員と非正規雇用が問題だというのを取り上げているのですが、多分、第1章に書かれていることからこの課題を抽出するのが結構難しい。直接的になぜそれが問題かが、第1章を見ても多分分からないと思うのです。例えば、暗黙のうちに企業の設備投資や人的資本の投資、教育投資が低迷しているのは、多分、無限定正社員のためだというロジックが暗黙のうちに想定していると思うのですが、こういう想定は余り根拠がそれほどない、薄弱な想定ではないかと思います。それを見透かされてしまうと、何でもいいからこういうことをしたいんだなと、こういう政策をしたいからこういう課題設定をしていてと、後ろから書いたのだなと思われてしまうと思いますので、そこが何でも限定正社員と非正規雇用の話をここでいきなり持ってくるのかという違和感を持ってしまう1つの理由ではないかと思います。ですので、ここは少し丁寧に、なぜこれが問題かが分かるような構成にしたほうがよいだろうと思います。

○樋口座長 実は私もそう思っているところがあって、第1章は現状認識ですよね。それで、第2章で突然将来に向かっての個別の問題に入っていて、将来の経済社会をどう考えていくのかという現状認識から、今後をどう見通していくのかと。そこで何が問題になっていくのかということがあると、次に個別の話に入っていくことができるのかと思っていて、どう見通すかはなかなか難しいのですが、幾つか確実なことはあるわけです。

 当面人口減少ということが起こる中において、このままの状況であれば潜在成長率はやはり下がらざるを得ないだろうということがある。その一方で技術革新というものが起こったときに、それによっていかに生産性を上げるかということで、潜在成長率のプラスの方向にも行くことができるだろうと。

 ただ、そこの過程で何かが問題として起こってくる。その起こってくることに具体的に入る前に少し考えておく必要があって、例えば変化が非常に激しくなるとか、それに対する対応をどうするのかとか、あるいは格差の問題、経済格差、賃金格差、そういった問題が今後拡大するのではないか、あるいはこれまで拡大してきて、ここのところ景気がいいことによって少しブレーキが掛かっているところがあるわけですが、そういったものがあるのではないかと。

 その過程で、例えば女性あるいは高齢者の就業率が上昇していますとなっているのだけれども、これはやはり上昇してきたメカニズムはあるわけです。1つ考えられるのは、経済的に働かざるを得ない、あるいは夫の所得が伸びなくなっているとかいうことによって、働こうという有配偶女性が増えているとか、高齢者についても年功賃金は相当に崩れてきている中で、60歳の人たちの資産形成が以前に比べてすごく減少している。退職金の給付額もすごく減っているし、また、退職金制度を持っている企業の割合も減ってきているというところにおいて、好き勝手に60代の就業率が上がっているというだけではなくて、高齢法の改正とか、いろいろありましたが、同時に供給側でも、人生が長くなるに従って労働供給が増えてきているとかいうことがないと、果たして高齢者の就業率が今後上がり続けるのかどうか、あるいは女性の就業率についても上がり続けるのだというトーンで書いているのだけれども、そこら辺は分析したものが幾つかあると思うので、書き込んだ上でその課題に対応するという形で個別の問題に入っていったほうがいいのではないかと思います。そこについては多分見方が相当違うかもしれないので、皆さんの御意見を伺ったほうがいいと思います。

○鶴委員 第2章とか第3章につながるという書き方になると、やはり第1章で、良いことばかりではなくて、でもこういう問題もあるよねと。一番最初に女性・高齢者の就業率の上昇を入れると、足元の就業者が増えている、これはプラスに評価したらいいと思うのですけれども、将来的にもっと増えていくということを考えなければいけないといったときに、先ほど申し上げたように、いろいろな働き方が多様化する、それらの働き方を選んだときの公平な処遇というところがきちんとなっていかないと、それ以上労働供給を増やしていくというのは非常に難しいだろうなと。そうなると、やはり立ち行かないところに来ると。そうすると、正社員の多様化というところが当然重要になってくる。

