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2018年6月1日 第2回雇用政策研究会(議事録)

職業安定局雇用政策課

○日時

平成30年6月1日(金)10:00 ~12:00

 

○場所

厚生労働省議室

○出席者

委員

樋口座長、神吉委員、神林委員、黒澤委員、黒田委員、玄田委員、佐藤委員、清家委員、鶴委員、樋口委員、堀委員、山本委員
 
小川職業安定局長、小林大臣官房審議官(職業安定担当)、田中職業安定局総務課長、田中職業安定局雇用開発部雇用政策企画課長、松下労働基準局総務課政策企画官、岸本雇用環境・均等局総務課長、志村人材開発統括官参事官(人材開発総務担当参事官室長併任)、奈尾政策統括官参事官(労働政策担当参事官室長併任)、弓職業安定局雇用政策課長、西川職業安定局雇用政策課長補佐

○議題

(1)人手不足分野等の現状把握(産業・企業規模別の違い等)
(2)労働力需給推計(前回の推計レビュー)

○議事

 

 

○西川雇用政策課長補佐 
 皆さん、おはようございます。ただいまより「平成30年度雇用政策研究会(第2回)」を開催します。委員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきましてありがとうございます。本日は、阿部委員、荒木委員、宮本委員が御欠席です。本日の資料ですが、お手元を御確認ください。資料1として委員名簿、資料2として更新させていただきました研究会スケジュール、資料3として人手不足分野等の現状について、最後に資料4として需給推計のフォローアップとなっております。御確認いただければと思います。それでは、カメラ撮影の報道関係者の方は、ここで御退席をお願いします。
議事に入ります。今後の議事進行は、座長にお願いいたします。

○樋口座長
 資料2に開催スケジュールが載っておりますが、これについて、まず事務局から説明をお願いします。

○雇用政策課長
 雇用政策課長の弓です。おはようございます。私から簡単に資料2、開催スケジュールにつきまして御説明申し上げます。
 先般、第1回を開催させていただき、経済・雇用状勢の課題について御議論いただいたところです。今回が第2回でして、人手不足分野等の現状把握、労働力需給推計のレビューにつきまして御議論いただく予定です。第3回以降ですが、6月29日、我が国の構造問題・雇用慣行等について。第4回は7月20日、AIやIoT等が雇用に与える影響ということでして、東京大学の松尾先生にもお越しいただき、こちらの御議論をしていただければと考えているところです。また、労働力需給推計についての中間報告を行うことを予定しています。第5回は9月19日、働き方ということで雇用の質、生産性の向上等について御議論いただきます。第6回につきましては、労働力需給推計についてと御指摘いただいた事項につきましての整理を行ってまいりたいと思っております。第7回、第8回と報告書の取りまとめに向けての御検討を頂きまして、第8回の12月21日をもちまして報告書の取りまとめを行えればと考えているところです。以上です。

○樋口座長
 ただいまの説明につきまして何か御質問、御意見はございますか。よろしければ、こういったスケジュールに沿って進めていきたいと思います。よろしくお願いします。
 続きまして、今回の議題である人手不足分野等の現状把握及び前回の労働力需給推計のレビューについて説明をお願いいたします。

