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2018年9月19日 第5回雇用政策研究会(議事録)

職業安定局雇用政策課

○日時

平成30年9月19日(水) 10:00 ~12:00

 

○場所

厚生労働省議室

○出席者

委員

樋口座長、荒木委員、大竹委員、神吉委員、黒田委員、玄田委員、佐藤委員、鶴委員、山本委員
 
土屋職業安定局長、田端大臣官房審議官(職業安定担当)、岸本職業安定局総務課長、北條職業安定局雇用開発部長、富田労働基準局総務課長、吉田雇用環境・均等局雇用環境・均等企画官、志村人材開発統括官参事官(人材開発総務担当参事官室長併任)、大竹政策統括官付労働政策担当参事官室企画官、弓職業安定局雇用政策課長、久保職業安定局雇用政策課雇用政策係長

○議題

(1)雇用の質(労働時間等の労働環境、柔軟な働き方、公正な評価・処遇等)
(2)その他

 

○議事

                                
 

○雇用政策課長 それでは、時間となりましたので、「雇用政策研究会」を開催させていただきます。雇用政策課長の弓でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
冒頭は、事務局より進行させていただきます。
本日は、第5回の「雇用政策研究会」となっております。委員の皆様におかれましては、御多忙の中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。
本日は、阿部委員、神林委員、黒澤委員、清家委員、堀委員、宮本委員につきましては、御欠席の御予定となっております。
本日の資料でございますが、資料1が委員名簿、資料2としまして、研究会スケジュール、資料3としまして、「雇用の質」に関する資料となっております。お手元のタブレットにつきましては、「雇用の質」、資料3を開いた状態になっているかと思います。御確認いただければと思います。
また、事務局側につきましては、人事異動がございました。お時間の都合もございますので、紹介につきましては省略させていただきますが、代表しまして土屋職業安定局長から一言御挨拶を申し上げます。
○職業安定局長 職業安定局長の土屋でございます。皆様方、どうぞよろしくお願い申し上げます。
きょうは、大変お忙しい中、この「雇用政策研究会」にお集まりいただきまして、まことにありがとうございます。
私、職業安定局の勤務は7年ぶりということになるのですが、この間、雇用政策あるいは職業安定行政の前提が大きく変わっておりまして、御案内のとおり、ハローワークの職業紹介の状況を見ても、求人が求職を大きく上回るという人手不足対策といったものが当面の懸案になっておりますし、また、そういった中で生産性向上の議論というのもさまざま行われているところでございます。また、これから高齢者の働く方がふえていくという中で、きょう御議論いただくような雇用の質といったことも含めて、さまざまな懸案があるという状況だと思っております。
皆様方には、ぜひ闊達な御議論をいただきまして、専門家の皆様方からの提言を頂戴したいと思っておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
○雇用政策課長 ありがとうございました。
本日の研究会でございますが、厚生労働省としましてはペーパーレス化を推進しておりまして、本研究会におきましても今回からペーパーレスでの開催とさせていただければと考えております。
使用方法につきましては、卓上の操作説明書を御確認いただければと思います。御不明な点、ございましたら、事務局職員にお申しつけいただければと思います。
それでは、議事に入りたいと思います。今後の進行につきましては、樋口座長にお願い申し上げます。
○樋口座長 それでは、進めてまいりたいと思います。本日は、「雇用の質」、労働時間等の労働環境、柔軟な働き方、公正な評価・処遇等を取り上げ、議論していきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
まず、事務局から資料について説明をお願いします。
○雇用政策課長 それでは、資料「雇用の質」につきまして御説明させていただきます。
2ページをごらんいただきますと、我が国の労働供給の現状というタイトルを記載しております。3ページから8ページまでは、この労働供給につきまして御説明してまいります。
3ページをごらんください。
左の図につきましては、我が国の雇用者数の推移でございます。1993年から見ますと、雇用者数は長期的に増加しております。
右の図は、雇用者数をパートタイムとフルタイムに分けたものでございます。フルタイムが青い棒グラフとなっておりまして、足元では増加しているものの、減少傾向で推移してきたということが見てとれるかと思います。一方で、オレンジ色の棒グラフはパートタイムでございますが、長期的にも大きく増加している状況でございます。
4ページをごらんください。
左側の図につきましては、先ほどの雇用者数に1人当たりの労働時間を乗じることによりまして、総労働時間を計算してグラフにしたものでございます。赤い実線が総労働時間で、青い点線が景気動向指数でございます。おおむねと言っていいかと思いますが、連動しておりまして、雇用者の伸びほどは顕著には伸びていないといった状況が見てとれると思います。
右の図は、総労働時間の前年比を、フルタイム(雇用者数)、パート(雇用者数)、フルタイムの労働時間、パートの労働時間の寄与の4つに要因分解したものでございます。パートの雇用者数の寄与につきましては、オレンジの塗り潰しとなっています。一貫してプラスに寄与している一方、フルタイムの雇用者数の寄与であります青の塗り潰し部分は、足元ではプラスですが、長期的には変動が多いことが見てとれるかと思います。
5ページをごらんください。
左側の図は、フルタイムの雇用者数の動きにつきまして、15-39歳の男性、40-59歳の男性、15-39歳の女性、40-59歳の女性、60歳以上の男女の5つの属性に分けまして、それぞれの動きの変化を確認したものとなっております。フルタイムの中でも、緑の実線が大きく増加していること。すなわち、長期的には60歳以上の方が大きく増加していることがおわかりになろうかと思います。足元では、赤の点線、40-59歳の女性の雇用者数も伸びております。一方で、青と赤の実線、15-39歳の男性、また女性につきましては、長期的に減少しておりまして、フルタイムの中でも若い世代が減っていることが見てとれるところです。
右の図は、それぞれの属性ごとに労働時間の推移を見たものでございます。どの属性で見ましても、バブル期に大きく労働時間が減少しておりますが、その後はリーマンショック時の労働時間減少を除きますと、大きな変化が見られないといった状況です。同じフルタイムでありましても、15-39歳の男性では労働時間が長いなど、性別や年齢によりまして平均労働時間が大きく異なっている現状となっております。
次に、6ページを御説明します。15-39歳の男性、40-59歳の男性、15-39歳の女性、40-59歳の女性、60歳以上の男女、こちらの5つの属性別に労働供給を担う割合を見たものでございます。我が国では、日本型雇用の中核を担ってきましたフルタイムの男性、ここ20年間で10ポイントほど減少しておりまして、特に15-39歳の男性フルタイム層におきましては、顕著な減少が見られるところです。一方で、40-59歳の女性フルタイムですとか60歳以上のフルタイムの層につきましては、割合が増加しております。
また、パートが担う割合が長期的に増加しておりまして、1993年では6.8%でございましたが、2017年には14.3%と、2倍以上といった状況になっています。
7ページをごらんください。こちらは、参考として添付しておりますが、6ページにおけるパートが担う割合につきまして、先ほどの5つの属性にさらに分けたものでございます。こちらを見ますと、パートの中でも特に60歳以上の者ですとか、40-59歳の女性による寄与が大きいことが見てとれるかと思います。
次に、8ページをごらんください。属性ごとの時給の推移でございます。こちらを見ますと、最近ではパートですとか女性のフルイタイムの時給が上昇しまして、相対的に男性との差が小さくなっているといったことが見てとれます。しかしながら、性別、年齢別、パートタイムかフルタイムかといったところで時給の格差が依然として存在していることが確認されるかと思います。
9ページをごらんください。9ページ以降は、労働移動や未活用労働力の現状について御説明します。
10ページでございます。
左側の図は、就業形態間の労働移動の図でございます。転職した方につきまして、前職と現職を比較しまして、フルタイムからフルタイム、パートタイムからパートタイム、フルタイムからパート、パートからフルタイムの4つの移動に分けています。最近の動きで言いますと、フルタイムからフルタイムや、パートからパートへの転職入職者が増加していることが確認できます。
右側の図は、フルタイムからパート、パートからフルタイムの転職入職者につきまして、59歳以下と60歳以上で分けたものでございます。最近では、緑の実線でございますが、59歳以下でパートからフルタイムに転換する者の数が、紫の実線、フルタイムからパートへ転換する方よりも大きくなっていることがわかります。