 非正規の問題も、これはこちらに書いていますけれども、割と足元では相対的に賃金の伸びは高いかもしれないけれども、依然格差がある。また、労働分配率が下がっているとか、生産性の上昇ほど賃金が上がらない背景として、やはりどうしても正社員の賃金のベアを上げていくことにかなり慎重になっているということは、これはまた正社員、ずっと奥に行くと無限定正社員の問題点という、それは全部賃金体系とかそういうところも含めた話ですけれども、そういう話になっていくので、やはり伸びているのだけれどもその伸び方というのはどうなのだろうかとか、そういうところで次の話に関わってくる議論ができると思うので、やはり第1章の書き方というところ。でも、ちょっと工夫していただいたら、私はすぐ後の話につながっていくと思います。ちょっと書き方次第で、良い話ばかり書いてしまうと何もやらなくていいと、それは一番最初にこの政策研究を始めたときに、それでは駄目だという話で人の話も見なければとかという話があったのだろうと思います。以上です。

○樋口座長 いかがでしょうか。事務局、まとめる上で、むしろ逆に何か質問をしておいたほうがいいことがあれば、皆さんの御意見を伺っておいたほうがいい点をお願いいたします。

○雇用政策課長 骨子という形で作っていく中で、また骨子自体ではありますが、用語の使い方として行き届かない部分があったのかなというところは反省させていただいているところでした。御意見を踏まえながら、また修正させていただければと思っております。

○樋口座長 清家先生からもう一点御指摘いただいた問題点、年金の話ですが、これについては何か御意見はありますか。

○清家委員 これもいろいろな考え方があるでしょうけれども、雇用政策をいろいろと一生懸命頑張るのは大切ですが、最終的には働き方というのは例えば労働基準とか最低賃金とかの一定の規制条件の下で労使がお決めになることですから、むしろ政策として大切なのは、労使が決めることを歪めないことでしょう。ですから、正にここに書かれている中立的な社会保障制度とか税制ということで、そういう面で言うと、そこに一緒に書かれている高齢者の就労の促進という面を考えた場合、先ほどちょっと申しましたように、今、政府が繰下げ支給のキャンペーンをやっていますし、総理も70歳以上まで繰り上げることを考えるせっかく言っておられるわけですから、先ほど申しましたように在職老齢年金は制度的にそれと全く矛盾します。70歳まで働いた人に、なんだかだまされたという感を持たれるのはとても良くないので、そういう面ではそういう問題点はきちんと指摘しておいたほうがよろしいのではないかなということです。

 もう一回だけちょっと付け加えると、私は鶴さんが言われたことは分かりますけれども、第1章を工夫して、いきなり第2章に無限定の話を持ってくる必要はあるのかというのは、先ほどからちょっと議論になっていますが、私は樋口さんの意見にどちらかというと賛成です。無限定正社員の問題が今回新たに雇用政策研究会が検討すべき一等大事な話題とは到底私は思えないのです。もちろん大切な問題の1つではあるけれども、そこは先ほどもちょっと言いましたが、いきなり無限定正社員の話が出てくるのは、かなり強い違和感を持たざるをえません。

 恐らく今からの雇用政策というか、労働政策の最大の問題は、働く人の能力をどう高めるかということでしょう。多分その点で無限定正社員にも、非正規雇用者にも、問題は両方にあるでしょう。最も大切な話をしないで、いきなり無限定正社員が良くないのだ、といった話になるのは、やはりちょっと如何なものでしょうか。メディアの取り上げ方としてはいろいろな取り上げ方があるけでしょうけれども、これを強調すれば雇用政策は無限定の正社員、あるいは正社員の在り方について大きな疑問符、といったものとなる可能性もあるので、そういうのは私としてはよろしくないと思いますと、そういうことです。

○樋口座長 正に能力開発、あるいはキャリア形成の視点から見てどうかというような書き方に、やはり能力開発、キャリア形成は今後の社会においてすごく重要なということだろうと思うので、その中で具体的にという形を取っていったほうがいいのではないかということでよろしいですか。