○雇用政策課長補佐
 資料3を御覧ください。右肩に資料3とある横置きの資料になっております。今回、第2回のテーマの1つ、人手不足の現状について整理いたしました。本体資料は8つのセクションに分かれており、人手不足の入職・離職の現状、賃金・労働時間の現状、人手不足産業における離職者の現状等まとめております。これらに加えて、参考資料として分野別の人手不足の現状と見通しをまとめております。
 2ページを御覧ください。新規求人等の推移等についてまとめております。3ページを御覧ください。人手不足が言われる中、産業別の新規求人ですが、2012年以降増加傾向で推移しております。また、右のグラフは求人の賃金の推移です。新規求人数の上昇をややなぞるように上昇傾向で推移しております。
 4ページです。雇用形態の転換、不本意非正規労働者の割合を確認しております。雇用形態の移動といたしまして、雇用期間の定め有りから定め無しに転換された労働者の方の数を見ております。左グラフのとおり、男女とも増加しております。右のグラフは、不本意非正規労働者の割合を見たものですが、着実に減少しているという状況でございます。
 5ページ、2つ目のセクションです。人手不足や入職・離職等の現状です。1枚めくっていただきまして6ページ、左下の棒グラフですが、産業別に人手不足感を整理しております。破線で囲いました運輸業、郵便業から建設業までの5分野を、いわゆる人手不足産業と整理して左から並べております。
 一方、右のグラフですが、産業別・企業規模別で欠員率を示したものです。これら2つのグラフを合わせてみますと、産業別・企業規模別によって人手不足の状況には大きな差があることが分かります。こうした違いは、産業や企業規模によって労働移動の状況が異なることから生じているのではないかと考えられます。すなわち、産業・企業規模によって異なる人手不足の背景・原因を明らかにするためには、欠員率などのストックだけでなく、どのような年齢層の方がどの程度入職し、離職しているかといった、フローの面についても把握することが必要ということです。
 次のページからは、そのフローの面について分析・解説させていただきます。7ページになります。産業別・企業規模別に入職率をまとめております。3つの年齢層、34歳以下、35歳~59歳、そして60歳以上に分けてグラフを用意しております。また、ここでは1,000人以上の規模の企業を大企業、999人以下を中小企業としておりまして、以後御紹介する資料は、いずれもこの分類に沿っております。
 まず、一番左のグラフですが、34歳以下の若年層です。その横に並んだ残りの2つの年齢層との比較において、全産業を通じて、赤い○印(大企業)や青い△印(中小企業)が上方にプロットされています。34歳以下の層では、産業や企業規模にかかわらず、他の年齢層と比較して入職率が高いということを意味しております。すなわち人手不足の程度にかかわらず、また中小企業であっても、依然として我が国では年齢の若い時期に入職することがメインストリームとなっているということだろうと思います。
 中央のグラフに移っていただきまして、35歳~59歳、左側にプロットされました青い△(中小企業)が上方に集まっていると思います。人手不足産業でも中小企業であっても入職率が高くなっているということでございます。このように、人手不足分野に属する企業や中小企業では、ミドル層の中途採用も積極的ということだと考えられます。
 ここでは資料7ページ以降、対象とする労働者の方をフルタイムの労働者に絞っております。これは今回の資料が入職と離職の状況に着目して作成したものでして、流動性がもともと高いパートタイムの方を含めてしまうと、見かけ上、入職・離職の数字が大きく出てしまうということが可能性としてあるため、フルタイムに限らせていただいております。
 8ページ、今度は離職率になります。左図は若年層になりますが、他の年齢層、特にミドル(35歳~59歳)層との比較として、全体に離職率が高くなっています。この離職率について、左側の5つの人手不足分野を見ますと、大企業と中小企業の両方が他の産業よりもほとんどが上方にあると思います。同時に、同じ産業内であっても、中小企業の方が大企業より、おおむね上方に位置しております。これらのことから、人手不足産業で、また中小企業のほうが概して離職率が高いという傾向にあることが言えそうです。中央のグラフですが、やはり人手不足産業や中小企業で離職率が高い傾向にあります。60歳以上の層ですが、産業別では製造業、また企業規模別では大企業の方で離職率が高くなっておりますが、これは定年制や退職金制度の存在が影響しているのではないかと考えられます。
 9ページを御覧ください。これまで見てきた入職率と離職率を重ね合わせてみた結果として、人材の流出・流入の状況です。左の図ですが、34歳以下については全ての大企業、中小企業が、中央に引かれた基準のライン、これが差引きゼロになるところですが、それよりも上方に位置しています。これは全ての産業別・企業規模別で流入超過になっていることを意味しています。ただし、同じ人手不足分野であっても、中小企業では大企業ほど流入が見られません。これは、大企業が中小企業よりも上方にプロットされているとおりです。中央のグラフですが、全産業を通じて大企業も中小企業もゼロ近傍に集中しており、中小企業であってもほとんど流入が見られません。最後に、60歳以上の層では、逆に人手不足分野や中小企業で大企業よりも概して流出の度合が小さくなっていることが分かります。
 10ページです。次に雇用者の年齢構成比について産業・企業規模別に確認したいと思います。3つのグラフは先ほどの3つの年齢層に分けて、どのように各産業の雇用全体に占めているかの割合を見たものになります。
グラフの見方ですが、同一産業で企業規模別の割合を横に3つ足し合わせますと100%になります。例えば、運輸業、郵便業の大企業のところを見ていただきますと、3つの年齢層、数字は書いておりませんが、一番左が27.8%、中央が65.6%、右が6.6%になっておりまして、足し合わせると100%になるということになっております。
戻りまして左のグラフ、34歳以下の層ですが、人手不足産業であっても、大企業ではこれまで入職率と離職率の関係を見てきたとおり、若年層の確保に成功しており、その結果として、若年層が雇用者に占める割合が中小企業と比較して高くなっていると考えられます。
 一方、60歳以上の層ですが、より若い2つの年齢層の状況とは異なっております。中小企業が大企業の上方にあると思いますが、中小企業では60歳以上の占める割合が高くなっておりまして、特に人手不足分野において60歳以上の方の占める割合が高くなっております。これは、人手不足分野に属する中小企業が高齢者に大きく依存している可能性を示唆していると考えられます。
11ページです。今度は転職者における産業間の移動について確認しております。簡素化のため、人手不足の5分野とそれ以外の分野という2区分にさせていただいております。下に3つのマトリックスがございますが、左上から右下にかけて並んだ黄色のセルの数字が大きくなっていると思います。すなわち、転職前後においても産業も企業規模別も変わらないというケースが多いことが分かります。一方、中小企業に限ってみますと、オレンジ色に塗りつぶしたセルの数字が大きくなっていると思います。これは人手不足産業以外から人手不足産業への移動が比較的多くなっていることが分かります。
 12ページです。以上、人手不足の状況について駆け足で説明してまいりましたが、ここで、これまで見てきました入職・離職の状況や雇用者の年齢構成比などから導き出せることを一度まとめておきたいと思います。入職率や離職率といったフローの状況からは、大きく3つのことが言えると思います。
 1つ目として、34歳以下の層は、全ての産業・企業規模を通じて入職率が高く、若いころに入職するというパターンが確立しているものの、離職率の高さを加味すれば、若年者の方は転職等を通じた適職選択のプロセス途上にあるのではないかと考えられます。
 2つ目として、35歳~59歳の層については、企業が積極的に採用しているものの、同時に離職率が高く企業にとって人材の確保につながっていないのではないか、それが現状と考えられます
最後に、60歳以上の層については、定年制などのために大企業では人材流出が生じている一方、人手不足産業や中小企業ではその度合が小さくなっております。
 次に雇用者の年齢構成比、言わばストックから分かったこととしては、人手不足分野に属する大企業では入職率が高く離職率が低いため、若年層を一定程度確保することには成功していることから、若手の占める割合が高くなっています。一方、同じ人手不足分野でも、中小企業では若年層の入職率・離職率がともに高く、定着に至らず、むしろ60歳以上の雇用者に頼っている面が見られます。
 以上を踏まえますと、人材確保・人手不足への対応と一言で言っても、産業・企業規模等によってその状況は異なっているため、それに応じた対策が求められると考えられます。このため、具体的にどのような年齢層、どのような人材確保策を講じていくのか、産業の特殊性、ターゲットとなる年齢層などに応じて取り組んでいくことが必要と言えると考えられます。
 13ページを御覧ください。3番目のセクションです。今度は、賃金・労働時間の現状について見ていきたいと思います。
 14ページ、入職率と同様に3つの年齢層に分けて平均賃金を整理しております。対象となる雇用者はフルタイムということは変わりません。いずれの年齢層でも、ほとんど全ての産業において大企業が中小企業を上回るということが見て取れます。ただし、運輸業など人手不足分野では、他の分野と比較して企業規模間での賃金差は小さくなっております。
 中央のグラフ、ミドルの層に注目しますと、産業別で賃金のばらつきが大きくなっていると思います。加えて、企業規模による賃金差も大きくなっております。こちらは赤い○と青い△をつなぐ破線が長くなっていることでお分かりいただけるかと思います。
次の15ページですが、今度は労働時間についてです。年齢層を問わず、医療・福祉分野を除き、人手不足の産業では長い傾向が見られます。また、企業規模別で比較すると、中小企業の方がやや長時間という傾向にあるようです。
 16ページ、4番目のセクションです。人手不足産業における離職者の現状です。勤続年数や離職理由の観点から確認しております。
 まず17ページ、雇用保険のデータを利用して、2014年の1年間に入職した方について、その後3年以内の離職の状況を確認しております。人手不足分野では34歳以下でも、35歳~59歳の層でも約6割弱ということで、人手不足分野以外の分野と比較して高い水準となっております。また、産業や年齢にかかわらず、入職者のうち3割から4割の方が1年以内に離職しております。これは濃いオレンジの部分です。
 18ページですが、離職理由別に転職者の割合を調べております。3つの年齢層を通じ、中小企業では会社の将来性、給与という割合が比較的高くなっております。黒い破線の枠を追いかけていただければと思います。特に34歳以下では、職場の人間関係という割合が給与や労働時間に匹敵するほど高くなっております。ミドルの層ですが、中小企業をご覧いただきますと、給与や労働条件の他、一番右の会社都合も比較的高い割合となっております。
 19ページ以降です。就業状態間の労働移動について御説明したいと思います。20ページ、人手不足分野に限り、就業している状態と非労働力・失業間の移動の状況について整理しております。左の図が、失業や非労働力の状態から人手不足分野への移動・流入になっております。特に青い折れ線グラフですが、非労働力の状態からいきなり就労状態に移行するという割合が高くなっております。一方、人手不足産業における就業者の非労働力、失業への推移ですが、青色のグラフを御覧いただくと非労働力への移行は横ばいですが、赤いグラフ、失業への移行は低下を続けているということになっております。
 21ページにまいります。今度はこれまでとは少し毛色の異なる話になりますけれども、人手不足に関わる6つ目のデータとして下請構造の現状について確認したいと思います。
 22ページ、左のほう、下請構造が指摘される製造業を含む4分野について、売上に占める下請取引の受注額の割合を企業規模別にお示ししております。グラフのとおり、建設業で特に高い傾向にありまして、その中でも、企業規模が小さくなるほどその割合が高いということです。右図は建設業に限ったものですが、1社当たりの受注先の会社数をカウントしております。これも企業規模別に見ております。
 これら2つのグラフを見ますと、特に建設業では、企業規模の小さい企業ほど下請取引きが売上に占める割合が高く、かつ受注した会社の数が少ないということで、特定の企業に頼っているという構図にあるのではないかと考えられます。
 23ページ以降では、都市・地方間の労働移動を見ております。24ページ、入職者が首都圏とそれ以外の地方との間でどのように移動しているかを確認しております。ここで言う首都圏とは、東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県としており、それ以外を地方としております。左側の赤い折れ線グラフですが、2000年代後半より34歳以下の層で首都圏への流出超過の傾向が拡大しております。また右側の方ですが、左側で見た34歳以下の首都圏への流出の超過について分解をしております。地方から首都圏へ、首都圏から地方というものですが、この分解グラフによりますと、首都圏の流出超過については、首都圏から地方への移動の減少が一定程度寄与していることが分かります。
 25ページにまいります。人手不足分野にある運輸業など、雇用者に占める割合を首都圏と地方で比較しております。赤い棒グラフの方が地方のものになりますが、医療・福祉分野や建設業が、首都圏と比べて占める割合が高くなっていることがご理解いただけるかと思います。
 26ページを御覧ください。今まで7つのセクションに分けて人手不足分野における現状を整理してきましたが、これらの情報を踏まえ、人手不足産業における人材確保対策の方向性と題しまして、本日の御議論のための基礎データ・材料として一旦集約させていただきたいと思っております。27ページと28ページ、2ページにわたっております。
 まず、方向性の①といたしまして、人手不足分野における現状を改めて整理しました。1つ目、中小企業では大企業と異なり若手の確保に苦戦しており、むしろ60歳以上の高齢者の方を比較的大きな戦力としているということと、2つ目に年齢にかかわらず、3、4割の方が1年以内に離職するなど、入職後かなり早い段階で離職が生じていることが明らかになっております。離職の理由は、年齢、企業規模にかかわらず労働時間と賃金が大きなファクターとなっておりますが、大企業の若手では特に労働時間が決め手となっております。その一方、中小企業の若手では、人間関係や会社の将来性が比較的大きな要因となっております。さらに、中小企業の中高年では会社都合による離職も少なくありません。
 最後に、首都圏と地方との間での労働移動という観点では、地方から首都圏へ移動する者が増加していること、逆に首都圏から地方へ移動する者が減少していることから、地方から首都圏への流出超過となっております。
 28ページ、方向性の②として考えられる人材確保策をまとめております。働き方改革を通じて、賃金、労働時間の改善を進めると同時に、人手不足の現状を踏まえて企業規模別、年齢層別に考え得る取組の可能性を整理しております。
大企業については、34歳以下の若手の離職防止策として、労働時間の削減に寄与する業務効率化の推進が有効と考えられます。一方、同じ大企業内でも60歳以上の方については、定年制等の見直しが考えられます。
中小企業については、34歳以下の若手の離職防止策として、風通しの良い職場作りや会社に対する貢献意欲の醸成のための人材資源管理の導入実施していくことや、会社や自身のキャリアパス、キャリアに対する将来不安を払拭するために、将来のキャリアパスの提示や会社のビジョンを明確化していくことが有効と考えられます。
 一方、ミドル層については、中途採用の受入れと定着に向けて、中高年が転職し活躍できる環境を整備することが有効と考えられます。また、以上のような取組により、企業が人材確保を図っていくことは、都市あるいは首都圏から、人手不足産業が地域の雇用を大きく支える地方への労働移動を促し、地方の活性化、すなわち地方創生につながっていくものとも考えられます。以上が本体の資料の説明でございます。
 最後に29ページ以降なのですが、参考資料といたしまして、人手不足分野の現状と見通しについてまとめております。資料の構成のみ、簡単に御説明したいと思います。
 30ページ以降、7ページにわたり、建設・運輸・介護・宿泊飲食サービスの4分野に関し、求人・求職の状況、就業者の数といった基礎データをまとめております。また、人手不足となっている業界特有の原因・特徴、更には業界を所管する各省庁が独自に実施した将来の需要の見込みについてコンパクトにまとめておりますので、必要に応じて御参照いただければと思います。以上で、資料3の説明を終わります。
 つづけて資料4も御説明したいと思います。 最後に資料4を御覧ください。右肩に資料4とある横置きの資料です。需給推計のフォローアップについてです。第1回の議論の中で、清家先生や玄田先生をはじめとして、委員の皆様から2014年の研究会で実施しました労働力需給推計の結果について、現時点ではどのような中間評価ができるのか、フォローアップが必要ではないかと御指摘を受けました。これを受け、需給推計の代表的な指標である労働力人口、労働率、就業者数、就業率、産業別の就業者数について、推計を実施した2014年並びに、推計のターゲットとしていた2020年、2030年と、現時点で入手可能な最新の時点である2017年とを比較した資料を作成いたしました。
 3ページを御覧ください。労働力人口と労働力率についてです。左ですが、労働力人口の実績と推計値を比較しております。実線が実績になります。破線で示した推計値とは異なって増加傾向で推移しております。一方、右図ですが、労働力率です。「経済再生・労働参加進展シナリオ」の2020年の推計値を既に上回って推移しております。特に、女性については高い水準になっております。経済再生・労働参加進展シナリオとは、日本再興戦略を踏まえた高い経済成長率、実質成長率約2%が実現し、かつ労働市場への参加が進むということ、また、若年、高齢者の雇用対策が進むとともに、女性のM字カーブ対策が効果を発揮するといった前提になっております。
 4ページを御覧ください。次に労働力率について性別と年齢別で確認しております。4ページの左側が男性、右側が女性です。2014年と比較して、2017年はほとんど全ての年齢層で労働力率が上昇、特に高齢者の一部では、既に2020年の数値を上回っております。
 5ページ、次は就業者数・就業率の比較になります。就業者数については、推計ではほとんど横ばいを見込んでおりましたが、実績ではむしろ増加傾向となっています。就業率についても、実績が推定値を上回っており、特に女性でその傾向が顕著です。
 6ページ、今度は性別と年齢別で就業率を確認しております。労働力率と同様、ほとんど全ての年齢層で就業率が上昇しており、特に20代や中高年の一部では、既に2020年の数値を上回っております。
 7ページ目は、これまで見てきました労働力率と就業率について、具体的な数字を表形式でまとめています。黄色のマーカーの年齢層の部分が、実績が推計値を上回っております。
 最後、8ページ目ですが、産業別で見た就業者数です。下の表、黒い太枠で囲われた数字に注目いただきたいと思います。左に2017年の実績値、右に2020年及び2030年の推計値を達成すると見込んだ場合に、必要となる2017年の参考値を並べて比較をしております。
 色分けの考え方ですが、赤色で塗りつぶした産業、例えば輸送用機械器具、卸売・小売業、金融保険・不動産業などがありますが、これらの産業は想定以上のペースで推移しているものです。一方、青色に塗りつぶした産業、例えば農林水産業ですが、これは想定を下回って推移しているものです。最後に塗りつぶしのないものは、おおむね想定どおりというものです。
 9ページ目は、今御覧いただきました就業者を構成比で整理しており、色分けの仕方は8ページと同様でございます。
 最後に、2014年に実施しました需給推計の前提条件について、労働需要と供給の面から簡単に御紹介したいと思います。11ページです。需要の面については、多くの前提がありますが、代表的なものを2つ御紹介します。左図が実質GDPでして、実績が経済再生・労働参加進展シナリオを上回るペースです。右図は消費者物価指数ですが、これは推計値を下回っております。
 最後、12ページですが、供給の面について御紹介します。基本的なトレンドの変化、若年者対策、女性のM字カーブ対策、高齢対策、その他と、大きく5つの項目に分かれております。2017年の実績が、2020年又は2030年の推計値に対してどのように推移しているかによって、こちらも3パターンに色分けしております。赤いマーカー箇所ですが、例えば、一番上は男性の高校進学率ですが、2030年に98%になると推定されていますが、この推計に従えば、2017年には98.1%となると見込まれます。ただ、実質は98.6%となっており、大幅に推計値を上回っています。このようなケースを赤色に塗りつぶしております。青色のマーカーはその逆であり、何も塗りつぶしがないところは、おおむね想定どおりとなっております。
 以上で資料4の御説明を終わります。ありがとうございました。