11ページをごらんください。こちらは、パートからフルタイムへ転換した方、フルタイムからパートへ転換した方、それぞれにつきまして現職を選択した理由をとった図でございます。
左側がパートからフルタイムとなっております。現職を選択した理由につきましては、「仕事の内容に興味があった」、「能力・個性・資格が生かせる」において高い割合になっておりまして、仕事のやりがいなどからフルタイムへと転換していることが多いことが見てとれるところです。
右側につきましては、フルタイムからパートへ転換した方ですが、黒い塗り潰し部分になりますが、「労働時間、休日等の労働条件が良い」の割合が最も高く、働き方の改善がフルタイム労働者がパートへ転換する大きな要因となっていることがわかるかと思います。
12ページをごらんください。こちらは、労働力と非労働力間の移行につきましてグラフにしたものでございます。青の実線が労働力から非労働力。こちらにつきましては、長期的に低下しているということが見てとれるかと思います。就業者のうち、仕事をやめてしまう方の割合が低下しているということでございますので、最近の就業者数の増加を反映しているものということが言えると思います。赤の実線につきましては、非労働力から労働力への移動でございまして、長期的には低下傾向でございましたが、2017年以降は上昇しておりまして、非労働力人口の労働参加が進んだことが見てとれるところでございます。
13ページをごらんください。こちらは、未活用労働力の状況についての整理をしたものでございます。
左側の図は未活用労働力の定義でございますが、未活用労働力につきましては、就業者のうち、仕事を追加したい追加就業希望者、また失業者と非労働力人口のうち、すぐ仕事につくことができる潜在労働力人口を合わせたものという定義となっております。左側の図で赤の実線で囲まれている部分がございますが、こちらが未活用労働力となります。
こちらがどの程度いらっしゃるのかということで、国際比較したものが右側の図となっております。我が国につきましては、諸外国と比べまして未活用労働力の比率が小さい状況が見てとれるところでございます。
こちらに、「すぐには仕事につけない」というピンクの塗り潰しがございます。こちらについて分析したものが、次の14ページになっております。
先ほど申し上げました、非労働力人口のうち、すぐには仕事につけないが、就業を希望する者の割合といったものがございます。こちらを国際比較したものが14ページの左側の図になっております。我が国では、先ほど未活用労働力が小さいということを申し上げましたが、すぐには仕事にはつけないが、就業を希望する非労働力人口につきましては、諸外国と比べますと大きいといったことが言えるかと思います。
同じページの右側の棒グラフですが、上のほうは、こうした就業希望で、すぐには仕事につけない非労働力人口の内訳でございます。こうした方のうち72%が女性となっております。そのうちの多くの方が25-54歳の比較的若い世代となっています。
右側の図の下の棒グラフが、その25-54歳の女性について、すぐに就業できない理由をさらに見たものでございます。こちらにつきましては、半数程度が「出産・育児のため」ということを理由としているところでございます。
次に、15ページをごらんください。こちらにつきましては、60-69歳につきまして、就業を希望しながら、就業しなかった理由をグラフとして整理したものでございます。その理由としましては、「適当な仕事が見つからなかったため」が最も高いことが見てとれるところです。
その内訳が右側の図となっています。「条件にこだわらないが仕事がない」、「職種が希望と合わなかった」、「労働時間が希望と合わなかった」といったことの理由が高くなっておりまして、依然としてミスマッチが存在している状況が見てとれるところでございます。
16ページをごらんください。こちらは参考資料でございますが、将来の人口の推移をお示ししたものでございます。我が国は、今後、2040年にかけまして団塊ジュニア世代が65歳を超えてまいります。65歳以上の人口が2040年にピークを迎えるといった状況が示されているところでございます。
次の17ページ以降は、雇用の質の改善に向けた課題といった形での資料となっておりまして、まずは、18ページにございます労働時間ということで、19ページでございます。
左側の図につきましては、フルタイムの正規とフルタイムの非正規、またパートタイムの別に労働時間の分布をお示ししたものでございます。フルタイムとパートにつきましては、労働時間の分布が大きく異なっているところでございますが、フルタイムの正規と非正規につきましては、どちらかといえば正規のほうが長時間、労働に従事する方の割合が多い状況でございますが、それほど大きな違いはないと思われます。正規、非正規、ともに月160時間程度働く方が最も多く、労働時間についてはある程度一定性が見られるところでございます。
右側の図は、フルタイムの労働時間につきまして、性別年齢別にそれぞれの分布を見たものでございます。こちらにつきましては、39歳以下の男性とか40-59歳の男性が若干右側に寄っている。長時間労働に従事する方の割合が高いことが見てとれるところでございます。しかしながら、160時間程度働く方の割合が最も高いということにつきましては、変化がないところでございます。
20ページをごらんください。実際の就業時間別の労働時間への希望を見たものでございます。左側は正規の雇用者、右側は非正規でございます。折れ線で書いてありますのは、「今のままでよい」という方々でございます。どちらも7割程度が「今のままでよい」と答えています。
ただ、左側の正規につきましては、就業時間が延びるほど「労働時間を減らしたい」と考える方の割合がふえていることが見てとれます。
一方、右側の非正規につきましては、「労働時間を減らしたい」と考えている方の割合が、正規に比べますと、長時間になりましても少ない傾向が見てとれるところでございます。
21ページからは、柔軟な働き方ということでございまして、22ページをごらんください。
こちらにつきましては、リクルートワークス研究所の「全国就業実態パネル調査」を用いて参考資料として作成させていただいたものでございます。柔軟な働き方を選択できる方の割合を示したものがこの図でございまして、左側が正規雇用者、右側が非正規雇用者となっております。柔軟な働き方としまして、勤務日を選択できる、勤務時間を選択できる、勤務場所を選択できる、それぞれについてグラフを示しているものでございます。いずれにつきましても、正規雇用者のほうが非正規雇用者に比べますと、柔軟な働き方ができる割合が低いことが確認されるところです。
23ページをごらんください。こちらにつきましては、正規雇用者につきまして、柔軟な働き方と生活の満足度の関係を見ようということで集計したものでございます。2016年時点で柔軟な働き方ができなかった方が、翌年にできるようになった場合、この満足度がどのように変化しているかというものを確認しています。
灰色の棒グラフが、2016年時点で柔軟な働き方ができなかった方のうち、生活に満足していると回答された方の割合になっています。赤色の棒グラフが、2016年時点には柔軟な働き方ができなかった。翌年にも柔軟な働き方ができなかった方のうち、生活に満足している者の割合。青色のグラフにつきましては、2016年には柔軟な働き方ができなかったのですが、翌年には柔軟な働き方ができるようになったということで、そういった方のうち生活に満足している方の割合です。
これを見ますと、勤務日が左端、真ん中が勤務時間、右側が勤務場所でございますが、全てにおきまして灰色よりも青色の棒グラフが高くなっていることが確認できます。柔軟な働き方ができるようになりますと、生活の満足度が改善する可能性がうかがわれるところでございます。
24ページをごらんください。こちらにつきましては、労働時間と学習活動の関係についての整理を行ったものでございます。
まず、週の労働時間が35-50時間の方、50時間以上の方につきまして、学習活動を行った方の割合を見ますと、リクルートワークス研究所の調査におきましては、左側のグラフでございますが、どちらも18%ということで、それほど違いは見られなかったところでございます。
右側の図につきましては、労働時間が減少すると「学習活動を行った者」の割合がどう変化するかといったものをグラフにあらわしたものでございます。2017年時点における週当たりの労働時間が35-50時間の方と、50時間以上の方、それぞれについてグラフを設けておりますけれども、0-10時間未満につきましては、一定の方向性は見えないところでございますが、10時間以上減少した場合につきましては、「学習活動を行った者」の割合がどちらも上昇していることが確認されるところでございます。
25ページからは、公正な評価・処遇ということで、26ページのグラフでございます。こちらは、勤続年数別・職業別に正規・非正規の賃金の差を見たものでございます。「×」と「-」と「○」という3種類の点があるかと思います。それぞれの勤続年数ごとの時給の水準を正規との比較であらわしたものでございます。「×」が勤続0-4年目、「-」が勤続5-9年目、「○」が勤続10-19年目を指しています。