○神林委員 ちょっと思い付きで申し訳ないのですけれども、提案してもよろしいですか。

○樋口座長 どうぞ。

○神林委員 多分この報告書で今までなかったすごく注目できる点というのは、第3章の(2)の所です。一体的推進というキーワードが入っているのですけれども、多分この部分なのではないかと思います。第1章の現状認識の提起においても、マルで言うと345番目、これが生産性と働き方改革の一体的な推進というのは根拠になっていると思うのです。なので、一層のことそれを最初に持ってきてしまうというのは手なのかなと思います。一体的な推進をするのだと言っておいて、それで生産性の向上と②に企業における取引環境等の整備、3番目に働き方改革の一層の推進等による就労環境の改善と書いてありますが、大きな構図としては、特出ししている無限定がどうのこうのとかというのは③の中に入っているわけですよね。なので、そういう生産性の向上と働き方改革というのを両にらみで並行して推進しないといけないのだという問題設定をしておいて、その中で働き方改革に関してどういう論点というのが現在、喫緊の課題になっているのかというように構成を持っていけば、そんなに風当たりは強くなくなるのかなと思いました。

○清家委員 私はもう発言しないので、これで最後に致します。神林さんの言うとおりだと思います。そのとおりにしていただければ、私としては問題ありません。

○樋口座長 多分、実態の話としては他の省庁に関連することをここに持ってきたのですよね。ということで後ろに出てきているのだけれども、むしろ本筋としてこれを前に上げたほうがいいのではないかと。

○清家委員 これは研究会なのですから。他省などもどんどん言ってきているのですから、こちらからもどんどん言わなければならないと思いますよ。

○樋口座長 そうですね。

○神林委員 細かい点で幾つかあるのですけれども、サプライチェーンにおけるというのが第3章の(2)の②の1番目に出ているのですが、これはなんでサプライチェーンというのを限定しているのでしょうかというのが1つです。優越的地位の濫用でしたらもっといろいろあると思うし、ちょっとこれは何か具体的な問題設定があって、サプライチェーンに関する問題だけをここでは取り上げようという話になっているのかなというのが1つです。

 もう1つは、副業に関しては結構いろいろと意見が出たと思うのですけれども、その中でこの、何かよく分からない働き方の変化等を踏まえた労働時間管理等の検討と何々の検討と2点だけぱっと出てきているのですけれども、やはり余り取り上げないほうがいいという判断だったのでしょうか。2点お願いいたします。

○樋口座長 むしろこういうのを取り上げてほしいということを言ってくださると、事務局が対応できるので。

○神林委員 そうしたら、ここは是非もうちょっと膨らませて、どういう要因が現状の副業というのを支配しているのか。多分、本業の雇用管理の在り方というのが1つあると思いますし、副業で出たときの取引関係がどのようになるのかという論点もあると思いますし、幾つか複雑な論点というのが副業に関してはあると思います。それをもう少し取り上げたほうがいいのかなというのは自分は思っていたのですが、そこは御検討いただければと思います。ちょっと細かくなかったです。

○雇用政策課長 すみません、サプライチェーンの所は、典型的なということで書かせていただいたつもりですが、先生がおっしゃるように限定的に見えるということであれば、ちょっとここは修正を検討させていただければと思います。

○神吉委員 第1章から第2章に入るときに、清家先生が御指摘のとおり、個人がこれからどのように能力開発をしていくかが一番大きな課題ではないかとおっしゃったのはそのとおりだと思います。ただ、そこでなぜ無限定正社員の話が出てくるのかと考えたときに、分かりにくさの原因は、第1章の2つ目のマルの所で女性・高齢者の就業率の上昇を問題にしていて、第3章でもっと女性の活躍を促進しなければいけないと続いていくのですけれども、そこから無限定正社員とか非正規雇用の話をしている所は、余り女性の話が出てこないところにつながりがみえません。

 能力開発が重要だというのはおっしゃるとおりですが、女性労働の問題に関しては、女性が能力を開発されていない、教育が低くて活躍できていないことが問題ではなくて、学歴が同じでも賃金格差が非常に大きい、あるいは管理職の割合が非常に低いといった問題があることを第1章できちんと意識することが必要です。能力がないから、これからどんどん開発していくことによって就業率が向上するというよりは、能力があるけれどもそれが活かせない、その手立てとして、恐らく無限定正社員の問題の見直しであるとか、あるいは女性の労働者の半分を占めている非正規雇用の問題につながっていくと思います。そのリンクがないと理解が難しいというか、分かりにくいのではないでしょうか。