○樋口座長
 1つはマクロにおける労働需給の現状及び今後の話について、少し御意見を頂きたいということと、もう1つは幾つかの軸によってということで、産業別、企業規模別、地域別というものが、それぞれストック、フローについて現状説明があったかと思います。どの点でも結構ですので、御自由に御議論いただけたらと思います。

○鶴委員
 前回、途中で退席してしまいまして、今の座長がおっしゃったような点などについても、いろいろ御議論があったとも理解しているのですが、有効求人倍率も、かつてと比べて非常に高いところで、失業率も一度5%を超えたときに、2%台に戻ることはあるのかなと当時考えたのですが、そこまできて一貫して有効求人は上がって、失業率は下がっている。それから、シミュレーションの先ほどの事務局の結果を見ても、労働力と失業率も想定したよりも非常にいい。しかし、これだけの説明を聞けば、「何でこんな雇用政策研究会を開催するんですか」という話ですよね。全てこんなにうまく行っている世界はないので、何を議論するのですかということだと思うのです。
 ただ、私はキーワード程度しか聞いていないのですが、玄田委員が質をちゃんと考えなければ駄目だということをおっしゃられたと聞いています。結局、数字上では非常にいい数字なのですが、逆にここでこれから議論しなければいけないのは、本当にそれで素晴らしいですねと、数字を見て、通常であれば、こんなに良い状況はないので、何も議論しなくていいはずなのになぜ議論しなければいけないのかということだと思うのですよね。
 1つは、これは東大の福田先生が今年の初めに『21世紀の長期停滞論』という書籍の中でおっしゃっていたのですが、有効求人倍率が景気の動きとかなり乖離するようになっている。これも、例えば景気動向指数、私も四半世紀前に景気の分析をやっていたときに、有効求人倍率と景気の総合指数は、山と谷がほとんど一致していました。単一の指標で、それだけきちっと動く指標はなかったのですが、実際の数字を見ると、2009年以降、かなり動きが、全体の有効求人倍率が乖離してきているということなのです。なので、今マクロで見て有効求人倍率が非常に高い。政権も、それは非常に大きな成果だということを言っているわけですが、一方でそれが景気が良いということを反映しているわけでは必ずしもない。それが分野別に見ると、極端に人手不足というのが起こっているところがある。そういうのを全体として相対的に表しているということだと思いますし、失業率が非常に低くなっている。確かに非労働力のところ、高齢者とか女性というところが、そこでかなり出てきている。それが失業という形を経ずに就業していて、失業率を低下させることにはなっているのだと思うのですが、一方でどういう働き方をしているのか。
 高齢者は継続雇用という形が主体だと思うのですが、実際そういう方々にアンケートを取ってみても、定年してから他の所に移った方に比べて、決して満足度の高い働き方ではないというような結果が出てきている。女性も、正社員で皆さん働けているのか、必ずしもそうではないだろうなということになると、やはり質の問題というところが。全体に見ていいなと、もう議論することないと言っても、1つ1つそういうところを見て、かつてと何が状況が変わってきているのかということからちょっと出発点を考えていかないと、かなりいろいろ見誤ることになると。事務局の資料も、今こうですという話はいいのですが、かつてと比べてどのように変わっているのかなという視点もないと、こういう議論はちゃんとできないなと思います。
 もう一点、先ほどの資料で、今日はもう人手不足で今日で終わりということなので、早めに結論を出さなければいけないということなのかも知れないのですが、人手不足のところは確かに離職率が高いよねと。そういうところは非常にはっきりしていることになると、やはり人が集まらないのは待遇の問題ですよね。これは、ここにいる我々はもちろん、みんな共有していると思うのですが、だから、そういうところを改善しなければいけない。もちろん、働き方改革もそれに寄与すると思うのですが、でも逆に言うと、そういうところは待遇を上げれば人が集まる可能性があるのに、それができないことが継続しているという困難があるわけで、それを「じゃあ、そこを変えればいいよね」とさらっと言ってしまっても、本当にそうなるのかなという感じがしていて、今日の分析を聞くと、若者が離職しても、高齢者の方々は割とそこで寄与していると。そうすると、継続雇用みたいなものが余り良くないのではないのかなと。むしろ、違う企業、分野のほうへ行く、高齢者に少しヘルプしていただくという発想とかあるのでは。処遇の問題があるから処遇を改善すればそれで終わりということではなく、そこがうまくいかないから、こういう問題がずっと長く続いているという認識が必要です。そんなに簡単に、こうすればいい、ああすればいいという話なのか。もうそういうことはさんざん議論されてきていると思うのですが、もう一回、そういうところもしっかり考えなければいけないのかなと思っています。以上です。

○清家委員
 私も鶴さんと同じような意見なのですが、そもそも今日の人手不足について、雇用政策上の問題を議論するということですけれども、中小企業政策とか、そういうことなら十分分かるのですが、少なくとも雇用政策の上で人手不足を解消することが政策目標としてあるのでしょうかというのが1つの問題提起です。つまり、釈迦に説法ですが、相対的な人手不足、今、鶴さんが言ったように、こういう労働条件だと人が来てくれないんだよなということと、人口が減ってきて絶対的に労働力が不足する、あるいは労働供給不足になるのは別の問題です。後者のほうは、当然ですが、供給制約によって潜在成長力を下げますから、これは雇用政策というか、労働政策として非常に重要な問題なのですが、人手不足というのは、基本的には労働条件が良くないところには人が来てくれなくて困りましたねということなので、それはむしろ労働政策的に言えば、労働条件を改善するための良い状況なわけですね。
 実際、私も完全にフォローしているわけではありませんけれども、労働市場がタイトになることによって、例えば非正規賃金が上がっているとか、あるいは非正規雇用の正規化が進んでいるとか、そういうことが起きているわけでして、人手不足を雇用政策として考える場合には、それを解消することが政策目標なのか、それともそれをうまく使って、つまり人手不足という状況をどのように有効に使って労働条件を改善するかということか、私ははっきりさせたほうが良いと思うのです。私はどちらかと言えば、後者のほうが労働政策としては大切なのではないかなと思っています。
 そのときに、鶴さんが最後に言われたこととは少し違うかもしれないのですが、基本は付加価値生産性を高めるということだと思うのです。付加価値生産性を高めるというのは、働き方改革の問題というよりは競争政策ではないでしょうか。つまり、今ちょっと心配なのは、働き方改革と生産性の向上が結び付けられて論じられているのですが、例えば働き方をどんどん効率化して物的生産性が上がっても、そこで作られるものやサービスの価格が上がらなければ、ただ職場がブラック化するだけなので、むしろ付加価値が上がったものがちゃんと高い価格で売れるような市場になっていないと労働条件改善にはならない、今日、下請構造の話なども出ていましたが、下請企業が生産性を上げたら、ちゃんとそれが取引条件に反映されて、生産性の向上に貢献した労働者に高い賃金として振り分けられるかどうかということなのだろうと思うのです。
 これも皆さんが共有していることですが、日本でサービスの生産性が低いと言われるのは、サービスの価格が安いからでしょう。ですから、そういう面で言えば、やはり大切なのは、どうやったらこの労働市場のタイトネスを労働条件の改善に結び付くのか。そして、労働条件の改善を実現するためには、実は市場の競争条件がちゃんと整っていかなければいけないということなのではないかと思うのです。ただ、一方で、例えばサービスの価格などは労働政策というか、労働基準政策かもしれませんが、最低賃金とか、あるいは労働時間規制などをきっちりやることによって、コストプッシュで価格を上げざるを得ない状況に企業を追い込むこともできるので、そういう面では労働政策全般として大切かなと思っています。
もう1つだけ資料4について申し上げると、私はこの資料4には本当に勇気付けられたのですが、1つは政策がきちんと期待されたような方向に進んでいるということと同時に、そういうふうに進むことになったことにどれだけコントリビューションあるかは分からないですが、例えば労力人口の将来需給見通しで何にもしないと5,800万になってしまいますよということを示したことは政策を大きく動かす力、あるいは人々に危機感を共有してもらうための動機付けになっていると思うのです。そういう面では、こういう需給予測をし、そして政策をこのようにしたらこうなりますよということをしっかり示したことの効果が表れているという意味で、需給推計はとても意味のあることだったなと思っています。