こちらを見ますと、医師とか大学講師を除く全ての職業で、1倍よりもさらに上でございまして、こちらは正規の時給が非正規よりも高いということです。さらに、「○」のほうが「×」や「-」よりもおおむね上に来ております。こちらは、勤続年数を経るごとに正規と非正規の時給の格差が拡大しているといったことがうかがわれるところでございます。
資料につきましての御説明は以上でございます。
○樋口座長 ありがとうございました。
詳細なデータを提供していただきましたが、何か御質問ございますか。あるいは、御意見をあわせていただければと思います。特に、労働供給の担い手として中高年齢者が増加する中で、日本的雇用慣行がどのように変化していくのかという点。それに伴い、どのような対応が必要なのかということについても御議論いただけたらと思っています。
また、非労働力人口の労働参加をいかにして促進していくのかということについても御意見をいただければと思います。
加えて、正社員の働き方の柔軟性をいかに高めていくかということについても御意見いただけたらと思いますが、いかがでしょうか。
どうぞ。
○鶴委員 どうもありがとうございました。
雇用の質をきょうのこの場で議論するということだと思うのですけれども、そもそも雇用の質というのは何なのかというところが、今の御説明を聞いて十分体系的に理解することは難しかったなとちょっと思っているのですね。それで、雇用の質が、単に労働環境とか処遇とか働き方とか、それとイコールということであれば、そもそもこういう問題はこれまでかなり議論もされてきていますし、働き方改革関連法案にいろいろ提出されているところなので、何で今、この話をしなければいけないのかということをもう一度考える必要があるのかなと思います。
それで、雇用の質ということを考えた場合に、企業と雇用者、大きく両方の視点があると思うのですけれども、多分、企業側、労働を投入する立場というか、生産のために投入する立場ということになれば、労働者の数とか労働時間というのは量の話ですけれども、雇用者のスキルとか、そういうところは質の話になる。ただ、今回は、そっちのほうの話は多分除いて、労働者側、雇用者側の質というところに着目しているのだろうと思います。そうした場合に、単に労働時間が長いと質が悪いのか、非正規雇用だと質が悪いのか、処遇が低いと質が悪いのか、それは非常に単純な話だろうなと思います。
きょう御説明している中で、多分、事務局も非常に強調されている点というのは、その人の希望とか満足度とか自分の働き方というものが希望に合っているのか、合っていないのか。その辺のミスマッチというところを丹念に見て、例えば雇用されている、失業していないということは、量的な観点から見ればいいことなのですけれども、必ずしも自分の希望する働き方ができていないということであれば、その雇用の質は低いと考えなければいけないだろうということだと思うのですね。
そういうふうにすると、今回、雇用の質を議論するということは、先ほど例えば非労働力化された方々の中には就業したい人もいる。これも、まさに希望という話とかかわってくるところだと思います。本当は、こういうふうにしたいけれども、今、できていない。そうすると、そういうところをきょうは集中的に焦点を当てて議論していったらいいのか、そもそも雇用の質という定義というか、それは、きょう議論するテーマとして、それは一体何なのかということについて、もう一回事務局のほうから説明いただけますか。
○樋口座長 お願いします。
○雇用政策課長 ありがとうございます。
まず、鶴先生、御指摘のように、例えば同じ労働時間を働いたとしても、雇う側から見ると生産性というか、問題というのも確かに当てはまるかと思っています。第1回の研究会の資料でも、例えば我が国は、諸外国に比べると時間当たりの生産性が決して高くないということで、その生産性が低いといった問題も今回の研究会の大きなテーマだと考えまして、御議論をお願いしているところでございます。
今回の御説明の中では、雇用の質という意味では、特に働き方の組み合わせということが重要になってくると考えております。今般、労働力人口が高齢化していく。また、就業自体を希望しているのだけれども、すぐには仕事につけないという方々につきましては、さまざまな御事情を抱えている。その事情を乗り越えて就業可能とするような柔軟な働き方ですとか、そういったことを進めていかなければ、雇用ということを生み出していくことは難しいのではないかということを考えております。
そういったことで、先ほど樋口座長のほうからも御示唆いただきましたが、正社員の働き方の柔軟性をいかに高めていくのかですとか、また非労働力人口の方々がいかに労働参加できるような環境を整えていくのか。また、大きな問題ではございますけれども、今後、中高年の方々が働き手としてどんどんふえていく中で、柔軟な働き方を含めて、雇用の質を高めることによって、いかに労働力を確保していくのかといったことを御議論いただければと考えて資料をつくらせていただきました。
○鶴委員 もし、先ほどの雇用者の中でも、60以上の高齢者の方々がふえている。それから、女性、40代以上のところでふえているという御説明がありました。この事実を見て、雇用の質が上がっているのか、下がっているのか、どっちなのかという単純な質問を投げかけられた場合に、どういうふうに答えるのですか。
○雇用政策課長 済みません、雇用の質という言葉が余り適切でないのかもしれませんが、そういった方々が働けるような、柔軟な働き方ができるような環境整備をしていくことが必要と認識しております。ただ、例えば賃金が低いという状況にある中では、もしかしましたら、そういった短時間、働く方々の能力を十分に生かすような環境がまだ整っていないのではないかということは言えるのかなと思います。
○鶴委員 ありがとうございました。
○樋口座長 どうぞ。
○佐藤委員 どうもありがとうございました。
労働力の供給制約のほうでどうするかということで、13ページの未活用労働力のところがあると思いますけれども、未活用労働力の中でも、すぐ仕事につけるけれども、今、つけていない。もう一つ大事なのは、「すぐには仕事につけない」が303万人いる。これは相当大きい。「すぐには仕事につけない」の中身は、1つは「出産・育児」で、ここは出産というより育児のほうで、もう少し子供が大きくなったら働こうと考えている人が結構多いのだけれども、本当に今、働けないのかということですね。
もう一つは、適当な仕事がない。探してみたけれども、そのときはなかったので、多分無理だろうなと思っている人が後者に入っていると思うのですけれども、特に大事なのは、すぐには仕事につけない。でも、働こうと思っているのですね。今、働けるという可能性がある人がかなりいるので、この人にどう働きかけるか。
例えば、ある派遣会社は、これまで派遣スタッフとして働いていて、出産でやめてしまった。その後、3年4年たっていると、そろそろ働けるのではないか。ただ、本人はもう一度働こうと会社には来ないです。データは残っているので、派遣会社はそういう人に、お茶会をやるので来てください。そして、そこに同じような状況で、子供を預けて働いている人の話を聞いてもらうと、子供が小さいのに預けて働いていいのかと思っていたり、働き先がないのではないか。でも、そういう先輩の話を聞くと働けるのだなと思ったりする。
この303万人で、すぐに働けないと思っている人が本当に働けない。ただ働けないと思っているだけなのか、あるいは働くイメージが持てないのか、結構多いと思います。ここにどう働きかけるか。あるいは、一度探したのだけれども、なかったと思っている人たちにどうアクセスするか。今まで、失業者とかは対応しているのです。でも、ハローワークに出てこない人たちなのです。でも、働こうと思っている。この人たちが、実は働けるのですよというのをどうするかという求職者改革の取り組みを少し考える必要がある。
もう一つは、希望していたけれども、つけなかった人が15ページにいますね。1つは、労働時間が希望に合わないと、条件にこだわらない、仕事がない。ここは求人側ですね。求人側はこういうスキルがある人が欲しいと思っている。そういうふうにオファーされてしまうと、自分がやれる仕事がない。でも、求人側も条件を変えないと、例えばスキルとか労働時間を変えないと人を雇えないことがわかっていないということなのですね。今、人を雇おうと思うと、求人側に求人条件を変えればこんなに人がいます。そういうことがやれるのではないか。
だから、今まで失業者がたくさんいるときにどう働いてもらうかとやっていたのですけれども、人がいないわけですね。そうすると、働こうという人をどう新しく開拓するか、あるいは企業側の求人条件の緩和ですね。求めるスキル。これまでこういう人を雇いたかったという人は、もういません。ただ、それを変えれば人がいますということ。それは、先ほどの柔軟な働き方とかを変えることにつながると思うのですけれども、そういうことをやることが新しい政策として大事なのかなと思っています。そういうことを安定局の民間人材サービス、あそこは委託事業で少し始めているのですけれども、そういうものを見ていただければと思います。
○樋口座長 ちょっとデータの確認ですが、今のところで育児休業中あるいは介護休業中の人というのは、就業者に入っているのですか。それとも、今の就業を希望しているけれども、普通に就業できない。
○雇用政策課長 就業者に入っていると思います。