 先ほども述べましたけれども、実際に正社員と非正規雇用の問題は、日本では家事、育児責任が社会的規範的に主体的に負うべきと考えられている女性に偏ってしまい、一方で無限定な働き方が正社員に当然に求められることで、女性が労働市場に算入しにくくなっている背景があるわけで、そこを指摘する必要があります。清家先生が、ここにいらっしゃる方はほとんど無限定で働いているとおっしゃいましたけれども、実際、ほとんど男性ですよね。ということは、こういった問題が顕在化するようにすると流れがある程度出てくるかと思います。以上です。

○樋口座長 これは管理職の問題で、従来は厚労省の政策の中に管理職の能力とか、管理職の問題というのが余り入ってこなかったように思うのだけれども、キャリア形成という中ではすごく重要な問題ですよね。これは一般社員を、やはりいろいろなところで無限定だうんぬんというのもあって言っているわけだけれども、どうなのですかね、女性の話にしてもそこまでやはり入れたほうがいいのではないかと。他省庁に言うのと同時に、先ほどの雇用類似の所についても言及しているわけで。

○雇用政策課長 女性の活躍を支援していくということは、厚生労働省としても打ち出しているところですので、問題意識と現状等がつながるような書きぶりについて、書き方を検討させていただければと思っているところです。

○樋口座長 管理職の働き方も、労基法の適用うんぬんではないかもしれないけれども、今すごく重要な状況になってきているわけでしょう。管理職研究者はどうですか。

○神林委員 定義するのは大変なので。

○樋口座長 定義はあれだろうけれども。

○神林委員 ただ、雇用政策ですから、やはり従来の労働政策がマネージャーの育成とかマネジメントの適正化ということに関して余り重視していなかったというのは確かだと思います。なので、そこはもうちょっと踏み込んで、生産性向上等の一環でマネジメントもきちんとやりましょうと、マネージャーをきちんと育てましょうというのはあり得るかなと思います。

○樋口座長 いかがですか。

○阿部委員 違う話でもいいですか。

○樋口座長 ちょっと今の話で、せっかく。

○阿部委員 今の話で、はい。

○樋口座長 御意見がなければ、少し入れていったほうが良いのではないかということでよろしいですか。雇用政策として受け止めるかどうかはまた別にしても、働き方にしても問題点として非常に重要な状況になってきていると思います。では、他のをお願いいたします。

○阿部委員 すみません、私なかなか出てこられなくて、今日突然言い出すことになるのかもしれません。実は、前にお話したことはありますが、都下に住んでいまして、都下で働くと都内で働いたり、都内に住んでいる人たちとちょっと物の見方がだんだん変わってきたかなと思うのです。多摩とかはおじいちゃん、おばあちゃんばかりで若い人がいないのです。我が大学も若い人を集めるのに大変苦労をしていて、都内に出る出ないと今やっていますけれどもね。もうちょっと先に行って、山梨と東京の県境とかに行くと、もう若い人なんかいないのですよ。つまり、何を言いたいかというと、今回のこの報告書には、地方という視点が全然出てこないように思うのです。人口推計で見ても、これから東京一局集中だと。一方、地方にはだんだん人がいなくなるだけではなくて、高齢化の比率が増えていくと。

 こういったところで、雇用政策なり労働政策をどう展開していくのかというと、もちろん全国平均で言えばこういうことをやれる、言っていいと思うのですけれども、それを実際に政策として落とし込んでいくときに、地方でどのようにやっていくのかとかという視点は大事なのではないかと思います。だから、いっぱい書き込めというわけではなくて、実際どのように問題があるのかというのを、少し地方創生との絡みで書いておくということは必要なのではないかと思います。

 実際に今も地方創生もやっていますし、その辺りを少し書き込んで今後、例えば国と都道府県あるいは市町村とどのように強調していくのかとか、どういう役割分担をしていくのか。特にハローワーク等は、国がやっているのと都道府県あるいは市町村でやっているのと結構ダブっていたり、同じようなことをやっていたりとかいろいろ問題はあると思うのです。そういった問題点も少し書いてもいいかなという気がいたします。以上です。