○大竹委員
 私も今の2人の意見と近いことをお話ししたいと思うのですが、資料3の13ページ、14ページ辺りで、人手不足産業とそうでない産業の労働条件の特徴はまとめてあるわけですが、1つは人手不足産業の共通性は、サービス業とか中心で、そうすると、生産性格差が結構大きいというのは森川さんの研究でもあって、ローカルマーケットに直面しているので、生産性が低い産業、企業、事業所でも生き残っているという部分がかなりあると。そうすると、中には生産性が高い所もあるので、同じサービス業の中でも労働条件、あるいは人手不足の状況にバラつきがある可能性があるのではないかという気がしています。もしそうだったら、同じサービス業の中でより良い所に移る人も当然出てくるので、離職率は当然高くなるだろうと思います。
ただ、地域全体として生産性が低くなるというケースだと、転職してもうまくいかないというのがあって、その背景は1つは清家さんがおっしゃった競争政策で、競争条件が悪いから、余り競争状況になっていないから生産性が低いところが生き残っているという可能性がある。そうすると、下請産業もそうですし、地域抑制の影響の可能性にどう対応していくかというのが、政策の課題になってくるかと思います。そのときに、競争を阻害するような規制があるのか、あるいは独占状況があるのかによって、対策が違うのではないかなと思いました。
 もう1つ、対策として議論してあるところが資料3の28ページにあるのですが、これも見方によっては競争状況が悪いから、良い労働条件、本当は労働市場がうまく機能していたら、より良い労働条件の競争になっていくというところがなっていないと。ですから、ここはこういう何か人事コンサルタントみたいな提案ですよね。だから、それは良い企業であれば、当然こういうことをしているはずの所がやっていないというわけですから、こういう政策を政府としてどうやっていくのか、何ができるのかというのは、法的にやるのか、あるいはガイドラインでやっていくのか、こういう経営コンサルタント的なサービスを公的な部分でやっていくのかという、何が政策的な手段としてあるのかというのは、できたら考えていく必要があるかなという印象を持ちました。
もう一点、資料4ですが、ベースライン、予測よりもはるかに良い結果になっているということなのですが、2つ可能性があって、ひょっとしたらベースラインが悲観的すぎた可能性があると。人手不足になると、市場メカニズムで賃金が上がって、労働環境が良くなって働き出す人たちがちゃんといると。そこのところを市場が余り機能しないだろうという予測を立てたのかもしれないというのが1つの可能性です。あるいは、予想以上にそれがうまく機能したのだというようにも解釈できると思うのです。だから、ちょっとその反省も必要かなという気がしました。本当に政策的な介入によって、ベースライン以上の結果が出たかどうかというのは、アカデミズムでも、きちんと検証した方が良いかなというのを思いました。

○山本委員
 今の大竹先生の話に非常に近いのですが、今日の人手不足の御説明と需給推計のフォローアップの御説明、両方に関係すると思うのですが、拡大している景気循環要因と、構造的に人手不足ないしは供給制約がきつくなっていると。そこの2つは区別するべきなのかなと思いまして、資料4の実績が上回っているのは有り難いことなのかもしれませんが、これが政策効果によるものなのか、単に景気が良くなったからというところなのかを見極める必要があって、そこはもう少しエビデンスを精査しなければいけないだろうなと思います。そうしないと、例えば、人手不足を考えるに当たっても、景気が悪くなったらそれほど深刻ではありませんねというように変わってくる可能性もありますし、景気が多少悪くなっても、このまま人手不足は深刻ですねということになる。その2つの見極めも、政策を考える上で大事になってくるのかなと思います。
 もう1つは、資料3の所で産業別にいろいろ分析いただいているのですが、もちろんそこも大事なのですが、職種別にもやはり見たほうが良いのではないかと思います。やや複雑にはなりますが、人手不足産業の中でも、どういった職種で人が少ないのか、足りていないのかと。更に言えば、どういう業務をやっているかというタスクに注目すると良いのでしょうけれども、その統計は無いとして、せめて職種でどのように変わってきているのかというところを見ると良いのかなと思います。例えば18ページを見ると、離職の理由の所で、点線から外れてはいるのですが、能力・個性・資格を生かせなかったというところも、特に35~59歳においては比較的多く出ているわけです。こういったようなことは持っているスキルとのミスマッチといったところも考えられますし、あるいは希望する業務、職種とがミスマッチを生じて、人手不足になっている可能性もあると思いますので、少し職種への焦点も必要なのかなと思いました。
産業間の移動を考えるに当たっては、フルタイムでどういう影響が起きているかというところはもちろん大事なのですが、それに加えてパートタイムや非正規雇用といった人たちが、フルタイムで人手不足が起きているときに、どのぐらい補っているのかといったところのデータも見てみる必要があるのかと思いました。以上です。

○樋口座長
 事務局で、ここまでの御議論で何か聞いておきたいこととかありますか。

○雇用政策課長
 清家先生からの御指摘で、人手不足に対して労働政策的という話がありました。おっしゃるように、人手不足という労働需給が引き締まっている状況は、労働条件を改善していくための好機だと考えており、そういった状況において、是非、改善を進めていきたい。特に過度に人手不足の状況というのは、就業者の方々に対しても負担をかける状況になりやすいということだと、今、働き方改革なども実施しておりますが、そういった改善を進めていくにしても、こういった状況でむしろ進めにくいのだという声も伺えるところです。我々としてはそういった人手不足について、労働政策的にできる部分について、過度な状況についてはマッチング機能を改善したりということで、そこをスムーズにすることなどにより、できることについては実施してまいりたいと思っておりますし、そうしたことを通じて働く方々の雇用環境の改善などについても実施していきたいと考えているところです。

○樋口座長
 労働政策とは何か、雇用政策とは何かという話まで、どこまでの守備範囲で議論するのかというのがあって、少なくともこの雇用政策研究会のレベルでは、別に範囲を限定しないで、例えば社会保障の問題、税制の問題もあるでしょうし、あるいは外国人労働者をどうするかという話は、どうなるか分かりませんが、労働政策の面からも考えなくてはいけないところがあって、守備範囲は少し自由にした方がよろしいのではないかなと。その中で、厚労省がどうするかという話は、また別にあるのかなと思います。
 鶴先生、皆さんから頂いた中で1つ重要だと思ったのは、変化を見ないと、現状で何が起こっているかというだけでは、なかなか把握することができない。例えば変化といったときに、幾つか今日出していただいた資料の中でも変化というのはあると思いますが、人口の問題というのがかなり大きく影響を及ぼしてきているのではないか。正に求人倍率の上昇というのも、求職者の方が減ることによって求人倍率が上がっているということが、分解してみるとかなり出てくるのです。求人のほうも伸びているのですが、それ以上に求職者の減少が求人倍率には影響してきているのではないか。
 求職者の伸びが鈍化、あるいは逆に減少しているというのは、人口の問題と生産年齢人口が大きく減少してきているというところとも関連してきているわけです。これは山本さんの言葉ではないけれども、構造的なところと景気循環的な要因と、ちょっと分けて考えていく必要があって、減少だけだとなかなかそれが見て取れないというところがあるのかなと思います。
 もう1つ、今出なかった議論で、正に人手不足と言おうか、需給タイトの中で、労働力がどう移動してきているのかというところです。幾つかフローのデータで示されていたのですが、1つ考慮しておかなくてはいけないのは、これが良いかどうかは別の話として、大企業の就業者数が急激に伸びている。それに対して零細企業、あるいは小企業の就業者数の減少が著しい。神林さんが何か後でおっしゃるのではないかと思いますが、自営の問題等も含めて、そのところがすごく顕著に、この10年、あるいは15年ですか、起こってきているということで、見方によっては、大企業だって全て付加価値生産性が高いわけではないのですが、そちらにシフトしてきているということをどう考えたら良いのか。あるいは、雇用条件を考えても、もしかしたら雇用条件の良いほうに、絶対数は就業者は変わらない、あるいは少し伸びているのですが、その中での変化が相当起こってきているのかどうかですね。というような個別企業の中の話だけではなくて、市場として労働資源の配分という視点から見て、何が起こってきているのかをちょっと検討しておく必要があるのかなと思いましたが、いかがですか。