○樋口座長 それは大分議論したところで、実はかつては会社が給与を払っているというのが前提だったのだけれども、雇用保険から払っているのはだめで、それは非労働力だとなったのだけれども、それはないだろうという話から、非労働力ではないとなったのはたしかだけれども、有業か休業か。有業者には入っていると思うけれども、就業者に入っているのか、実際に働いていると。
それによって、何でこんなに出産・育児のため働けないという人が多いわけですか。それに、さらに育休というのが加わる。働いていないけれども、休業している人も含めると。という議論になってくると、数が相当にふえる。労働力人口に入れて休業だと思うのだけれども、休業者も就業者に入っている。
○雇用政策課長 手元の資料では、休業者のほうに育休の方々が入っているように読みとれるのですが、改めて確認させていただきます。
○樋口座長 143万人は、かなり大きい数字ですね。年間100万人しか子供が生まれてこないから、5歳以下の子供を持っている母親が。
○佐藤委員 事例で調べてみると、小学校に入ったらとか、子供が4年生になったら働こうという人が結構多いです。だから、育休というよりか、それが終わった後。実際上、もうちょっと大きくなったら働こうみたいな人が多いような印象です。
○樋口座長 大竹さん。
○大竹委員 資料の一番最初に問題意識をもうちょっと書いてもらったら、わかりやすかったかなと思います。人手不足で、柔軟な働き方に代表されるような雇用の質を改善すると人手不足が解消できるという可能性を明らかにしたいということが問題意識だと思うので、それを書いていただければいいかな。雇用の質という言葉自体が目新しいので、鶴さんがおっしゃったとおり、労働者の生産性と思ってしまうけれども、働き方の柔軟性とか賃金とか労働時間という労働条件をよくすることで人手不足を解消できる。
普通は、賃金が上がったら労働供給がふえるという話だけれども、それ以外の属性も見て労働供給を考えるということで、そこを改善することが必要なのではないかという議論を最初にしていただくと理解しやすいのではないかと思いました。
そのときに、もうちょっと視点をはっきりさせるために、例えば人手不足によって雇用の質全体が上がっているのかどうかということをもう少しわかりやくしていただければ。例えば、労働時間のことについても、労働時間を1セットで書いてあるのですけれども、人手不足によって全体によくなっているかということがあって、それをもう少し促進すれば労働供給も改善するというストーリーのほうがわかりやすいかと思います。
それが全体の感想ですけれども、幾つか記述の中で気になったことがあるので、細かいところ。
例えば、3ページ目の、フルタイムは足元では増加しているものの、長期的には減少傾向と書いてあるのですけれども、2002-2003年からは右上がりなので、10年でも短期なのかというのが記述で気になりました。
それから、5ページ目のフルタイムの労働供給で年齢別に若い人たちが減っていますということですけれども、これは人口そのものが減っているほうが大きく反映しているので、雇用そのものが人口とは無関係に減っているような印象を、ここだけ読むと感じるような記述かなというのが気になった。
それから、あと1点だけですけれども、13ページの先ほどから議論になっているところですけれども、就業非希望者であったとしても、これは雇用の質、賃金や働き方の柔軟性が上がれば、働くほうを希望する人は当然出てくると思います。だから、就業希望ですぐ働けない人だけをターゲットにしなくても、ここで言う雇用の質が上がってくれば就業希望者から変わってくるという気もする。ここはすごく人口が多いですから、私の全体のコメントは一番最初に申し上げたとおりで、何でこれをやるのかがはっきりすれば、もう少し図を整理してメッセージを出すことができるのではないかと思います。
以上です。
○樋口座長 この政策研究会としては、将来を見通したときに、雇用条件が変わっていけば、もっと多くの人が働く、あるいは意欲・能力が発揮できるような状況というのがどこまでできるのだろうかというのが問題意識なのです。だから、労働需給の見通しというのは人数で数えたりしているけれども、例えば条件が変わってくると、さらにこれだけふえるということを言いたいということできょうは検討しろと、平たく言えばと思うのです。景気も含めて。
どうぞ。
○荒木委員 法律が専門ですから、全く素人なのですけれども、鶴先生が最初におっしゃったように、雇用の質とは何なのだということで議論が今、展開したと思いますけれども、素人考えで言うと、失業率とか就業率とかいうのは、雇用の量に着目しているのですけれども、今は失業者がこれだけ完全雇用に近い状況で、それでよいのかというと、どういう雇用なのかというのが雇用の質の問題ではないかという気がいたしました。
バブルのころも人手不足ということで、あのころ労働条件が随分改善したと言われました。労働時間も短縮しましたし、年休の取得も進んだという、労働市場が非常にタイトなときに労働条件も改善するのだと思います。そういう意味で、今は労働の質を改善するには非常に好機かもしれないと思いますけれども、昔のように、労働時間が単に短くなったとか、残業しない希望が通るということではなくて、恐らく労働者の満足度に着目すべき時代だと思って、その満足度が人によって多様になってきたのではないかと思います。
単に労働時間が短くなるとか、賃金が上がるということではなくて、ワーク・ライフ・バランスに沿った職業を追求できるとか、個人によって、何で満足度が高いか。必ずしも賃金が高くなくても満足度が高い仕事があるかもしれないということで、今、世界中、ヨーロッパのプラットフォーム・エコノミーなどでも、これはフレキシビリティーが高いということが労働者の満足度につながっているということなのですね。
ですから、雇用の質を問題とする場合には、これまで見てきたような指標でははかれない満足度があるとすれば、それは何なのかを議論して、それを反映させたような観点から議論すると、まさに高い質の雇用になっているという議論ができるのではないか。何が労働者の満足度を高める指標なのかというあたりをいろいろ教えていただければという印象を持ちました。それが1点。
もう一点は、例えば19ページで、これはフルタイム正規とフルタイム非正規で労働時間の分布というので、フルタイム非正規はパートよりも多いですけれども、フルタイム正規よりもちょっと左に寄っている。このフルタイム非正規というのは、有期のフルタイムの人ということなのか。これまでいろいろな労働力調査などは、呼称で調べていて、しかも呼称は本人が選ぶということだったと思います。
そうすると、例えば平成27年の労働力調査ですと、正社員と答えた人の中の3.8%は有期契約の人なのです。つまり、定年後、再雇用で嘱託などで働いている人は、本人の意識は正社員のつもり。ところが、有期だという人が、こういう調査では正社員のところに出てくる。でも、その人たちに有期ですか無期ですかと聞くと、有期と答えるということで、本人の認識あるいは呼称で調べたものと、こういう分析のときには、そのまま本人の申告どおりに法的な属性を推定してよいかというのは、もう一つ検証が必要ではないかということがありましたので、このフルタイム非正規あたりもどういうことなのか、ちょっと検証していただいたほうがいいかという気がしました。
以上です。
○樋口座長 まず、フルタイムの非正規の。
○雇用政策課長 こちらは、賃金構造基本統計調査をベースにしておりまして、まさに呼称としまして事業所のほうに記載をお願いしているのですけれども、それぞれの個人の方について、正社員ですとか正職員なのか、それ以外の方なのかという形での調査の仕方になっておりますので、厳密な意味での整合性という部分で若干揺れがある可能性はございます。
○樋口座長 これは、各府省も含めて、正規と非正規に関する調査というものが日本の公的統計で57あるのです。それで、皆さん、それぞれまちまちの定義をとっていまして、1つは、今の呼称、企業においてどう呼ばれているかというのでやっているものもあれば、週当たり労働時間で規定しているものもあれば、有期か無期かというのもあれば、直接雇用か間接雇用かという。これは、統一しろというのが私の統計委員会時代からの課題で、やっとその議論が政府の中で始まったのですけれどもね。
世帯調査については、一応統一的なものになってきたのだけれども、企業調査のほうについては、まだ必ずしもそうなっていないという問題で、多分、これは使っている表によって全部違うという問題ですね。
どうぞ。
○黒田委員 たくさんの資料を用意していただいて、ありがとうございます。
全部で3点、コメントがありまして、1点目は、今の19ページの労働時間のところの分布です。すでにたくさんの御意見が出ているところですが、そこに加えて、今、座長もおっしゃいましたけれども、世帯統計のほうでの数値も見ていただきたいと思います。というのは、賃金センサスは事業所の統計ですので、世帯統計とかなり乖離があると思っております。働き方改革によって、とにかく早帰りをしなさいという企業が大手企業を中心にふえていると言われていますけれども、本当に実態がそうなっているのか。それとも、いわゆるサービス残業がふえる形で事業所の統計では表面上労働時間が減少しているようにみえているだけなのかというところは、見ておく必要があろうかと思います。