○玄田委員 これまで雇用政策研究会に何度か出させていただいて、印象としては後から出てくる需給推計の所が非常に大きな注目が集まるというのと、何となく副題というのがすごく今の社会情勢とか、これからの雇用政策の目指す大きな柱としては、すごく注目もされるし大事だなと感じていました。

 今日は骨子案ですので、まだそういう提案はないのですけれども、先ほどの神林さんの発言も踏まえて考えると、提案は第3章の(2)の先ほどあった生産性向上から一体的推進のこの部分かなという感じはしています。ただ、生産性向上と取引環境の改善って余り実はこの研究会の中で議論していないので、私の印象ではすごく議論したのは、取引環境の改善よりも雇用の質の改善というか、そこは随分熱く議論されたところもあって、生産性向上と雇用の質の改善と働き方改革と一体的推進というこの3つをトライアングルでやらないと駄目になってしまうというのは、何となくこの雇用政策研究会のメッセージかなと。既に働き方改革でも随分議論されているのだけれども、特にこの研究会の中で雇用の質の改善という部分をもっと押し出していかないと、働き方改革も生産性向上も成り立たないのだと。

 私がなぜ無期限定正社員を入れるかというと、無期限定正社員の雇用の質が低いというところもあるからこういう議論をしていたのではないかと思うので、これをここに使わずに副題に使うというのは、私はとても良いと思っています。ただ、もちろん雇用の質の改善という言葉が良いのか、ずっと先ほどから管理職が出てきたり、雇用以外の働き方も議論したので、本当は就業の質の改善なのかもしれないし、佐藤博樹さんがいたとすると、就業・生活の質の改善というのがないと多分これは成り立たないみたいな議論もあるから、何の質の改善という議論をするかはちょっとまだ検討の余地があるかもしれないけれども、トライアングルを一体的に推進するということは今が千載一遇のチャンスなのだと。

 私的には、人手不足を背景としたというぐらいのことがあったほうが本当はいいと。今はこれをやれるすごいチャンス、先ほど清家さんが言われたように、課題はもちろんあるのだけれども、一方で今はものすごいチャンスなので、ここで改善をしておかないとというメッセージを出すためには、人手不足とか緩やかな人手不足を背景に、生産性向上、雇用の質の改善、働き方改革の一体的推進に向けてとか、この辺りをトーンにして書いていくと、比較的いろいろな議論がずっとまとまっていくのではないかという印象を、今までの議論とかを伺いながら思っていました。以上です。

○鶴委員 玄田先生の御意見は大賛成で、意見を言う前によく考えてみたら、第1章は人手不足の話が書いていないですよね。事務局からの説明も多かったし、人手不足に関してかなり議論もしたのだけれども、第1章の所には書いていないので、やはり今の人手不足の状況とか過去との違いとか構造的な状況とか、ここに起こっているいろいろなものが今の労働市場と雇用システムのある種のいろいろな問題点の縮図みたいになっているような部分もあって、そこからそれをどのようにしていくのか。そういう環境の中で更にどうするのかということが、先ほど清家先生がおっしゃった今何が大事で、どういうところから着目するのですかという話ということになれば、もともとそれはすごく大事だったよねというところからこの研究会は出発したような感じがしたのですが、何かその観点が落ちてしまったので、今、玄田先生がおっしゃったように、もう一回そういうのを枕にきちんと据える形で、この第1章にもその話は書いていないといけないと思います。それを受ける話で後のほうも続いていくという展開を作らないと、それぞれの章のつながりが弱いという感じになってしまうのかなと。以上です。

○山本委員 私は、人手不足に注目するというお二方のアイディアは大賛成でして、本当にこれはチャンスという玄田先生の御意見は盛り込むべきだと思います。そういう議論は確かに研究会でたくさんしてきたと思いますので、それはメッセージ性は高いと思います。