○神林委員
 大きな話は皆さんいろいろとおありになるようですので、先に大きな話を。

○玄田委員
 冒頭で、まずマクロの面からという話だったので、いろいろあるのですが、それを今の議論の関係でお話いいたします。報告書をまとめる際に、是非マクロ的な雇用政策の提言としては言及していただきたい提案があります。それは、恐らく雇用政策で大事なのは、緩やかな人手不足の持続といったテーマを入れたほうがいいのではないかと。緩やかな人手不足の持続ということが、これからマクロ的な雇用政策の重要課題だというのは、やはり必要だろうと。多分今までのいろいろな議論にも関連していて、人手不足にはもちろんいろいろな弊害があると。長時間労働による疲弊だとか、地方の衰退だとか、これは評価が分かれるのですが、人手不足倒産とかあるけれども、今回は特に資料3、資料4で共通するのは、人手不足があったからこそ改善された面が非常に大きいということです。4ページの不本意非正規の解消・減少に然り、有期から無期への移行にしても、14ページの雇用政策の問題と規模間格差の縮小にしても、20ページの非労働力からの就業という面とか、一番極めつけなのは、先ほどの山本さんではないけれども、資料4のこのシナリオの背景には、間違いなくいろいろな意味の人手不足があるわけで、こういうものがあったから改善してきたと。
 金融政策で考えるのが一番分かりやすいと思うのですが、今デフレ解消というのが最大課題になりつつある中で、金融政策は3%のインフレ率を維持するというのが社会のイノベーションにとっては一番良いということが、本来もともと伝統だったわけで、ある程度、持続的な人手不足があることによって労働条件の改善が進み、なおかつ背景として労働生産性が上がるわけだから、それをどのような目安で見ていくかということを、もっと積極的に議論していくと。かなり長期的には、経済が本当の意味で安定状態になったら、人手不足の解消も良いかも知れないけれども、当面まだいろいろな課題がある日本経済、マクロ経済にとっては、緩やかな人手不足の持続です。そのためには何を目安としていくのかというのは、例えば有効求人倍率は、多分今の1.5とか6という水準は緩やかだという範囲にはかなり遠いので、主観的には1.1とか1.2ぐらいをキープするような、特にできることは構造的な面とかをやっていくことを文言として謳っていかないと、先ほど冒頭で鶴さんがおっしゃったような、問題ないよねというようになってしまうと良くないし、ここを変えていく好機だというように捉えるメッセージをするならば、そのぐらいの文言を御検討されてはどうかなということで、大きな話は終わります。

○樋口座長
 大きな話でも、小さなとは言わないですが、どうぞ。

○神林委員
 幾つかあるのですが、まず資料の作り方です。この数字をどういうように理解するかというのが、表や図によってまちまちなのです。割合で見るのか、それとも絶対数で見るのか、あるいは時系列にしたときに、左側が標準化されていて右側が標準化されてないとか、幾つかバラバラな表示の仕方がありますので、注意をして統一的に作っていただきたいと思います。
 あと、私は今までこういうマクロのシミュレーションというのは、余り信じていなかったのですが、今日、資料3と資料4を並べて見ると、結構役に立つなという実感があります。マクロのシミュレーション自体が正しかったかどうかというのは置いておいて、1つは、せっかく2014年をベースに2017年の予測と比較しているので、資料3の方も、できれば2014年と2017年の比較をするような形で数字を積み上げていただけると、2014年当時がどういう状態で、今がどういう状態になっているかというのが分かると思います。それは全ての論点において通じるものだと思います。
 あと、もう1つ。シミュレーションを見ると、確かに就業率も上昇していますし、労働力率も実績よりも上振れしているわけですが、産業別で見たり年齢別に見たりすると、やはり濃淡がある。この濃淡があるというのをどういうように考えるかです。本当に状況が好転しているのだったら、ユニフォームにと言うのでしょうか、どの産業でもどの年齢階層でも増えていくはずですが、そうでないということをどう理解するかというのが、1つあると思います。
 実際に、最後に出てきた産業別就業者の構成比を見ると、実は現在、人手不足の産業と定義される産業というのは、比率を落としたりしているわけです。それは、人手不足ではない産業の成長率が考えられていたよりも大きく、そこに人材を取られているという可能性を示しているのです。そうなると現在ある、人手不足の産業の解釈というのが、大分変わってくると思います。
 ただ、そんな簡単なものではないというのは、雇用動向調査を見ると、人手不足産業からの離職者というのは、やはり人手不足産業に戻っているのです。なので、非人手不足産業に在職者が取られているという状況ではない。ということは非在職者、非労働力から入ってくる人たちの取合いに、人手不足産業は負けているということになる。しかし、どんな被用者に対しても人手不足産業は競争に負けているかというと、そうではなく、ある特定の人たちの取合いにおいて負けてしまっている事情があるというのが、多分見え隠れすると思います。
 その理由は2つあります。単に競争に負けているということと、もう1つはロックインしてしまうと、なかなか外に出られない産業になっている可能性があるのではないかと思います。なので、こういうシミュレーションの結果と実際の数値を合わせながら分析をすると、今までとは違った創造というか、発想が出てくるのではないかと思いました。あとはシミュレーションの見せ方です。これは恐らく推計で、内生変数として所得もきちんと計算していますよね。

○雇用政策課長
 賃金を入れています。

○神林委員
 なので、賃金水準が想像よりどれぐらい動いているかというのは、是非見せるべきだと思います。
 最後は本当に細かい話ですが、最後の前提条件というのはパラメータということですか。内生変数っぽい話がいっぱい出てきているのですが、これは内生変数ではなく。

○雇用政策課長 
 どこでしょうか。

○神林委員
 最後のページです。12ページが一番分かりやすいと思うのです。「前提条件の整理」と書いてあって、例えば一番上の労働参加進展で2017年(参考)が98.1というのは、98.1を想定というか、パラメータとしてアスームしておいて、結果は違っていたというように読むのですか。

○雇用政策課長
 例えば、2030年の段階で98.0という前提を置いております。その前提と、実績として2014年時点の実績が98.1であったので、98.0というように変化するだろうという前提を置いていたということで、単純にその数値との比較ということです。

○神林委員
 分かりました。そうすると、これはシミュレーションのパラメータが違っていたということになるわけですか。

○樋口座長
 外生変数の与え方が違っていたということですかね。

○職業安定局長 
 外生変数として置いた数が、予想と違っているという話です。

○神林委員
 消費者物価指数についても、外生変数として置いていたということですね。では、やはりパラメータは意外に間違っていた可能性はありますよね。なので、そこまで話を押すとまずいかもしれないという感想です。
 
○樋口座長
 先ほどの鶴さんとの御議論の関係で言うと、賃金の方を上げたり雇用条件を改善したりしないから人手不足だというようなメッセージは、ある意味、なぜ上げないんだ、あるいは上げられないんだという話になってくるわけです。それで、物価、製品価格の問題になってきたときに、医療・介護とか、かなり公的な仕組みで決まってくるような賃金というところもあって、そこのところだけが伸びているということを、どう受けとめたらいいだろうかという話です。

○鶴委員
 先ほど清家委員がおっしゃったポイントは、すごく大きいと思うのです。では、より条件を改善すれば良いじゃないか、それで非常にやる気もあって一生懸命働いて、付加価値として最終的な価格に反映されるようになればいいけれども、そこは現実的には難しい。   そうすると、製品とかサービスを提供する市場では、ある意味、かなり競争が激しいのです。
 要は競争の仕方が、教科書に出てくるベルトラン・コンペティションみたいな、誰かが必ず低い価格で条件を低くしてやる所が出てきて、その闘いになると、やはり一番条件が低いところでやっている所に価格がサヤ寄せされるので、そこで価格が決まってしまうと、どんなに人手不足があっても、元の条件や賃金を上げることができないという状況が、多分、製品市場の所でかなり決まっているような感じなのです。そこで競争政策などという話になってくると、逆の発想が必要で、ある種カルテル的な話になってくる。しかし価格でカルテルというのは非常に難しいのです。
 ただ、1つあるのは、例えば、建設業というのは週休2日が全然進展してないのです。逆に言うと、あそこの業界ぐらいじゃないかな。それはもう土曜日にやるのが当たり前で、なるべく工期を短くすると。そうすると、やはり小さい所は「いや、うちはやりません」と言うわけにはいかないわけです。休みたいのはやまやまだけれども、「うちは週休2日でやります」ということでやると、必ず「じゃあ、うちは土曜日もやります」と言う所が出てきてしまう。そういう状況があるから、あの業界だけはなかなか進まないのです。
 今も業界全体として、週休2日を何としてでもやらなければいけないという状況まではいっているのですが、逆にそういうものはある種、カルテルを作らせて抜け駆けをやらせないというところまで縛りを掛けないと、多分、そういう問題はどこまでいっても解決しない。必ず抜け駆けして得する奴が出てくる。しかし、みんながそれをやり出すと結局、全員が疲弊してしまうという状況で、そのわなから逃れることができないという状況が、一方ではあると思うのです。だから競争の話というのは、先ほど大竹委員がおっしゃったような、ちゃんと競争しないから淘汰されてないので淘汰されるべきだという話と2つあるなと。そこも座長がおっしゃったように、雇用政策を超えた話ですが、そこを考えていかないと。ぶつ切りにして議論をするわけにはいかないので、1つ論点になるなと思います。

○樋口座長 
 先ほど消費者物価というのが出てきましたが、従来は価格を外生にして、その中で労働政策というか、雇用政策をいかにという議論をしてきたけれども、今後を考えていく上では、むしろ労働市場を軸に置いて、それから逆に他の政策も含めて、どうあるべきかという議論をしていかないと、問題は解決できないところがかなりあるのではないかと思います。そういう意味で、守備範囲が非常に広くなるのではないかと思います。