さらに、働き方改革の影響として、今はクロス・セクションの見方をしているわけですけれども、最近の動向として、3年前あるいは5年ぐらい前から、この分布がどういうふうに変化してきたのかという時系列の影響も確認していただければと思います。それが1点目です。
それから、2点目は、先ほど来、多くの先生方がこの研究会の趣旨についておっしゃっていて、私自身もわからない中でずっと進んできているような感覚があるのですけれども、お聞きしていたところ、特に正規の柔軟な働き方というものをいかに高めていくのかというところを、事務局は非常に問題意識として持っていらっしゃるのかなと、私自身は解釈しました。その柔軟な働き方というのは、もちろん労働者のウエルフェアを高めることにはなるわけですけれども、その場その場の希望と合っているという、時間も場所もフレキシブルな働き方というものが余り行き過ぎてしまうと、今度は、例えば健康面とかプライバシーとのコンフリクトといったものが生じてくる可能性もあるかと思います。
この研究会が、例えば1年後を展望しているのか、あるいは四、五年後の中長期を展望しているかによっても違いますけれども、私自身の受けとめ方としては、もうちょっと中長期を考えるのがこの研究会の趣旨ではないかと解釈しています。その場合、四、五年後を展望したときに、そういった柔軟性のある働き方がふえてきたときに、今の雇用政策や法制度のあり方というものがうまくワークするのかというところの問題提起も、報告書に入れていただくのがいいと思います。
3点目は、これと関連することで、先ほど荒木先生もおっしゃいましたけれども、クラウドワーカー、プラットフォームワーカーというのが国際的にもふえつつあるという印象があります。政府としても、副業を推進するという動きがあるわけですけれども、こういった複数の仕事を持つ人がふえていくということは、データを把握するのも非常に難しくなり、雇用政策も難しくなっていくという問題が今後、生じてくる可能性を示唆していると思います。私自身が知る限りは、日本の中でこうした副業やクラウドワーカーの存在をきちんと把握した統計というものがまだ余り整備されていないと理解しています。他国も同様かもしれませんが、国際的にみてこうした労働者の動向がどうなっているのかといったことも調べておいていただけるとありがたいと思います。
以上です。
○樋口座長 御要望と御質問があったと思います。
○雇用政策課長 済みません、労働時間の把握につきましては、不十分な点があるかと思います。検討させていただければと思います。
あと、19ページの労働時間の分布につきまして、きょうお示ししている資料にはないのですが、1989年の数字を確認してみました。そのときには、詳細な数字が手元になくて申しわけないですが、パートタイムでもフルタイムでも、現在よりも山は右側。つまり、より長時間の労働に従事している方が多かったという形になっておりまして、パートタイムで一番高いのは120-130時間あたりにいらっしゃいますし、またフルタイムで見ますと、一番のピークは200-210時間というところになっておりまして、全体としましては、そこの1989年と2時点間の比較ではございますけれども、当時と比べますと長時間労働に従事される方の割合が少し減ってきているのかなと思っています。
そちらの数字についても、また整理しましてお示しできればと考えているところでございます。
おっしゃられるように、今後5年程度の中長期的な施策の方向性について御検討いただくのが、この雇用政策研究会だと私どもも考えているところでございます。そうした中で、必要な労働政策のあり方について御議論いただくということで、また、現行の制度面で不十分な部分につきましては、何かしらの対応が必要ではないかという問題意識も持ちながら検討を進めていければと思っています。
クラウドワーカーにつきましては、私ども、特に国際的な調査等について把握しているものではございませんけれども、もう少し整理させていただければと思っております。
○樋口座長 この研究会は雇用政策研究会で、雇用政策と労働政策というのは、今まで何となく同じものだとなっていたのですけれども、今の御指摘のような雇用類似の働き方とか、どちらかというと自営。そういう意味では、雇用関係にはないですね。そこもターゲットに入れる必要が、労働という意味ではあるのではないかということで、今回、雇用の質というので出てきたから、そこは入っていないのかもしれないですけれども、雇用類似とか、中には雇用者のいない経営者というか、事業主というところも、神林さんがいれば言うのかなと思っていたのですが。
もう一つ、類似しているけれども、違っているのは、今、供給側から見ているから多分出てこないだろうと思いますけれども、この20年間に大きく変わった1つは、企業規模別の雇用者構成比です。小企業の企業数も相当減ったし、働く人の比率もグラフを書くとすごく減ってきている。500人以上のところというのは、逆に数はそれほどふえていないけれども、従業員の数をすごく伸ばしてきているということがあって、需要サイドからの話のときに出てくるのかもしれませんけれども、そこのところはかなりドラスチックな変化で、今後を見通すときには特にそれは変わってくる可能性があるのではないかと思います。
はい。
○玄田委員 さっき荒木さんから、仕事満足度ということが質を議論するときに無視できなくなってきたというお話もありましたし、今、黒田さんのお話で、短期的な希望がかなうということが、果たして長期的に見てどうかという話もあったりして、確かに質をどうはかるかというのは非常に悩ましい問題だなと思って、改めて聞いておりました。特に、希望という概念がこの資料の中で幾つか出てくるのですけれども、10年ぐらい希望の研究をしていましたので、希望をかなえるということが、仕事の質に対して確かに大きな意味があるというのがわかる反面、取り扱いが非常に難しいものだなというのを率直に感じております。
特に、ミスマッチの中でも、職種が合わない、時間が合わないという。では、その希望を本当にかなえた先には非常に幸せな雇用社会が待っているかというと、ちょっとよくわからないところもあって、前に希望の話をしたときに、経済学で言うとケインズのアニマルスピリットみたいなところがあって、常に向上していきたいとか、希望がかなわないから向上していきたいという面もあるものだから、大事なことは、希望をかなえるということよりも、うまく表現できないですけれども、自分の希望はこうだったのだということが発見できるとか、状況に応じて自分の希望を見つめ直して、それを柔軟に調整できるほうが非常に重要な感じがする。
最初から希望ありきという、こんな時間で、こんな場所で、こういうふうに働きたいというのがあるかというと、そういう方もいらっしゃると思うのですけれども、実際にはその辺は自分自身も曖昧で、その状況の中で、ああ、これが自分の希望だったのだと出会えた瞬間に就業につながるというのは、例えば非労働力の話も出てきますけれども、ニート状態の人たちが就業につながるというのは、これが本当に自分のやりたかったことなのだということが出会った瞬間にあるということがあるので。
それが政策でどうかということを考えますと、どうやってその希望に出会うか。ある種のカウンセリングとかメンタリングとか広い意味での学習ということがあって、初めて自分自身の希望と出会い直すということがあるので、もしかしたら雇用の質の議論をするときには、そういう自分の希望をどういうふうに見つけるのかという体制づくりのようなことが大事かなということを、広い意味での政策としては感じました。これが1点目です。
2点目は、私などは雇用の質というと、一義的には時間当たり報酬だろうということを思いますし、多分、多くの人にとって質というと、時間に対してちゃんとした報酬が持てる。基本的ですけれども、8ページの図をどう解釈するか。これは、女性というか、パートでは、時間当たりの報酬が上昇傾向であるというので、底辺の部分にあった方々の多い部分の時間当たり報酬が上がっているというのは、ある意味で望ましい方向に社会が進んでいるという評価もできるでしょうけれども、一方で、ここにフルタイムが伸び悩んでいるとも書いてある。
一方では、社会全体の格差の縮小という面でいくと、今、比較的いい方向に進んでいると。ただ、特にフルタイムの生産性が伸び悩んでいることが、時間当たり報酬の伸び悩みになったりすると問題だともなって、そうすると、フルタイムの生産性を上げる方向にどんどん政策をやっていきましょうとなるのではないかと思います。
逆に、フルタイムの生産性上昇に成功したら、今度、格差問題というのが大きくなってきて、常に生産性上昇と格差の拡大がパラドキシカルな関係がある。そこを整理しないと、生産性向上の議論をするときに、一方にある不平等の問題や格差の問題とそんなにぴったり歩調を合わせた問題なのか。場合によっては、非常にトレードオフがあるのではないかというのが、ここでも問われているような気がします。
だから、ここのところをどう考えるかというのは政策の議論で、いろいろあるけれども、今はパートとか女性の生産性向上を1丁目1番地として、私は好きな表現じゃないですけれども、女性ファースト、パートファースト、高齢者ファーストとして、フルタイムよりはとにかくそういう底辺部分を支えて生産性を上げるほうに進んだというのであれば、それは一部では支持されるでしょうし、最近の労働組合の動きからするとあると思うのですけれども、座長が言われた労働需要側からすると、フルタイムの生産性が伸び悩んでいることが問題だよねとなると、どういうふうにしてバランスをとるのかという議論の整理をしないと、望ましい政策の方向性というのは議論できないという気がいたします。