 もう1つ研究会で議論が比較的多かったなと思うのは、労働市場という市場がうまく機能しているかどうかというところも出ていたように記憶があります。その部分も余り盛り込まれていないような気もしまして、そういう意味では政策を考える上で、市場が機能するために何かできることがないかとか、市場が機能していないからこそ政策的に何か手当てをするべきではないかということを考えると、1つは、やはり働き方改革で法律が変わって上限規制が大きく変わったということがあった以降、これがどのように守られていくかというところで、枠組みができてもそれが遵守されないということは恐らくあり得ると思いますので、そこでどうやって取締りをしていくかというところを入れてほしいと思います。つまり、ブラック的な働き方というのがどれぐらいなくなっていくかというところもやはり大事なところで、更に言えば過労死というワードを、ここの研究会では余り議論していませんけれども、過労死が起きてしまうというのは正に市場がうまくいっていないことの象徴的なことですので、そこをなくしていくということも取り入れていただきたいと思います。

 もう1つは、政策ができることあるいは気にしなければいけないこととしては、第3章の(1)の一番最後の所にある雇用類似の働き方に関するところで、これはAIとかICTの活用と関係してくると思うのですが、大きくはやはり雇用政策自体が変わらなければいけない可能性を秘めていて、ここはやはり政策でやっていかなければいけないと。セーフティーネットをどのように変えていくかというところは避けて通れないところですし、やはりここは強調していただきたいと思います。以上です。

○樋口座長 ちょっと確認ですが、雇用の質の向上をするときに、皆さんいろいろ想定することが違っている可能性があって、1つは雇用あるいは職業能力の向上、もう1つは雇用条件の向上、両方を意味していると考えていいですか、玄田さん。

○玄田委員 はい。

○樋口座長 では、そこを両方で、その中で働き方の問題というのも考えていったらいいのかなと。もう1つ今の山本さんとの議論で言うと、一体改革といったときに、1つはマクロの議論と個別企業、個別労働者のミクロの議論と両方をやはり考える必要があるということかなと。1つの企業あるいは1人の個人では限界があって、その間の移動の話も考えて、例えば生産性の低い所から高い所に人が移っていくとかというような、そこについてはむしろ、マクロなのかどうかは分からないけれどもということですよね。技術革新の話もそうだと思うのですけれども。

○鶴委員 第3章で職業能力開発と、その後に外部労働市場の拡大とあるではないですか。だから、今おっしゃったミクロとマクロの話というのは、私はそこでつながっていると思います。職業能力の話もある意味ではこれまでの典型的な正社員という形のみを考えてみると、なかなかこの専門人材育成。生涯を通じた職業能力開発というところが、やはりうまくはまっていかないと。やはり正社員も多様化するとかそういうこと、もちろん新卒育成とかそういう教育の話も全部入ってしまいますけれども、そういうこととやはり関わっているし、外部労働市場の拡大というところも一体的にやっていかないと、では能力開発だけ大事だよといってやっても、そこはなかなかうまくいかないなというのはこれまでのかなり長い歴史が証明しているので、そういうのも一体的に配慮して全部ここに書いてあるものを同時に変えていきましょうという思想というかアイディアというか、そういうものをちょっと強調して、だから、ミクロもマクロも同時に進めていかないと、多分前に進んでいかないという理解ではないかなと思います。

○樋口座長 労働力需給推計は、後で御議論いただくと思いますけれども、私の知っているところだと、かなりそこを突っ込んだ、ここの議論と関連しているような、成長率をどう見るかとか、あるいはそれに対して正にどういう施策を取ることが重要なのかとか。それに関連してくる議論だから、第4章もそういった意味では一体的に書けるのではないかと。よろしいですか。そうしたら、皆さんの頂いた御意見に基づいて、またこの後展開を進めていただきたいと思います。

 3つ目の議論に入りたいと思いますが、ここからは非公開とさせていただきたいと思いますので、一般傍聴の方は御退席をお願いしたいと思います。

(傍聴人退席)

 

○雇用政策課長 次回、第7回となります雇用政策研究会ですが、1116日金曜日10時からの開催を予定しております。また後日、改めまして御案内を送付させていただきますので、どうぞよろしくお願いいたします。なお、先ほどもお話がありましたように、資料67については、そのまま机上に残していただきますようお願いいたします。また傍聴の省内関係者におきましては、事務局に資料をお渡しいただきますよう、よろしくお願いいたします。

○樋口座長 それでは、以上で本日の会議を終了したいと思います。ありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

(了)

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