○佐藤委員
 4つあるのですが、1つは、神林先生が指摘された資料4について、なかなかシミュレーションをやる意味はあるなと思いました。特に女性の就業率が高まっていますが、これからも同じような政策でやっていけるかということです。完全雇用ということで、人手不足をどうするかといったときに大事なのは、これまでやったことがなかったような求職者開拓です。今までは働きたいけど仕事がない、あるいは条件が合わないなという人が出てきたと思うのです。しかし、これからは、今は働こうと思ってない人です。例えば、子どもが小学校に入ったら働こうと思うけれども、今は働こうと思ってないとか、5年後になったら働こうというような人にも働きかけるようなことをやらないと。これは多分、やったことがないですよね。例えば、幼稚園に子どもを預けているお母さん方、あるいはキッザニアで子どもを遊ばせて待っているお母さん方に、1年でも早く働いたほうが、こんな意味でいろいろなプラスがありますと。つまり、求職者開拓をどうするか。求人ビジネスをやってきた現場で言うと、働きたいという人はほとんど出てこない。だから、そこが1つ大事だなと。
 そうすると、求人側である企業からすると、求人条件の緩和です。これは賃金とか時間だけでなく、やはり人材活用の仕組みを変えないと。例えば、こういう働き方ができる人と思っているのを変えて、この仕事を短時間でもやってもらえるとか、このスキルがなくてもやってもらえるというように、活用の仕方を変えないと。もちろん、賃金とか労働時間もあるけれども、もっと広い意味で、これまでうちが欲しいと思う人材像を変えないと雇えないのではないか。そういう意味では従来と違った求職者開拓、求人企業の条件緩和は人材開発の仕組みを見直すということを進めないと難しいというのが1つです。
 2番目は人手不足産業の話です。今回は産業別とか規模別で見ていますが、産業別、規模別で見て、全て規模でくくったときに、人手不足も個々の企業が同じような状態なら良いのです。しかし実際に介護で見ると、半分の事業所は離職率が10%以下で定着しているのです。一部に高い所はあります。しかし半数の事業所は人が定着しているし、採れているのです。ですから平均で議論をしても、ほとんど意味がない。離職率2割という事業所は存在していないのです。低い所と高い所です。ですから実際上は全体で見ると、うちは定着していますが、なかなか来てくれませんという所と、もう1つで離職率も高いし来てくれない所もあるのです。全体として見れば人手不足、人が来ないということになってしまうので、そういう意味で、定着率が良い所も来てくれないみたいなことが起きているのが実態でして、もう少し平均で議論していい産業と、企業ごとに見るとかなりばらつきが大きい所は、少し丁寧に見ていかないと、間違った情報になるかなというのが2つ目です。
 3番目はこれに関わるのですが、特に離職についてです。例えば介護などで言うと、離職しても介護業界にいれば良いのです。特に専門職の場合は、介護職をやりたいけれども、今いる事業所の介護方針と合わないから、他の福祉企業に行くというのなら良いですが、辞めて他に行ってしまうほうが問題なのです。ですから専門職の場合は、離職しても同じ仕事で続いていってもらえれば、私はまだ良いのかなと思うのです。人手不足産業は割合そういうものが多いですよね。建設業もそうです。ですから、離職というのは、産業から出て行ってしまうのが一番困るのです。やはりその産業の中で定着してくれるという議論も、専門職の場合は大事かなというのが3つ目です。
 4つ目は17ページです。では、離職率が下がればいいのか、ゼロが理想なのかということです。特に学校を出て職場にトランジションというように考えると、1回の就職活動で自分に合った仕事が見つかる方がおかしいのです。これには労働状況が悪いとか、いろいろ効いているとは思いますが、他の方が合うんじゃないかという離職も結構多いと思うのです。3年で25%ぐらいは普通じゃないのというように考えると、これが高いかどうかなのです。ですから余り下げるというのはどうか。
 大学生で言うと、日本の場合は在学中の長期インターンシップは無いですよね。インターンシップは1週間とか1日なので、極端に言うと、大学出て職場に入って1年間はインターンシップなのです。だから、そこで転職する者がたとえ4分の1程度いたとしても、次の転職先で「ああ、良かったな」と思える、つまり卒業後2、3年の間にキャリア自律と言うのでしょうか、やはり自分はこういう仕事をやっていくんだというのが決まればいいので、特に若い人たちは、離職即悪いというような議論はしなくても良いのかなと思うのです。
 そういうことを踏まえながら、どこが問題のある離職なのか。1回移ってまた転々としてしまうのは問題ですよね。しかし1回離職して自分に合った仕事や勤務先が見つかって、自分はこの仕事でやっていくんだというのが分かれば、別に1回の離職が悪いわけではないですよね。ですから離職も、もうちょっと分けて考えていただくといいなということです。

○樋口座長
 求職者開拓の重要性という。玄田さんが出ているのでしょうか、総務省の労働力調査が、今年から新しくなってきましたよね。完全失業率と並んで、失業率というのも発表するようになったし、同時に未活用労働力というのが発表になって、どれだけ就業希望者がいるかとか、逆に今就業している人の中でも、もっと働きたい人たちがどれぐらいいるかという数字があります。あれは今後もずっと出てくるのだろうと思いますが、就業率にしても今後、女性の就業率の数値をいじる上で、ああいうものを少し参考にしていかないと、何となく100%ぐらいまでいくのではないかという想定を立てたもとにおいて、労働需給がどうなるかという話にはならないのではないかと思うのです。
 あの数字は、かなり低く出ています。今回、2.5%の完全失業率に対して、失業率ですか、要は過去1週間でなく、過去1か月の求職期間というように延ばして、2.7%か2.8%あったかな。さらに就職活動を諦めている人がどれぐらいいて、というのを全部合わせても5%ちょっとだったような。イギリス辺りの他の国で10%というような数字が出ているのに対して、低いなという印象を持ったのです。今後、どれだけまだ本当に余力があるのか、逆に雇用条件の改善で、どこまで就業希望を伸ばすことができるのかということを検討していかないといけないのかなと思いますので、一度そこをまた話したいと思います。

○黒田委員
 大部な資料を作っていただいてありがとうございます。先ほど樋口座長がおっしゃった女性の労働力率と関連するところが1点と、労働条件に関して1点、合計2点お話させていただきます。1つ目の女性の労働力ですが、今回のシミュレーションのフォローアップで、資料4の7ページを見ますと、確かに年齢傾向を見ると2020年の推計値を2017年の実績値が上回っているわけです。しかし、年齢層別に見ると、かなりばらつきもあるというのも見えてきていると思います。特に女性の労働力率だと、確かに2014~2017年にかけて、実績値はどの年齢層もかなり上がってはいるのですが、30代、40代辺りは、やはり2020年の予測値に比べると、まだ下回っている状態です。それ以外の黄色い部分はどこかというと、かなり若い層と高齢層に限られている。そういうところを考えますと、実績値が上回ったから、それでいいかというとそういうわけではなく、現在かなり下回っているところを、一体どういうようにすれば良いかということを考えていく必要があろうと思っています。
 2点目は、もう既に多くの委員の方々がおっしゃっていたので、本当に付け足しになってしまうのですが、経年的な変化を見てはどうかということを事前に少しお話して、恐らく昨日、資料3の3ページを大急ぎで作って下さったのではないかと思います。本当にありがとうございます。
 これを見ますと、前回の雇用政策研究会で、どうして賃金が上がっていかないかという話をしたときに、確か、既製産業の影響が大きいのではないかという議論があったかと思うのです。それ以外の産業に関しても、例えば運輸とか宿泊・飲食サービスなどを見ても、2014年以降は求人数が急速に上がっているにもかかわらず、賃金は結構横ばいの状態が続いていると見て取れるかと思います。
 そういう意味では、4ページ以降も細かく、いろいろと切り口を切って見ていただいているとは思うのですが、先ほど神林さんもおっしゃっていたように、2014年と2017年という経年的な、3年前と現在との違いをもうちょっと細かく、業種別、職種別、年齢別などで切って見ていただいて、人手不足にもかかわらず、労働条件が余り改善していないのは一体どういうところなのかというところを、もう少し特定化していくようなものがあれば良いかなと。2017年の賃金構造基本統計調査を用いれば、もう少しデータがアップデートできると思いますので、そういったところも含めてお願いできれば有り難いです。

○黒澤委員
 私も今まで先生方がおっしゃっていることに賛成ですが、先ほどから市場の整備的な政策として、具体的なものをどういうようにしたら良いかというお話が出てきていたので、それについて考えられるかなと思うことを、1点だけお話させていただきたいと思います。
 今回、人手不足産業の所ほど入職者は多いけれども、また離職率も高いという話で、11ページのマトリックスのようなものを頂いています。先ほどの佐藤先生のお話にもありましたように、ターンオーバーが業界内で留まっているかどうかというところは、「人手不足」と一絡げに言っても、その中はいろいろ違いますので、その辺りを是非もう少し精査していただきたいと思います。
 黒田先生がおっしゃったように、労働条件が、賃金が上がっていない所というのは、恐らくターンオーバーしても前の仕事で培ったスキルというのが、なかなか認識されていないままターンオーバーが起こっているのではないかと。先ほどの17ページの離職率の話で、佐藤先生がおっしゃるように、若い人たちが離職することは、必ずしも悪いことではないと私も思います。ただ、若い人よりも年齢の高い層で1年以内の離職率が高いということが、私はちょっと衝撃的でした。これはどういう状況になっているのか。離職した後に、その業界内でターンオーバーしているのか、失業しているのか、ターンオーバーした後の報酬や労働条件が、どういうように変化しているのかという辺りを、もうちょっと精査していただきたい。
 私は、恐らくスキルが認識されていないのではないかと思っております。だとするならば、業界によってそれぞれスキルは違いますが、人手不足産業の多くがそれぞれの業界内で、かなり共通的なスキルを持つような業種ではないかと思いますから、もう既になさってはおられますが、スキルのより一層の視覚化という政策を進める余地があるのではないかと。
 同時にもう1つ。中小は特にですが、自分たちの職場ではどういうスキルが必要なのかということさえも、よく分かっていない職場がかなりあるのではないかと思います。また、それが分かったとしても、それをどうやって育成して良いかも分からないようなところがあるのではないかと。先ほど大竹先生がおっしゃったのですが、この辺で人材コンサル的なもの、どういう人が必要なのか、その人材をどうやって育成するかということに対するノウハウの伝授も含めた形で、技能の見える化への支援をする余地があるのではないでしょうか。実は、そういう支援の仕組みというのは、もう既に日本にあります。代表されるものとして、ジョブ・カードの雇用型訓練というのがあります。その仕組みをより拡充するなりしていくのはどうか。
 海外をみると、英国にはトレイン・トゥ・ゲインというものがありました。これは駄目になってしまいましたが、フィンランドでは人材の有効活用と職業能力開発を通じて、職場の生産性と職業生活の質の改善の両方を目途としたコンサルタント費用を支援するという政策が、1996年以来提供されていて、かなり評判が良いのです。是非、そういった形での政策も考慮する余地があるのではと感じました。
 最後に、これに関して面白いエビデンスが1つあります。機構のほうで、在職者訓練に参加している人たちの人数を見ますと、平成26年ぐらいから急増しているのです。しかも、平成28年から29年にかけて、大きくジャンプしている。もちろん、ここには機構の御努力があるとは思うのですが、通常はこれだけ景気が良くなると、訓練には機会費用が伴うので、訓練をする暇がなくなることが経済学的に予想されますが、現実はそうではない。もちろん、これは機構ですから、ものづくりの分野に限定されますが、中小企業の現場でどうやって訓練するかということに対するニーズが、今、実はかなり高まっている状態にあるのではないか。その観点から考えると、今申したような政策的介入をより一層強めていく必要があるのではないかと感じました。