ただ、最後にもう一個だけ申し上げると、これは賃金センサスから計算されていることなので、今、労働力調査は年間の総労働時間みたいなもので計算できますし、一番実態に近い時間当たり賃金がどのあたりにあるのかみたいなことを、ここまで長い時系列ではとれないですけれども、そこを客観的な情報としてお示しして、今、どこの生産性を上げることが喫緊の課題であるとか、そのときに不平等というものに対して、どう目配りしていくのかという議論の整理となるような情報を提供することも、雇用政策の中では重要じゃないかなと思いました。
ちょっと長くなりましたが、以上です。
○樋口座長 ウエルビーイングとかハピネスとか、大竹さんとか山本さんとか、どうですか。こういう話を研究なさっている。荒木先生が問題提起した幸福度とか、さっきのエンゲージメントとか働きがいといった心理的なところは。
はい。
○荒木委員 玄田先生の話を聞いて、ああ、そうなのかと改めて思ったのですけれども、時間当たりの報酬というものが雇用の質とおっしゃったのは、私どもにとってはかなり衝撃で、そういうふうにはかれる部分はもちろんあるでしょうけれども、卑近な例では、大学の研究室の秘書さんなどの時給単価はかなり低いですけれども、大学の春休み、夏休みは子供の学校の休みもあるので、その間はほとんど勤務時間がなくていい。そういう形での就業であれば、それから研究室の雰囲気は大変よい。そういう職場の雰囲気といった、お金ではかれないところの価値を評価して満足度を高めている就業形態もあるだろうと思います。
今、盛んに世界中でウエルビーイング・アット・ワークというものが議論されておりまして、私ども、ウエルビーイングというのは非常に捉えどころがないなと思って、聞いてみると、結局は満足度が高いかどうかみたいな話なのだという答えがヨーロッパ人から返ってくるのですね。そういったものが、いわば経済学的な分析といいますか、それを数値化したり、どうやってはかるのかというのが、むしろ私などは知りたいなと改めて思った次第です。
○鶴委員 今の荒木先生がおっしゃったお話というのは、非常に経済学的で、大学の秘書の方は、賃金だけじゃなくて、夏休みに割と休みがとれるとか、ほかの処遇とあわせてということなので、報酬賃金間接ということで説明ができると思うのですけれども、先ほども焦点になっている高齢者とか女性という場合だと、何が満足度を高めるかというところについても、私は非常に多様だと思うのです。それで、何かある特定の政策をやって、もちろん時間当たり賃金というものは高いほうがいいとみんないいと思って、それはメルクマールがあると思いますけれども、それ以外のところは非常に多様なので、なるべくいろいろ選択肢を見せて、それを選ぶことができる。
それが柔軟な働き方とか多様な働き方とか、そういうところで、みんなそれぞれいろいろな希望とか、何をしたら満足度が高まるのか。それは、人それぞれでかなり違うので、それぞれの人たちが自分のそういうものに従って、なるべくいろいろなものを選択できるような状況を考える。それが結果的にそういう満足度を高めるというのが、多分発想だったと思うのですね。
でも、そうしたときに、これまでのお話、議論を聞いていると、そうやって選択肢をたくさん用意して、本当に自分は何が一番いいのかと、それを選ぶことができるのでしょうか。非常に合理的な判断ができるのでしょうか。そのための知識というか、知識だけじゃなくて、本人が必ずしもそれを選ぶことができないという問題もあるかもしれない。先ほど、非労働力化して、それでも、すぐにでも就業したいという人の中には、そもそも職探しの仕方がよくわからないから、緊急に働かなければいけなかったときに、知り合いとか、そういうつてを通じて就職したい人が多いとか、そういう調査とか分析もあるみたいです。
そういうことを考えてみると、情報がかなり不足しているというところは、多分、この問題の中で根本的な問題としてあるのだろうと思うのです。そうしたときに、それをどういうふうにしていくのかというのは、これまで雇用政策というところでは余り考えられてこなかったという、一歩先の話というのも少し考える必要があるのかなというのは、皆さんのお話を聞いて思いました。
○樋口座長 はい。
○佐藤委員 雇用の質とか労働の質。多分、もっと大事なのは生活の質で、どういう生活。幸福なんて、多分仕事だけじゃないですね。その人の生活全体が幸福ですかという話だと思うので、質の高い生活というのが多分大事。そのときに、従来と違って労働の質だけで決まらなくなったということだと思うのです。特に、従来の男性モデルだけ考えれば、雇用なり労働の質、賃金も含めて、仕事がおもしろい、スキルを生かせる。であれば生活の質は高かった。そうじゃない時代になってきたということだと思うので、その1つが典型的に、子育てしながら働く女性、男性もそうなってきた。
そうすると、仕事以外。つまり、人間はいろいろな役割を持っているのですね。だから、仕事だけの役割じゃなくて、仕事以外の役割もやれるような仕事の仕方、ワーク・ライフ・バランスですけれども、そういう意味で、仕事だけ見ればいいのか。その人が仕事以外で担っている役割を、あるいはやりたいことをやれるような仕事か。柔軟な働き方は、そういうことだと思うのです。やや広げてしまうと、トータルで見ることが大事かなと。
そういう意味では、残業が減ってきた。昔は、月45時間残業していた。今は、二十数時間、1日1時間ですね。減ったのです。でも、生活という観点から見ると、1日1時間、首都圏でやっていたら、通勤時間を考えると平日はほとんどゆとりがないのです。それよりも、残業ゼロの日と2時間残業する日。量としては、月24-25時間。だけれども、ゼロで帰れる日が週2日とれて、2時間。量は一緒なのです。でも、働いている人から見ると、特に仕事以外でやりたいことがやれるかどうかというと、残業ゼロの日をつくれるかどうかです。まさに、ここが労働時間の質みたいな話。
ですから、質を議論するときに大事になってきたのは、それぞれの人の仕事の中身はもちろん、仕事以外のやりたいことがやれるような仕事の仕方、労働になってきたということがすごく大事。逆に言うと、仕事以外にやりたいことがたくさんあるから労働条件が合わないとか、そちらが大きい人たちに働いてもらうということだと思うのです。そういう形で質のあり方を変えるということが、多分大きな課題になってきたのかなと、伺っていて思いました。
○樋口座長 どうぞ。
○玄田委員 荒木さんに衝撃的だと言われたので、ちょっとショック。
提案ですけれども、勝手に命名してOSカーブみたいなものを書いてみますか。縦軸に時間当たり報酬をとって、横軸に満足度をとって、いい社会はいろいろな職業とか産業の分布が右下がりのカーブの上にあるのが、比較的雇用の質が保たれた社会。さっきおっしゃった秘書さんというのは、時間当たり報酬は低いけれども、選択度が高くて満足度が高いというカーブの右下にある。
一方で、非常にハードワークでストレスも大きいけれども、時間当たり報酬が高いので、生活のためにそういうものを選びたい人は、どっちかというと左上のカーブにあるような関係であれば、それはすごくいい社会で、どこか1点というよりも、右下がりの関係の中でどこかに選べるような状態になっているというのは、比較的いろいろなメニューが準備されたいい社会。悪い社会は何かというと、そういう右下がりの関係ではなくて、どっちかというと右上と左下に2つに分かれているような。つまり、時間当たり報酬も高いし、満足度も高い職業とか産業と、時間当たり報酬も低いし、満足度も低いものに分かれているのが、多分、いわゆる二重構造みたいな関係。
もちろん、こういうカーブを書くためには、いろいろなその他の条件の違いというものをコントロールしなければいけないのでしょうけれども、今、社会がどういう姿になっているのかというのを描くとか、満足度の問題と、さっきの時間当たり報酬は、どっちをとるべきかという問題ではないと思うので、雇用社会の姿を描いていく上では、そういうものを書くとか、労働社会でも時間当たり報酬だったらいいのでしょうね。そういうことを工夫しながら、我々が今、議論しなければいけない社会の姿みたいなものを描いてもおもしろいかなという気がしました。
今、リクルートの調査だと3カ年しかないですけれども、そういうものはやろうと思えばできなくもないと思うので、そういう質の分布がどうなっているのかという社会の見せ方について少し工夫して研究会で提案すると、いろいろな建設的な議論にもつながるかなというのは思いました。
以上です。
○樋口座長 佐藤さんが言った、雇用条件だけじゃなくて、生活の質という話、雇用以外の職場以外の話も含めてという問題提起だろうと思うのですが、例えばどれだけの人が働こうとするのかということ自身も、今までは何となく雇用政策の中で企業の雇用条件を改善すればということで、人々の考え方とか社会環境というものは前提になくて、予見のもとにおいて雇用政策をどうするかというところだった。