○樋口座長
 先ほど山本先生からタスクという話も出たのですが、厚労省のほうでキャリアマトリックスの作成は今も進めていますか。どのような状況でしょうか。

○職業安定局長
 キャリアマトリックスは、もうやめたと思います。

○総務課長
 以前、JILPTでキャリアマトリックスということで、いろいろ取り組んでおられたのはありますけれども、それ自体はもう今はやっていなくて、今後、日本版O-NETみたいな形で、仕事にどういうものが必要かといったこと等をまた分析をしてWebに載せる事業を今年度から始めています。

○樋口座長
 私の理解だと、厚労省の中でやると決まって、JILももちろんお手伝いしますということなのだけど、JILPTの方がやるのだと、今そこが進んできているという報告を受けたのですが。

○総務課長
 日本版O-NETという形で厚生労働省でやるので、そこに載せるデータなどは、JILと協力をしながら作り上げていくことになっています。

○樋口座長 
 そういうものを使ってというアドバイスだと思いますが、やりますということですよね。もうやっているのですか。

○総務課長
 始めています。

○堀委員 
 資料をどうもありがとうございました。先生方のこれまでのお話をお伺いして、全体が良くなっているということだけではなくて、やはり質的なことを見ていかなくてはいけないということで、これに勇気付けられて改めて申し上げられればと思います。前回までの雇用政策研究会においては、結構なボリュームで若者に対しての知見が載せられていたのですけれども、今回は、ほぼスルーされているという印象を受けました。私は若者の研究者として参加させていただいておりますので、大変な衝撃を受けたわけです。
 先ほど、佐藤先生や黒澤先生もおっしゃったのですけれども、例えば離職1つ取っても、若い時期の離職というものは、経験を積んで年齢が上がってきたときとはかなり違います。今回、34歳以下という形でまとめられているわけですが、当然ですけれども、20代前半と30代前半で全然違いますので、もちろん全てについてということではないのですが、若い時期の年齢区分をもう少ししていただけると、非常に参考になるのではないかと思います。中高年になるとむしろ落ち着いてくるので、そこまで細かく見なくてもいいのではないかと思いますが、若い時期については、もう少し詳細にお願いできればと思っております。
 さらに、説明のときにちょっと申し上げたのですけれども、新規学卒者の状況等についても、労働移動などを考える際には、やはり新規学卒者の動向は欠かせないと思いますので、是非その辺りも包括的に御検討いただけると大変有り難いです。以上です。

○樋口座長
 それは、一度どこかで整理をしていただきたいと思います。

○神吉委員
 私は法律の観点から、これから雇用政策というものを考えていく上で、今日挙がってきたデータを前提として、これまでの政策がどう評価されるかが気になっています。その観点から2つ、データを扱われるプロの先生方に是非お伺いしたいことがあります。
 1つ目は資料3の4ページの所ですが、左のグラフでは同一事業所における有期から無期への転換者の推移とあって、男性は直近ではちょっと下がっていますけれども、両方とも増加傾向だということです。右のグラフでは、不本意非正規も減っているということですけれども、まずデータとして気になったのは、左は有期と無期とを見ていて、右のほうは非正規なので、全ての非正規という理解でいいでしょうか。例えば、恐らく労働力調査をお使いなので、パート、アルバイト、契約社員、派遣、嘱託、その他といった内訳なのかと思いますけれども。

○雇用政策課長 右側は、全て労働力調査です。

○神吉委員
 ありがとうございます。となると、若干指しているものが違うと思いますが、非正規でいろいろな形態がある中、不本意である割合が一番高いのは、やはり一般的に雇用の不安定さに直結する有期であると、そして半分を占めるパートの方は短時間で働きたい要望があるので、そこまで不本意である割合は高くないと考えられています。有期をみると、左側のグラフで無期転換が進んできているので、右側のグラフの有期の人が無期転換する見込みが高まっていったことで不本意であることが減っていると読んでいいのかどうか。
 もし、それで間違っていないのであれば、2013年法改正によって、有期労働契約の無期転換が制度化されたことの効果として見てよいのか。この制度が導入されたときは、単に5年未満の雇い止めが増えるだけではないかという懸念も表明されたところですけれども、そうはなっていない、ある程度効果があったというエビデンスとして見ていいのかが、一点お伺いしたいところです。
 2つ目は、同じ資料の24ページ以降です。首都圏と地方間の労働移動と、25ページの地方では医療、福祉や建設業などの人手不足割合が高いということを念頭に置いて、27ページの一番下のマルで首都圏、地域間の労働移動を見ると、都市への流入超過が生じていると書かれています。ここで気になるのは、地方で医療、福祉、建設といったその地域でのサービスの提供が必要とされる、サービスの消費地で提供も必要とされる種類の労働分野で、人手不足が起こっていることです。つまり、そういった分野では製品という媒介なしに、サービスの価格、つまり賃金が恐らく大きく効いている。そして、各都道府県での時給ベースの賃金の分布状況を見ると、最低賃金への張り付きが圧倒的に大きくなっている道府県は少なくありません。
 そう見ていくと、最低賃金の地域格差が時給ベースで現在221円ありますけれども、そうした最低賃金の格差が、実は政策としてマイナスに評価されることになるのか、それとも、そこまでは言えないのかが気になっています。以上です。

○樋口座長 
 それでは、幾つか御質問がございましたので、お願いいたします。

○雇用政策課長
 まず4ページですけれども、左側は2013年からしか取れていませんで、データ自体が少ないということがありますので、この動きだけをもって、その要因についてどこまで法改正に影響があったのかということは、なかなか難しいかと。景気が良くなって、雇用期間の定めのない仕事へ就きやすくなったという影響も当然考えられますので、そこについては、申し訳ございませんが、分析はなかなか難しいと思っています。
 右側についても、景気が良くなりますと不本意ながら非正規で働く、望んでパートで働くとかということはあります。この中で内数というか、分類について手元にないのでお示しできないのですけれども、基本的には、不本意ながら非正規で働く方々が純粋に景気等の影響によって低下してきているということです。右と左というのを余りリンクさせていなくて、もし右と左との共通項ということで言うのであれば、景気動向ですとか、こういった人手不足の状況が高まっていることによって、労働条件の改善というか、こういった転換等が進みやすくなっているという、人手不足と経済状況が良いということが共通項として挙げられるかと思っているところです。
 地域の人手不足産業の割合ですけれども、もともと地域においては建設とか介護とか、そういった正に地域に密着した雇用というのは中心になっているといったところです。地域地場産業というか、そういったところが中心と雇用者の割合が多いということですので、そこが人手不足という状況になると、地域経済へ与える影響も大きいと懸念されるというところぐらいまでは言えるかと思いますが、それ以上のことはなかなかというふうには思います。

○樋口座長
 ありがとうございます。ちょっと25ページの見方をまだよく理解していないのですが、これは首都圏・地方別雇用者割合、雇用者割合というのは何に対する何の割合ですか。

○雇用政策課長
 雇用者数に占めるウエイト、産業構造といいますか、雇用者数をウエイト付けしたときに、地域のほうは医療、福祉や建設分野で働いている人が、都市部、首都圏に比べると比較的多いということです。

○樋口座長
 多いということですか。

○雇用政策課長
 単純な割合について示しているというものです。

○樋口座長
 分かりました。契約法の影響の話は、これから現れてくるだろうという話ですかね。

○雇用政策課長
 そうですね。

○樋口座長
 ちょうど5年で、今年ですか。というところだから、検証はまだ難しいということですか。

○神林委員
 4月の労働力調査は、先週発表になっているのではないですか。

○樋口座長
 労働力調査はね。

○佐藤委員
 今回の推計のときどうするかは結構大きい話で、推計のときどう組み込むか。

○樋口座長
 やっているうちに出てくるのかどうか、間に合うのかどうかというタイミングですかね。

○雇用政策課長 
 実際にどの程度影響が出てくるのかということは、ちょっとまだ手元に数字がない段階で申し上げるのは難しいとは思いますけれども、もしそういった影響が見られればということだと思います。

○樋口座長
 基準局で、影響の検証はやるのでしょうか。

○労働基準局総務課政策企画官
 労働基準局ですけれども、まさしく座長が言われたように、今年の4月からということになっていますので、動きにつきましては、我々基準局としてもウォッチしていかなければいけないと思っています。どこまで把握できるかは、これからまた考えていきたいと思います。

○神吉委員
 確かに、5年経ったというその期間だけを見れば、もちろん今年の4月からなのですけれども、もう2013年の段階でそのときになるということは分かっているわけで、これまで有期をたくさん使っていた企業というのは、それ以前に法改正があった時点で対応してきてはいると思います。今年から効果を見るというのではなくて、やはり影響は与えているのではないかと思います。それをどれだけ政策効果で切り分けるのか、おっしゃったように、景気の動向とか人手不足の状況があるのはもちろんですが、政策としてどれほど有効か、少なくとも逆効果になっていないかという評価はある程度していかないと、これからの雇用政策の提言も曖昧なものになってしまうのではないかと思います。

○樋口座長
 では、一度お話いただけますか。

○雇用政策課長
 検討させていただければと思います。

○樋口座長 
 ありがとうございます。他にいかがでしょうか。

○鶴委員
 先ほど佐藤委員がおっしゃって、大竹委員がおっしゃった話とも関連すると思います。例えば、ある業種を見たときに、そこの中でかなり状況が違うというか、対応で異質的だというお話で、やはり業種ごととか大企業とか中小企業というところを分けて、通常はそのデータは我々が平均値を見るわけですよね。でも、そこに出てくる特徴は、先ほどおっしゃったように、ある一部の事業所とか、そういうところが非常に大きな特徴があって、そして全体的にそういう特徴があるということであれば、当然どういう政策をやったらいいのかと。全部その業種にかぶるような十把一絡げの政策というのは余り意味がなくて、かなり特別な所にターゲットを絞ってやる必要があります。
 そこがもう1つの例だと思いますけれども、今あらゆる所で多様化というか異質化が進んで、それも大きな変化の中でそういうことが起きているので、様々な指標においてその中の構成がやはり変わっているわけですよね。それを適切に見ないと多分、今起こっているあらゆることが、労働問題だけではないのですよね。解釈ができなくなってきている感じを非常に強く持っていて、例えばこういう所で出してくる資料も、業種ごとでこうです、大企業、中小企業はこうです、だからこうなのですという話が限界に来ているという感じがします。
 そうすると、もとの事業所の統計とかというところも見ながら、少なくともどのぐらいばらつきがあるのかとか、そういうことも考えていかないと、政策をやる基盤としてのエビデンスということになると非常に難しいなと。必ずどのような議論でも、先ほどおっしゃったように、中小企業の中で生産性格差は非常にあるよねとか、そういうお話は私も典型だと思いますが、そこをやはり考えていただいて、逆に委員とか学者の先生方と、ある意味ではタイアップしながら少し掘り下げてみるとか、そういうことも考えていかないと限界にきているという感じも非常に強く思うので、そういうところもしっかり検討していただきたいと思います。

○佐藤委員
 鶴さんの意見は大賛成ですので、是非やっていただければと思います。1つだけ細かい点です。介護の人手不足という話ですが、福祉の中に保育が入っているのですよね。現状では、保育も保育士が足りないということですけれども、需要のピークは多分かなり違うと思います。首都圏だと、女性の就業拡大は多分まだ増える可能性はあると思いますが、介護より保育の需要のピークは多分早いですよね。だから、どこかから余るのですよ。今は余るなんて言えないのだけれども、難しいのはそこです。
 そういう意味では、保育士の資格と介護士の資格の共有化という議論は、やはり止まってしまったみたいですけれども、どこかで保育士の方が介護に転換というのはやれる可能性が出てきるし、必要性も出てきると思うので、これは厚労省の中ですから、そういうことも是非少し考えながらやっていただくといいかと。やはり保育のほうの需要のピークがどこなのかです。多分、介護は需要のピークが相当続くので、そういうことも含めて考えていただくといいかと思います。

○樋口座長
 保育士の話になると、幼稚園の話が並んで出てきますよね。それと地域の活性、先々週発表された人口の市町村別推計ですが、今までよりも一局集中が極端に進むというので、杉並なんて大変なことになるというのが専らな話ですが。よろしいですか。

○黒澤委員
 シルバー人材センターについてです。それこそ、介護の問題で今ちょっと思い出したのですが、今、たとえば東京都内のシルバー人材センターの会員の平均年齢74歳で、これは恐らく今後低くなる可能性はないですよね。
 シルバー人材センターが、今後いかにしてあのインフラを有効に活用するかという観点から考えると、今まではどちらかというと、労働の方が福祉よりもウエイトが高い形で位置付けられていたと思いますが、今後は、もう少し福祉の方に寄った形で、本当の意味でのいわゆる協同共助を推し進めてゆくことを考えてもよいのではないかと思います。つまり、たとえば少し認知症になっていたとしてもグループで仕事をするなりして、居場所を作ること、働けなくなったらそこでカットするという会員の在り方ではなくて、いかにあのインフラを使いながら地域の高齢者のウェルフェアを高め、医療費を削減していくかという観点から、センターの在り方を考えるべきではないか。センターについては、多様な就業形態の一種として、いつもこのような研究会の報告書にちらっと出てくるのですけれども、多様な就業を超えた形でのシルバーセンターの在り方というものに踏み込む時期が来てしまったのではないかと思いますので、その辺りも是非よろしくお願いいたします。

○玄田委員
 関連して、27、28ページのまとめ方ですが、今回、御準備いただいた丁寧な資料から導かれる事実の把握としては非常に納得のいくものだと思いますけれども、これを方向性とされると、やはり余りにも狭いだろうと思いました。黒澤さんが今おっしゃったシルバーも含めて、今の段階というのは、足りない部分を少しずつ補い合うという新形態を本気で考えないと回らなくなっています。パートで活用するとか、一時的に派遣とかを活用して、臨時で何かを補うという段階をもう超えてきているので、少しずつ上手くフレキシブルに補い合える体制をどう作っていくのかと。もちろん、そこの中ではシルバーも出てくるでしょうし、副業や兼業のような話も出てくるでしょうし、これからAIをやるときには、やはりウーバーみたいな仕組みが出てくるでしょうし、ある部分、ここの方向性の本丸なので、その部分を研究しないといけないだろうと。
 もうちょっと拡張して言うと、この間社研でやった調査の中で、やはり帰宅時間はどうも早くなってきているみたいだと。夕方の急行とか乗っていると、40代や50代でいっぱいになっている状況が起こってきていて、問題は、電車を降りた後どうしているかなのです。家に帰っているのか、飲んでいるのか、自分で訓練を受けているのか、本当だったら1時間でもいいからどこかで働きたいと思っているのか。労働時間の短縮が起こった後、働けるし、健康にも配慮しながら働くことを望んでいたり、そういうほんのちょっとしたサポートが欲しいという段階に対して、今どこが乗り越えていく課題であるのかというところを、今回の雇用政策研究会でやらないと、いつやるのだという感じなので、多分第3回とか第5回の中での議論になると思いますけれども、是非、方向性というものを、もう少しいろいろ御議論いただきながら広げていく形にしていただきたいという希望を申し上げたいと思います。以上です。

○樋口座長
 スケジュールについては、先ほど資料2で示していただきましたけれども、この中に折り込んで、例えば今の年齢の、若者の話も出ましたし、中高年あるいは高齢層、男女の話も出てくるだろうと思います。どこかでこういったテーマごとにやっていくのかということも含めて御検討いただいて、重要なポイントだと思いますので、よろしくお願いいたします。他にいかがでしょうか。

○清家委員 
 次回のテーマかもしれないのですが、資料4の一番最後のページ、12ページの前提条件の整理という所です。ここで、若年対策、フリーター対策、ニートの就労などのというのがあります。これは政策自体年齢別になっているのかもしれませんけれども、玄田さんなどが専門ですけれども、2030年が政策ターゲットだとすると、最大の問題は恐らく団塊ジュニアですね。つまり、団塊ジュニアの高齢化する2040年問題に向けて2030年までにきちんと準備をしていく。そうすると、むしろもうちょっと上の年齢の非正規の人たちとか引きこもりの人とか、をどうするのが、多分政策的にはとても重要になってくるので、前提条件の所も、これは若者対策の定義の問題の話なのかもしれないのですけれども、むしろこういう年齢層よりはコーホートとしての団塊ジュニア、そこのところをもうちょっとフォーカスした方が良いのではないかと思いました。

○佐藤委員
 今のことで言うと、団塊のジュニア層は子育てだけど、多分介護ですよね。仕事と介護の所を変数として考えないと、子育てよりもウエイトが大きくなる可能性があるので、団塊ジュニア層が介護と両立して働き続けられるかどうかだと思います。

○清家委員 
 団塊世代はコーホート効果が出ておかしくなかったはずだったのに、就職するときが高度成長期だったから運が良かったわけでしょう。しかし団塊ジュニアはそんなに運が良くなかった。ですから、その運が良くなかった分を、政策的にどのように埋め合わせてあげるかということがとても大切なのだと私は思います。

○樋口座長 
 もう1つ、供給側で大きく変わってくるのは、やはり生涯未婚も含めた家族類型の変化が相当に影響してくる可能性があるわけですよね。今の生涯未婚率、2030年、2040年を見ていると、今までのような夫婦揃ってという話も考えられない。主流はそうでしょうけれども、30%を超える生涯未婚率となってくると、その人たちが60代、70代となってきたときの問題は今までの施策で良いのかと。在宅介護とかというような問題も、雇用問題ではないのかも知れませんが、労働供給には少なくとも大きな影響をもたらすだろうと思います。よろしいでしょうか。
 それでは、時間もそろそろということですので、本日の議論はここまでにしたいと思います。いろいろ宿題を頂きましたので、これはまた事務局と一緒に考えていきたいと思います。よろしくお願いいたします。それでは、次回の日程について連絡をお願いいたします。

○雇用対策課長補佐
 次回、第3回は、6月29日金曜日の15時から開催する予定です。後日、改めて御案内を送らせていただきますので、よろしくお願いいたします。

○樋口座長
 ありがとうございました。以上で終了いたします。どうもお疲れさまでした。

 

 

 

 

 

(了)

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