けれども、今の問題提起はそれだけじゃなくて、時には性別役割分担の社会における認識とか、あるいは時には手取り賃金ということになれば、当然、税・社会保障制度が影響してきて、配偶者控除をどうするのとか、在職老齢年金をどうするのということがそこにも当然影響してくる。ということで、それに触れざるを得ないということなのかな。あるいは、育児・介護で女性が働きたいとしながら働けないということであれば、まさに保育所をどうするの、介護施設をどうするのという社会環境までを含めて、この雇用の問題を考えていかないと解決策がなかなか見出せないかなと思います。
東京医大の問題を雇用政策ではないと言うのは簡単なのだけれども、それでいいのですかという問題になると、結局は雇用にも影響を及ぼすわけで、この問題というのは触れざるを得ない。
○鶴委員 自分が働いているところの会社でもいいのですけれども、そこ以外の生活の部分ということで、今、佐藤さんがおっしゃった。ただ、副業とか兼業の話も、僕は同じ話だと思うのです。つまり、副業・兼業ということで、今、働いているとは別の世界を持っている人というのは、結構生き生き働いていて、生き生きやられている。逆に、本業のほうも非常にプラスの効果を与えるとか、そういう視点で副業・兼業みたいな話も考えていかないと。
でも、副業・兼業の話は雇用政策の中で考えなければいけないということだと思うのですけれども、外の世界と通常の企業の中の世界。まさにそこが一体となって、どういうふうに考えていくのかということだと思うので、雇用政策だと思っている話も、実はそういうところにつながりがあるということだと思いますし、かなり柔軟に考えていかないと展開していけないなというのは、まさに座長がおっしゃるとおりだと思います。
○樋口座長 前に労働政策とは何かといういろいろな文献を調べたら、簡単に出ていたのは、労働省がやっている政策が労働政策ですと書いてあって、やっていない教育問題を初め、いろいろなところで出てきたら、これは労働政策じゃないのかということになるけれども、かなり広がりを持って議論しないと、これからの日本社会を議論できないのではないかということだと思います。
山本さん。
○山本委員 済みません、私、欠席で出していたようで、発言権があるかどうかわからないですけれども、発言させていただきます。
今のお話の流れですと、労働政策というところが広がってきているということですが、15ページ目の60歳代の就業を希望していてつかなかった理由を見ると、健康上の理由というのが2番目に大きくなっている。この資料では、「適当な仕事が見つからなかった」ところをフィーチャーしていますけれども、それと同じぐらいの人が健康上の理由を挙げている。ただ、この人たちは就業を希望しているわけです。にもかかわらず、つけなかったということで、ここは健康問題も労働政策で扱っていかなければいけないのだろうなと思いまして、ある程度健康上の理由、問題があったとしても働くことができるような環境を整える。これこそ質の高い雇用が実現することの一つの鍵になってくるのではないかと思います。
ですので、この人たちが一体どういう人なのか。パートタイムなら働けるのか、どういう制度があれば働けるのだろうかとか、そのあたり、ちょっとフィーチャーしていただくのも重要かなと思います。
それと、1つ前の議論のウエルビーイングとか雇用の質です。皆さんの御指摘のとおりだと思うのですが、今の健康上の理由もそうですけれども、希望していて、それがかなわないといったところが、経済学で考えれば、そこが一番政策のターゲットにするべきところなのかなと思います。誰もがいい状態を目指すというのは当然やっていることですけれども、そこで希望していても、それがうまく実現できないということが何らかの本人以外の要因で生じている。制約と言うことができると思うのですけれども、そういった制約があるのであれば、それを雇用政策で何とか取り除くというところが重要かなと思っています。
そういう意味では、選択肢がたくさんあるという状態はいいと思いますし、玄田先生の言われる二極化した状態というのは余りよろしくないのではないかということですが、20ページの図で見てみると、正規雇用者に関して、こちらも希望がかなっていないという点では、週60時間以上の人を見ると半数以上が「労働時間を減らしたい」と言っていることを考えると、正規雇用者というのは、ウエルビーイングという意味では必ずしも最適なところを選べていないと考えられるかなと思います。
非正規雇用に関しては、時間というよりは、むしろ就業状態が希望のものになっているかどうか。つまり、不本意型の非正規がどれぐらいいるかというところを引き続き注目していくべきなのかなと思っています。つまり、短期的に見ればということですが、とにかく誰でもウエルビーイングを高めればいいという、もちろん大事なのですけれども、まず最初のターゲットとしては、この労働時間を減らしたくても減らせていない人とか、正規につきたくてもつけていない人たちをどうやって減らしていくかというところが大事なのかなと思っています。
それから、先ほど話が出ていました労働時間の分布の19ページの図ですけれども、こちらは賃金センサスではなくて労働力調査などの世帯調査でも出していただけるというお話でしたけれども、この差が生じる可能性があるとしたら、管理監督者で事業者側が把握していない労働者の労働時間というものが、差としてあらわれることが考えられるのですけれども、特に最近は働き方改革のしわ寄せといえばしわ寄せなのかもしれませんけれども、管理監督者の労働時間が長くなっている。残業代のつく人には残業させずに、管理監督者が肩がわりをしているということも言われていますので、その部分でどれぐらい長くなっているのだろうか。
フルタイム非正規とフルタイム正規、管理監督者はフルタイム正規に入ると思いますので、労働力調査などで描くと全然違う図になる可能性があるということで、可能であれば管理監督者だけでもこの図を出してみるのもおもしろいのかなと思います。
それから、済みません、細かい点が続くのですけれども、今のとちょっと似ているのですが、10ページです。右側にパートからフルに移行した59歳以下の人がふえているという図があって、11ページ目の労働移動の背景というところを見ると、労働供給側の意向が働いているという見方をされていると思うのですが、同じ図で、可能であれば、有期から無期に移った人が59歳以下でどれぐらいふえてきているのかというところを見ると、そちらは恐らく労働需要側の影響も出てくると思いますので、この人手不足の中にあって無期転換というのがどれぐらいふえてきているのかというところを見られていいのかなと思いますので、可能であれば作成していただければと思います。
以上です。
○樋口座長 どうぞ。
○雇用政策課長 いただいた御意見を踏まえまして、どこまでつくれるかという部分はございますけれども、資料作成に取り組んでみたいと思います。
ありがとうございます。
○樋口座長 確かに管理監督者の労働時間を事業調査でとるのは難しいかもしれません。ちょっと調べてください。40-59歳というのがフルタイムの労働時間、割と短くなっていますね。39歳以下のほうが長い人が多いようなものになって、そういうものが影響しているのかもしれない。
ほかにいかがでしょうか。神吉さん。
○神吉委員 2点、申し上げます。
まず、1点目は、先にお話に出てきた雇用の質を何で見るかです。満足度ではないかというご意見、私も大変共感します。その満足度に大きく寄与するポイントとして、「選択できること」が非常に大きいと感じています。特に、自律的に働き方を選択できることが鍵になるのではないか。これは、たびたび話題にも出てきました、未活用労働力の中の育児中の女性に関して、特に言えると思います。
というのは、先ほど佐藤先生のほうから、生活全体の中で考えるべきというお話もあったところですが、育児がどうして労働となかなか両立できないかを考えていったときに、育児が本質的に他律的であるという性質そのものが挙げられます。育児のほかに介護、まとめてケア責任を果たすことは、自分ではどうにもならない、他律的であることが本質です。
以前、佐藤先生がキッザニアで子供を遊ばせているお母さんを、どうにか労働力として活用できないかというお話もあって、確かにすごく暇そうな、公園で遊んでいるお母さんもいるかもしれません。1日4-5時間はひねり出せるのではないか、まさに量的に見ればそのとおりだと思うのですけれども、例えばそれがいつ中断しなければならなくなるかはわからない。質的に他者、育児だったら子供、介護だったら介護されている人の都合に合わせて常に準備状態にいなければいけない。突発的対応への準備をずっとしていなければいけないことが大きいと思います。
それも、育児でも、ほんの幼児のときだけではない。先ほど小1になったら働きたい、小4になったら働きたいというお母さんもいるとありましたけれども、実際には小1になれば、保育園よりも子供を預ける時間はずっと短くなるし、小4になれば学童に預けられなくなってしまうこともある。かといって、小1や小4になった段階で、子供が急に何でもできるようになるわけではないのが実際の大きな壁になっています。
育児と労働・仕事が、どちらも他律的であって、全人格的な投入を要する。常に準備状態でなければならないのであれば、それは本人の意識とは別の問題で、構造的に両立できないのです。ですので、こういった未活用労働力の女性をどうにかして労働力として活用していきたいのであれば、そういった問題を解決しないと無理であろうと思われます。
育児・介護は本質的に他律的なもので、これはどうしようもないものですから、変えるべきは労働側のルールです。となれば、働き方を自律的に選択できることは非常に大きな解決策になるのではないかというのが1点。
2点目は、今まで話に出てこなかった一番最後の26ページです。公正な評価・処遇というタイトルで、この表だけが出ています。これをどう読むか。公正さも、質と並んで非常に難しい概念だと思うのですが、この研究会の文脈で考えると、柔軟性の高い働き方が望ましいと。かつ、それが公正さにつながるとすれば、例えば柔軟性のある働き方を人生のある段階で選択したとしても、それが不利に働かないような処遇が望ましいでしょう。
そういう観点から見ていくと、「○」と「-」と「×」がどういう形になっていれば一番公正と言えるのか。これは時間で割っているので、きっと正規と非正規の格差はないほうがよいだろう。つまり、1に近いところが望ましいと思います。
ただ、「○」と「-」と「×」の関係はどうあるべきか。例えば、ホームヘルパーのように1のところに全部ぎゅっと凝縮しているのがいいのか。事情を抱えて、離脱してパートで戻ってきても同じく評価されることが望ましいのか、あるいは技能が蓄積されるタイプの職種と、そうでない職種で、正規・非正規差があってもおかしくない類型があるか、勤続年数が長くなっていったときに、ある程度差がついているほうが、むしろ長く働くことに対するインセンティブになって、それこそ希望につながるのかとか、いろいろ考えています。
実際にこの職種と形の関係を見ますと、例えば運転者、ドライバーの働き方などは、勤続年数による正規、非正規差はない。-が一番上に来たりしていますので、そういった特性があるのだろうか。あるいは、同じく非正規という括り方をしていますけれども、その中に、パートと有期、嘱託・派遣などが混じっているのであれば、それぞれの非正規類型で違うのか。
また、これは賃金だけを見ていますけれども、ほかの満足度といったものと関連して、それぞれの職種の違いが見ていければ、もうちょっと有益かなと考えました。
以上、2点です。
○樋口座長 はい。
○雇用政策課長 自律的に多様な選択ができるような環境を整えるということは、1つの大きな課題だと考えているところでございます。
また、26ページの表が非常に見にくくて申しわけございません。こちらにつきましては、勤続年数ごとに分けておりますが、例えば0-4年の方で非正規と正規を比べた場合、5-9年の「-」も、同じ勤続年数の属性における正規と非正規を比べた場合、○でも、10-9年働いていらっしゃる正社員の方と正規雇用の方と非正規雇用の方の賃金を比較した場合ということでございまして、「○」が一番上に来て、「×」が一番下に来て、縦棒が長くなればなるほど、勤続年数が延びるにつれて、より正規と非正規の方との賃金の格差が拡大していく。
これは、非正規の方が勤め続けたとしても、なかなか賃金が上がらない環境。それは、もしかしたら職業能力を開発する機会に恵まれていないのかもしれません。一般的には、そういった形での賃金の格差が出てきているのかもしれないと考えております。おっしゃるように、必ずしも勤続年数だけではなくて、正規と非正規の場合には賃金差があるということでございますので、1にはなかなかというところもあるかと思いますが、勤続年数によって、例えばパートの方が長く勤め続けた場合には、非正規の方も能力開発をして能力を高めて高い給料がもらえるといった形で、そういった環境を整えていくことも非常に重要なのかなと考えているところでございます。
○樋口座長 賃金の話というのを前回やって、正規の賃金がこの人手不足の中でなかなか上がらないということをやって、今回、事務局と打ち合わせしたときには、なるべくデータを長くとってくれ。長くとってほしいというのは、まさにバブル経済のときの人手不足と今回の人手不足で同じようなことが起こっているのか、それとも、もう労働市場の構造変化みたいなものがあって、賃金も含めて、あるいは労働時間も含めて変質が起こっているのかどうかというのをちょっと見たい、御議論いただきたいなということで、できる限り長く。90年代以降しかとっていないものもあるのですけれども、とれるものは80年代からとってほしいということを言ったのですが、その点、どうですか。
これを見る限り、80年代のバブル期には、労働時間も人手不足の中で残業時間も延びていたという結果みたいなものは出ているのですか。事務局、何か。
○雇用政策課長 5ページの右側の表にございますが、フルタイムの労働時間の推移ということで、こちらは不十分な御説明になるかと思いますけれども、80年代につきましてはかなり長時間労働ということが起こっていたことは見てとれるかと思います。そこから不景気になりまして、一気に労働時間短縮が進んだのですが、その後、景気の波があったということで、若干の上がり下がりはございますけれども、それほど労働時間の極端な上昇というのは見られない。足元につきましても、景気回復局面ということではございますが、特に男性の15-39歳については、それほど労働時間について上がっていないというところが、1つ傾向としては見てとれるのかなと思っております。
○樋口座長 どうぞ。
○荒木委員 これは、実際の労働時間ですね。まず、1987年に労働基準法を改正しまして、それまで週当たり48時間だったのを、経過措置を講じながら40時間に減らしていく。これは90年代にかけてなりましたので、法で強制して経済によって減った。バブル崩壊で仕事がなくなったのもありますけれども、大きくは時短政策を推進したという法的な要因があるだろうと思います。
逆に言いますと、残業だけをとると、従来、48時間の上に残業をしていたところを、法定時間を下げますから、そうすると、所定労働時間はふえるということが出てきても、それはそれとしておかしくないというのを踏まえておくことが必要かと思います。
○樋口座長 どうぞ。
○黒田委員 今の点に関連して、慶應の太田先生と東大の玄田先生と私が以前に行った労働力調査の研究では、88年か89年の週当たり労働時間と、2004年の週当たり労働時間は平均的にみて、統計的に有意な差がなかったという結果も出ています。そのほかに、慶應の山本さんと私がやった社会生活基本調査のデータを使った80年代と2010年代の労働時間の比較研究でも、週当たり労働時間はほとんど変わりがないという結果も出ています。先ほど申し上げたように、事業所統計だけを見ていくと、少しミスリーディングな可能性もあるので、御留意いただくことをお願いしたいと思います。
○樋口座長 ということは、所定内労働時間は48から40に短縮されたわけだけれども、逆に残業時間が延びたから、総実労働時間としては変わっていないという研究。企業としては、残業割増がふえただけということになるわけですか。
○荒木委員 総実労働時間自体は、時短政策によって下がったのです。以前はアメリカより多かったのが、アメリカ以下になってヨーロッパに近くなったということですけれども、所定時間外労働自体はずっと変わらないというのが続いてきたというのが一般的な印象であります。
○樋口座長 そうしたら、そこは調べてもらって。世帯調査のほうじゃないと、なかなか今おっしゃったように。
○雇用政策課長 今回お示しした資料は賃金構造基本統計調査でございまして、そもそもこのグラフ自体がフルタイムということで、パートという形が入っていない。パートを含むと、当然減少傾向になってくるかと思いますけれども、済みません、資料のほうは整えて説明したいと思います。
○樋口座長 日本の雇用調整の特徴として、従来言われていたのは、景気がよくなれば残業時間で対応します。景気が悪くなっても人は切りませんというので、人数の調整は余りやらないで時間の調整でやってきたということだったのですが、それに変化が起こっているのかどうかということですね。もしかしたら、有期雇用とかがふえることによって、人数調整のほうがかなり行われる。人員の増加についても、同じように起こっている。だとすると、逆に景気が悪くなったら、一挙に失業者が出る可能性もあるということなので、そこを議論しておいたほうがいいのかな。
○雇用政策課長 きょう、お示しさせていただいた資料ですと、4ページが総労働時間の要因分解したもの。足元で申し上げますと、フルタイムの雇用者数自体の増加がきいていまして、1人当たりの労働時間の増加ということはそれほど見てとれないといった状況でございますが、そのほかにも何か提供できるものがあるかどうか、検討させていただきます。
○樋口座長 わかりました。
ほかによろしいですか。
よろしければ、幾つか宿題をいただきましたので、これまた事務局と相談して対応させていただきたいと思います。
まだ時間はございますが、もしよろしければ本日の議論はここまでとさせていただきたいと思います。
次回について。
○雇用政策課長 次回、第6回の雇用政策研究会につきましては、10月19日金曜日、10時からの開催予定となっております。後日、また改めまして御案内を送付させていただきますが、どうぞよろしくお願いいたします。
○樋口座長 それでは、本日は以上で終了します。どうもありがとうございました。

 

 

 

 

 

 

 

(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 職業安定局が実施する検討会等> 雇用政策研究会> 第5回雇用政策研究会(議事録)(2018年9月19日)

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